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尖閣諸島問題(その4)接続水域航行”騒ぎ” [外交]

尖閣諸島問題については、2月18日に取上げたが、今日は、(その4)接続水域航行”騒ぎ” である。

先ずは、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が6月16日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国軍艦の接続水域航行への抗議は自分の首を絞める行為」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今月9日未明、中国軍艦が尖閣諸島付近の接続水域に入ったことに対し、日本政府は午前2時に中国大使を外務省に呼び抗議するなど激しい反応を示した。
・だが領海の外側に設けられる接続水域は公海であって、どの国の軍艦も自由に航行できる。日本政府の対応はまるで自宅の前の公道を他人が通行したのに怒って、深夜にどなり込むクレーマーじみた行動だ。もしこれが先例となれば、日本の艦船が他国の接続水域を通ることを妨げられても文句は言えなくなる。政府要人もメディアも海洋法条約に関する知識を欠き、それを知っているはずの外務官僚は政治家に諫言せず、胡麻すりで保身をはかるから、こうした騒ぎになるのだろう。
・接続水域(Contiguous Zone)は元は1920年に禁酒法を制定した米国が酒類の密輸入を防ぐために設けたものだ。当時の慣習的国際法では領海は3海里(5.5km)だったから、当時英国自治領だったカナダなどから酒を積んだ船が来て、海上では目と鼻の先の3海里沖に投錨し、買い手の小船を待っていても米国沿岸警備隊は手を出せない。そこで海岸線から12海里(22km)を「接続水域」と宣言し、密輸の取り締まりを行うことにした。だが領海外で警察権を行使することは本来できないから、例外的措置として英国など関係国の了承を得て行った。
・英国、日本などの「海洋国」にとっては航海や漁業を自由に行えることが望ましいから、18世紀の大砲の最大射程を根拠とした領海3海里の慣行が保たれたが、そうでない「沿岸国」にとっては他国の漁船が沿岸に来て乱獲したり、軍艦が目の前の海で我が物顔に振る舞うのは不利、不愉快だから領海を拡大したり海上の管轄権を求めようとし、第2次世界大戦前から論争が起きていた。
・この戦争で海洋の覇者となった米国は大海軍国ではあっても漁業、海運など民間の海上活動はさほど振るわず「沿岸国」に近いから、終戦直後の1945年9月にメキシコ湾の海底油田を開発するため、一方的に領海幅を3海里から12海里に拡大し、米国領土から海底にのびる「大陸棚」の管轄権を宣言した。 また1976年には日本、ソ連などの漁船団のアラスカ沖での操業を防ぐため200海里(370km)の漁業専管水域を設定した。
・海洋の支配者である米国がこんな模範を示したから、多くの沿岸国は「得たりやおう」とそれに続いた。英国と日本は3海里の原則を守ろうとしたが多勢に無勢で1982年に作られた国連海洋法条約で、領海は12海里と定められ、さらにその外側12海里が「接続水域」となり、また海岸から200海里の「排他的経済水域」も認められた。
▽中国軍艦の行動に抗議する法的根拠はなかった
・この条約は米国が行ってきたことを追認するものだが、米国の石油業界はそれにも難色を示し、米国は署名しなかった。米国は中国の南シナ海での人工島造成などを「国際法違反」と非難するが、自国は海洋法条約に加わっていないのだから変な話だ(日本では「米国議会が批准を認めなかった」との記述も散見されるが、米政府が署名を拒否した)。
・この条約第33条の「接続水域」の規程は、元来の目的が酒の密輸防止だから、沿岸国は「自国の領土又は領海内における通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令の違反を防止すること」および自国の領土又は領海内で行われた「法令の違反を処罰すること」ができる、としている。
・日本の接続水域を航行する外国の民間船舶が密輸をはかったり、密航者を運んだり、重大な感染症患者を乗せて日本に向かっている疑いがある場合には停船させて調べることができるが、軍艦に対してはたとえ領海内であっても沿岸国の管轄権は及ばない。
・まして今回のケースでは接続水域に入った中国東海艦隊所属のフリゲート「馬鞍山」(3963t)は領海外の公海で行動していたから、どこをどう走ろうが自由であり、日本に向かって密輸品を運んだり、密航者や伝染病患者を日本に連れて来るような状況ではなかったから、接続水域に入った、として抗議する法的根拠はなかった。
・このとき最初に尖閣諸島周辺の接続水域に入ったのは南シナ海での東南アジア諸国連合(ASEAN)の海軍共同演習と5ヵ国の親善訪問を終えてウラジオストクに戻る途中のロシアの大型駆逐艦ヴィノグラードフ(8500t)と給油艦、航洋曳船各1隻で、8日午後9時50分頃、南から来て魚釣島南東で接続水域に入り北東に進んで9日午前3時5分に大正島北方で接続水域を出た。これに対しては護衛艦「はたかぜ」(5900t)が追尾して監視に当たった。
・一方、中国のフリゲート「馬鞍山」は北から南下して来て、9日0時50分頃久場島の北方で接続水域に入り、大きく左にUターンしてロシア艦に接近、併走したが、ロシア艦が接続水域から出ると、3時10分に接続水域から出て去った。これには護衛艦「せとぎり」(4950t)が付いて監視した。
・この「馬鞍山」の動きを見ると、中国海軍は無線傍受か何かの偵察手段により「ヴィノグラードフ」などのロシア艦3隻と日本の護衛艦が尖閣諸島付近で行動していることを知り、様子を見るため「馬鞍山」を接近させたが、特に異常はないため反転して尖閣水域を離れたもの、と考えられる。ロシア艦が特に速度を落として中国艦と待ち合わせたような様子はなかった。
・ロシア軍艦がウラジオストクと東南アジアを往復する際には、フィリピンの北のバシー海峡と対馬海峡を結ぶ最短距離であるこのコースを取ることはよくあり、接続水域も公海であって外国の艦船が通ることは自由だから、今回もロシアに対しては抗議はしなかった。
▽真夜中にどなり込むクレーマーじみた行動
・ところが、中国軍艦が初めて接続水域に入ったことで日本政府は緊張し深夜に「国家安全保障会議」を開いて対応を協議し、外務省の斎木昭隆事務次官は9日午前2時に程永華駐日中国大使を外務省に招いて「一方的に緊張を高める行為だ」と抗議して同水域から直ちに出るように求めた。 「中国は尖閣諸島の領有権を主張しているから、中国軍艦が接続水域を航行することは緊張を高める行為」という説明だが、どの国が領有していようと接続水域に沿岸国の主権は及ばず、密輸の防止など極めて限定的な目的で管理を許されるだけだから、領有権と接続水域内の航行はほとんど関係がない。まるで自宅前の公道を不仲の人が通ったことに怒り、真夜中にどなり込むクレーマーじみた行動だ。
・実はすべての外国艦船が領海内を通ることも国際法で認められており、海洋法条約の第17条から第32条にかけて「無害通航」の規程がある。ただし外国の艦船が、武力による威嚇や武力行使、兵器を用いた訓練、沿岸国の安全を害するような情報収集、宣伝、調査活動、測量、漁業、通信妨害などを領海内で行うことは禁じられている。 また潜水艦は他国領海を通る際には浮上し旗を揚げなければならないし、外国艦船は沿岸国の海上交通の安全のための法令などに従う必要がある。
・「無害航行」が軍艦にも認められるか否かの論議も一部にあるが、この条約の第30条に、軍艦が領海での通航に関する沿岸国の法令を守らず、順守の要請も無視した場合には直ちに退去することを要求できる、など軍艦の通航を前提にした条文があるから、軍艦にも無害通航は認められるという説が有力だ。だが国によっては軍艦の領海通航には事前の通知や許可を求めている例もある。
・軍艦は他国の領海内でも沿岸国の管轄権を免除され、「無害航行」と認められない行動をした場合でも直ちに退去を求められるだけだ。
・15日午前3時半ごろから約1時間半、中国の情報収集艦と見られる船が鹿児島県の口永良部島と屋久島沖の日本領海を通った。当時、日、米、インドが沖縄東方海域で共同訓練中で、中国艦はインド艦を追尾して日本領海に入りこんだ様子だ。 軍艦も他国の領海を「無害通航」する権利があるが、その際に「沿岸国の防衛又は安全を害することとなる情報収集を目的とする行為」は海洋法条約19条2のCで禁じられている。日本が加わっている共同演習の情報を収集するのはこれに該当する可能性が高く、こちらに関しては抗議するのが妥当だろう。
・だが、領海外の接続水域で、その趣旨に反する密輸などの行為をしていない外国軍艦に対し「直ちに退去」を求めた9日の事案は、海洋法条約に照らして行き過ぎた行為と考える。
▽日本の艦船が将来、同じ憂き目に合う可能性も
・日本政府がこうした行動を取ったことは、他国が将来日本の艦船に対して同じことをしても抗弁できない状況を生むことになる。接続水域も排他的経済水域も、沿岸国の主権下になく、ごく限定的な管理権を認められた公海だから、もし他国が日本の艦艇や漁船、商船の航行を妨害しようとし「緊張を高めるから直ちに退去せよ」と要求した場合、こちらは「法的根拠が無いではないか」と抗議すべきだ。だが「以前貴国もそうした例がある」と言い返えされれば苦しい立場になる。
・日本船籍の商船は減ったとは言え、日本の船会社の支配下にある便宜置籍船を主とする「用船」を含むと日本の外航商船隊は2500隻以上、1億2000万tを擁し、日本はなお有数の海運国だ。海運による輸入量は8億t、輸出は1.6億tで日本の経済だけでなく、国民の生存が海運にかかっている。漁獲高は近年減ったがなお370万tで世界8位、造船は2014年の竣工量が1300万tで第3位だ。
・海洋国である日本にとっては航海の自由が決定的に大事な国益で、公海が広い程好都合だから、英国と共に古来の領海3海里に固執した。だが、その抵抗は空しく、領海幅は拡がり、全ての沿岸国が接続水域と排他的経済水域を設けることになった。大陸棚の定義も拡大され、海洋権益の分け取りが進み、一部の沿岸国は接続水域や排他的経済水域を領海視する動きも見せる。「この形勢では、今世紀中に公海は無くなるのでは」との声も出る。今回日本政府も接続水域を領海同様に扱って、外国軍艦に「直ちに退去せよ」と要求したのは、その傾向を助長する先例になる。
・外務官僚たちは接続水域が領海ではないことは十分承知していたろうから、。
・だが、中央省庁の幹部人事は2014年から内閣人事局が管理し、首相官邸が人事を主導することになったため、官僚は保身、出世第一で権力者に取り入ろうとするから歯止めの役には立たない。戦前に国際連盟脱退や、独伊との同盟を推進した外務官僚、「天皇機関説」の排撃に努めた文部官僚たちもこういう心理状況にあったのか、と分かった気がする。海洋法を知らない政治家が緊張し、興奮しても「そこを通るのは合法です。抗議をする法的根拠はありません」と諫言し「航海の自由」という重大な国益保持に努めた方が、外務省の存在価値を高めただろう
http://diamond.jp/articles/-/93104

次に、6月18日付け日刊ゲンダイ「艦出没で大騒ぎ 安倍自民が煽る「中国脅威論」のペテン」を紹介しよう。
・このところ中国軍艦が日本周辺の接続水域、領海をウロチョロしているせいで、安倍自民はやはりというか、自衛隊の強化を言い出した。永田町界隈では「軍艦の侵入に内心ほくそ笑んでいるんじゃないか」なんてもっぱらだ。
・今月9日には中国海軍のフリゲート艦1隻が尖閣諸島周辺の接続水域に初めて入り、15日には情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部島の沖合で領海に侵入。さらに16日にも情報収集艦1隻が北大東島周辺の接続水域に入っている。 「日本の出方を見るという“挑発”もあるでしょうが、海洋進出を強めている中国にとって、潜水艦のための海底地形図を作成する必要がある。それも目的のひとつでしょう」(防衛省関係者)
・これを受け、自民党は16日の国防部会で、「一気に状況をエスカレートさせる暴挙であり、極めて危険な行為だ」などと大騒ぎ。必要な防衛装備品を速やかに取得し、自衛隊の能力を強化することなどを政府に求める決議を取りまとめた。大塚拓部会長は「中国は国際法を全く理解できていない。危険な行為は断じてやめさせなければならない」などと猛アピールしていたが、意図は見え透いている。
・「中国の動きが激しくなっていることは確かですが、そもそも領海内の航行は沿岸国の平和と安全を害しない限り、国際法上『無害通航』が認められています。安倍自民は自分たちを正当化するために、ことさら中国脅威論をあおっているとしか思えません」と、九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法)がこう続ける。
・「中国は脅威だとわめき散らすことで、日米同盟の強化、憲法違反の安保法制の強行も『それみたことか、われわれは正しい』とでも言いたいのでしょう。かつては北朝鮮脅威論をあおっていたように、自己を正当化するための常套手段です。参院選の公約ではコソコソ隠していますが、憲法改正を狙う安倍首相にとって、このタイミングで中国軍艦が“侵入”してきたことはもっけの幸いでしょう。そして安倍政権に乗っかる大マスコミが大衆の危機感を扇動していく。デマゴギー(悪宣伝)としか言いようがありませんね」
・中谷防衛相は「非常に懸念すべき状況」なんて語っていたが、懸念すべきは、憲法改正に突っ走る安倍の方だろう。有権者は絶対にだまされてはいけない。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/183875

第三に、在米の安全保障戦略コンサルタントの北村淳氏が6月23日付けJBPressに寄稿した「日本の接続水域と領海を航行した中国海軍の狙い 日米の失策が招いてしまった中国の対日「FONOP」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・6月8日から9日にかけて、中国海軍フリゲートが尖閣諸島周辺の日本接続水域内を航行した。そして引き続き15日には、中国海軍情報収集艦(スパイ艦)が口永良部島周辺の日本領海内を航行し、翌日16日には同艦が北大東島周辺の日本接続水域内を航行した。
▽統幕長の声明の数日後にスパイ艦が領海に
・日本政府は、1回目の事案に関しては外務次官が夜中に駐日中国大使を呼びつけて厳重な抗議を行ったが、2回目と3回目の事案に対してはアジア大洋州局長が駐日中国公使に懸念を伝達するにとどめた。 また、1回目の事案を受けて自衛隊のトップである統幕長は(接続水域内航行よりも日本にとってさらに深刻な脅威である)領海内航行といった事態が生じた場合には、中国艦艇に対して断固たる姿勢で対処すると明言した。この統幕長の声明は、「海上警備行動」の発令を防衛大臣に求め海自艦艇や航空機を出動させて中国艦の日本領海内航行を妨害することを意味する。
・しかしながら、このような声明を発した数日後に、中国海軍スパイ艦が実際に日本領海内を航行する事態が生じた。その際、「海上警備行動」は発令されなかったし、海自艦艇や航空機が中国海軍スパイ艦の日本領海内航行を妨げようとする試みもなされなかった。
▽“虎の威”ではなくなりつつある米海軍
・中国海軍スパイ艦が日本領海内を航行する前日の14日、防衛大臣はアメリカ太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官と東京で会談し、東シナ海での活動を活発化させる気配を示している中国海軍艦艇に対して、日米の連携を強化することを確認し合ったばかりであった。
・もっとも、スウィフト司令官にとっての「日米連携」とは、「日米共同訓練などをさらに充実させることによって、日米両海軍の連携を強化させ、その結果として中国海軍に対処していこう」といった米軍側の基本姿勢を意味していた。それに対して日本側は、「アメリカ軍という“虎の威”を借りて中国海軍の動きを抑止しよう」といったこれまで通りの期待を込めての「日米連携」であったようである。
・しかしながら、南シナ海や東シナ海をもはや“ホームグラウンド”としつつある中国海軍にとって、アメリカ海軍はもはや“虎の威”とは映っていない。 アメリカ太平洋艦隊は、中国海軍を“脅かす”目的を持って空母2隻を中心とする強力な艦隊をフィリピン海に展開させていた。それにもかかわらず、中谷防衛大臣とアジア太平洋海域を統括するスウィフト司令官の会談の直後に、中国海軍のスパイ艦が日本の領海内を航行した。そのスパイ艦は、明らかに日本・アメリカ・インド海軍により実施されていた合同訓練の情報収集に従事していた。
▽中国政府を正面切って批判できないアメリカ
・日本のみならずアメリカまでもが中国海軍に“なめられた”形となってしまったわけだが、アメリカは中国海軍の日本接続水域内航行や領海内航行に対しては、日本政府の肩を持って中国海軍や中国政府を正面切って批判できないジレンマに直面している。
・なぜならば、アメリカ政府は南シナ海において中国をターゲットにした「FONOP」(航行自由原則維持のための作戦)を実施しているからだ。 本コラムで幾度か取り上げたように、アメリカ政府は第三国間の領域紛争には介入しないことを外交鉄則に掲げている。そのため、南シナ海の南沙諸島や西沙諸島に対する中国の領有権主張に直接反対することは差し控えている。その代わりにアメリカ政府は、中国政府の「南沙諸島や西沙諸島の周辺の“中国領海”に接近あるいは進入しようとする外国艦船は、事前に中国政府の許可を得なければならない」という主張に対して、「そのような中国政府の方針は、国際海洋法の大原則である航行自由原則を踏みにじるものである」と主張する。その主張に基づいて、航行自由原則を中国側に遵守させるためのFONOPを太平洋艦隊に実施させているのである。
・具体的には、アメリカ軍艦や哨戒機を、南沙諸島や西沙諸島の“中国領海”内の海域や空域を通航させて、中国側を威圧し国際法を遵守させようというものだ。2015年10月、2016年1月と5月の合計3回ほど実施されている。
・しかし、中国に対して遠慮がちなオバマ政権は、米海軍などの対中強硬派が主張するように「中国側を威圧して国際法を遵守させる」作戦には難色を示し、「軍事的威圧にはならないように、国際法に則った『無害通航権』を行使するレベルでの示威行動」に限定してしまった。そのため、対中FONOPはさしたる効果を上げていない。 それどころか、中国はこのような中途半端なFONOPを逆手に取り、日米同盟切り崩しの“対日FONOP”を開始した。
▽日本政府も国際海洋法を一部制限、口を閉ざす米国
・6月9日から16日にかけての中国軍艦の接続水域航行、領海内航行に対して、日本政府は次のような対応を見せた。
  (1)日本政府は、少なくとも中国軍艦に対しては国際法上の航行自由原則ならびに無害通航権を国際法上の条件ではなく日本政府の判断のもとで制限する方針である。
  (2)それらの制限は尖閣諸島周辺海域では著しく強化され、日本政府は同海域の日本領海内では中国軍艦の無害通航権は一切認めない。
  (3)同様に、日本政府は尖閣諸島周辺海域の日本接続水域内では、中国軍艦に対しては航行自由原則をも制限する。
・つまり、日本政府が国際海洋法を一部制限する姿勢が明らかになったのだ。 もちろん、これは尖閣諸島の領有権を巡って日中間が紛争中であるために、日本政府が尖閣諸島周辺海域での中国軍艦の動きにとりわけ神経をとがらせている結果であることは、アメリカ側としても十分理解できる。
・しかしながら、そのような日本政府の姿勢は、一見したところ、南シナ海での中国政府による国際海洋法の一部制限と類似している。そのため、南シナ海で中国に対して圧力をかけようとしているアメリカ側の「正当化の根拠」と真っ向から衝突してしまう。そもそも南シナ海におけるアメリカのFONOPは、国際海洋法の大原則である航行自由原則を中国政府が認めないことに対抗して実施されているのだ。
・だからこそ、南シナ海でのアメリカ海軍のFONOPを苦々しく思っている中国は、日本の接続水域や領海にまで軍艦を乗り入れることにより、日本よりも、FONOPを実施しているアメリカを困惑させようとしたのであろう。 実際に、今回発生した一連の日本接続水域や日本領海での中国軍艦の活動に対しては、アメリカ政府は口を閉ざしている状態だ。
・この期に及んでも日本当局の指導者には「“アメリカと協力”して対処策を打ち出す」といった第三者的態度をとる者が見受けられる。しかし、中国が核兵器を持ち出さない限りは東シナ海沿岸域の防衛は日本自身の問題であり、アメリカが乗り出してくる問題ではないことは、アメリカ政府による今回の対応が雄弁に物語っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47149

一般の新聞だけではさっぱり分からなかった謎が、これらの記事で氷解した。田岡氏が指摘するように、国際法上は中国側には落ち度がない筈の、中国軍艦が尖閣諸島付近の接続水域に入ったことに対し、外務次官が午前2時に中国大使を外務省に呼び付け抗議するなどといったことは、「安部首相のご乱心」としか考えられない。日本の外交音痴ぶりをさらした恥ずかしい一件だ。領海、接続水域、排他的経済水域などについての解説も分かり易い。これらが決まる過程での、アメリカの勝手さも興味深い。それにしても、『海洋国である日本にとっては航海の自由が決定的に大事な国益』なのであれば、外務官僚は『海洋法を知らない政治家が緊張し、興奮しても「そこを通るのは合法です。抗議をする法的根拠はありません」と諫言し「航海の自由」という重大な国益保持に努めた方が、外務省の存在価値を高めただろう』、はその通りだ。
日刊ゲンダイでは、どうも安部首相の乱心などではなく、「中国脅威論」をダシに自衛隊強化を図ろうとする安部政権の姿勢そのものらしいことが示唆されている。とすれば、外務官僚もこれを了承した上で、諫言などせず、「午前2時に中国大使を外務省に呼び付け抗議」といった一芝居を打ったとも考えられる。
北村氏が指摘するように、日本政府が中国軍艦に対し国際海洋法の一部制限に踏み切ったということは、確かに南シナ海での中国政府の姿勢と類似している。とすると、『中国の対日「FONOP」』の策略にまんまと乗せられた日本政府の外交姿勢は、余りにもお粗末といえる。無論、これも「自衛隊強化」のために、あえて「外交上の失点」を犠牲にしたのかも知れないが、そもそも「自衛隊強化」は、「外交上の失点」をしなくても容易に出来る話の筈だ。やはり、外交姿勢の「チョンボ」と考えた方が筋が通りそうだ。やれやれ・・・。
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