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粗悪キュレーション(まとめ記事)サイト問題(悪質サイト問題は「氷山の一角」、悪質サイトの「闇」に既存メディアは打ち勝てるか、パクリ量産とクラウドソーシングの黒い関係) [メディア]

今日は、粗悪キュレーション(まとめ記事)サイト問題(悪質サイト問題は「氷山の一角」、悪質サイトの「闇」に既存メディアは打ち勝てるか、パクリ量産とクラウドソーシングの黒い関係) を取上げよう。

先ずは、12月5日付け東洋経済オンライン「検索結果を疑わない人は、DeNAを笑えない 悪質サイト問題は「氷山の一角」だ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「Googleの1〜3位のサイトより、クオリティの高い記事を世の中に公開していきたい」 これはDeNAが、傘下の健康・医療をテーマとするキュレーション(まとめ)サイト「WELQ(ウェルク)」の外部ライターに配布していた執筆マニュアルの文言である。他を圧倒する高いクオリティの記事を世に届ける、とは立派な志である。だが実際にDeNAが目指したクオリティとは、一般の記者・編集者が考えるそれとは大きく乖離したものだった。
・DeNAがWELQを含む9つのキュレーションサイトを休止したのはすでに報じられている通り。「根拠が不明確な医療関連記事を載せていた」(12月1日の守安功社長名義のリリース)のが最大の問題で、具体的には「風邪には家系ラーメン(横浜市発祥の豚骨ラーメン)が効くかも」「肩凝りは幽霊が原因のことも」といった、民間療法とすらいえないような信頼性に欠いた医療記事が散見された。
▽「何を間違えたか」は一目瞭然
・DeNAはこういった記事を生むに至った執筆・編集のプロセスを社内調査するために、「キュレーション管理委員会」を新設。委員長を務める守安社長は報酬も半年間、報酬を3割カット。改善策を講じるまでサイトは無期限休止になるとみられる。
・だが社内調査を改めて行うまでもなく、冒頭のマニュアルを読めば、DeNAが「何を間違えたか」は一目瞭然だ。「ライター用記事構成作成マニュアル」と題されたこの文書は、複数存在するライター向けマニュアルの中でも、執筆の根本ルールを示す肝要なものとされている。その1ページ目で真っ先に言及しているのが、冒頭の「クオリティ」だ。
・マニュアルによるとクオリティの高い記事とは、読者の欲しい情報が全て掲載されており、それを読めばほかのサイトをみる必要がない記事だという。この水準を実現するためにDeNAが具体的にライターに求めたのが、グーグルの検索結果1位から10位までのサイトをすべて閲覧し、その掲載内容にもれなく触れる記事を書くこと。つまり、上位サイトにある大見出し、小見出し、キーワードを漏れなく洗い出し、記事中で網羅するという仕組みだ。
・さらに、検索結果ページの最下部に表示される「関連ワード」についても追加することも重要としている。たとえば頭痛という言葉をグーグル検索した場合、検索結果の1ページ目の最下部には「頭痛 吐き気」「頭痛 ツボ」「頭痛 花粉症」といった言葉が表示されている(12月4日時点)。この場合であれば、記事においては吐き気やツボ、花粉症という言葉にも触れなければならないのだという。マニュアルは全22ページあり、上記のほかにも詳細にわたって「クオリティを高めるためにやるべきこと」をライターに指示している。
・一方で、このマニュアルにまったく登場しない言葉がある。「正確さ」と「信頼性」だ。大手メディアなら編集方針において最も重視するこれらの要素に、DeNAはマニュアルで一切触れていない。その代わりに別のマニュアル(「医療系記事作成マニュアル(疾患・病名編)」)で指示しているのが、文末に断定表現ではなく伝聞表現を使え、といったルールだ。サラダのようにキーワードを散りばめただけの、内容の信頼性をまったく考慮していない記事に対し、「らしい」「といわれている」という伝聞で締めくくることによって免責を図ろうというのだ。
▽DeNAはコンテンツの製造責任者だった
・DeNAは自社のキュレーションサイトについて、「いわゆる新聞・雑誌のようなメディアとは異なり、誰でも自由に投稿が可能なプラットフォーム」(広報部)と説明している。 確かに、一般のネットユーザーが執筆・投稿した記事も一部にはあったようだ。だが実際には、クラウドソーシングを通してライター業務を請け負う人を募集し、上記を始めとする詳細な執筆ルールに沿って原稿を納品することを書き手に求めていたことが明らかになっている。DeNAは記事を公開する自由な場の胴元というよりも、コンテンツの製造責任者である。
・また、ライターには1万字=400字詰め原稿用紙25枚分という長大な原稿がしばしば求められたが、これだけのボリュームに支払われる原稿料は5000〜8000円。既存の紙媒体なら数万円は払われるのが一般的な相場だろう。まさしくケタ違いの低さだ。この金額では、見識と経験のあるプロの書き手が引き受けることはありえない。この点においても、実勢に見合ったコストを払って製造責任を全うしようという姿勢がみられない。
・ある面においては、DeNAのこの戦略は正しすぎるほど正しい。DeNAが目指したクオリティは、グーグルが求める「コンテンツ品質」の基準に即したものなのだ。 グーグルの検索結果は改善に改善を重ねたアルゴリズムで導き出されている。以前は、他のサイトから多くリンクされているサイトが上位に表示されていた。だが、この仕組みを逆手に取り問題のあるサイトを上位に表示するSEO(検索エンジン最適化)手法が蔓延したことから、グーグルは近年、「コンテンツ品質の高さ」も検索順位の重要要素に取り入れている。
・グーグルの考える高いコンテンツ品質とは大まかにいうと、内容が豊富であり、単に検索したキーワードが入っているにとどまらず、ユーザーの需要に応える情報を供給していることだ。この状態を備えた記事を上位に表示するために、グーグルは検索アルゴリズム(コンピューターの計算方式)で200もの要素を考慮している。
・インターネットにちょっと詳しい程度の人では、結局のところ何を書けばアルゴリズムに評価され、検索結果の上位になれるのか今ひとつわからない。 このグーグルが詳細には明かさない「正解」を、今や日本を代表する学歴エリート集団のひとつであるDeNAは自力で導き出し、詳細なマニュアルに落とし込み、不特定多数のライターでも再現できるまでにした。その結果、DeNAのキュレーション記事はことごとく、検索結果の1位を占めるようになった。1位になれば、多くの人がクリックして読む。そうすればPV数に応じた広告収入が黙っていても入ってくる。
・さて、DeNAが記事における問題を認め、サイトを一挙に閉鎖した現時点の問題は、「不正確な情報を垂れ流すことで稼いでいるのは、DeNAだけではない」ということだ。週刊東洋経済は12月5日発売号で『情報の裏側 ググるだけではカモられる』を特集。粗製乱造されるネット情報の裏側や情報賢者の読書&ネット活用法などを追っている。
・SEOに詳しい鈴木謙一・ファベルカンパニー取締役はこう打ち明ける。「身近な人の健康問題で最近、ある病気について調べた。検索結果のトップ3どころか数ページにわたって表示されたのは、キュレーションサイトやアフィリエイトブログの記事。リテラシーがありこれらの記事を除外して情報を探せる人はいいが、そうではない普通の人にとっては、危険極まりない内容だ」。 不正確でも周到に対策した情報は上位に表示される
・グーグルは「YMYL(ユアマネー、ユアライフ)」という言葉で、おカネと命に関わる情報については、前述のアルゴリズムでより厳しく精査している。ところがそれでも、「現在のコンピュータ技術では、記事の内容の正しさや信頼性までは判断するのは難しい」(鈴木氏)。その結果、健康に直結する医療情報ですら、不正確でも周到にSEO対策した情報が検索結果の上位に表示されている。
・インターネットとスマートフォンの普及により、私たちは四六時中、情報に触れられるようになった。だがそんな現代人が、「スマホ以前」よりも飛躍的に賢くなったかというと、そうとはとうてい言えそうにない。信頼できる機関が発信しているがSEO対策を考慮していないコンテンツは情報の海に埋没する一方、エセ科学的知識や極度に偏向した政治的意見でも、検索結果の上位に表示されれば多くの人の目に触れる。ここにフェイスブックのようなSNSが絡めば、「口コミ」「知人のリコメンド」という付加価値をまとってウイルスのように拡散していく。
・権威ある英語辞書のオックスフォードは2016年を象徴する言葉に、「Post Truth」を選んだ。日本語にすれば「脱・真実」。客観的事実よりも、感情や偏向した意見のほうが人々の行動を左右するという現象を指しており、米大統領選や英国のEU脱退投票をめぐる大衆心理を読み解く考え方だ。この真実に背を向ける動きには間違いなく、ネット情報が寄与している。
・その意味で、DeNAの問題は一企業にとどまらない(だからといって、DeNAという大手上場企業の社会的責任が減じられるわけは決してないが)。この問題が明るみに出したのは、ネットという知的社会インフラの影であり、現代人には自身の知性と生活を守る情報リテラシーとインテリジェンスが今まで以上に求められているという現実なのだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/148032

次に、12月9日付けダイヤモンド・オンライン「キュレーションサイトの「闇」に既存メディアは打ち勝てるか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「WELQ」炎上の背景に見えるメディアが存亡をかける大抗争
・ここ数年、DeNA(ディー・エヌ・エー)の成長を支えてきた「発明」と言われるキュレーションサイトが炎上した。きっかけは医療系サイトの「WELQ」(ウェルク)で、医学的な根拠のない記事が無断転用されていたことだ。それが発端で同メディアの記事作成の手法が取り沙汰され、大問題に発展。DeNAは「WELQ」「MERY」など10のキュレーションサイトで記事公開を中止した。
・表面的には「不確かな情報やパクリ情報を掲載するメディアの運営の見直し」という問題に見えるこの騒動だが、実はダイヤモンド・オンラインやその競合のウェブメディア、週刊誌や大新聞やテレビなどの既存メディアが存亡をかける大抗争が、その裏に存在している。
・「メディアの闇が表に出た」ことが今回の騒動の真の意味であり、このことをきっかけに、水面下のメディア間の大抗争が表面化し、キュレーションサイトを徹底的に殲滅させたいという方向に業界が動き出しそうな気配である。今回のコラムはこの「闇」を説明したい。
・キュレーションメディアの闇とは何か。それは既存のメディアよりもお金が稼げる新しいビジネスモデルが発明されたことにある。そしてそれによって、既存のジャーナリストたち、既存のメディアたちが「立ちゆかなくなるのでは」と危惧されるのが真の問題だ。
・具体的に説明しよう。ダイヤモンド・オンラインのような既存のウェブメディアの「記事」のビジネスモデルを説明すると、次のようになる。
 (1)プロのライターが編集者と相談しながら書きたいテーマを発見し、取材し、記事を書く。
 (2)運営会社はライターに原稿料を支払った上でメディアに掲載する。
 (3)掲載した記事が読者の興味をひいた場合、PV(ページビュー/閲覧数)がたくさん集まる。
 (4)メディアは多くの読者に支持されることによってブランド価値を高め、スポンサーの広告料収入で運営費や利益を賄う。
▽キュレーションメディアを勢いづかせた「記事量産」の大発明
・これが牧歌的な時代のメディアとライターによるビジネスモデルだった。そこにこのビジネスモデルを壊す大発明が登場する。それがキュレーションメディアだ。 彼らが発見したビジネスモデルは、既存のメディアとこう違う。
 (1)運営会社がお金になるテーマやワードを選定し、それぞれについてインターネット上の情報をまとめ、記事の構成をつくる。プロのライターの20分の1のコストでそれをきちんとした記事に仕上げてくれる一般ライターを、クラウドで募集する。
 (2)ライターは与えられたまとめ記事をリライトし、独自の体裁の記事にして納品し、メディアがそれを掲載する。
 (3)もともとお金になるテーマやワードを基にした記事に、SEO技術を駆使してさらにアクセスを集めることで、検索結果の上位にランクさせる。
 (4)注目ワードを使った記事が検索上位にランクされ、多大なアクセスが集まることを背景に、スポンサーから多大な広告料収入を得て、運営費と莫大な利益を賄う。
・ちょっとわかりにくいかもしれないので具体例を出すと、閉鎖される前のDeNAのWELQの場合、「ヘルニア」というワードでグーグル検索をすると、2つの記事が他のメディアや医療サイトを押しのけて上位に登場していた。「ヘルニアの症状とはこうだ」という記事と「ヘルニアがストレッチで改善する」という記事だ(注:筆者が「ヘルニアはストレッチで改善する」と言っているわけではない。念のため)。
・ここでメディアにとってお金になるのは、「ヘルニア」というキーワードだ。グーグルで「ヘルニア」を検索するのはヘルニアで困っている人が大半であり、しかもその人数は多い。そして、ヘルニア患者を相手に商売をしようという人たちも多く、ヘルニアのキーワード検索で記事が上位にくるメディアに高い広告費を支払ってでも広告を掲載したいと思う。
・キュレーションサイトというビジネスは、ここに目をつけたのだ。先ほどの既存メディアのビジネスモデルと、キュレーションサイトのビジネスモデルの差分を整理してみよう。
 (A)運営側は最初から高く売れるテーマ、ワードだけに目をつけて、それに関する記事を書かせる。
 (B)記事の中身の基本構成は、インターネット上のサイト記事をまとめることで叩き台をつくる。
 (C) 記事を書くライターをクラウドで集める。このことで低コスト(20分の1)で大量の記事を集めることができる。
 (D)SEO技術を駆使してグーグル検索での記事の表示ランクを徹底的に上げる。
 (E)テーマやワードの高い集客力を武器に、高額の広告料を手に入れる。
・キュレーションメディアが力を入れるポイントは、このように既存メディアと大きく違うのだ。そして問題なのは、このやり方の方が、楽にたくさんのお金を儲けることができることだ。
▽筆者のヒット記事で検証 「こうすれば誰でも記事をつくれる」
・「そんなことを言っても、記事の面白さでは既存メディアに勝てないだろう」と思う人も多いかもしれないが、そうとも言えないところがこのビジネスモデルの優れたところだ。筆者の記事をパクるケースでそれを説明しよう。
・先週、15万PVを稼いだ筆者の連載記事「ジーユーが兄貴分のユニクロをたぶん追い抜く理由」だが、もし私がキュレーションメディアの運営側で「ジーユー」や「ユニクロ」がキーワードとして売れると考え、以下のような執筆マニュアルを作成したとしよう。 「発注書:『ジーユーがユニクロを抜く』という記事を書いてください。基本構成は以下のとおり」
 (1)ユニクロの直近の業績が頭打ち(※ここに2ちゃんねるへのリンクを貼ってあるとお考えください)
 (2)このままではH&MやZARAを抜くことは難しい(同上)
 (3)弟分のジーユーの調子がいい。ジーユーとユニクロの違いはハイファッション(同上)
 (4)H&MやZARAのようなハイファッションの方が世界ランクでは上(同上)
・「『だからジーユーはユニクロを抜くのでは』という結論で締めてください。上記リンクからコピペしてもいいですが、表現はオリジナルな感じでリライトしてください。以上」 どうだろう。ここまでマニュアル化してくれたら、筆者ではないライターでも筆者と同じような記事が書けるのではないか。
▽著作権法上の違法性はないが これではメディアに未来はない
・ところがこのやり方には、「著作権法上は違法ではない」という問題がある。というか筆者、つまり鈴木貴博だって、やろうと思えばこのやり方でジーユーの記事が書けるというグレーゾーンの問題もある。むしろこういう方法で書かせていただければ取材するコストがかからないので、筆者だって助かる。
・実際は筆者の場合、ジーユーとユニクロの店舗をまわって商品ラインの違いについてきちんと調べている。前述の記事中に出てくる「MA-1」というフライトジャケットについても、同記事には書いていないが、ジーユーのメンズの方がさらにファッション感が凄く、「これは来シーズンは着られないだろうな」という斬新なMA-1ジャケットが売り場を占めている。「おそらく年明けには、これらの商品は見切り価格で安売りされるはず」というところまでわかった上で、ジーユーのビジネスモデルを論じている。
・もう1つ、記事には書かなかったエピソードを紹介すると、ジーユーの柚木社長は独特のファッションセンスを持っている。本人のいないところでユニクロの社員からよくからかわれているくらいだ。その微妙なセンスが今のジーユーの快進撃につながっていることを考えると、ユニクロはジーユーの商品を真似できない。つまり、柚木社長がユニクロに復帰しない限りは、ユニクロがジーユーのビジネスモデルを取り込むのは難しい。そこまでわかって筆者は記事を書いている。
・でも、ファッション関係のキュレーションサイトが私の記事に目をつけて、「似たような記事を書いてほしい」とライターに発注すれば、実際に1000円くらいの原稿料で似たような記事ができてしまう。 そして、その掲載先がダイヤモンド・オンラインのような伝統的なメディアではなく、高いIT力を持った企業のメディアであった場合、SEO能力の違いが出て、IT企業のキュレーションメディアの記事の方がPVを集めることができるだろう。結果、私の記事よりも読まれることになる。
・ここが既存のメディアや伝統を重んじるジャーナリストには許せない、キュレーションメディアの「闇」である。取材もしない「後追い記事」の方が読まれる、その上その内容に責任を負わないメディアの方が儲かる――。そんなことがまかり通るようであればメディアに未来はない、という怒りだ。
・しかし、これまでは著作権法上、手の打ちようがなかった。ところが「医療」という法的に問題のある分野でDeNAが「ヘタを打った」。さらにキュレーションの過程で写真画像という、著作権を主張しやすいものがパクられている事例が多数あることを問題にすることができ、キュレーション記事の多くを閉鎖に持って行くことが、今回初めて達成できた。
・実際、キュレーションサイトの記事公開中止の動きは、他社へも波及している。大手ではヤフーの「TRILL」、サイバーエージェントの「Spotlight」、リクルートの「ギャザリー」などで、DeNAと同様の問題を抱えている可能性がある一部の記事を削除する対応が行われている。これらのサイトが問題にしたのが、画像のパクリである。
▽既存メディアはキュレーションメディアに打ち勝てるのか?
・ただ、まだこの問題の本丸はほぼ無傷のままである。たとえば、日本企業のようにはコンプライアンスを気にしない、外国資本のキュレーションメディア最大手は、サイトを閉鎖する動きを見せていない。 この企業、「今後は原著作権者の権利に配慮する」という新方針を表明しているが、グレーゾーンはある。一般論として、キュレーションメディアに対して著作権のクレームを行なうと、「あなたが原著作権者であることを証明しろ」と言ってくることが多い。配慮はすると言うだけで、実際にクレームをつけるとものすごい手間がかかる状況をつくって、勝ち逃げしようとしているように見えるケースもある。今回、日本の大手IT企業が軒並みキュレーションサイトの自粛に走った結果、最大手がさらに焼け太るのではないかということが危惧される。
・今回の騒動で、既存メディアはキュレーションメディアを殲滅できるのか。それとも日本のIT企業だけを討ち取った結果、最終的に外国資本にメディアの未来を支配されるのか。メディアに関わる筆者個人としては「最悪な未来が待っていないこと」を祈るのみである。
http://diamond.jp/articles/-/110717

第三に、12月11日付け東洋経済オンライン「パクリ量産とクラウドソーシングの黒い関係 ウェブライターはなぜ買い叩かれるのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「『働き方革命を起こす』『未来の働き方』などと夢のあることを言いながら、実際にはライターを低単価で買い叩き、質の低い記事やパクリ記事を大量生産するプラットフォームになってしまった」 20代後半の坂本武さん(仮名)は、みずからがウェブライターとして業務を請け負っているクラウドソーシングの実態を吐露する。
・クラウドソーシングはインターネットを介し、個人に仕事を発注するビジネス。坂本さんは大手クラウドソーシングのランサーズ社で、2014年秋からウェブライターの業務を開始。2015年からは大手のクラウドワークス社でも、同じくウェブライターの業務を受注するようになった。クラウドワーカーと呼ばれることもある働き方だ。
・クラウドソーシング上の記事執筆は1文字0.1~0.5円程度の安価な案件が多いが、「なるべく1文字1円以上の高単価な記事を手掛けたい」と仕事を探し、ランサーズ経由で出会った仕事が、DeNAの医療キュレーションサイト「WELQ(ウェルク)」のライティング業務だった。記事内容の信憑性に問題があるとして、DeNAがすべての記事を非公開にしたサイトである。 またクラウドワークスでは、同じくDeNAが手掛ける男性ファッションのキュレーションサイト「JOOY」のライティング業務も受注した。
▽掲載先は知らされず
・クラウドソーシングの仕事には2通りある。一つが発注者と直接契約する仕事。もう一つが、クラウドソーシング業者が元締めとなって仕事を引き受け、個々のクラウドワーカーに振る仕事である。 坂本さんのJOOYの記事執筆については前者。WELQについては後者だった。「WELQではクラウドソーシング側のディレクターという元締めを通じて仕事をこなすため、掲載先がどこのサイトかは教えてもらえませんでした。掲載先がWELQだと知ったのは、数カ月経ってからです」(坂本さん)。
・坂本さんはWELQやJOOYなどのDeNAの一連の騒動をめぐって白日の下にさらされた、検索上位になるためのSEO(検索エンジン最適化)対策だけを重視して不正確な記事を制作するプロセスについては問題があったと指摘する一方、クラウドソーシング側の構造問題にも言及する。 「記事の文字単価と質は、どうしても比例してしまうのでしょう。クラウドソーシングの登場によって1文字1円以下でライターを買い叩く土壌ができたことで、記事の質にしわ寄せがいった側面はあると思います」(坂本さん)
▽女性の4割がライター
・クラウドソーシングを介した労働力の買い叩きがはびこっている現状は、これまでも問題視されてきた。今年2月には、クラウドワークスが決算時、月額20万円超のワーカー数が「111人」だったと公表。同社の登録者数80万人からすると、約8000人に1人しか20万円超稼げない計算となったため、ネット上で「クライアントが安く買い叩くためのサービス」と批判が巻き起こった。
・坂本さんが手掛けていたようなウェブライターの仕事は、実はクラウドソーシングの中で多くを占める。クラウドワークスによると、女性クラウドワーカーの約4割がライター。プログラミングなどと比べると単価が安いため、「案件数ではいちばん多い」(同社)という。
・本来、内容が専門的かつ正確でわかりやすく中立性、客観性、公共性、社会性などを担保するプロレベルの記事を書くには、綿密な取材も含めてさまざまなノウハウや一定以上の見識、経験が必要なはずだ。ただ、プログラミングのようなはっきりとした専門的な技術に比べると、日常でメールを書いたり、仕事の報告書をまとめたりなど、文章を書くことは誰でもできる汎用的な面も小さくない。
・これがクラウドソーシングのライティング業務に多くのクラウドワーカーが群がってしまう構図を生んでいる。紙媒体だけしかなかった時代と比べ、インターネット上にはほぼ無限といってもいいほど、ページが作れてしまう。コストをかけずにページを作りたい業者と安くても仕事を受けるクラウドワーカーがたくさんいるという需給関係を考えると、単価の低い記事執筆の仕事が溢れてしまうのも構造問題といえる。
・実際に12月10日時点でクラウドワークスのサイトで記事執筆の仕事を探してみたところ、たとえば、ある分野の「レビュー記事」を「経験不問」かつその分野に「詳しくなくても執筆可能な内容」として3000~4000字で3000円で募集している仕事があった。これは極端な例ではなく、似たようなケースはほかにも散見される。執筆の技術そのものはおろか書く内容の専門性も問われない記事が量産されている。
・記事の価格と質の問題だけではない。坂本さんはランサーズで「ディレクター」と呼ばれる、元締めの仕事の進め方にも疑問を感じたという。 「WELQでは一つのプロジェクトにつき3、4人のライターと1人のディレクターが組んでいました。ディレクターはランサーズのスタッフだが、中には学生のアルバイトもいた。仕事の連絡はチャットワークスでやりとりしますが、おそらく案件数が多すぎて彼らもさばききれず、質問の返事が来ない、返事が遅れたことを詫びないなどのケースが多くありました」(坂本さん)
▽多いのはキュレーションサイト
・ランサーズ経由でJOOYの執筆業務を受注していた田中早苗さん(仮名)は、今回の件でまずDeNAの責任を感じたという。 「JOOYでは(記事管理ツールの)『パレットワークス』上で記事を提出する仕組みでしたが、あらかじめ書かれていた記事タイトルや見出しが間違っていたこともあり、いつか問題になると感じていました」(田中さん)。
・一方で田中さんはDeNAの姿勢とともに、クラウドソーシングの課題についても指摘する。 「クラウドソーシングは、技術や知識を持っているフリーランスが仕事を探すプラットフォームとしては便利。でも専門知識を持たない人にとっては、『月収20万円』といわれるまで稼ぐのは、よほどの努力をしないと難しい。またウェブライターの初心者ができる案件となると、キュレーションメディアが多い。それも検索1ページ目に出てくる多くのまとめ記事から情報を抜き取り、リライトすればOKという仕事なんです。パクリメディアと揶揄されても仕方ありません」(田中さん)
・もちろん、クラウドソーシング上のライティング業務が、安価でかつ内容の正確性の配慮が欠けた案件ばかりというわけではない。自分の専門知識を深め、信頼性の高いオリジナル記事を書くことを重ねてスキルを高め、指名で頼まれる仕事が増えるケースもある。 その場合「(ウェブライターで)月給40万円は稼いでいる」と話す人もおり、ライターで生計を立てるのに十分な収入を得ることができるのも事実だ。また安価であっても、自分の自由な時間に働くスタイルを好んで利用する人もいるだろう。
▽新たな指針を発表
・クラウドソーシング大手は12月に入り、記事執筆の新たな指針を立て続けに発表した。ランサーズは仕事の依頼時のガイドラインを設置し、リライト(書き直し)の仕事を依頼する際は同意する必要があるようにした。 ランサーズには、元締めのディレクターに対する指摘もあったと伝えると、「クラウドソーシングはまだ業界の過渡期。ディレクターについても今後、教育を強化し、オペレーションの標準化に務めていきたい」(ランサーズ広報)との返答があった。
・またクラウドワークスも仕事の依頼時のガイドラインを刷新。「NAVERまとめの作成投稿」などの具体的な禁止行為を明示した。またワーカーが仕事を評価する新機能も、アプリで先行リリースすると発表した。こうしたクラウドソーシング業者の改善への取り組みが、インターネットにおける仕事の仲介の需要の先行きを左右していくだろう。
・今回の騒動が改めて示したように、クラウドソーシング経由で量産されるキュレーションサイトなど、われわれは今インターネット上に飛び交う玉石混交の文字情報に囲まれて生活している。 不正確な情報を多くの人に読ませることで稼いでいるのは、DeNAだけではない。週刊東洋経済は12月5日発売号で『情報の裏側 ググるだけではカモられる』を特集。粗製乱造されるネット情報の裏側や情報賢者の読書&ネット活用法などを追っている。ネット上では、情報を受け取る側もそのまま鵜呑みにせずに、見極める力を養わなければ、カモにされてしまう。
http://toyokeizai.net/articles/-/149126

第一の記事にある 22ページもあるライター向けの『マニュアルにまったく登場しない言葉がある。「正確さ」と「信頼性」だ』、というのはさもありなんだ。『DeNAは記事を公開する自由な場の胴元というよりも、コンテンツの製造責任者である』、ことを考えれば、上場企業としてのコンプライアンス上も大問題だ。『グーグルが詳細には明かさない「正解」を、今や日本を代表する学歴エリート集団のひとつであるDeNAは自力で導き出し、詳細なマニュアルに落とし込み、不特定多数のライターでも再現できるまでにした』、らしいが、SEO対策とそれへの対抗策は、これまでも繰り返されてきたことではあるが、グーグルにはこうした抜け穴を塞ぐ対応を期待したいところだ。『オックスフォードは2016年を象徴する言葉に、「Post Truth」を選んだ』、というのは、さすがに世相を的確に捉えているようだ。
第二の記事にある 『キュレーションメディアを勢いづかせた「記事量産」の大発明』、だが、『著作権法上の違法性はない』、『取材もしない「後追い記事」の方が読まれる、その上その内容に責任を負わないメディアの方が儲かる』、というのは確かに困った問題だ。『外国資本のキュレーションメディア最大手』、とはどこのことなのだろう。
第三の記事にあるように、クラウドソーシングは、テレビでも『働き方革命を起こす』『未来の働き方』などと夢のあることを紹介され、その時は感心したが、そんなに簡単にいくものだろうかとの疑問も残った。キュレーションと結びついていたと謎解きされて、なるほどと納得した。
いずれにしろ、ネット検索に騙されないよう、これまで以上に気を付けたいものだ。
タグ:取材もしない「後追い記事」の方が読まれる、その上その内容に責任を負わないメディアの方が儲かる クオリティの高い記事とは、読者の欲しい情報が全て掲載されており、それを読めばほかのサイトをみる必要がない記事 マニュアル SEO(検索エンジン最適化)対策だけを重視して不正確な記事を制作するプロセスについては問題 クラウドワーカー クラウドソーシング ライターを低単価で買い叩き、質の低い記事やパクリ記事を大量生産するプラットフォームになってしまった パクリ量産とクラウドソーシングの黒い関係 ウェブライターはなぜ買い叩かれるのか 既存メディアはキュレーションメディアに打ち勝てるのか? 掲載先がダイヤモンド・オンラインのような伝統的なメディアではなく、高いIT力を持った企業のメディアであった場合、SEO能力の違いが出て、IT企業のキュレーションメディアの記事の方がPVを集めることができるだろう 著作権法上の違法性はないが これではメディアに未来はない 既存のジャーナリストたち、既存のメディアたちが「立ちゆかなくなるのでは」と危惧されるのが真の問題 キュレーションサイトの「闇」に既存メディアは打ち勝てるか ダイヤモンド・オンライン オックスフォードは2016年を象徴する言葉に、「Post Truth」を選んだ エセ科学的知識や極度に偏向した政治的意見でも、検索結果の上位に表示されれば多くの人の目に触れる 現在のコンピュータ技術では、記事の内容の正しさや信頼性までは判断するのは難しい グーグルが詳細には明かさない「正解」を、今や日本を代表する学歴エリート集団のひとつであるDeNAは自力で導き出し、詳細なマニュアルに落とし込み、不特定多数のライターでも再現できるまでにした DeNAが目指したクオリティは、グーグルが求める「コンテンツ品質」の基準に即したものなのだ 原稿料は5000〜8000円 DeNAは記事を公開する自由な場の胴元というよりも、コンテンツの製造責任者 マニュアルにまったく登場しない言葉がある。「正確さ」と「信頼性」だ 社内調査を改めて行うまでもなく、冒頭のマニュアルを読めば、DeNAが「何を間違えたか」は一目瞭然だ 信頼性に欠いた医療記事が散見 9つのキュレーションサイトを休止 外部ライター クラウドソーシング側の構造問題 見極める力を養わなければ、カモにされてしまう 多いのはキュレーションサイト 1文字1円以下でライターを買い叩く土壌ができたことで、記事の質にしわ寄せがいった側面はあると思います WELQ 働き方革命を起こす』『未来の働き方 DeNA 検索結果を疑わない人は、DeNAを笑えない 悪質サイト問題は「氷山の一角」だ 東洋経済オンライン (悪質サイト問題は「氷山の一角」、悪質サイトの「闇」に既存メディアは打ち勝てるか、パクリ量産とクラウドソーシングの黒い関係) 1万字=400字詰め原稿用紙25枚分という長大な原稿 (まとめ記事)サイト問題 ・キュレーションメディアの闇とは何か。それは既存のメディアよりもお金が稼げる新しいビジネスモデルが発明されたことにある 粗悪キュレーション 「メディアの闇が表に出た ダイヤモンド・オンラインやその競合のウェブメディア、週刊誌や大新聞やテレビなどの既存メディアが存亡をかける大抗争が、その裏に存在 写真画像という、著作権を主張しやすいものがパクられている事例が多数あることを問題にすることができ
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