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自衛隊が抱える問題(防衛問題)(その2)現場のお寒い実態、脆弱な海上自衛隊の艦艇のダメージコントロール [国内政治]

自衛隊が抱える問題(防衛問題)については、昨年6月28日に取上げたままだったが、今日は、(その2)現場のお寒い実態、脆弱な海上自衛隊の艦艇のダメージコントロール である。

先ずは、元自衛隊の臨床心理士/NPO法人ハートシーズ理事長の玉川 真里氏が昨年12月3日付け東洋経済オンラインに寄稿した「自衛隊に迫る真の危機、誰が日本を守るのか 元隊員が明かす、内側から見た最大の懸念」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法(安保法)の成立から2カ月余り。反対デモが各地で続いていますが、このままいけば来年3月までに法施行がなされそうな情勢の中、自衛隊関係者の間にかつてない不安が広がっています。それは日本という国にとっても大きな問題です。
▽指摘され続ける「隊員不足」
・改めて、安保法とは従来の自衛隊法やPKO(国連平和維持活動)協力法などの10本の法改正を束ねた「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる「国際平和支援法」の2つで成り立っています。従来は、日本が直接攻撃を受けた場合に限って、自衛隊が出動できるというのが憲法の解釈でしたが、日本と関係の深い他国が攻撃されたり、国の存立や国民の権利が脅かされたりすれば、国会の承認を経たうえでの自衛隊への防衛出動が命じられるようになります。
・戦場以外に限ってですが戦争中の他国軍の後方支援や、国際連合が直接関与しないPKOにも自衛隊が派遣され、展開先から離れた場所に駆けつけて他国軍や民間人を警護できる、いわゆる「駆けつけ警護」なども認められます。自衛隊員が、従来の範囲を大きく超えた活動に従事しなければならない事態が起こってくることは想像に難くありません。具体的には北朝鮮をめぐる不測の事態への対応や、イスラム国(IS)と戦う欧米各国の後方支援などが想定されます。
・ところが、今の自衛隊は内部に大きな問題を抱えています。もともと隊員不足が指摘されていたうえ、先行きは一段と成り手の確保が困難になりかねません。さらにはメンタル(精神面)の不調を訴えたり、休職したり、自殺してしまったりする隊員が増加ないしは高止まり傾向にあるのです。
・自衛官(自衛隊員)の定数は24万7160人(2015年3月31日現在、防衛省HPより、以下同じ)。これに対して現在の充足率は、陸上自衛隊91.5%、海上自衛隊92.8%、航空自衛隊91.6%、統幕91.5%で計91.7%となっています。「定員の9割以上なのだから十分高い」と見る向きもあるかもしれませんが、実態を見てみるとそれが必ずしも正しくないことがわかります。
・階級別に見ていきましょう。少し専門的になりますが、陸上・海上・航空各自衛官は幕僚長の下に「2士」から「将」まで16階級に分かれた階級があり、このうち3尉以上の8階級を幹部自衛官といいます。その幹部の充足率は93.7%です。その次に来る「准尉」が92.6%、さらに下の「曹」で98%ですが、最も階級の低い「士」については74.6%となっています。
・士とは「2士」「1士」「士長」と呼ばれる下から3番目までの階級に属する自衛官の総称です。つまり、最も現場で働く隊員がまったく足りていません。伝令や警戒業務、雑務、総務などは、本来は士の階級に属する自衛官の任務ながら、代わりにそれが一定の中堅自衛官に集中する事態にもなっています。 士の階級に属する自衛官が足りていないのは、自衛隊に入隊する人が減少している証です。そして今回の安保法成立で、より危険度が増す可能性が高まる自衛官の採用難はさらに深まるかもしれません。
・安保法案の審議に入った時から、国民の自衛隊に対する感情は変化していきました。以前PKO法案が可決した時、自衛隊の周辺では、自動車の爆破などテロ活動が起きていました。当時自衛官だった筆者は、「制服で外出すると危険だ」といわれ、私服で自衛官ということを隠して集団で行動するように指示されたのを覚えています。
▽設定されている定員数が、そもそも少ない
・安保法の成立後、そうでなくても過労状態だった中堅クラスの自衛隊員は、「『早く辞めた者勝ち』という話が、下の者たちから聞こえてくる」と漏らしていました。隊員の家族からも今後を心配する声が多数聞こえてきます。 現在、自衛官募集を任務としている広報官は「本人が入隊したいと言っても両親が許さないケースが増えて、募集が一層困難になっている」「今後の自衛隊について聞かれた時に堂々と語れない」などと明かしています。
・そもそも1950(昭和25)年にマッカーサー主導の下で警察予備隊が発足し、1954(昭和29年)に自衛隊が創設されてから今日に至るまで、つねに自衛官志願者は少ない状況にあります。創設前後に「自衛隊の定員は35万人が必要」という議論も一部であったようですが、徴兵制度でもない限りは現実的に考えて限界とされた25万人程度で設定され、その水準のまま60年以上が過ぎています。
・一時の内閣による防衛費削減案によって、その定数すらも、「常備自衛官」ではなく「即応予備自衛官」と呼ばれる隊員で穴埋めされる状況にもなっています。即応予備自衛官とは通常は民間機関で働き、有事や災害時に招集される非常勤自衛官です。
・筆者は自衛隊の採用試験にかかわった経験がありますが、強く印象に残っているのは3年ほど前。「今までの3倍の自衛官を採用したいので、身体検査ではなるべく不合格にしないように」という趣旨の話が内部で出回ったことがあります。 自衛隊の採用試験は主に筆記、面接、身体検査の3つです。筆記や面接は採点の仕方や基準の設定次第で、あえていえば「有能ではない人」も受かるようにできますが、身体検査の基準は本来ごまかしようがないはずです。
・にもかかわらず、とにかく落とさないようにして人数を確保しなければならないほど自衛官不足は大きな問題には違いありませんが、ひょっとしたら、安保法の施行を前提として起こりうる今後の採用難を先取りした意図もあったのかもしれません。
▽「狂乱募集」の時代を想起
・ただ、そのような採用方針だと、それだけ隊員の質は落ちます。これはかつての「狂乱募集」という時代を想起させます。おおよそバブル期までのことです。当時は「名前を書ければ自衛隊に入隊できる」とか「犯罪者の隠れ家として自衛隊が使われる」という話が、まことしやかに飛び交っていました。肩を叩いて「君、いい体格をしているね!いい仕事があるよ」といって募集事務所に連れて行き、その場で試験を受けさせて、翌月には入隊していた人がいたというのはウソではない現実の話です。
・しかし、狂乱募集の影響は、その後の自衛官による各種の事件、事故、メンタル不調、休職、自殺などという格好で表れました。自衛官の任務役割が拡大・多様化し、時代が大きくアナログからデジタルに変わっていく中で、イージス艦の情報漏えい問題以後の情報保全業務の増大など、日々変化し続ける環境についていけない隊員が多数出てしまったのです。人員としてはカウントされているが実際は働けない、または、その隊員を別の数人の隊員でカバーしているケースが見受けられます。
・筆者は2008(平成20)年から、陸上自衛隊が駐屯地に置いた初めての臨床心理士隊員となりました。当時の防衛政務官、岸信夫氏に直接お会いし、自殺予防に関する任務を拝命しました。 そして、メンタル不調者や問題行動の隊員に知能検査を実施したところ、一般的な平均が100程度といわれるIQ(知能指数)が60以下という、知的に問題のある隊員や精神疾患のある隊員が多数存在していたことがわかりました。筆者はもともと1991(平成3)年入隊の陸上自衛官として、まず隊員募集の最前線に着任した経験があり、奇しくも、募集の現状を知っていたからこそ、それらの問題を推測できました。
・加えて、自衛隊では海外派遣や災害対策など任務が拡大・多様化し、以前は10人でやっていた仕事を今は5人、ひどい時は1人でしなければならないケースも出ています。筆者は部隊の中で一定のできる人のところへ仕事がどんどん流れていき、結果的に潰されてしまう現状をよく見ていました。
・それがさらに悪化した部隊では「ここにいたら過労死する」と、どんどん隊員が辞めていき、業務が回せない状況になることもありました。いわゆる学級崩壊のような状況が自衛隊内で起こりつつあるのです。自衛隊では、年間70人前後の自殺者が出ているという話を聞きます。戦争もしてないのに毎年1つの小さな部隊が全滅していることになり、とても大きな問題です。
▽即応予備自衛官へのメンタルケア不足
・前述した即応予備自衛官にも、メンタルヘルスの問題があります。即応予備自衛官は2011年の東日本大震災で初めて招集され、災害派遣に参加しましたが、そこには大きな落とし穴がありました。 現地での負傷については、常備自衛官と同様の保険を適応しましたが、このような大規模災害の支援者に起こりうる、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関しては、まったく手立てをしていなかったのです。
・常備自衛官に対しては、メンタルヘルスに関して派遣前後の教育やその後のケアは臨床心理士等の任務として行われていました。派遣が決まってすぐ、非常勤自衛官の経験がある筆者は、非常勤自衛官の保険適用について上層部に聞きました。
・返ってきた答えは、「そこまでは考える余地がない」というものでした。上層部には問題提起していましたが、実際、筆者の下には、非常勤自衛官が災害派遣後、様子がおかしくなって困っているという家族から相談があったのです。これに対しては、保険の適用も自衛隊の保証も何もなく、非常勤自衛官が自分で戦わなければならない状況となっていました。
・余談となりますが、定員充足率が93%と高い幹部自衛官ですが、現場からは「指揮官として優秀な人は少ない」という指摘が聞こえてきます。隊員の中では「あの指揮官がいたら、有事に自分たちの部隊は全滅してしまう」という話題がよくなされます。 読者の皆さんは、これを知って驚いたかもしれませんが、実際、訓練中に幹部自衛官が背後から部下に刺される事件も起こっています。中には、「俺の保身のために、この事件はなかったものとする」と傷害事件をもみ消すケースまであります。
・自衛隊には有事の際だけでなく、地震や土砂崩れ、大洪水などの大規模災害時に最前線で国民を守る役割があります。しかし、安保法の施行を前に自衛隊の内部はたくさんの問題を抱えています。いざというときに誰が日本を守るのか。心配になるのは元自衛官の筆者だけではないはずです。
http://toyokeizai.net/articles/-/94899

次に、6月2日付け朝日新聞「自衛隊が実弾で撃ち合い、なぜ 幹部「想像超える事故」」を紹介しよう。
・陸上自衛隊の演習場で5月、敵・味方に分かれた訓練中の隊員同士が実弾を撃ち合うという「戦闘状態」が発生した。空包を撃つはずの銃から実弾が発射された背景に、何があったのか。 「想像を超えるような事故」 自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長は5月26日の記者会見でこう嘆いた。誤射は同23日午後3時半ごろ、北海道鹿追(しかおい)町の陸自然別(しかりべつ)演習場で起きた。
・陸自などによると、訓練をしたのは物資輸送を主任務とする第310輸送中隊。トラックを含む車列が待ち伏せ攻撃を受け、隊員が応戦するという想定だった。敵役の隊員を含め計16人の小銃には空包が込められているはずだったが、実際には実弾が入っていた。この結果、敵役2人を含む9人が計79発の実弾を撃ち合ったという。両者の最短距離は約200メートルだったとみられる。
・訓練で使われたのは、1989年度に正式に自衛隊の装備品となった89式小銃(全長92センチ、重さ3・5キロ)。陸自で最も一般的な装備品の一つで、5・56ミリ弾を1分間に最大850発発射できる能力がある。今回の訓練では、空包でも連射できるようにする器具が銃口に取り付けられていたが、実弾が発射されたことで器具が破損。この破片にあたって隊員2人が軽いけがを負った。負傷者が出て初めて、隊員らは実弾だったことに気づいたという。
・実弾と空包の取り違え事故は陸自の発足以来初めて。幹部の一人は「この距離で撃ち合って犠牲者が出なかったのは奇跡。部隊は事故の話題で持ちきりだ」と話す。 原因関係でこれまでに判明しているのは、弾の誤請求だ。訓練部隊は空包を発注したが、別の部隊を経由して弾薬管理の部隊に届いたときには、実弾の発注になっていた。
・その後も事故を防ぐ手立てはあった。空包と実弾では弾頭の形状が違うためだ。空包は丸いが、実弾はとがっている。弾薬授受の際には渡す側と受け取る側の担当者が中身を確認する。しかし、担当者は箱を開けて弾の底側を見て弾数を数えたものの、弾頭側は見ていなかった。さらに、訓練に参加した隊員が弾を弾倉に込める際、気付くことも可能だったという。ところが隊員らは「空包と思い込んでいた」と話したという。
・自衛隊は武器使用には細心の注意を払ってきた。訓練であっても、発射した実弾数と、発射後に銃からはじき出される火薬入れの容器(薬莢(やっきょう))の数が合わなければ、部隊総出で演習場内を捜してきたほどだ。 ある陸自幹部は今回の事故について「どの段階でも防げなかったのだから、単なるミスでは済まされない。現場の力がそれほど落ちている表れとみて、根本的な対策が必要だ」と危機感を募らせる。
・元実践女子大教授で、人為的ミスの背景に詳しい垣本由紀子・日本ヒューマンファクター研究所顧問は「思い込みは人間の特性だけに、なくすのは難しい」と話す。 一連の過程で確認作業がどのように定められていたかが重要だという垣本さんは、こう指摘する。「事故後によく出される『注意喚起』はあてにならない。原因分析に基づく具体的手順をチェックリストにして、意識的に必ず確認作業をすることが必要だ」
http://digital.asahi.com/articles/ASJ5052S5J50UTIL02Y.html?rm=575

第三に、8月10日付けJBPress「護衛艦「いずも」が中国の魚雷一発で沈む日 進まない自動化、人手不足でままならない艦艇のダメコン」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・タイトルを見てギョッとした向きもあるだろう。しかし、海上自衛隊の艦艇のダメージコントロール(ダメコン)は、かつての帝国海軍の伝統を引き継ぎ、いまだに脆弱な面がある。これは否定しようのない事実なのだ。
・第2次世界大戦中の日本海軍のダメコンは、設計から被害後の対応まで米軍とは比較にならないほど低レベルだったと言ってよい。装甲空母「大鳳」は結果的に魚雷1発で、巨大空母「信濃」は魚雷4発で空しく海底に消えていった。ミッドウェーでは、4隻の空母が炎上し消えていった。他方、米海軍の艦艇は実にしぶとく、昭和天皇が「『サラトガ』が沈んだのは今度で確か4回目だったと思うが」と軍部の報告に皮肉ったように、日本軍の激しい攻撃を耐え抜き、即座に戦列復帰した例が多い。
・日米の戦力は戦争序盤では拮抗していたが、ダメコンの格差が戦力の天秤を米国に傾け、中盤以降はただでさえ少ない日本側の戦力をさらに減少させることになった。こうした背景には、日本側は過去のダメコンの教訓が設計に十分に反映されていなかったこと、米空母に比べて日本の空母は人員が足りなかったことなどが挙げられる。
▽消火システムの自動化が進んでいない海自艦艇
・実は、これらの点は現在も改められていないのが実状である。 例えば、米海軍等に比べると海自艦艇には「艦内」スプリンクラーが非常に少ない。もちろん、艦外やヘリ搭載艦の格納庫等にはスプリンクラーを設置しているし、ハロンガスの散布システムを発電機室やポンプ室の一部を備えている。しかし、米海軍他のように艦内の隅々までスプリンクラーのような自動消火システムを導入することはできていない。基本は人力による消火が中心である。
・また、昭和52年度以前に計画された護衛艦には火災警報装置が搭載されていない(現在該当するのは「くらま」「わかさ」のみだが)。実際、護衛艦「しらね」は火の不始末でCIC(戦闘指揮所)が全焼し、100億円以上の打撃を国家財政に与えた。しかも、昭和52年度以降に計画された護衛艦も火災警報装置は「火災の発生する可能性が高い区域や航海中常時配員がない区画」に限定されており、それ以外の区画は人間が発見し、報告する形式になっていると言われている。このように海自は米海軍よりも相対的に人手重視の消火体制である。
▽人手が頼りなのに、人員が足りない!
・ところが、海上自衛隊はその人間が足りない。 まず、充足率そのものが足りていない。海上自衛隊全体では充足率は92.8%だが、これは海上幕僚監部、一部の海外派遣部隊、音楽隊、情報部隊等のような充足率が100%に近い部隊も含めた平均である。実戦部隊たる水上艦艇は、より少なくなる。
・しかも、近年は海外任務が増えたこともあり、艦隊勤務を志望する隊員が減っている。実際、あるDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)では20人弱の新人が配属されたが、ほとんどが艦を降りてしまったという。士官は部内の講演で「最近の若者は根性がない」と語ったそうだが、根性で片付けられる問題ではなかろう。
・こうした事情により、筆者の推測だが実際には7割程度の人員で水上艦艇は稼働していると見られる。その結果、幹部は寝られないという状況に陥っている。ひどい艦艇では平均2時間睡眠だといわれている。
・海自の実質的な充足率は、さらに低いはずである。というのは、海上自衛隊は新型艦艇を建造するたびに「省力化を実現した」と言っているのだが、既に述べたように応急処置の自動化はあまり進んでいない。その一方で、乗員1人あたりが担当するスペースが格段に広くなっているのだ。 例えば、掃海部隊を指揮する掃海母艦は、1997年に「はやせ」型から「うらが」型に移行した。「はやせ」では乗員1人あたりの担当スペースは単純計算で66.99立方メートルだった。それが、「うらが」になると、艦のサイズ拡大、乗員数の減少(180人→170人)によって、255.46立方メートルとなる。つまり、それまでと比べて3.8倍の空間を1人が担当することになったのである。そして、他の多くの世代交代した艦艇でも同じなのである。これは、もはや「省力化」で解決できる範囲を超えている。実際の現場の声もそうしたものが多い。
・このように海自は実際の充足率以上に過剰なオーバーワークになりやすい構造になっている。人手不足で睡眠不足の海自隊員中心のダメコンに期待するのは酷というものだろう。 もちろん、こうした人手不足の問題は現場でも議論されているし、特にダメコンを担当する応急員達の勉強会では、米国式の自動化導入等が議論になる。だが、設計にまでは中々反映されないという。 これは戦前の機関科問題と似たような面があり、“花形ではない応急員の発言力が低い”ことや、設計思想も含めて変更するのはコストがかかるためである。
▽「自動化」と「充足率向上」を同時に行うべき
・中国海軍のダメコンは日本よりも劣っていると言われる。それは事実だろう。だが、彼らは真剣に米海軍に勝とうとしており間違いなく改善を進めていくだろう。何よりも、中国軍はある艦艇に艦長が2人いたというような笑い話があるように充足率は高く、対艦弾道・巡航ミサイルや艦艇等の物量では海上自衛隊を大幅に超える。
・日本側は少ない艦艇とミサイルで、多数の相手と戦わなければならない。そうであるならば何をすべきかは明らかであろう。 今、行うべきなのは、米海軍レベルの自動化およびいびつな戦力構成の適正化を推進し、それにより浮いた人員を所要の配置に回すことだ。同時に、本来必要な人員はきちんと定員として認める施策を確立することである。つまり、「自動化」と「充足率向上」を同時に行うべきなのだ。
・具体的には、(1)今後建造予定とされる強襲揚陸艦等のような明らかに無理のある大型艦艇の建造中止による実質的な充足率の是正、(2)後方要員に陸自の一部を充て水上勤務者を増やす、(3)応急システム自動化の促進、(4)組織文化の転換、(5)音波式消火器やロボット消火隊員など米海軍研究所が進めているような新型応急システムの研究開発、を急ぐべきだ。
・特に(4)の組織文化の転換のためには、海上自衛隊は全自衛隊対抗サッカー大会(悲しいことに昼間サッカーの練習をして、残業で仕事を解決する熱心な幹部もいるようだが)に参加するよりも、米海軍のように「ダメコン・オリンピック」を大々的に開催してダメコンの腕をどんどん競い合うべきだ。また(5)に関しては、現在、ダメコンの研究が「安全保障技術研究推進制度」でも対象となっていない。防衛省の技術開発でもレールガンのようなSF兵器と違ってあまり重視されていないが、もっと行うべきだ。
・護衛艦「いずも」が中国の魚雷一発で沈む日、それは誇張であっても、虚構ではない。そんな日を回避する為の防衛予算・政策・人員の優先順位の変更こそが、今必要なのである。
(付記)無論、本稿で指摘したような状況に海自があるのは、定員を維持するためにダメコン上の所要が使われてきたためであり、責められるべきではないという点には留意が必要だろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47563

第一の記事にある現場で最も階級の低い「士」の充足率は74.6%は、やはり低く問題だろう。「即応予備自衛官」の制度は、海外にもあるが、災害派遣された彼らへのメンタルケアが行われていないというのは無責任極まる話だ。バブル期の「狂乱募集」は、やはりあとあとまで問題を残したようだ。それにしても、IQ60以下の『知的に問題のある隊員や精神疾患のある隊員が多数存在』、『いわゆる学級崩壊のような状況が自衛隊内で起こりつつあるのです』、とは改めて驚かされた。『訓練中に幹部自衛官が背後から部下に刺される事件も起こっています』とは、大いにあり得る話だ。
第二の記事の『実弾と空包の取り違え事故』は、今回が初めてということに、むしろ驚かされた。或いは、かつても発生したが、闇に葬られたのかも知れない。
第三の記事は、ダメージコントロールを相変わらず軽視している自衛隊の体質は、旧日本軍の悪弊をそのまま引きずっているようだ。スプリンクラーをケチっても知れているのに、『護衛艦「しらね」は火の不始末でCIC(戦闘指揮所)が全焼し、100億円以上の打撃を国家財政に与えた』ことの教訓はいまだに生かされてないとは、よほど硬直的な組織なのだろう。『あるDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)では20人弱の新人が配属されたが、ほとんどが艦を降りてしまったという。士官は部内の講演で「最近の若者は根性がない」と語ったそうだが、根性で片付けられる問題ではなかろう』、にすいては、単なる根性論の問題ではなく、本来はDDH部隊の管理上の大問題であり、士官は講演などもっての他で、他部署に飛ばされてしかるべきであろう。
いずれにしても、安保法制を支える自衛隊がこの体たらくでは心もとない限りだ。
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