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ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略(その5)(中国人が清掃工場や鎌倉高校、忍野八海に押し寄せる理由、「原宿駅解体」が示す日本的観光政策の大問題、中国の団体旅行客はどこへ消えた?、中国人が同胞観光客をカモに!日本で跋扈“闇ガイド”の実態) [経済政策]

ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略については、昨年10月11日に取上げた。今日は、(その5)(中国人が清掃工場や鎌倉高校、忍野八海に押し寄せる理由、「原宿駅解体」が示す日本的観光政策の大問題、中国の団体旅行客はどこへ消えた?、中国人が同胞観光客をカモに!日本で跋扈“闇ガイド”の実態) である。

先ずは、昨年12月15日付けダイヤモンド・オンライン「中国人が清掃工場や鎌倉高校、忍野八海に押し寄せる理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨年までの爆買いブームは沈静化したが、中国人観光客数は、実はまだ伸びている。買い物熱は下火になったが、代わりに日本人が不思議に思うような場所が彼らの観光スポットになっているのだ。
▽ゴミ処理場が人気スポットになった理由
・池袋駅から徒歩わずか5分の場所にある豊島清掃工場。空にそびえる白い煙突は、高さ210メートルもある。ここでは毎週月曜日と設備の修理・整備日を除く日に、団体見学を受け入れており、中国人が大勢訪れる観光スポットになっている。
・わざわざ日本に来てゴミ処理場見学とは不思議だが、発端はある中国人のSNSへの投稿だった。「こんなにキレイで、煙も出ないゴミ処理場はすごい」――写真付きの投稿が中国人たちの間で広まり、人気スポットになったというわけだ。
・ほかにも、漫画「スラムダンク」の主人公たちが通う高校のモデルとなった鎌倉高校(神奈川県)や、富士北麓に位置し、富士山の伏流水を水源とした湧水地となっている忍野八海(山梨県)など、日本人の感覚では「こんなところに!?」というような場所が、爆買いスポットに代わる人気観光地になっている。
・忍野村観光協会によると、中国人観光客が増えはじめたのは、富士山が世界遺産に登録された2013年頃から。観光客が増えるのはいいのだが、関係者が困っているのは、池にコインを投じる中国人客が多いことだ。どうやら「池にコインを投げると幸せになる」と言われているようだが、むろん「忍野村発の情報ではありません」(忍野村観光協会)。中国人の間で、いつの頃からか言われ始めた“伝説”なのだ。
・忍野村は「コインを投げないで」と書かれた看板を設置したほか、ビラを案内所に置いたり、池の中のコインを清掃したりと、対応に追われている。「観光客が増えることを喜ぶ人もいる一方、やはりこうした迷惑行為を嫌う住人もいますから…」(同)。“人気観光地化”に対する思いは複雑なようだ。
▽来日数は増え続けるが旅行スタイルは様変わり
・なぜこんな現象が起きているのか。ヒントは、中国人の旅行スタイルの変化にある。 日本政府観光局(JNTO)の統計によると、中国人観光客数は増加率こそ鈍ったものの、2016年に入っても増え続けている。爆買いブームがいきなり下火になって、越境EC(ネット通販)にお客を奪われたことから、東京や大阪の百貨店は大打撃を受けているが、中国人が日本に来なくなったわけではないのだ。
・買い物の代わりに中国人たちが楽しんでいるのが、こうした観光地の訪問。中国人の消費動向に詳しい、中国市場戦略研究所の徐向東代表は「以前は金持ちしかできないと言われていた個人旅行が、一般化してきたからではないか」と分析する。
・確かに、JNTOの「訪日外国人消費動向調査」にも、その傾向は現れている。今年7~9月期の中国人観光客の旅行手配方法は「団体ツアー」が38.5%、「個別手配」が45.3%だった。しかし昨年の同時期の調査では「団体ツアー」45.3%に対して「個別手配」39.4%。つまり、この1年で個人旅行の比率が団体ツアーを上回ったのだ。個人旅行増加の勢いは、今後も続くだろう。
・「金持ちしかできない」個人旅行が一般化した背景には、まずビザ申請が代行業者の登場によって簡単になったことが挙げられる。それまでは中国国内の日本領事館に自分で出向くか、田舎に住んでいて出向くのが難しい場合はツアーに参加して旅行業者に代行してもらうしかなかったのだ。
・また、旅行経験シェアサイトが急成長し、日本の情報を簡単に入手できるようになったことも大きい。 たとえばシェアサイト「マーフォンウォー」には、さまざまな写真入りで世界各国の個人旅行体験記がアップされている。旅行ルートを探すだけでなく、サイトから日本在住の個人ガイドにアクセスし、案内を依頼することもできる。
▽レビュー参考にガイド選び 口コミ文化の消費スタイル
・団体ツアーは爆買い中心にルート設計されているものも多かったが、越境ECの進化でわざわざ日本に来なくても買い物は可能となった。また、個人で好きな場所に行って楽しみたいとのニーズに応えるだけの情報インフラも十分に整ってきたのだ。
・ただし、日本では、外国人向けのガイドは「通訳案内士」の資格が必要。一方、こうした個人旅行客向けガイドは、無資格者も多い。つまり、この仕組み自体が問題をはらんでいるのだ。忍野八海でのコイン投げなどは、きちんと訓練されていないガイドによるマナーの悪さが引き起こしたとも言える。
・しかし、「日本では無資格ガイドと非難されますが、中国人にはむしろ、こうしたCtoCビジネスの方がなじみがあるのです」(徐代表)。良い悪いは別にして、日本とは消費行動が違うのだ。 企業発の枠組みの中でサービスを享受することに慣れている日本人の目からすると、中国人の「口コミ文化」や無資格ガイドなどの「個人事業主の活躍」はなかなか理解が難しいが、そもそも爆買いや越境ECは、日本在住の中国人留学生や主婦たちが口コミを広げたり、「代購業者」として活躍したことから大ブームになった。中国では「共享(シェア)」は当たり前の経済活動なのだ。
・宿泊も今や民泊が当たり前。民泊や個人ガイドを選ぶのは難しいと思うかもしれないが、口コミ情報が充実しているから問題ない。13億人もの人口を抱える中国では、たとえば微信(ウィーチャット、中国版LINE)のユーザーだって7億人もいる。 今後も、中国人観光客の動向は、こうしたSNSやサイトでの口コミにリードされていくだろう。迎える側の日本人も、背景を理解したうえで対応策を考えないと、爆買い同様、「中国人のブームに、訳も分からず振り回される」羽目になる。
http://diamond.jp/articles/-/111390

次に、フランス・ジャポン・エコー編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏が昨年12月28日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「原宿駅解体」が示す日本的観光政策の大問題 観光客が見たいのは最新鋭のビルじゃない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・日本を訪れる外国人観光客の数は増えており、ここ3年ほどで日本経済において予期していなかった「ライフライン」となっている。今や、ホテルやレストラン、航空会社、小売り、博物館などの収益を支えるのは外国人観光客だ。日本政府は当初、2020年までに訪日外国人の数を2000万人に増やしたいとしていたが、その目標は今年すでに達成し、次なる目標を4000万人に引き上げた。この年末も、多くの都市で外国人観光客を見掛けることになるだろう。
・外国人観光客が日本にとって重要なのは、経済的な理由だけではない。彼らは帰国した際、無料で日本の「大使」となってくれるのである。私は、今は20年以上日本に住んでいるが、今までに日本を訪れた外国人観光客で失望した人に出会ったことがない。旅行会社ジャパン・エクスペリエンスを率いるフランス人のティエリ―・マンソン氏は「日本は訪れる人に対して、もっとも大きなポジティブサプライズを提供してくれる国だ。旅行者は日本を訪れたとき、何が起こるか予想できない。そして、めったに嫌な経験もしない」と話す。
▽外国人観光客が口をそろえて言うこと
・日本ファンの数が劇的に増えているということは、国民の多くが黄金時代は過去のもとだと考え、政府の唯一の戦略が「優雅な衰退」である国にとって非常にありがたいことである。多くの外国人観光客は、皆口をそろえて日本人に対してこう言う。「あなたの国は、あなたが思っている以上に素晴しい!」。観光客はその国の鏡だ。たとえ彼らの好みが、訪れた場所に暮らす現地の人々と異なるとしても、彼らが休暇の最中に訪れたところや、したことは、日本のいったい「何」が、世界の人にとって魅力なのかを示してくれる。
・では、外国人観光客は、日本で何を探し求めているのだろう。実は、私はこの国を初めて訪れる友人に「どこに行くべきか」「何を見るべきか」とたずねられるたびに少し戸惑ってしまう。日本にはそこまでたくさんのモニュメントがあるわけではない。だいたいの建物は50年以内に建てられたものだ。寺ですら、新しいものがたくさんある。日本は、フランスやイタリアのような、数え切れないほどの古くて美しい遺跡がある国ではないのだ。
・外国人観光客にとって日本の魅力は特定の場所というよりは、雰囲気そのものだろう。商店街を歩いたり、隠れ家的なレストランで食事をしたり、2分間タクシーに乗ったりするだけで、外国人をほかの惑星にいるような気分にさせてくれる。
・私の父は、数年前私を訪れた際、東京で散歩しているときにこう言い放った。「なんて醜い街なんだ」。が、4人しか入れない京都の民宿レストランで4時間過ごしたのち、父はシェフとその奥さんの献身さに心底感激し、こう言った。「もし、人生がやり直せるなら、こんなシェフになるだろう」。
・私の兄弟が京都を訪れたとき、彼がもっとも感動したのは金閣寺でも桂離宮でもなかった。彼が心から感激したのは、新幹線に忘れたはがきを誰かが切手を貼って、送ってくれていたことだ。はたしてフランスの知人に彼からのはがきが届いたのである。こういったたぐいの経験は、外国人観光客にとって一流のホテルに宿泊するのと同じくらい価値があることだ。私の父や兄弟、そして何百万人もの観光客にとって日本の魅力は、地図上にあるどこか特定の場所ではなく、こうした「人々の思いやり」なのである。
・私は先日、能楽師居宅観世によるイベントに参加した。彼はそこで能は "大和心" の表現である、と話した。大和心は、おそらく外国人観光客が、日本を訪れた際に経験するものである。この国で真に価値があるものは、はかなく実体のないもの、つまり習慣や伝統、料理のレシピや工芸品だ。日本は、日本人それ自体を表現している。真の日本体験を追求するようになると、外国人観光客は経済的な価値があまりないような、あるいは、日本人にとっては恥ずかしいかもしれないような場所に繰り出していくようになる。
▽新宿ゴールデン街に外国人が熱狂するワケ
・近年有名な新宿ゴールデン街がいい例だ。外国人観光客から人気を集めるまでこの場所は、何年もの間、日本のメディアでは取り壊し計画のニュースばかりが取り上げられていた。この狭い歓楽街には、売春や火事のイメージがしみ付いており、普通の日本人男性が合コンするような場所ではない。だが、映画の宣伝で訪れる多くのフランス人女優や俳優たちが口をそろえて行きたいと言うのは、ほかでもない、ゴールデン街なのである。彼らは皆、私に「どの店にいくべきだろうか」と尋ねてくる。
・外国人観光客のおかげで、このみすぼらしいエリアは、今や地球上で最もトレンディな場所のひとつとなった。昨年4月に火災が起こったときは、国際的なニュースにまでなった。なぜかというと、ゴールデン街はそれだけ世界に例を見ないエリアだからだ。それぞれの小さなバーには歴史や雰囲気、お客さんとママが培ってきた関係がある。それは、非常に独特で深いものだ。
・世界には、ミッドタウンや六本木ヒルズのような商業施設はある。が、ゴールデン街での一杯は、たとえば東京ミッドタウンのスターバックスで、抹茶ティーラテを注文するときに感じるような、機械的で、どこにでもあるような触れ合いよりも、ずっと上質な体験をさせてくれる。外国人観光客がいなければ、ゴールデン街はすでに消え、住宅街になっていたかもしれないが、今やゴールデン街を取り壊すことはおそらく不可能だろう。むしろ、ゴールデン街はこれまで以上に宣伝され、保護され、支援されるべきである。
・ゴールデン街で起きていることは、日本のほかの場所にもあてはまる。つまり、普通の日本人が価値を見いだしていない場所こそが、実に「日本らしい」場所なのである。 日本のランドマークとも言える、JR原宿駅もそのひとつだ。この木製の駅は、1924年に建てられて以来、約100年間持ちこたえ、今や東京でもっともヒップなエリアへと導く玄関口となっている。これこそ、日本の素晴しい才能が、日本の過去と現在、そして未来をつないだ生きた証拠である。原宿駅は、歴史的、文化的、経済的に非常に大きな価値を持っている。原宿駅は、日本のいたるところで見られる古いものと新しいものの融合という、日本独特の文化の象徴なのである。
・その原宿駅が、「もったいない」の象徴にもなろうとしている。日本人はまったく無関心だが、JR東日本がこの駅を建て替えることに決めたからだ。分別がなく、聞く耳を持たず、不作法なJR東日本の重役たちは、現在の建物を退屈な「近代的」建物に変えようとしているのだ。究極の皮肉は、経団連の観光委員長が、JR東日本社長兼CEOの冨田哲郎氏であるということだ。事実上、冨田氏は東京の最高に価値あるもののひとつを破壊する責任を持っているのである。
▽「築地魚市場」の移転も理解できない
・もうひとつの例は築地魚市場だ。たとえばフランスだったらエッフェル塔のように、各国にイメージがあるとしたら、日本の場合は築地魚市場と言っても過言ではない。ここは、日本の美食のシンボルとして極めて重要だ。魚市場は築地に引き続き置かれ、著名な建築家によってリノベーションされるべきだ。そうすることで、この場所を経済的な外交策として活用するべきである。
・ところが、日本は取り壊すことを急いでいるようにさえ見える。なぜなら、魚市場は不動産価値が非常に高い場所にあるためか、政治家や建設業者がどこか遠くの、ひょっとしたらさらに有害な場所に別の市場を作ることを決めたからだ。築地魚市場の観光的価値には誰も目を向けていない。小池百合子・東京都知事が市場移転に関する決定を非難した際も、それは健康上の理由であり、観光的な理由ではなかった。
・今、「2つの日本」の間で争いが起こっている。1つ目の日本は、紙や木、つつましさ、直接的でパーソナルな人間関係に満ちている日本だ。それは、ゴールデン街であり、アメヤ横丁であり、商店街である。2つ目の日本は、伝統や習慣を真剣に考慮せず、街全体を再設計する残忍で、コンクリートにまみれた日本だ。この日本を率いているのは鹿島建設や大林組など大手ゼネコンや、不動産開発業者だ。
・こうした企業は、外国人から見ると、醜く質の低いビルを建て、それを20年後に取り壊し、新たなビルを建設する。こうした企業が言うところの「再開発」は、北朝鮮の都市設計家も顔負けだろう。恐ろしいことに、彼らは大崎や汐留、品川といった地域の開発も行っている。
・1つ目の日本は外国人観光客が「味方」についているが、彼らはこの争いにおける自分たちの重要な役割には気がついていない。しかも、彼らは、もし日本の至る所がドバイやシンガポール、あるいは、大崎のような元気のないショッピングモールみたいなに場所になったら、ここを訪れなくなるだろう。また、虎ノ門ヒルズや六本木ヒルズのように、外国人誰もが憧れる「日本らしさ」がとうの昔になくなった場所が街の中心部に移り変わっていけば、日本を見捨てかねない。
・不動産と建設業界の規模を合わせると、日本のGDPの2割近くになる。建設業界は縮小しているが、とてもよく組織立っており、自由民主党政権の意向を聞く耳を持ち合わせているように見える。一方、観光や旅行業界規模は拡大しているが、政治的にはまとまっていないさまざまなプレイヤー(ホテルやレストランなど)で構成されている。そのせいか、観光業界と建設業界の利益がぶつかったときは、つねに観光業界が負けてきた。
▽小池都知事は東京の未来をどう考えているのか
・それどころか、観光業界が日本文化を育てようとする動きを、不動産や建設業界が壊している。これは止めなければならない。今、日本政府がしなければならないのは、外国人観光客と意見を交換し、歴史的、文化的、経済的観点から保護する価値のある場所を認識することだ。そして、こうした場所を破壊しようとする業者をそこから立ち退かせるべきである。
・フランスが日本の4倍の観光客を集めている理由は、国が観光的に価値があるとみなした大事なエリアを保護しているからだ。しかし、残念なことに、今の日本の政治家からは、日本のどの部分が保護されるべきか、また、取り壊しができるのか、といった疑問は投げかけられない。
・日本で目下、最もパワフルな女性である小池都知事は素晴らしいスタートを切った。だが、東京がとういう街であるべきか、ということに対する彼女の「哲学」を私はまだ聞いていない。それどころか、小池都知事はこのトピックについて、驚くほど沈黙を保っている。彼女は、まもなく建て替えられる原宿駅を見てどう思うのだろうか。たとえば、京都にあるような建設制限を東京に取り入れることはできないのだろうか。これは東京、あるいは、日本の未来における重要な課題である。
・もし、彼女が真の政治家であるならば、彼女は立ち上がり、東京で保護する価値のあるものを守らなくてはいけない。有権者から直接投票で選ばれた代表として、彼女の最初の決定は、原宿駅やそのほか「危険」にさらされている場所の保護に向けて立ち上がることである。フランスの熱狂的なファンである彼女は、東京を巨大なコンクリートジャングルはなく、「持続可能な街」にするためにどうすべきか、パリやそのほかの地域が何をしているかを見て学ぶことができるはずだ。
・もし小池都知事が、持続可能性という観点で東京の街の在り方を見直してくれるのならば、投票権を持っていない外国人観光客はその感謝の気持ちを「おカネ」という形で表し、彼女に投票した納税者たちを喜ばせるに違いない。
http://toyokeizai.net/articles/-/151486

第三に、2月7日付けJBPress「宿泊業界大混乱、中国の団体旅行客はどこへ消えた? キャパ拡大の設備投資は完全に裏目」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2年前の春節(1月末~2月初頭の時期の中国の旧正月)を思い出してほしい。中国から訪日客が大挙して押し寄せ、各地で「ホテルの予約が取れない」という悲鳴が飛び交ったのはご記憶のことと思う。 内外の旅行客はもとより、出張者や受験生までもが「宿の確保」に奔走させられた。都心のビジネスホテルの中には、素泊まりで1泊3万円台の値段を設定するところも現れた。ホテル難民の足元を見るホテル側の姿勢に辟易させられたものである。 だが、あれから2年の月日を経て、今年はちょっと様子が違った。
▽春節でもホテル投げ売り?
・例えば、1月半ばに舞い込んできた新聞の折り込みチラシ。目を引いたのはその価格だ。静岡県の温泉宿が1泊2食付きで7980円、山梨県の宿は8800円と「お得な宿」が満載である。食事も「カニの食べ放題」や「活アワビ踊り焼き」など大盤振る舞いだ。かきいれどきの春節直前なのに、こんなに安くていいのだろうか。
・同じ時期にテレビでも「お得な宿」のCMが流れた。あるホテルチェーンが、1泊2食付きで1万円以下という安さを大々的にアピールしていた。 西日本でホテル業を営む経営者は、そのテレビCMについて「中国の旅行社が春節の団体客を当て込んで大量に発注したものの、キャンセルが相次いだのではないか」と推測する。ホテル側はその穴を埋めるために、急きょこの時期に日本人向けにCMを流しているのではないかという見方だ。
▽富士山麓のホテルにも異変
・東京~富士山~大阪を結ぶ「ゴールデンルート」といえば、訪日客が最も集中する行程だ。ここでも異変が起きていた。 中国人にとって、富士山を見ることは日本旅行の目玉の1つである。2年前ならば、この時期に富士山周辺の宿を取ることはできなかった。だが今年、春節期間に泊まれる御殿場・富士エリアの宿泊施設をネットで検索すると、57件もヒットした。素泊まりならば5000円以下で泊まれるところもある。
・現地のホテルに問い合わせてみたところ、次のような回答が返ってきた。「今年の春節は、中国の個人客は何組かいらっしゃいますが、団体のお客様はいないのです」過去には30~40名ほどの中国からの団体客を扱ったこともあると言うが、「なぜか今年の春節は来ない」のだという
▽静岡空港は中国路線を縮小
・富士山に最も近い静岡空港(愛称は「富士山静岡空港」)は、東京と関西を結ぶゴールデンルートの入り口だ。2009年に開港し、中国人の利用客に支えられて大きく発展してきた。 2014年7月末に3路線13便だった中国路線は、2015年7月末には13路線47便にまで拡大した。静岡空港における国際線の搭乗者数は40万人目前に迫った。ところが2016年は一転して減少し、約28万人にとどまった。減少の理由はほかでもない、中国からの団体客が減ったためである。
・静岡県文化・観光部が行った調査によれば、2015年に静岡空港を利用した中国人客は97%が団体ツアーの客だったという。だが、そうした団体ツアーの利用客がめっきり減ってしまった。 その結果、2016年は中国からの旅客機の運休が相次いだ。結局、静岡空港では、13あった中国路線が上海経由武漢、寧波、杭州、南京の4路線だけに縮小してしまっている。
▽まさかこんな変化が起きるとは
・中国からの訪日旅行客は、今やガイドの旗についていく団体客ではなく、スマートフォン片手に自由気ままに歩き回る個人旅行客だ。 在上海日本国総領事館によれば、2012年は、訪日客に占める団体旅行客の割合が80%弱だった。ところが、2015年になると団体旅行客は50%弱まで減り、代わりに個人旅行客が50%強にまで増えた。
・こうした団体旅行から個人旅行への変化のスピードに、日本の宿泊施設はついていけない。「多くの宿泊施設は目算が狂い、泣きの涙だ」(静岡県のホテル経営者)という。 爆買いのあった2015年は、ホテルや飲食など観光産業に従事する施設はどこも「深刻な受け入れキャパの不足」を経験した。そこで、キャパ拡大に着手する。
・富士山静岡空港もその1つで、「急激に増えた中国人客により、手荷物検査や税関などで対応に苦慮した」(同観光部)という。そこで昨年11月より、ターミナルビルの増改築に乗り出している。ホテルの中には、中国から団体客を受け入れるために駐車場を拡大したり、店舗面積を広げたりといった“追加投資”を試みたところも少なくない。 しかし、その目論見は早くも頓挫している。中国人の団体客が姿を消した今、「投資を回収できるのかという深刻な問題に直面している」(前出のホテル経営者)。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49099(2頁以降は有料)

第四に、2月27日付けダイヤモンド・オンライン「中国人が同胞観光客をカモに!日本で跋扈“闇ガイド”の実態」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今週、東京発の富士山日帰りバスツアーに参加した。20人の乗客は全員“中国語スピーカー”で、中国、台湾、香港、東南アジアなどからの観光客だ。定刻に走り出した観光バスで、ブレザーを着用した日本人の通訳案内士・保田誠司さん(49歳)がおもむろにマイクを手に取った。
・バスが東京タワーを通過するとその由来を、高速道路に差し掛かれば高度経済成長期の日本を解説し、八王子に差し掛かった辺りからは富士山の説明を始めた。バスが山梨県に入ると武田信玄の武勇伝と地元の食文化「ほうとう」を語る。
・保田さんは時折、ハンカチで額の汗を拭く。一所懸命なのだ。ネイティブな中国語ではないものの、「伝えよう」という気持ちが伝わるのか、乗客は皆、静かに保田さんの話に聞き入っている。 一方で、保田さんはいくつかの注意喚起も忘れない。
・「みなさん、バスツアーは団体行動です。どうか集合時間を守ってください」 「日本ではゴミは分別です。日本の街をよく観察してください。車内でもゴミは分別です。勝手に捨ててはいけません」 「温泉に入る前に、まず先にシャワーを浴びてください。温泉はプールではありませんので泳ぐのは禁止です。頭まで浸かるのもマナー違反です」
・ユーモアも交じる注意喚起に乗客も悪い気はしない。しかも、事前にこうした注意を促せば、中国人客も戸惑うことはないだろう。日本人ガイドが適切に誘導することで、マナー問題に“一定のブレーキ”がかかる一面を垣間見た。
▽観光案内はそっちのけ 物売りに徹する“闇ガイド”
・日本政府は「観光先進国」を成長戦略の柱に据えているが、こうした国づくりの一助となるのが保田さんのような「通訳案内士」という国家試験にパスした有資格者たちだ。 しかしその一方で、“闇の中国語観光ガイド”が多数暗躍している事実がある。
・“闇ガイド”は、日本の旅行業界では悪名高き存在だ。正規のガイドなら車中の時間を利用して日本の伝統や習慣を伝えようとするが、闇ガイドが車中で行うのは専ら販売行為。持参した段ボールの中から次から次と商品を取り出しては、観光客に売りつけるという。乗客の安心安全は二の次、ひどい場合は、観光地で乗客を積み残して出発するケースもある。
・中国で“ぼったくりバー”に連れ込まれる日本人観光客もいるようだが、ここ日本で中国人観光客は“ぼったくり免税店”に連れて行かれる。誘導するのは中国人の闇ガイドだ。闇ガイドの素行に詳しい日本人通訳案内士のSさんは次のように話す。 「“ぼったくり免税店”は、不当な値段をつけて中国人客に販売します。訪日客は後から『法外な値段を払わされた』と気づいて、結局『日本とはこういうところか』と不満を抱いてしまうのです」
・中国人の闇ガイドは、中国人旅行者をなぜ“ぼったくり免税店”に連れて行くのだろうか。「そもそも中国人ガイドは薄給だから」ともいわれるが、中には以下のような極端なケースもある。 「中国の旅行社が『100人の訪日旅行者をタダで引き受けろ』と、日本のランドオペレーター(訪問地の手配代行者)に振るんです。このときランドオペレーターはこの仕事を“闇ガイド”に『一人当たり1万円、合計100万円で買い取れ』と丸投げする。“闇ガイド”は旅行費用と仕入れ代金(100万円)を取り返し、さらに自分の利益を叩き出すために、“ぼったくり免税店”に連れて行くのです」(日本の旅行業に詳しい経営幹部)
・一方、“ぼったくり免税店”ではどんな商売が行われているのか。内部に詳しい別の人物は内部の様子についてこう話す。 「“ぼったくり免税店”では、『2000円の価値しかないものを1万円で売る』というようなことが平気で行われています。この場合、商品1個の購入に対して2000円のオーバーコミッションが“闇ガイド”に入るしくみです」 しかも“ぼったくり免税店”で買い物をさせるために、「わざと他の店で買い物する時間を与えないツアーもある」(Sさん)という。
・「初めて訪日する中国人客を、同胞の中国人が騙す」という新手の商法は、中国人の間で瞬時に広がり、有象無象がここに参入した。こうして日本のインバウンド市場で“闇ガイド”に“ぼったくり免税店”“悪徳飲食店”――が跋扈し始めたのである。
・2015年は「爆買い」現象のピークが見られた年だが、このとき3.4兆円の旅行消費が日本にもたらされた。しかし、「小売業界で潤ったのはごく一部だ」と言われている。それが百貨店であり、家電量販店であり、免税店だった。 免税店の中には当然“ぼったくり免税店”も含まれている。こうした悪徳免税店とタッグを組んだ闇ガイドの中には、コミッションだけで月1500万円も手にした者もいる。
▽有資格者の「熱意」をよそに闇ガイドはボロ儲け
・東京の街中でも“闇ガイド”をよく目にすることがある。当然、彼らは正規の旅行会社が準備した「旗」を持たない。その代わりに、季節外れの鯉のぼりやマスコット人形を旗代わりにして歩く。その姿はブレザーの着用もなく、あるべきはずの「通訳案内士資格者証」も胸に掲げられていない。
・2016年時点で、日本には通訳案内士として登録する有資格者は2万人超いると言われている。そのうち9割超を占めるのが英語の通訳案内士であり、中国語の通訳案内士の数は2016年で2380人に過ぎない。 一方、2016年には中国から日本に637万人の訪日客が訪れた。そのうち個人旅行者が65%を占めるが、団体旅行者も依然35%を占める。同年には222万人が団体旅行で訪れた計算だ。
・仮に、一団体を40人で計算しても5万組が団体旅行で訪日したことになる。2380人の有資格者だけではどう考えても足りない。つまり、不足する通訳案内士を“闇ガイドの暗躍”で埋めているという構図だ。
・さて、日本の通訳案内士という業界で保田さんのようなベテランの男性ガイドは少数派だ。そもそも仕事の受注が不定期というその性格から、これを本業にすること自体難しい。通訳案内士に憧れたが、「夢破れ転職」という話もよく耳にする。
・保田さんはこう話す。 「もともと貿易業と掛け持ちで通訳案内士をしていたのですが、次第に発注が増えてガイドが本業になってしまいました。今年で12年目になります。一般的に通訳案内士の仕事は不安定で、予定していたツアーも直前でキャンセルになることもよくあります。それでも月の仕事が15日入ればなんとか食べていけます。中国語のコミュニケーションは楽しいですよ。やっぱり、私はこの仕事が好きなんでしょうね」
・“闇ガイド”が桁外れのボロ儲けに浴する一方で、正規の有資格者の生活はひたすら熱意で食いつなぐのが実情だ。国は「インバウンドで日本経済は潤う」と期待を煽るが、何かがおかしくないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/119303

第一の記事にあるように、『来日数は増え続けるが旅行スタイルは様変わり』、いわゆる「モノ消費からコト消費」へと急激に変化したようだ。今日の日経新聞では、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長が後任も決めないまま突如辞任したようだ。中国人の旅行スタイルの激変も背景にありそうだ。『迎える側の日本人も、背景を理解したうえで対応策を考えないと、爆買い同様、「中国人のブームに、訳も分からず振り回される」羽目になる』、というのはその通りだ。
第二の記事は、在日20年以上の知日派フランス人が書いたものだけに、指摘は鋭い。 『外国人観光客にとって日本の魅力は特定の場所というよりは、雰囲気そのものだろう』、というのはなるほどと納得させられた。 『原宿駅が、「もったいない」の象徴にもなろうとしている・・・JR東日本がこの駅を建て替えることに決めたからだ。・・・不作法なJR東日本の重役たちは、現在の建物を退屈な「近代的」建物に変えようとしているのだ。究極の皮肉は、経団連の観光委員長が、JR東日本社長兼CEOの冨田哲郎氏であるということだ。事実上、冨田氏は東京の最高に価値あるもののひとつを破壊する責任を持っているのである』、というのは最大限の皮肉だ。
第三の記事にある団体客から個人客中心になったという変化だけでは、ホテルの投売りや静岡空港の路線縮小は必ずしも説明し切れないように思う。行先の変化もありそうだ。ホテルについては、民泊の影響もあるかも知れない。
第四の記事にある“闇ガイド”実態は、確かにひどいものだ。中国人観光客の心象を悪くさせることが懸念される。ただ、彼らが、SNSなどを通じて、情報交換をしているとすれば、悪質な中国の旅行業者や日本のランドオペレーターなどはやがて淘汰されるのではなかろうか。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 買い物熱は下火になったが、代わりに日本人が不思議に思うような場所が彼らの観光スポットになっている 爆買いブームは沈静化 中国人が清掃工場や鎌倉高校、忍野八海に押し寄せる理由 (その5)(中国人が清掃工場や鎌倉高校、忍野八海に押し寄せる理由、「原宿駅解体」が示す日本的観光政策の大問題、中国の団体旅行客はどこへ消えた?、中国人が同胞観光客をカモに!日本で跋扈“闇ガイド”の実態) 有資格者の「熱意」をよそに闇ガイドはボロ儲け 初めて訪日する中国人客を、同胞の中国人が騙す 商品1個の購入に対して2000円のオーバーコミッションが“闇ガイド”に入るしくみ “闇ガイド”に『一人当たり1万円、合計100万円で買い取れ』と丸投げ 日本のランドオペレーター(訪問地の手配代行者) 中国の旅行社 中国人観光客は“ぼったくり免税店”に連れて行かれる 闇ガイドが車中で行うのは専ら販売行為 観光案内はそっちのけ 物売りに徹する“闇ガイド” 中国人が同胞観光客をカモに!日本で跋扈“闇ガイド”の実態 団体旅行から個人旅行への変化のスピードに、日本の宿泊施設はついていけない 静岡空港は中国路線を縮小 富士山麓のホテルにも異変 春節でもホテル投げ売り? 宿泊業界大混乱、中国の団体旅行客はどこへ消えた? キャパ拡大の設備投資は完全に裏目 JBPRESS 小池都知事は東京の未来をどう考えているのか 「築地魚市場」の移転も理解できない 分別がなく、聞く耳を持たず、不作法なJR東日本の重役たちは、現在の建物を退屈な「近代的」建物に変えようとしているのだ。究極の皮肉は、経団連の観光委員長が、JR東日本社長兼CEOの冨田哲郎氏であるということだ。事実上、冨田氏は東京の最高に価値あるもののひとつを破壊する責任を持っているのである R東日本がこの駅を建て替えることに決めたからだ 原宿駅は、歴史的、文化的、経済的に非常に大きな価値を持っている 実に「日本らしい」場所 JR原宿駅 新宿ゴールデン街に外国人が熱狂するワケ この国で真に価値があるものは、はかなく実体のないもの、つまり習慣や伝統、料理のレシピや工芸品だ 外国人観光客にとって日本の魅力は特定の場所というよりは、雰囲気そのものだろう 彼らは帰国した際、無料で日本の「大使」となってくれる 「原宿駅解体」が示す日本的観光政策の大問題 観光客が見たいのは最新鋭のビルじゃない 東洋経済オンライン レジス・アルノー 民泊や個人ガイドを選ぶのは難しいと思うかもしれないが、口コミ情報が充実しているから問題ない 宿泊も今や民泊が当たり前 通訳案内士 個人旅行の比率が団体ツアーを上回ったのだ 観光地の訪問 越境EC(ネット通販)にお客を奪われたことから、東京や大阪の百貨店は大打撃 来日数は増え続けるが旅行スタイルは様変わり ビジット・ジャパン (インバウンド)戦略
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