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英国EU離脱問題(その6)EU離脱で「のた打ち回る」ことに、「英国はEU離脱で没落しません」、ドイツでの離脱報道 [世界情勢]

一昨日、昨日に続いて、英国EU離脱問題 を取上げよう。今日は、(その6)EU離脱で「のた打ち回る」ことに、「英国はEU離脱で没落しません」、ドイツでの離脱報道 である。

先ずは、6月27日付け東洋経済オンライン「英国はEU離脱で「のた打ち回る」ことになる 「EU研究第一人者」北大・遠藤教授の現地レポ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・欧州連合(EU)離脱決定を受け、今後のイギリスやEUはどうなるのか。国民投票前後の約2週間、現地で取材を続けた遠藤乾・北海道大学大学院教授(EU研究の第一人者)が緊急寄稿。2回にわたってお届けする。
▽なぜ離脱派が勝利?日本人が知るべき複数の理由とは
・欧州連合(EU)離脱派が勝利したイギリスの行方に多くの関心が集まっている。無理もない。離脱決定を受け、世界の株価や為替は大きく影響を受けたのだ。しかし、それだけではあるまい。「平和なヨーロッパはどうなってしまうのか」「なぜ、あの穏健で漸進的な〈紳士の国〉イギリスが・・」、といった素朴な疑問もわいてくる。
・TVなどで、欧州の思い入れのある国や地域で起きている劇的なことを目の当たりにすると、どうしても好き勝手に解釈してしまいがちだ。とくにイギリスは、本当は階級・地域・エスニシティなど多くの分断線が潜む複雑な国なのだが、英語で親しみやすいこともあり、みなわかったような気になりやすい。
・ここでは、さまざまな前提を取り払い、少し喧騒から距離をおいて、まずは何が起きたのか、振り返りたい。そのうえで、投票前後の2週間イギリスを縦断し、インタビューして回った経験を織り交ぜながら、どうして今回の結果に行きついたのか、この時点で言えることを述べて行こう。 なお、このあとイギリスやEUがどうなっていくのかについては、稿を改めたい。保守党と労働党をはじめとするイギリス政党政治、イングランドとスコットランド(+北アイルランド)、EUとの関係、ヨーロッパの将来に関して、大事なポイントがいくつもあるが、ひとことで言えば、目下のところ事態は極度に流動的である。
・では、改めて「何が起きたのか」から、振り返ろう。2016年6月23日、イギリスで行われたEU加盟をめぐる国民投票において、僅差で離脱派が勝利した。4650万1241人の有権者のうち、1741万0742票(51.9%)が離脱を選択し、1614万1241票(48.1%)が残留を望んだ。投票率は昨年の総選挙を上回り、72.2%だった。これにより、イギリスは1973年に加盟したEUから脱退することが確実となった。
・誰がどう投票したのだろうか。地域的には、スコットランドと北アイルランドはそれぞれ62%、55.8%が残留を求め、イングランドとウェールズの過半(各々53.4、52.5%)は離脱に投じた。 黄色が残留多数、青が離脱多数。とりわけ残留のスコットランドと離脱のイングランドのコントラストが目立つ。 特にイングランドとスコットランドの投票がねじれ、前者が離脱を、後者が残留を選んだことは、今後を占ううえで重要である。  全有権者の8割以上を占めるイングランドの動向がカギを握っていたが、北東部、東西ミッドランズ、ヨークシャー、ハンバー、東部などで離脱派が残留派を引き離した。なお、ロンドンではおおむね6対4で残留に投じたが、他の地域は全体として離脱を選び、ロンドンを抑える形となった。
・社会的には、アッシュクロフト卿の投票後の調査(英語)が役に立つ。それによると、男女の間では投票行動に違いはなかったものの、年齢では大きな差が出た。18-24歳の有権者の73%、25-34歳の62%が残留に投じた一方、55―64才の57%、65才以降の6割が離脱を選んだ。
・また、学歴や階層でも異なる投票行動が観察された。オックスフォードやケンブリッジでは7割以上が残留に入れたのに対し、ボストンやハヴァリングなど低学歴の住民が多い地域では7割前後が離脱を求めた。収入の比較的高い中流上層以上は57%が残留、労働者階級と低所得者層の64%が離脱に入れた。
・さらに党派別では、保守党支持者の58%が離脱、労働党支持者の63%が残留に票を投じた。親EUの自民党では70%が残留、逆に反EUの英国独立党(Ukip)では96%までもが離脱を支持した。
・最後に、投票で最も重視した要因としては、離脱派は、第1に主権や自決、第2に移民制限、第3にEUをめぐる選択不能性を重んじた。残留派は第1に離脱時の経済や雇用への悪影響、第2に(シェンゲン・ユーロ不参加のまま)EU市場にアクセスできること、第3に離脱した時の孤立感を挙げている。
▽残留派の「恐怖計画」は国民にあまり刺さらず
・短期・戦術的には、離脱時の経済的な損失を強調した残留派のいわゆる「恐怖計画(Project Fear)」は、結果的に言うとあまりアピールしなかった。 財務相オズボーンは、4月に英国経済は2030年までに残留時と比べて6%低下し、各家庭レベルでは年4300ポンド(約65万円)の損失になるとしていた。逆に、移民要因を強調した離脱派の方が効果的だった。 移民排斥の色彩が濃厚な英国独立党の党首ファラージュはもちろん、元ロンドン市長ボリス・ジョンソンや法相マイケル・ゴーヴも、ことあるごとに移民を取り上げ、オーストラリアのようなポイント制にすることで望ましい方向に移民を制限できると強調した。
・その点、投票直前の5月末に移民統計が発表され、2015年1年間で約33万人の移民の純増が報告されたことは、離脱派にとって「ブースト」(押し上げ材料)となった。キャメロン政権は、「純増を10万人にとどめる」と公約していたからである。
・こうした状況のもと、「YouGov調査」でEU離脱時の移民の増減について聞かれた53%が「減る」と答えたのに対して、「増える」としたのは3%で大きくその差が開いた一方、「Opinium調査」では、「経済悪化」を予測する人は37%で、「改善する」とした29%と競っていた。移民カードの方が、恐怖計画よりもパンチが効いていたと推測できる。
・これは、私自身が国民投票前に複数訪れた、地方の多くの場所で実感したこととも重なる。イングランド東部のボストンのような東欧移民が多い街のみならず、サッチャー元首相の生誕地グランサム(ボストンから内陸に車で40分)でも、移民は国境管理、国家主権、ナショナリズムに深く関わる最大の関心事だった。 保守党のグランサム市長からボストンの英国独立党の地方議員、あるいは近郊スポルディングのパブ経営者にいたるまで、いかに移民が教育、医療、住宅などの地方のインフラを侵食し、地元民が懸念を深めているか、口を揃えてとうとうと語った。
・なかでもパブ経営者は、小学校に通っている自分の子供をインタビュー現場に呼び寄せ「クラスに総勢何人いて、そのうち外国人が何人か」を数えさせた。私は一瞬やり過ぎだと思ったが、実に約6割もの子供がろくに英語もしゃべれないリトアニアやポーランドの移民であることは衝撃だった。容易に想像できることだが、そのようなクラスでは学級崩壊や教育の機能不全がおきやすい。
・あるいは、このような話も聞いた。多くの東欧移民が農場や加工品工場で働いているのだが、雇用者が最低賃金を合法的に支払っていても、「エージェント(代理人)などによる中間搾取が激しく、移民労働者は約3分の1しか実質受けとっていない」という。それでも喜んで働くのだと。 「そうした低賃金で働くことが不可能な英国の労働者を、結果的に追い出すことになる」とさらに続いた。中間管理職もポーランド人やリトアニア人で、「英語ではむしろコミュニケーションができない」という。賃金だけでなく、言葉でも地元の労働者は排除されるという話だった。
・もちろん、学校も最低賃金も、本来ならば責めるべきは行政や監督官庁で、移民たちではないはずだが、そうした地域では、〈移民=EU=グローバル化〉という「悪の図式」としてイメージされる。 自分たちの「生活の質」を守るという合言葉の下、自分たちの国が自分たちのものでなくなるという焦燥感、より社会科学的に言えば、(主にイングランドの)ナショナル・アイデンティティが頭をもたげる。そこから〈移民制限と主権・独立〉という「解」に向かうことになるのは、そう不自然なことではない。
・国民投票のキャンペーンで力を持ったのは、このような一連の移民がらみの要因であった。前述のアッシュクロフト卿の調査データにおいて、離脱票が重視した2番目の要素が移民だったのが思い起こされよう。
▽「経済拡大」のはずが「裏切られた」という国民の思い
・より中長期的には、EUの権限が増強された結果、それに対する懐疑主義、ひいては主権・自決意識が広がったことが大きい。これが、離脱票の重視した第1と第3の要素につながる。 サッチャー元首相の生誕の地・グランサム近辺に典型的なのだが、多くの保守党支持者にとって、1973年にEEC(欧州経済共同体)に加盟した際は、経済的な理由で共同市場に入ったはずで、その理解のもとで1975年国民投票では当時のEECに「是」を投じたのであった。
・そのいってみれば「原初契約」が、政治同盟・通貨同盟・共通市民権に舵を切ったマーストリヒト条約(1991年、EU創設を定めた条約)の前後から変質し、「裏切られた」と考える転向層を生んだ。実は、英国独立党のファラージュも、マーストリヒトを契機に保守党から鞍替えした一人である。保守党員だったジェームス・ゴールドスミス卿(2016年ロンドン市長選に出馬したザック・ゴールドスミスの父)が国民投票党を組織し、EU脱退を目指したのも、マーストリヒトがきっかけだった。
・サッチャーは、1975年投票時には親EECの保守党の政府の一員として残留を支持していた。けれども、首相になって10年弱の1988年に有名なブリュージュ演説を行い、そのころから自由市場を超えて介入や関与を深め、また通貨同盟に邁進するEU(当時EC、欧州共同体)への批判を徐々に強めていった。 11年半にまたがる彼女の長期政権の終焉を飾ったのも、ウェストミンスター議会における反EU演説であった。それに対する保守党内の反乱が彼女を首相職から引きずり下ろしたのである。その後、。
・こうして、EUが権限を増強するにしたがい、EUによる規制や介入、あるいは東欧拡大ののちには、他の加盟国からの移民のようなEUゆえの現象を目の当たりにし、保守党内、支持層にも欧州懐疑主義は膨らんでいった。そこでフツフツと沸き起こるのは、「自国の事柄については自らの手で決めたい」という主権的な自決意識である。この根底にあるのも、イングランドの強烈なナショナル・アイデンティティだ。
・この主権的な自決意識とナショナリズムの結合は、今回の国民投票を考えるうえでも重要だと思われる。つまり、英国独立党のような、2013年までは周辺的で、その後も決して多数派を掌握できない政党ではなく、何世紀ものあいだ主流を形成してきた保守党とその支持者にも、その2つの結合を経由して欧州懐疑主義保守党は、親EU/反EUの両陣営に分かれ、深い溝を抱えることになるが拡がっていった。そのことで初めて、局所的な運動を超えて、それはうねりをなしたのである。
▽「グローバル化の緩衝材」になれなかったEU
・他方、これらの動きと重なるが、やや波動が異なる形で、最大野党の労働党、そしてその支持者である末端の労働者側に不満が蓄積したのも大きい。もともと、労働党は従来EECやECへの違和感を隠そうとしなかった政党だが、1980年代末頃から1990年代半ばまでは、仏社会党員でもある欧州委員長ドロールが主導した「ヨーロッパ社会民主主義的な統合像」のもとで、EC・EUに対してむしろ好意的であった。世紀転換期に労働党政権を担ったブレア(元首相)に至っては、フランス語を操り、自ら親欧であることを隠さない首相であった。
・その社民的なEU像とは、グローバル化への緩衝材としてEUを構築し、単一市場や単一通貨の枠内でヨーロッパ大の社会的な連帯を模索する道だった。しかし、これがグローバル化のいっそうの深化にともない、もはや21世紀の初頭には失効したように映る。ここでは、EUが社会連帯のツールとみなされず、グローバル化のもう一つの顔となってしまった。当然、労働者がそっぽを向くことになる。
・これと並行した流れは、隣の国に見出すことができる。やや時代はさかのぼるが、2005年春、フランスは(オランダとともに)国民投票で欧州憲法条約の批准を拒否した。 これはEUを数年麻痺させた一大事件だったが、この過程で、労働者がEUに背を向けた。とりわけ、水道その他のサービス自由化を目指した「ボルケシュタイン指令」が欧州委員会から出され、フランスの公営企業に勤める労働者たちが反発を強めていた。
・このなかには、政治的に穏健な中道左派、女性の雇用者が含まれていた。ここにおいて、EUはグローバル化の荒波から労働者を守るのでなく、むしろ雇用や生活を脅かす存在、つまりグローバル化の別の顔として意識されたのである。 この2005年のフランスの事例でも、ポーランドからの移民が職を奪うと喧伝されたが、2016年のイギリスでも同様に、ポーランドやリトアニアからの移民が雇用の不安定化、実質賃金の低迷の原因と目された。本当のところは、地元の英国人労働者とそれらの移民は直接労働市場で競合しているかどうか不明で、移民の多いイングランド東部のボストンのような地区の経済は、むしろ失業率も低く好調だった。にもかかわらず、それは脅威と映ったのだ。
・この東欧移民がEU加盟国の市民であることは大事なポイントである。つまり、EU域内では自由移動が可能で、ブレア政権は2004年のEU東方拡大の際に東欧移民に制限をかけなかった。いまでは、約300万以上のEU移民がイギリスで暮らしている。その分布図と欧州懐疑主義の強い地域とは(ボストン近辺を除いて)少しずつずれているのだが、隣町にいるEU移民によって、自分たちの職や生活が脅かされているというイメージが作られた。これにより、〈移民=EU=グローバル化=雇用不安〉という構図が出来上がったのである。
・したがって、労働者を残留へ動員することは、もともと困難だったと思われる。しかし、ここで、労働党のリーダーシップの問題に触れざるを得ない。というのも、同党のコービン党首は、党内最左派に位置し、草の根の活動家に近く、もともとEUに対して懐疑的で、ブレアのような「第3の道」に対する違和感が強い。その彼は、国民投票に向けて、労働党支持層へのEU支持呼びかけに力を尽くさなかった。彼自身、「7割方の力しか入らない」と漏らしていたのである。 彼のEUに対する半ば公然の懐疑は、労働党の草の根支持層である末端労働者が持つEUへの違和感を反映したものである一方、残留に向けた保守党との共闘で労働党が埋没しないことを意図した党利党略でもあった。
▽労働党は利敵行為を避け、残留に本腰を入れず
・その背景は、2014年に行われたスコットランド住民投票にある。そこでは、労働党はキャメロン保守党政権と共闘し、連合王国の維持、すなわち独立阻止に向けてキャンペーンを張った。その結果、かつて一強の様相を見せていたスコットランドで労働党はほぼ駆逐され、2015年の総選挙ではスコットランド国民党(SNP)はおろか、保守党にも負けて第3党になり下がったのである。 その「二の舞」を避けるため、コービンはキャメロン首相とのツーショットを徹底して避けた。それが実現したのは、6月16日に残留にむけて尽力していた労働党のジョアンナ・コックス議員が暗殺された直後、一緒に花を手向けたときだけである。
・こうして、労働党の選挙キャンペーンは、本腰からは程遠いものであった。同党のジェイミー・リード議員の発言を借りれば、「労働党指導層はこのキャンペーンに必要な露出、資源、エネルギーを提供しなかった。さらにひどいのは、入念に計算された形でよそよそしい印象を与えたことだ。(中略)その直接の結果として、余りに多くの労働党支持者が手遅れになるほど遅い段階まで、労働党がじっさいにはEU加盟を支持していることを知らなかったのである。」コービンとその取り巻きにとって、最大の敵は国内の保守党であり、緊縮財政を推し進めたキャメロン首相とオズボーン財務相だったのである。
・結果として、キャメロンが辞任を表明し、オズボーンの信頼は地に落ちた。党利党略的には労働党指導部は欲しいものを得たわけだが、草の根の支持者にEUのメリットを正面から説かなかった代償は大きい。ただし、その当のコービン党首も、影の内閣閣僚を含む同党議員から不信任動議を突き付けられており、党首職にあり続けるかどうかあやしい。
・さて、このエッセイの最後に、この国民投票の結果が何を意味するのか、含意を検討しよう。冒頭に述べたように、ここでは今後については包括的には考察しないが、起きたことを総括して位置付けるのは、今後を占ううえでも大事なことかと思う。  今回のイギリス国民投票は、直接的には、〈移民=EU=グローバル化〉を介して高揚したナショナル・アイデンティティと主権=自決意識が、EUのメンバーシップに向けられたものといえよう。こうした〈ナショナリズム=民主主義=国家主権〉の「三位一体」を乗り越える正統性はEUにはない。それは、民衆の直接選挙による欧州議会を抱えているものの、投票率は欧州議会の権限の増強に反比例して低落傾向にあり、民主的正統性は極めて脆弱である。
・EUは国家でなく、将来においても国家にならない。その主人はいまだ加盟国であり、加盟国の国民(多数派)が背を向け、その意向を民主主義的に表現されたら、それを止めるすべはない。今も昔も今後も、である。それほどに、主権的な意思の(民主的な)発露は、破壊力のあるものである。その「大爆発の瞬間」を、われわれは目撃したばかりだ。
・その手の「小爆発」は、しばしば見られた。1992年にデンマークがマーストリヒト条約の批准を国民投票で拒否したとき、2005年に仏蘭国民投票が欧州憲法条約を否定したときなどがその例に当たる。そのたびに、EUはしばし麻痺した。今回は、加盟に白黒つけるものであり、域内第2位の経済体が、国民投票でEU離脱を決めたのだ。スケールが異なる。
▽EUの「崩壊」と「存続」の線引きはどこにあるのか
・イギリス国内においては、すでにEUとその立法・規制が国の一部になっていた。これから「すでに身体化した一部」を切り離す作業は容易ではない。投票行動のねじれが、政党指導部と草の根の人びとのあいだの乖離、イングランドとスコットランドの溝、その他世代、学歴、階層を隔てたさまざまな亀裂をふたたび際立たせている。
・今後、この国はのたうち回るだろう。これまで見ていた連合王国のイメージはとりあえず捨てて、これからどうなっていくのか、注視しなければならない。 EUもまた、大変なダメージを受けている。このスケールほどの衝撃を単独国で作り出せなくとも、先に述べた〈ナショナリズム=民主主義=国家主権〉の三位一体は、どこの加盟国でも発露しうる。それが複数重なれば、EUはさらに蝕まれていくことになろう。
・その行きつく先をここで占えはしないが、EUが崩壊するかどうかは、中枢国、とりわけ独仏の民主主義の在り方にかかっているだろう。そこが反EU政党に何らかの形で乗っ取られるようなことになり、EU支持が少数となって政権や予算が成立しないとなると、ちまたの言説でいうEUの「崩壊」「瓦解」を本当に語らなければならない。 しかし裏返して言えば、そのボトムラインが底抜けしない限り、EUは生き残り、再編を志向することになる。その再編がどのような規模で、いかなる形を取るのかもまた、目を凝らしてみていかねばならない。
・より広い意味で言えば、グローバル化によって、雇用が不安定化し、生活が向上しない(のに、政治家を含め誰もその問題に見向きもしない)と考えている広範な勤労者・労働者層に対して、広範なインフラ整備から給料のような形の価値付与まで、本腰で取り組まないと、この手のバックラッシュ(反動)は、どの国でも起きうる現象だということになろう。
・超大国のアメリカで、だれも予想しなかった左右両極化が起き、トランプやサンダースのような候補が躍進する時代である。いずれの国にも、小トランプ(イギリスの場合、前出のファラージュかジョンソンか)、小サンダース(同様にコービンか)が散見され、政治的に穏健な中道が陥没する。その意味において、今回のイギリス国民投票は、対岸の火事ではない。これは、いそぎ自らの社会を点検すべきよい機会を提供するのではなかろうか。(第2回=後編は6月末から7月初旬の予定です)
http://toyokeizai.net/articles/-/124569

次に、投資銀行家のぐっちーさんが7月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ぐっちーさん「英国はEU離脱で没落しません」 非EUのスイスやノルウェーは没落したのか」の4頁目までを紹介しよう(▽は小見出し、+は区切り)。
・今回のイギリスの決断にはさまざまな側面がありますが、私は多くのエコノミストや学者と異なり実際にビジネスを行っている(お金を稼いでいる)実業家ですので、そういう視点からのお話をしたいと思います。  一般的なお話については、この東洋経済オンラインにすでに北大の遠藤乾先生が極めて平易かつ的確なレポート「英国はEU離脱で『のた打ち回る』ことになる」をお書きになっておりますので、そちらも合わせてぜひご覧ください。日本における欧州民主主義に対する研究はすでに100年余の歴史があり、その水準の高さをまざまざと見せつけるが如きレベルであり、これに対して何かを付け加えることは何人も不可能でありますし、これを読めばほかのものはもう読む必要がないでしょう。
・では、ワタクシは質問に答える形式にて参ります。マスコミなどで出回っている間違いや誤解はいろいろありますが、大事なものは以下の3つではないでしょうか。 
▽イギリスはEU離脱で没落しない
1)イギリスはEUを離脱し、さまざまな貿易上の特典を失い、国、あるいは経済そのものがこのまま没落してしまうのではないか?
+こういう話があちこちで語られているようですが、これについては100%「ノー」と断言できます。 イギリスが今EU加盟で得ているメリットは貿易上のメリットそのものと言って良く、しかしイギリスのGDPに占める製造業の比率はせいぜい10%程度、輸出依存度もほぼ日本同様の10%から15%と言ったところであります。
+つまり完全な内需の国であって、貿易上多少不利になったところで失うものはそう多くない。一方ロンドン・シティーの金融業としてのインフラストラクチャーはそれこそニューヨークをもしのぐ、規模及び生態系を有しており、一朝一夕にこれに取って代わるインフラストラクチャーをつくることは不可能です。
+むしろこれをほぼフリーで使っている今のEU諸国がこのインフラを使えなくなるデメリットは計り知れず、さらに言えばEU第二の経済大国であるイギリスを失う事は彼らにとっての重要な輸出先を失う事でもあります。
▽イギリスがEUの中にいるメリットはあまりない
+一方のイギリスはEUの代わりにさまざまな国と自由貿易協定をさっさと結んでしまえば、EUから輸入していたものの代わりの供給国は幾らでも見つけることができるでしょう。そうなると、むしろ困窮するのはEU側です。
+そもそも論でいうと、イギリスが当時のECへの参加を決断したのは1975年。この時は製造業が経済の中心であったため、自由貿易圏であるECに参加するメリットは計り知れませんでした。
+しかし、この2016年、既にそのメリットはそれほどないのです、主要産業は金融などのサービス業に移り、EUにいることで、そういった新しい産業を育成するルール作りも独自にできず、あらゆる決断にEUが介入してくるという不自由さ。さらにはEUに加盟したがために、多くの移民が入ってくるために(EUだけで年間約18万人を超える)、既に社会的インフラストラクチャーがキャパシティーオーバーになってしまっているなど、デメリットは数知れないのです。 例えば、遠藤先生が書いているように、公立小学校には60%もの英語が話せない子供たちがおり、授業が成り立たないという事態が日常的に起きているわけです。
+こうした移民は基本的に医療、教育などを保証されており、そのお金は一体だれが出すのか、という根本的な問題に対する答えを今のところだれも、どの国も持っていません。戦争地域からの難民とは訳が違うのです。
+その中で既に製造業がその役割を終え、新しい産業革命とでもいうべきイノベーションをもって米国をはじめ、日本、その他の欧州諸国を追いかけねばならないときに、いちいちEUにその決定を仰いでいれば迅速な決断は不可能で(ご存知の通りそのEUの決定は何事につけ官僚的で極めて遅い)、競争に遅れるばかり、という恐れは十分あります。
+さらに言えば、EU離脱がそんなに一大事であるなら、ではEUにもユーロにも参加していないスイスやノルウェーはどうなっていますか? 参加しなかったために経済的に没落し、「北欧のギリシア」になってしまっているのでしょうか? もちろん違いますね。むしろ欧州の中で問題を抱えているのは移民問題も含めさまざまな問題に直面するEU参加国そのものであって、非参加国+自国通貨保有国は悠々と経済成長を続けているではありませんか?EU不参加によりスイスの金融におけるポジションは没落しましたか?そんなことはない訳でありまして、EUから離脱しただけでイギリスが没落する、というのはナンセンスであります。
▽高齢者の独善でも、名誉ある孤立でもない
 2)今回離脱に投票したのは高齢者が多く、彼らは若者の未来を奪ってしまった。  という話も良く出てくるようですが、これも本当でしょうか?
+むしろ彼ら、若い世代は本当の意味でEUのデメリットを経験していません。これから持つであろう自分たちの子供が病気になった時に多くの移民が殺到する病院で5時間も待たされて、なかなか診てもらえない、という現在の事態に直面し、それでもEUに参加することがメリットなのだ、と主張し続けられるという保証はありません。
+むしろ1975年以来、仕事でも生活でも肌身をもって何が起きたかを体験してきた先人のアドバイスは貴重である可能性もあるのです。これはまさに日本でよく言う、「困ったときは村の長老に聞け」、という話でありまして、現時点での即断はできないでしょう。
 3)これでイギリスはいわゆる「名誉ある孤立」を選んだ。
+これも間違いですね。 EUから離脱した分、ある意味フリーハンドになったイギリスはその他の国とさまざまな貿易協定を単独で積極的に結んでいくでしょう。日米はもちろんですが、いわゆるイギリス連邦の紐帯の強化に動いた場合、それは孤立というより、「新たなる連帯の始まり」、というべきではないでしょうか。
+元々旧植民地で文化的均質性もあり、英語が共通に使えるというメリットは計り知れないのではないでしょうか。私はこちらの方が余程希望が持てると思います。EUという楔から逃れ、新たな連帯を組むことができるなら今までにない新たな経済圏が誕生する可能性すらあるのです。(これは妄想の類ですが、イギリス連邦オーストラリアつながりでTPPにイギリスが入る、というのも戦略的にはあり、だと思います。その場合、TPPではなく、Pacific が取れてTPとなりますが・・・)
+最後に……  これは金融マンの悪い癖かもしれませんが、みんながこれは大変だ、もう終わりだ、と大騒ぎをした時はチャンスになったことはあれど、それで本当に何かが終わってしまった試しはありません。
▽金融マン的に「大変だ!!」と言っているときは…
+古くは1987年オクトーバークラッシュ、1989年バブル崩壊、2000年テックバブル崩壊、そして2008年の金融危機などなど・…それこそもうこの世の終わりと散々言われましたが、後から振り返ればそれらすべてが絶好の投資機会でありまして、最近では2008年になけなしの金でビルを買った私の知り合いは今では億万長者であります。つまり、危機と言われるときほど、古いものが淘汰され、新しい時代にスムースに移行できるチャンスが到来している、という言い方も可能ではないかと思います。
+一方でユーロ統一のように、世界中がこれは夢のような出来事だと考え、ユーフォリアなどと浮かれた結果はどうなってしまったのか、と考えると所詮世の中のことなど何が起きるかわからない、という話になりますね。金融マン的には「大変だ!!」と言っている時が大チャンス、でありまして、今回のBrexit もそうならないかと密かに狙っている…というのは冗談で、今回はそれほど大事にはなり得ません。ましてリーマンショックと比較するなど、あり得ないマッチポンプ理論であると付け加えておきたいと思います。
http://toyokeizai.net/articles/-/125270

第三に、シュトゥットガルト在住のジャーナリストの川口マーン惠美氏が7月1日付け現代ビジネスに寄稿した「EUの盟主ドイツで「イギリス離脱」はどう報じられたか〜これって「イジメ」じゃない? 結論が出て、ますます混迷深まる」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽イギリス人は、ソレが我慢できなかった
・6月23日の国民投票で、イギリスはEU残留か、離脱かについて決めたはずなのに、投票が終わって一週間、その行方は、さらにわからなくなってしまった。
・イギリスとEUは、元々それほど相性が良いわけではない。EUの前身はEEC(欧州経済共同体)、そしてEC(欧州共同体)だが、1960年代以来、イギリスは長い間、この共同体に加盟するか否かですったもんだを続けた。 その挙句、イギリスがようやく加盟を申し込めば、ド・ゴール将軍に徹底的に妨害され、その後、ド・ゴール将軍が引退し、イギリスの加盟が決まれば決まったで、イギリス人はその決定が正しかったかどうか、再び深く悩んだのである。
・結局、イギリスは、EC加盟のわずか2年後の1975年に、初めての国民投票を行って、もう一度その是非を国民に問うている(結果は67%で加盟を是認)。しかしその後も、イギリスはユーロを導入せずに独自の通貨を使い続けたし、シェンゲン協定にも入らず、好きなように国境検査をしていた。
・また、EUへの拠出金は大幅にまけてもらっていたし(1984年のサッチャー首相の「I want my money back」以来、今日まで)、EUで決まったことも、幾つかの分野では必ずしも守らなくても良いという特別待遇まで認められていた。
・だから、イギリス人がEUから離脱したいと言い出したときには、ドイツ人もフランス人も、「イギリスの大陸嫌いが、また出てきたか」と思うだけだった。 投票前にドイツで流れていたニュースは、右派の“ポピュリストたち”が反イスラム、反移民で国民を焚きつけ、イギリスを誤った方向に導こうとしているというものばかりだったが、何もポピュリストたちが焚きつけなくても、この国にEU懐疑派が伝統的に存在することは皆が知っていた。
・そもそも、反EUであろうが、なかろうが、イギリス人が一番嫌っていたのは、移民でもイスラムでもなく、EUという構造の中で、自国の主権を次第にEUに譲り渡していかなければならないことだった。 EUに加盟している限り、EU憲法に従わなくてはならない。そして、EU憲法は、すでに各国の最高裁の判決を覆す力を持っていた。イギリス人は、それが我慢できなかったのだ。
・とはいえ彼らは、まさか自分たちが本当にEUを離脱するとは思っていなかったはずだ。これを契機に、EUの権力の増大を牽制し、EUの構造改革を促し、望むらくは自国の権利や主張を強めたい、というあたりが狙い目ではなかったか。
・ヨーロッパの統合は、経済のみで十分だと彼らは思っていた。もちろん、金融大国イギリスが、ちゃんとEUから恩恵を受けていることも知っていた。すっぱり抜けたいと本気で思っていた人は、はたしてどれだけいただろう。
▽ドイツメディアは「Brexit」をどう報じたか
・ところが、24日の朝、目覚めると、EUは大変なことになっていた。イギリス人は、自分たちがEUの傘の外に放り出されてしまったことに気づいた。それも、よく考えてみれば、自分たちの意思で! しかも、残留派と離脱派の数はそれほどカツカツではなかった。離脱派が120万票以上多かったのだから、皆、頭の中がかなり混乱したことと思う。
・このあとのドイツでの報道は、たいへん興味深かった。 まず、すぐに書かれたのが、イギリスで突然、「Brexit(「Britain」+「exit」)」の検索が爆発的に増えたということ。今頃、検索しているということは、彼らはEU離脱の意味を理解しないまま投票したにちがいない、という揶揄である。イギリス人をバカにしている。  ●“Nach Abstimmung: Briten googeln, was der Brexit bedeutet” SPIEGEL-ONLINE, 24.06.2016  また、若い人の7割は残留に投票したという記事もすぐ出た。にもかかわらず年寄りのノスタルジーが勝ってしまい、その結果、かわいそうな若者たちは、これから死ぬまで哀れなイギリスで生きていかなければならないという趣旨だ。 しかし、無記名投票である限り、何歳の人が何に投票したかなどということが、翌日正確にわかるはずはない。変なニュースだと思い、ここにリンクを貼るつもりだったが、なぜかもう、この記事は見つからなかった。
・さらにシュピーゲルの記事「宴の後(二日酔いという言葉で表してある・訳注)〜BrexitのあとにはBregretが」というのも、相当示唆的だった。 ●“Katerstimmung bei den Briten: Auf #Brexit folgt #Bregret” SPIEGEL-ONLINE, 25.06.2016  「Bregret」というのは、「Britain」+「regret(後悔)」で、実にうまく新語を作るものだと感心してしまうが、これによれば、イギリス人は今、自分たちの愚かさに気づき、深い後悔にさいなまれているという。
・さらに第一テレビのオンラインページでは、「イギリスEU離脱決定後の雰囲気〜どんな地獄が待っている?」  ●“Was zur Hölle passiert jetzt?” ARD.de, 25.06.2016  どのニュースも意地悪なニュアンスに満ち溢れ、イギリス人に同情しているようでいながら、しかし、「それ見たことか」と囃し立てるような書き方だ。
▽「ヨーロッパ」から放り出されて…
・EUの政治の動きも注目に値する。  EU議会の議長はマーティン・シュルツというドイツ人で、ゴリゴリの社会主義者であるが、彼がイギリスに向かって、「出て行くなら、いっときも早く出て行け」と言い出した。  その結果、混乱を防ぐため、なるべくスムーズに離脱の手続きを進めようということで、一時は、「火曜日(6月28日)までにEUに離脱の願書を出せ」という声まで上がった。
・EU離脱などという、前例もなければ規則も定まらない一大事を進めるとき、本当に混乱を防ぎたいなら、当然、慎重に、ゆっくり進めなければならないはずだ。シュルツ氏を先頭とした一部のEU政治家(主に社民党)の言動は、イギリス人に対するいじめではないか。 。
・メルケル首相は最初、イギリスを急がせてはいけないなどと言って優しいところを見せたが、やはり28日、態度を変え、ドイツの連邦議会で突然、「いいとこ取りは許されない!」などと厳しい言葉を放った。それに対ユンカーEU大統領も、28日の議会のスピーチで、出席していた英UKIPの党首ファラージュを、「EUからの離脱に全力を投入していたくせに、何しにここへきた?」と、名指しで激しく攻撃して、議員の間で大きな拍手が起こったのが、ちょっと怖かった。
・今、EUの株式市場は混乱し、ポンドもユーロも下がっている。ドイツの報道によれば、さらにこれからは、イギリスの雇用が失われ、輸出が落ち込み、大不景気になるのだそうだ。 挙げ句の果て、大衆紙では、イギリスで働いている外国人はどうなるかとか、スコッチウイスキーは買えるのかとか、あたかも、イギリスとEUの国交が断絶するかのようだ。 そうするうちに28日、イギリスはサッカーのヨーロッパ選手権で超小国アイスランドに負け、一週間のうちに、二度も「ヨーロッパ」から放り出されてしまった。
▽国民投票のやり直しも
・もちろん、離脱を唱えていた政治家たちへの攻撃も凄まじい。昨今、あちこちで反EUの狼煙が上がっていたので、EU擁護派は、この際、イギリスの事象をうまく活用し、反EU勢力をコテンパンにやっつけようとしている。 特にドイツの政治家とメディアはEU擁護の最先鋒なので、イギリス人を血祭りにあげて、EUを離れれば、どんな不幸なことになるかを見せつけるつもりだろう。皆が、「イギリスの真似をしては大変!」と肝に銘じれば、願ったり叶ったり。
・だから、第2テレビのオンラインページはズバリ、「バイバイ、ブリテン〜スコットランドはEU残留希望」  ●“Bye bye Britain: Schottland will in der EU bleiben” ZDF.de, 25.06.2016  スコットランドは、EU残留派が多かったので、ここだけ独立させてEUに残そうという話だ。本当にそうなると、大ブリテンは消滅し、イギリスはただのイングランドになってしまう。イギリス人はますます“Bregret”になるだろう。 しかし、そもそも、国民投票の結果が気に入らないからといって、国の一部が独立し、それをEUが両手を広げて歓迎するというのは、正しいことなのか?
・いずれにしても、これからEUの勢力図は変わってくる。EUで2番目に大きかったイギリスが抜ければ、さらに力を増すのがドイツであることは間違いなく、他のEU国はそれを嫌う。 一方で、ドイツがこれからも厳しい金融引き締め政策を推し進めようとするなら、今まで味方をしてくれていたイギリスが欠けるので、経済破綻の南欧同盟(?)に押し切られる可能性も出てきた。
・ただ、本当にイギリスがEUから抜けるかどうか、それが今、どうもわからない。散々脅された結果、イギリス人は、もう一度国民投票をやり直したいと希望しているという。 わざわざ国民投票で民意を問うたのだからやり直しは変だが、イギリスで力(生産手段、情報、金融、政治etc.)を握っているエスタブリッシュメントは強硬なEU残留派であるし、エスタブリッシュメントの集合体であるイギリス議会も、もちろんEU派が大多数を占める。
・つまり、「変なこと」がいつの間にか「正しいこと」に変わる可能性はじゅうぶんある。 そもそも議会制民主主義を否定し、政治の素人である国民を巻き込んで、直接民主主義(国民投票)など行ったのが大間違いだったのではないか。そのうち、キャメロン首相の断行した国民投票自体が「違法」であったというような話になるかもしれない。
▽民主主義とはいったい何か
・さて、今回の残留派と離脱派の対立の本質はどこにあるのか? 真の問題はそこだ。  スロベニア出身の哲学者スラヴォイ・ジジェクはシュピーゲルに寄稿して、グローバルな自由主義経済を代表するグループ(中絶や移民や同性愛者などに寛容)と、ポピュリストのグループ(反移民で人種差別的、ネオファシスト的)の対立であると書いている。  ●“Gedanken zum Brexit: Unordnung unter dem Himmel” SPIEGEL-ONLINE,25.06.2016 
・しかし私は、グローバリズムで利益を得ている既存の支配層グループ(つまり前述の、生産手段、情報、金融、政治などを握っている富裕層)と、グローバリズムで割りを食ってしまったと感じている民衆(どちらかというと低学歴、低所得)の対立、つまり「貧富の対立」だと見ている。  その証拠に、国によっては、反EU勢力は、ネオファシストでも何でもなく、社会党など左派の政党として伸びている(ギリシャ、スペインなど)。  グローバリストは、国境も、国の規制も、少なければ少ないほど自由にお金儲けができるから、当然EU派である。それに対して、今の状況が不平等だと感じている人たちは、別に右でも左でもなく、要するに既存の体制に反発したいがためEU離脱に流れた。
・今、EUのあちこちで反EUに火がついていることだって、グローバリズムによって拡大した貧富の格差に対する抗議という観点から見ていけば、すっきりと説明がつく。 反移民や、反イスラムという考えは、現状に不満を持っている人たちをさらに煽るため、反EU派の政治家が後でくっつけた理由のような気がしてならない。
・そして、現状を不公平だと感じている貧困層の受け皿になり、グローバリズムに反旗を翻すとポピュリストと呼ばれて、悪い政治家となる。しかし、富裕層を保護する政治家はあくまでも民主主義者で、別段悪くは言われない。 「民主主義とはいったい何だろう」という根源的な疑問が、ここ数年来、常に私の頭に付きまとっている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49054

遠藤氏の指摘はさすがに深いところを突いている。『移民カードの方が、恐怖計画よりもパンチが効いていた』、移民が多い地域では『実に約6割もの子供がろくに英語もしゃべれないリトアニアやポーランドの移民であることは衝撃だった。容易に想像できることだが、そのようなクラスでは学級崩壊や教育の機能不全がおきやすい』、はその通りだろう。「政治同盟・通貨同盟・共通市民権に舵を切ったマーストリヒト条約」で、『裏切られた」と考える転向層を生んだ』、サッチャー退陣前後から、『保守党は、親EU/反EUの両陣営に分かれ、深い溝を抱えることになる』、『自国の事柄については自らの手で決めたい」という主権的な自決意識である。この根底にあるのも、イングランドの強烈なナショナル・アイデンティティ』、労働党が煮え切らない態度をとった背景には、スコットランド住民投票で支持を失ったこと、などの指摘も参考になった。『今回のイギリス国民投票は、対岸の火事ではない。これは、いそぎ自らの社会を点検すべきよい機会を提供するのではなかろうか』、は我々にも突き付けられた重大な課題だ。
ぐっちーさんの楽観的な見方は、6月25日のこのブログで紹介した6月24日付け東洋経済オンライン「英国のEU離脱は、極めて合理的な判断だった 英トップエコノミストが予言していた「崩壊」」と通じるものがある。EUに参加してないスイスやノルウェーは時間をかけてEUとの取り決めを構築してきたが、英国の場合は今後2年程度でそれをやらねばならないという摩擦現象は、やはり無視できないように思う。
川口マーン惠美氏のドイツの見方の紹介も面白かった。『ユンカーEU大統領も、28日の議会のスピーチで、出席していた英UKIPの党首ファラージュを、「EUからの離脱に全力を投入していたくせに、何しにここへきた?」と、名指しで激しく攻撃』との嫌味な対応は、テレビでも報じられていたが、今日のニュースではファラージュが党首を何故か辞任したようだ。ジョンソン氏と並ぶ離脱派のリーダーが、これから正念場を迎える時に2人とも表舞台から退くという無責任さには、空いた口が塞がらない。『イギリス人が一番嫌っていたのは、移民でもイスラムでもなく、EUという構造の中で、自国の主権を次第にEUに譲り渡していかなければならないことだった』、といのは正鵠を突いている。ドイツ流の金融引締めを支持してきた英国の離脱で、ドイツもリーダシップのかじ取りがこれまで以上に難しくなるのだろう。「グローバリズムで拡大した貧富の格差」、民主主義とポピュリズムについて、私としても改めて考えていきたい。
タグ:東洋経済オンライン 大チャンス サッチャー 労働党 現代ビジネス 川口マーン惠美 ぐっちーさん スコットランド住民投票 英国EU離脱問題 (その6)EU離脱で「のた打ち回る」ことに、「英国はEU離脱で没落しません」、ドイツでの離脱報道 英国はEU離脱で「のた打ち回る」ことになる 「EU研究第一人者」北大・遠藤教授の現地レポ イギリスは、本当は階級・地域・エスニシティなど多くの分断線が潜む複雑な国 18-24歳の有権者の73%、25-34歳の62%が残留に投じた一方、55―64才の57%、65才以降の6割が離脱を選んだ オックスフォードやケンブリッジでは7割以上が残留に入れたのに対し ボストンやハヴァリングなど低学歴の住民が多い地域では7割前後が離脱を求めた 投票で最も重視した要因 、離脱派は、第1に主権や自決、第2に移民制限、第3にEUをめぐる選択不能性を重んじた 残留派は第1に離脱時の経済や雇用への悪影響、第2に(シェンゲン・ユーロ不参加のまま)EU市場にアクセスできること、第3に離脱した時の孤立感 残留派のいわゆる「恐怖計画(Project Fear)」 あまりアピールしなかった 移民は国境管理、国家主権、ナショナリズムに深く関わる最大の関心事 移民が教育、医療、住宅などの地方のインフラを侵食し、地元民が懸念を深めているか 実に約6割もの子供がろくに英語もしゃべれないリトアニアやポーランドの移民であることは衝撃 そのようなクラスでは学級崩壊や教育の機能不全がおきやすい 本来ならば責めるべきは行政や監督官庁で、移民たちではないはずだが 政治同盟・通貨同盟・共通市民権に舵を切ったマーストリヒト条約 前後から変質し、「裏切られた」と考える転向層を生んだ 1975年投票時には親EECの保守党の政府の一員として残留を支持 1988年に有名なブリュージュ演説を行い、そのころから自由市場を超えて介入や関与を深め、また通貨同盟に邁進するEU(当時EC、欧州共同体)への批判を徐々に強めていった ウェストミンスター議会における反EU演説 守党内、支持層にも欧州懐疑主義は膨らんでいった 、「自国の事柄については自らの手で決めたい」という主権的な自決意識 この根底にあるのも、イングランドの強烈なナショナル・アイデンティティ 保守党は、親EU/反EUの両陣営に分かれ、深い溝を抱えることになるが拡がっていった 「ボルケシュタイン指令」 フランスの公営企業に勤める労働者たちが反発 労働党はキャメロン保守党政権と共闘し、連合王国の維持、すなわち独立阻止に向けてキャンペーンを張った。その結果、かつて一強の様相を見せていたスコットランドで労働党はほぼ駆逐 その「二の舞」を避けるため 労働党指導層はこのキャンペーンに必要な露出、資源、エネルギーを提供しなかった。さらにひどいのは、入念に計算された形でよそよそしい印象を与えたことだ。(中略)その直接の結果として、余りに多くの労働党支持者が手遅れになるほど遅い段階まで、労働党がじっさいにはEU加盟を支持していることを知らなかったのである 、〈移民=EU=グローバル化〉を介して高揚したナショナル・アイデンティティと主権=自決意識が、EUのメンバーシップに向けられたものといえよう EUは国家でなく、将来においても国家にならない。その主人はいまだ加盟国 この国はのたうち回るだろう EUもまた、大変なダメージを受けている グローバル化によって、雇用が不安定化し、生活が向上しない(のに、政治家を含め誰もその問題に見向きもしない)と考えている広範な勤労者・労働者層に対して、広範なインフラ整備から給料のような形の価値付与まで、本腰で取り組まないと、この手のバックラッシュ(反動)は、どの国でも起きうる現象 今回のイギリス国民投票は、対岸の火事ではない。これは、いそぎ自らの社会を点検すべきよい機会を提供するのではなかろうか ぐっちーさん「英国はEU離脱で没落しません」 非EUのスイスやノルウェーは没落したのか イギリスはEU離脱で没落しない 完全な内需の国であって、貿易上多少不利になったところで失うものはそう多くない ロンドン・シティーの金融業としてのインフラストラクチャーはそれこそニューヨークをもしのぐ、規模及び生態系を有しており、一朝一夕にこれに取って代わるインフラストラクチャーをつくることは不可能 イギリスがEUの中にいるメリットはあまりない 欧州の中で問題を抱えているのは移民問題も含めさまざまな問題に直面するEU参加国そのものであって、非参加国+自国通貨保有国は悠々と経済成長を続けている 高齢者の独善でも、名誉ある孤立でもない 金融マン的に「大変だ!!」と言っているときは EUの盟主ドイツで「イギリス離脱」はどう報じられたか〜これって「イジメ」じゃない? 結論が出て、ますます混迷深まる 何もポピュリストたちが焚きつけなくても、この国にEU懐疑派が伝統的に存在することは皆が知っていた。 イギリス人が一番嫌っていたのは、移民でもイスラムでもなく、EUという構造の中で、自国の主権を次第にEUに譲り渡していかなければならないことだった 宴の後(二日酔いという言葉で表してある・訳注)〜BrexitのあとにはBregretが」というのも、相当示唆的だった イギリスEU離脱決定後の雰囲気〜どんな地獄が待っている? 「それ見たことか」と囃し立てるような書き方 バイバイ、ブリテン〜スコットランドはEU残留希望 民主主義とはいったい何か スラヴォイ・ジジェク グローバルな自由主義経済を代表するグループ(中絶や移民や同性愛者などに寛容) ポピュリストのグループ(反移民で人種差別的、ネオファシスト的) 貧富の対立 グローバリズムによって拡大した貧富の格差に対する抗議
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