金融関連の詐欺的事件(行為) [金融]
今日は、金融関連の詐欺的事件(行為) を取上げよう。
先ずは、元内閣参事官・嘉悦大教授の高橋洋一氏が3月15日付けZAKZAKに寄稿した「市場に巣くう反社会的勢力 監査法人は当然、取引所や証券会社にも責任」を取上げよう。
・元ジャスダック上場のグローバルアジアホールディングスによる粉飾決算事件をめぐり、増資で調達した資金が暴力団などに流れていたと報じられた。 同社は飲食店経営などを手掛けていた会社で、証券取引等監視委員会が2015年3月、決算を粉飾した疑いがあるとして同社本社などを金融商品取引法違反容疑で強制調査し、東京証券取引所は同年9月、内部管理体制に不備があるとして同社を上場廃止にしていた。
・今回、警視庁は、同社の14年3月期の有価証券報告書に4億4500万円の架空資産を計上し粉飾した疑いで同社元社長らを逮捕した。一連の捜査の中で、元社長らが、新株予約権の発行・行使で得た資金を、複数の暴力団に提供していた疑いがあることが判明したという流れだ。
・カネに色はついていないとはいえ、資金調達したカネが正当な事業ではなく暴力団に流れていれば、表の有価証券報告書には記載できず、必ず粉飾決算になるはずだ。その意味で、今回の粉飾決算と暴力団への資金提供は、表裏一体だといえる。
・証券市場での徹底したディスクロージャー(開示)を通じて、反社会的勢力との関係も白日の下にさらすというのが、最低限必要なことである。 もちろん、有価証券報告書の中に、会社が反社会的勢力との取引があると明記されるはずはないが、反社会的勢力との取引の結果、どこかで粉飾せざるを得なくなる。この意味で、監査法人の役割は大きい。
・今回問題になった14年3月期については、東証等に上場している会社のうち62社で監査法人の交代があった。グローバルアジアホールディングスもその1つで、しかも、珍しい任期途中の交代だった。 監査法人が交代する際には、交代の理由のほか、監査法人の意見を臨時報告書で開示することになっている。しかし、同社の場合、交代の詳細な理由は明らかでなく、監査法人からの意見も出ていない。この点から見て、監査法人が責任を十分に果たしていたとはいえない。
・証券市場のお目付け役である証券取引所の責任も小さくない。今回のケースでは、15年に上場廃止を決定しており、かろうじて面目を保ったところだ。
・今回の事件で、暴力団に流れたとされているのは、14年に新株予約権の発行・行使で得た資金である。これには、証券会社も関係している。証券会社としては、資金調達した後、適切に資金が使われないと、社会的な責任を果たしたとはいえない。今回の場合、当該証券会社にも大いに責任があるだろう。
・いずれにしても、証券市場で資金調達しようとする会社自体が反社会的勢力との取引をしないのは当然として、証券市場の関係者である監査法人、証券取引所、証券会社が反社会的勢力を排除するように目を光らせることが必要である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160315/dms1603150830004-n1.htm
次に、元銀行で国際的決済システムに携わり、現在は帝京大学経済学部経済学科教授の宿輪純一氏が6月8日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「被害110億円!大泥棒、銀行間ネット“スイフト”上に現る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・筆者の長年の友人であるフィナンシャルタイムズ米国版の編集長ジリアン・テッドが、珍しく「決済インフラ」の記事を編集長自ら書いた。これはそれだけ重要な問題であるからだ。 今年2月、バングラデシュ中央銀行がハッキングされ、国際金融ネットワーク「スイフト(SWIFT)」のアクセスコードなどの情報が盗まれた。犯人はバングラデシュ中銀になりすまし、アメリカの中央銀行FRB(Federal Reserve Bank)に保有するバングラデシュ中銀の口座から1億100万ドル(約110億円)を強奪。実はこれ、「史上最大級の銀行泥棒」である。
・国際業務を行うほとんどの銀行はスイフトを使用しているだけに、この事件は世界中の銀行に衝撃を与えた。同じやり方で他の銀行が狙われる可能性が高いからだ。これは由々しき事態である。スイフトは最大で10件、同様の侵入事件に遭っていると報道されている。 銀行泥棒といえば、映画にもなったボニー&クライドやジョン・デリンジャーなどの強盗犯が有名だ。それとの違いは、今回は“顔の見えない犯行”で、ネット化し顔が見えなくなっている現代社会を象徴した犯罪ともいえる。
▽巨額窃盗事件の舞台となった「スイフト」とは何か
・スイフトとは、決済インフラで金融機関専用のネットワークのことだ。ある意味、裏方のインフラであり、ほとんどの読者はご存じないのではないか。SWIFTとは、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略称で、以前は「国際銀行間通信協会」と呼んでいた、1973年にベルギーで設立された共同組合(Société Coopérativ)である。その後77年に稼働を開始した。
・1960年後半からユーロダラー市場が拡大し、73年から国際通貨制度に変動相場制が導入されるなど、国際金融取引が拡大した。そのためテレックス(TELEX)やマニュアル(人手)の事務処理が限界、つまり紙による事務処理の限界(ペーパークライシス)に達した。その様な状況に対応するため、スイフトが設立された。
・そもそもはテレックスを高度化したE-Mailの様なもので、自動化を目的としている。そのイメージは、エクセルの様なマス目状。金融機関名や金額などを決められたマスに入れていくため、自動処理しやすくなっている。また、人手による間違いも防止しようという目的もある。 導入している国は200としており、世界中をカバーしている。参加機関は1万を超え、日本では250もの主たる銀行や金融機関が使用している。
・業務面から見ると、銀行における海外送金や通貨ディーリング、貿易、証券等の決済で一般的に使用され、中央銀行間の為替介入や国債売買の決済にも使われている。 現在の本部はベルギーの首都ブラッセル(ブリュッセル)郊外のラ・フルプの森林保護区にある。筆者は金融機関に勤務していた際、長年スイフトを担当し、この本部も19回訪問した(邦人としてはトップクラスの件数だろう)。ブラッセルは欧州の“へそ”とも呼ばれており、いうなれば、欧州の地理的な中心地である。他にもEU本部や、同じ決済インフラだがこちらは証券用のユーロクリア(Euroclear)もある。
・スイフトが“安全”といわれたのは、当初、銀行を中心とした金融機関のみの共同組合だったからである。一般のE-Mailの様にさまざまな人が入っていない、クローズドな組織で、メンバーが限られていたのである。そのため、一般の金融機関はスイフトに関して安全上の問題はない、と安心していたはずだ。
▽今回の事件の手口と スイフトの対応
・犯人はバングラデシュ中央銀行に侵入、マルウエア(悪意をもったプログラム)を使用して、スイフト関係の情報を入手した。その後、いわゆる「なりすまし」て、アメリカの米国の中央銀行FRBにあるバングラデシュ中銀の口座から送金した。
・送金経路はドイツ銀行を経由して、フィリピンのリサール商業銀行(RCBC:Rizal Commercial Banking Corporation)にある口座に入金された。犯人は口座から現金で出金し、大部分は行方不明となっている。犯行はドイツ銀行からの照会で発覚。さらに、犯人からはスリランカのパン・アジア銀行 (Panasia Banking Corporation)にも支払指図が送信されていたが、入力ミス(綴りのミス)があり、こちらは阻止できた。さらに、犯人は関係した銀行にもマルウェアを使用し、自分たちの痕跡を消した。使用したパソコンの所在地はエジプトという情報もある。
・今回のケースが重大なのは、ほとんどの銀行が使用するスイフトが使われたことである。特にスイフトに不慣れな金融機関は要注意だ。しかし幸いにというか、金融機関を中心としたネットワークなので、企業や個人の口座はこのパターンでは犯人が狙う対象にはならない。
・今回の事件に対し、スイフトは不正送金を行わせるマルウェアへの対応を図ったパッチ(プログラムモジュールの強化修正版)を提供している。また、次のSWIFT製品バージョンにおいては、このアップデートを含めセキュリティ強化されたものがリリースされる。セキュリティガイドラインやチェックリストなども公表され、ホームページで注意喚起をしている。
▽新世紀型の銀行泥棒が多発 金融実務は常に“悪”との戦い
・「新世紀型の銀行泥棒」が始まっている。この5月15日には日本でも、「ATM一斉引き出し」などITを利用し銀行を狙った大規模な国際的金融犯罪が起きている。最近、日本全国17都府県にあるコンビニなどのATMから、大量の現金が一斉に不正に引き出された。南アフリカのスタンダード銀行発行の偽造クレジットカード1600枚以上が使われ、キャッシング枠で何度も現金を引き出す手口で、出し子100人以上が午前5時からの2時間半で一斉に合計約20億円を引き出した。途中でシステムが検知したが間に合わなかった。
・その資金が内外の反社会的勢力に渡っている可能性も高い。ビットコインやプリペイドカードでIS(イスラム国)が資金を得ている、などと新聞でも報道された。G7でも議題になり、日本でも「改正資金決済法」が成立し対応が強化された。日本でもビットコインは貨幣(通貨)ではなく「財産的価値」として定義し、金融庁が監督官庁となって取引所や売買を監視する。法制上の処置を講じて利用者保護や不正利用の防止に適切な対応を図ろうとしているのだ。
・「学問や頭の中での金融」と「実務としての金融」の大きな違いは、この“悪”の存在である。金融の実務に携わったことのない方の理論モデルやビジネスモデルでは、マネーロンダリング等の犯罪(コンプライアンス)に対応するコストを計算に入れていないことが多い。世の中、特に金融周りは“善人”ばかりでなく、“悪人”も多い。例えば、嘆かわしいことであるが、いまだに「振り込め詐欺」の被害は相当な金額になる。
・しかも、最近ではシステムをハッキングし、マルウェアなど最新の高度なIT技能を活用する。犯罪との闘いはいつもイタチごっこだ。今回のバングラデシュ中央銀行の場合も、セキュリティが遅れているということで狙われたようだ。実際の“金融”を考えるうえで、最も大事なのは消費者保護であることは常に変わらない。それはFinTechでも一緒である。スイフトが狙われ、被害が世界に広がるならば、それは新たな「地政学的リスク」かもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/92609
第三に、上記とはやや趣を異にするが、8月4日付け現代ビジネス「まさか銀行がダマすわけが…あった!大損する被害続出、この保険商品を買ってはいけません 覆面取材もしてみた」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・退職金が振り込まれたタイミングを見計らって営業攻勢、相手はあなたの懐具合を知っている。 銀行が騙すわけがない。銀行が変な商品を売りつけてくるはずがない。そう「過信」している人は、気をつけたほうがいい。銀行員を信じたため、人生計画が狂った人たちの「実話」を紹介しよう。
▽「利率がいい」と誘う
・まずは国民生活センターの現役職員が、最近寄せられたという「相談事例」の中身を明かす。 「今春に70代の男性から、『銀行から買った保険で損を被りそうだ』と相談を受けました。 発端は、口座を持っていた支店の行員が自宅を訪ねてきて、『定期預金よりも利率がいい商品がある』と持ちかけられたことでした。そこで薦められたのが豪ドル建ての一時払い終身保険。『豪ドルはあまり変動がないので、安心して取引ができますよ』と」 契約期間は10年間なので、満期時には男性は80代。男性は、「万が一」を考えて契約を3年区切りにし、急なおカネの必要が出た時には「解約」をするという旨をあらかじめ銀行員に伝えた。 慎重に慎重を重ねて契約時には娘にも立ち会ってもらったうえで、約2000万円を一括払いして終身保険を契約。それから3年が経って、やはりおカネが必要になったので、解約の相談をしに行ったところ—。
・「銀行員からは、いま解約すると1500万円程度しか戻ってこないし、解約手数料に400万円がかかると言われたそうです。男性によれば、高額な解約手数料については何ら説明を受けていなかった。それで『納得がいかない』と、センターに相談されたわけです」(前出・国セン職員) 保険を解約しようとしただけで、合計900万円もの「大損」をしかねないのだから、男性が怒るのも無理はない。
・実はいま銀行員から保険を購入したがため、大損リスクに直面する「被害者」が続出している。 「銀行窓口で勧誘された生命保険に関する相談件数は、'14年度の365件が、'15年度は410件に増えています。今年度は4月~7月半ばで107件の相談があり、昨年度のペースを上回っています」(前出・国セン職員) 国民生活センターに最近寄せられたというリアルな「被害実例」を紹介しよう。
・【60代夫婦のケース】 夫が最近退職したところ、退職金が振り込まれたタイミングで銀行員から連絡があり、「いまなら良い金利で運用できる商品がある」というので夫婦で銀行へ。そこで薦められたのが、一時払いの終身保険。銀行員から「相続対策にもなる」と言われたので、老後不安を考えてその場で申し込みを完了。約500万円の保険料を一括で支払った。 しかし、夫婦は商品の仕組みを詳しく理解せずに契約したため、後々になって不安に。後日、夫婦で相談して、「解約しよう」と再び銀行を訪ねたところ、行員は素直に解約に応じず、「まずは保険料を300万円に減らしたらどうか」などと提案。銀行員と話をしても埒が明かず、不安なので早くクーリングオフしたいが、どうしたらいいか……。
▽元本割れのリスクを隠して
・この夫婦と同じような被害体験をして、「身に覚え」がある中高年は少なくないのではないか。 最近では、より悪質な次のようなケースまで出てきている。
・【70代女性のケース】 預金をしている銀行から「よい商品があるので来てください」という電話があったので、日時を約束して出向いた。もともと複数の預金をまとめて1500万円ほどの定期預金にしようと行員に相談していたが、いざ銀行に行ってみると、「全部を定期預金にするのではなく、別々の商品にしたほうが良い」と言われた。個室に案内され、行員の上司も参加する中で薦められたのが「外貨建ての商品」だった。 本人は以前から預金をしたいと伝えていたので、「外貨建て」というのは外貨預金のことだと勘違いしていた。高齢なのでリスク商品で運用するつもりはなかったが、しつこく言われたので契約した。が、家に帰ってパンフレットをよく見ると、契約したのが10年満期の外貨建て変額保険だったので、驚いた。 記憶する限り、個室で2人の行員と話した中で、「保険」という言葉は一度も使われなかった。しかも自分は預金を希望しているのに、なぜ保険を売りつけるのか。怒りが収まらず、いますぐクーリングオフをしたい。
・いずれのケースも、顧客は預金などリスクのない運用を求めているのに、銀行側はそれを完全に無視して、「元本割れリスク」のある高額商品を売りつけている。 なぜそんなことをするのか。理由は一つで、そうした「危険な商品」を売りつけたほうが、銀行は圧倒的に儲かるからである。ファイナンシャル・マネジメント代表の山本俊成氏が言う。 「数年前の銀行業界では、最大の営業商品は投資信託でした。売れば売るほど手数料が入るおいしいビジネスでしたが、各行が次々と参入して手数料の値引き競争が激化。旨みがなくなってきた。
・その代わりに出てきたのが、生命保険。投信同様に、売った分だけ生保会社から手数料が入るので、各行が営業モード全開。特に日本では高齢者を中心に『銀行』というだけで絶大な信頼がある。その信用力を持って保険の窓口販売(銀行窓販)をするだけで、ウソのように大量の保険が売れる」 実際、日本能率協会総合研究所が今月発表した『高齢者のくらしと金融に関する調査結果』によれば、調査対象とした60歳以上の高齢者のうち4分の1が銀行窓販の利用経験者。利用はしていないが、銀行の担当者からアプローチを受けたことがある人も含めれば2人に1人に及んでいる。
・メガバンクから地銀まで、全国各地で銀行マンが保険をセールスしまくっているわけだ。『信じていいのか銀行員 マネー運用本当の常識』(現代新書)の著書がある経済評論家の山崎元氏も言う。 「銀行が窓口で生命保険を売った場合、銀行が生命保険会社から受け取る販売手数料は外貨建て終身保険だと4~9%と言われています。一方で、投資信託の場合は2~3%なので、投信を売るよりも保険を売るほうが『2倍以上』もおいしい。 しかも、投信は手数料を顧客に開示しなければいけないが、保険は開示義務がありません。さらに、マイナス金利時代のいま、稼ぎどころのない銀行にとって保険販売は手っ取り早い稼ぎになる。 はっき銀行が生命保険会社から受け取る販売手数料は外貨建て終身保険だと4~9%と言われています。一方で、投資信託の場合は2~3%なので、投信を売るよりも保険を売るほうが『2倍以上』もおいしいり言って、手数料が4~9%の金融商品は『ぼったくり商品』だが、それが金融知識のない高齢者たちに堂々と売られ、銀行の重要な収入源になっているわけです」
▽まず定期預金に入らせる
・右のグラフは金融庁が作成したもので、商品別の手数料率推移を示している。これを見ると、外貨建て保険の販売手数料が伸び続け、投信に代わって銀行の「稼ぎ頭」になっている様が如実に見て取れる。 銀行が売る保険商品の中には手数料が10%と「超高率」のものもあり、1000万円の保険を売った場合、100万円が銀行の懐に入るのだから実入りは大きい。銀行員はこうした高額保険を売りつけようと、あの手この手の「営業術」を駆使しているのが実態だ。
・岸森健介氏(仮名、50代)は、そんなバンカーの巧みな術中にハメられた一人。長年担当してもらっている女性行員から突然訪問を受けたのは、岸森氏が住宅ローンを完済した直後だったという。 「会社にやってきて、『住宅ローンの返済が終わったようですから、そろそろ運用のほうも考えてみませんか』と持ちかけてきました。私が財形貯蓄で老後資産をコツコツと貯めていたのを把握していて、『財形を取り崩して、定期預金に回しませんか』と誘ってきました」
・岸森氏が、「特に運用の意思はない」と告げると、女性行員は声を潜めて、「いま特別な金利をご案内しているんです」と囁いた。提示されたのは、3ヵ月定期で、500万円を預けると2万~3万円の利息が付くもの。確かに財形や普通預金より利率がいいと思い、500万円を預けた。 それから3ヵ月後、女性行員が再訪してきた。 「そろそろ定期の期間が終わります。今度はこの500万円を外貨建て保険に回しませんか。普通預金に戻すよりもずっと利率がいいですよ」 そう言って次に薦めてきたのが、「外貨建ての変額保険」。500万円を一括で払えば保険会社がそれを運用し、「うまくいけば払ったより多くの額が返ってくる」と誘われた。付き合いの長い行員だったので信用して、「500万円のうち300万円分なら」と任せたが、これが大きな過ちだった。
・「後日、知人の金融マンにその話をしたら、『完全に騙されたね』と言われました。目下の円高で、すでに数十万円のマイナスが出ているようです。いま解約する場合はさらに数十万円もかかる、と」 ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏は、「銀行員がよくやる手口です」と言う。 「定期預金の満期に近づく頃に保険を売りつける。セールストークは、『預金はほとんど金利がつきません』。そして、手数料を多く稼げる外貨建て変額保険などを、『安定的に資産を増やせます』と売り込む常套手段です。 顧客が契約した後に損失リスクに気付いても、大抵は後の祭りです。8日以内のクーリングオフや特定早期解約の期間内に申し立てないと、その後は裁判で争うか、泣き寝入りするしかない」
・本誌記者が大手行の窓口を「覆面取材」した際も、バンカーの驚愕の営業術に出くわした。 訪ねたのは、40代の本誌記者が口座を開設している都内の支店。すでに入っている医療保険の見直しと新たな資産運用の相談を持ちかけると、対応した女性行員はさっそく、「いまは××社の保険に入っていらっしゃいますよね」と言ってきた。 こちらからは伝えてはいないのに、口座の入出金記録から把握したのだろう。続けて、「奥様の口座も確認させて頂きました」と言うので、唖然とした。 確かに妻も同じ支店に口座はあるが、それも伝えているわけではない。銀行員はパソコンの端末ひとつを叩くだけで、こちらの「プライベート」が丸見えなのである。 「奥様の分も含めて、保険商品を提案いたします」 まだ相談を開始して10分ほどなのに、薦めてきたのは豪ドル建ての個人年金保険。それも妻の定期預金400万円分をピッタリ同額分、そのまま保険に転換する「設計書」になっていた……。 銀行からすれば、顧客の資産の増減からカネの出入りは1円単位まですべて丸裸。その圧倒的な情報量を武器に、客の懐具合を見ながら保険を売りつける。それが銀行の保険販売の実態である。
・いまやそんな銀行窓販による保険販売は年間5兆円規模の超ビッグビジネスだが、売り上げの過半を占めているのは外貨建て保険と変額保険。ファイナンシャルプランナーの平野雅章氏が言う。 「銀行は医療保険やがん保険も扱いますが、商品数は少なく、重視しているとは言い難い。外貨建て保険のほうが販売単価も高く、手数料を効率よく稼げるからでしょう。しかし、こうした商品は元本割れリスクがある。中高年は手を出すべきではない」
・保険コンサルタントの後田亨氏も、「銀行が売る外貨建て保険や変額保険は資産運用には向いていない」と言う。 「私がある大手保険会社の資料を調べた時、顧客には豪ドル建て商品を積極的に販売していたのに、その保険会社自身は豪ドル建ての資産にほとんど投資をしていなかった。つまり、自分たちは買わないような商品を顧客に売ろうとしている。良識ある銀行の窓販担当者は、『窓販の仕事はもうしたくない』と嘆いているほどですから」
・金融庁はこうした事態を問題視し、銀行に販売手数料の開示を促しているのだが—。 「開示となれば、保険は売りづらくなるので、銀行側は開示直前まで『駆け込み』で一気に保険をセールスしてくる可能性がある」(前出・長尾氏) 手数料開示の目安は「年内」。しばらく気をつけたほうがよさそうだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49347
第一の記事のグローバルアジアホールディングスについては、Wikipediaでチェックしたところ、旧社名はあの悪名高い「アイビーダイワ」だった。長年にわたって市場を欺く悪質行為を繰り返した挙句、漸く「退場」となったが、一旦、上場してしまうと、尻尾を掴むのが難しくなるのだろうか。それにしても、Wikipediaで見る限り、よくぞここまで問題含みの企業を上場させていたものだ。高橋氏が指摘するように、監査法人や証券会社の責任も改めて問われるべきだろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B9
第二の記事では、マルウエアを仕込まれて情報が盗まれるのは、日本年金機構などでもあったこととはいえ、ほかでもない中央銀行が引っかかってしまうというのは、やはり問題だろう。1億100万ドル(約110億円)の損害は、貧しいバングラデシュにとっては大きな負担だろう。なお、「コンビニATMでの巨額資金の不正引き出し事件」については、5月31日に取上げた。
第三の銀行の保険窓販で、『銀行が生命保険会社から受け取る販売手数料は外貨建て終身保険だと4~9%と言われています。一方で、投資信託の場合は2~3%なので、投信を売るよりも保険を売るほうが『2倍以上』もおいしい』、というのでは、銀行は売りまくるに決まっている。手数料開示を「年内」といわず、もっと早めるべきではなかろうか。
先ずは、元内閣参事官・嘉悦大教授の高橋洋一氏が3月15日付けZAKZAKに寄稿した「市場に巣くう反社会的勢力 監査法人は当然、取引所や証券会社にも責任」を取上げよう。
・元ジャスダック上場のグローバルアジアホールディングスによる粉飾決算事件をめぐり、増資で調達した資金が暴力団などに流れていたと報じられた。 同社は飲食店経営などを手掛けていた会社で、証券取引等監視委員会が2015年3月、決算を粉飾した疑いがあるとして同社本社などを金融商品取引法違反容疑で強制調査し、東京証券取引所は同年9月、内部管理体制に不備があるとして同社を上場廃止にしていた。
・今回、警視庁は、同社の14年3月期の有価証券報告書に4億4500万円の架空資産を計上し粉飾した疑いで同社元社長らを逮捕した。一連の捜査の中で、元社長らが、新株予約権の発行・行使で得た資金を、複数の暴力団に提供していた疑いがあることが判明したという流れだ。
・カネに色はついていないとはいえ、資金調達したカネが正当な事業ではなく暴力団に流れていれば、表の有価証券報告書には記載できず、必ず粉飾決算になるはずだ。その意味で、今回の粉飾決算と暴力団への資金提供は、表裏一体だといえる。
・証券市場での徹底したディスクロージャー(開示)を通じて、反社会的勢力との関係も白日の下にさらすというのが、最低限必要なことである。 もちろん、有価証券報告書の中に、会社が反社会的勢力との取引があると明記されるはずはないが、反社会的勢力との取引の結果、どこかで粉飾せざるを得なくなる。この意味で、監査法人の役割は大きい。
・今回問題になった14年3月期については、東証等に上場している会社のうち62社で監査法人の交代があった。グローバルアジアホールディングスもその1つで、しかも、珍しい任期途中の交代だった。 監査法人が交代する際には、交代の理由のほか、監査法人の意見を臨時報告書で開示することになっている。しかし、同社の場合、交代の詳細な理由は明らかでなく、監査法人からの意見も出ていない。この点から見て、監査法人が責任を十分に果たしていたとはいえない。
・証券市場のお目付け役である証券取引所の責任も小さくない。今回のケースでは、15年に上場廃止を決定しており、かろうじて面目を保ったところだ。
・今回の事件で、暴力団に流れたとされているのは、14年に新株予約権の発行・行使で得た資金である。これには、証券会社も関係している。証券会社としては、資金調達した後、適切に資金が使われないと、社会的な責任を果たしたとはいえない。今回の場合、当該証券会社にも大いに責任があるだろう。
・いずれにしても、証券市場で資金調達しようとする会社自体が反社会的勢力との取引をしないのは当然として、証券市場の関係者である監査法人、証券取引所、証券会社が反社会的勢力を排除するように目を光らせることが必要である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160315/dms1603150830004-n1.htm
次に、元銀行で国際的決済システムに携わり、現在は帝京大学経済学部経済学科教授の宿輪純一氏が6月8日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「被害110億円!大泥棒、銀行間ネット“スイフト”上に現る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・筆者の長年の友人であるフィナンシャルタイムズ米国版の編集長ジリアン・テッドが、珍しく「決済インフラ」の記事を編集長自ら書いた。これはそれだけ重要な問題であるからだ。 今年2月、バングラデシュ中央銀行がハッキングされ、国際金融ネットワーク「スイフト(SWIFT)」のアクセスコードなどの情報が盗まれた。犯人はバングラデシュ中銀になりすまし、アメリカの中央銀行FRB(Federal Reserve Bank)に保有するバングラデシュ中銀の口座から1億100万ドル(約110億円)を強奪。実はこれ、「史上最大級の銀行泥棒」である。
・国際業務を行うほとんどの銀行はスイフトを使用しているだけに、この事件は世界中の銀行に衝撃を与えた。同じやり方で他の銀行が狙われる可能性が高いからだ。これは由々しき事態である。スイフトは最大で10件、同様の侵入事件に遭っていると報道されている。 銀行泥棒といえば、映画にもなったボニー&クライドやジョン・デリンジャーなどの強盗犯が有名だ。それとの違いは、今回は“顔の見えない犯行”で、ネット化し顔が見えなくなっている現代社会を象徴した犯罪ともいえる。
▽巨額窃盗事件の舞台となった「スイフト」とは何か
・スイフトとは、決済インフラで金融機関専用のネットワークのことだ。ある意味、裏方のインフラであり、ほとんどの読者はご存じないのではないか。SWIFTとは、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略称で、以前は「国際銀行間通信協会」と呼んでいた、1973年にベルギーで設立された共同組合(Société Coopérativ)である。その後77年に稼働を開始した。
・1960年後半からユーロダラー市場が拡大し、73年から国際通貨制度に変動相場制が導入されるなど、国際金融取引が拡大した。そのためテレックス(TELEX)やマニュアル(人手)の事務処理が限界、つまり紙による事務処理の限界(ペーパークライシス)に達した。その様な状況に対応するため、スイフトが設立された。
・そもそもはテレックスを高度化したE-Mailの様なもので、自動化を目的としている。そのイメージは、エクセルの様なマス目状。金融機関名や金額などを決められたマスに入れていくため、自動処理しやすくなっている。また、人手による間違いも防止しようという目的もある。 導入している国は200としており、世界中をカバーしている。参加機関は1万を超え、日本では250もの主たる銀行や金融機関が使用している。
・業務面から見ると、銀行における海外送金や通貨ディーリング、貿易、証券等の決済で一般的に使用され、中央銀行間の為替介入や国債売買の決済にも使われている。 現在の本部はベルギーの首都ブラッセル(ブリュッセル)郊外のラ・フルプの森林保護区にある。筆者は金融機関に勤務していた際、長年スイフトを担当し、この本部も19回訪問した(邦人としてはトップクラスの件数だろう)。ブラッセルは欧州の“へそ”とも呼ばれており、いうなれば、欧州の地理的な中心地である。他にもEU本部や、同じ決済インフラだがこちらは証券用のユーロクリア(Euroclear)もある。
・スイフトが“安全”といわれたのは、当初、銀行を中心とした金融機関のみの共同組合だったからである。一般のE-Mailの様にさまざまな人が入っていない、クローズドな組織で、メンバーが限られていたのである。そのため、一般の金融機関はスイフトに関して安全上の問題はない、と安心していたはずだ。
▽今回の事件の手口と スイフトの対応
・犯人はバングラデシュ中央銀行に侵入、マルウエア(悪意をもったプログラム)を使用して、スイフト関係の情報を入手した。その後、いわゆる「なりすまし」て、アメリカの米国の中央銀行FRBにあるバングラデシュ中銀の口座から送金した。
・送金経路はドイツ銀行を経由して、フィリピンのリサール商業銀行(RCBC:Rizal Commercial Banking Corporation)にある口座に入金された。犯人は口座から現金で出金し、大部分は行方不明となっている。犯行はドイツ銀行からの照会で発覚。さらに、犯人からはスリランカのパン・アジア銀行 (Panasia Banking Corporation)にも支払指図が送信されていたが、入力ミス(綴りのミス)があり、こちらは阻止できた。さらに、犯人は関係した銀行にもマルウェアを使用し、自分たちの痕跡を消した。使用したパソコンの所在地はエジプトという情報もある。
・今回のケースが重大なのは、ほとんどの銀行が使用するスイフトが使われたことである。特にスイフトに不慣れな金融機関は要注意だ。しかし幸いにというか、金融機関を中心としたネットワークなので、企業や個人の口座はこのパターンでは犯人が狙う対象にはならない。
・今回の事件に対し、スイフトは不正送金を行わせるマルウェアへの対応を図ったパッチ(プログラムモジュールの強化修正版)を提供している。また、次のSWIFT製品バージョンにおいては、このアップデートを含めセキュリティ強化されたものがリリースされる。セキュリティガイドラインやチェックリストなども公表され、ホームページで注意喚起をしている。
▽新世紀型の銀行泥棒が多発 金融実務は常に“悪”との戦い
・「新世紀型の銀行泥棒」が始まっている。この5月15日には日本でも、「ATM一斉引き出し」などITを利用し銀行を狙った大規模な国際的金融犯罪が起きている。最近、日本全国17都府県にあるコンビニなどのATMから、大量の現金が一斉に不正に引き出された。南アフリカのスタンダード銀行発行の偽造クレジットカード1600枚以上が使われ、キャッシング枠で何度も現金を引き出す手口で、出し子100人以上が午前5時からの2時間半で一斉に合計約20億円を引き出した。途中でシステムが検知したが間に合わなかった。
・その資金が内外の反社会的勢力に渡っている可能性も高い。ビットコインやプリペイドカードでIS(イスラム国)が資金を得ている、などと新聞でも報道された。G7でも議題になり、日本でも「改正資金決済法」が成立し対応が強化された。日本でもビットコインは貨幣(通貨)ではなく「財産的価値」として定義し、金融庁が監督官庁となって取引所や売買を監視する。法制上の処置を講じて利用者保護や不正利用の防止に適切な対応を図ろうとしているのだ。
・「学問や頭の中での金融」と「実務としての金融」の大きな違いは、この“悪”の存在である。金融の実務に携わったことのない方の理論モデルやビジネスモデルでは、マネーロンダリング等の犯罪(コンプライアンス)に対応するコストを計算に入れていないことが多い。世の中、特に金融周りは“善人”ばかりでなく、“悪人”も多い。例えば、嘆かわしいことであるが、いまだに「振り込め詐欺」の被害は相当な金額になる。
・しかも、最近ではシステムをハッキングし、マルウェアなど最新の高度なIT技能を活用する。犯罪との闘いはいつもイタチごっこだ。今回のバングラデシュ中央銀行の場合も、セキュリティが遅れているということで狙われたようだ。実際の“金融”を考えるうえで、最も大事なのは消費者保護であることは常に変わらない。それはFinTechでも一緒である。スイフトが狙われ、被害が世界に広がるならば、それは新たな「地政学的リスク」かもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/92609
第三に、上記とはやや趣を異にするが、8月4日付け現代ビジネス「まさか銀行がダマすわけが…あった!大損する被害続出、この保険商品を買ってはいけません 覆面取材もしてみた」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・退職金が振り込まれたタイミングを見計らって営業攻勢、相手はあなたの懐具合を知っている。 銀行が騙すわけがない。銀行が変な商品を売りつけてくるはずがない。そう「過信」している人は、気をつけたほうがいい。銀行員を信じたため、人生計画が狂った人たちの「実話」を紹介しよう。
▽「利率がいい」と誘う
・まずは国民生活センターの現役職員が、最近寄せられたという「相談事例」の中身を明かす。 「今春に70代の男性から、『銀行から買った保険で損を被りそうだ』と相談を受けました。 発端は、口座を持っていた支店の行員が自宅を訪ねてきて、『定期預金よりも利率がいい商品がある』と持ちかけられたことでした。そこで薦められたのが豪ドル建ての一時払い終身保険。『豪ドルはあまり変動がないので、安心して取引ができますよ』と」 契約期間は10年間なので、満期時には男性は80代。男性は、「万が一」を考えて契約を3年区切りにし、急なおカネの必要が出た時には「解約」をするという旨をあらかじめ銀行員に伝えた。 慎重に慎重を重ねて契約時には娘にも立ち会ってもらったうえで、約2000万円を一括払いして終身保険を契約。それから3年が経って、やはりおカネが必要になったので、解約の相談をしに行ったところ—。
・「銀行員からは、いま解約すると1500万円程度しか戻ってこないし、解約手数料に400万円がかかると言われたそうです。男性によれば、高額な解約手数料については何ら説明を受けていなかった。それで『納得がいかない』と、センターに相談されたわけです」(前出・国セン職員) 保険を解約しようとしただけで、合計900万円もの「大損」をしかねないのだから、男性が怒るのも無理はない。
・実はいま銀行員から保険を購入したがため、大損リスクに直面する「被害者」が続出している。 「銀行窓口で勧誘された生命保険に関する相談件数は、'14年度の365件が、'15年度は410件に増えています。今年度は4月~7月半ばで107件の相談があり、昨年度のペースを上回っています」(前出・国セン職員) 国民生活センターに最近寄せられたというリアルな「被害実例」を紹介しよう。
・【60代夫婦のケース】 夫が最近退職したところ、退職金が振り込まれたタイミングで銀行員から連絡があり、「いまなら良い金利で運用できる商品がある」というので夫婦で銀行へ。そこで薦められたのが、一時払いの終身保険。銀行員から「相続対策にもなる」と言われたので、老後不安を考えてその場で申し込みを完了。約500万円の保険料を一括で支払った。 しかし、夫婦は商品の仕組みを詳しく理解せずに契約したため、後々になって不安に。後日、夫婦で相談して、「解約しよう」と再び銀行を訪ねたところ、行員は素直に解約に応じず、「まずは保険料を300万円に減らしたらどうか」などと提案。銀行員と話をしても埒が明かず、不安なので早くクーリングオフしたいが、どうしたらいいか……。
▽元本割れのリスクを隠して
・この夫婦と同じような被害体験をして、「身に覚え」がある中高年は少なくないのではないか。 最近では、より悪質な次のようなケースまで出てきている。
・【70代女性のケース】 預金をしている銀行から「よい商品があるので来てください」という電話があったので、日時を約束して出向いた。もともと複数の預金をまとめて1500万円ほどの定期預金にしようと行員に相談していたが、いざ銀行に行ってみると、「全部を定期預金にするのではなく、別々の商品にしたほうが良い」と言われた。個室に案内され、行員の上司も参加する中で薦められたのが「外貨建ての商品」だった。 本人は以前から預金をしたいと伝えていたので、「外貨建て」というのは外貨預金のことだと勘違いしていた。高齢なのでリスク商品で運用するつもりはなかったが、しつこく言われたので契約した。が、家に帰ってパンフレットをよく見ると、契約したのが10年満期の外貨建て変額保険だったので、驚いた。 記憶する限り、個室で2人の行員と話した中で、「保険」という言葉は一度も使われなかった。しかも自分は預金を希望しているのに、なぜ保険を売りつけるのか。怒りが収まらず、いますぐクーリングオフをしたい。
・いずれのケースも、顧客は預金などリスクのない運用を求めているのに、銀行側はそれを完全に無視して、「元本割れリスク」のある高額商品を売りつけている。 なぜそんなことをするのか。理由は一つで、そうした「危険な商品」を売りつけたほうが、銀行は圧倒的に儲かるからである。ファイナンシャル・マネジメント代表の山本俊成氏が言う。 「数年前の銀行業界では、最大の営業商品は投資信託でした。売れば売るほど手数料が入るおいしいビジネスでしたが、各行が次々と参入して手数料の値引き競争が激化。旨みがなくなってきた。
・その代わりに出てきたのが、生命保険。投信同様に、売った分だけ生保会社から手数料が入るので、各行が営業モード全開。特に日本では高齢者を中心に『銀行』というだけで絶大な信頼がある。その信用力を持って保険の窓口販売(銀行窓販)をするだけで、ウソのように大量の保険が売れる」 実際、日本能率協会総合研究所が今月発表した『高齢者のくらしと金融に関する調査結果』によれば、調査対象とした60歳以上の高齢者のうち4分の1が銀行窓販の利用経験者。利用はしていないが、銀行の担当者からアプローチを受けたことがある人も含めれば2人に1人に及んでいる。
・メガバンクから地銀まで、全国各地で銀行マンが保険をセールスしまくっているわけだ。『信じていいのか銀行員 マネー運用本当の常識』(現代新書)の著書がある経済評論家の山崎元氏も言う。 「銀行が窓口で生命保険を売った場合、銀行が生命保険会社から受け取る販売手数料は外貨建て終身保険だと4~9%と言われています。一方で、投資信託の場合は2~3%なので、投信を売るよりも保険を売るほうが『2倍以上』もおいしい。 しかも、投信は手数料を顧客に開示しなければいけないが、保険は開示義務がありません。さらに、マイナス金利時代のいま、稼ぎどころのない銀行にとって保険販売は手っ取り早い稼ぎになる。 はっき銀行が生命保険会社から受け取る販売手数料は外貨建て終身保険だと4~9%と言われています。一方で、投資信託の場合は2~3%なので、投信を売るよりも保険を売るほうが『2倍以上』もおいしいり言って、手数料が4~9%の金融商品は『ぼったくり商品』だが、それが金融知識のない高齢者たちに堂々と売られ、銀行の重要な収入源になっているわけです」
▽まず定期預金に入らせる
・右のグラフは金融庁が作成したもので、商品別の手数料率推移を示している。これを見ると、外貨建て保険の販売手数料が伸び続け、投信に代わって銀行の「稼ぎ頭」になっている様が如実に見て取れる。 銀行が売る保険商品の中には手数料が10%と「超高率」のものもあり、1000万円の保険を売った場合、100万円が銀行の懐に入るのだから実入りは大きい。銀行員はこうした高額保険を売りつけようと、あの手この手の「営業術」を駆使しているのが実態だ。
・岸森健介氏(仮名、50代)は、そんなバンカーの巧みな術中にハメられた一人。長年担当してもらっている女性行員から突然訪問を受けたのは、岸森氏が住宅ローンを完済した直後だったという。 「会社にやってきて、『住宅ローンの返済が終わったようですから、そろそろ運用のほうも考えてみませんか』と持ちかけてきました。私が財形貯蓄で老後資産をコツコツと貯めていたのを把握していて、『財形を取り崩して、定期預金に回しませんか』と誘ってきました」
・岸森氏が、「特に運用の意思はない」と告げると、女性行員は声を潜めて、「いま特別な金利をご案内しているんです」と囁いた。提示されたのは、3ヵ月定期で、500万円を預けると2万~3万円の利息が付くもの。確かに財形や普通預金より利率がいいと思い、500万円を預けた。 それから3ヵ月後、女性行員が再訪してきた。 「そろそろ定期の期間が終わります。今度はこの500万円を外貨建て保険に回しませんか。普通預金に戻すよりもずっと利率がいいですよ」 そう言って次に薦めてきたのが、「外貨建ての変額保険」。500万円を一括で払えば保険会社がそれを運用し、「うまくいけば払ったより多くの額が返ってくる」と誘われた。付き合いの長い行員だったので信用して、「500万円のうち300万円分なら」と任せたが、これが大きな過ちだった。
・「後日、知人の金融マンにその話をしたら、『完全に騙されたね』と言われました。目下の円高で、すでに数十万円のマイナスが出ているようです。いま解約する場合はさらに数十万円もかかる、と」 ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏は、「銀行員がよくやる手口です」と言う。 「定期預金の満期に近づく頃に保険を売りつける。セールストークは、『預金はほとんど金利がつきません』。そして、手数料を多く稼げる外貨建て変額保険などを、『安定的に資産を増やせます』と売り込む常套手段です。 顧客が契約した後に損失リスクに気付いても、大抵は後の祭りです。8日以内のクーリングオフや特定早期解約の期間内に申し立てないと、その後は裁判で争うか、泣き寝入りするしかない」
・本誌記者が大手行の窓口を「覆面取材」した際も、バンカーの驚愕の営業術に出くわした。 訪ねたのは、40代の本誌記者が口座を開設している都内の支店。すでに入っている医療保険の見直しと新たな資産運用の相談を持ちかけると、対応した女性行員はさっそく、「いまは××社の保険に入っていらっしゃいますよね」と言ってきた。 こちらからは伝えてはいないのに、口座の入出金記録から把握したのだろう。続けて、「奥様の口座も確認させて頂きました」と言うので、唖然とした。 確かに妻も同じ支店に口座はあるが、それも伝えているわけではない。銀行員はパソコンの端末ひとつを叩くだけで、こちらの「プライベート」が丸見えなのである。 「奥様の分も含めて、保険商品を提案いたします」 まだ相談を開始して10分ほどなのに、薦めてきたのは豪ドル建ての個人年金保険。それも妻の定期預金400万円分をピッタリ同額分、そのまま保険に転換する「設計書」になっていた……。 銀行からすれば、顧客の資産の増減からカネの出入りは1円単位まですべて丸裸。その圧倒的な情報量を武器に、客の懐具合を見ながら保険を売りつける。それが銀行の保険販売の実態である。
・いまやそんな銀行窓販による保険販売は年間5兆円規模の超ビッグビジネスだが、売り上げの過半を占めているのは外貨建て保険と変額保険。ファイナンシャルプランナーの平野雅章氏が言う。 「銀行は医療保険やがん保険も扱いますが、商品数は少なく、重視しているとは言い難い。外貨建て保険のほうが販売単価も高く、手数料を効率よく稼げるからでしょう。しかし、こうした商品は元本割れリスクがある。中高年は手を出すべきではない」
・保険コンサルタントの後田亨氏も、「銀行が売る外貨建て保険や変額保険は資産運用には向いていない」と言う。 「私がある大手保険会社の資料を調べた時、顧客には豪ドル建て商品を積極的に販売していたのに、その保険会社自身は豪ドル建ての資産にほとんど投資をしていなかった。つまり、自分たちは買わないような商品を顧客に売ろうとしている。良識ある銀行の窓販担当者は、『窓販の仕事はもうしたくない』と嘆いているほどですから」
・金融庁はこうした事態を問題視し、銀行に販売手数料の開示を促しているのだが—。 「開示となれば、保険は売りづらくなるので、銀行側は開示直前まで『駆け込み』で一気に保険をセールスしてくる可能性がある」(前出・長尾氏) 手数料開示の目安は「年内」。しばらく気をつけたほうがよさそうだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49347
第一の記事のグローバルアジアホールディングスについては、Wikipediaでチェックしたところ、旧社名はあの悪名高い「アイビーダイワ」だった。長年にわたって市場を欺く悪質行為を繰り返した挙句、漸く「退場」となったが、一旦、上場してしまうと、尻尾を掴むのが難しくなるのだろうか。それにしても、Wikipediaで見る限り、よくぞここまで問題含みの企業を上場させていたものだ。高橋氏が指摘するように、監査法人や証券会社の責任も改めて問われるべきだろう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B9
第二の記事では、マルウエアを仕込まれて情報が盗まれるのは、日本年金機構などでもあったこととはいえ、ほかでもない中央銀行が引っかかってしまうというのは、やはり問題だろう。1億100万ドル(約110億円)の損害は、貧しいバングラデシュにとっては大きな負担だろう。なお、「コンビニATMでの巨額資金の不正引き出し事件」については、5月31日に取上げた。
第三の銀行の保険窓販で、『銀行が生命保険会社から受け取る販売手数料は外貨建て終身保険だと4~9%と言われています。一方で、投資信託の場合は2~3%なので、投信を売るよりも保険を売るほうが『2倍以上』もおいしい』、というのでは、銀行は売りまくるに決まっている。手数料開示を「年内」といわず、もっと早めるべきではなかろうか。
タグ:金融関連の詐欺的事件(行為) 高橋洋一 増資で調達した資金が暴力団などに流れていたと報じられた 粉飾決算事件 グローバルアジアホールディングス ジャスダック上場 市場に巣くう反社会的勢力 監査法人は当然、取引所や証券会社にも責任 ZAKZAK 内部管理体制に不備があるとして同社を上場廃止 架空資産を計上し粉飾 新株予約権の発行・行使で得た資金を、複数の暴力団に提供していた疑いがあることが判明 東証等に上場している会社のうち62社で監査法人の交代 珍しい任期途中の交代 同社の場合、交代の詳細な理由は明らかでなく、監査法人からの意見も出ていない 証券会社としては、資金調達した後、適切に資金が使われないと、社会的な責任を果たしたとはいえない。今回の場合、当該証券会社にも大いに責任があるだろう 証券市場の関係者である監査法人、証券取引所、証券会社が反社会的勢力を排除するように目を光らせることが必要 宿輪純一 ダイヤモンド・オンライン 被害110億円!大泥棒、銀行間ネット“スイフト”上に現る バングラデシュ中央銀行 ハッキングされ スイフト(SWIFT)」 アクセスコードなどの情報が盗まれた FRB(Federal Reserve Bank)に保有するバングラデシュ中銀の口座から1億100万ドル(約110億円)を強奪 国際業務を行うほとんどの銀行はスイフトを使用 世界中の銀行に衝撃 スイフトは最大で10件、同様の侵入事件に遭っていると報道 ドイツ銀行を経由 フィリピンのリサール商業銀行 口座に入金された。犯人は口座から現金で出金し、大部分は行方不明 スイフトは不正送金を行わせるマルウェアへの対応を図ったパッチ 新世紀型の銀行泥棒 ATM一斉引き出し 金融周りは“善人”ばかりでなく、“悪人”も多い 現代ビジネス まさか銀行がダマすわけが…あった!大損する被害続出、この保険商品を買ってはいけません 覆面取材もしてみた 国民生活センター 相談事例 豪ドル建ての一時払い終身保険 、高額な解約手数料については何ら説明を受けていなかった 銀行員から保険を購入したがため、大損リスクに直面する「被害者」が続出 全国各地で銀行マンが保険をセールスしまくっているわけだ 銀行が生命保険会社から受け取る販売手数料は外貨建て終身保険だと4~9%と 投資信託の場合は2~3% 投信を売るよりも保険を売るほうが『2倍以上』もおいしい 保険は開示義務がありません 銀行窓販による保険販売は年間5兆円規模の超ビッグビジネス 売り上げの過半を占めているのは外貨建て保険と変額保険 手数料開示の目安は「年内」。
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