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日本郵政(その10)上場後の動向2(マイナス金利が直撃、蘇る「全特」の政治力) [経済政策]

日本郵政については、2月4日に取上げた。今日は、(その10)上場後の動向2(マイナス金利が直撃、蘇る全特の政治力) である。

先ずは、5月20日付け東洋経済オンライン「日本郵政、「最低決算」からの復活時期は? 利益は2期連続減少、高配当は維持されるか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2015年11月に上場し、多くの国内個人投資家の投資資金を集めた日本郵政グループ。その持株会社である日本郵政が5月13日発表した2016年3月期連結決算は厳しい内容となった。経常収益は14兆2575億円とほぼ前期並みだったが、経常利益は9662億円(前期比13.4%減)、純利益は4259億円(同11.7%減)と2期ぶりに減益となった。
・主要事業を担う3社を見ると、日本郵便はゆうパックの増加などにより総取扱物数が14年ぶりに増えたことで経常増益となった。が、ゆうちょ銀行の運用益減少やかんぽ生命の保有契約の減少が足を引っ張った
▽ゆうちょ銀とかんぽ生命が苦戦
・上場後最初の決算である前期は減益決算となったが、このトレンドは今期も続きそうだ。2017年3月期について会社は、経常収益は前期比7.1%減となる13兆2400億円、経常利益は同20.3%減の7700億円、純利益は同24.9%減の3200億円と減収減益を想定。日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険がいずれも経常減益になる見通しで、この経常利益水準は2007年の民営化後で最低だ。 中でも経常利益、純利益で日本郵政の連結決算の9割以上を占める、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の減益が大きく響く。
・かんぽ生命は旧区分(独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構から再受している簡易生命保険契約)が満期を迎えるなど、保有契約減少が続いている。養老保険や終身保険を中心に新契約保険を増やしているがカバーしきれておらず、経常利益は年々減少傾向だ。 この流れは今期も続き、2017年3月期の経常収益は8490億円(11.6%減)、経常利益は3100億円(24.7%減)となる見通しだ。なお純利益は、保険契約者へ支払う配当金の財源である契約配当準備金繰入額が減少するため、860億円(1.3%増)とわずかながら増える。
・ゆうちょ銀行は今期、日本銀行の当座預金にマイナス金利が導入された影響で、年間200億円程度の利息費用の負担が見込まれている。さらに国債利回りが低下していることも利益を下押しする。204兆円のゆうちょ銀行の運用資産のうち、国債が82兆円にのぼり4割を占めている(2016年3月期末時点)。現在1~10年国債金利がマイナスになっており、利息収入の低下は免れない。 対応策として、相対的に利回りが良い外国証券の運用を増やすほか、貯金金利の引き下げなどを進めているが、それでも利益の大幅減少は避けられない見込みだ。経常利益は4200億円(12.8%減)、純利益は3000億円(7.7%減)を計画している。
・日本郵政への利益貢献はわずかながら、改善基調にあった日本郵便も今期は減益になる。EC市場の拡大などで取扱物数は底堅いものの、年金保険料率の引き上げや外形標準課税の拡大、さらに期間雇用社員の単価引き上げなど、外部要因によるコスト増が見込まれるためだ。経常利益は270億円(36.1%減)、純利益は120億円(74.5%減)を想定している。
▽配当性向は50%以上がメド
・株主還元について、前期は上場後期末配当基準日までの期間が6カ月未満だったことから、日本郵政では期末の25円配のみだったが、今期から中間配を実施し、中間期末で25円ずつ、通期50円の配当を予定している。配当性向は2018年3月期まで連結配当性向50%以上を目安にしている。今期は純利益が減益となり配当性向は64%まで上がるが、配当額は実質維持する格好だ。
・日本郵政は2018年3月期の純利益4500億円を目標に据えている。昨年11月の上場時、高配当銘柄として注目を集めただけに、配当に直結する純利益の早期の利益回復への投資家の期待は大きい。もっとも今期は減益となるが、来期以降は回復を予想する向きもある。
・かんぽ生命では経常利益の足かせになってきた旧区分の保険料減少が来期、再来期にも一服、いよいよ経常利益が復調するとの見方が出ている。マイナス金利で厳しい決算のゆうちょ銀行も為替評価益が見込める外国証券の償還などで、来期は持ち直すとの見通しが出ている。
・日本郵政の長門正貢社長は、「為替益が2017年度(2018年3月期)から出始め、純利益4500億円達成に向け大きなサポートになる」と話す。黒字とはいえ低水準が続いている日本郵便の抜本的なテコ入れ策はまだ見えないながら、利益貢献度の大きい2社が今期を底に業績回復を達成できるかに注目だ。
http://toyokeizai.net/articles/-/118774

次に、7月15日付け日経ビジネスオンライン「参院選が示す「上場郵政」の不都合な真実 民間企業への道はなお遠く」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・7月10日に投開票となった参院選は、大方の予想通り自民党の勝利に終わった。同党が獲得した比例票は約2000万に上るが、誰がトップ当選したか知っている読者はいるだろうか。 元官僚の片山さつき氏でも、元アイドルの今井絵里子氏でもない。答えは徳茂雅之氏。一般的な知名度は低いが、今回の選挙では約52万票を獲得している。 徳茂氏の古巣は日本郵政グループだ。東京大学法学部を卒業後、旧郵政省(現・総務省)に入省。出馬前はグループ傘下の日本郵便で執行役員を務めていた。
・彼を支援したのが全国郵便局長会(全特)。全国各地の郵便局長らによる組織だ。かつて郵政相を務めた田中角栄元首相によって集票組織化された彼らは、自民党の大票田となっている。
▽安倍首相も熱視線を送る大票田
・「全特は自民党を支援して頂いている、最も強力な団体の1つであると十分に認識しております」――。5月22日、福岡市内のマリンメッセ福岡で開催された全特の通常総会。会場の巨大スクリーンにビデオレターで登場した安倍晋三首相はこう言い切った。会場には全国から郵便局長らが約1万人集まり、参院選を間近に控えた時期ということも相まって、熱気に包まれていた。
・日本郵政グループは昨年11月に株式上場を果たした。郵政民営化法の成立から10年が経過し、ようやく本当の意味での民間企業として船出したはずが、国営時代に始まった政治との蜜月関係は脈々と続く。その象徴が今回の参院選だった。
・郵政関係者が熱気に包まれた参院選から半月ほど前、筆者はまったく対照的な光景を見ている。6月21~23日、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市)で開かれた、郵政グループ初の株主総会だ。 約1万人を収容できるスペースを貸し切り、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、日本郵政の順番で3日連続開催された。異例の同時上場を経て、3社合計の株主数は140万人以上に上る。全特総会の熱気を見ていた筆者は、「何万人集まるんだろうか」とひそかに期待していた。
・だが、蓋を開ければ、ゆうちょ銀は886人、かんぽ生命は266人、日本郵政ですら1194人しか集まらなかった。ちなみに、三菱UFJフィナンシャル・グループが今年開催した株主総会は約1万人を集めている
▽株主総会で痛感した「対話の重要性」
・時の首相ですら熱視線を送る大票田も、民間株主から見れば新規株式公開(IPO)時の株価を下回る銘柄に過ぎず、その視線はどこか冷めている。 「がっつりと、含み損であります」。日本郵政の総会では、株主から振るわない株価への不満が出たが、“予定稿”を読み上げる旧郵政省出身幹部の回答は、どこか“官僚答弁”を彷彿とさせた。
・上場した以上、株主や市場といった外の世界との対話は、これまで以上に重要になる。郵政の株主総会が、全特総会のような熱気あふれるイベントになる日は来るのだろうか。 ちなみに、総会の司会役を務めた日本郵政の長門正貢社長は「株主の皆様にご迷惑をおかけして、本当に申し訳なく思っている」と発言したが、この部分は予定稿にはなかった。民間出身者だけに、株主との対話の重要性を理解しているように見えた。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/071400275/?P=1&prvArw

第一の記事では、『来期以降は回復を予想する向きもある』、としているが、その根拠は薄弱な印象である。やはり、マイナス金利が続く限り、収益の柱の金融2社の業況は厳しいとみておくべきだろう。
第二の記事で、参院選のトップが日本郵政出身とは、「全特」の政治力は健在のようだ。ゆうちょ銀行やかんぽ生命の預け入れ限度額は、「全特」の強い要請で、郵政民営化委員会が昨年暮に、それぞれ1000万円を1300万円に、1300万円を2000万円に引上げるよう答申し、4月から引上げられた。ちなみに、委員長は、東京都知事選挙に自民党推薦で立候補した増田寛也氏だったが、このほど前日銀副総裁の岩田一政氏に交代することとなった。上場したとはいえ、記事タイトル通り、『民間企業への道はなお遠く』、といった状況がまだまだ続きそうだ。
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