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医療問題(その2)(埼玉県は最悪の医療過疎地、精神科の病気をタブー視する文化、夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃) [社会]

医療問題については、10月4日に取上げたが、今日は、(その2)(埼玉県は最悪の医療過疎地、精神科の病気をタブー視する文化、夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃) である。

先ずは、10月21日付けJBPress「日本で最悪の医療過疎地、埼玉県 南米チリと同水準、産科は医療崩壊の危機に直面」をグノシーが転載したものを紹介しよう(▽は小見出し、注は省略)。
・先日、子供が産まれました。2904グラムの元気な女の子です。幸いにも安産で、出産後も大きな問題なく、母子ともに健康です。 陣痛が始まったのが休日だったため、出産に立ち会うこともできました。家族が増えるという人生の大きなイベントを迎えられ、初めての子育てに悪戦苦闘しながら、非常に嬉しく思っています。
・友人や上司に出産の報告をすると必ず聞かれるのが「里帰り出産ですか?」というものです。育児情報誌「miku」の2011年の調査によると里帰り出産をした妊産婦は約6割で、過半数の人が里帰り出産を選択しているようです。
・その理由として、産後の体を休めるためや、妊娠・育児を親にサポートしてもらうため、というものが多いようです。また、夫が長時間労働のためサポートが期待できない、という理由が次に続いています。
▽里帰り出産ができない!
・医師は職業柄、長時間労働や時間外労働が多く、私のまわりの先輩医師に聞いてみると里帰り出産が多いようです。そうしたなか、私達夫婦は里帰りせず、現在の自宅近くの産院で出産することを選択しました。  妻の地元に里帰り出産を引き受けてくれる産院がないからです。
・私も妻も埼玉県出身で、妻は埼玉県秩父市の出身です。秩父市は秩父盆地を中心とした山々に囲まれた自然豊かな地域で、秩父礼所巡礼や秩父夜祭などの歴史文化も多く、埼玉県の観光名所の1つです。
・人口は約6万人ですが、市内に産院は1つしかなく、分娩予定数によっては市内の出産を担うだけで精一杯で、里帰り出産は引き受けていないようです。市も産科医療の充実に向けた取り組みを行っているのですが、改善の目処は立っていない様子です。
・意外に思われる方も多いでしょうが、埼玉県は日本で一番の医療過疎地です。人口10万人あたりの医師数は149人と東京都(304人)の半分以下で、南米のチリと同水準です。 医師の偏在は東京から離れた地方で生じていると思われがちですが、実態は東京を除く関東が最も不足しているのです(全国ワースト3は埼玉、茨城(167人)、千葉(170人)です)。
・さらに産婦人科医師数も埼玉が最も少なく、人口10万人あたりの28人と、首位である長崎(57人)の約半分です。南相馬市立総合病院の山本佳奈医師による医療圏別の解析によれば特に秩父、東部医療圏が少ないようです。 なぜ埼玉が医療過疎なのか、それは医学部の偏在が原因と言われています。
▽県内には私立の医学部が1つだけ
・人口あたりの医師数は医学部数、つまり地元での医師養成数と相関してるのです。埼玉県は人口723万人に対し、医学部が1つしか存在せず、人口あたりの医学部数は全国最低です。
・さらに私立医学部のため、地元の学生が通えるわけではなく、医師の地域定着率が低いのです。埼玉県は埼玉に残る医学生に奨学金を用意したり、大学側も地域枠を設けたりしていますが、目に見える効果はまだ現れていません。
・「埼玉は東京の隣なのだから、何かあれば東京にいけばよい」と考える方もいるかもしれません。糖尿病などの慢性疾患や外科で行われる待機手術であればそれでもいいかもしれませんが、それが産科にも当てはまるでしょうか? 秩父からでは都心まで特急電車を使ったとしても1時間以上かかりますし、妊婦なら自家用車、タクシーが主な交通手段になりますので、2時間近くかかります。予期せぬ母体や胎児の変化に2時間の遅れは許容できないでしょう。
・こうした医師の偏在を解消するために、これまでも様々な議論が行われています。つい先日、厚生労働省の分科会で、保険医登録の条件に医師不足地域の勤務経験が提案された、との報道がありました。 実現には法改正を含めた細かい協議が必要で、まだ時間はかかりそうです。しかし、この医師不足地域の中にちゃんと埼玉県は含まれているのでしょうか? 実態がしっかり把握されず、「医師不足は地方」というイメージだけで議論がなされることがなく、地元埼玉の産科医不足がいち早く解消されるよう切に願います。
https://gunosy.com/articles/RQ8pG

次に、精神科医の和田秀樹氏が11月8日付け日経Bpnetに寄稿した「精神科の病気をタブー視する文化」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽根っこの発想は相模原事件と同じ
・皇太子家の長女愛子さまが学校に行けなくなったということで、とある週刊誌に取材を受けた。 思春期の子供が学校に行ったか行かなかったかが常に報じられることだけでもストレスだし、ちょっとふっくらされただけでネットに太ったような書かれ方をするのでは、拒食症を誘発しかねない懸念があると答えた。その際に、雅子さまが最近、少しハイテンションという話を聞いたので、「『双極性障害Ⅱ型』という躁とうつ状態を繰り返す病気の一種である可能性もゼロではないと思います」とコメントしたら、こんなメールをいただいた。
・「皇太子妃が公務に復帰されたら躁病ですか。すごいこと言うんですね。徐々にいい方向に向かわれるたびにマスコミを使ってそういうこと言って叩いて、ご本人だけじゃ無理と思ったらお子さままで叩いて、読者がそのやり口に気づいてないとでも思ってます?精神科医って、診断してもいない人間に勝手に病名付けてマスコミで叩くマネをしてもいいんですか?」(原文ママ)
・この人の考え方で行けば、精神科の病名の「可能性がゼロ」でないというだけで叩くことになるのだろうが、それは精神科の病名がつくことは恥ずべきことという考えがあるということだろう。根っこの考え方は「障害者などいなくなればいい」という相模原事件に通じかねない危険な思想とさえ感じるが、そういう考え方をする人が意外に多いように思う。
・最近、のどが渇くことがひどくなったという話を聞いて、糖尿病の可能性が高いから医者に行けと言ったり、頻尿がひどいという話を聞いて、膀胱炎か前立腺肥大の可能性があるから泌尿器科に行ったほうがいいのではと言ったりするのなら、「叩く」という表現にはならないだろう。
▽病名というのはなんのためにつけるか
・私は、以前に、安倍首相が第一回目の退陣をした際に、うつ病の可能性が強いとコメントした際も、ぼろくそに叩くメールなどを大量に受ける羽目になった。あるいは、有名タレントが、お酒を飲んで裸になって騒ぎを起こした際にもアルコール依存症の可能性が高いと書いて、首相の時以上の非難のメールを受け取った。
・病名というのはなんのためにつけるかというと、基本的には早めに医者に行ったほうがいいとこちらが判断した際につけるものだ。たとえば、アルコール依存であれば、アメリカの最新の診断基準では、「もともと飲みたかった量よりつい多く飲んでしまう」と「前は酔えた量で今は酔えない」の二項目当てはまっただけで依存症の診断を受ける。厳しすぎると思われるかもしれないが、社会的廃人になってから診断したのでは、治療も困難だし、本人の損失も大きいので、早期発見、早期治療を行おうというのが、現在の国際的なトレンドなのだ。
・日本というのは、ある意味、かなり異常な国である。 身体病に関しては恐ろしくナーバスで、検診で一項目でも異常値が出れば、あわてて医者に行き、すぐに薬を飲む人が多い。 また風邪を引いたくらいで医者に行く国も、先進国ではほとんどないそうだ。
・アメリカの場合は、医療費が異常に高いし、ヨーロッパでは医療費がタダの代わりに予約がものすごく待たされる。また、大した病気でもないのに公的医療費を使うと白い目で見られかねないという話を聞いたこともある。
▽電通女性の過労自殺はうつ病の可能性が強い
・ところがいっぽうで、日本では自殺未遂をして初めて精神科に診てもらったり(診てもらわない人もいるらしい!!!)、医者にかからないまま自殺してしまったりする人が、むしろ当たり前にいる。 電通の女性の過労自殺問題で、取材を受け、SNSの内容を見せてもらったが、不眠にしても、ものごとを悪く受け取る認知の変化をみても、うつ病の可能性が強いものだった。
・おそらく海外の人間からすると、日本の過労やパワハラのひどさももちろん驚きだろうが、いっぽうで、こんな状態なのに精神科の治療を受けていないことも驚くことだろう。
・81もある日本中の精神科の医局の主任教授で、カウンセリングが専門の人が一人もいないなど、まだまだ日本の心の治療は遅れているのは確かだが、薬物療法にしても電気ショック治療にしても、あるいは磁気を使ったTMS(経頭蓋磁気刺激法)という治療にしても、一応、最先端の治療の選択肢はかなり広がっている。
・うつ病の場合、一時期は、神経伝達物質の不足で起こると考えられていたが、薬で30分で補正できるのに、薬の効果が現れるのに2週間かかるのは、伝達物質の不足が神経栄養因子の不足を招き、神経そのものが変性をきたすので、薬で伝達物質を補正しても、変性が改善するのに2週間かかるからだという説が強まっている。だとすると伝達物質が足りない状態が長く続くほど治りにくくなるし、神経の変性もひどくなる。実際、うつ病の既往のある人は認知症になりやすいことは様々な調査で明らかになっている。
・伝達物質の補正は、薬でなくてもカウンセリングでも可能ではないかという考えも強まっているし、電気ショック治療やTMSのほうが安全で副作用も少なく、即効性があるともいわれている。 私が、この手のコメントをするたびに不愉快な思いをするのに、それを続けているのは、その人が本当にその病名に当てはまっているかはわからないが、こういう状態であれば、こういう病名がつきますよということのわかりやすい例になると考えるからだ。
・涙で眠れなくて体重が減っていればうつ病、アルコールの量が増えていてアルコールで問題行動を起こせばアルコール依存症、鬱っぽい人がふだんよりハイテンションなら双極性Ⅱ型という風に、本人なり周囲の人が医者に行く、医者に連れて行くガイドラインになるからだ。
▽うつ病と躁うつ病は違う種類の病気
・今回、あえて双極性Ⅱ型という病名の可能性を書いたのは、2年前から精神科の診断基準が変わり、うつ病(うつ病性障害)と躁うつ病(双極性障害)は違う種類の病気と考えられるようになったことを知ってほしいという意味がある。双極性障害の患者さんの鬱状態の際に、通常のうつ病の薬を使うとなかなか治らなかったり、逆に躁状態になってトラブルや犯罪を起こしたりすることもある。双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は通常の躁うつ病なのでわかりやすいのだが、Ⅱ型は躁のときでも、ちょっとハイテンションとか、治ったように見えるレベルなので、わかりにくいという問題点はある。
・これは立派な病気なので、違っているかもしれないが医者に行ったほうがいいし、「本当は怖い」などといって、一万人とか十万人に一人しかかからない病気を紹介して人々を不安にするより、本当の病気である可能性が少なくとも10%はあるし、だとしたら治療したらよくなる可能性が高いということを知らせたかったのだ(週刊誌のコメントでは、ゼロとは言えないと書いたが、実はそのくらいの可能性と思っている)。つまり当てはまっていたら医者に行く価値があるのである。そのほうが風邪で医者に行くより、はるかにグローバル・スタンダードだと言える。
・現実に、昔、ノルウェーのボンデヴィックという首相がうつ病を国民に告白して、休職したことがある。約1か月で復職し、それ以降は立派に首相の務めを果たした。それによって、うつ病で医者に行く抵抗が弱まり、またうつ病は治療すれば治る病気だったことが国民に知れ渡ったため、治療を受ける人が増えた。もともとノルウェーは自殺の多い国だったが、今は日本よりかなり少ない。
・現首相ももし本当はうつ病だったとしたら、国民に正直に言ってもらったほうが、国民の病気に対する認識も、治療すれば治るという事実も知れ渡り、確実に自殺が減るだろう。違っていてもお芝居でやってほしいくらいだが、それができないのは、ご本人にそれが恥ずかしい病気という意識があるか、国民の差別意識を知っているからだろう。
▽あいまいな「心の教育」よりも「命の教育」を
・ただ、週刊誌の数行のコメントや、1時間取材されて1分も使われないワイドショーのコメントでは私の真意が伝わらないのも確かなことだ。 ラジオやこのコラムのような長めの原稿なら、それを伝え、書くことができるのだが、やはり大切なのは、心の病の啓もう事業や、あるいは、学校に自殺予防教育や心の病を知る教育を取り入れることだ。
・どのレベルになれば医者にかかったほうがいいとか、友達が死にたいと言ってきたときにどのように対応すればいいとかいう自殺予防教育は、自殺を確実に減らすエビデンスがある。 効果があいまいな「こころの教育」などより、子ども(彼らが大人になったときのほうがさらに有効だそうだ)の命を守る自殺予防教育をぜひ取り入れてほしい。
・うつ病の生涯有病率(一生の間に一度でもかかる可能性)は女性だと4人に一人にのぼる。国民の6人に一人は、ニコチンも含め、なんらかの依存症の診断基準に当てはまるという。 いつ、自分が心の病気に陥るかわからないのだ。
・100時間くらいの残業で死ぬとは情けないと言った人もいたが、それで病気にならない人がいるからといって、病気になる可能性があるものを許容していれば、世の中、有害物質(ほとんどの有害物質は、摂取しても病気にならない人がたくさんいる)だらけになってしまう。少しでもリスクを高めるものを減らしていこうというのが、さまざまな規制の大前提だろう。
▽心の病の可能性を指摘できない文化を変える
・いずれにせよ、自分だけはならないという慢心と自分の中に差別意識があると、自分が病気であることが認められないし、それだけ医療を受けづらくなり、受け入れづらくなる。結果的に会社勤めが続けられなくなったり、社会生活が営めなくなったり、対人的に孤立したり、最終的に死を選んでしまうことになりかねない。
・心の病の可能性を指摘したくらいで「叩いた」と言われる文化をなんとかしないことには、日本の自殺はなかなか減らないし、心の医療の敷居が低くならない、ということは、今回の差別的なメッセージで、これまで以上に痛感することになった。  しかし、それは自分で自分の首を絞めることになるということを少しでも多くの人に知ってもらえれば、精神科医として幸甚この上ない。
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/306192/110700044/?P=1

第三に、11月19日付け東洋経済オンライン「夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃 年間3500万円の価値はどれほどのものか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・年間3500万円。この超高額の抗がん剤「オプジーボ」(一般名「ニボルマブ」)の公定価格(薬価)が、2017年2月から”半額”に引き下げられることが決まった。11月16日に開かれた厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で、2017年度の50%引き上げが了承された。
・オプジーボとは、京都大学名誉教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)氏が開発を牽引し、日本メーカーの小野薬品工業が世界に先駆けて発売した、がん免疫療法の治療薬だ。100ミリグラム約73万円で、患者一人につき月額の薬剤費が約290万円、年間なら約3500万円にもなる。これだけの額で、果たしてどれほどの妙薬なのか。医療業界ばかりでなく、世間一般にも注目を集めた。
▽類似薬がなく、希少性が高い薬
・日本の場合、薬は、ヒトでの臨床試験(治験)で効き目や安全性が確認され、厚労省の製造販売承認が得られた後、中医協で薬価が決まる。各薬の薬価算定理由は公開されており、欧米諸国では製薬メーカーと保険者など支払い側の交渉や市場価格に基づいて決まるのに対し、日本では透明性の高いルールがある。それが薬価算定方式で、「類似薬効方式」と「原価計算方式」に大別されるが、前者は既に類似した薬効の薬がある際、それと比べることで薬剤費全体のパイを拡げないよう、キャップをはめる形で決められるのだ。これは社会保障費の拡大を抑えたい政府の意向でもある。
・類似薬のないオプジーボは、後者の原価計算方式で決まった。そもそも、生物学的製剤(遺伝子組み換え技術で製造される薬)で、原価は高い。世界で初めて承認を取得したことなどから、平均的な営業利益率(16.9%)の6割増しとなる27.0%まで加算された。
・さらに薬価を押し上げたのは2014年7月、まず悪性黒色腫(メラノーマ)という、希少で難治性の皮膚がんの薬として承認されたためだ。メラノーマの発症数は国内で年間1500人弱。オプジーボの適応は、「根治切除不能な悪性黒色腫」で、手術や放射線治療を望めない患者に限っている。当初、発売後5年間の市場規模は、ピーク時の2年目で、患者470人・販売額31億円とはじかれたのである。
・一昔前、薬が世に出るまでには、10年余りの歳月と数百億円の研究開発費がかかるとされた。それが今では1000億~1500億円にも膨れ上がっている。新薬、特に難病の薬を開発するというチャレンジをした企業には、それなりの対価を与えないと、開発意欲がそがれ、次の開発につなげられない。オプジーボの薬価は、決して“法外”だったわけでない。
・オプジーボを端的に言えば、「免疫チェックポイント阻害薬」という種類の薬だ。人間が持つ免疫細胞にはもともと、がん細胞を攻撃する力が備わっている。本庶氏らはPD-1という分子を発見し、これが免疫細胞の動きを抑えてしまう免疫チェックポイント分子と捉えた。オプジーボの働きは、PD-1を阻むことで免疫細胞を再活性化させ、がんを攻撃するように仕向ける薬(抗PD-1抗体)、と言ってよい。
・近年、流行している抗がん剤としては分子標的薬があるが、これは特定のがん細胞の増殖に関わる分子に働きかけるもの。一方、免疫細胞に作用する治療は当初から、がんの種類を問わず効く可能性を秘めていた。

・様々ながんについての臨床試験で患者への投与が試みられてきた。中でも、治療成績のよかった非小細胞肺がんや腎細胞がん(いずれも切除不能の場合)など、患者数の多いがんには次々と適応が広がっていき、同時に、製薬メーカーにとっては売り上げや利益も急拡大している。
・とはいえその多くは、”効く可能性”のままで終わることもあり得る。オプジーボの場合、非小細胞肺がんや腎細胞がんでも順次承認されたが、いずれも厚労省の見込みが甘かったわけではない。かつて厚労省で新薬の治験・承認審査、薬価制度の関連業務に従事していた北里大学薬学部の成川衛教授は、「たとえ、半年後にこんなに対象が増えると仮に分かっていたとしても、日本の薬価のルール上は高額になっても仕方がない。いかに機動的に見直すかが重要だ」と語る。
・かくも高額な薬剤だが、実際にオプジーボを使う個々の患者にとっては、薬代で身を崩さなくても済む。日本の公的医療保険には「高額療養費制度」という仕組みがあるからだ。例えば70歳以上であれば、収入に応じて、月額の自己負担は1万5000~8万円で済む。医療費の負担で圧迫されるのは、個人ではなく国の保険財政なのだ。
・1度決まった薬価は永久に続くものではない。薬剤の価格はすべて、2年に1度の診療報酬改定によって、市場の動向に合わせ見直される。2016年度からは、年間販売額がきわめて大きい品目は、「特例市場拡大再算定」の扱いとなった。対象が拡大したオプジーボは、販売額が1500億円超と算出されたため、特例で最大の50%引き下げとなり、かつ、2年を待たずしての値下げとなった。
・ではオプジーボの実力はいかほどなのか。 現状、効き目がある人の割合(奏効率)は、2~3割にとどまる。前述した分子標的薬は遺伝子などを調べて、あらかじめ効くだろうと予測される人にのみ投与することができる。 オプジーボは今のところ、そうした事前診断をできず、やめ時を判断するためのバイオマーカー(血液中などの指標になる物質)もない。臨床現場では「誰に効くか分からない」「(効く人も効かない人も)いつまで使い続ければいいか分からない」という声も聞かれる。また早期から使えず、既に状態の悪くなった患者に用いることも、奏効率を下げる要因につながっている。
・例えば、ウイルス性肝炎の治療薬である「ソバルディ」「ハーボニー」(ともにC型肝炎薬)も、月額百万円以上かかる高額薬剤として話題になったが、3カ月服用することでほとんどの人が肝炎ウイルスの排除に至る。オプジーボにはそうした切れ味はない。今後のがん免疫療法は、精密な診断に基づき、患者やがん細胞の状態の差を考慮した”個別化治療”へと向かわなくてはならないのだ。それには遺伝子情報をはじめとする、ビッグデータの解析が不可欠とされる。
▽薬価にも費用対効果を採り入れる動き
・一方で、費用対効果を薬価にも本格的に採り入れようという動きもあり、オプジーボやソバルディ、ハーボニーも、俎上に載せられている。ここでいう費用とは、個人の負担でなく、国全体の負担だ。日本には薬価のルールブックがあっても、そこに費用対効果という視点はなかった。
・が、中医協には2012年、費用対効果評価専門部会ができた。2016年4月には7つの薬が検討対象になって、メーカーに対し分析データ提出を求め、専門家が妥当性を検定、次回の薬価改定で価値に見合った価格に是正していくことになっている。
・その検証には「質調整生存年(QALY)」と呼ばれる指標を使う。QALYは、薬によって延びた生存年数に、その間の生活の質も加味したもので、英国などで利用実績がある。英国では医療費はすべて税金で賄われ、費用対効果への意識は高いが、医療サービスの内容に地域間格差があったことで1999年に国立医療技術評価機構(NICE)が創設され、薬の費用対効果を測り、使い方の推奨を提言するようになっている。 基準は、「1QALY(健康で活動的に1年生きている状態)当たりの費用が、2万~3万ポンド(約250万~380万円)以下であれば、費用対効果として良好。それ以上なら税金の賢い使い方とは言えない」、というもの。単なる総医療費の削減ではなく、定められた財源の中で、より効率的な治療の提供を目指すわけだ。
・日本の費用対効果評価専門部会の参考人でもある国際医療福祉大学薬学部の池田俊也教授は、「日本では、患者や社会にとってどれぐらい価値があるのかという視点で、薬価が定められていなかった」と指摘する。2018年度からは、高額な薬剤や医療機器の価格は、費用対効果指標に基づく見直しが行われる予定だ。
・英NICEは最近、高額の抗がん薬を中心に評価し、約半数を「費用対効果の点から非推奨」としている。オプジーボも肺がんについては、原案段階では費用対効果が悪いため「非推奨」となっており、今後、大幅な価格引き下げがない限り、非推奨となる可能性が高い。
・現在、オプジーボの投与後に早期に治療効果を判定するバイオマーカーの開発は、京都大学をはじめ盛んに進められている。使い方についても実績が積み上がり、使うべき人やタイミングが分かってくれば、これから奏効率は上がり、費用対効果も向上するはずだ。
・がん免疫療法は1950年代末に着想されて以来、様々な努力が試みられてきたが、めぼしい成果は得られなかったところに、オプジーボがその扉を開いたことは間違いない。世界の製薬メーカーは、免疫チェックポイントを標的とした、多くの薬剤を開発中である。
▽ノーベル賞の山中教授も注目
・2016年のノーベル生理学・医学賞の受賞に先立ち、日本人の受賞の可能性について問われた京都大学の山中伸弥教授は、真っ先に「PD-1」を挙げた。がん治療における抗PD-1抗体の発見は、感染症におけるペニシリンにもたとえられる。iPS細胞発見で2012年に同賞を受賞した山中教授が、「がん治療の新たな光」と評したように、人類への貢献という意味ではプライスレスな薬とも言えるかもしれない。
・オプジーボは様々な問いかけをわれわれに投げかけた。日本の国民皆保険制度は世界的にも優れた仕組みだが、限られた財源の中でより効率的な医療を提供するなど皆保険維持のために何をすべきか、国民も考えなくてはならない時期に来ている。
http://toyokeizai.net/articles/-/145463

第一の記事が指摘している 『医師の偏在は東京から離れた地方で生じていると思われがちですが、実態は東京を除く関東が最も不足しているのです(全国ワースト3は埼玉、茨城(167人)、千葉(170人)です』、というのは初めて知って驚かされた。ただ、『医学部が1つしか存在せず、人口あたりの医学部数は全国最低』、とはいっても、医療ニーズが強ければ、医師が東京から移住や通勤で勤務する筈だと素人的に思うが、そうなっていないのは、医療ニーズそのものがそれほど強くないためなのではないだろうか。
和田氏が指摘する 『精神科の病名がつくことは恥ずべきことという考えがあるということだろう』、『身体病に関しては恐ろしくナーバスで、検診で一項目でも異常値が出れば、あわてて医者に行き、すぐに薬を飲む人が多い』、というのは確かにその通りだ。日本では、「精神病は遺伝病」との都市伝説が長年あったことも影響しているのかも知れない。それにしても、『ノルウェーのボンデヴィックという首相がうつ病を国民に告白して、休職したことがある。約1か月で復職し、それ以降は立派に首相の務めを果たした』、というのには心底驚いた。『もともとノルウェーは自殺の多い国だったが、今は日本よりかなり少ない』、というのは首相告白の効用は甚大だ。『あいまいな「心の教育」よりも「命の教育」を』、との提言には諸手を上げて賛成だ。
オプジーボは確かに画期的な薬だ。『免疫細胞を再活性化させ、がんを攻撃するように仕向ける薬』、というのであれば、適用可能なガンの種類もさらに広がる可能性もあろう。しかし、『今のところ、そうした事前診断をできず、やめ時を判断するためのバイオマーカー(血液中などの指標になる物質)もない』、というのは確かに困ったことだ。この方面の研究に期待せざるを得ない。『2018年度からは、高額な薬剤や医療機器の価格は、費用対効果指標に基づく見直しが行われる予定だ』、というのは望ましい方向といえよう。
タグ:医療問題 東洋経済オンライン 和田秀樹 グノシー 日経BPnet (その2)(埼玉県は最悪の医療過疎地、精神科の病気をタブー視する文化、夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃) BPress 日本で最悪の医療過疎地、埼玉県 南米チリと同水準、産科は医療崩壊の危機に直面 埼玉県は日本で一番の医療過疎地 人口10万人あたりの医師数は149人と東京都(304人)の半分以下で、南米のチリと同水準 県内には私立の医学部が1つだけ 全国ワースト3は埼玉、茨城(167人)、千葉(170人)です 精神科の病気をタブー視する文化 根っこの発想は相模原事件と同じ 精神科の病名がつくことは恥ずべきことという考えがあるということだろう 根っこの考え方は「障害者などいなくなればいい」という相模原事件に通じかねない危険な思想とさえ感じるが 早期発見、早期治療を行おうというのが、現在の国際的なトレンド 身体病に関しては恐ろしくナーバスで、検診で一項目でも異常値が出れば、あわてて医者に行き、すぐに薬を飲む人が多い。 また風邪を引いたくらいで医者に行く国も、先進国ではほとんどないそうだ 電通女性の過労自殺はうつ病の可能性が強い 81もある日本中の精神科の医局の主任教授で、カウンセリングが専門の人が一人もいない ノルウェーのボンデヴィックという首相がうつ病を国民に告白して、休職 約1か月で復職し、それ以降は立派に首相の務めを果たした もともとノルウェーは自殺の多い国だったが、今は日本よりかなり少ない 心の病の可能性を指摘できない文化を変える 夢の抗がん剤「オプジーボ」が半額になる衝撃 年間3500万円の価値はどれほどのものか 患者一人につき月額の薬剤費が約290万円、年間なら約3500万円 類似薬がなく、希少性が高い薬 免疫細胞を再活性化させ、がんを攻撃するように仕向ける薬 値下げの幅も時期も「特例」の扱い 薬価にも費用対効果を採り入れる動き 2018年度からは、高額な薬剤や医療機器の価格は、費用対効果指標に基づく見直しが行われる予定
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