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原発問題(その4)「トリチウム汚染水」問題、福島原発「国会事故調」元委員長の告発、「原発広告」の欺瞞 [経済政策]

原発問題については、3月9日に取上げたが、今日は、(その4)「トリチウム汚染水」問題、福島原発「国会事故調」元委員長の告発、「原発広告」の欺瞞 である。

先ずは、4月23日付け東洋経済オンライン「現実味帯びる「トリチウム汚染水」の海洋放出 福島原発タンク1000基に貯まる最大の難題」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・東京電力・福島第一原子力発電所をめぐる問題で、除去困難な放射性物質であるトリチウム(三重水素)を含んだ汚染水の海洋放出が現実味を帯びてきた。 経済産業省が設置した汚染水処理対策委員会の「トリチウム水タスクフォース」は4月19日、約1000基のタンクに保管されているトリチウム汚染水の処理方法について、コストや処理期間などの試算結果を発表。「(タスクフォースは)処理方法を決める場ではない」(山本一良主査=名古屋大学参与・名誉教授)としたうえで、水に薄めて海に流す方法が最も低いコストで済むとの試算を明らかにした。
▽原子炉建屋に流入する地下水は1日300~400トン
・福島第一原発の敷地内では、原子炉建屋に流入する地下水が1日に300~400トンに上り、炉心から溶け落ちた燃料と混じり合って生じる汚染水の処理に追われている。 多核種除去設備「ALPS」の本格稼働により、昨年までに高濃度の汚染水のうちでほとんどの放射性核種を基準以下に減らすことができるようになっているとはいえ、現在の技術では取り除くことが困難な物質であるトリチウムが残っているため、タンク内の汚染水は増え続ける一方だ。
・すでにタンクに保管されている汚染水の総量は80万トンに達しており、敷地を埋め尽くしつつある。東電では「このままではタンクを造ることができるゾーンは数年でなくなる」(松本純・東電ホールディングス・福島第一廃炉推進カンパニーバイスプレジデント)と危機感を強めている。
・そこで持ち上がっているのが、トリチウム水を告示濃度以下に薄めて海に放出するというやり方だ。 原子力規制委員会の田中俊一委員長は3月23日の日本外国特派員協会での講演で、「トリチウム除去は技術的にもほぼ不可能に近いことなので、どの国もみな排水している。漁業者が反対しているのは安全の問題ではなくて、どちらかというと風評被害の問題。もっと政治のほうで努力していただきたい」と政府に対し政治決断を促している。
・4月10日に福島県いわき市内で開催された「第1回福島第一廃炉国際フォーラム」でメインスピーカーを務めたウィリアム・マグウッド4世・経済協力開発機構・原子力機関事務局長も、「このままタンクを造り続けるわけにはいかない」としたうえで、「ほかの国であれば(トリチウムは)すでに海に流しているだろう」と言及している。
・こうした中でタスクフォースでは、「地層注入」「海洋放出」「水蒸気放出」「水素放出」「地下埋設」の5つの選択肢を設定したうえで、前処理について「希釈」「同位体分離」「なし(そのまま処分)」の場合の技術的成立性について検証。その結果を55パターンからなる一覧表にまとめた。
▽希釈後海洋放出がもっとも処理コストが少ない
・これだけでは何を意味するかわかりにくいが、実際に取り得るパターンは限られているとのニュアンスが読み取れる。というのは、地層注入では適切な地層を見つけ出せるか未知数であること、地下埋設では広大な面積が必要で数千億円規模のコストがかかることなどが記されているからだ。
・そうした中でもっとも処理コストが少ないとされたのが「希釈後海洋放出」。調査から設計、建設、処分、監視までのトータルコストは「18億~34億円」で済むとされている。 「希釈して海洋放出」のシナリオでは、1日400トン(立方メートル)のトリチウム汚染水を、告示濃度の1リットル当たり6万ベクレル以下になるように海水と混ぜて希釈したうえで海に流す。いま存在する80万トンの処分終了までに要する期間は88カ月(約7年)と算定されている。
・しかし、事は簡単ではない。現在、東電は地下水バイパスやサブドレンを通じてくみ上げた地下水を海に放出しているが、その際の基準値は漁協との取り決めにより1リットル当たり1500ベクレルに設定している。今回、シミュレーションで用いられた告示濃度の6万ベクレルはその40倍に上る。合意のうえで40倍も基準を緩めることが前提になる。
▽タンク内に事故前の放出量の400年分
・そもそも東電がタンクに貯め込んだトリチウムの総量そのものが膨大だ。東電の推定によれば、2013年12月時点で汚染水に含まれていたトリチウムの総量は8×10の14乗(=800兆ベクレル)。これは原発事故前に東電が保安規定で定めていた年間の放出管理基準値(2.2×10の13乗=22兆ベクレル)の40倍近い。
・事故前から全国各地の原発はトリチウムを海に放出していたが、福島第一の実績は2009年度で2×10の12乗(2兆ベクレル)。この数字と比べると、タンクに貯められているトリチウムの総量は約400倍(=400年分)にも上る。
・原子力に関わる多くの専門家は「健康や環境に与える影響はないに等しい」と声をそろえるが、異論もある。トリチウムが放射性物質であることに変わりはない。東北地方の水産物は今でも買い控えや輸入禁止措置に見舞われているだけに、復興途上の被災地が受けるダメージも大きい。「希釈後海洋放出」の実際のコストは計り知れない。
http://toyokeizai.net/articles/-/115028

次に、福島原発「国会事故調」元委員長の黒川清氏が3月10日付け現代ビジネスに寄稿した「福島原発「国会事故調」元委員長の告発!「日本の中枢は、いまなおメルトダウンを続けている」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽国会事故調委員長としての偽らざる思い
・志が低く、責任感がない。 自分たちの問題であるにもかかわらず、他人事のようなことばかり言う。 普段は威張っているのに、困難に遭うと我が身かわいさからすぐ逃げる。  これが日本の中枢にいる「リーダーたち」だ。
・政治、行政、銀行、大企業、大学、どこにいる「リーダー」も同じである。日本人は全体としては優れているが、大局観をもって「身を賭しても」という真のリーダーがいない。国民にとって、なんと不幸なことか。  福島第一原子力発電所事故から5年が過ぎた今、私は、改めてこの思いを強くしている。
・日本人は福島第一原発事故から何を学んだのかー?続々進む原発の再稼働、遅々として進まぬ安全対策。このままでは、日本人はまた同じ災いを経験することになるかもしれない。
・そんな状況に警鐘を鳴らすのが、国会事故調元委員長の黒川清氏だ。原発事故を「エリートたちによる人災」と暴いた黒川氏はいま、「揺り戻しが起きている原発政策をみていると、日本の未来に著しい危機を感じている」という。
・2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震から9ヵ月後の12月、福島第一原発事故の根本的な原因を調査するために、国会に調査委員会が設置された。「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」、通称「国会事故調」だ。 国民の代表である国会(立法府)に、行政府から独立し、国政調査権を背景に法的調査権を付与された、民間人からなる調査委員会が設置されたのは、我が国の憲政史上初めてのことである。
・私は、この委員会の委員長を務めた。冒頭に記した嘆きは、国会事故調委員長としての、また、一人の国民としての、偽らざる思いだ。
▽日本の脆弱さは、世界にバレていた
・国会事故調は、私を含めて10人の委員から構成された。それぞれの専門分野で調査を進め、その結果を、マッキンゼー出身で郵政民営化等にも関わったコンサルティング経験豊かなプロジェクトマネージャーが統括し、ほぼ6ヵ月で、本編だけでも600ページ近い調査報告書にまとめ上げた。 2012年7月に国会に提出した報告書では、福島第一原発事故は地震と津波による自然災害ではなく、「規制の虜」に陥った「人災」であると明確に結論付けた。
・「規制の虜」とは、規制する側(経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会など)が、規制される側(東京電力などの電力会社)に取り込まれ、本来の役割を果たさなくなってしまうことを意味する。その結果、「日本の原発ではシビアアクシデント(過酷事故)は起こらない」という虚構が罷り通ることになったのである。
・たとえば、2001年の9・11アメリカ同時多発テロの後、燃料を満載したジャンボジェット機が原発に突っ込んできたらどうなるかについて、アメリカやフランス等の原発先進国では真剣に論じられた。 その防御策を、アメリカ側は日本の原子力規制機関に2度も伝えたが、日本は何の対策も取らなかった。もし、その対策を実行していたら、福島第一原発事故はギリギリのところで防げた可能性もあるのだ。
・また、日本がIAEA(国際原子力機関)の指摘する「深層防護」(原子力施設の安全対策を多段的に設ける考え方。IAEAでは5層まで考慮されている)をしていなかったことは、国内外の関係者の間では広く知られているし、今もってその備えのない原発が幾つもあることも指摘されている。 IAEAの日本の担当者は、経産省の役人に「どうして深層防護をやらないのか」と聞いたところ、「日本では原発事故は起こらないことになっている」と言われ、まったく納得できなかった、と語っていた。
・こうしたことは国民にはほとんど知らされていなかったが、世界の関係者の間では以前から知られていた。卑近な言い方をすれば、日本の脆弱さは世界中にバレていたのだ。 しかし、日本の「リーダーたち」にとっては、「不都合な真実」は「存在しない」か「記録等がなくて確認できない」ことが多い。「国民を欺いている」と海外で言われても、しかたのないことであろう。
▽東電社長の「ゾッとする」発言の意味
・国会事故調は報告書の中で、規制当局に対する国会の監視、政府の危機管理体制の見直し、電気事業者の監視など「7つの提言」をした。調査結果から導き出された「7つの提言」は、本来、国会で充分に討議された上で、「実施計画」が策定され、その進捗状況は国民と共有されるべきものだ。ところが、事故から5年が経った今も、国会では「実施計画」の討議すら満足に行われていない。
・にもかかわらず、九州電力川内原子力発電所(鹿児島県)の再稼働、関西電力高浜原発(福井県)と四国電力伊方原発(愛媛県)の再稼働計画、安倍晋三首相が推進する原発の輸出などが進められている。日本は3・11以前の原発政策に戻りつつある。
・なかでも、2015年8月に再稼働した川内原発をめぐっては、九州電力が、原発事故時の対策拠点となる免震重要棟の建設計画を、再稼働後に撤回したことが問題となっている。 九州電力は、川内原発の免震重要棟新設計画の撤回の理由を、「免震重要棟を新設するよりも、現在ある代替施設に加えて、新たな支援施設を建設するほうが、早く安全性を向上できる」としている。 これに対して原子力規制委員会は、「どれだけ早く安全性を向上できるのか、具体的な説明がなく、最も重要な根拠を欠いている。撤回の理由は納得できるものではない」と指摘した。
・しかし、九州電力は撤回の方針を変えていない(2016年2月現在)。さらに、規制委で再稼働の適否を審査中の玄海原発(佐賀県)に関しても、免震重要棟の新設計画を見直す考えを明らかにしている。
・免震重要棟は、免震装置で地震の揺れを大幅に低減する構造で、被曝対策となる放射能管理機能と、自家発電機や通信情報施設等を備えている。原子力事故時の緊急対策所として、極めて重要な役割を果たす設備だ。
・実は、国会事故調第18回委員会の参考人質疑において、福島第一原発事故当時に東京電力社長であった清水正孝氏は、免震重要棟の重要性について、次のように明言しているのである。 「今回の私どもの一つの教訓だと思いますが、免震重要棟、発電所の緊急対策室、あれは御案内のとおり、中越沖地震(2007年・新潟県)によって柏崎刈羽が被災したあの(事務棟が使えなくなった)教訓を生かして実は福島第一・第二にも造ったものでございます。あそこはまさに、緊急対策室としての機能を果たしているわけです。(中略)もし、あれがなかったらと思いますと、ゾッとするくらいのことでございます」 この発言は、2時間以上に及んだ第18回委員会参考人質疑の、最後のほうにある。今もウェブサイトで視聴することができるので、ぜひ確認していただきたい。(http://www.ustream.tv/recorded/23159673))
▽信用を失ったこの国
・福島第一原発事故の当事者である東京電力のトップだった清水氏が、「もしあれがなかったらと思うとゾッとする」とまで明言した免震重要棟を、九州電力は「重要な根拠」も示さずに、「不要」と判断した。 福島第一原発事故の教訓は、どのように認識され、どのように受け止められているのだろうか。
・「日本はいったい何を考えているのか?」と、世界は奇異の眼で見ている。3・11以来、国際社会の中での信用を日本は失なっているのだ。
・報告書では福島第一原発事故の事象ばかりでなく、再発防止に向けた提言を行った。事故の背景には日本社会のあり方が浮かびあがる。事故は「氷山の一角」であり、氷山の下には「規制の虜」「三権分立の機能不全」「民主主義の貧困」など、日本の統治機構の問題が数多く存在する。
・このように、報告書には日本社会のエスタブリッシュメント(既成勢力)にとってあまりにも都合の悪いことばかり書いてある。報告書は「不都合な真実」だったのだろうか。現在の状況は国会事故調などまるで「存在しなかった」かのようである。
・なお、国会事故調が参考人質疑を行った委員会やその後の記者会見、タウンミーティングの内容は、すべてウェブ上で、しかもほとんどが英語の同時通訳つきで公開されている。報告書は徳間書店から出版されている他、ウェブサイトでフルテキストを見ることができるし、英語版のフルテキストもウェブ上に掲載されている(国会事故調HPhttp://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/ 現在、それらを電子書籍にしようという動きも出てきている)。 日本社会の「病巣」を確認する上でも、ぜひ、委員会の様子や報告書の内容を多くの人々に見ていただきたいと願っている。
▽警鐘を鳴らさずにはいられない
・3・11によって、人々の世界観は劇的に変わった。しかし、5年が経過して、福島第一原発事故は徐々に風化してきてはいないだろうか。 事故を引き起こした当事者である東京電力、原子力関連省庁、規制諸機関、そして政府や国会、それらを構成し支える私たち国民一人ひとりは、事故の反省をすべて消し去ろうとしているように見える。このままでは、同じ過ちを繰り返しかねないように思える。
・国会事故調の委員長を務めた者として、こうした思いから本書を出版するに至った。 国家の危機が目前に迫っていても対応できない日本の「リーダーたち」への歯痒さ。日本を支えている産官学のコアの部分が、メルトダウンしていることへの危機感。私は警鐘を鳴らさずにはいられない。
・世界への影響が非常に大きな事故だからこそ、この事故から学び、そこで得た知見を世界と共有し、現在も続く汚染水処理やこれからも起こり得るアクシデントに生かしていく姿勢が重要だ。
・しかし、日本という国には、その姿勢が欠けている。このままでは10年後、20年後の日本はダメになる。いや、すでにダメになっているのかもしれない。原発事故に限らず、日本が再び大きな問題と直面した時に同じような失敗を繰り返し、決定的・不可逆的に国際社会で孤立し、信用をなくしてしまうだろう。
・福島第一原発事故は終わっていない。この事故を機に変わらなければ、日本の将来は極めて危うい。そのことを、国民一人ひとりに強く意識していただきたいと、切に願っている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48136

第三に、5月25日付けダイヤモンド・オンライン「「原発広告」の欺瞞を元博報堂の営業マンが激白 『原発プロパガンダ』の著者・本間 龍氏に聞く」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは記者の質問、Aは本間氏の回答、+は回答なかの区切り)。
・5月14日、政府の原子力規制委員会によって廃炉も含めた運転主体の見直しを勧告されていた高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)が、一転して存続される方針になったことが明らかになった。未だ2011年3月11日の東日本大震災に起因する東京電力福島第一原発の事故が収束していない中で、なぜ安倍晋三首相は原発の再稼働を急ぐのか。
・だが、その前に“ポスト福島原発”の時代を生きる日本人が知っておくべき問題がある。過去約40年間にわたって続けられてきた「原発広告」という産業界でも例を見ない特殊な世界だ。再稼働を見据えて2015年の夏頃から復活した原発広告とは何か。その歴史と構造的な諸問題に詳しい本間龍氏に話を聞いた。
Q:この4月下旬に出版した『原発プロパガンダ』は、東京や大阪などの大型書店の新書部門ランキングでベスト10に入るなど好調です。近年の出版業界では、「原発関連本は売れない」ということが定説になりつつありますが、今回、あえて新書という形態で出したことに理由はあるのですか。
A:やはり、手に取りやすい新書という形態で出すことにより、できるだけ多くの人に読んでほしいという思いがありました。2011年3月11日の東日本大震災以降、非常にたくさんの原発関連本が出版されました。ただ、その多くは内容がやや専門的だったり、価格も2000円以上だったりするなど、よほどの関心がなければ、一般の人が「ちょっと勉強してみよう」とはならないと思うのです。
+そこで、2012年に『電通と原発報道』を出版してから書き続けてきたことのエッセンスを抜き出し、全体的に情報をアップデートした上で、価格も800円台と安く、かつ2~3時間で読める凝縮版を出すことにより、もっとすそ野を広げたいと考えました。内容は、過去の『原発広告』や『原発広告と地方紙』とかぶる部分もあります。しかしながら、初めて自らの意思で原発広告の問題に接してみようと思う人にとっては、これ以上はないほどコンパクトにまとまっていると自負しています。図表や経年データにも力を入れました。
+これまで私の本は、大手広告代理店とメディアの関係における諸問題を衝くものが多かったことからか、新聞の日曜版の中面にある書評欄では黙殺されてきました。例えば、『電通と原発報道』などは、実際に読んでくれた人の評価は高く、今でも少しずつ売れ続けていますが、どうやら私の本は新聞社における書評掲載基準に抵触するようでして(苦笑)。それでも、ジャーナリストの鎌田慧さんや、文芸評論家の斎藤美奈子さんが、自分が新聞紙面で持つ書評コラムの中で取り上げてくれました。ありがたいことです。
+今回の『原発プロパガンダ』は、書評欄でこそ紹介されていませんが、大型書店の新書部門ランキングの紹介という形で書評欄の一角に掲載されました。それだけでも驚きですが、知ってもらうということでは一歩前進と言えます。
Q:改めてお聞きしますが、本間さんが使っている「原発広告」、「原発プロパガンダ」とは、どのような現象を指しているのですか。
A:端的に申し上げると、原発広告は“原子力発電を推進する広告”です。 例えば、これまで、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのメディアで「原発は日本のエネルギーの約3割を担っています」「二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーです」などの“耳触り”のよいフレーズとともに流されてきた大量の広告やテレビCMのことです。原発プロパガンダとは、広告の在り様を第2次世界大戦中のナチス・ドイツ(1933~45年)が注力していた特定の主義・主張に関する政治的な宣伝活動(宣伝工作)になぞらえた造語です。
+ナチスと聞くとぎょっとする人もいると思いますが、理由があります。過去40年間続いてきた“原発の安全神話キャンペーン”などは、正にプロパガンダだからです。戦後の日本で最も成功したプロパガンダであると言ってもよいでしょう。なぜなら、2011年3月に東京電力の福島第一原発で事故が起こるまでは、国民は何となしに原発の必要性を受け入れていたからです。もちろん、昔から原発を支持しない人はたくさん存在しましたが、世の中のマジョリティである一般の人たちが“事の本質”に目を向けることがなかった(疑問を抱かない状態を維持し続けた)という意味で、産官学が一体となって進めてきた安全神話キャンペーンは、プロパガンダとして大成功だったわけです。
+原発プロパガンダは、一方的な主張を流し続けることにより国民を洗脳してミスリードしてきたことから、大きな危険性を孕んでいるものなのです。
▽電力業界は膨大な広告費でメディアの自主規制を醸成
Q:世の中には、ありとあらゆる種類の広告があります。その中で、いわゆる原発広告が特異な点を挙げるとすると、どのようなものがありますか。
A:広告というものは、ジャンルによって独特な表現や決まり事があるのですが、すべての広告に共通して“誰もが守らなければならない鉄則”があります。 それは、「嘘を書かない」ということです。通常は、広告を出すスポンサー、スポンサーの意を受けて各種メディアの枠を押さえて広告を製作する代理店、最終的に広告が掲載されるメディアまで、この鉄則に従っています。
+ところが、原発広告は“騙し”でした。私の本では、過去の事例(広告の現物)を引用して解説していますが、原発を正当化する広告は嘘と欺瞞に満ちていました。例えば、「原子力発電は絶対に事故を起こしません」「万一、事故が起きても、放射性物質を外に漏らすことはありません」などと言い続けてきました。結果論とはいえ、これらは嘘でした。広告業界内には、原発広告を疑問視する向きもありましたが、クライアント(得意先)の批判はできません。
+原発広告は、原発の黎明期に立地地域を対象とした賛助広告としてスタートしましたが、後に原発推進側による意見広告としての性格を強めていきました。歴史を調べてみると、最初は官民でおっかなびっくり原発を進めていたことが分かります。そして、日本各地で原発の数が増えていったことから、立地地域ばかりでなく、全国を対象とした広告が増えました。同時多発的に、全国各地で増えました。産官学による安全神話キャンペーンは、1978年に米スリーマイル島原発事故、86年のチェルノブイリ原発事故などの世界的な大惨事が起こる度に、広告出稿量が激増しました。これは経年データで見れば、一目瞭然です。
+とりわけ、90年代に入ってバブル経済が崩壊してからは、電力会社もしくは電力関連団体は“大”が付くスポンサーとして、代理店やメディアから頼られる存在になりました。知名度のある堅い会社であり、巨額の広告費を落としてくれるばかりか、まったく値引きを要求しない稀有な発注主だったからです。
+となると、電力会社などのスポンサーのために、知力と体力をフル稼働させて原発広告を製作し続けてきた電通や博報堂などの大手広告代理店は、結果として嘘を拡散する原発プロパガンダに加担したことになります。広告を載せてきたメディアも、ある種の先棒担ぎをしたとの誹りは免れません。そうなっていたのは、(1)スポンサー → (2)代理店 → (3)メディアとお金が流れていくサイクルが順調に回っていたからであり、実際には“誰も困らなかった”からです。
Q:大事な話なので、もう少し詳しくお願いします。誰も困らなかったというのは、どういうことですか。
A:少し詳しく説明しますと、本来であれば、地域独占の業態である電力会社は、一般消費者に向けた広告を出す必要はないのです。単純化して言えば、自動車メーカーや家電メーカーは、広告を通してその商品やサービスを消費者に認知してもらい、買ってもらうために広告を出稿しています。その点、電力会社や電力関連団体は、どうでしょうか。消費者が原発を買うことは不可能です。
+原発広告の目的は、一般消費者に向けたイメージ広告のようでありながら、原発に対するメディアの批判的な意見を封じ込めるために、広告費という形に変えて賄賂を渡すことにありました。言い方は悪いですが、事実上の買収です。長年にわたって巨額の広告費を投下し続けた結果、こうした構造が出来上がりました。私の本で詳しく解説していますが、その網羅性は圧倒的で盤石なものでした。電力業界は、この構造を逆手に取ったのです。原発に関して、都合の悪い記事を書いたメディアに対しては、さまざまな手段で圧力をかけました。
+しかも、直接その記事を書いた記者に対して圧力をかけるのではなく、立場の弱い広告部の担当者などに圧力をかけるのです。当然ながら、電通や博報堂の担当営業マンは、電力業界にとって都合の悪い記事の扱いが小さくなるように“お願い”に走り回ります。扱いが小さくなるというのは、例えば朝刊の一面にデカデカと出るのではなく、夕刊の社会面に回してもらうなどの工作活動です。いつもうまく行くわけではありませんが、うまく行けば「よくやった!」と担当営業マンの評価が上がるのです。それも、仕事の範囲内だからです。
+その一方で、広告代理店を介さず、直接、記者に対する抗議行動に出ることで知られていたのが業界団体の電気事業連合会(電事連)で、都合の悪い記事を書いた新聞・雑誌の記者や原発に否定的なテレビ番組を製作したスタッフを更迭するよう圧力をかけるということもしていました。「電力業界はどんな些細な間違いでも見逃さずに文句を言ってくる」「広告出稿の引き上げをにおわせる」ことでアンタッチャブルな空気を醸成し、それがメディア内での“自主規制”につながりました。電力業界は、そうして強大な力を持つようになったのです。
+民間企業との最大の違いは、電力会社は「総括原価方式」といって、広告費までが原価に含まれる点で、最終的に電気料金に上乗せして回収できました。総括原価方式があったからこそ、関東のローカル企業に過ぎない東京電力が、年間269億円(2010年度)もの広告費が使えたのです。この金額は全国的にビジネスを展開するトヨタ自動車やパナソニックなどが並ぶ「日本の大企業が1年間に使った広告費のランキング」でも、ベスト10に入るほどの規模でした。
+少し前の朝日新聞の調査ですが、1970年から2011年までの42年間で、日本の電力会社9社が使った普及開発関係費(広告・宣伝費)は、2兆4000億円にのぼります。これ以外にも、業界団体の電事連は年間866億円(2010年度)もの広告・宣伝費を使っていました。その規模感たるや、世界にも例がありません。
▽電通、博報堂、ADKは揃って“原発推進側”に
Q:ところで、一口に“原子力ムラ”といっても、メーカーなど数多くの関係者が関わっています。外側から、その全体像をつかむことは非常に難しい。
A:はい。いわゆる原子力ムラも、電力会社とその周辺の関係者だけではなく、実際にはたくさんの人たちが関わっています。 私の『原発プロパガンダ』の巻末には、日本で原子力基本法が施行された1956年(昭和31年)に設立された日本原子力産業協会(旧日本原子力産業会議)の会員をリストアップしています。言うなれば、現在の日本における原発推進側の民間企業が集結する一般社団法人です。構成メンバーを見ると、原子力ムラなるものは、電力会社とその周辺に限った話ではないことを痛感します。
+ポスト福島原発の時代を生きる現役世代には、原産協のリストを一度はチェックしてほしいです。一見、原発とは関係ありそうにない日本を代表する一流企業が参加しています。商社や金融機関も入っています。私は陰謀論に与する者ではありませんが、原産協に集まっている企業を眺めていると、“得体の知れない巨大な帝国”が形成されているかのように感じます。「えっ?あの企業もか!」とびっくりするほど、さまざまなジャンルの企業が関与しています。
Q:そう言えば、以前から電通は原産協の会員でしたが、14年になって博報堂とADK(アサツー・デイ・ケイ)が加入しました。
A:そうなのです。私の古巣の博報堂は、電通が主導して消費者金融やパチンコのテレビCMを実現した際にも、「儲かるからといって博報堂はそこまではやらない」というスタンスでしたが、原発に関してはもう一歩踏み込んで関与する判断になったようです。なぜ、福島第一原発で事故が起きた後に原産協に入るのか理解に苦しみます。「博報堂よ、どうしちゃったの?」という感じです。
+私は、博報堂とADKの広報部に問い合わせてみました。両社とも「情報収集のため」ということでしたが、そんなことはない。おそらく、風評被害対策などの復興関連の受注を当て込んでいるのでしょう。実際、広告代理店はそれらの仕事を受注しているからです。しかしながら、博報堂という会社が傾いたわけでもないのに、なぜ多くの国民を不安のドン底に陥れた原発推進側の仕事を取りに行くのか。仕事の規模としては、1990年代前半に博報堂が電通から取り扱いを全面的に奪い取った日産自動車の仕事のほうが圧倒的に大きいのです。 どうして博報堂は原発推進側に回るのか。あまり深く考えることなく原産協に入ったのでしょうが、将来的なイメージダウンが本当に心配です。
▽原発の再稼働の動きの中でNPOの立ち上げも考える
Q:原発広告に関する調査では、本間さんが第一人者になります。そもそも、本間さんは、どのような経緯で原発問題に関心を持ったのですか。
A:博報堂に在籍していた頃から、私は原発問題に関心を持っておりましたので、独立系のシンクタンクである原子力資料情報室の個人会員になっていました。きっかけは、1986年のチェルノブイリ原発事故でした。その後、「朝まで生テレビ!」で反原発の立場から論陣を張っていた物理学者・核科学者の高木仁三郎さん(1938年~2000年)が鋭い質問を繰り返していたのに対し、原発推進側の電力会社の人たちがまともに答えられない状況を見ました。堂々と質問に答えない電力会社は「何か隠しているな」としか思えませんでした。私は、高木さんの言うことのほうが筋は通っていると感じましたので、高木さんが中心になって設立していた原子力資料情報室の会員になりました。今でも会員を続けています。
+原発広告については、博報堂に勤務していた頃から、私は「おかしいな」とは考えていました。北陸支社勤務時代は、北陸電力の担当を断ったこともあります。 当時の社内には、原発に関して明確な意思表示をする者はほとんどおらず、「原発?いいんじゃないか」という感じでした。というのも、原発広告は、あくまで数多ある仕事のうちの一つに過ぎず、原発をめぐる問題について考える暇もないほど忙しかったからです。広告マンは、クライアントのありとあらゆる要望や難問を解決するために持てる能力を総動員して臨みます。ですから、原発広告は、社内ではそれほど大きな関心が払われていなかったのです。
Q:5年前に東日本大震災と東電の福島第一原発事故が起きてから、それまで原発推進側の企業のホームページなどで誇らしげに掲載されていた原発広告はいっせいに削除されました。今では、かつて世の中にそういうものが存在していた事実を知らない人がいるほど、“なかったこと”になっています。
A:だからこそ、後の世代のためにも記録に残しておく必要があります。大げさではなく、原発広告は世界でも見られない醜悪な事例です。もう、2度と福島第一原発事故を起こさないためにも、誰かが整理・分類しなければなりません。
+東電の福島第一原発事故で、国土の一部が半永久的に失われたのですから、決して風化させてはいけない。今日、安倍晋三首相は、原発の再稼働を急いでいますが、その前に、立ち止まってじっくり向き合うべき現実があるはずです。今も10万人の被災者が家に戻ることができないのに、どうして再稼働なのか。
+福島第一原発事故では、誰も責任を問われず、訴追されていないのです。あれだけの大惨事を引き起こしながら、責任の所在がうやむやになっているという大問題が残っています。根本的におかしい。もとより地震大国の日本で、再び原発事故が起きたら、国が破滅してしまうでしょう。国策と言いながら、“原発のゴミ”である放射性廃棄物の処分問題も、まったく解決していないままです。
+現在、ある大学の先生と組んで原発広告をデータベース化する計画を進めています。具体的に詰めていくのはこれからですが、最終的には誰でも見られるような使い勝手のよいデータベースにしたい。過去の事例と現在進行中の事例を扱います。これまでは私1人、または国際環境NGO(非政府組織)のグリーンピース・ジャパンのスタッフなどに手伝ってもらいましたが、網羅的かつ徹底的なものにするためには、もう少し組織的に進めたい。原発広告の問題を専門に扱うNPO(非営利組織)も立ち上げる予定で動いています。
+原発広告は、15年の夏頃から、復活してきました。今では、かつてのように「原発は絶対安全です」とは言えなくなっていますが、再稼働の動きに合わせるように、被災者の神経を逆なでする原発広告が登場しています。私は、電通や博報堂が潰れても構わないと言っているのではありません。広告代理店には、“広告を通して、世の中を楽しくする”という役割があります。だから、もうちょっと真剣に考えるべきだと訴えたいのです。これからもツイッターやフェイスブックなどのSNSを使って、原発広告の問題点を指摘していきます。
http://diamond.jp/articles/-/91823

トリチウム汚染水が80万トンもあり、増える一方というのは、確かに由々しい問題だ。凍土壁の効果もまだこれからだ。「希釈後海洋放出」で薄められたとしても、総量の問題は極めて長い年月をかけてゆく必要があるのだろう。
黒川氏らの報告が指摘した「規制の虜」は、排ガス不正でも見られる我が国の官民のもたれ合いの典型例である。シビアアクシデントへの「対策を実行していたら、福島第一原発事故はギリギリのところで防げた可能性もある」、『日本の「リーダーたち」にとっては、「不都合な真実」は「存在しない」か「記録等がなくて確認できない」ことが多い。「国民を欺いている」と海外で言われても、しかたのないことであろう』、などの指摘は噛み締める価値がある。『国会では「実施計画」の討議すら満足に行われていない』というのも情けない限りだ。自民党はともかく、原発政策の腰が座ってない民進党も頼りないものだ。政府としてのきちんとした総括がないまま、再稼働に突き進むだけでなく、免震重要棟を川内原発では再稼働後に、建設計画を撤回、玄海原発でも新設計画を見直すのを放置している安部政権は罪が重い。『事故の背景には日本社会のあり方が浮かびあがる。事故は「氷山の一角」であり、氷山の下には「規制の虜」「三権分立の機能不全」「民主主義の貧困」など、日本の統治機構の問題が数多く存在する』との黒川氏の危機感は全く同感である。さらに、同氏は触れていないが、「国会事故調」報告をマスコミが、本筋よりも、官元首相の行動に焦点を当てる極めて政治的な形で取上げたのも、「原子力ムラ」の完全復活を反映しているのだろう。
本間龍氏の広告代理店からみた指摘も興味深い。『原発プロパガンダは、一方的な主張を流し続けることにより国民を洗脳してミスリードしてきたことから、大きな危険性を孕んでいるものなのです』、『原発広告は“騙し”』、『原発広告の目的は、・・・広告費という形に変えて賄賂を渡すことにありました』、などはその通りだろう。博報堂が、当初は消費者金融やパチンコのテレビCMはやらないと「骨」があったというのは、初めて知った。なお、日本原子力産業協会の会員は、427社で以下のリンクで見られる。
http://www.jaif.or.jp/about/member/list/
明日は、原発問題(その5)東電第三者検証委員会報告書 を取上げる予定である。
タグ:原発プロパガンダは、一方的な主張を流し続けることにより国民を洗脳してミスリードしてきたことから、大きな危険性を孕んでいるものなのです 福島原発「国会事故調」元委員長の告発!「日本の中枢は、いまなおメルトダウンを続けている」 IAEA 、「日本の原発ではシビアアクシデント(過酷事故)は起こらない」という虚構 その対策を実行していたら、福島第一原発事故はギリギリのところで防げた可能性もある 玄海原発 電通と原発報道 戦後の日本で最も成功したプロパガンダ 原発プロパガンダ 「原発広告」の欺瞞を元博報堂の営業マンが激白 『原発プロパガンダ』の著者・本間 龍氏に聞く ダイヤモンド・オンライン 日本を支えている産官学のコアの部分が、メルトダウンしていることへの危機感。私は警鐘を鳴らさずにはいられない 日本社会のエスタブリッシュメント(既成勢力)にとってあまりにも都合の悪いことばかり書いてある 清水正孝 免震重要棟の新設計画を見直す考えを明らかにしている 免震重要棟の建設計画を、再稼働後に撤回 川内原発 、日本の「リーダーたち」にとっては、「不都合な真実」は「存在しない」か「記録等がなくて確認できない」ことが多い 深層防護 燃料を満載したジャンボジェット機が原発に突っ込んできたらどうなるかについて 、「規制の虜」に陥った「人災」 揺り戻しが起きている原発政策をみていると、日本の未来に著しい危機を感じている エリートたちによる人災 国会事故調委員長 現代ビジネス 黒川清 タンクに保管されている汚染水の総量は80万トン トリチウム 希釈後海洋放出 トリチウム水タスクフォース 現実味帯びる「トリチウム汚染水」の海洋放出 福島原発タンク1000基に貯まる最大の難題 不都合な真実 福島第一原発事故は徐々に風化 東洋経済オンライン (その4)「トリチウム汚染水」問題、福島原発「国会事故調」元委員長の告発、「原発広告」の欺瞞 もし、あれがなかったらと思いますと、ゾッとするくらいのことでございます 過去40年間続いてきた“原発の安全神話キャンペーン”などは、正にプロパガンダだからです 事故の反省をすべて消し去ろうとしているように見える。このままでは、同じ過ちを繰り返しかねないように思える 日本の脆弱さは、世界にバレていた 原発問題
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