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物流問題(ヤマト運輸が「利益なき繁忙」に陥らないための妙案、ヤマト値上げが問う「民営・日本郵便」の真価、ヤマトは“サビ残”前提の会社、ヤマトが全社調査に乗り出した背景) [企業経営]

今日は、物流問題(ヤマト運輸が「利益なき繁忙」に陥らないための妙案、ヤマト値上げが問う「民営・日本郵便」の真価、ヤマトは“サビ残”前提の会社、ヤマトが全社調査に乗り出した背景) を取上げよう。

先ずは、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が3月8日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ヤマト運輸が「利益なき繁忙」に陥らないための妙案」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽ヤマトは便利で感じはいいが 過剰サービスでは?
・ヤマト運輸の業績が悪化している。主にネット通販の荷物の配達が増えてコストが増加していることが原因だと言われている。ヤマト運輸は宅配便シェアのトップ企業だが、2位の佐川急便から大口顧客であるアマゾンのビジネスを奪ったことが負担になったようだ。
・推察するに、アマゾンと契約した条件がヤマトにとって厳しく、「利益なき繁忙」の状況に陥ったのだろう。加えて、ヤマト運輸は、利益が出ないだけでなく、人手が足りずに過重労働となり、受注する荷物の総量に制限を設けることを労働組合が要求しており、経営陣は協力的に検討する(せざるを得ない)方向だ。結果から見て、自社が対応できるキャパシティを把握し損ねていた面があった。
・かといって、折からの人手不足で人数の補強は簡単ではないのだろうし、ヤマトの場合同社のセールスドライバーの仕事のクオリティに追い着く人材を短期間に養成することも難しかろう。 ヤマト運輸は、どうやら、強い荷主という需要側の交渉力と、人手不足という調達における供給側の制約に、同時に直面してしまったようだ。おそらくした。
・ヤマト運輸では、過去、残業代の未払い金が数百億円単位に上ることが判明した。経営陣は、これを調査して遡って支払うとしている。これは「当然」なのでもあるが、後述のようにヤマト運輸の大きな強みの一つは、社員の配達と接客における練度の高さ(配達の能率の良さと、顧客から見た感じの良さ)にあるので、何はともあれ現在の社員を大切にすることは、戦略的に正しかろう。
・実は、筆者は昨夜、ヤマト運輸から再配達でネット通販の荷物(アマゾンとは限りませんよ!)を受け取った。便利でありがたいと思った半面、「この配達でいくらになるのだろうか?」、「この便利さは過剰サービスではないか?」といささか心配になった。
・ちなみに、筆者は、人名の物覚えのいい方ではないが、配達してくれたNさんの顔と名前を覚えている。彼が近隣のエリアを担当しており、時々お目に掛かるからでもあろうが、彼の配達サービスの感じがいいことも理由の一つだ。ヤマト運輸が苦境を脱し、同時に、Nさんもより幸せになるような解決方法はないものか?
▽ポジティブな競争条件をヤマトは十分に持っている
・筆者は残念ながら、経営コンサルタントではないので、他人が思いつかないような飛躍のあるアイデアを自信満々に語るようなことはできない。以下、ごく常識的なことを考えてみる。 まず、ヤマト運輸が置かれた大まかな状況を確認しよう。
・「宅配」の競争状況をごく大まかにシェアで見ると、トップのヤマト運輸が45%、2位の佐川急便が30%、第3位は15%くらいで日本郵便で、残り15%をその他の宅配業者が分け合う。 ただし、宅配自体は、小規模にも始められるし、参入障壁は高くない。地域を限るなら少数精鋭で高い効率を持つ新規参入者が現れてもおかしくないし、ネットを使って小規模業者を束ねるようなやり方もある。また、日本郵便のような、広いネットワークがあって、おそらくは効率の向上が可能なライバルもいる。
・大手の荷主から見ると、ヤマトがなければ商品の配達ができないということはない。トップシェアの規模の利益によるコスト競争力はあるとしても、ヤマト運輸が、宅配サービスの価格において強力なプライスリーダーになることは難しいだろう。大手の荷主であるネット通販業者は、最終顧客に対して「配達料無料」をうたうのが効果的な売り方なので、商品販売の粗利の中から配達料を賄う必要があり、大幅な値上げには強力に抵抗するものと思われる。
・とはいえ、大手荷主に対する価格交渉は、できるだけ行うべきだ。値上げ自体はライバルにも歓迎されるだろう。 しかし、社員に労働に見合った対価を十分に払い、さらにキャパシティを増強するために大人数を追加的に雇うだけの原資は、荷主に対する値上げ交渉だけからは得られないのではないだろうか。
・他方、ヤマト運輸のポジティブな面にも注目しよう。 そもそも、宅配サービスは、今や社会生活の重要なインフラの一部であって、ニーズは間違いなく存在している。ネット通販のような商品購買行動が拡大することによって、そのニーズはさらに拡大する公算が大きい。
・また、ヤマト運輸は何と言っても、シェアトップなのだ。規模の利益もあれば、経験の積み重ねによるコスト改善効果も相対的に有利なものを持っているはずだ。近年でも、トラックの路上駐車規制が厳しくなったことに対応した、自転車配達や軽量な台車による配達の利用など、配達の技術革新にも感心する(配達する人は大変そうだけど…)。配達のためのネットワークも、相対的に大きなものを持っている。
・加えて、ヤマト運輸のセールスドライバーには、正確で効率的な配達のスキルと、接客の感じの良さがある。ライバルの佐川急便には爽やかなイケメン配達員が多く顧客にとって魅力となっているという話も聞くが、ヤマト運輸の配達員の対応は、おしなべて丁寧で感じがいいし、配達地域に密着していることもあり、顧客から見た信頼度・好感度は高い。 ヤマト運輸は、ポジティブな条件を十分に持っているのだから、何らかの解決策があるはずではないか。
▽受取人が後から追加できる「宅急便プレミアム」はどうか?
・筆者の思うに、ヤマト運輸は、受取人の指定にきめ細かく応じて再配達を行うような、現状では過剰なまでに丁寧なサービス(「宅急便プレミアム」とでも呼ぶ)と、日に1回配達を行い、翌日以降に荷物を受け取るか、コンビニなりヤマトの集配所なりに荷物を取りに行くかを荷受人の側で選択する「宅急便エコノミー」の2種類の配達サービスに商品を分けて、別々に価格設定するといいのではないだろうか。
・宅急便エコノミーに関しては、ライバルを楽にしないためにも安い料金を設定する。その代わり、手間の掛かる宅急便プレミアムにあっては、それなりの追加料金を取るのだ。高額商品や大事な相手に送る贈り物のようなケースでは、送り手は、当然、はじめから宅急便プレミアムを選択するだろう。 ただし、「宅急便プレミアム」は荷主が最初から付けてもいいが、不在配達票を受け取った段階で荷受人が「事後的に」ヤマトに追加料金を支払う条件で、申し込むことができるようにするといいのではないだろうか。後者にあっては、宅配サービスの品質と価格を、受取人が選択するのだ。
・現在も、「宅急便タイムサービス」というスピード配達で追加料金を取るサービスはある。ただし、こちらは、荷物の送り主が選んで追加料金を払う。これ以外に、荷物をどのように受け取るのかについて、受取人が選択と追加支払いを行うことができるオプションがあってもいいのではないだろうか。
・普通のネット通販にあっては、「宅急便エコノミー」の配達が無料でついていれば、商品の注文者(荷受人)はまあまあ満足だろうし、通販業者も、商品販売の利益からエコノミーの安価な料金を支払うことが可能なら文句は出まい。 荷受人は、不在配達票を見た段階で、それが急いで欲しい荷物なのか、そうでないのかが判断できる場合が多い。急がない荷物についてまで、急いで再配達することは、荷受人・宅配業者双方に無駄があるし、その手間のコストが宅配価格に反映するのだとすると荷主にとっても不利益だ。
・指定に応じる再配達の宅急便プレミアムの追加料金をどのように設定したらいいのかについては、残念ながら筆者は適当な「相場観」を持っていないが、たとえば、数百円(できれば安く!)の追加料金を払えば荷物を今日中に受け取ることができるなら、荷受人が宅急便プレミアムを依頼したいと思うケースは十分あるだろう。
・仮にヤマト運輸の経営努力によって、プレミアムサービスの追加料金を200円まで下げられるとするなら(付け加えると、スイカなどのICカードやアップルペイなどでも払えると嬉しい)、それを、会社が100円、配達したセールスドライバーが100円と山分けするような感じでどうだろうか。あるいは、プレミアム料金は、地域や繁忙度合いの差によって個別に設定してもいいだろう。上限額の範囲内でセールスドライバーが決めてもいい。
・忙しいことは変わらないように思うのだが、筆者宅のエリアを担当されているNさんも少し潤うのだとすると、再配達を頼む方も少し嬉しい気持ちになるというものだ。
http://diamond.jp/articles/-/120413

次に、3月9日付け日経ビジネスオンライン「ヤマト値上げが問う「民営・日本郵便」の真価 “シェア20%の誘惑”に打ち勝てるのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・インターネット通販市場の成長を追い風に、ここまで急ピッチで拡大してきた宅配業界が岐路に立たされている。荷物の増加に配送体制が追い付かず、人件費増加などの形で業績に跳ね返るようになったためだ。 足元で、宅配料金の値上げや配送体制の見直しなどに動いたのは最大手のヤマト運輸。その取り組みについて、ニュースなどで目にした人も多いだろう。そんな中、記者は業界3位、日本郵便の動向に注目している。
・2015年度の宅配便市場のシェアを見ると、首位のヤマトが46.7%、2位の佐川急便が32.3%、そして日本郵便が13.8%だ。トップ2と日本郵便との間に大きな差があることが分かる。
▽売上2倍、しかし赤字幅も2倍
・「ヤマトが今後、引き受ける宅配便の量を抑えれば、溢れた分が2位以下に回ってくるのでは」――。業界ではそんな観測も浮上している。ただ、佐川急便はいち早く米アマゾン・ドット・コムの宅配から手を引いているだけに、ヤマトが引き受けなかった荷物を吸収するとは考えにくい。 となると、業界3位がどう動くかに、がぜん注目が集まる。日本郵便はコスト度外視の営業姿勢で知られてきたからだ。それを象徴的するのが、同社の「ゆうパック」などを含む荷物事業の2014年3月期の収支だ。
・売上高に相当する営業収益が前の期の2008億円から倍増して4139億円に急成長したが、無理にシェアを取りに行ったためコストがかさんだ。その結果、営業損益は前の期の146億円の赤字から倍増し、332億円の赤字を計上することとなった。シェアを上げて収益率を高めるどころか、売上高を2倍にして赤字幅も2倍にしてしまった格好だ。
・なぜ、こんな状態になったのか。明治時代から郵便をやってきたのだから宅配便も必然的に強いはず、と思うかもしれないが、実態はそうとは言い難い。 第一に拠点が宅配事業に向いていない。郵便物を列車で輸送していた時代の名残から、日本郵便の拠点郵便局は多くがターミナル駅の近くに造られた。スペースが狭く、現在のトラックを主軸とした配送体制にはなじまない。郵便をベースにした物流網がうまく機能しなかったため、現在、急ピッチで他社のような郊外型の物流拠点を整備している。
・こんな話もある。「お客様から大きな荷物が来ると、嫌な顔をする社員は多い。民間企業として社員一人あたりの生産性を高めてきた上位2社と比べ、役所の体質を引きずる日本郵便の生産性は低すぎる」と、ある日本郵政関係者はため息をつく。 このように、上位2社と比べて構造的な課題を抱えており、シェアの増加が利益に直結しにくいという。数年前、記者を前に日本郵政グループの首脳はこう言った。「例えば、ヤマトや佐川が『値上げする』と言い出した時に、日本郵便は『じゃあ、うちは値下げします』と言って、がむしゃらにシェアを取りに行く傾向がある。物流網も整っていないから作業に無駄が多く、その結果、売り上げが増えて利益が減るというありえない結果になった」。
▽「ペリカン」と描いた甘い夢
・ではなぜ、日本郵便がコストを度外視した営業に走るようになったのか。そこには“シェア20%の誘惑”が見え隠れする。 話は2007年、日本郵便(2012年までの名称は郵便事業会社)の親会社である日本郵政と、日本通運が提携し、のちに共同出資で物流会社「JPエクスプレス(JPEX)」を立ち上げたことに遡る。 JPEXを受け皿として日本郵便の「ゆうパック」と日通の「ペリカン便」を一体化し、ヤマト・佐川を追撃するという青写真は、2007年に民営化したばかりの郵政グループにとって、大きな希望でもあった。
・この頃の宅配便シェアは、ゆうパック8.7%、ペリカン便10.3%。「1+1=2以上」という楽観的な思考もあり、「20%以上」のシェア獲得によって物流事業の成長戦略を示すというシナリオを描いていた。 結果がどうなったのか、覚えている方も多いだろう。事業統合がうまく進まず、2010年に日本郵便がJPEXを吸収したが、大幅な遅配が発生するなど、現場で大混乱を引き起こした。2011年3月期、日本郵便は1000億円以上の営業損失を計上し、当初のシナリオは崩れ去ったが、社内では「シェア20%」という目標だけが見果てぬ夢として残ったのだ。
▽健全な値上げが必要
・2015年、郵政グループが株式上場したが、郵便物が毎年のように減少していく中で、日本郵便は成長戦略を描けずに苦しんでいる。 先ほど言及したように、日本郵便は“シェア20%の誘惑”にかられるたびに、結果として赤字を増やすという経験を繰り返してきた。ようやく、2016年3月期に荷物事業で営業利益8億円を計上し、わずかながら黒字となったばかりだ。再配達や人手不足によるコストアップに苦しむ中、売り上げを無理に伸ばそうとすれば失敗を繰り返すことになるだろう。
・日本郵便は毎年、アマゾンなど大口の契約企業と配送料金の更改交渉を行っている。結果として、実質的な値上げとなる可能性があるが、むしろそれ自体は民間企業として正しい方向ではないだろうか。 高コスト体質を改善しながら、健全な形でシェアを高める。これを実現できるかどうかは、歴代の日本郵便トップが手を付けてこなかった、抜本的な社内改革に取り組めるかどうかがカギを握る。昨年、日本郵便社長に就いた民間出身の横山邦男氏が、企業経営者としての真価を問われているということでもある。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/030800424/?P=1

第三に、3月10日付け日経ビジネスオンライン「元社員「ヤマトは“サビ残”前提の会社だ」 同じ支店が労基法違反で2度目の是正勧告」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ヤマト運輸が労働基準法違反で横浜北労働基準監督署から2016年12月に是正勧告を受けていたことが9日、分かった。対象となったのは横浜市にある神奈川区平川町支店で、同支店は8月にも労基法違反で是正勧告の対象となっており、2回目となる。ヤマトは「是正勧告があったのは事実。真摯に対応していきたい」と述べた。 前回は残業代未払いについての是正勧告、今回はさぶろく(36)協定違反だった。
・現在の労基法では1日の労働時間は8時間まで、1週間では40時間と定めている。ただし同法36条に基づく労使協定(36協定)を結べば、さらに長い労働時間の上限を定めることができる。 労基署が調べたところ、平川町支店ではその36協定で定めた労働時間を超えて社員に働かせていたとして是正勧告が出された。
・さらにトラック運転手の労働条件の改善を図るための労働大臣告示の基準も超えていたことも明らかになった。宅配現場のヤマト社員の窮状が、労基署にも認められた形だ。
▽約7万6000人にサービス残業の調査
・ヤマト運輸は高まる現場の労働負荷を受けて、宅配の構造転換策を打ち出している。 最大の目玉は運賃の値上げである。9月末までに宅配便の基本運賃を引き上げる方針だ。基本運賃を全面的に値上げするのは消費増税時を除くと27年ぶりになる。 特に割引率の大きいアマゾンジャパン(東京都目黒区)など大口顧客と交渉に入った。現在無料の再配達についても現場の負荷が大きいため、有料化を検討している。 宅配システムとしては、昼や夜間の配達時間帯指定を見直すほか、荷受け量を抑制し、労働負荷を軽減する。
・そして、3月末までに約7万6000人の従業員を対象に労働時間を聞き取り調査し、サービス残業による未払い分を支給する方針だ。
▽夜9時以降に宅配することも
・こうしたヤマトの行動を評価する声がある。だが、ヤマトの元社員Kさんは「対応が遅い。会社には何度も過重労働の改善を訴えてきたが、対応してくれなかった」と話す。 Kさんは長年、配属先の管理職やヤマト運輸労働組合に長時間労働を減らすことやサービス残業代の支払いを求めてきた。ところが会社が改善に動かないため、労働基準法に抵触しているとして、横浜北労働基準監督署などに訴えた。これを受けて2016年8月と12月に、ヤマト運輸に是正勧告が行われた。
・昨年8月に是正勧告を受けてから、今年2月に働き方改革室を設けて、宅配システムの改革や未払い賃金の支払いを検討するまでおよそ半年かかっている。これは、迅速な対応とは言えないだろう。
・何度、この言葉を口にしてきたのだろうか。Kさんはサービス残業を略して「サビ残」と呼ぶ。 「ヤマトはサビ残を前提としたビジネスモデル。特に3年前にアマゾンの荷物を扱い始めてから現場では3割ほど荷物が増えたのに人が増えず、労働負荷が激しくなった」
・Kさんは「朝8時半から夜9時まで荷物を運びっぱなしで、休憩をとれず、昼ご飯を食べる時間もない。仕事が終わらず夜9時以降に宅配したこともある。会社は社員を『人財』と呼ぶが、『奴隷』のようだった」と振り返る。  現役の社員もこう証言する。「以前は支店の中で夜9時までの遅番担当は1~2人だった。しかし、アマゾンの影響で3便と呼ぶ夕方の荷受け量が急増した。これを運ぶために夜9時まで支店全員が荷物を運ぶような状況になっている」。
・ヤマトは主に携帯端末の起動時間で従業員の労働時間を管理していたが、その電源を切った後も新規荷主データの入力や物損事故の報告書作成などデスクワークがあったという。Kさんはその時間をタイムカードで記録していた。 その記録によると、Kさんは過労死ラインとされる月間80時間の残業を超える月が、25カ月のうち12カ月あった。残業時間が100時間を超える月が4回あったという。 Kさんはこうした労働環境に耐えきれず、長年働いた同社を退社した。「夜9時に仕事が終わって、10時くらいに帰宅できる普通の生活がしたかった」と語る。
▽「残業代の支払い総額は数百億円規模」か
・ヤマトの未払い残業代の支払いはどれくらいの規模になるのだろうか。朝日新聞は、「1人あたりの支給額が100万円を超えるケースもある。必要な原資は数百億円規模にのぼる可能性がある」と報じた。 仮に数百億円規模になった場合には、それだけ約7万6000人のヤマトの従業員は、声を上げずに我慢をしていたということになる。また既に声を上げていたのであれば、これまで経営陣は対応してこなかったことになる。
・ヤマトは特異な会社なのだろうか。多かれ少なかれ、従業員がサービス残業をしている企業は多いはずだ。本誌が昨年10月に実施した「働き方に関するアンケート」によると、6割以上がサービス残業が存在すると答えた(記事はこちら)。
・従業員には様々な事情があるだろう。上司からの圧力で、残業時間を申告できないのかもしれない。残業が多いと仕事の効率が悪いという烙印を押され、評価が下がるため残業時間を自主規制しているのかもしれない。 ヤマトは労使間で、労働時間を短くする協定を結んできた。だが、調査では多くの人が正確に申告してなかった膨大な残業時間が浮かび上がってきそうだ。
・政府主導の働き方改革の中で、「働き方」ではなく建前上の「働く時間」だけを削っている企業はないだろうか。ヤマトの未払い残業代の支払いは、パンドラの箱の中に入っていた日本の労働現場の実態を白日の下にさらすことになる。 従業員の残業時間を正確に把握する。本当の働き方改革が始まるのはそれからだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030300119/030900004/?P=1

第四に、3月15日付け日経ビジネスオンライン「電通の教訓―ヤマトが全社調査に乗り出した背景 数百億の残業代を支払うことになる可能性も」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・労基法違反で是正勧告を受けたヤマト運輸が、大規模な労働環境調査に乗り出す。巨額の残業代を支払うことになる可能性も出てきた。背景には電通のケースでも明らかになった、労働行政の大きな方針転換がある。  ヤマトホールディングス(HD)はヤマト運輸など複数のグループ企業の社員を対象として労働環境調査を始めた。
・ヤマト運輸は昨年、残業代の一部を支払わず休憩時間を適切にとらせていなかったとして、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けている。出社や退社時に打刻するタイムカードではなく携帯端末を稼働させる時刻で労働時間を管理していたため、電源を入れる前の仕分け作業や切った後の伝票作成などの業務が未払いとなっていた。
・調査の対象人数はおよそ7万6000人とされ、残業代の支払いに必要な原資は数百億円に上る可能性がある。ヤマトHDは2017年3月期の営業利益を580億円と予想しているが、業績への影響は避けられない状況だ。ヤマト運輸は「未払いが判明すれば、企業としてしっかりと対応する」(広報)としている。 使用者側の代理人として労働事件の経験が豊富な杜若経営法律事務所の岸田鑑彦弁護士は「実態として、労使合意の下で労基法と異なる労働時間管理をしている企業は少なくない。ただ、労働環境の悪化などをきっかけに争いになれば、合意があっても企業が負けるケースが多い」と注意喚起をする。
▽労基署業務の民間委託を検討
・ヤマトHDが是正勧告を受けた事業場だけでなく、企業全体の労働環境の自主チェックに乗り出す背景には労働行政の大きな方針転換がある。これまでのように事業場単位ではなく、企業単位でチェックしようとする姿勢が鮮明になっているのだ。
・その典型的な例が、違法な長時間労働を社員にさせた疑いで電通が書類送検されたケースだった。「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」が、全国の労基署と連携して本社や支社、子会社などに一斉立ち入り調査を実施した。かとくとは、15年4月に発足した専門組織で高度なIT(情報技術)スキルを備えた人材を擁しているほか、全国の労基署と情報を共有する体制を整えている。
・勤務実態について形式的な出勤簿やタイムカードではなく、電子入退館記録などと厳密に突き合わせて判断するのが、最近の労基署の手法。この時も自殺した新入社員が違法残業をさせられた事実を突き止めた。  対応が後手に回って最後は、社長辞任という最悪の事態に追い込まれた電通。ヤマトHDの対応は、その教訓を生かして先手を打ったものといえる。
・厚生労働省によれば15年度に時間外労働などに対する賃金未払いで是正指導を受けた企業の数は1348あった。是正指導を受けて支払われた割増賃金の合計額は99億9423万円に上る。 これらは氷山の一角にすぎない。各地の労基署は人手不足に陥っており、監督の目が行き届いているとは到底いえないからだ。こうした実態を踏まえて、政府の規制改革推進会議は労基署の業務の一部を民間委託する検討に入った。
・ヤマト運輸はアマゾンジャパン(東京・目黒)などの大口顧客に対して、値上げ交渉を始めた。顧客から適正な対価を得た上で、労働者に正当な賃金を支払う。当然の循環を再構築できるかが問われている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/031400625/?P=1 

第一の記事で 『2位の佐川急便から大口顧客であるアマゾンのビジネスを奪ったことが負担になったようだ』、ということであば、ヤマト運輸の経営判断のミスといえなくもない。 『強い荷主という需要側の交渉力と、人手不足という調達における供給側の制約に、同時に直面してしまったようだ。おそらくこれまで両方の制約をカバーしてきたのは、サービス残業も含むセールスドライバーの労働強化だったが、それが限界に達し、制約が表面化』、からは経営判断のミスだけでなく、宅配業界が抱える構造問題の側面もありそうだ。「宅急便プレミアム」の提案については、1つの考え方ではあるが、私のコメントは控えたい。
第二の記事にある 日本郵便が 『売上2倍、しかし赤字幅も2倍』、とは日本郵便の限界を示しているようだ。『「ゆうパック」と日通の「ペリカン便」を一体化』、した際の混乱はうろ覚えながら記憶にある。『明治時代から郵便をやってきたのだから宅配便も必然的に強いはず、と思うかもしれないが、実態はそうとは言い難い。 第一に拠点が宅配事業に向いていない』、 『健全な値上げが必要』、というのは確かにそうだろう。
第三の記事にある 『会社には何度も過重労働の改善を訴えてきたが、対応してくれなかった』、さらに過重労働やサービス残業などが横行していたということであれば、ヤマト運輸もこれまでは相当なブラック企業だったようだ。 『従業員の残業時間を正確に把握する。本当の働き方改革が始まるのはそれからだ』、との指摘はその通りだ。
第四の記事にある 『労基署業務の民間委託を検討』、については日経新聞によれば、社会保険労務士などに委託するとのことだが、通常は企業側に立っている社会保険労務士が果たして、公正な判断が出来るのか、疑問を抱かざるを得ない。彼らが適切に業務を遂行しているかを、委託した労働基準監督署側が検査する必要が出てくるかも知れない。これでは、全体としては効率的とはいえなくなる可能性もありそうだ。
タグ:各地の労基署は人手不足に陥っており、監督の目が行き届いているとは到底いえない 労基署業務の民間委託を検討 電通の教訓―ヤマトが全社調査に乗り出した背景 数百億の残業代を支払うことになる可能性も 「残業代の支払い総額は数百億円規模」か サービス残業 約7万6000人にサービス残業の調査 是正勧告 横浜北労働基準監督署 元社員「ヤマトは“サビ残”前提の会社だ」 同じ支店が労基法違反で2度目の是正勧告 日経ビジネスオンライン 健全な値上げが必要 事業統合がうまく進まず、2010年に日本郵便がJPEXを吸収したが、大幅な遅配が発生するなど、現場で大混乱を引き起こした 日本郵便の「ゆうパック」と日通の「ペリカン便」を一体化 第一に拠点が宅配事業に向いていない 明治時代から郵便をやってきたのだから宅配便も必然的に強いはず、と思うかもしれないが、実態はそうとは言い難い 売上2倍、しかし赤字幅も2倍 日本郵便 ヤマト値上げが問う「民営・日本郵便」の真価 “シェア20%の誘惑”に打ち勝てるのか 経ビジネスオンライン 受取人が後から追加できる「宅急便プレミアム」はどうか? セールスドライバーには、正確で効率的な配達のスキルと、接客の感じの良さがあ 宅配サービスは、今や社会生活の重要なインフラの一部であって、ニーズは間違いなく存在 大手荷主に対する価格交渉は、できるだけ行うべきだ ヤマト運輸が、宅配サービスの価格において強力なプライスリーダーになることは難しいだろう ポジティブな競争条件をヤマトは十分に持っている これまで両方の制約をカバーしてきたのは、サービス残業も含むセールスドライバーの労働強化だったが、それが限界に達し、制約が表面化 ヤマト運輸は、どうやら、強い荷主という需要側の交渉力と、人手不足という調達における供給側の制約に、同時に直面してしまったようだ 残業代の未払い金が数百億円単位に上ることが判明し ヤマトは便利で感じはいいが 過剰サービスでは? ヤマト運輸が「利益なき繁忙」に陥らないための妙案 イヤモンド・オンライン 山崎 元 (ヤマト運輸が「利益なき繁忙」に陥らないための妙案、ヤマト値上げが問う「民営・日本郵便」の真価、ヤマトは“サビ残”前提の会社、ヤマトが全社調査に乗り出した背景) 物流問題
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