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三菱重工はどうしたのか?(その5)(5度目延期MRJの大型客船と「誤算」の共通項、MRJは果たして“売れる飛行機”なのか、日立と南ア不採算案件の巨額負担を押し付け合い) [企業経営]

三菱重工はどうしたのか?については、昨年10月12日に取上げたが、今日は、(その5)(5度目延期MRJの大型客船と「誤算」の共通項、MRJは果たして“売れる飛行機”なのか、日立と南ア不採算案件の巨額負担を押し付け合い) である。

先ずは、1月24日付け日経ビジネスオンライン「5度目の延期MRJ、大型客船と「誤算」の共通項 初号機納入2020年半ばに。宮永社長「できると思っていた」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・三菱重工業は23日、国産ジェット旅客機「MRJ」のANAホールディングスへの初号機納入予定が従来予定の2018年半ばから2020年半ばに遅れると発表した。商業運航に必要な「型式証明」の円滑な取得に向け、電子系統の設計を見直すことなどが要因で、納入延期は5度目となる。
・三菱重工の宮永俊一社長は同日の記者会見で「航空機は(防衛省向け装備品や米ボーイングへの部品供給など)やってきたからできると思っていた」と見通しの甘さについて振り返った。「お家芸」との自信を背景に受注しながら、実際は建造に難航して大損失を計上中の大型客船との共通項が浮かび上がる。
・MRJの開発の遅れは2016年秋ごろに表面化し、これまで三菱重工は「精査中」とのスタンスを示していた。大きな要因は、商業運航に必要な安全性などを航空当局が調べる「型式証明」を円滑に取得できる見通しが立たなかったことだ。取得にあたっては書面審査や飛行試験で膨大なチェック項目を満たす必要がある。必ずしも明文化されていないノウハウの部分も多い。
▽「日の丸航空機」の重圧、外国人活用が後手に
・民間の完成機では開発経験の乏しい三菱重工だが、政府も含めて「日の丸航空機」という金看板を掲げた手前、不慣れな日本人技術者を中心に試行錯誤で開発を進めてきた。防衛省向け戦闘機や米ボーイングの民間機への部品供給などで三菱重工の評価は高く、航空機に対する一定の自信があったからだ。だが、次第にそのペースでは到底納期に間に合わない現実を思い知る。
・転機となったのが2016年11月ごろ。事業会社の三菱航空機主体の開発体制から、三菱重工の宮永社長の直轄プロジェクトとするとともに、開発経験の豊富な米国人技術者らの積極活用にカジを切った。技術系の基幹人員に占める外国人の比率を、従来の1割前後から3割程度に増やした。開発スケジュールを実質的にこれらの外国人技術者が主導する体制が固まった。
▽大型客船と同じ軌跡をたどりつつある
・新たな開発チームが現状を点検し、お墨付きを得て出てきたのが今回の2020年半ばという納期だ。具体的には、最新の安全性適合基準を満たすため、火災などのトラブル発生に備え、電気系統や装備品が一カ所に集中しすぎないように見直すことが柱となる。これに伴い、多くの配線位置の変更が余儀なくされる。
・MRJの体制転換に先立つ2016年10月、三菱重工は大型客船についての総括報告書を公表した。米国系のクルーズ会社から受注したものの、顧客に何度もやり直しを命じられるなど建造に手間取り、2000億円超の特別損失を計上中のいわくつきの案件だ。ホテルのような豪華客船の経験が豊富な欧州の技術者の大量動員などで事態はようやく収拾に向かいつつある。報告書の中では以下のような文言が出てくる。
・「『難易度も付加価値も高いが、過去に(中略)実績もあり、対応可能』と判断」 「問題の認識後、直ちにプロジェクト管理のスペシャリスト投入等を行い全社的な対応策を講じたが、(中略)想像を超える深刻さから、結果的に巨額の損失が生じた」 「他部門の助けを求めない気質や上意下達的な風土等、プロジェクト運営や新製品・新技術への挑戦に適さない心理や意識が残っていた」
・誇り高き造船部門が最初に抱いた「やれる」という見込みが、想定外のトラブルの中で「やらねば」に転じ、強行突破を図るも対応が後手に回り、工程がどんどん遅延した。こうした教訓の多くはそのままMRJにも当てはまる。
▽納入遅れ、気になる顧客の反応
・MRJの納期が遅れるほど、ライバルのブラジル・エンブラエルの攻勢が強まるほか、機体の導入計画が狂う顧客からのキャンセルを受ける可能性も高まる。三菱重工における投資回収や収益貢献の遅れは言うまでもない。宮永社長は「現時点でキャンセルは発生していない」としつつ、納期遅延の影響を受ける顧客やサプライヤー企業に対し陳謝した。
・大型客船に話を戻せば、総括を経て三菱重工は新規受注の凍結、事実上の撤退を決めた。MRJは2020年という新たな納期に本当に間に合うのか、果たして発注済みの顧客は2020年以降で許すのか、新規受注を獲得できるのか、4000億~5000億円ともされる開発費を投じビジネスとして成り立つのか。様々な疑問が浮かんでくる。明確な答えは1~2年内に出ることだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/012300547/?P=1

次に、2月6日付け日経ビジネスオンライン「MRJは果たして“売れる飛行機”なのか もはや「高品質」だけでは通用しない航空産業」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・5度目の納入延期が1月23日に正式発表された、三菱重工業が製造する国産初のジェット旅客機「MRJ」。  戦後初の国産旅客機である日本航空機製造(日航製)のYS-11型機以来、約半世紀ぶりの旅客機開発となり、難しい舵取りが続いている。2008年の開発開始から幾度となく納入延期が示されてきたため、今回の納入延期の発表についても、「またか」と感じた人が多かったのではないだろうか。
・ただ航空機開発に遅延はつきものだ。 日本企業が機体構造部位の35%を製造するボーイング787型機は、北京オリンピックが開催された2008年の納入開始を当初予定していたが、開発は遅れに遅れ、3年後の2011年8月にローンチカスタマーである全日本空輸(ANA)へ引き渡された。
・MRJも、ローンチカスタマーはANA。2008年3月に発注し、2013年の納入開始を予定していた。国際線と国内線双方に投入する787とは異なり、MRJは地方都市間を結ぶ「リージョナルジェット機」と呼ばれる機材。このため、ANAにとって787に比べれば、影響はまだ限定的とされる。しかし、それでも航空会社にとって、航空機は人材に次ぐ資産であり、導入の遅れはさまざまな分野に影響を及ぼす。
・航空を今後の成長産業に位置づける政府にとって、航空機の開発製造をどのような体制で進めていくのがベストなのかを、MRJの開発遅延を契機に考え直す時期が訪れた、とも言えるだろう。 MRJをはじめとするリージョナルジェット機の市場は、既にブラジルのエンブラエルが世界シェアの半数以上を握っている。三菱重工の子会社でMRJを開発する三菱航空機は、このエンブラエルとシェアを二分していきたい考えだ。
・前回の納期見直し発表から、わずか1年で、再び発表された納入延期。この間にも、最大のライバルであるエンブラエルは、新型機の開発を着々と進めている。果たしてMRJは、無事に市場に投入できるのだろうか。そして、日本の航空機業界は、今の状態のままで問題ないのだろうか。
▽発展型の余地限られるMRJ
・まず、MRJの生い立ちを振り返ってみよう。 MRJは2008年3月27日、ANAがローンチカスタマーとして25機(確定15機、オプション10機)を三菱重工に発注し、事業化が決定した。そして同年4月1日には、設計や型式証明の取得、販売などを手がける三菱航空機が営業を開始し、三菱重工が製造を担う。
・メーカー標準座席数が88席の「MRJ90」と、76席の「MRJ70」の2機種で構成。エンジンはいずれも低燃費や低騒音を特長とする、米プラット・アンド・ホイットニー製のギヤード・ターボファン・エンジン(GTFエンジン)「PurePower PW1200G」を採用する。
・これまでの受注実績は、ANAを傘下に持つANAホールディングスや日本航空(JAL)など、7社から計427機。内訳は確定受注が約半数の233機で、残りはキャンセル可能なオプション契約が170機、購入権契約が24機となっている。 このほかに、2016年7月に英国で開かれたファンボロー航空ショーでは、スウェーデンのリース会社ロックトンと最大20機(確定10機、オプション10機)の契約締結に向け、基本合意(LOI)に至った。ロックトンが正式契約を結ぶと、受注は8社447機(確定243機、オプション180機、購入権24機)になる。
・MRJの量産初号機の納期は当初、2013年だった。しかし、主翼の材料を複合材から金属に変更したことなどで、1年の遅れが決定。1回目の納入延期で2014年4~6月期としたが、その後は2015年度の半ば以降、2017年4~6月期とずれ込み、直近では初飛行直後の2015年12月24日に、2018年中頃とする納期が示されていた。 そして今回が5度目の延期。2019年末を目標に据えた上で、2年遅れの2020年半ばとした。
・MRJの機体サイズは、当初から70席や90席クラスだったかと言うと、実はそうではない。国産旅客機開発の話が業界内で持ち上がった2000年代前半の時点では、30席と50席を軸に検討が進められてきた。 これが2008年、MRJとしてローンチされる頃、リージョナルジェット機の市場拡大に合わせ、現在の大きさになったのだ。  この時に大きく設計変更したのは、大まかに言うと胴体の長さだ。30席クラス案を70席に、50席案を90席に胴体を伸ばした。現在は開発案として、MRJ90を長くした100席クラスの「MRJ100X」が検討されている。
・「ローンチする前に、胴体の設計を見直すべきだったのではないか」。かつてYS-11に携わった三菱重工のOBはこう指摘する。「MRJは、確かに空力性能は優れているが、100席クラスまでしか大型化できない。胴体を太くすれば性能は多少犠牲になっても、ストレッチできた」と言うのだ。
・MRJ最大のライバルであるエンブラエルの機体は、日本ではJALグループで地方路線を担うジェイ・エアや、鈴与グループのフジドリームエアラインズ(FDA)が、現行機を運航している。 そのエンブラエルの次世代機「E2」シリーズは3機種で構成。最初に引き渡しが始まる「E190-E2」は1クラス106席で、2018年に量産初号機を納入する見通し。続いて2019年に納入開始となるシリーズで最も大きい「E195-E2」は1クラス132席、2020年に引き渡しを始めるシリーズ最小の「E175-E2」は1クラス88席となる。いずれも、MRJと同じ新型エンジンを採用している。
・MRJと比較した場合、MRJ90に最も近いサイズの機体がE175-E2で、MRJ70に該当するのは現行シリーズでは「E170」(1クラス70-78席)という機種だが、E2シリーズでは消滅する。つまりエンブラエルとしては、次世代のリージョナル機に求められる機体サイズは、現在よりも大型化するとみているのだ。
・一方、胴体を伸ばすことが難しいMRJは、130席クラスのE195-E2と並ぶ機種をラインナップできない。用意するとなれば、現在のMRJとは別の機体を新たに開発しなければならない。 航空機は操縦ライセンスだけではなく、整備や部品管理など、機種ごとに様々な規定がある。このため、航空会社が後継機を選定する際、現在運航している機材と同じメーカーで、同じ機種の発展型が有利になりがちだ。
・リージョナルジェット機の場合、世界で最も売れているエンブラエルは、燃費などを改善したE2シリーズの開発が成功すれば、既存顧客への売り込みでMRJよりも有利になるのは言うまでもない。そして、航空機の燃費で大差がつくのは長距離路線であり、リージョナル機のような短距離であれば、燃費以外の要素も重要になる。  航空市場が将来成長し、航空会社がより大きな機体サイズを必要とした場合、MRJ90と同じサイズのE175-E2を運航していれば、一つ上のE190-E2、さらに大きいE195-E2と、移行が容易な選択肢を、エンブラエルは既に用意できている。
・これまでMRJは、低燃費など運航性能の良さだけではなく、客室内の快適性を訴求してきた。だがMRJが客室の広さを活かして大型化したオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)は、エンブラエルも追従し、既存のEシリーズと比べ、E2は約3割大型化した。つまり低燃費や快適性だけでは、E2シリーズとの差別化が難しくなってきているのだ。
・低燃費・低騒音の新エンジンで並ばれ、客室の装備でもライバルに猛迫されるMRJは、今後どうやって差別化してくのか。 三菱重工の宮永俊一社長は、「空力設計上の差別化はかなり進んでいるので、完成機メーカーが持っていない技術を追求したい。その一つが複合材やアルミ、チタンなどの材料技術だ。合金技術や複合材技術、その組み合わせ方などを駆使して差別化したい」と語る。同社が1月23日に5度目の延期を発表した際、こうした差別化技術の開発や、次世代機のコンセプトなどを立案する「将来差別化技術開発チーム」など、新体制も発表された。
・同時に、宮永社長は「今回骨身にしみたのは、開発前の情報収集やリスク分析について、もう少し勉強すべきだった」と、プロジェクト管理に反省点があったことを認めた。 これまでの開発状況を振り返ると、MRJの航空機という時間を要するものを開発する以上、プロジェクトの進め方だけではなく、機体の発展性についても、本来ならば、より議論を深めるべきだった。そしてこの問題は、日本が作った最大の航空機である、川崎重工業の航空自衛隊向け輸送機「C-2」についても、同様のことが言える。
▽舗装された滑走路でしか飛ばせない日本の軍用機
・016年6月30日、C-2の量産初号機が川崎重工の岐阜工場南工場で防衛省に引き渡された。現行の輸送機C-1の初号機が同社から引き渡された1973年以来、43年ぶりの新型国産輸送機の納入だった。 C-2はC-1の後継機で、機体全体の約7割が国産。全長43.9メートル、全幅44.4メートル、全高14.2メートルで、最大積載量はC-1の約3.8倍となる約30トン、最大離陸重量は同3.1倍の141トンとなった。トラックなどの車両だけではなく、中型ヘリコプターも運べる。
・川崎重工は試験機XC-2の契約を2002年3月に防衛庁(当時)と締結。開発費抑制を目的に、海上自衛隊の固定翼哨戒機P-1も同時開発した。現在は海外への輸出が検討されており、ニュージーランドのように具体的な国名も報じられつつある。 輸出が検討されるのは、自衛隊向けだけでは製造機数が限られ、調達コストの低減が難しいことが理由の一つだ。防衛省はC-2を2016年度は初号機を含めて3機、2017年度に2機、2018年度に3機の計8機を受領予定だ。2018年度までの中期防衛力整備計画では、10機体制を計画している。最終的には30機程度製造される見通しだ。
・一方、海外で製造されている輸送機は、2桁の製造にとどまることはない。例えば米国が1990年代から運用している旧マクドネル・ダグラス(現ボーイング)のC-17は、製造を打ち切った2015年までに279機、欧州エアバスの軍用機部門が2007年から製造するA400Mは、170機以上の製造を計画している。いずれも製造国以外へ輸出されている。
・当然ながら、これらの機体は軍用機だ。このため、未舗装の滑走路など不整地でも離着陸ができるように設計されている。しかしC-2は、自衛隊機という制約の中で開発が進んだため、あくまでも舗装された滑走路での運用に限定されている。防衛省も予算に限りがある以上、不整地運用を開発時の要求事項に盛り込んでいない。
・しかし、海外へ売り込むとなれば、相手は軍隊だ。国により置かれた立場は様々だが、運用時に、より制約の少ない機体を選ぶのは当然のことだ。その場合、不整地への離着陸が考慮されていないC-2は、ハンデを背負う。 航空幕僚監部は、「需要が出てくれば能力向上などを考えていくことになるが、現在は全くの白紙」と、不整地への離着陸対応について説明する。日本が自衛隊機の輸出を本気で考えるのであれば、今後は海外の販売先に合わせた「売れる機体」を考えていく必要があるだろう。
・そして、当連載でも度々指摘してきたが、機体メーカーを統合していく必要がある。航空大国の米国ですら、民間機メーカーは1990年代にボーイング1社に集約され、欧州はエアバスが各国を束ねている。一方、日本で機体を手掛けるのは三菱重工に川崎重工、富士重工業、新明和工業、日本飛行機、エンジンではIHIと、今なお、多くの企業がひしめいている。
・航空機は民需、軍需ともに、開発や製造だけではなく、納入後のサポート体制が重要になる。民間機は引き渡しから20年程度だが、軍用機はさらに長い年月、最前線で運用されることになる。半世紀ぶりの国産旅客機となったMRJの開発遅延は、ひと言で言えば、経験不足が響いた。航空機産業は経験がものを言う世界なのだ。
・空力を極めた小型機と言えるMRJに、国産最大の航空機であるC-2と、各社が異なる強みや経験値を持ち合わせている。日本が本気で完成機を輸出するビジネスに力を入れるのであれば、欧米でさえ1社で勝負に挑む状況下で、日本の現状が最適解とは、決して言えないだろう。
・確かに、YS-11を手掛けた半民半官の日航製は、責任の所在が不明確な部分があるなど、赤字を生み出した問題点があった。だからといって、日本の航空機産業を集約する集合体を否定するのは、世界の主要プレーヤーが各国・地域で参集している以上、日本も同じ体制で勝負しなければ勝ち目はない。 そして、品質の高さだけではなく、他国のニーズを見極めた「売れる商品」を用意しなければならない。MRJやC-2は、長い年月で見た場合、世界のライバルを押しのけて売れる商品なのだろうか。
・軍需の場合、日本の防衛費に多様な制約があるのは言うまでもない。だからこそ、より効率的なカネの使い方が求められるはずだ。日本の航空機産業が世界市場で勝ち抜くには、日本のものづくりを誇るだけではなく、何が必要なのかを精査する時期が訪れている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/246820/020200059/?P=1

第三に、2月27日付け日経ビジネスオンライン「三菱重工は南アで盟友にババを引かされたのか 日立と南ア不採算案件の巨額負担を押し付け合い」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・三菱重工業と日立製作所の関係が険悪になってきた。両社の共同出資会社が手掛ける南アフリカの不採算案件の費用負担を巡り、言い分がかみ合わない。今月、三菱重工が日立に請求している負担額を従来の2倍となる約7600億円に増額したことが表面化。情報の開示方法も含め、相互不信は深まるばかりだ。
・問題の案件は日立が2007年ごろに受注した南アでの大規模な火力発電所向けボイラー建設だ。当時は日立の新興国開拓の成功事例として話題になった。現在は両社の火力発電プラント事業を統合し、2014年に発足した三菱日立パワーシステムズ(MHPS、65%を出資する三菱重工の連結子会社)が案件の遂行を引き継いでいる。
▽情報開示で「不意打ち」の応酬
・両社の衝突が表面化したのは2016年5月。三菱重工が決算説明会で4000億円弱を日立に請求中だと公表した。南ア案件はかねて現地の厳しい環境による工期の遅れや労使紛争などによるコスト増が懸念されていた。事業統合の交渉時から三菱重工も課題を認識しており、受注元である日立に一定の費用負担を求めることで合意していた。
・折り合いがつかないのはその金額だ。膨大な額だけに、2年以上交渉しても話がまとまらず、やむを得ず公表に踏み切ったと三菱重工は説明。対する日立は「協議中の内容をどうして一方的に開示するのか」と不快感をにじませた。 その後も水面下で交渉が続いていたとみられるが、今月、今度は意趣返しのように日立が奇襲した格好になった。2月8日、三菱重工からの請求が約7600億円になったことと、併せて要求を拒否する意向を改めて示したのだ。
・三菱重工が2月2日に開いた決算説明会ではその類の話は出ておらず、日立が発表した翌日である2月9日になって「重要なお知らせ」と題して後追い的に開示した。株式市場への情報発信を含めて双方の足並みが全くそろっていないことが伺える。
▽受注したのが悪いのか、進め方が悪いのか
・請求額の増額理由について、三菱重工は従来よりも急に南ア案件の状況が悪化したわけではないと説明。あくまでも日立から引き継いだ時点の収支などの見積もりをより精緻にした結果だとしている。 記者が理解している範囲で、双方の主張を意訳するとこうだ。
・三菱重工 「最初に日立が採算に合わない無茶な条件で南アから受注したのが悪い。そのツケを我々に回してくるな」
・日立 「最初に受注した責任は認めるが、現在はMHPSの仕事だ。お前たちが下手なやり方でコストが膨らんでいるものまで我々に払わせようとしているだろう」
▽事業統合で得をしたのは誰か
・三菱重工の宮永俊一社長は就任前、担当役員として日立との事業統合を主導した立場だ。当時は世界展開をにらんだ日本企業の大型提携として高い評価を集めた。当事者であるだけに、事業統合前に詰めたはずの南ア案件の費用負担問題で安易に妥協することはできないだろう。結果論とはいえ、三菱重工にとって事業統合をしないほうが良かったという議論を引き起こしかねない。意地の悪い見方かもしれないが、日立にすれば、事業統合によって、目先の爆弾ともいえる南ア案件を抱えるMHPSは持ち分法適用会社となった。関与が減ったぶん、業績に影響を与える危険性は薄まったともいえる。
・ともに米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスを仮想敵に掲げ、「選択と集中」を標榜する三菱重工と日立。集中の結果、三菱重工はババを引いてしまったのか。結論を出すのは時期尚早だが、グローバル企業にとっては1件のM&Aが数千億円の損失につながりかねない。経営は結果責任がすべて。日本企業同士であっても全く油断できない時代だ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/022300416/?P=1

第一の記事にある 『「日の丸航空機」の重圧、外国人活用が後手に』、というのは、いくら重圧がったにせよ、日本人だけで期限内に作れるのかという問題に、もっと正面から向き合うべきだったのだろう。一般的に組織内では、慎重論よりも、「何とかやります」という積極論の方が、評価されがちで、今回もその典型例だったのではないか。 『大型客船についての総括報告書』、での指摘はMRJにも通じるものが多そうだ。『大型客船と同じ軌跡をたどりつつある』とのことらしいが、MRJについては、大型客船のような「撤退」とはならずに、何とかやり続けることを期待したい。
しかしながら、第二の記事を読むと、楽観は許されないようだ。MRJが、『発展型の余地限られる』、というのでは、ライバルのエンブラエルに勝つのは容易ではなさそうだ。三菱重工ではなく、川崎重工の話ではあるが、『舗装された滑走路でしか飛ばせない日本の軍用機』、というのは初めて知った。これでは、政府がいくら輸出をと発破をかけても、苦戦必至だ。軍用機分野にまで「ガラパゴス化」が進んでいたとは、情けない話だ。
第三の記事にある 『南アでの大規模な火力発電所向けボイラー建設』、問題は三菱重工と日立の間でこじれにこじれているようだ。しかも、『三菱重工の宮永俊一社長は就任前、担当役員として日立との事業統合を主導した立場』、というのであれば、三菱重工としては強気の立場を貫かざるを得ないのかも知れない。事業統合により、日立はリスクを軽減、三菱重工が代わりにリスクを負担することになったようだが、これも三菱重工の判断の甘さが根底にあったのではないだろうか。
タグ:南アでの大規模な火力発電所向けボイラー建設 軍用機分野 日立にすれば、事業統合によって、目先の爆弾ともいえる南ア案件を抱えるMHPSは持ち分法適用会社となった。関与が減ったぶん、業績に影響を与える危険性は薄まったともいえる 受注したのが悪いのか、進め方が悪いのか 現在は両社の火力発電プラント事業を統合し、2014年に発足した三菱日立パワーシステムズ(MHPS、65%を出資する三菱重工の連結子会社)が案件の遂行を引き継いでいる。 三菱重工業と日立製作所の関係が険悪に 三菱重工は南アで盟友にババを引かされたのか 日立と南ア不採算案件の巨額負担を押し付け合い 舗装された滑走路でしか飛ばせない日本の軍用機 川崎重工業の航空自衛隊向け輸送機「C-2」 機体の発展性についても、本来ならば、より議論を深めるべきだった 航空会社がより大きな機体サイズを必要とした場合、MRJ90と同じサイズのE175-E2を運航していれば、一つ上のE190-E2、さらに大きいE195-E2と、移行が容易な選択肢を、エンブラエルは既に用意できている ローンチする前に、胴体の設計を見直すべきだったのではないか 大きく設計変更したのは、大まかに言うと胴体の長さだ。30席クラス案を70席に、50席案を90席に胴体を伸ばした 0席と50席を軸に検討 88席の「MRJ90」と、76席の「MRJ70」の2機種で構成 発展型の余地限られるMRJ 既にブラジルのエンブラエルが世界シェアの半数以上を握っている MRJは果たして“売れる飛行機”なのか もはや「高品質」だけでは通用しない航空産業 MRJの納期が遅れるほど、ライバルのブラジル・エンブラエルの攻勢が強まるほか、機体の導入計画が狂う顧客からのキャンセルを受ける可能性も高まる 誇り高き造船部門が最初に抱いた「やれる」という見込みが、想定外のトラブルの中で「やらねば」に転じ、強行突破を図るも対応が後手に回り、工程がどんどん遅延 他部門の助けを求めない気質や上意下達的な風土等、プロジェクト運営や新製品・新技術への挑戦に適さない心理や意識が残っていた 問題の認識後、直ちにプロジェクト管理のスペシャリスト投入等を行い全社的な対応策を講じたが、(中略)想像を超える深刻さから、結果的に巨額の損失が生じた 大型客船についての総括報告書 『難易度も付加価値も高いが、過去に(中略)実績もあり、対応可能』と判断 大型客船と同じ軌跡をたどりつつある 技術系の基幹人員に占める外国人の比率を、従来の1割前後から3割程度に増やした 「日の丸航空機」の重圧、外国人活用が後手に 建造に難航して大損失を計上中の大型客船との共通項が浮かび上がる 納入延期は5度目 ANAホールディングスへの初号機納入予定 MRJ 国産ジェット旅客機 5度目の延期MRJ、大型客船と「誤算」の共通項 初号機納入2020年半ばに。宮永社長「できると思っていた」 日経ビジネスオンライン (その5)(5度目延期MRJの大型客船と「誤算」の共通項、MRJは果たして“売れる飛行機”なのか、日立と南ア不採算案件の巨額負担を押し付け合い) 三菱重工はどうしたのか? ガラパゴス化 情報開示で「不意打ち」の応酬 当時は日立の新興国開拓の成功事例として話題に
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