SSブログ

原発問題(その5)東電第三者検証委員会報告書 [経済政策]

昨日に続いて原発問題を取上げよう。 今日は、(その5)東電第三者検証委員会報告書 である。

先ずは、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が6月17日の同氏のブログに掲載した「「マムシの善三」、東電「第三者委員会」でも依頼者寄りの”推認”」を紹介しよう。
・昨日(6月16日)、東京電力が設置した「福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告に関する第三者検証委員会」の検証報告書が公表され、委員全員による委員会の記者会見が行われた。 3人の委員の一人が、舛添要一東京都知事の「第三者調査」で厳しい批判を浴びた元東京地検特捜部副部長の佐々木善三弁護士(現役時代のあだ名が「マムシの善三」)だ。
・委員長の田中康久弁護士は、元仙台高裁長官。このような方を委員長に担ぐ場合、委員長は、調査結果に大所高所から「お墨付き」を与える立場で、実質的な調査は、別の調査担当弁護士が総括するのが通例だ。 今回の「第三者検証委員会」の調査も、佐々木善三氏が総括したとみて間違いないであろう。記者会見でも、重要な事実関係についての質問には、佐々木氏が答えていた。
・問題は、その調査結果の内容である。 そこには、舛添氏の「第三者調査」と同様に、極めて重大な問題がある。 報告書では、当時の清水正孝社長が「首相官邸からの指示」として広報担当者に伝えていたことに関して、 清水社長が官邸側から、対外的に『炉心溶融』を認めることについては、慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される。 と書かれている。表現としては、「清水社長の理解」についての「推認」だが、その後、 この点につき、当第三者検証委員会は、重要な調査・検証事項の一つと捉え、清水社長や同行者らから徹底したヒアリングを行ったが、官邸の誰から、具体的にどのような指示ないし要請を受けたかを解明するには至らなかった と書かれていることからすると、「官邸からの指示ないし要請はあった」と「推認」されるが、「官邸の誰がどのように指示したかが特定できなかった」という趣旨であることは明らかである。
・実際に、この検証委員会報告書公表についての報道では、「官邸からの指示」が重く扱われている(日経新聞6月17日朝刊「指示、官邸の意向か」「官邸の圧力未解明」等)。 そして、報告書では、その後の記述で、 重要な事柄をマスコミ発表する際には 事前に官邸や保安院の了解を得る必要があり、対外的に「炉心溶融」を肯定する発言を差し控えるべきとの認識が、東電社内で広く共有されていた可能性が濃厚である。
・本件事故当時の原災マニュアルに「炉心溶融」の判定基準が記載されていたことを知っていた社員もいたが、技術委員会において「炉心溶融」 や「メルトダウン」の定義・判定基準が問題となっているという事実を知らず、また、原子炉の物理的現象を示す言葉としての「炉心溶融」に定義がないこと から、技術委員会への対応が社内において問題視されることもなかった。
・平成 23 年 3 月 18 日、新潟県知事に対する東電社員らの説明の際に、「炉心溶融」を否定する内容と受け止められる説明を行ったものと判断し得る。しかし、前記のとおり、当該社員らが、意識的又は意図的にそのような説明を行ったものとは認められなかった。 東電が技術委員会に対して、「炉心溶融の用語の定義がない」 旨誤った説明をしていたことは明らかである。その説明が不正確かつ不十分 なものであったことは明らかであるが、それが故意ないし意図的になされたものとまでは認められない。 などと、述べている。
・東電側には、「炉心溶融」の隠ぺいの意図はなく、技術委員会への対応は不適切だったが、それも原災マニュアルの判定基準を知らなかっただけで悪意ではない、東電の側ではなく、「炉心溶融」という言葉を使わないように指示した当時の(民主党政権の)「官邸」が悪かったのだという、思い切り「東電寄り」の認定を行っているのである。
・「第三者委員会」として、独立かつ中立的な立場で行われた調査とは思えない。 そもそも、東電が「炉心溶融」という用語を意図的に避けていた疑惑が生じた発端は、3月 14 日夜の記者会見に臨んでいた武藤副社長が、その席上、東電の広報担当社員から、『炉心溶融』などと記載された手書きのメモを渡され、「官邸から、これとこの言葉は使わないように」との耳打ちをされたことが記者会見のテレビ映像に残されていることだった。
・報告書は、テレビ映像に残された「手書きのメモを示しながらの耳打ち」と、それを行った広報担当社員が、その指示を清水社長から直接受けたと説明していることを根拠に、「官邸の指示ないし了承」を「推認」している。 つまり、客観的に明らかな「記者会見での耳打ち」の事実、つまり、調査の前提事実だけで、「官邸からの指示」という依頼者の東電にとって有利な事実を認定しているのであるが、この「記者会見での耳打ち」を「官邸からの指示」に結びつけることには、いくつかの重大な疑問がある。
・第一に、「官邸からの指示」について、清水社長に対しては、複数回のヒアリングを実施し、同社長に説明を求めたが、同社長の記憶が薄れている様子であり、明確な事実を確認できなかった。また、清水社長に同行した小森常務らのヒアリングの結果からも、明確な事実を確認するには至らなかった、としているが、清水社長は、震災の2日後の3月13日に記者会見を行って以降、姿を見せなくなり、めまいや高血圧で入院するなどして、公の場に姿を見せたのは事故から1ヶ月目の4月11日だった。つまり、清水社長が行った福島原発事故への対応は、極めて僅かなものでしかない。そのような清水社長が、「炉心溶融」という言葉を使わないように官邸から指示を受けたのだとすれば、それは強烈に印象に残っているはずだ。「記憶が薄れる」などということはありえない。重大な原発事故を起こした企業の経営トップでありながら、長期にわたり公の場に現れないなど無責任極まりない対応を行った清水社長の説明は、到底鵜呑みにすることはできないはずだ。
・第二に、この時広報担当者は、なぜ、武藤副社長に手書きのメモを渡す際に、わざわざ、マイクに音声が残るような「耳打ち」を行ったのであろうか。もし、本当に官邸側からそのような指示があったとすれば、そのようなことは、むしろ、絶対に秘匿しようとするのが通常のはずだ。それを、手書きのメモで伝えるだけではなく、わざわざ声に出して「官邸からの指示」のことを伝えるだろうか。なぜ、そのような無神経な「耳打ち」が行われたのか、そのような武藤副社長への伝え方も清水社長が意図的に指示したのではないかという疑問もある。
・これらからすると、「炉心溶融」という言葉を避けるというのは、清水社長自身の意向で、それを官邸側に責任を押し付けるために、「官邸からの指示」の事実を「創作」した疑いもないとは言えない。その点も含めて、十分な事実解明を行わなければ、「官邸からの指示」など「推認」できないはずだ。
・私も、原発事故に関連する企業不祥事に関して、第三者委員会委員長として調査検討を行い、報告書を取りまとめたことがある。福島原発事故が発生した2011年に表面化した、玄海原発再稼働をめぐる県民説明会に対して九州電力社員が組織的に行った「やらせメール」問題に関して九州電力が設置した第三者委員会だった。
・この問題では、第三者委員会の中間報告書で、古川康佐賀県知事が九電幹部と会談した際の発言が発端となって、組織的な「やらせメール」の送付が行われたことを認定した。その会談での発言については会談に同席した九電幹部のメモがあり、しかも、委員長の私が直接、古川知事に発言の外形的事実を確認し、古川知事は、自ら記者会見を開いて、その事実を認めていた(ただし、「再稼働賛成の投稿を求めたのは『真意』ではなかった」としていた。)。それでも、その古川知事発言を第三者委員会報告書に記載することについて九州電力側が反発し、報告書公表後、第三者委員会との対立が生じた。(拙著【第三者委員会は企業を変えられるか】毎日新聞社) 古川知事の側の「真意」がどうであれ、九州電力側に知事発言が伝わり、それが発端となって組織的な「やらせメール」が送信されたことは客観的事実なのであるから、それを、問題行為の動機・背景に関する重要な事実として調査結果に含めるのは当然だろう。
・しかし、そのような不祥事の当事者の企業にとって外部者の行動・発言を、当該組織が設置した第三者委員会で認定する際は、それ自体が、その外部者に影響を与える可能性があり、特に相手が政治家の場合は、重大な政治的影響を生じさせる可能性があるので、事実認定を慎重に行わないといけない。だからこそ、古川知事への確認、佐賀県職員からのヒアリング等も行い、慎重に事実認定を行った。
・それと比較すると、今回の東京電力の第三者委員会のやり方は、あまりに粗雑だ。 そもそも、知事発言について九電幹部のメモという客観的証拠があり、知事も認めていた九電「やらせメール」とは異なり、「清水社長から広報担当者への指示」という間接的な事実があるだけで、「官邸からの指示」に関する直接的証拠は全くない。 このような証拠関係で「官邸からの指示」を「推認」するというのは、それによって、依頼者の東京電力に有利な認定を行おうという意図がなければ考えられない。
・舛添氏の問題で、あれだけ厳しい批判を受けた佐々木弁護士が、その「第三者調査」も大きな原因となって都知事辞任に追い込まれた直後に、別の問題の「第三者調査」について、同様に依頼者寄りの事実認定を行い、平然と記者会見で説明していることには、驚きを禁じ得ない。長谷川豊氏のブログ【最悪の幕引きとなった舛添狂奏曲】でも、舛添氏を担いだ都議会与党は、次の都知事候補のことなどで騒いだりせず、舛添氏の問題についての責任を感じて、1回お休みをしたらどうかと述べているが、それは、第三者調査で厳しい批判を受けた佐々木善三氏についてもいえることだろう。
・このような「第三者調査」をのさばらせておいたのでは、弁護士の第三者調査そのものへの信頼が著しく損なわれてしまうことになりかねない。
https://nobuogohara.wordpress.com/2016/06/17/%e3%80%8c%e3%83%9e%e3%83%a0%e3%82%b7%e3%81%ae%e5%96%84%e4%b8%89%e3%80%8d%e3%80%81%e6%9d%b1%e9%9b%bb%e3%80%8c%e7%ac%ac%e4%b8%89%e8%80%85%e5%a7%94%e5%93%a1%e4%bc%9a%e3%80%8d%e3%81%a7%e3%82%82%e4%be%9d/

次に、ジャーナリストの町田徹氏が6月21日付け現代ビジネスに機構した「東電の原発再稼働だけは認めるな!~第三者委員会「報告書」を深読みして分かった変わらぬ「無責任体質」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「炉心溶融」と言うなとの指示
・未曽有の原子力事故となった福島第一原発事故から5年余りが経過しても、東京電力は相変わらず非常識で、依然として自浄能力を醸成できていない。そのことを浮き彫りにする調査報告が先週木曜日(6月16日)に公表された。 皮肉にも、その事実を裏付けたのは、事故当時、原子炉内の核燃料が溶け落ちる「炉心溶融(メルトダウン)」の公表が2ヵ月以上遅れた問題について、東電が調査を委託した「第三者検証委員会」と称する組織の報告である。
・同報告は、問題の原因を「(官邸から「炉心溶融」の言葉を使わないように言われた)清水正孝社長の直接の指示」「(社長の指示が)東電社内で広く共有されていた」としながら、その結果生じたメルトダウン隠しを「故意ないし意図的と認めがたい」などと、我田引水の結論に導く内容だった。
・この報告に、柏崎刈羽原発の再稼働問題を抱える、新潟県の泉田裕彦知事は「(これまで同県の)技術委員会に虚偽の説明をしていた。極めて遺憾」とコメント。
・メルトダウン隠しの張本人と名指しされた首相官邸側(当時)は、菅直人元首相や枝野幸男元幹事長が「(参議院議員選挙の)選挙妨害の疑いもある」などと反論する騒ぎになった。
・折しも、高浜原発の運転差し止めを命じた仮処分に対する関西電力の執行停止申し立てを大津地裁が却下したり、先の熊本地震の知見を原発の安全基準に加える要求が原子力規制委員会の前委員から出されたり、原発再稼働を巡る議論がここへきて再びヒートアップする様相を呈している。 来月に投票が迫った参議院議員選挙の争点としても、クローズアップされそうな雲行きになってきた。
・不祥事を起こした企業が、事実関係の調査と称して時間を稼ぎ、客観性を装って自らの主張を盛り込むために設置する「第三者委員会」。もっともらしい「第三者」というネーミングとは裏腹に、その組織には常に胡散臭さが付きまとう
▽客観的な「第三者」のはずがない
・先週、辞任に追い込まれた舛添要一前東京都知事のケースでも、前知事が繰り返した「第三者の厳しい目」という言葉とはかけ離れた生温い報告に呆れた読者は多かったはずである。 だが、ちょっと見方を変えれば、胡散臭いのは当たり前なのだ。 不祥事を起こした主体が、調べてほしい内容や期間を設定し、報酬を支払うことで雇える弁護士らを使って調査の体裁を整えるのだから、そもそも、客観的な「第三者」のはずがない。
・それでも、1990年代の規制緩和によって人数ばかり増えてしまった弁護士のセンセイ方にとっては、貴重なビジネスチャンスなのだろう。少しでも体裁を整えて登場機会を増やそうと考える向きが多いらしい。 日本弁護士連合会では、2010年に「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」なるものを設けて、これをベストプラクティス(最善の実践)とし、権威づけを図る動きはある。だが、それもなかなか浸透していないのが実情だ。
・設置時(3月9日)の発表によると、今回の「福島第一原子力発電所事故に係る通報・報告に関する第三者検証委員会」は、福島第一原発事故を巡る通報や報告について検証する目的で、東電が設けたものだ。  メンバーは、委員長が判事出身の弁護士田中康久氏、委員は検察官出身の弁護士佐々木善三氏、弁護士の長﨑俊樹氏の3人である。 特に、「事故当時の社内マニュアルに則って、炉心溶融を判定・公表できなかった経緯や原因」「新潟県技術委員会に事故当時の経緯をご説明する中で誤った説明をした経緯や原因」を解明することを使命としていた。 背後に、柏崎刈羽原発の再稼働問題を抱え、早くから「ウソをつく会社」と東電への不信を表明してきた泉田裕彦新潟県知事の真相解明要求があったからだ。
▽「この言葉は使わないように」と耳打ち
・しかし、今回の東電・第三者検証委員会が、前述の日弁連のガイドラインに合致していないことは明らかだ。 なぜならば、日弁連のガイドラインが第三者委員会の調査手法として「委員及び調査担当弁護士は、関係者に対するヒアリングが基本的かつ必要不可欠な調査手法であることを認識し、十分なヒアリングを実施すべきである」と規定しているにもかかわらず、東電の第三者委員会は「権限がない」(東電・第三者委員会の田中康久委員長)という理由で、“メルトダウン隠しの張本人”と名指しした当時の「首相官邸」関係者にまったくヒアリングしなかったからだ。
・東電・第三者委員会の報告は表紙や目次を含めてA4用紙75枚に及ぶ。それによると、事故の発生から3日が経った2011年3月14日、清水社長は、記者会見に臨んでいた武藤栄副社長に、広報担当者を通じて「炉心溶融」と記したメモを渡させて、「首相官邸からの指示により、この言葉は使わないように」と耳打ちさせたという。
・この記述が事実ならば、炉心溶融(メルトダウン)隠しの核心として徹底的に追及すべきポイントである。  当時、事故の深刻さを裏付ける炉心溶融に至っているかどうかは、世間やメディアの大きな関心事の一つだった。後に広報担当を外れる原子力安全・保安院(当時)の広報官が事故翌日の3月12日の会見で炉心溶融を半ば既定事実として認めていたし、今回の報告でも小森東電常務(当時)が可能性を否定しなかったことを認めているとしている。
・実は、筆者も本コラム(2011年3月15日付『「巨大津波対策不足」から続く誤算が招いた原子力発電「安全神話の危機」』)で「(福島第一原子力)発電所では、1号機と3号機が、観測史上最悪の東日本巨大地震に伴う「想定外の津波」の直撃を受けて、冷却機能を失い、原子炉の心臓部が損なわれる炉心溶融(メルトダウン)を起こした」と記した。他のメディアと同様に、独自の取材を踏まえて、事故の大きさの象徴として、炉心溶融の事実を迅速に伝える義務があると判断したのである。
▽「事故」と呼ばずに「事象」と言い換える
・その障害になったのが東電だ。原子力安全・保安院(当時)の広報官の交代の頃から、1号機については、その年の5月15日まで、2、3号機については同24日まで、「数値的な裏付けがない」「確認ができない」と強弁して、「炉心溶融」を「炉心損傷」と言い換える「事実の矮小化」を同社が展開したのである。つまり、「炉心溶融」と書くのは誤報だと言わんばかりの広報対応に、途中で切り替わったのである。
・今回の報告で、第三者委員会は、「耳打ちした担当者が清水社長から指示を直接受けた」としており、それを理由に、根拠が薄弱なまま、「清水社長が官邸側から要請を受けたと理解していたと推認される」と断じている。
・しかし、ここに論理の飛躍があることは明らかだろう。当の清水社長は「記憶が薄れている様子」で、「官邸の誰から、どのように指示を受けたか解明するには至らなかった」というからである。 この事実関係は決していい加減に済ませてよい問題ではない。当たり前だが、事実を追及する者として、弁護士ならば日弁連のガイドラインにも則って、官邸関係者からのヒアリングを行って事実確認をすべきところである。
・ところが、東電・第三者委員会は「権限がない」(田中委員長)という言い訳を持ち出した。なんと、一切、官邸関係者のヒアリングをしなかったというのだ。それにもかかわらず、「清水社長が官邸側から要請を受けたと理解していたと推認される」と、責任を官邸に転嫁する結論を導いたのである。 3人の委員がこのレベルの仕事ぶりで「弁護士」の肩書を使ったことを、他の弁護士諸兄が問題にしないとすれば、驚きだ。いずれにせよ、東電・第三者委員会は、「第三者委員会」の体を成していない。
・他の部分を見ても、調査に3ヵ月余りの時間をかけた割には、この「検証結果報告書」は、お粗末だ。ほとんどの部分がすでに明らかになっている事実を踏襲し、中途半端な議論に終始している。 例えば、東電は福島第一原発事故を「事故」と呼ばずに、かねて「事象」と呼び変えてきた。その言い換えは、今回の報告でも随所に踏襲されている。筆者を含むメディア関係者の間では、この呼び替えこそ、事態の深刻さを覆い隠す東電の隠ぺい体質を端的に示すものとの認識がほぼ定着している。他にも、あの当時、事故を巡る東電の不親切で、過少で、遅過ぎる通報や公表は、枚挙に暇がなかった。
▽再発防止策のない不思議な調査報告書
・ところが、今回の検証結果報告には、そうした事実の然るべき検証も無ければ、責任の所在の追及、根深い体質問題の解明もみられない。これでは、「第三者委員会報告」と称するならば盛り込むべきとされる、まともな再発防止策が導き出せる道理がない。 実際、最後の「第9 提言等」では、当時、福島第一原発で高い放射線が確認されたにもかかわらず、東電が通報しなかった問題を取り上げながら、「(正確な通報をする)姿勢を徹底する必要がある」としただけだ。なぜ、それが行われず、会社がどう改めるべきか、どうすれば改められるかといった点について、触れない報告にとどまった。
・新潟県への虚偽報告についても、「社内の情報共有が不十分だった」としただけで、唐突に「故意ないし意図的と認めがたい」と結論付けた。しかし、同報告には、「対外的に『炉心溶融』を肯定する発言を差し控えるべきとの認識が、東電社内で広く共有されていた可能性が濃厚である」と記している。 それならば、「故意ないし意図的」でも、「組織的」でもないという根拠を示すべきだが、そういった記述はなく「故意ないし意図的と認めがたい」と結論付ける実に不思議な調査報告なのである。
・さらに、各種の通報問題については「過酷事故を想定した訓練を実施していれば、適切な通報がなされた可能性もある」と結論付けただけなのである。 繰り返すが、不適切な通報が多発した原因や風土、責任の追及は存在しない。なんとも無責任な調査報告の印象を免れない。これでは、言い訳に終始した当時の会社の情報開示姿勢とほとんど変わりがない。
・こんな委員会を設置する会社が、再び柏崎刈羽で原発を再稼働しようと試みるのは、論外ではないだろうか。他の電力会社を東電と同視して一般的な原発再稼働問題に絡めるのは理不尽かもしれないが、東電の原発再稼働だけは決して認めるべきではない。それが、東電・第三者検証委員会報告を読んでみての率直な感想である。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48960

本件についての日経新聞などの報道は、読んでもさっぱり理解できないような内容だったが、郷原氏と町田氏の記事で、漸く「腹に落ちた」。確かにこれは「第三者検証委員会」とはとうてい主張できないような、完全に東電側に立った報告である。郷原氏が指摘するように、『舛添氏の問題で、あれだけ厳しい批判を受けた佐々木弁護士が、その「第三者調査」も大きな原因となって都知事辞任に追い込まれた直後に、別の問題の「第三者調査」について、同様に依頼者寄りの事実認定を行い、平然と記者会見で説明していることには、驚きを禁じ得ない』、『清水社長が、「炉心溶融」という言葉を使わないように官邸から指示を受けたのだとすれば、それは強烈に印象に残っているはずだ。「記憶が薄れる」などということはありえない』、『「炉心溶融」という言葉を避けるというのは、清水社長自身の意向で、それを官邸側に責任を押し付けるために、「官邸からの指示」の事実を「創作」した疑いもないとは言えない』、といのはその通りだろう。『広報担当者は、なぜ、武藤副社長に手書きのメモを渡す際に、わざわざ、マイクに音声が残るような「耳打ち」を行ったのであろうか。もし、本当に官邸側からそのような指示があったとすれば、そのようなことは、むしろ、絶対に秘匿しようとするのが通常のはずだ。それを、手書きのメモで伝えるだけではなく、わざわざ声に出して「官邸からの指示」のことを伝えるだろうか。なぜ、そのような無神経な「耳打ち」が行われたのか、そのような武藤副社長への伝え方も清水社長が意図的に指示したのではないかという疑問もある』、というのも、どう考えても不自然な「芝居」だ。
町田氏が報告書の背景として指摘する、『泉田裕彦新潟県知事の真相解明要求があったからだ』も、その通りなのだろう。肝心の官邸の指示についても、『当の清水社長は「記憶が薄れている様子」で、「官邸の誰から、どのように指示を受けたか解明するには至らなかった」』とは、なんとお粗末な言い訳だろう。また、『原子力安全・保安院(当時)の広報官が事故翌日の3月12日の会見で炉心溶融を半ば既定事実として認めていたし、今回の報告でも小森東電常務(当時)が可能性を否定しなかったことを認めているとしている』については、広報官はすぐに更迭されたようだ。この報告書は、無論、東電の意向だけでなく、民進党を叩きたい安部政権の意向も反映していると思われる。
明日の金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を!
タグ:原発問題 (その5)東電第三者検証委員会報告書 郷原信郎 「マムシの善三」、東電「第三者委員会」でも依頼者寄りの”推認” 舛添要一東京都知事の「第三者調査」で厳しい批判を浴びた 佐々木善三弁護士 マムシの善三 清水正孝社長 首相官邸からの指示 官邸の誰から、具体的にどのような指示ないし要請を受けたかを解明するには至らなかった 重要な事柄をマスコミ発表する際には 事前に官邸や保安院の了解を得る必要 当時の(民主党政権の)「官邸」が悪かったのだという、思い切り「東電寄り」の認定を行っているのである 独立かつ中立的な立場で行われた調査とは思えない 武藤副社長が、その席上、東電の広報担当社員から、『炉心溶融』などと記載された手書きのメモを渡され、「官邸から、これとこの言葉は使わないように」との耳打ちをされたことが記者会見のテレビ映像に残されていることだった。 客観的に明らかな「記者会見での耳打ち」の事実、つまり、調査の前提事実だけで、「官邸からの指示」という依頼者の東電にとって有利な事実を認定 いくつかの重大な疑問 同社長の記憶が薄れている様子であり、明確な事実を確認できなかった 清水社長に同行した小森常務らのヒアリングの結果からも、明確な事実を確認するには至らなかった 強烈に印象に残っているはずだ。「記憶が薄れる」などということはありえない 広報担当者は、なぜ、武藤副社長に手書きのメモを渡す際に、わざわざ、マイクに音声が残るような「耳打ち」を行ったのであろうか。もし、本当に官邸側からそのような指示があったとすれば、そのようなことは、むしろ、絶対に秘匿しようとするのが通常のはずだ 、「炉心溶融」という言葉を避けるというのは、清水社長自身の意向で、それを官邸側に責任を押し付けるために、「官邸からの指示」の事実を「創作」した疑いもないとは言えない 弁護士の第三者調査そのものへの信頼が著しく損なわれてしまうことになりかねない 町田徹 現代ビジネス 東電の原発再稼働だけは認めるな!~第三者委員会「報告書」を深読みして分かった変わらぬ「無責任体質」 我田引水の結論 客観的な「第三者」のはずがない 原子力安全・保安院(当時)の広報官が事故翌日の3月12日の会見で炉心溶融を半ば既定事実として認めていたし 今回の報告でも小森東電常務(当時)が可能性を否定しなかったことを認めている 「事故」と呼ばずに「事象」と言い換える 再発防止策のない不思議な調査報告書 んな委員会を設置する会社が、再び柏崎刈羽で原発を再稼働しようと試みるのは、論外ではないだろうか
nice!(11)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 11

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0