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日本の電機産業(その1)凋落日の丸家電への提言、日立の成長の壁、有機ELでは脇役 [企業経営]

今日は、日本の電機産業(その1)凋落日の丸家電への提言、日立の成長の壁、有機ELでは脇役 を取上げよう。

先ずは、日経出身のジャーナリスト、嶋矢志郎氏が 5月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「凋落日の丸家電が「甘えの構造」から抜け出すための最終提言」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽日本のお家芸だった家電が なぜ外資に飲み込まれるのか?
・日本の家電業界の凋落が目立っている。「世界の奇跡」とも言われた戦後日本の高度経済成長を牽引し、国際社会からも日本の国際競争力の強さを象徴する「お家芸」として認められてきた花形産業の老舗企業が、なぜ次々と外資に、それもアジア系外資に飲み込まれていくのか。
・家電業界をめぐる経営環境がグローバル化とイノベーションの2つの荒波に晒されていながら、国内市場でしか通用しない、いわゆる「ガラパゴス化」状態に甘んじてきた経営体質が大局観を見失わせ、先見性を狂わせて、熾烈な国際競争を勝ち抜くための有効で機敏な経営戦略を打ち出せずに来たことが、凋落傾向の直接の主因と思われる。家電の主役が日本勢からアジア勢へと交代を余儀なくされてきたのも、必然の結果と言って過言ではない。
・なかでも気がかりなのは、右顧左眄型の横並び志向や「皆で渡れば」式の協調体制の淀みが、日本の家電業界の底流に長年浸みついているように見える点である。過去には、上層部が本務を蔑ろにしてまで出世争いにうつつを抜かすなど、目に余る人事抗争に明け暮れてきたケースもある。
・こうした見えざる「しがらみ」の呪縛からか、相互に企業序列を守り合う「甘えの構造」が今なお根強く横たわっているように感じられる。これが国際的な構造変化への臨機応変な対応を鈍らせてきた共通の真相であり、深層でもある。このような古い業界体質や企業風土を自らの手で払拭できない限り、家電業界の行方は前途多難に思える。
・液晶への過剰投資が財務体質の悪化を招いて、経営不振に喘いできたシャープは、電子機器を受託生産する「EMS」(Electronic Manufacturing Service)の世界最大手である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ることが決まった。 鴻海の出資総額は、シャープの業績悪化や将来の負債となる恐れのある偶発債務を勘案して、当初の予定よりも約1000億円の減額で決着した。鴻海グループはシャープの3888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を握った。これは事実上の買収である。日本の主力電機メーカーが外資の傘下に入るのはこれが初めてであり、国際的にも波紋を広げている。
・また、不正会計処理の表面化で経営危機に直面している東芝は、冷蔵庫など白物家電の製造・販売を担う子会社・東芝ライフスタイルの株式80.1%を中国の家電大手である美的集団に売却することで合意した。売却額は負債を含め約537億円で、売却益は税引き前で約900億円になる見通しである。テレビなどの映像事業は子会社に移管して東芝が継承するが、小物家電の東芝ホームテクノなど東芝ライフスタイル傘下の16社も東芝グループから外れる。
・三洋電機が2011年10月に白物家電事業を中国の家電大手であるハイアールに売却し、パナソニックがその他の家電事業を次々と吸収・救済統合して残る全従業員を受け入れたのは、1年前の2015年4月のことである。三洋電機がこれをもって消滅したことは衝撃的であり、まだ記憶に新しい。
▽農耕型経営の行動原理から抜け出せないことが凋落の原因
・日本の家電業界はなぜ、今なお底流に淀む業界体質や企業風土から脱し切れずにいるのか。あえて直言すれば「奢れる者は久しからず」で、今流に言えば企業ガバナンスの欠如である。田植えはいつすべきか、自分で決めることなく隣に合わせる行動原理に従い、いわば農耕型経営の下で大過なく家電ブームに酔い痴れ、わが世の春を謳歌してきた慢心が、半世紀の歳月を経て体質化するなか、経営危機への備えを怠り、自戒作用が働かなくなったのではないか。昨今の凋落傾向は、その咎めである。
・シャープの液晶への過剰投資をはじめ、東芝の歴代社長が関与していた不正経理、三洋電機の苦し紛れの放漫経営など、いずれも自己中心的なガラパゴス化によってもたらされた必然的な結果と言えよう。
・新製品開発や新規事業への参入をめぐる日本の家電業界の横並び志向は、どこを切っても同じ顔を見せる「金太郎あめ」方式の典型で、古くから有名だ。家電各社は始めは先を競って新製品を開発し、新規市場へ参入するものの、やがて振り向けば全社が足並みをそろえて全製品を手がけている。表向きはしのぎを削り合っているが、その裏では企業序列を守り合う共存共栄の協調体制を優先しているわけだ。いわゆる「つくれば売れる」時代の市場環境で長期にわたり許されてきた売り手市場のぬるま湯が、家電業界の習性となって定着し、今日に尾を引いている。
・また、上層部の出世争いによる人事抗争は、家電業界に限らず、日本の産業界に共通するエネルギーの発露であり、むしろ有効競争が機能している企業ガバナンスの一環としてプラス指向で評価する向きもなくはない。しかし、家電業界の場合は度が過ぎている。特に、カリスマ性の強い創業者の引退や逝去に伴う後継者争いで、躓いている事例が多い。
・松下幸之助をはじめ、早川徳次や井植歳男らのケースは、その典型例である。後継者の育成に関する遺訓集も出している松下幸之助のパナソニックでも、人事抗争が母屋の凋落の引き金になっている(詳細は、岩瀬達哉著『ドキュメントパナソニック人事抗争史』講談社)。
・東芝の場合は、創業者ではないが、過去の経営危機を救った中興の祖である石坂泰三や土光敏夫の両名が同社のトップ在籍中に相次いで当時の経団連(現在の日本経営者団体連合会)の会長に就任していることが刺激となって、上層部の出世争いに拍車をかけてきた面が否めない。
▽「甘えの構造」を醸成し助長してきた3つの要素
・「甘えの構造」を醸成し助長してきた背景には、基本的には半世紀にわたる農耕型の慢心経営があるが、次の3つの共通要素も見逃せない。
・1つには、監督官庁の経済産業省が「日の丸家電」の国際競争力を強化する大義名分の下で口を出してくる、政策的な介入である。往々にして短期的な効果は期待できても、より必要な構造改革とその課題解決に役立つとは限らない。かえって政策依存心を強めて、自力更生力を弱め、甘えの構造を助長してきた面が否めない。 2009年5月の家電エコポイント制度の導入は、典型的な失敗例である。
・2つには、経営の多角化に伴う弊害である。好調な事業の陰に隠れて、不振な事業の効率化や採算への透明性を求める圧力を弱め、効率化への改善、改革やイノベーションへの投資機会を見損なうなど、不採算事業への厳しい監視、監査や切り出しへの経営努力を鈍らせ、やがては企業内で抱え込み、課題解決を先送りする点である。これには、日本国内に経済や産業のスケールに見合うだけの、いわゆるM&A(合併・買収)市場が不幸にもいまだ育っておらず、未成熟であるという事情も見逃せない。これは、政策の怠慢の誹りを免れない。
・3つには、独立系の大型量販店への依存度が強い点である。家電業界の場合、流通機構における末端小売市場の主導権を大型量販店に握られているため、メーカーに対する大型量販店の価格交渉力が強く、大型量販店が安値競争に走り出しても、メーカー側にはそれを阻止して押し返すだけの抑止力が乏しい。いわば、癒着が甘えを助長している構図である。
・シャープと東芝の両社の再生をめぐっては、日本政府が大株主である官製ファンドの産業革新機構も再生案を提示して、名乗りを上げていた。機構案では、同機構が先導して、ソニーなど大手3社の液晶事業を集約し、筆頭株主でもある国策企業のジャパンディスプレイにシャープの液晶部門も統合する一方、シャープと東芝の家電部門を合体させる構想であった。
・しかし、官製ファンドが特定の民間企業の再生に出資して救済したとなれば、「民業を圧迫する」との誹りを免れない。国際的にも各国の独禁政策に抵触して、承認されない恐れもある。ただ、官製ファンドがシャープに対して提示した出資額の上限が3000億円であったのに対し、鴻海の提示額は当初の予定額から約1000億円を減額してなお3888億円であったため、シャープとしては迷うことなく妥当な選択を下すことができたのである。
▽止めを刺された超円高傾向の加速 明暗を分けた重電系3社と弱電系3社
・家電業界の凋落傾向は、決して今に始まったことではない。『社会実情データ図録』の輸出入を中心とした貿易から見た国際競争力指数で分析すると、家電の国際競争力はすでに1990年代から2000年代にかけて続落の一途を辿っている。その後もタイを震源とする1997年7月からのアジア通貨危機、米国経済のバブル崩壊に端を発した2007年8月からのサブプライムショック・リーマンショックで体力を消耗した。そして2011年10月には、遂に1ドル75円78銭を記録した史上最高値の超円高に襲われ、輸出依存度の高い家電各社は止めを刺されている。
・とりわけ、2011年は3月の東日本大震災に始まり、10月にはタイの大洪水にも見舞われて、国内外のサプライチェーンが打撃を受け、部品調達が逼迫する一方、主力のテレビ関連事業が国際的な値下げ競争で総崩れするなど、かつてない大荒れの1年となった。ちなみに、2011年度通期の最終損益を見ると、日立(3471憶円)、三菱(1120憶円)、東芝(737憶円)の重電系総合3社はいずれも黒字(カッコ内数字)であるのに対し、パナソニック(▲7722億円)、ソニー(▲4567憶円)、シャープ(▲3760億円)の弱電系家電3社はいずれも大赤字(カッコ内数字)となっており、落差が際立っている。
▽「出藍の誉れ」のアジア勢に主役交代 価格競争の消耗戦が招いた自滅
・日本の弱電系家電各社が大きく躓いている間に、破竹の勢いで台頭してきたのが韓国、中国、台湾の家電大手である。彼らは、日本の家電業界が半世紀にわたって培い、育んできた技術やノウハウを見習い、修得して、いわば日本をお手本にした成長、発展モデルで急速に国際競争力を身に着けた。日本の家電各社を一気に凌駕する実力で国際市場を席巻し、世界シェアを広げてきたのは、まさに出藍の誉れであり、皮肉な主役交代であった。
・主役交代を加速して決定的にした要因は、国際市場での勝負どころが製品の高品質化競争から低価格競争へ、つまり値下げ合戦へシフトしたためである。日本勢が圧倒的な強みとしてきた「高品質」は、アジア勢の急速な追い上げでその優位性をあっという間に失った。品質での優劣に落差がなくなった日本勢は、安売りで勝負する消耗戦へ否応なく巻き込まれ、自滅の道へ追い込まれていったのである。
・日本国内はもとより、国際的にもほぼ同時進行で一斉にデジタル化した薄型テレビの市場争奪戦が、その象徴であった。投資コストを回収している暇もなく、値下げに次ぐ値下げの消耗戦を強いられたため、コスト競争力に強いアジア勢と弱い日本勢とでは、勝敗は決定的であった。アジア勢は基本的に人件費が安く、為替もはるかに割安である。これに対し、日本勢は人件費が高く、為替は超円高続きだった。アジア勢の安売り攻勢にはついて行けず、脱落を余儀なくされていった。
・シャープは液晶パネルの堺工場で減産を重ね、稼働率を5割に抑えてもなおしのげず、見込み違いの過剰国際市場での勝負どころが製品の高品質化競争から低価格競争へ、つまり値下げ合戦へシフトしたためである投資が命取りとなった。パナソニックは、プラズマディスプレイパネルの第5工場の生産を休止した。ソニーは販売計画を早々に半減させて販売価格の値崩れ対策を打ち出したが、手遅れであった。 さて、こうした日本の家電業界が熾烈な国際競争の中で勝ち残り、「日の丸家電」を甦らせ、再生していくには、業界を挙げて次の3点にわたる課題解決に取り組んでいくことが必要だと思う。
▽日の丸家電の復活に必要な「3つの課題解決策」とは?
・1つには、古い業界体質や企業風土を自らの手で払拭していくことが先決である。それには、この度のシャープの外資導入によるテコ入れも、決して当該企業の経営再生策で終わらせることなく、業界全体が古い体質や風土から脱皮するための他山の石として受け止め、わが身への教訓として活かしていくことである。
・2つには、東南アジアをはじめ、中南米やアフリカなどの途上国では家電化の普及がむしろこれからの地域や貧困層が多いため、家電先進国である日本はその普及、啓発に尽力して、寄与、貢献していくことである。日本の家電業界の輸出先は、これまでは欧米やアジアを含め、富裕層向けが中心であったが、これからは日本にとって未開発地域の海外戦略、戦術が急務となる。
・3つには、家電イノベーションが「もの」ベースから「サービス化」へ、さらには家電のIoT(Internet of Thing)革命へと急進展する中で、日本の家電業界はその先端的なビジネスモデルを開発し、市場化への展開で「お家芸」を発揮・再現して、先端家電の国際市場を先導していくことである。それには、液晶に代わる次世代ディスプレイとなる有機ELの応用展開をはじめ、家電と自動車と電力網をつなぐV2H(Vehicle to Home)やV2G(Vehicle to Grid)など、家電のIOT革命を率先垂範して、推進していくことである。
・鴻海はシャープとの初仕事で、有機ELの大型研究開発投資を促進して世界市場を先導すると公言したが、シャープには2年前に発売した「クラウド蓄電池システム」もある。これは家庭のエネルギー利用を総合的に調整、制御するHEMS(Home Energy Management System)を実現し、スマホともつながるなど、家電のIoT化を先取りしている家電サービスである。
・鴻海はシャープのDNAである独創的な技術開発力を存分に活かして、家電イノベーションの多種多彩な成長・発展モデルを開発し、地球社会の隅々へと普及を図り、暮ら豊かさが広く遍く行き届くよう、経営資源を投入していく必要がある。鴻海・シャープの今後の経営展開では、上記の3つにわたる課題解決に取り組むことにより、日本の家電各社が今後目指すべき成功モデルとして崇められ、追随することを期待したい。
http://diamond.jp/articles/-/91065

次に、5月31日付けダイヤモンド・オンライン「“勝ち組”日立が成長失速で遠のく欧米勢の背中」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「電機勝ち組」とされてきた日立製作所の成長が踊り場に差し掛かっている。かねて「世界企業に伍していくための水準」として掲げていた売上高営業利益率10%の目標は棚上げされた。大胆に事業構造を転換して再成長の姿を描けなければ、先行する欧米勢の背中は遠のく一方だ。
・5月18日、日立製作所が開いた2016~18年度の中期経営計画説明会で、東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)が掲げた18年度の売上高営業利益率の計画は8%超だった。日立の復活をけん引した中西宏明会長らが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど海外メーカーと互角に競争するために必要な中長期の目標としてきた「10%」を表明することはできなかった。
・日立は、08年度に7873億円の最終赤字を計上しながら、徹底した構造改革でV字回復を遂げたが、13~14年度に過去最高の営業利益を計上した後、15年度下期から勢いが失速。今年2月の第3四半期決算では通期の業績予想を下方修正し、15年度に7%超を目指していた営業利益率は6.3%にとどまった。 成長の停滞があらわになるとともに日立の株価はこの1年で低迷し、3年前の500円割れの水準に逆戻りした。時価総額はソニーの3.8兆円に対し、日立は2.3兆円にとどまっている。
・日立の18年度計画について市場関係者の間では、「8%でも高い。本当に達成できるか疑問」との見方が広がっている。 東原社長は、15年度の計画未達について「若干危機感が弱まった部分もあったのかもしれない」と振り返っているが、停滞の打開策は構造改革の再開だ。
・日立が巨額赤字から復活を果たした原動力は事業の選択と集中だった(表参照)。半導体メーカーの旧ルネサステクノロジを旧NECエレクトロニクスと統合し、中小型液晶事業も、ソニー、東芝と統合して出資比率を下げたほか、ハードディスク駆動装置(HDD)事業を米ウエスタン・デジタルに売却。この一方で、社会インフラとITの分野に投資を集中し、「社会イノベーション」と呼ぶ事業を拡大したことで、電機でトップクラスの利益体質を作り上げてきた。
・それでも「まだまだ低収益事業を抱えている」とする東原社長は、直轄するビジネスユニット(BU)に、営業利益率が5%に満たない事業は撤退や再編の対象にするよう指示した。価格競争の厳しい白物家電事業は「利益率が3~4%で低迷するなら考えなければいけない」(東原社長)としており、IoT(モノのインターネット)を駆使したスマート家電事業への脱皮を図って存続させるか、それとも撤退するかの見極めに入る。
▽コア事業に集中 問われるM&Aの質とスピード
・日立を再び成長軌道に乗せるためには、低収益事業から撤退するのみならず、ノンコア事業を整理しコア事業への投資を加速させる必要がある。
・上場子会社の日立物流はSGホールディングスに、日立キャピタルは三菱UFJフィナンシャル・グループに、それぞれ16年度中に保有株の大半を売却することを決定したのもそのためだ。上場子会社の再編は、14年3月に日立メディコを完全子会社化して以来で、2年ぶりの大型案件だ。 物流とキャピタルの非連結化によって今期の売上高は1兆円減少する見通しだが、東原社長は「売り上げダウンは気にせずにどんどん構造改革を進めていく」方針。 日立の上場子会社再編の予兆を察知して、早くも株式市場では、ノンコア事業とみられる半導体製造装置を抱える日立ハイテクノロジーズと日立国際電気の二つの上場子会社の売却を予測する見方も出ている。
・コア事業の強化については、3年間で1兆円の資金を社会イノベーション事業へ投融資する。16年度の連結売上高は9兆円にいったん縮むが、17~18年度の2年間で1兆円増やす計画で、このうち5000億円はM&A(企業の合併・買収)でカバーする目算だ。
・だが、M&Aには資金が要る。3月末の金融を除く現預金6600億円に対し、有利子負債は1兆5000億円と「借金超過」の状態で借り入れの余地は小さい。また、15年度の営業キャッシュフローは8431億円と過去最高となったが、日立が想定する大型のM&Aを実行するには余裕があるとはいえない。このため事業を売却して資金をつくりながら買収先を探すという「離れ業」にも挑まなければならない場面もありそうだ。
・日立が背中を追い掛けているGEは、金融や家電部門を売却する一方で、発電などエネルギー部門に資源を集中。シーメンスもエネルギーやIoTのインフラシステムの分野でM&Aを加速している。日立も事業売却や営業キャッシュフローの改善で資金確保を急いでいるが、M&Aで有効活用しなければ「株価も下がっているので自社株買いをしてくれた方がまし」との声が株式市場から高まりかねない。
http://diamond.jp/articles/-/92093

第三に、6月3日付け日経ビジネスオンライン「有機ELの破壊力 主役は韓台中、日本は脇役に」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・有機ELに賭ける韓国LGの野望 プレミアムテレビ市場をターゲットに「液晶の次」を拡販:スマートフォン向けのディスプレーとして話題の有機ELだが、テレビ向けでも注目が集まっている。2013年から有機ELテレビを販売している韓国LG電子は、この有機ELブームに乗って、販売拡大を図る。
・韓国・ソウル。家電量販店に足を踏み入れると、ずらりと並んだテレビが真っ先に目に飛び込んできた。上には「LG OLEDTV」と大きく書かれている。韓国家電大手、LG電子が発売する有機ELテレビだ。日本でも発売しているが、そこはお膝元の韓国。量が桁違いに多い。
・「液晶の次」と言われ続けてきた有機EL。アップルが新型iPhoneに採用することが決まり、突如注目が集まっているが、テレビの世界ではLG電子がほぼ市場を独占している。2012年から子会社のLGディスプレーが大型有機ELパネルの量産を始め、2013年からLG電子が有機ELテレビの販売を始めた。
・有機ELを搭載したスマホが普及すれば有機ELの知名度が高まり、テレビ市場にも良い相乗効果をもたらすとの期待は大きい。LG電子の本社で有機ELテレビ事業を手掛ける担当者らに、LGの強みと今後の戦略などを聞いた。 「テレビ事業を続けていくためにも、『次の未来』に備えることが必要だと考えた」 有機ELテレビ事業を統括する、HEマーケティングコミュニケーション担当役員、イ・ジョンソク常務はこう強調する。薄型テレビの世界販売台数で1割強のシェアを持つLG。しかし、液晶テレビの汎用モデルは中国勢の低価格攻勢にあっており、競争環境は厳しい。だからこそ、同社の強みが最大限発揮できる有機ELテレビに賭ける思いは大きい。
・有機ELテレビは過去、ソニーや韓国のサムスン電子などが自社で開発を手がけてきたが、採算が合わず撤退した歴史がある。なぜLGだけが有機ELテレビを続けられるのか。その理由についてイ常務は「LGディスプレーとLG電子で共同のプロジェクトチームを作り、有機ELテレビを開発している。互いにパネルの特徴などを理解できているので、最大限に強みを引き出せる設計やデザインにできる」と話す。
▽価格は適正。「下げる必要はない」
・気になるのが、販売実績。LG電子側は具体的な販売台数を明らかにしていないものの、IHSグローバルの統計によると、2015年の世界の有機ELテレビ販売台数は50万台で、そのほんどをLG電子が占めていると見られている。 液晶テレビの世界販売台数である2億7200万台に比べると驚くほど小さいが、「私たちがターゲットにしている市場はプレミアム市場」とイ常務は強調する。
・中国やインド、新興国などで数が出るテレビの多くは低価格モデルだ。2500ドル以上のプレミアム市場にだけ目を向ければ、既に世界市場の3割が有機ELテレビに置き換わっているという。
・注力する市場は、「韓国と欧州、米国」(同)だが、日本でも5月下旬から有機ELテレビの2016年モデルを販売している。価格は65インチで90万円前後(税込み)。55インチの低価格モデルでも47万円前後だ。液晶テレビに比べて高すぎるとの声もあるが、「韓国、欧州、米国での現在の需要状況を見れば、値を下げる必要はないと考えている」(イ常務)と、プレミアム感を維持するためのこだわりは強い。
▽くるりと巻くテレビも登場するか
・有機ELの最大の特徴は、フレキシブル性。今年1月に米ラスベガスで開催された国際家電見本市「CES」で、LGディスプレーは新聞紙のようにくるりと巻いて筒状にできる18インチの有機ELパネルを発表した。直径3センチ程度にまで細く巻いても、映像を正常に表示できるという。
・こうしたパネルを採用すれば、くるりと巻いて持ち運び、壁にペタリと貼り付けるテレビも夢ではない。まだ製品化の予定はないが、テレビプロダクト戦略チームのペク・ソンピル氏は、「消費者の需要があれば、そうしたテレビも今後出てくるかもしれない。有機ELは様々な可能性を秘めている」と含みを持たせる。
▽にわかに競争環境激しく
・現在はLG電子が独占している有機ELテレビ市場だが、中国メーカーを中心に今後は競合も増えてくる。  「大型の有機ELパネルをうちにも供給してほしい」。現在、LGディスプレーにこう懇願するテレビメーカーが、中国ブランドを中心に増えている。液晶テレビが過当競争に陥る中で、他社と差別化しようと有機ELに目を向ける動きが出ているからだ。
・1月のCESでは、創維集団(スカイワース)や四川長虹電器、康佳集団(コンカ)などの中国家電大手のほか、パナソニックも有機ELテレビを展示した。「フラッグシップモデルの象徴としてラインナップにそろえている」(パナソニックの津賀一宏社長)と言う。
・LGディスプレーは現在、韓国北西部に位置する坡州市に世界最大級の有機ELパネル工場を建設している。2018年にも稼動する見通しで、新たにスマホ向けの小型パネルの生産を始めるほか、テレビなどの大型パネルも引き続き量産する計画だ。これによって有機ELパネルの供給量が増えることも、中国メーカーが相次ぎ有機ELテレビ事業へ本腰を入れようと動き始めている背景にある。
・「1社で独占するよりある程度の競争環境は必要」。LG電子のイ常務はこう静観している。「他社の市場参入により、有機ELテレビ市場の認知度を高めることが先決」との思いが強いからだ。スマホ向けで注目が集まる有機EL。テレビも現在の有機ELブームに乗ることができるか。LG単独で開拓してきた有機ELテレビ市場が、時代の流れと他社の参入によって、いよいよ本格的に動き始めそうだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/052700042/060200005/?P=1

第一の記事にある『「ガラパゴス化」状態に甘んじてきた経営体質が大局観を見失わせ、先見性を狂わせて、熾烈な国際競争を勝ち抜くための有効で機敏な経営戦略を打ち出せずに来たことが、凋落傾向の直接の主因』、には異論はない。しかし、『カリスマ性の強い創業者の引退や逝去に伴う後継者争いで、躓いている事例が多い』、については、アップルも含め国籍を問わず広くみられる現象なのではなかろうか。また、「3つの共通要素」の三番目に、「独立系の大型量販店への依存度が強い点」については、時代の必然だったので、「癒着が甘えを助長」と指摘した点には違和感を覚えた。「韓国、中国、台湾の家電大手への主役交代」を、『国際市場での勝負どころが製品の高品質化競争から低価格競争へ、つまり値下げ合戦へシフトしたためである』としているが、この他にデジタル化時代に半導体製造装置メーカーを通じた技術流出という側面も大きかったのではないかと思う。「3つの課題解決策」は、いずれも現状の厳しさを飛び越えた「夢物語」的な印象を受けた。
第二、第三の記事は事実関係が中心なので、特に異論はない。それにしても、ソニーの有機EL撤退は惜しいことをしたものだ。
なお、三菱電機は、いちはやく経営資源を産業メカトロ、重電、家電の3部門に集中させたうえで、いわゆるBtoBにビジネスを集中させ、”勝ち組”とされる。2016年3月期決算は円高もあって、減収減益となったようだが、株価は1300円強と高水準にある。
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