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北朝鮮問題(金正男暗殺事件)(金正男暗殺は資産「200億円」が理由だった、北の「暗殺セオリー」にないズサンな手口が物語ること、弾道弾と暗殺で一気に進む「北爆時計」の針) [世界情勢]

今日は、北朝鮮問題(金正男暗殺事件)(金正男暗殺は資産「200億円」が理由だった、北の「暗殺セオリー」にないズサンな手口が物語ること、弾道弾と暗殺で一気に進む「北爆時計」の針) を取上げよう。

先ずは、2月17日付け日刊ゲンダイ「金正男暗殺は資産「200億円」が理由だった…返還命令に従わず」を紹介しよう。
・おぞましい兄殺しの裏には巨額な“秘密資金”の存在があったようだ。16日の韓国の聯合ニュースによると、金正男は4年前に処刑された叔父の故・張成沢国防副委員長から巨額の遺産を受け継いだという。 金正恩は「全額返還しろ!」と迫ったが、正男が従わなかったため激怒したというのだ。
・海外を転々としていた正男は、張成沢から多額の資金援助を受けていたという。張成沢の死刑判決文には、「1年間に460万ユーロ(約5億5000万円)以上を秘密金庫から引き出して使った」とあった。正男が後継者争いに敗れた2009年から張成沢が処刑される13年まで毎年、引き出した5億円のうち2億~3億円が正男に流れていた可能性もあり、トータル10億円以上になる計算だ。
・正男は張成沢から、資金援助とは別に巨額資産も譲り受けたという。 「張成沢は北朝鮮に入ってくる援助物資の一部を闇市に流したり、北朝鮮に進出する中国企業から仲介マージンを徴収して蓄財に励んでいました。マレーシアやパナマの金融機関に蓄えた信託資金は2億1900万ドル(約220億円)にもおよぶと報じられています。金正恩が叔父を処刑したのは、巨額資金を“強奪”する目的もあったのでしょう。ただ、身の危険を察知した張成沢は財産を小分けにして金正男に“生前贈与”し、処刑前にほぼ全額を譲り渡したといいます」(北朝鮮事情通)
・“隠し資産”はこれだけじゃなさそうだ。「コリア・レポート」編集長の辺真一氏が言う。 「故・金正日総書記は、長男の金正男を後継者にできなかったことを不憫に思い、少なくない資産を海外に残してあげたと伝えられています」 外貨不足に悩む北朝鮮にとって220億円は大金だ。兄を暗殺した正恩は、今ごろ、秘密資金を血眼になって探し回っているはずだ。
・「金正恩のことだから、兄の隠し資産を執念深く洗い出そうとするでしょう。ただ、経済制裁で多くの北朝鮮の海外口座が凍結されており、口座を突き止めたとしても引き出せるか疑わしい」(辺真一氏) カネのために兄を暗殺してしまったのか。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/199759/1

次に、朝日新聞ソウル支局長の牧野 愛博氏が2月20日付け現代ビジネスに寄稿した「金正男殺害、北の「暗殺セオリー」にないズサンな手口が物語ること 追い詰められた金正恩体制!?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界を震撼させた金正男氏殺害事件。北朝鮮の関与はあるのか。北朝鮮でいったい何が起こっているのか。不確かな情報や憶測が入り乱れる中、朝日新聞ソウル支局長で、2月21日に『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』を上梓する牧野愛博氏の緊急レポートを掲載する。 日韓の情報筋が漏らす「20年前の事件」との関連は。そしてこの一件が示す、北朝鮮内部で起こっている異変とは――。
▽二つの事件の類似は偶然か?
・「偶然なのかもしれないが、2つの事件には政治的なつながりを感じる」 金正日総書記の長男、金正男氏殺害のニュースを知った日韓の情報関係筋から、同じ証言を聞いた。金正男氏が殺害された、2月13日という日付についてのことだ。
・関係筋らが比較した事件は20年前の1997年2月15日、ソウル市郊外で起きた。同日夜半、自宅アパートに戻った男が正体不明の人間に銃撃されて死んだ。被害者は、金総書記の甥で、正男氏のいとこにあたる李韓永氏だった。 犯人は見つからず迷宮入りになったが、2011年9月にソウルで起きた脱北者の暗殺未遂事件で、やはり脱北者だった実行役の犯人が、命令役の北朝鮮当局者から「李韓永の事件も、我々が企画した」と聞かされていた。2つの事件は、いずれも2月16日の数日前に起きた。16日は金総書記の誕生日だ。
・李氏は事件当時、ロイヤルファミリーの実態を暴く著書を刊行し、韓国メディアのインタビューも受けていた。  一方、金正男氏の場合、韓国の情報機関、国家情報院が今回の事件後に行われた国会報告で、「5年前から暗殺計画があった」と報告している。
・これは2012年2月、中国政府が正男氏に対して、北朝鮮の暗殺の危険を伝えていたことを根拠にしている。同時に「暗殺は、必ず達成しなければいけないスタンディング・オーダー(継続的な指示)だった」ともしている。  ただ、正男氏を巡っては昨年ぐらいから、西側諸国に亡命するといううわさが持ち上がっていた。国情院は報告で「正男氏に亡命の動きはなかった」と報告したが、事の真偽はともかく、北朝鮮が「亡命の動きがある」と判断して、暗殺の遂行を急いだ可能性があるという。
・2つの事件は、金正日総書記の生誕記念日を「祝う」ための犯行であったと、先の日韓の情報関係筋は読んだわけだ。 それでも、2つの事件はあまりにも対照的だ。 李韓永氏殺害事件の場合、犯行を目撃した人は誰もいなかった。夜半に自宅に戻る直前を狙うという、最も目撃者が少ないシーンを選んだ綿密な犯行だった。
・一方、金正男氏殺害事件では大勢の目撃者がいた。韓国に住む元北朝鮮工作員によれば、正男氏の事件では北朝鮮の犯行を思わせる部分もあるが、まったく理解できない部分も多いという。
▽「殺すなら、もっとマシな場所がある」
・まず、女性2人が殺害にかかわった点について、元工作員は「相手に警戒されずに近づけるという意味で、女性を使う場合はある」と語る。「2人で一組というのもうなずける。周囲に邪魔されずに確実に殺すことや、逃走を考えた場合、2人でユニットを組むことは暗殺の基本だ」と話す。 北朝鮮の場合、今回のような女性チームや、強行犯が得意な男性チームなどさまざまなチームを作っておいて、状況に応じて使い分けることがあるという。  毒物を使うのも、1970年代からよくみられる傾向だという。北朝鮮情勢に詳しい康仁徳元韓国統一相は「音がしないから気づかれない。死因もすぐに特定されないから暗殺に便利だ」と語る。
・ただ、理解できるのはそこまで。北朝鮮が過去の暗殺で最も神経を使ってきた「北朝鮮の犯行だという痕跡を消す」という作業がまったくできていない。 韓国政府によれば、正男氏は2月6日にマレーシアに入国し、13日に家族の住むマカオに向かう予定だった。北朝鮮にとってマレーシアは工作活動がやりやすい国だとされる。北朝鮮労働者など関係者が多いうえ、マレーシア公安当局の取り締まりが緩いからだ。
・逆にマカオは中国当局の監視が厳しいうえに、犯罪が露見した場合、北朝鮮にとって影響力が大きい中国を怒らせることになる。だから、「亡命政府騒動」から今回のマレーシア滞在期間を暗殺実行期間と位置づけ、マカオに入ってしまう前に焦って殺したようにも見える。
・しかし、元工作員は「殺すなら、空港よりもましな場所がたくさんある。いくら正男が身辺に気を遣っていても、監視カメラがたくさんあって、警察や軍が常駐している国際空港で殺すのは、犯人が誰かわかってください、と言っているようなものだ」と語る。 北朝鮮は従来、暗殺を重要な政治活動の一環ととらえ、思想教育など犯行に入念な準備をこなしてきた。元工作員は「金正男のような重要なターゲットの殺害を、素人のような他人に任せるなど考えられない」と語る。
・それでも、犯行後、インドネシアとベトナム国籍の女性2人が逮捕された頃は、一部の専門家から「北朝鮮の犯行を隠すため、あえて無関係の人間を使ったのかもしれない」と分析する声も出た。 しかし、17日夜に北朝鮮の旅券を持つ、リ・ジョンチョルという男性が逮捕されるに至って、この推論もむなしく消えた。情報関係筋の1人は「なぜ、13日の犯行から数日間の間、逃亡もせず、自殺もせず、時間を浪費したのだろうか」と語り、頭を抱える。
・過去、事前に中国人や日本人になりすます訓練を受け、犯行が露見して服毒自殺を図った大韓航空機爆破事件(1987年)の金賢姫氏や、1983年10月のアウンサン廟爆破事件の後で逮捕される際に銃撃戦で重傷を負い、2008年5月に死亡するまで服役したカン・ミンチョル上尉のようなすごみを感じさせない。 関係国の情報分析担当者が一様に頭を抱えるなか、無理やりに出している推論の一つに「金正恩労働党委員長の恐怖政治による北朝鮮組織の弱体化説」がある。
▽忠誠競争の行き過ぎが原因?
・韓国政府によれば、金正恩氏は2011年末に政権を継承して以降、100人以上の党高級幹部を処刑してきた。最近では、処刑の実行役だった金元弘国家安全保衛相も粛清したとされる。 北朝鮮関係筋の1人は、最近の平壌の雰囲気について「高級幹部はみな、ピリピリしている。昔も余計なことは聞かない、話さないのが決まり事だったが、最近は特にそうだ」と語る。
・国情院は2月15日の国会で、正恩氏が異母兄の正男氏を嫌い、「金正男は嫌いだ。やってしまえ」と語ったと説明した。 ただ、情報関係筋の1人は「たとえ、正男暗殺指令がスタンディング・オーダーだったとしても、北内部で、どこまで合理的で綿密な議論がされたのか怪しい話だ。みな正恩が恐ろしいから、ろくな検討もなしに、暗殺に走ったのかもしれない」と語る。先に述べた、「金正男氏をかついだ亡命政府樹立のうわさ」についても、北朝鮮が慎重に真偽を確かめなかった可能性が高い。
・北朝鮮には主な暗殺機関だけで、偵察総局、統一戦線部、国家安全保衛省の3部署がある。このうち、統一戦線部は部長が金養建氏から金英哲氏に替わったし、国家安全保衛省は最近、国務委員会直属の「部」から、他の政府機関と同等の「省」に格下げになったうえ、組織トップの金元弘氏が粛清の憂き目にあっている。
・韓国の元当局者は「それぞれが組織の生き残りをかけて金正恩への忠誠競争を繰り広げた可能性もある」と語る。 結局、恐怖支配のなかで、ろくな準備もなく、子供だましのような犯行に及んだのが今回の金正男氏殺害事件だったのかもしれない。 国情院によれば、正恩氏は自らの身の危険を案じ、夜もよく眠れず、酒におぼれて暴れることもたびたびだという。正男氏殺害事件から2日後、平壌で開かれた金総書記の生誕75周年を記念する報告大会に出席した正恩氏は終始、怒気を含んだ恐ろしい表情に終始していた。
・追い詰められた金正恩氏と、それに従わざるを得ない北朝鮮が起こした悲劇が今回の事件とするならば、万全のようにも見える北朝鮮・金正恩体制がいつの日か、突然崩れることも十分ありうるだろう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51007

第三に、日本経済新聞社編集委員の鈴置 高史氏が2月23日付け日経ビジネスオンラインにインタビュー形式で掲載した「弾道弾と暗殺で一気に進む「北爆時計」の針 もう、北朝鮮と話し合っても時間の無駄だ」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・弾道ミサイル発射と暗殺により、北朝鮮への先制攻撃の可能性がグンと高まった。
▽日経読者の4割強が「軍事的解決を」
Q:2月に入り、朝鮮半島情勢が目まぐるしく動きました(「北朝鮮を巡る動き」参照)。 ●北朝鮮を巡る動き(省略)
・鈴置:2月12日の中距離弾道ミサイル「北極星2型」発射と、翌13日の金正男(キム・ジョンナム)暗殺――。後世の人は「この2つが転換点だったな」と振り返ると思います。 2つの事件により、北朝鮮の核武装を阻止するには「話し合い」ではもう無理だ。結局「力」が必要なのだ――との認識が世界に広がったからです。
+日経が2月18日から21日まで、電子版読者に聞いた「第310回 クイックVote 北朝鮮、日本はどう対応すべき?」の回答を見ても明らかです。 設問は「ミサイル発射や核開発を続けている北朝鮮に対して、あなたは日本政府に何をもっとも優先して取り組んでほしいですか」。
+最も多い回答が「ミサイル基地攻撃など軍事オプション」で、43.9%を占めました。2番目が「経済制裁の強化」で28.9%。「6カ国協議の再開など外交努力」(12.5%)、「中国への働きかけ」(9.0%)が続きました。 1位の「軍事オプション」と2位の「経済制裁」は、いずれも回答者が「北朝鮮の核問題は対話ではなく、力で解決するしかない」と考えていることを示します。足すと何と、72.8%にのぼります。
+「話し合い」を意味する「外交努力」と「中国への働きかけ」の合計の21.5%と比べ、圧倒的に多いのです。「話し合い」が大好きな日本人も変わったものだと思います。
▽米国の「脅威NO1」は北朝鮮
Q:米国の空気は?
・鈴置:ワシントンでも「強硬論」が盛り上がっています。2月13日、カナダのトルドー(Justin Trudeau)首相との会談後の会見で、トランプ(Donald Trump)大統領は以下のように語りました。 「就任して1カ月近く諜報ブリーフを受けただろうが、米国が直面する最も重大な安全保障上の問題を何と見るか」との質問に答えたものです。 Many, many problems. When I was campaigning, I said it’s not a good situation. Now that I see it -- including with our intelligence briefings -- we have problems that a lot of people have no idea how bad they are, how serious they are, not only internationally, but when you come right here.  Obviously, North Korea is a big, big problem, and we will deal with that very strongly.
+「最も重大な脅威」の筆頭に「北朝鮮」を挙げたうえ「米国は極めて強く出る」と述べたのです。「状況は極めて深刻なのに、それが認識されていない」とも。 「北朝鮮に強く出る」具体策には言及しませんでしたが、核・ミサイル施設に対する先制攻撃と、これまでにない強力な経済制裁の2本立てであるのは明らかです。
+北朝鮮への先制攻撃――北爆は2016年9月以降、米国の安全保障関係者が堂々と語るようになりました(「『ソウルは火の海になる』のデジャブ」参照)。 2016年9月5日の長距離弾道弾の試験と、9月9日の5回目の核実験により「米国も射程に入れた北朝鮮の核武装は間近である」「このままではそれを防げない」との危機感が、この時点で米国の政界に定着したのです。 「先制攻撃」を巡る動き(2016年)省略)
▽中国を標的に金融制裁案
Q:「強力な経済制裁」とは?
・鈴置:「対北朝鮮制裁に違反した対象と取引する組織や個人にも制裁を適用する」セカンダリー・ボイコットがその中軸です。 北朝鮮と取引を続けることで、金正恩(キム・ジョンウン)政権の核・ミサイル開発資金の獲得を幇助する中国企業が念頭にあります。 すでに2016年9月に米上院の有力議員が、当時のオバマ(Barack Obama)大統領にそれを求める書簡を送っています。東亜日報が「米上院議員19人、『セカンダリー・ボイコット』要求」(9月20日、日本語版)で報じています。
+今回の「北極星2型」の発射を受け、米上院の有力議員が再び動きました。米議会の運営するRFA(ラジオ・フリー・アジア=自由アジア放送)の「米上院議員6人、『対北追加金融制裁』書簡」(2月15日、韓国語版)は、2月15日に彼らがトランプ政権に求めた新たな金融制裁案の中身を以下のように報じました。
+北朝鮮のすべての銀行を例外なく特別指定制裁対象(SDN)リストに載せ、国際金融システムから完全に遮断する。 スウィフト(SWIFT)を含む国際銀行間通信サービスに関し、北朝鮮の銀行との関係を断つよう、欧州連合とベルギー政府に要請する。 財務省が追加財源と人員を投入し北朝鮮のマネーロンダリング組織と、これを支援する中国の関係者を探し出し、資産凍結はもちろん民事・刑事上の責任を問う。 中国銀行を含む中国の13行に関し、北朝鮮の核開発を支援してきた丹東ファイナンシャングループの法令違反との関連をできるだけ早く調査に乗り出す。
+後ろ2つは、中国の大手銀行も国際的な金融取引から締め出すぞ、との脅しです。これが実行に移されたら中国経済はパニックに陥ります。
▽トランプの顔色見た中国
Q:「対北」を超えて「対中制裁」に乗り出す感じですね。
・鈴置:国連がいくら北朝鮮への経済制裁を定めても、中国がさぼったため効果が上がらなかったからです。  2月17日、ボンで行われた米中外相会談でもティラーソン(Rex Tillerson)国務長官が王毅外相に対し、北朝鮮にあらゆる手段を使うよう促しました。 さすがに中国も「まずい」と考えたのでしょう、米国に「誠意」を見せました。翌2月18日、中国政府は突然、2月19日から同年末まで北朝鮮からの石炭輸入を中断する、と発表しました。
+北朝鮮の外貨稼ぎの主力は石炭輸出です。北朝鮮産の石炭輸入には上限が設けられていたのですが、中国が守っていないとの疑いがもたれていました。今後、中国が本当に石炭輸入を中断するかも分かりませんが。
▽北は核の先制攻撃も宣言
Q:北朝鮮に核武装を放棄させるため、米国はまずは経済制裁の強化で、それが効かねば先制攻撃、との方針でしょうか。
・鈴置:そうとは限りません。経済制裁の強化を国連が決めても、中国がちゃんと協力しないかもしれません。仮に中国が応じても、北朝鮮経済を痛めつけるには時間がかかります。 経済制裁の強化に国際社会が動き始めた後でも、北朝鮮がICBM(大陸間弾道弾)を試射すれば、あるいはその素振りを見せれば、米国がすぐさま先制攻撃する可能性があると思います。
+2017年1月1日、金正恩委員長は新年の辞で「ICBM試射の準備が最終段階にある」と表明しています。 そのうえ「米国とその追随勢力の核の威嚇と恐喝が続く限り、年次的というベールをかぶせた戦争演習騒動を中止しない限り、核武力が中核の自衛的国防力と先制攻撃能力を強化する」と宣言しました。 3月から始まる米韓合同軍事演習を中断しない限り、核・ミサイル実験を続けるとも表明したのです。
+2016年10月5日の労働新聞は「米国の核の脅威に対抗、我々は先制攻撃方式に転換した。核はいつでも米国に使える」と書きました。北朝鮮は核による先制攻撃までも宣言済みです。
+北朝鮮の核武装を阻止するために残された時間はほとんどありません。2月12日の「北極星2型」の発射以降、安全保障の世界では「これ以上手をこまねいていてはいけない」との認識が共有されました。
▽日米の戦略的環境が一変
Q:北朝鮮はこれまで弾道ミサイルを何度も撃っています。長距離弾道弾でもない「北極星2型」に、それほど大きな意味があるのですか?
・鈴置:日本や米国にとって戦略的な環境がガラリと変わりました。2月13日、北朝鮮は前日に発射に成功した「北極星2型」は固体燃料式エンジンである、と発表しました。それを否定するに足る材料はありません。 液体燃料式なら発射の際に燃料を注入するのに時間がかかるので、ミサイルが地上にあるうちに攻撃する手があります。 一方、固体式だと北朝鮮が発射を決意した瞬間に撃てるので、米国や日本は奇襲攻撃されやすくなります。
+日米にとってさらなる問題もあります。軍事ジャーナリストの惠谷治氏は、今回の発射で使った自走式発射台に注目しています。 地中に設けるサイロ式の発射台なら場所は容易に特定でき、先制攻撃しやすい。しかし、北朝鮮はあちこちに動かせる自走式発射台の導入で、ミサイルの所在を隠蔽できます。すると奇襲攻撃しやすくなるうえ、先制攻撃されても反撃が可能になります。 となると、日米は先制攻撃に逡巡することになります。反撃のため飛んでくるミサイルに核弾頭が載っているかもしれないからです。
▽MDで阻止できなくなる
Q:朝鮮は自走式発射台を持っていなかったのですか?
・鈴置:持っていました。ただ、いずれも中国製で数は限られると見られていました。惠谷治氏によると、自走式発射台の製作には結構、難しい技術が要るため、中国から買っていたのです。 ところが今回の発射で使ったのは北朝鮮製だった模様です。国産化により自走式の発射台を大幅に増やせると、惠谷治氏は懸念しています。
+同時により多くのミサイルを発射できるようになるので、日本や米国がいくらミサイル防衛網(MD)を充実させても、完全に阻止できなくなる――撃ち漏らすミサイルが出てくる可能性が高まるのです。 要は日米にとって、北朝鮮の核・ミサイルシステムを早急に除去しないと安全を確保できない段階に至ったのです。
▽「離米従中」という逃げ道
Q:日米だけではなく、韓国にとっても北朝鮮の核の脅威はぐんと増したのですね。
・鈴置:必ずしもそうとは言えません。韓国の次期政権が米国を離れ、中国側に走れば――中国の核の傘に入ってしまえば、北朝鮮の核の脅威は相当に減ります。 大統領レースで現在、支持率トップを走る「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は、在韓米軍基地へのTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル防衛システム)の配備を見直すと宣言しています。
+配備は米国が強く進める半面、中国が強力に反対しています。配備を拒否すれば米韓同盟は風前の灯となります。韓国の「離米従中」は現実のものになっています。  文在寅前代表は「大統領に就任したら当然、米国よりも先に北朝鮮に行く」とも語っています。北朝鮮との関係を一気に改善すると表明したのです。(「『キューバ革命』に突き進む韓国」参照)
+韓国には、どれだけ頼りになるか分からない米国よりも、恐ろしい中国や北朝鮮と仲良くした方が国の安全を確保できる、との発想もあるのです。 ちなみに、南北朝鮮が関係を改善し一緒になって北の核で日本を脅す、というあらすじの小説『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』が1990年代の韓国でベストセラーになっています。
▽何をやらかすか分からない国
Q:確かに、北朝鮮は何をしでかすか分からない国ですからね。
・鈴置:そこなのです。今回の金正男暗殺事件で、世界の人々は「金正恩委員長は異様な人間である」との思いを強くしました。これも北朝鮮への先制攻撃論を加速しました。 普通、仮想敵が核ミサイルを持っても、こちら側が持っていれば直ちに戦争が始まるわけではありません。「相手だって核戦争で自らの国民が犠牲になるのは躊躇するだろう」との判断から、話し合いにより戦争を避けようと双方が考えるからです。
+しかし「自分の邪魔になる異母兄は、外国に刺客を送っても殺す」指導者には、合理的な対話は期待できません。 北朝鮮政府は今回の暗殺への関与を認めていませんが、世界はそれを前提に動き始めました。犯行現場となったマレーシアの警察が、主犯グループは北朝鮮籍の人々で構成されたと判断しているからです。
+2月22日、マレーシアの警察庁長官は、金正男殺害事件に北朝鮮大使館員が関係していたと発表しました。犯行後に帰国した4人の北朝鮮籍の容疑者の引き渡しも北朝鮮政府に要求しました。 冒頭に紹介した日経の世論調査で、43.9%もの人が北朝鮮への軍事攻撃を日本政府に望んだのも、この暗殺事件が影響していると思います。北朝鮮は対話では解決できない相手だと、ついに日本人も考えたのです。
▽政権交代シナリオに重み
Q:米国人も、ですか?
・鈴置:米国人も同じです。東亜日報のイ・スンホン・ワシントン特派員は「米メディア『本当に狂っている』『金正恩は何をするか分からない』」(2月16日、韓国語版)で、以下のように書きました。  「これは本当に狂った(insane)話です」。「金正恩は今後、何をしでかすか分かりません」。CNN、FOXニュースは2月14日(現地時間)、金正男殺害事件を報じた際、こう評した。 米国でも金正恩の暴走がどこまで続くか、予測不能との空気が強まっている。米本土を狙ったICBMの試験が迫っているとの憂慮も深まった。
+ ワシントンの外交界と主なシンクタンクにも、この事件によりトランプ政権がいっそう強硬策に出るとの見方が多い。  CNAS(新アメリカ安全保障センター)のパトリック・クローニン(Patrick Cronin)上級顧問は「戦争状態でもないのに真昼間に暗殺を敢行する北朝鮮が、国際社会の正常な一員となることはほぼなくなった」としたうえで「先制攻撃、政権交代シナリオがこれまで以上に重みを持って議論されることになろう」と語った。
▽難民を恐れる中国
Q:話を聞いていると、米国による北朝鮮への攻撃が今にも始まる気がしてきました。
・鈴置:専門家は軍事的にはいつでも可能だし、早ければ早い方がいいと判断しています。ただ、政治的な問題が残っています。 北爆によって北朝鮮の核を除去し金正恩政権を倒した後、朝鮮半島の勢力圏をどう確定するか――までは米中間で合意ができていないように思われます。
Q:そもそも「北爆」を中国は嫌がりませんか?
・鈴置:それにより、大量の難民が中国になだれ込むことは大いに警戒していると思います。一方、米国にしても、北朝鮮の「液状化」に伴う朝鮮半島の混乱に巻き込まれたくはないでしょう。 そこで米中が「北爆後の液状化」を避けるため、何らかの協力体制を模索する可能性が高いと思います。北朝鮮を国連、実質的には米中が共同管理するアイデアもあるのです。
+21世紀に入ったころから米国は中国に対し「事後処理を話し合おう」と何度も呼び掛けたようです。しかし、中国側が応じなかったとされます。 ただ、状況が切羽詰まって米国が「北爆」のハラを固めれば、中国も協議に応じるしかありません。もう、応じているかもしれません。
▽激変する朝鮮半島の構図
Q:そこで米中の取引が始まるのですね。
・鈴置:米国との交渉の過程で、中国は自らの脅威となっている在韓米軍の撤収、あるいは米韓同盟の廃棄を求めると思います。「事後処理での協力」との交換条件に持ち出せば、米国も飲むかもしれません。 米国にとっても在韓米軍は財政的な重荷になっています。朝鮮半島北部から「何をするか分からない政権」が消えれば米軍、ことに地上軍を韓国に置いておく必要性は減ります。
+もちろん、米中の談合が成立する前に時間切れとなり「北爆」が始まる可能性もあります。いずれにせよ、今後予想される「半島の激変」に日本は身構えるべきです。)(次回に続く)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/021200092/?P=1 

第一の記事では、『身の危険を察知した張成沢は財産を小分けにして金正男に“生前贈与”し』、というのは、北朝鮮の法律を知らないので、何とも言えないが、金正恩の意向如何で何とでもなりそうなので、“生前贈与”は考え難いという印象を持った。ただ、金正男もかなり豪勢な暮らしをしていたので、相当の財産を持っていたことは確かだろう。ただ、カネよりも後継者になり得る金正男の命を奪うことが最大の狙いだったのではなかろうか。
第二の記事では、『北の「暗殺セオリー」にないズサンな手口』について諸説を説明している。『主な暗殺機関だけで、偵察総局、統一戦線部、国家安全保衛省の3部署がある』、のであれば、『韓国の元当局者は「それぞれが組織の生き残りをかけて金正恩への忠誠競争を繰り広げた可能性もある」と語る』、との見方が説得力がありそうだ。
第三の記事で、『北朝鮮への先制攻撃――北爆は2016年9月以降、米国の安全保障関係者が堂々と語るようになりました』、というのはかなり危機的状況だ。韓国の次期大統領候補が、『「離米従中」という逃げ道』を採ろうとしているのも頭が痛い点だ。 『南北朝鮮が関係を改善し一緒になって北の核で日本を脅す、というあらすじの小説『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』が1990年代の韓国でベストセラーになっています』、というのは初めて知ったが、韓国も隣国ながら困った国だ。 ただ、『米中が「北爆後の液状化」を避けるため、何らかの協力体制を模索する可能性が高いと思います。北朝鮮を国連、実質的には米中が共同管理するアイデアもあるのです』、という点には違和感も感じる。中国は、朝鮮戦争で多大な血を流しただけに、北朝鮮には特別の思い入れを持っており、中国の言いなりになるカイライ政権の樹立は考えても、米国との共同管理までは飲める筈がないと考えるからだ。ただ、カイライ政権樹立には金正男は絶好の駒だったが、それを失ったのは、大いなる失地だ。
タグ:米中が「北爆後の液状化」を避けるため、何らかの協力体制を模索する可能性が高いと思います。北朝鮮を国連、実質的には米中が共同管理するアイデアもあるのです 難民を恐れる中国 南北朝鮮が関係を改善し一緒になって北の核で日本を脅す、というあらすじの小説『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』が1990年代の韓国でベストセラーになっています 在韓米軍基地へのTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル防衛システム)の配備を見直すと宣言 大統領レースで現在、支持率トップを走る「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表 「離米従中」という逃げ道 自走式発射台の導入 MDで阻止できなくなる 固体式だと北朝鮮が発射を決意した瞬間に撃てるので、米国や日本は奇襲攻撃されやすくなります 日米の戦略的環境が一変 北は核の先制攻撃も宣言 トランプの顔色見た中国 セカンダリー・ボイコット 中国を標的に金融制裁案 北朝鮮への先制攻撃――北爆は2016年9月以降、米国の安全保障関係者が堂々と語るようになりました 弾道ミサイル発射と暗殺により、北朝鮮への先制攻撃の可能性がグンと高まった 弾道弾と暗殺で一気に進む「北爆時計」の針 もう、北朝鮮と話し合っても時間の無駄だ 日経ビジネスオンライン 鈴置 高史 それぞれが組織の生き残りをかけて金正恩への忠誠競争を繰り広げた可能性もある 北朝鮮には主な暗殺機関だけで、偵察総局、統一戦線部、国家安全保衛省の3部署がある 忠誠競争の行き過ぎが原因? 「殺すなら、もっとマシな場所がある」 北朝鮮が「亡命の動きがある」と判断して、暗殺の遂行を急いだ可能性 5年前から暗殺計画があった 2つの事件は、いずれも2月16日の数日前に起きた。16日は金総書記の誕生日 20年前の1997年2月15日、ソウル市郊外で起きた。同日夜半、自宅アパートに戻った男が正体不明の人間に銃撃されて死んだ。被害者は、金総書記の甥で、正男氏のいとこにあたる李韓永氏だった 「20年前の事件」との関連 金正男殺害、北の「暗殺セオリー」にないズサンな手口が物語ること 追い詰められた金正恩体制!? 現代ビジネス 牧野 愛博 経済制裁で多くの北朝鮮の海外口座が凍結されており、口座を突き止めたとしても引き出せるか疑わしい 金正男に“生前贈与”し、処刑前にほぼ全額を譲り渡した マレーシアやパナマの金融機関に蓄えた信託資金は2億1900万ドル(約220億円)にもおよぶ 資金援助とは別に巨額資産も譲り受けた 正男は、張成沢から多額の資金援助を受けていた 兄殺しの裏には巨額な“秘密資金”の存在があったようだ 金正男暗殺は資産「200億円」が理由だった…返還命令に従わず 日刊ゲンダイ (金正男暗殺は資産「200億円」が理由だった、北の「暗殺セオリー」にないズサンな手口が物語ること、弾道弾と暗殺で一気に進む「北爆時計」の針) 金正男暗殺事件 北朝鮮問題
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