SSブログ

東芝不正会計問題(その21)司法の壁、「粉飾の原点」 [企業経営]

東芝不正会計問題については、7月7日に取上げたが、今日は、(その21)司法の壁、「粉飾の原点」である。

先ずは、山口利昭弁護士が7月12日付けで同氏のビジネス法務の部屋に掲載した「企業不正に立ちはだかる司法の壁(限界?)と行政当局の対応」を紹介しよう。
・7月8日の日経、朝日等の朝刊において、捜査当局は東芝会計不祥事に関する経営トップの刑事責任追及を見送る公算が強くなった、と報じられていました(朝日の社会面の記事が詳しいようです)。とりわけ朝日新聞の記事で印象的なのは、金融庁(証券取引等監視委員会)はなんとかPC部品取引(バイセル取引)に関して刑事立件をしたかったのですが、地検が慎重な判断を崩さず立件を断念したという内部事情です。
・経済的合理性はどうであれ、実際に部品取引の事実は実在していたことや、他社でも同様の取引が行われていたこと等から、利益の水増しが多額ではあるが経営トップ個人の刑事責任は問えないと検察が判断したとのこと。検察では、ちょうど8年前の長銀事件最高裁無罪判決の論旨が今も生き続けているのではないでしょうか。
・昨年5月、エディオンさんの営業秘密を取得したとして営業秘密侵害の件(不正競争防止法違反)で書類送検されていた法人としての上新電機さんですが、こちらも大阪地検は秘密取得に上新さんの役員が関与していたことは認められず、また再発防止策も真摯に実施しているとのことで立件を断念したことがマスコミ(産経新聞)で報じられていました。最近の企業不祥事は、経営者のプレッシャーに耐えかねて現場責任者(担当部署)が不正に走ってしまったことが発端とされるケースが目立ちます。本当にそうなのか、経営トップの不正指示や不正容認が立証できないにすぎないのかは不明ですが、いずれにしましても組織のトップの不正関与を立件することには厚い司法の壁が横たわっていることは間違いありません。
・このような事態に対して、今後は検察も平成28年改正刑事訴訟法における司法取引制度(合意制度)、刑事免責制度などを活用して「経営トップの関与」に切り込むことが予想されますが、その適用範囲はかなり限定されていますし、刑事裁判官が司法取引(合意)による供述(録取書)にどのような心証を得るのかは未知数です。そこで、金融庁や経産省等、企業規制を担う行政当局からは、「司法判断はあまりにも遅くて成長戦略の遂行のための規範としては使いにくい」「裁判例はとてもわかりにくくて、経済活動における予測可能性を判断するためには役に立たない」といった声も聞こえてきます。
・私は法律家の視点から、経営者が(善管注意義務違反を含めた)不正リスクを低減させるためには、司法判断を尊重した上での「健全なリスクテイク」が必要だと考えています。先日のジュピターテレコム事件最高裁決定(7月1日第一小法廷)のように、取締役の重要な経営判断時における予測可能性に最大限配慮する姿勢が司法判断に出てきたり、事実上法務省管轄で行われている会社法改正審議(会社法研究会での審議)で濫用防止のための株主権制限等を法文化して事業の効率性に資する会社法を検討する等、司法の世界も一定の努力をしています。
・しかしながら、どうも世間の認識とはズレがあるように感じます。コーポレートガバナンス・コードも、いわば取締役の善管注意義務違反の有無を予測するためのモノサシとしての役割が期待されていますし(コード案の「考え方」参照)、平成26年の金商法改正の際に、金融庁から提案された「(法人の有価証券報告書虚偽記載賠償責任の過失責任化に伴う)過失の客観化」についても今後「民間エンフォースメント」として検討されることが予想されます。
・経産省の研究会における会社法解釈指針の策定やモデル事例の紹介も、できるかぎり裁判所の法的判断を認識可能なものにしたい意向があるように感じます。また独禁法違反や不正競争防止法違反の規制については民々による紛争解決を活用する姿勢が顕著にみられるようになりました(たとえばエディオンさんは、法人としての上新電機さんに対して、今年5月、営業秘密侵害による損害賠償請求訴訟を提起しています)。これも民間エンフォースメントの活用です。企業に求められている不正リスクの低減化は、シロクロをつけることを民間活力に担わせることと同時に、行政規制や自主ルールの権威を高めて、(他の会社に妥当するかどうかは二の次で)自社の事業遂行に必要な範囲でのグレーゾーンを排除することに求められているようです。
・会社法や金商法、不正競争防止法等、それぞれ所轄する各省庁の足並みが揃うのかどうかはわかりませんが、アベノミクスの成長戦略を推進するための企業規制の流れは止まらないものと思います。法律以外のエンフォースメントを多用して、各省庁が「あるべき企業規制」を模索する中で、各企業はどのように不正リスクを低減させて社会的信用を維持、向上させていくべきか検討することが急務だと考えます(この点につきまして、私なりの腹案は持っておりますが、それはまた別の機会に述べたいと思います)。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2016/07/post-5753.html

次に、これまで東芝問題を意欲的に報道してきた日経ビジネスオンラインが、これを本にまとめたのを機に、その「さわり」を、7月14日、15日の2回にわたって掲載したものである。14日付けの「東芝不正会計問題は“終わった”のか 内部告発が暴いた「粉飾の原点」(前編)」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・歴代3社長の刑事責任追及は難しい――。 東芝の不正会計問題をめぐり、東京地検特捜部が証券取引等監視委員会に対して「事件化は困難」との見方を伝えていたことが、7月8日に分かった。日本経済新聞など複数のメディアが報じた。昨年発覚した不正会計問題が、一つの節目を迎えた。
・だが本当に、これで幕引きして構わないのだろうか。  不正の背景にあった米原発子会社の赤字隠しをスクープした日経ビジネスは、その後も徹底取材を続行。新たな証言や内部資料を盛り込んだ書籍『東芝 粉飾の原点』を7月15日に上梓する。
・「2012年度と13年度、米ウエスチングハウスは赤字に転落していましたね。否定する場合は午後1時までにご連絡ください」 2015年11月9日朝。筆者は東芝の広報部門に一本の電話をかけた。3カ月近くかけた取材の結論が正しいかどうか、確実に裏を取るためだ。それまでの経緯から、恐らく明確な返事はないだろうと思っていた。それでも記事を書くつもりだった。経済誌「日経ビジネス」の東芝取材班が進めてきた取材に、絶対の自信を持っていたからだ。
・「確かにご指摘の通りです」 午後1時過ぎ、スマートフォンが鳴った。広報担当者が静かな口調で肯定した。予想しなかった回答で動揺し、筆者は思わずこう聞き返していた。 「間違いない?」 「間違いありません」 東芝の“パンドラの箱”が開いた瞬間だった。
▽午後3時のスクープ
・「スクープ 東芝 米原発赤字も隠蔽」 東芝の中核子会社で原子力発電所の建設や保守を手掛ける米ウエスチングハウスが、計1600億円(注:記事掲載時は1ドル120円で計算、以降は当時のレートを基に1156億円と表記)の減損処理を行っていたことが日経ビジネスの取材で分かった。東芝経営陣の電子メールのやり取りなどを記録した内部資料から判明した。
・ウエスチングハウスは原発の新規建設が不調だったことなどを受け、単体決算で2012年度に9億2600万ドル(約762億円)、2013年度に約4億ドル(約394億円)を減損処理した。資産価格を大幅に切り下げたことが損失となり、2012年度と2013年度はウエスチングハウス単体で赤字に転落している。だが、東芝は「当社の連結決算には影響がなく、会計ルール上も問題がない」(広報)として、日経ビジネスの指摘があるまで開示してこなかった。
・東芝はこれまで、ほぼ一貫して原発関連事業は好調だと説明してきた。しかし、対外的な説明と内情が全く違っていたことが明らかになった。(日経ビジネスオンライン2015年11月12日) 11月12日午後3時。株式市場が閉じたタイミングでウェブサイト「日経ビジネスオンライン」に雑誌に先駆けて記事を掲載すると、大きな驚きをもって迎えられた。それまで“秘密”とされていたウエスチングハウスの業績不振が初めて明らかになったからだ。
・東芝は2006年、約6000億円を投じてウエスチングハウスを買収した。買収当時の社長の西田厚聰や後任社長の佐々木則夫は、2015年度までに30基以上の原発新設を受注し、原子力事業の売上高を1兆円規模に伸ばすと公言していた。だが2011年の福島第1原子力発電所の事故以降、日本はもちろん、世界中で原子力ビジネスは冷え込んだ。
・にもかかわらず東芝は、決算会見やアナリスト説明会でウエスチングハウスの経営環境について疑念を指摘されても、頑として不調を認めてこなかった。仮に不調を認めると、東芝の連結決算で巨額の減損処理を迫られる恐れがあったからだ。数千億円規模の損失を計上すれば、赤字転落は必至だ。脆弱な財務基盤がさらに傷つき、経営危機に追い込まれる可能性すらあった。
・わずか5日前、11月7日に開かれた2015年4〜9月期の決算会見で、上席常務CFO(最高財務責任者)の平田政善はこう述べた。「サービスや燃料事業が着実で、福島第1原発事故以降は安全対策というビジネスが伸びている」。一方で平田は、ウエスチングハウスの売上高や利益の絶対額などは明らかにしなかった。このようにして東芝経営陣は、具体的な数字を示さないまま社会や投資家に対して偏った情報を発信してきた。
・11月12日にウェブサイトに記事を掲載した直後から、ニュースは瞬く間に広まっていった。フェイスブックやツイッターを通じて記事が拡散し、新聞やテレビといったメディアも一斉に後追いした。そして東芝は翌13日朝、1枚のプレスリリースを発信する。 「当社の原子力事業に関する一部報道について」 日経ビジネスが報じた事実をほぼ全面的に認めた上で、こう締めくくっていた。 今後、本件に関わらず開示すべき事項を決定した場合には速やかにお知らせします。 WEC(注:東芝社内におけるウエスチングハウスの略称)に関する事項も含め可能な範囲で今後、積極的な情報開示に努めてまいります。(2015年11月13日付プレスリリース)
▽土俵際に追い込まれた東芝
・社会インフラから半導体、パソコンやテレビまで、ほぼ全ての事業領域で利益を水増ししてきた東芝。この不正会計が2015年4月に発覚して以降、同社を巡る環境は悪化の一途をたどってきた。 5月に第三者委員会が設置されて本格的な調査が始まった。6月の定時株主総会を経て、7月には当時社長の田中久雄を含め、西田と佐々木の歴代3社長が不正会計の責任を取って辞任した。8月に室町正志を軸とする新経営陣が固まるも、決算発表を2度延期するという失態を演じてしまう。不正会計による利益のかさ上げ総額は7年間で2306億円に達し、多くの有価証券報告書を訂正した。新しい事実が判明するたびに株価は急変動し、投資家は翻弄され続けてきた。
・結果、9月に東京証券取引所から「特設注意市場銘柄」に指定された。1年間の改善期間中に内部管理体制の改善が見られなければ上場廃止の恐れもある。記事が掲載された頃には、金融庁から課徴金が課されることも確実視されていた。こうした状況でウエスチングハウスの減損問題が発覚したら、規制当局がどんな判断を下すか予想がつかない。
・歴代の東芝経営陣はウエスチングハウスの苦境をひた隠しにしてきた。いったんパンドラの箱が開くと、神話さながらにあらゆる災いが噴き出し、制御不能な状況に陥りかねないからだ。そこでウエスチングハウス単体の減損処理が東芝の連結決算に影響しないよう、会計上の「トリック」を使った。不正会計が発覚した後も隠蔽を続けることで、嵐が過ぎ去るのを待っていたのだろう。
・しかし、東芝の思い通りにはいかなかった。日経ビジネスのスクープを受けて東証が動いたからだ。東証の幹部は取材に対しこう述べた。 ウエスチングハウス単体で巨額の減損があったのなら、今までの説明とは食い違う。企業ぐるみの隠蔽と言わざるを得ない。上場企業として投資家への説明責任を十分果たしていない。 東証は東芝に対し、報道された事実が正しいとすれば減損規模が大きすぎ、「適時開示基準」に抵触していると指摘した。特設注意市場銘柄に指定されている東芝にとって、東証の言うことは絶対だ。東芝は11月17日に「のれんの減損について」と題するプレスリリースを配信し、過ちを認めざるを得ない状況に追い込まれた。
▽不適切会計ではない、「粉飾決算」だ
・日経ビジネスは2015年8月以降、誌面やウェブサイトを通じて東芝関係者からの内部告発を募っていた。日本を代表する企業がなぜ不正に手を染め、長年にわたり明るみに出なかったのか。そしてなぜ、一部の人間に責任を転嫁するだけで幕が閉じられようとしているのか。その問題の根源を知りたかったからだ。
(『東芝 粉飾の原点』序章より )
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/070600052/071200003/?P=1

続く15日付けの「800人の証言で掘り起こす東芝の“闇” 内部告発が暴いた「粉飾の原点」(後編)」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽不適切会計ではない、「粉飾決算」だ
・東芝は少なくとも2009年3月期から、7年間にわたり巨額の利益をかさ上げしてきた。累計額は2306億円にのぼる。オリンパスやカネボウが「粉飾」していた額と比べても、決して少ないとはいえない。2015年5月に発足した第三者委の調査によって、コーポレートガバナンス(企業統治)が骨抜きにされ、「チャレンジ」という名のパワーハラスメントが横行していたことも浮き彫りになった。
・冷静に考えれば、東芝がやってきたことは「粉飾」だ。広辞苑(第6版)によると、粉飾決算は「企業会計で、会社の財政状態や経営成績を実際よりよく見せるために、貸借対照表や損益計算書の数字をごまかすこと」。東芝がしてきたことを表現するのに、これ以上適切な言葉は見当たらない。
・にもかかわらず、多くの新聞やテレビは「不適切会計」という言葉で一連の問題を表現してきた。この言葉は、東芝の発表資料をそのまま使ったものだ。
・東芝に自浄能力がないのは明白だった。2015年7月に引責辞任した歴代3社長は8月以降も会社に入ることを許され、クルマと個室を与えられていた。何の権限もないはずのOBが社内の人事に口を出し、不正に手を染めていた役員や社員に対しては生ぬるい処分でお茶を濁した。海外の投資家に「日本は企業の不正に甘い国だ」と思われることは、日本の国益を大きく損なう。それなのに規制当局は東芝の不正に切り込もうとしない。
・東芝は2015年11月、会社に損害を与えたとして西田、佐々木、田中の歴代3社長と最高財務責任者だった村岡富美雄と久保誠の両元副社長の5人を東京地方裁判所に提訴した。金融庁による課徴金納付命令を受け、賠償請求額は32億円に引き上げられたが、当初東芝が請求したのは「回収可能性等も勘案した額」として5人合計でたった3億円だ。
・長年にわたる粉飾は、東芝の事業構造を大きくゆがめた。2016年3月期の連結決算に、その「副作用」が鮮明に現れている。売上高は前の期比4460億円減の5兆6687億円で、営業損益は同8971億円悪化して7087億円の赤字になった。金融機関などを除く事業会社としては、過去最大の赤字である。最終赤字は4600億円となり、自己資本比率は6・1%という危機的な水準に落ち込んだ。
・2016年6月23日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用委託先を通じて、東芝を提訴していたことが分かった。不正会計による株価下落で受けた損害の賠償を求めている。東芝問題は、国民一人ひとりの年金問題でもあるのだ。
・経済メディアとして、こうした状況を座視してはいられない。東芝問題の本質を報じなければ、日本の経済界に取り返しのつかない禍根を残してしまう。東芝問題から得られる教訓は日本企業のガバナンスを進化させる材料になると、我々取材班は考えていた。
・ただし、通常の取材スタイルは通用しない。東芝は記者会見以外に取材の場を原則として設けていない。日経ビジネスは社長就任時から繰り返し、室町へのインタビュー取材を依頼しているが本書の執筆時点で実現していない。他の首脳陣への依頼も棚上げ状態になっている。経営幹部を夜回りなどで直撃しても、はぐらかされて終わりだ。そこで次のように、誌面とウェブサイトを通じて内部告発を募るという行動に打って出た。
▽集まった800人の肉声
・東芝では経営陣が「チャレンジ」と称し、通常の方法では達成不可能な業務目標を強制することが半ば常態化していました。同様の経験をお持ちかどうか、強制されたときにどのように対応したのか、率直なご意見をお聞かせ下さい。 アンケートは所属組織名も含め、実名でお答え下さい。内容に応じて、日経ビジネスの記者が取材させていただきます。取材源の秘匿は報道の鉄則です。そのため、このアンケートは所属組織のパソコンおよび組織から支給された携帯電話等で回答しないで下さい。(日経ビジネスオンラインより)
・誌面やウェブサイトを通じた呼び掛けに対し、最終的に800人以上が情報を寄せてくれた。東芝の現役社員はもちろんのこと、OBや取引先が社内の実情を告白。競合の電機メーカーや官公庁の職員も、自らの経験と照らし合わせて東芝の抱える問題を真剣に考えてくれた。手紙による情報提供も膨大な数にのぼり、専用の鍵付きロッカーを編集部に用意したほどだ。それだけ多くの関係者が、東芝の行方を心配していたということだろう。
・情報の確認作業は困難を極めた。書き込まれた内容が真実かどうか、どのような意図で書き込まれたのかは、文面からは判断しかねるからだ。内容も千差万別で、上司の不倫を告発するといった私怨に満ちた書き込みがある一方で、東芝の上層部に深く食い込まなければ知り得ないような情報もあった。
・日経ビジネスは8人の取材班で可能な限り告発者に直接対面し、事実関係について裏付け調査を重ねてきた。複数の証言を付き合わせ、公式文書を漁り、数字の齟齬を潰していった。確認できた情報は、日経ビジネスオンラインで連日報じた。これが共感を呼んだのだろう。取材班に寄せられる情報の質と量が、加速度的に高まっていった。 それが、冒頭の記事に加え、「第三者委と謀議 室町社長にもメール」(日経ビジネス2015年11月23日号)、「原発幹部さえ疑う『64基計画』」(同2015年12月7日号)などスクープにつながった。こうした報道が一つのきっかけとなり、東芝は2016年4月26日、ウエスチングハウスを含む原子力事業で2600億円を減損処理すると発表した。
▽名門企業はどこで道を踏み外したのか
・東芝は、誰もが知る名門企業である。売上高は5兆円を超え、リストラで減ったとはいえ連結従業員は約20万人に達する。テレビや冷蔵庫のような家電製品に限らず、発電所や交通システムなど幅広い事業を手掛け、生活に欠かせない存在だ。家族や取引先も含めれば、100万人単位の関係者がいるだろう。政財界への影響力も強く、「財界総理」と呼ばれた経団連会長を2人出している。
・誰もが仰ぎ見る存在だった東芝がなぜ、不正会計に手を染めたのか。 書籍『東芝 粉飾の原点』では数多くの証言を基に東芝の「粉飾の原点」に迫っていく。闇に葬られようとしていた事実を明るみに出すことで、様々な摩擦が生まれるかもしれない。だが真実と向き合わない限り、東芝の再生はない。リスクを承知で取材に応じてくれた多くの社員や関係者も、東芝の復活を心から願っているからこそ、真相を語ろうと思ったのだろう。
・日経ビジネス東芝取材班は以下の8人で構成した。小笠原啓、清水崇史(現・日本経済新聞証券部)、広岡延隆、宗像誠之、林英樹、編集委員の大西康之(現・フリージャーナリスト)、主任編集委員の田村賢司、副編集長の坂田亮太郎である。8人が知恵を出し合い議論を尽くしたことで、多くの発見が生まれた。書籍は取材班を代表して小笠原啓が執筆した。(文中敬称略、肩書は当時のもの)  (『東芝 粉飾の原点』序章より)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/070600052/071200004/?P=1

山口氏が指摘するように、長銀事件での敗訴が検察の経営トップ立件へのブレーキになったとのことで、『組織のトップの不正関与を立件することには厚い司法の壁が横たわっていることは間違いありません』、のようだ。しかし、長銀事件は不良債権問題に対する社会の怒りをなだめるため、素人が見てもかなり「無理筋」であるにも拘らず立件したから敗訴したのであって、トップの責任が明白な東芝まで、これと同一視するのは無理があるように思う。いつもは鋭い山口氏らしからぬ見方だ。ただ、『今後は検察も平成28年改正刑事訴訟法における司法取引制度(合意制度)、刑事免責制度などを活用して「経営トップの関与」に切り込むことが予想されますが、その適用範囲はかなり限定されていますし、刑事裁判官が司法取引(合意)による供述(録取書)にどのような心証を得るのかは未知数です』、らしいので、余り大くを期待できそうもなさそうだ。『アベノミクスの成長戦略を推進するための企業規制の流れは止まらないものと思います』、とのことだが、企業規制を成長戦略に従属させる政府の考え方には違和感を感じざるを得ない。
日経ビジネスオンラインの記事では、WHと東芝本体のズレについて、「東証が動いた」のは東芝出身の西室氏がかつて東証の社長をしていたとはいえ、ここで見逃したら完全に立場がなくなるので、動かざるを得なかったのだろう。マスコミが、粉飾決算を最後まで東芝の発表資料通りに「不適切会計」と報道しているが、これだけ苦境に追い込まれた企業であれば、通常であればコマーシャルを自粛するのが普通なのに、東芝は自粛しなかったことが、こうした「御利益」につながったと見るのは、うがち過ぎだろうか。GPIFの提訴の行方は、長い年月がかかるだろうが、注目されるところだ。
タグ:不正会計問題 東芝 (その21)司法の壁、「粉飾の原点」 山口利昭 ビジネス法務の部屋 企業不正に立ちはだかる司法の壁(限界?)と行政当局の対応 捜査当局 経営トップの刑事責任追及を見送る公算が強くなった 金融庁(証券取引等監視委員会) PC部品取引 バイセル取引 刑事立件をしたかったのですが 地検が慎重な判断を崩さず立件を断念 実際に部品取引の事実は実在 他社でも同様の取引が行われていたこと 利益の水増しが多額ではあるが経営トップ個人の刑事責任は問えないと検察が判断 長銀事件最高裁無罪判決 エディオン 営業秘密侵害の件(不正競争防止法違反) 上新電機 組織のトップの不正関与を立件することには厚い司法の壁が横たわっていることは間違いありません 平成28年改正刑事訴訟法における司法取引制度(合意制度)、刑事免責制度などを活用 「経営トップの関与」に切り込むことが予想されますが、その適用範囲はかなり限定されていますし、刑事裁判官が司法取引(合意)による供述(録取書)にどのような心証を得るのかは未知数 アベノミクスの成長戦略を推進するための企業規制の流れは止まらないものと思います 日経ビジネスオンライン 東芝不正会計問題は“終わった”のか 内部告発が暴いた「粉飾の原点」(前編)」 東芝 粉飾の原点 「スクープ 東芝 米原発赤字も隠蔽 減損処理 東芝は「当社の連結決算には影響がなく、会計ルール上も問題がない」(広報) 日経ビジネスの指摘があるまで開示してこなかった ほぼ一貫して原発関連事業は好調だと説明 対外的な説明と内情が全く違っていたことが明らかになった 東芝は翌13日朝、1枚のプレスリリースを発信 不適切会計ではない、「粉飾決算」だ 7年間にわたり巨額の利益をかさ上げしてきた 累計額は2306億円 チャレンジ パワーハラスメントが横行 多くの新聞やテレビは「不適切会計」という言葉で一連の問題を表現してきた。この言葉は、東芝の発表資料をそのまま使ったものだ 海外の投資家に「日本は企業の不正に甘い国だ」と思われることは、日本の国益を大きく損なう 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 東芝を提訴 集まった800人の肉声 連結従業員は約20万人
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0