SSブログ

「保育園落ちた」(待機児童、「保活」)問題(その3)保育の質と安全、保育士給与増のマヤカシ、ブラック保育園の跋扈 [社会]

「保育園落ちた」(待機児童)問題については、4月4日に取上げた。今日は、子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動である「保活」も含めた形で、(その3)保育の質と安全、保育士給与増のマヤカシ、ブラック保育園の跋扈 として取上げよう。

先ずは、4月12日付けNHK クローズアップ現代「子どもの命が危ない~保育園が非常事態」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し、()は番組ゲストの発言)。
・待機児童問題で政府が、保育施設の受け入れ数を増やすなどの規制緩和策を打ち出す中、「保育の質と安全」に対する懸念の声が広がっている。
▽死亡・重篤な事故の発生
・定員や規模の拡大が進む保育現場では、以前から、事故や虐待などのトラブルが相次いでいる。死亡・重篤な事故がこの1年間で349件。事故の7割は睡眠中。昼寝の間も見守る必要があるが、人員不足でその間は他の準備作業等に追われ、1時間に1回程度、遠くから眺めるだけ。
・食物アレルギー事故、30%で発生、アレルギー症状が出たのは11%
▽保育児童の低年齢化(待機児童がどうしても多いことから、0歳のほうが入りやすいということで、0歳の保育を希望する方が増え、低年齢化が進んでいる。このため、より専門的な技術や追加の人員が必要に
▽児童年齢に応じた人員配置基準
・(ジャーナリストの猪熊弘子)児童福祉法の保育所最低基準では、0歳の赤ちゃん3人に先生1人、保育士さん1人、1歳・2歳のお子さんは6人に先生1人、3歳児については20人に1人。1歳・2歳はイヤイヤ期があったりだとか、一人ずつの発達がとても違うのでやはり6人を見るというのは非常に大変。配置基準以下でも認可されることも。他方で、自分たちの給与を低くして、パートの保育士を配置基準以上に雇っているところもある
▽ブラック保育園でも文句を言えず
・(猪熊弘子)ようやく入れた保育園がブラックだったが、人質に取られているようで文句を言い出せずとの声もある。
▽保育士に求められる専門性と保育園の教育機関としての位置づけを
・(教育評論家の尾木直樹)食物アレルギー問題など保育士さんたちは専門性を要求される。保育園は、子守というより教育機関、子どもたち一人一人の発達を支援する機関なんだという位置づけが必要。 教育とか保育っていうのは、未来への投資で、10年後、20年後の国の活力に関わってくるので、緊急で予算つけるべき
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3790/

次に、4月28日付け日刊ゲンダイ「早くも数値水増し 政府「保育&介護士」月給増のマヤカシ」を紹介しよう。
・「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」の「1億総活躍」の実現に向け、安倍首相が来年度から保育士の月給6000円増、介護士は1万円アップの方針をブチ上げた。ベテラン保育士はさらに厚遇し、最高4万円程度上げるというが、この大盤振る舞いには早くもデータ水増し疑惑が浮上だ。
・「1億総活躍国民会議」の資料だと、女性保育士の平均月給は26万8000円。最高4万円上げれば、就業女性の全産業平均の月給31万1000円にほぼ到達する算段だ。介護士は平均26万2000円。1万円アップで、飲食など競合他産業の平均月給27万4000円と同水準になるとはじいている。
・ところが、厚労省の「賃金構造基本統計調査」によると、保育士の平均月給は21万9000円、介護士は同22万3000円で、全産業平均より約10万円も低い。今回のデータは“手心”が加えられているようにも見える。内閣官房・1億総活躍推進室に問い合わせると、こんな答えが返ってきた。
・「今回の数値は、厚労省の同じ調査結果を基にしているが、平均給与の計算にはボーナス分を含めています。月給プラスボーナスを単純に12で割った結果、保育士、介護士ともに月給26万円を超える水準になりました」(担当者)
・とはいえ、「月給26万円超」が、本当に保育士と介護士の給与実態を表しているのか。待機児童問題に詳しい「認定NPO法人フローレンス」代表理事の駒崎弘樹氏はこう反論する。 「ボーナス分を加味したとしても、実際よりも相当な高水準です。東京の公立認可保育所の保育士ならば、26万円くらいもらえるかもしれませんが、認可外の保育士の多くは非正規雇用で、月給16万円程度。今回の数値は、低賃金の保育士のデータを除外して、都合よくカサ上げしたと疑われても仕方がありません」
・介護士の給与水準はどうなのか。 「昨年4月に介護報酬が2%超も引き下げられたことで、介護施設の運営者はなかなか賃金の引き上げに踏み切れない現状です。実際は、月十数万円程度しかもらえない方が多いようです」(介護士の待遇問題を国会で追及する民進党・山井和則衆院議員)
・今回の政府案、実効性は推して知るべしだ。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/180424/1

第三に、保育園での事故やトラブルに対する「危機対応サービス」を手掛けるアイギス社長の脇貴志氏が6月8日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ブラック保育園が跋扈してしまう2つの要因 制度の限界や現場のひずみを理解しているか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「保育園落ちた、日本死ね!」という刺激的なタイトルのブログ記事しようをきっかけに、待機児童や保育士の待遇改善など「保育園」に大きな注目が集まっています。育児に対する社会的なサポートの不足は少子化の要因とも議論され、今後の日本経済にとって重要な問題です。
・私は社会福祉法人・学校法人が運営する全国の保育園で起きた事故やトラブルに対する「危機対応サービス」を手掛ける会社を運営し、これまで3万件以上のケースを知っています。
▽保育の現場ではさまざまな問題が起きている
・待機児童を減らすための「詰め込み保育」、低賃金や高い離職率を背景にした「保育士のバラつき」、いつ重大事故が起きてもおかしくない「危うい保育環境」、親の目が届かないところでの保育士による「虐待やネグレクト」――。拙著『ブラック保育園のリアル』(幻冬舎)でも解説していますが、保育園問題に焦点が当たるにつれ、「各保育施設でどのようなレベルの保育が実施されているか」という現場の実態にも社会の関心が集まってきていると実感しています。
・とりわけ、安全に関する問題は注目度を増しています。保育士が園内で園児に虐待行為を行っていたり、防ぐことができる死亡事故が発生したりしているからです。お子さんを預けるには危険な保育園が目立つようになってきています。この「ブラック保育園」が跋扈(ばっこ)してしまっているのには、大きく2つの要因があります。
・まずは行政の問題です。今年3月、東大阪市の社会福祉法人が運営する保育園で不適切な会計処理が行われていたという問題がニュースになりました。元園長と元副園長であった夫妻が業務上横領をしていたということで市が刑事告発したのです。不適切な会計処理は15年間にわたり、架空の職員給与や修繕実績のない園舎の修繕費などで合計1億1125万円。これに関して市長は「誠に遺憾。保育が適切になされていたかも疑問だ。きっちり指導、監査していく」とコメントを発表しました。
・このような社会福祉法人の不適切な会計処理問題は、後を絶ちません。意図的に不正会計を行う園経営者に原因があるのは当然ながら、定期監査を行っている行政がそれを発見できていないという問題もあります。
・上記の例では、行政は定期監査を行っているはずなのに15年間発見できていませんでした。それに対して市長は「保育が適切になされていたかも疑問だ」とコメントしていますが、このコメント自体が現行の保育制度の問題点のひとつを表しています。本来ならば、行政監査により保育が適切に行われていることを担保しなければならないからです。
・保育施設はどこの施設を選んでも一定以上の質が確保されるように、最低基準として「保育所保育指針」を定めています。平成27年4月より運営基準として各自治体で条例も定められています。 しかし、それらが現場で実行されているかを確認するための行政監査が機能しなければ、絵に描いた餅になるのは目に見えています。
▽人材の質にも問題あり
・二つ目に保育行政に関わる人材の質の問題があります。最近、突然湧き出ているニュースとして、保育施設整備が近隣住民の反対運動によって中止や延期になっていることがあります。この問題の原因は、行政と施設整備者の対人交渉能力の低さにあると考えられます。対人交渉能力とは、決して難しいものではなく、聞かれたことに対して、誠実に答えたり、問題点を整理して解決策を提示するなどしたりする能力です。いわゆる「ファシリテーション技術」のようなものです。
・一般企業の場合、長のポストに就くためには、仕事をそつなくこなし、仕事のミスはなるべく少なく、犯罪に関わるような致命的なコンプライアンス違反はせず、会議をまとめ、部下を統率し引っ張っていけるような能力を持っていなければなりません。その能力が相対的に劣る人材は、ポストに就けず、同期からも後輩からも出世で抜かれる可能性があります。しかし保育の現場では、その仕組みが機能していない施設のほうが多いように思えます。
・特に社会福祉法人の場合、施設長の息子や娘がいきなり施設長になることも多いのですが、その人が施設長の能力を兼ね備えているかどうかはわかりません。そもそも離職率の高い私立の保育施設の場合、1年目から施設長になるまで育つような人材は皆無といってもいいでしょう。保育士は国家資格であるがゆえに制度的に最低基準はクリアした人材ですが、施設長には資格制度はないので、質が担保されているとはいえません。
・保育施設の質は、どのような保育を実践しているのかという保育内容よりも、どのような人たちがやっているのかで決まるというのが私の実感です。「何をやるか」よりも「誰がやるか」なのです。とりわけ、「誰が」の中でも施設長が及ぼす影響は絶大です。施設長によって保育士の定着率も変わりますし、保育士同士のコミュニケーションも変わります。現場の園児よりも施設長のほうに気を使わなければならないような保育現場で死亡事故が起きた事例もあります。
▽施設長が及ぼす影響は絶大だ
・2014年7月に京都の認可保育施設で起きたプールでの死亡事故を受けて、同年10月に行われた京都市の特別監査では、保育・運営体制の問題点として、園運営において児童より自分への対応を優先する園長の姿勢という項目で指摘されています。
・報告書によると「職員への聴き取り調査により、職員が園長個人への対応のため、保育士が十分に保育に携わることができない状態が生じていたことが判明した。具体的には、職員は毎朝出勤すると一人ひとり順番に1階の応接室に入り、床に正座するなどして園長にあいさつをするが、その日の園長の気分や相手によっては一人30分以上話し込むこともあり、その間ほかの職員が応接室の前で、自分の番を待つ状態が生じていた」と記載があります。
・このように、施設長ひとりが施設全体の風土に悪影響を及ぼし、その風土によって引き起こされる重大事故も存在するのです。私の経験上、重大事故の原因として施設長や特定人物が影響していることが少なくありません。施設長に資格制度や養成制度を設けてもいいのではないでしょうか。
・現行の制度では、保育現場に大きな改善を起こすことは難しいと思います。私は営業マンの経験がありますが、「良い営業マンは、良いお客様が作る」と言われていました。保育施設も「良い保育施設は、良い保護者が作る」といえます。
・良い保育現場を作るためには、保育施設と一緒になって改善していける保護者をひとりでも多く育成することが大切です。苦情や要望よりも、建設的な意見を暖かく施設に届けて、保育施設と前向きに歩んでくれる違いのわかる保護者が保育現場を変えてくれることを期待しています。そのためには、まず、園児を預ける保護者が保育制度や保育現場の現状を少しでも理解することです。
http://toyokeizai.net/articles/-/121029

クローズアップ現代で、保育の量だけではなく、質と安全も極めて重要であることを再認識させられた。特に、園児の低年齢化に伴いより専門的な技術や追加の人員が必要になるようだ。将来を考えて、保育・教育の位置づけを高めるべきとの、ゲストらの主張はもっともだ。
日刊ゲンダイで「認定NPO法人フローレンス」代表理事の駒崎弘樹氏が指摘する「認可外の保育士の多くは非正規雇用、月給16万円程度」、には若干の疑問も感じる。保育士不足がこれだけ深刻ななかで、非正規で安月給というからには、フルタイムではないなど非正規雇用されている保育士側の事情も背後にあるのではないかと思われる。
東洋経済オンラインでの「詰め込み保育」には、笑ってしまった。昔に「詰め込み」小学校では少人数学級が一般化しているというのに、同じ少子化の洗礼を受けている保育園では、「詰め込み保育」が広がっているというのは、保育園に入れたいという親のニーズの高まりがあるのかも知れない。15年間で1.1億円もの不正会計に対する東大阪市長の無責任発言には、いまさらながら驚かされた。「行政と施設整備者の対人交渉能力の低さ」との指摘は、あるそうなことだ。京都市の認可保育施設の園長の非常識な行動についても、放置してきた行政の責任は重大だ。「施設長への資格制度」については、筆者の「我田引水」的な感じを受けた。そんなことで解決できる問題ではなく、監督責任のある行政の問題だと思う。
いずれにしろ、将来を担う児童を如何に育てていくかという「保育の質」の問題にも、もっと目を向ける必要がありそうだ。
タグ:保育園落ちた (待機児童、「保活」)問題 (その3)保育の質と安全、保育士給与増のマヤカシ、ブラック保育園の跋扈 NHK クローズアップ現代 子どもの命が危ない~保育園が非常事態 保育の質と安全 死亡・重篤な事故の発生 1年間で349件 事故の7割は睡眠中 寝の間も見守る必要 食物アレルギー事故、30%で発生 保育児童の低年齢化 0歳のほうが入りやすいということで、0歳の保育を希望する方が増え より専門的な技術や追加の人員が必要 児童年齢に応じた人員配置基準 ブラック保育園でも文句を言えず 猪熊弘子 尾木直樹 保育園は、子守というより教育機関、子どもたち一人一人の発達を支援する機関 日刊ゲンダイ 早くも数値水増し 政府「保育&介護士」月給増のマヤカシ 1億総活躍 待機児童ゼロ 介護離職ゼロ 育士の月給6000円増、介護士は1万円アップの方針 脇貴志 東洋経済オンライン ブラック保育園が跋扈してしまう2つの要因 制度の限界や現場のひずみを理解しているか 全国の保育園で起きた事故やトラブルに対する「危機対応サービス」 詰め込み保育 保育士のバラつき 危うい保育環境 虐待やネグレクト ブラック保育園のリアル 行政の問題 東大阪市 保育園で不適切な会計処理 15年間にわたり、架空の職員給与や修繕実績のない園舎の修繕費などで合計1億1125万円 市長は「誠に遺憾。保育が適切になされていたかも疑問だ。きっちり指導、監査していく」とコメント 定期監査を行っているはずなのに15年間発見できていませんでした 保育行政に関わる人材の質の問題 京都の認可保育施設 プールでの死亡事故 保育・運営体制の問題点として、園運営において児童より自分への対応を優先する園長の姿勢という項目で指摘 施設長に資格制度や養成制度を設けてもいいのではないでしょうか
nice!(10)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 10

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0