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東芝不正会計問題(その25)(闇株新聞の見方:東芝の命運と日米原子力協定、半導体分社化) [企業経営]

東芝不正会計問題については、昨年12月30日に取上げたが、今日は、(その25)(闇株新聞の見方:東芝の命運と日米原子力協定、半導体分社化) である。

先ずは、闇株新聞が1月24日付けで掲載した「東芝の命運と日米原子力協定」を紹介しよう。
・東芝は過去に不正経理があったとして2015年9月7日に合計2248億円(その後2度にわたり2311億円まで増額)もの決算修正を行いましたが、これで当時のトップを含む東芝の刑事責任が追及されることはないようです。
・またそのたった半年後の2016年3月期には、東芝メディカルをキャノンに売却して得た3817億円の売却益を公正取引委員会の審査が完了していないにもかかわらず無理やり計上し、それまで頑として否定していた原子力子会社・ウエスティングハウス(以下、WH)の「のれん」をやっと2600億円だけ減損して、4600億円もの最終巨額損失となりました。
・つまり東芝は、日本政府、官邸、経済産業省、捜査当局、東証など「オール日本で不自然なほど手厚く保護されて」生き残っているわけです。
・ところが2016年12月27日、さらにその原子力事業で「文字通り原爆級の巨額損失」が発生すると突然に発表されました。 WHが2015年12月末に、原子力建設と総合的サービスを担うストーン・アンド・ウエブスター(以下、S&W)を買収していたのですが、そのS&Wに数千億円規模(その後7000億円規模まで拡大)の「のれん」計上に伴う巨額損失が発生するようです。
・東芝の2016年3月末の自己資本は3632億円しかなく、2017年3月期は営業利益や円安による資産増加を勘案してもせいぜい5000億円であり、完全に債務超過となります。債務超過となれば財務制限条項に抵触し2016年9月末で1.4兆円をこえる長短借入金の大半は期限の利益を喪失してしまう(つまり繰り上げ返済を求められる)ことになります。
・早急の資本増強(つまり増資)や、唯一残った虎の子の半導体事業の切り売りしかありませんが、3月末あるいは「さらに手厚く保護されても」有価証券報告書提出期限の6月末までに自己資本をプラスに回復させなければなりません。 東証は東芝を特設注意市場銘柄に指定したままで、このままだと増資ができないとか3月には(上場廃止のリスクがある)監理ポストに割り当てるといった懸念もあります。そこは東証による過保護がまた適用されるはずですが、増資の引受先が現れるかどうかは別問題です。
・そのあとわかったことは、東芝の原子力子会社・WHは以前からCB&Iとの間に、原子力発電所建設の工事遅れなどの補償を巡る複数の係争を抱えていたことです。 そこで東芝とWHは、その係争相手のCB&Iを買収してしまうという「奇策」に出たわけですが、もちろんそれで将来の損失が消えるわけではありません。補償は外部に支払うものだからです。
・冷静に考えると買収した2015年12月とは、2016年3月期決算におけるWHの減損を巡り親会社の東芝が頑として抵抗していた時期です。その時点でWHに新たにCB&I関連の損失が加われば、さらに大きな減損が避けられなくなったはずです。つまり東芝は2016年3月期で大幅な債務超過に陥っていたことになります。
・そこでCB&Iを「そっと」買収して「資産精査期間の1年間」だけ時間を稼いだことになります。別の言い方をすれば「隠した」わけです。まあ「オール日本で不自然なほど手厚く保護されている」東芝なので、今度も事件となることはなさそうですが、今度こそ東芝の存続が危うくなります。 さてここでやっと本題です。
・そもそも東芝が2005年に「すでに死に体」となっていたWHを高値で買収したところから始まり、不正経理に手を染めてまでその減損を避けたこと、それをオール日本で手厚く保護して刑事事件化を避けたこと、キャノンが東芝メディカルを高値で買い取って2016年3月の債務超過転落を回避させたこと、今回のCB&I巨額損失も結局は2016年3月期の債務超過転落を避けるためだったこと、さらに2017年3月期の債務超過転落も(たぶん)過保護で回避させることなど、すべて「同じ背景」があります。
・さらに東日本大震災後も、あれだけ日本政府が原発再稼働に必死であることにも「同じ背景」があります。本誌は原発再稼働に賛成ですが、それは全く違う日本のエネルギー事情を考慮した理由です。 その「同じ背景」とは1958年に締結され、1988年に更新され、失効する2018年7月に当然のように再更新される「日米原子力協定」です。
・日米原子力協定とは、簡単に言うと米国が日本の原子力政策を完全にコントロールするための協定であり、日本は米国から「とっくに事業としては成り立たなくなっている」原子力会社を引き受け存続させてパテントを支払い、米国から核燃料を大量に買い付け、さらにそれを軍事転用しないように見張られているわけです。 東芝の命運は、この日米原子力協定を抜きに考えても無意味です。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1921.html

次に、同じ闇株新聞が2月1日付けの掲載した「東芝の半導体分社化について考える」を紹介しよう。
・東芝は昨年末に公表した米国の原発エンジニアリング会社・ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)買収に伴う損失が6800億円に膨らむようで、2017年3月期末の債務超過転落が避けられなくなりました。
・何をさておいても資本増強が必要となる東芝は、1月27日に主力の半導体フラシュメモリ事業を3月末までに分社化すると決定しています。 このメモリ事業の価値を1兆5000億円と想定し、その20%未満の株式を売り出すようです。東芝全体の時価総額が1兆267億円(1月31日の終値の242円で計算)しかないため、資本増強としては効率が良さそうに見えます。
・何でこれが資本増強になるのかといえば、このメモリ事業に係る資産は東芝本体に帳簿価格のまま取り込まれていますが、それを分社化して収益性も勘案して「時価評価」すると(それが1兆5000億円だそうですが)帳簿価格を大幅に上回るはずです。 それだけだと連結決算では何も変わらないため、その分社化したメモリ事業子会社の一部(20%未満)を外部に売り出すと、残る80%強は依然として東芝本体が所有しているためその資産は100%東芝の連結決算に取り込まれたままです。つまり東芝に入る売り出し資金(理論的に3000億円)はすべて「タダでもらったこと」になり、返済義務がないため資本増強となります。
・逆にそのメモリ事業子会社の20%未満の株式を取得した投資家(あるいは事業会社)は、そのメモリ事業子会社の持ち分利益(20%未満)が得られるだけで、メモリ事業子会社の(もちろん東芝本体も)機関決定に全く参画できません。 単なる非上場株式の少数株主でしかないからです。またメモリ事業子会社の持ち分利益といっても、本社経費の負担割合などに手を加えればいくらでも圧縮できてしまいます。
・そんな状態で3000億円も「どうぞご自由にお使いください」と差し出す投資家(あるいは事業会社)がいるとも思えず、さすがに東芝もその辺は理解しているようで調達予定額も2000~3000億円となっています。たぶん2000億円を死守すれば2017年3月期末時点の債務超過だけは回避できるのでしょう。
・直感的に考えて大変に安直で、自分勝手で(唯我独尊で)、その場限りで、危機感が全く伝わってこない資本増強策です。
・東芝のフラッシュメモリ事業とは、東芝というより日本のIT企業に残された数少ない世界的競争力を備えた事業です。 NAND型(スマートフォンやメモリカードなどに使われる)フラッシュメモリの世界シェア(2015年)は、サムスン電子の30.8%に次ぐ世界2位の19.4%で、サンディスク(米国)の15.6%、マイクロンテクノロジー(米国)の14.7%に先行しています。 ここで純粋に資本調達額(増強額)だけを考えるなら、このメモリ事業を「丸ごと」売却してしまうことで、たぶん2~3兆円の間で「取り合い」になるはずです。
・もちろん日本の技術を(たぶん)海外に売り渡してしまうことになり、残る東芝も大赤字の(これからもどれだけ赤字が膨らむかわからない)原子力事業だけの会社となってしまい、せっかくの増強した資本も原発補償(それも米国など海外の補償)で食い潰されてしまう国策上も全く意味のない方法となります。
・ただ国策上といえば、日米原子力協定があるため日本企業は原発製造を止めるわけにはいかず、東芝もウエスティングハウスを見捨てるわけにはいきません。
・そこで発想を変えて原子力事業の方を分社化し、メモリ事業が中心となった(たぶん今の東芝よりもう少しまともな会社になった)東芝が大規模なリストラを条件に2兆円程度の資本増強を行い、そこから1兆円程度の「持参金」を捻出して原子力事業を完全に切り離し、最終的には三菱重工や日立の原子力事業も含めて国家管理にしてしまうべきと考えます(アレバなどを支援している余裕はないはずです)。
・ここでいう資本増強とは、公募増資と、金融機関による債務の株式化と、公的ファンドによる優先株引き受けなどの組み合わせとなります。異例の大幅資本増強となりますが、いままでのように東証が過保護に扱えばいいだけです。
・もちろん東芝が完全に生まれ変わることが条件となりますが、2015年の不正会計を受けて東芝の経営陣はすでに過半数が社外取締役となっています。しかしこういう危機に際しても「他人事」のようです。 じゃあ誰が経営すればよいのか? 世界中から公募すべきと考えます。もちろん日本人も対象ですが、学者や官僚や銀行出身者や自称経営のプロなど社外取締役予備軍は要りません。
・本誌は日産自動車や三菱自動車に限らず「簡単に日本企業を外資に売り渡す」ことには大反対ですが、資本(支配権)をオール日本で確保しているなら外国人の経営までは反対していません。優秀ならインセンティブ付き「やや高給」で雇えばいいわけです。 もし1999年時点で日産自動車をルノーに売り渡さず、オール日本で資本を大幅増強して企業体質を一新し、その経営者としてルノーからカルロス・ゴーンをスカウトしていたなら、少なくとも本誌がいちいち「噛みつく」必要のない日産自動車になっていたはずです。
・現在は1999年当時と違い「資金だけは有り余っている」ため、東芝の方向が明確に示されれば大幅資本増強でも可能なはずです。あとは優秀な経営者を「雇ってくる」だけです。 東芝はこのままではどうせロクなことになりませんが、少なくともオール日本にとってマイナスばかりとならない方向に進んでほしいと思います。 つい長文になってしまいました。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1928.html

第一の記事で、東芝が『「オール日本で不自然なほど手厚く保護されている」』、背景に『日米原子力協定』、があるとの指摘はさもありなんである。ただ、WHの買収そのものは、あくまで東芝の判断で、国から押し付けられたものではない筈だが、一旦、買収してしまうと、協定の大枠があるので、政府も特別扱いせざるを得ないのだろう。 『今回のCB&I巨額損失も結局は2016年3月期の債務超過転落を避けるためだった』、というので、本当はCB&Iで巨額損失が出ることを承知の上で、時間かせぎに買収したことが示唆されている。初めにこのニュースを聞いた時には、何故このような馬鹿な買収をしたのかと不思議に思ったが、謎が解けたようだ。[ただ、買収前のトラブルが買収後に損失になれば、売り手が負担するとの「瑕疵担保条項」も付けずに買収したので、今回の7000億円もの損失を東芝が負担するというのでは、株主代表訴訟や、機関投資家による株価下落の損失に対する損害賠償の訴訟につながる懸念もあるのではなかろうか。[ ]の部分は5日に追加]
第二の記事での 『半導体分社化』、については、 『メモリ事業子会社の20%未満の株式を取得した投資家(あるいは事業会社)は、そのメモリ事業子会社の持ち分利益(20%未満)が得られるだけで、メモリ事業子会社の(もちろん東芝本体も)機関決定に全く参画できません』、ことから、純粋な民間ベースでの投資は難しいと考えざるを得ない。1月21日付けの日経新聞が「東芝支援、ファンド経由で 政投銀・メガ銀が検討」と伝えたように、政策投資銀行などがファンド経由で投資するというストーリーはあり得る話だ。ただ、政策投資銀行は政府系金融機関とはいえ、「政府の便利なサイフ」となってしまうのでは、将来に禍根を残すリスクがある。投資する以上は、あくまで将来の回収の可能性を第一義的に考えるべきだろう。 『原子力事業の方を分社化し、・・・東芝が大規模なリストラを条件に2兆円程度の資本増強を行い、そこから1兆円程度の「持参金」を捻出して原子力事業を完全に切り離し、最終的には三菱重工や日立の原子力事業も含めて国家管理にしてしまうべきと考えます』、との提言は、大いに検討すべきと思う。
タグ:あとは優秀な経営者を「雇ってくる」だけです 原子力事業の方を分社化し、メモリ事業が中心となった(たぶん今の東芝よりもう少しまともな会社になった)東芝が大規模なリストラを条件に2兆円程度の資本増強を行い、そこから1兆円程度の「持参金」を捻出して原子力事業を完全に切り離し、最終的には三菱重工や日立の原子力事業も含めて国家管理にしてしまうべきと考えます 日本のIT企業に残された数少ない世界的競争力を備えた事業 フラッシュメモリ事業 「どうぞご自由にお使いください」と差し出す投資家(あるいは事業会社)がいるとも思えず メモリ事業子会社の20%未満の株式を取得した投資家(あるいは事業会社)は、そのメモリ事業子会社の持ち分利益(20%未満)が得られるだけで、メモリ事業子会社の(もちろん東芝本体も)機関決定に全く参画できません 東芝に入る売り出し資金(理論的に3000億円)はすべて「タダでもらったこと」になり、返済義務がないため資本増強となります 分社化したメモリ事業子会社の一部(20%未満)を外部に売り出すと、残る80%強は依然として東芝本体が所有しているためその資産は100%東芝の連結決算に取り込まれたままです 東芝の半導体分社化について考える 日米原子力協定 すべて「同じ背景」 2017年3月期の債務超過転落も(たぶん)過保護で回避させることなど 今回のCB&I巨額損失も結局は2016年3月期の債務超過転落を避けるためだったこと CB&Iを「そっと」買収して「資産精査期間の1年間」だけ時間を稼いだことになります。別の言い方をすれば「隠した」わけです 期限の利益を喪失 完全に債務超過 2016年12月27日、さらにその原子力事業で「文字通り原爆級の巨額損失」が発生すると突然に発表 東芝は、日本政府、官邸、経済産業省、捜査当局、東証など「オール日本で不自然なほど手厚く保護されて」生き残っているわけです 東芝の命運と日米原子力協定 闇株新聞 (その25)(闇株新聞の見方:東芝の命運と日米原子力協定、半導体分社化) 東芝不正会計問題
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