SSブログ

跋扈する「空売りファンド」(その2)(またまた出没した空売りファンドに慌ててはいけない、丸紅、サイバーダインの次はSMCが標的に) [企業経営]

跋扈する「空売りファンド」については、昨年8月31日に「企業不祥事(その4)跋扈する「空売りファンド」」として取上げた。冒頭の「企業不祥事」については、本当かどうか疑わしい主張もあるため削除することとし、今日は、(その2)(またまた出没した空売りファンドに慌ててはいけない、丸紅、サイバーダインの次はSMCが標的に) を取上げたい。

先ずは、闇株新聞が昨年12月15日付けで掲載した「またまた出没した空売りファンドに慌ててはいけない」を紹介しよう。
・日銀の金融政策については、本日(12月14日)のFOMCも取り入れて明日書くことにして、本日はこの話題です。 12月13日にマディー・ウォーターズなる空売りファンド(表面的には調査会社)が、日本電産を「ハリボテの広報活動によって誇張されてきた銘柄」とする売り推奨レポートを公表しました。 あらかじめ自己ポジションで空売りしてから過激なレポートで売り煽り、株価が下がったところでさっさと利益を確定する手法は、本年夏以降日本にも出没している類似ファンド(後述)と同じです。
・日本電産の株価はレポート公表前日終値の9888円から、12月13日の公表直後に一時9301円まで5.9%下落しましたがすぐに反発し、本日(12月14日)終値は10100円となっています。ちなみにマディー・ウォーターズの設定する日本電産の目標価格は4764円だそうです。
・また同じ12月13日にはウェル・インベストメンツなる空売りファンド(同じく表面的には調査会社)が、空気圧制御システムのSMCを「グローバルな連結監査能力がない小規模な監査法人が見抜けない疑わしい財務諸表」とする売り推奨レポートを公表しました。 やはりあらかじめ自己ポジションで空売りしてから過激なレポートで売り煽るスタイルです。
・SMCの株価は公表前日終値の29495円から、12月13日の公表直後に一時26355円と10.6%も下落し、そこから反発していますが本日(12月14日)終値も27185円と公表前日を下回ったままです。ウェル・インベストメンツの設定するSMCの目標株価は4484円だそうです。
・さてこれらの空売りファンドは、ほぼ間違いなく公表直後の株価下落局面で利益を確定してもう逃げ出しているはずです。それぞれのレポートにある「ハリボテの広報活動」や「小規模の監査法人が見抜けない疑わしい財務諸表」の正当性とか、中・長期的な株価水準などには全く関心がなく、自らが売り煽ったレポートによる刹那的な株価下落だけが目的と考えておくべきです。
・ただここのところ株式市場が上昇しており、全体的に「高所恐怖症気味」であるタイミングも狙ったものだったのでしょう。 悪質な「風説の流布」です。日本人が同じことをやれば即座に証券取引等監視委員会の調査対象になるはずですが、海外ファンドなので「やりたい放題」のままとなります。
・またこういう空売りファンドは比較的小規模で資金量もリスク許容範囲も限られているため、貸株を調達して売却する「裸のポジション」は取れず、株価下落による利益だけを受け取れてリスクが限定されているデリバティブを、コストを支払って購入しているケースがほとんどです。 つまり時間が経過すればするほどコストがかかることになるため、どうしても逃げ足が速くなります。
・7月に伊藤忠を売り推奨したグラウカスも、8月にサイバーダインを売り推奨したシトロンも同じで、とっくの昔に(おそらくレポート公表直後の下落場面で)利益を確定して逃げ出しています。 テレビドラマではありませんが、まさに「逃げるは恥だが役に立つ」投資スタイルなのです。
・これは「買い」から入って対象会社に無理難題を押し付けるアクティビストなるファンドでも基本的に同じで、長期的な経営方針に口を出しているように見えても、その実態は刹那的な株価上昇だけが目的で「いつの間にか」逃げ出しています。
・前回の伊藤忠やサイバーダインも同じでしたが、今回の日本電産やSMCも「日本企業の会計・財務の問題点が海外ファンドによって暴かれる」との好意的な評論も目につきます。 会計や財務に不正を抱えていても良いという意味ではありませんが、こういう空売りファンドを過大評価したり、その売り煽りレポートに慌ててはいけないことだけは、肝に銘じておくべきです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1893.html

次に、昨年12月29日付け東洋経済オンライン「優良FA部品メーカーvs空売りリポートの行方 丸紅、サイバーダインの次はSMCが標的に」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・再び日本株が「空売りファンド」「空売りリポート」の標的になっている。そのターゲットはロボットやFA(工場自動化)機器で使われる空気圧制御機器の世界トップ企業SMCだ。2016年3月期の売上高は4756億円、営業利益1342億円。営業利益率約30%という超高収益企業だ。
・時価総額も2兆円前後のSMCに対し、ある投資家向け調査会社が12月13日に発表したリポートが株式市場を揺さぶった。「会計神話をパンクさせよ、株価に最大85%の下落余地」という、センセーショナルな見出しで始まるリポートが発表されると、前日まで3万円前後で推移していた株価が急落。一時10%以上値を下げた。
▽現金や棚卸資産に疑念
・リポートを発信したのは、企業の不正会計や会計上の不備を調査し、「売り」を推奨するリポートを顧客に提供するウェル・インベスメンツ・リサーチ社。2015年12月に、「巨額の減損リスク」と題し、大手商社の丸紅が減損処理を意図的に遅らせたのではないか、という疑惑を投げかかるリポートを公表した。
・さらに、2016年7月には医療・介護用ロボットスーツ「HAL」を開発し、市場の注目度が高いサーバーダインに対しても「口先ばかりで成果伴わず?」と、相場の思惑よりも期待利益がかなり小さいのではないかというリポートを発表している。「証券会社のアナリストリポートは会社側に迎合的だが、われわれは独立した立場から批判的な意見をいう」(ウェル・インベストメンツ・リサーチの荒井裕樹リサーチ・ディレクター)。
・同社は、公表前にファンドなどの顧客に対して下落リスクの恐れのある銘柄のリポートを提供、リポートを入手したファンドなどの投資家は空売りポジションを取り、そうした事実が表面化し、株価が下落すれば、その時点で買い戻して利益を上げることができる。
・実際は、リポート公表後に市場が反応して株価が下落すればそれだけでも利益を確保することができる。さらに、「一般に入手できる情報をもとに意見を表明している。さらに根拠を提示しているので、風説の流布にはあたらない」(荒井氏)と説明する。
・今回のリポートの中で、SMCの財務数値に対するさまざまな疑念を提示している。たとえば現預金が同社の現金保有残高の25%に相当する817億円が存在しない可能性があるという点。同社の主要子会社の現金残高を合計すると、それだけ不足するという。
・また、棚卸資産が過大で、50%以上の在庫は古い在庫で償却する必要があるのではと指摘。さらに、頻繁に全子会社の46%しか連結対象にしていない点や、買掛金の決済の多くが、手形決済ではなく、役員の多くの出身銀行であるりそな銀行系列のファクタリングサービス会社を経由させている点、創業家の髙田芳行会長と密接な事業パートナーとの取引上や登記上の疑問点などを挙げ、架空売り上げの可能性や、利益の水増しの余地があるのではと指摘している。
・そして会計監査を行った清陽監査法人に対しても、「時価総額2兆円の大企業で多くの海外子会社を抱えているのに、監査法人は小規模。これだけ複雑な大企業の監査ができるのか」と疑問を呈する。さらに、清陽監査法人が入居するビルにSMCの子会社の入居している点や、前身の監査法人がいくつかの企業の粉飾決算を見抜けなかったことも独立性や信用性が低い根拠として挙げている。
・ウェル・インベストメンツ・リサーチはこうした疑念通りの会計スキャンダルが発覚したり、営業利益率が過大だと判明したりすれば、PERなどから株価は約3万円の水準から50~85%下落する可能性があるとリポートで指摘している。 これに対してSMC側はリポートが公表された12月13日に「適正な会計処理を行っており、当社の見解とは全く異なる」と反論。さらに、14日には、リポートに対する見解を発表した。要約すると内容は下記の通りだ。
▽会社側の反論は?
①「不明」と記載されている海外子会社の現預金残高を合算すれば不足分はない。海外子会社の現預金残高も金融機関から残高報告書を入手している
②棚卸資産が同業他社に比べて多いのは、多品種の製品を短納期で納入するためで、会計基準に基づき在庫を評価し、陳腐化した多額の在庫を抱えていることはない。
③りそな決済サービスのファクタリング取引は手形取引の管理コストを削減するために移行した。
④連結財務諸表規則の規定に基づき連結の範囲を決定している。連結外の39子会社と関連会社1社は、金額的重要性、質的重要性が低く、連結対象子会社の範囲を頻繁に変更していない。
・これに対してウェル・インベストメンツ・リサーチは、15日に再びリポートを発表し、「『会計処理に問題はない』としただけで、証拠は何も提示されていない」として、改めてSMCの会計処理に疑問点があることを突き付けた。 SMCは、現時点で追加の見解などのリリースを出す予定はないという。
・泥仕合の様相を呈する一方、株式市場は静観の構えで、株価は2万8000円前後でいったんは落ち着きを見せている。ただ、12月27日にシトロン・リサーチという空売りファンドが「SMCは日本版エンロン。ウェル・インベストメンツ・リサーチの報告を支持する」というコメントを発表し、株価にも少なからず影響を及ぼした。  ウェル・インベストメンツ・リサーチの荒井氏は「丸紅のリポートを出したあと、SMCの会計慣行がおかしいとのメールがあり、調査を進めていった」といい、半年かけてこのリポートを完成させた。そもそもSMCも機関投資家向けの説明会や、記者向けの決算会見を定期的に行っているが、社長インタビューなどのマスコミ対応がほとんどなく、どちらかといえば閉鎖的な企業という印象もダメ押しになった可能性もある。
・2016年に入り、SMCだけでなく、伊藤忠や日本電産など「空売りファンド」や「空売りリポート」から標的にされるケースが相次いでいる。こうした背景には、東芝の不正会計事件を筆頭とする日本の会計基準や決算に対する不信感があるのかもしれない。
・荒井氏が「厳しく監視するシステムが足りていない」と語るように、日本の会計制度に対する問題点がこうした疑念を生み出す結果となっている。会計基準を守っているだけでは、海外の投資家は満足できない状況になっているのか。
http://toyokeizai.net/articles/-/151855

闇株新聞が、 『日本人が同じことをやれば即座に証券取引等監視委員会の調査対象になるはずですが、海外ファンドなので「やりたい放題」のままとなります』、と指摘しているが、東洋経済オンラインでは、ウェル・インベストメンツ・リサーチには日本サイドに荒井裕樹リサーチ・ディレクターがいて活動、同氏は『一般に入手できる情報をもとに意見を表明している。さらに根拠を提示しているので、風説の流布にはあたらない』、と弁明している。調査対象にならなかったのは、海外ファンドだからというより、同氏の言い分が内容の真偽はともかく、形式的には通っているためではなかろうか。『これらの空売りファンドは、ほぼ間違いなく公表直後の株価下落局面で利益を確定してもう逃げ出しているはずです』、との指摘はその通りだろう。 『「逃げるは恥だが役に立つ」投資スタイル』、とう言い得て妙だ。
東洋経済オンラインで、同氏が『「証券会社のアナリストリポートは会社側に迎合的だが、・・・」』、と指摘しているのは、確かに一面の真実である。エンロン事件でアナリストの中立性問題がクローズアップされ、若干の改善策が採られたが、実態は殆ど改善していない。空売りファンドを肯定するつもりはないが、空売りファンドのレポートにも一定の意味があると思う。 『日本の会計制度に対する問題点がこうした疑念を生み出す結果となっている』、ので、少なくとも東芝の不正会計問題については、トップ交代前の証券取引等監視委員会が主張するように、立件すべきだと思う。
タグ:跋扈する 日本の会計制度に対する問題点がこうした疑念を生み出す結果となっている こうした背景には、東芝の不正会計事件を筆頭とする日本の会計基準や決算に対する不信感があるのかもしれない 会社側の反論 時価総額2兆円の大企業で多くの海外子会社を抱えているのに、監査法人は小規模。これだけ複雑な大企業の監査ができるのか」と疑問を呈する 清陽監査法人 棚卸資産が過大 ウェル・インベストメンツ・リサーチの荒井裕樹リサーチ・ディレクター 証券会社のアナリストリポートは会社側に迎合的だが、われわれは独立した立場から批判的な意見をいう 口先ばかりで成果伴わず? サーバーダイン 現金や棚卸資産に疑念 優良FA部品メーカーvs空売りリポートの行方 丸紅、サイバーダインの次はSMCが標的に 東洋経済オンライン 売りファンドを過大評価したり、その売り煽りレポートに慌ててはいけないことだけは、肝に銘じておくべきです 「逃げるは恥だが役に立つ」投資スタイル シトロン サイバーダインを売り推奨 グラウカス 伊藤忠を売り推奨 時間が経過すればするほどコストがかかることになるため、どうしても逃げ足が速くなります 株価下落による利益だけを受け取れてリスクが限定されているデリバティブを、コストを支払って購入しているケースがほとんどです 海外ファンドなので「やりたい放題」のままとなります 悪質な「風説の流布」 ほぼ間違いなく公表直後の株価下落局面で利益を確定してもう逃げ出しているはずです グローバルな連結監査能力がない小規模な監査法人が見抜けない疑わしい財務諸表 SMC ウェル・インベストメンツ あらかじめ自己ポジションで空売りしてから過激なレポートで売り煽り、株価が下がったところでさっさと利益を確定 ハリボテの広報活動によって誇張されてきた銘柄 日本電産 マディー・ウォーターズ またまた出没した空売りファンドに慌ててはいけない 闇株新聞 (その2)(またまた出没した空売りファンドに慌ててはいけない、丸紅、サイバーダインの次はSMCが標的に) 空売りファンド
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0