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トランプ新大統領誕生(その14)米中首脳会談の前まで(ティラーソン国務長官の外交力は小学生レベルかも、身内に通じなかったトランプ流交渉術 立法府での第一ラウンドで完敗、「FBIと大統領の喧嘩」の悪夢) [世界情勢]

トランプ新大統領誕生については、3月20日に取上げた。今日は、(その14)米中首脳会談の前まで(ティラーソン国務長官の外交力は小学生レベルかも、身内に通じなかったトランプ流交渉術 立法府での第一ラウンドで完敗、「FBIと大統領の喧嘩」の悪夢) である。やや、長目になるが、特に3番目の記事は面白いので、そこだけ読むのもお勧めだ。

先ずは、『週刊現代』編集次長の近藤 大介氏が3月28日付け現代ビジネスに掲載した「米・ティラーソン国務長官の外交力は小学生レベルかもしれない」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
▽「超内向き」なトランプ政権
・まだ前任のオバマ大統領の時代のことだ。アメリカとアジアの国際関係論を教えるアメリカ人の旧知の大学教授が来日したので、オバマ政権と安倍政権との関係などを聞いた。するとその教授は、日本酒をしこたま飲んで赤ら顔になって、たまりかねたようにこう述べた。 「正直言うとね、オバマ大統領というのは、戦後の歴代政権の中で最も内向きな大統領で、海外のことなんか全体の10%くらいしか考えていない。かつ海外のことと言えば、ロシアが一番で、次がEU。その後に中東が来て、中国が来て……日本の占める割合なんか、おそらく5%くらいだろう。
+つまり、10%の中の5%だから、全体の0.5%。だから、0.5%のことを捉えて、『オバマ大統領は安倍政権をどう見ているか?』なんて質問すること自体が愚問だよ。ほとんど何も考えていないに決まっているではないか」
・なぜこんな話をほじくり返したかと言えば、3月15日から19日まで、日本、韓国、中国とアジア3ヵ国を歴訪したレックス・ティラーソン国務長官の姿を見ていて、「内向き」と言われたオバマ政権に輪をかけて、トランプ政権が「超内向き」な政権になりそうな気配が多分に感じられたからだ。
・思えば、いまから8年前の2009年2月16日の夕刻、就任したばかりのヒラリー・クリントン国務長官が羽田空港に降り立った時は、ビッグニュースだった。 「私はアメリカにとってアジア太平洋地域との外交が不可欠との信念から、初の外遊先にアジアを選び、アジア歴訪の最初の訪問地に日本を選んだ」 クリントン長官は、記者団に囲まれて勇ましく発言した。
・翌17日には麻生太郎首相主催の大々的な歓迎晩餐会を開いたし、東大で講演したり、拉致被害者の家族と面談したりして、2泊3日の滞在中、常にニュースの的だった。その間、麻生首相の訪米を決め、海兵隊のグアム移転を発表した。 日本を発った後、インドネシア、韓国、中国と回り、オバマ政権の「アジアへの回帰」を鮮明に打ち出したのだった。
・それに較べて、今回のティラーソン国務長官の来日たるや、寂しいものだった。私が一番驚いたのは、ティラーソン国務長官のアメリカメディアの同行記者が、たった一人しかいなかったことだった。
・北朝鮮はミサイルを飛ばし、韓国は大統領を罷免し、中国は空母を旋回させ、アメリカ軍は、史上最大規模の米韓合同軍事演習を実施している真っ最中だ。そんなホット・スポットをアメリカの新国務長官が歴訪するというのに、ティラーソン国務長官と共に降り立った同行記者は、たったの一人だけ。しかも『インディペンデント・ジャーナル・レビュー』というあまり聞き覚えのない保守系インターネット・メディアのエリン・マクパイクという若い女性記者である。
▽ティラーソン氏が記者に語ったこと
・さて、そのマクパイク記者は、アメリカ帰国後の3月22日、「いかにしてレックス・ティラーソンは『アメリカ・ファースト』を外交政策に転換していくか」と題した長文の記事を掲載した。そこで、ティラーソン国務長官に最も近いアメリカ人ジャーナリストは、次のようなことを記している。
+今回のティラーソン国務長官の日本・韓国・中国歴訪は、トランプ大統領が唱える「アメリカ・ファースト」を、いかに外交政策に転換させていくかという旅だった。ティラーソン国務長官自身は、「アメリカ・ファースト」はアメリカの外交政策と矛盾しないと考えている。
+トランプ大統領はせっかちで衝動的、多弁だが、ティラーソン国務長官はゆったりしていて慎重派、寡黙だ。「まだ就任して6週間だから勉強中だ」と述べている。
+「トランプ予算」によって、国防総省は予算が10%増えるのに、国務省は28%も減らされる。この史上最悪の予算のため、ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と国務省の摩擦の矢面に立つ。意気上がる国防総省と意気消沈する国務省は対照的だ。
+ティラーソン国務長官の初仕事は、マティス国防長官と組んでISISを打ち負かすことである。それは、軍によるISISの打倒、政権の移行、地域の安定化という3段階のプロセスを踏む。
+かつてブッシュJr.大統領は、クリントン大統領がオサマ・ビンラディンとアルカイダに甘かったから彼らが挑発的になったとして、イラク戦争に踏み切った。同様にトランプ政権は、オバマ政権がISISに甘かったから増殖したと見て、ISISを叩いて成功を収めようとしている。
+トランプ政権では、ティラーソン国務長官、マティス国防長官、ポンペオCIA長官、マクマスター安保担当大統領補佐官が積極的な関係を築いている。特にティラーソンとマティスの関係は、ジンとベルモットのようだ。
+ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と毎日話をしていて、ホワイトハウスのトランプ大統領の執務室にアポなし訪問してよい許可を得ている。だが、まだ国務省改造計画について、トランプ大統領と詰めていない。
+ティラーソン国務長官は、かつてエクソンモービルで10万人の社員を7.5万人までリストラして、フォーチュン500強のトップ企業に導いた経験があり、国務省を効果的で効率的な組織に変えるよい機会だと思っている。ロス・ペロー、スティーブ・フォーブス、ミット・ロムニーなど、ビジネスマンが政府に貢献した例はある。
+トランプ政権は、NATO(北大西洋条約機構)の加盟国に、GDPの2%を国防予算にするよう要求した。アメリカは引き続き、NATOと共にある。
+ティラーソン国務長官は、イエメン問題にも多くの時間を割いている。20年以上も前、数年間イエメンに暮らしたことがあり、イエメン問題については明るいが、事は深刻だと考えている。
+核とミサイル開発に邁進する北朝鮮も大きな脅威だ。さらに韓国ではリベラルな文在寅が次期大統領になろうとしていて、中国政府は北朝鮮への関与政策を取っている。ティラーソン国務長官は、アメリカは20年の時間と13.5億ドルの予算を北朝鮮に空費したと考えている。
+今回のアジア歴訪では、メディアによるリスクを軽減するため、ティラーソン国務長官のスタッフは、私一人しか国務省専用機への同行取材を認めなかった。ティラーソン国務長官はそもそも目立つことが嫌いで、外交とは、アップル社がiPhoneの新商品の中身や発売日を教えないようなものだと思っている。
+ティラーソン国務長官は3月15日の夜、東京に降り立った時、大勢のマスコミが待ち構えて出迎えたことに、不愉快になった。その後、3ヵ国で何度もアジアの要人たちとカメラの放列の前で握手することにも、戸惑いを覚えた。
+3月23日木曜日に65歳になるティラーソン国務長官は、私にこう言った。 「3月にはエクソンモービルを引退して、孫たちと過ごすつもりだった。私はこの仕事を望んでいなかった。また求めてもいなかった。妻が『あなたならできるんじゃないの』と言うから承諾したのだ。
・私はトランプ候補が大統領選に勝利するまで、面識もなかった。トランプ氏から『世界について語り合いたい』と申し出があり、会いに行って話をしたら、最後に『国務長官を引き受けてくれないか』と言われたのだ。そこで帰宅して、妻のレンダ・セント・クレアに話したら、『神はあなたのそばを通り過ぎたりしないわ』と言われた」
▽韓国でもやらかした…
・3月16日、岸田文雄外相とティラーソン国務長官の日米外相会談が1時間20分にわたって開かれたが、8年前のクリントン国務長官の訪日時に較べれば、何ともお寒い内容だった。 「2+2を早期に開催する」「辺野古移転が普天間飛行場移転の唯一の解決策である」「北朝鮮の核とミサイル開発は容認できない」「東シナ海の平和と安定のために協力する」……。どれも以前から決まっていることで、トランプ政権は「オバマ政権との違い」をアピールしているというのに、何一つ真新しい内容はなかった。
・応対にあたったある日本政府の関係者は、こんな感想を述べた。 「ティラーソンという男は、何を考えているのかサッパリ分からなかった。日本側が北朝鮮の拉致問題について説明した時には、『何だそれは?』という顔をして聞いていた。もしかしたら、日本では中国の悪口を言って、中国では日本の悪口を言うような男なのではないか。 総じて、トランプ新政権がアジアで一体どんな外交を展開していこうとしているのかが、見えてこなかった。ティラーソン国務長官が日本に残したのは、不安と不満だった」
・ティラーソン国務長官は、続く韓国で、3月17日に尹炳世外相との米韓外相会談を行った後、共同記者会見を開き、次のように述べた。 「いまや北朝鮮の脅威は、近隣諸国ばかりかアメリカや他の国の脅威にもなりつつある。北朝鮮を平和的に安定させようというこの20年の努力は、失敗に終わった。アメリカは1995年以降、北朝鮮への助力に13億ドルを費やした。だが北朝鮮は、核兵器を開発し、弾道ミサイルを増強させ、アメリカと同盟国を恫喝した。
+北朝鮮の脅威が増加した現在、次のことをはっきりさせる。(オバマ政権の)戦略的忍耐は、もう終わりにし、新たな外交安保と経済のステージに入る。すべてのオプションが机上にある。核とミサイルを放棄することだけが繁栄の道だと、北朝鮮は思い知るべきだ。
+THAADを韓国に配備するのは、まさにこのためだ。中国の韓国に対する経済的な報復は認識しているが、それは正しい行いではないし、トラブルのもとになる行為だ。中国には、そのような行為を慎むことを求める。その代わり、中国には、エスカレートする北朝鮮の脅威に向き合うことを促していく」
・このように、3月から4月に史上最大規模の合同軍事演習を行っていることもあって、ティラーソン国務長官は米韓一体をアピール。合わせて、THAADの正当性を述べ、中国に対しては韓国イジメを止めるよう呼びかけた。
▽「深い溝」が浮き彫りに
・だが、この米韓外相会談&共同記者会見の後、物議を醸す「事件」が起こった。ティラーソン国務長官はあろうことか、尹炳世外相主催の夕食会をキャンセルしたのだ。 この真相はいまだに謎だが、3月18日に、ソウルから北京へ向かう国務省専用機の機内で前述のマクパイク記者が行った独占インタビューによれば、次のように答えている。 
+マクパイク:「韓国紙は、あなたが疲労困憊でディナーをキャンセルしたと書いている。しかもあなたは韓国よりも日本で長く過ごしたとも書いている。一体何が起こったのか?」
+ティラーソン:「韓国側はわれわれをディナーに招待していはいなかった。だがギリギリになって、それでは対面が立たないことに気づき、私の疲労のせいにして発表したのだ」
+マクパイク:「それでは、彼らは嘘つきってこと?」
+ティラーソン:「それが彼らの説明だということだ」
+マクパイク:「分かったわ」
+ティラーソン:「でもちゃんと夕食は食べたから」
+マクパイク:「誰と? あなたのスタッフと? 分かったわ」
+ティラーソン:「そういったことはホスト国が決めるものなのだ。訪問者は決めない」
・つまり、米韓が互いに責任を押し付け合っているというわけだ。一方では、史上最大規模の合同軍事演習を実施中というのに、実際にはトランプ新政権と韓国との間に、深い溝があるということだ。 それはもしかしたら、「大統領になったらアメリカよりも先に北朝鮮を訪問する」と公言している親北反米の文在寅「共に民主党」前代表が、5月9日の大統領選挙に勝利する瞬間が近づいていることとも関係があるのかもしれない。
▽ヒマで仕方ないのか?
・ところで、ティラーソン国務長官は、ソウルから北京へ向かう国務省専用機で、他にやることがないのかと訝いたくなるほど、マクパイク記者のロング・インタビューに応じている。その要旨は以下の通りだ。
+日本は経済規模から言って、この地域における最重要の同盟国だ。それは安全保障、経済、平和と安定などの立場から見て、過去においても現在でも同様だ。
+韓国は日本と似ているが、北東アジアの平和と安定において、比較的安定した、重要なパートナーだ。
+アメリカの目的は、朝鮮半島の非核化だ。核開発が必要だと結論づけている北朝鮮の体制に、その誤った理解を変えさせることだ。
+われわれはあらゆるオプションを排除しない。その一つは、北朝鮮に「制裁」という強力なメッセージを送ることだ。プレッシャーを強めて、いま彼らが考えている道は閉ざされていくと分からせることだ。
+第一ステップは、国連安保理による制裁で、もっと広範にやっていく。それは北朝鮮の恫喝外交を助長するためではなくて、彼らの道を変えさせるためだ。
+もしそれでも彼らが核とミサイル開発を続けるなら、われわれは誰も望まない方向に向いていくだろう。そうしたアクションによって彼らの考えを変えさせていくしかない。それはいまよりもかなり危険な状態になる。
+中国にも、このことで北朝鮮に影響を与えてもらう。米中両大国は共に、朝鮮半島の平和と安定を望んでいるのだから。二つのグレートパワーとして、朝鮮半島を非核化しようということだ。
+中国とは広範な問題について話すつもりだが、北朝鮮の脅威は差し迫ったイシューだ。彼らは兵器を開発し、それを運搬するシステムを身に着けようとしているからだ。
+中国に関しては、トランプ大統領と習近平主席との間で、ハイレベルの話をしてもらわないといけない。とにかく両首脳が顔を合わせて話すことが大事だ。
+中国自身の人権問題も、改善するよう言及したい。
+われわれは米中関係の歴史的な瞬間に立ち会っている。ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官が訪中し、道を開いてから40年。中国は経済発展し、世界に存在を見せつけてきた。米中は過去に、朝鮮半島以外で直接戦ったことはない。特にこの40年間の関係は素晴らしかった。いまは互いにフレッシュな気持ちで、次の50年の両国関係について話す時だ。それは米中で紛争が起こらない時代を作るということだ。
・他にも、ティラーソン国務長官はなぜメディアを同行させないのかとか、公用の携帯電話と孫と話す私用の携帯電話を使い分けているとか、ダラダラと語っているが、それはアジア情勢とは無関係なので、省略した。
▽米中外相会談を終えて
・3月18日、北京で王毅外相と米中外相会談を行った後、両外相が共同記者会見を行った。その時にティラーソン国務長官が語ったのは、以下のようなことだった。
+過去40年以上にわたって、米中に紛争や軍事衝突が起こっておらず、互恵とダブルウインの関係を築いてきた。いまこそ両国のリーダーが、次の半世紀の関係を話し合うべき時に来ている。両国は世界の2大経済大国であり、安定と成長を促進していかねばならない立場にある。両国はフェアで配当を払うポジティブな貿易関係に向かって進んで行くべきだ。
+王毅外相と、北東アジア及びアジア太平洋の安定と安全保障の重要性について話した。過去20年の北朝鮮の違法な兵器開発を止める努力は成功してこなかった。中国も朝鮮半島の非核化を目指しているので、米中は決意を新たにして北朝鮮問題に望みたい。
+海上の紛争と、航行・航空の自由については、ルールに基づいた秩序作りが重要だということを議論した。アメリカは、人権や宗教の自由など普遍的価値の提唱は続けていくと明らかにした。
+北朝鮮に関しては、王毅外相と、現在かなり危険なレベルになっているとの認識で一致した。そして重要なのは、北朝鮮に核開発の方針を変えてもらうことだということでも一致した。
・以上である。ちなみにこの時の王毅外相の発言要旨は、以下の通りだ。
+中国は、朝鮮半島の非核化、対話と交渉による問題解決、朝鮮半島及び地域の平和と安定ということで、朝鮮半島にコミットしてきた。
+朝鮮半島の核問題は基本的に、アメリカと北朝鮮の問題だ。
+中国はこれまでも、できる限りの尽力をしてきた。3者協議、6者協議なども行った。それらは主に、米朝協議をサポートするためのものだった。国連安保理で制裁決議も行ってきた。2005年9月には、6者協議で共同声明も出した。
+最も重要なのは、どんな時でも平和的に外交的手段によって解決していかねばならないということだ。
+いまや再び新たな岐路に立っていて、このまま状況がエスカレートしていけば、最後は軍事衝突に至るだろう。だから交渉をリスタートさせるべきだ。
+まずは関係各国が頭を冷やすことだ。われわれも新たな交渉に、アメリカ側に立って協力していく。
+朝鮮半島の核問題をめぐる今日のティラーソン国務長官との議論で、双方は完全には一致しなかったが、基本的なコンセンサスや方向性は共有している。ティラーソン国務長官が述べたように、中米双方が目指すゴールは、朝鮮半島の非核化だ。中米はこれからも、しっかりと協力し合っていく。
▽存在の耐えられない軽さ
・米中両外相の共同記者会見を見ていると、明らかに王毅外相の方がリード役だった。王毅外相は4年も外相をやっていること、中国のホームグラウンドであることなどもあるが、王毅外相にとっては、一世一代の晴れ舞台だったことも大きい。
・王毅外相の任期はあと一年で、今年後半に開かれる第19回中国共産党大会で、次の処遇が決まる。王毅外相としては外交担当国務委員(副首相級)に昇進して、中国外交の最高責任者になりたい。 ところが、いまそのポストにいる楊潔篪国務委員(前外相)は、「王毅外相は日本畑の外交官なので、最重要の対米外交ができない」と理由をつけて、もう一期5年務めたい。つまり、中国国内で楊潔篪vs.王毅の激しい「内交戦」が再燃しているのである。すべては習近平主席の胸先三寸だ。
・そのことを差し置いても、日本、韓国、中国と3ヵ国歴訪したアメリカの新国務長官の「存在の耐えられない軽さ」には驚いた。 まず第一に、マクパイプ記者との長いインタビューの発言を確認すると、外交官や政治家としての経験がないとはいえ、ある意味、トランプ大統領以上に、小学生のような言い回しばかりが目につく。世界最強国の外務大臣にしては、信じられないほどの役不足、能力不足なのである。おそらく本人もそのことをよく自覚していて、自信がないから、大のマスコミ嫌いなのだろう。
・第二に、ティラーソン国務長官は、キッシンジャー元国務長官のような戦略型でもなければ、ヒラリー・クリントン国務長官のような理念型でもない。あえて言うなら、国務省という組織を、予算削減に合わせてダウンサイジングしていく総務型、庶務型の国務長官に思える。そのため、アジア各地で凄んでは見せたが、北朝鮮に先制攻撃するとかいう大それた外交を展開できるような器ではない。
・第三に、3月8日に、アジア太平洋担当国務次官補だったダニエル・ラッセル氏が、突然、国務省を去っていったことだ。 ラッセル次官補は、アメリカの対北朝鮮外交最大のキーパーソンで、トランプ候補の大統領選勝利の後も、「北朝鮮外交があるから」と言って残った数少ない国務省幹部だった。それがティラーソン国務長官のアジア歴訪の1週間前になって突然、辞任したのは、ティラーソン国務長官とアジア外交を巡る齟齬があったとしか思えない。そして、キーパーソンを失ったアメリカのアジア外交は、漂流とまではいかないかもしれないが、一時的後退は免れないのである。
・第四に、北京でも、マクパイプ記者に対しても、ティラーソン国務長官は、トランプ大統領と習近平主席の早期の米中首脳会談の重要性を力説していながら、その日程を発表できなかった。すでに4月6日、7日に習近平主席が訪米と書き立てたメディアもあるが、3月27日時点で発表がないのは不自然だ。中国は首脳の外交日程を、通常は2週間前に発表するからだ。特に、中国がティラーソン国務長官を尊重しているなら、その訪中時に発表してもよかったはずだ。
・思うに、THAAD配備問題を巡って、米中で調整がつかなかったのではないか。加えて中国としては、このような「素人国務長官」を任命するようなトランプ政権との本格交渉は、急ぐ必要がないと判断したことも考えられる。 ともあれ半年か一年後には、ティラーソン氏は「前国務長官」として、自宅で悠々と孫と遊んでいるような気がしてならない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51324

次に、3月28日付け日経ビジネスオンライン「身内に通じなかったトランプ流交渉術 立法府での第一ラウンドで完敗、次ラウンドは税制改正」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「ディール・メーカー」としての能力に疑問符
・期せずして、政策の優先順位が変わることになりそうだ。 3月24日、共和党指導部はオバマケア(米医療保険制度改革法)の代替法案を撤回した。もともとは23日の木曜に下院で採決される予定だったが、法案通過のための賛成票に見通しが立たず、一度は延期が決まった。その後、翌金曜の夕方に再び採決されることになったが、反対派の切り崩しが進まず、撤回に追い込まれた。
・オバマケアの撤廃は過去4回の選挙で訴えてきた共和党の看板政策だ。上下両院を共和党が制し、ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスの主になった現状は長年の宿願を果たすまたとない好機だった。それが、まさかの大敗北である。ディール・メーカーとしてのトランプ大統領の能力、下院議長としてのポール・ライアン氏の指導力に疑問の目が向けられている。
▽トランプ政権の命運を左右する「下院フリーダム議連」
・採決にすら持って行けなかった最大の理由は共和党内の分裂だ。とりわけ、保守強硬派が集う下院フリーダム議連(HFC:House Freedom Caucus)の造反である。 HFCはティー・パーティの流れをくむ下院共和党の保守強硬派。小さな政府を金科玉条とし、徹底的な歳出カットや減税を求める財政タカ派だ。大きな政府の象徴であるオバマケアを蛇蝎のごとく嫌っている。メンバーが開示されていないため正式な数は不明だが、30~40人とされる。
・彼らの存在が一躍、有名になったのは2015年9月のベイナー・前下院議長の追い落としだ。 2013年10月以来の政府閉鎖を回避すべく、2016年度予算案の成立に向けてギリギリの調整を続けていたが、前議長の政治的妥協を批判していた同議連は解任動議を提出、ベイナー前議長は辞任に追い込まれた。後任として白羽の矢が立ったライアン氏は挙党一致を条件に下院議長に就任した。この時はHFCもライアン議長の支持を表明している(下院フリーダム議連がライアン氏を支持した時の声明)。
▽トランプケアは「撤廃とはほど遠い内容」
・トランプ大統領の最初のビッグディールでHFCの面々が造反したのは、ライアン議長など下院共和党指導部の提示した案が撤廃とはほど遠い内容と考えたためだ。 代替法案では批判の多かった個人や従業員の健康保険加入の義務付けを撤廃、低所得者向けの補助金に替わるものとして、年齢や収入をベースにした税額控除も盛り込んだ。だが、払い戻す形での税額控除は補助金と替わらないと反発を強めた。
・下院共和党は定数535議席中、過半数を超える237議席を抑えている(空席が5議席)。ただ、下院で法案を可決させるには空席を考えると216票が必要で、22人が反対すれば、法案は通らない。
▽共和党の穏健派は無保険者の増大を懸念
・一方で、共和党の穏健派は代替法案によって想定される無保険者の増大に懸念を強めた。 オバマケアによって2000万人以上の無保険者が健康保険に加入することが可能になった。既存保険者の保険料アップやオバマケアに伴う増税には強い批判があるが、既にオバマケアは制度として定着している。オバマケアの撤廃と置き換えで無保険者が増加すれば、次の選挙で自身の首が危うい。
・実際、2月の議会休会中に各議員が地元で開催したタウンホール・ミーティングでは、自身の保険内容が劣化するのではないかと不安に感じた有権者の批判が相次ぎ、各所で炎上した。中立的な議会予算局(CBO)も、「代替案を施行すれば、現行制度を継続させた場合と比べて無保険者が2016年に2400万人増える」という衝撃の試算を発表している。
・撤廃しなければ公約違反だが、撤廃後、無保険者が増えても政治的打撃が大きい。中道派の共和党議員は極めて難しい立場に置かれた(参考 2017年2月28日配信記事「共和党に回り始めたオバマケアの『毒』」)。
▽HFCのメンバーをボーリングに招待したりしたが…
・トランプ大統領は保守強硬派や立場を決めていない議員を懐柔するため、「代替法案に賛成するか、さもなくば(2018年秋の)中間選挙で落選するか」という脅しに近い圧力をかけた。同時に、HFCのメンバーをボーリングに招待したり、賛否未定の議員をエアフォースワンに同乗させたり、執務室で記念写真を撮ったり、硬軟織り交ぜて説得に当たった。だが、結果はご存じの通りである。
・大統領令を連発するなど就任直後は活発に動いた感のあるトランプ政権だが、その後は側近の辞任やロシアを巡る疑惑など足元はふらついている。肝心の政策も、イスラム圏からの入国制限を企図した大統領令は連邦裁判所によって二度にわたり差し止め命令が出された。各省庁の政治任命スタッフは指名さえされていないケースが大半で、「政権の体をなしていない」という声も漏れる。今回の挫折は混乱が続く政権には大打撃だろう。
・さらに、オバマケア撤廃の頓挫によって、今後予定される抜本的な税制改正にも暗雲が垂れ込める。 下院共和党はオバマケアの撤廃・置き換えを完了させた後、税制改正に取り組む意向を示しており、代替法案の撤回によって税制改正の時期が繰り上がった格好だ。もっとも、下院共和党指導部はオバマケアの撤廃で削減される公的支出を法人税減税や個人所得税引き下げの原資に考えていた。これまで財政タカ派は税収中立を訴えており、大規模減税を実現するには別の財源を見つけなければならない(一方で「完全な税収中立は求めない」という声も上がり始めた)。
▽「税制改正」はトランプ大統領に可能か
・財源確保のウルトラCとして下院共和党指導部は「国境調整」の導入も視野に入れるが、こちらも大きな影響を受ける小売業界やエネルギー業界の反対が強く、共和党の上院議員を中心に反対の声が広がっている(国境調整とは:参考 2017年2月7日配信記事 「トランプ政権は言われるほどひどくない」)。10年間で1兆ドルとささやかれる国境調整の税収がなければ、トランプ大統領の提唱する法人税15%はともかく、ライアン議長の20%も難しいが、議会の批判もあり、導入の可能性は低いという声が大半だ。
・「ヘルスケアはとても複雑なイシューだが、ある意味で税制改正はオバマケアよりもシンプルだ」。ムニューシン財務長官はこう述べるが、オバマケアの顛末をみていると、再びHFCが抵抗勢力になる可能性は否定できない。
・今回の税制改正では税率の引き下げだけでなく、ワールドワイド課税(米国外で稼いだ利益を配当で持ち帰る際に課税される制度)の見直しなど、1986年のレーガン改正以来の大規模な税制改正になることが期待されている。だが、カオスの中で政治資本を浪費しているトランプ大統領に、そして凄腕のディールメーカーとしての看板が色あせつつあるトランプ大統領に可能なのか。懐疑の目が向けられている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/012700108/032700018/?P=1

第三に、3月30日付け日経ビジネスオンラインに掲載されたジャーナリストの池上彰氏と手嶋龍一氏の対談「池上×手嶋対談「FBIと大統領の喧嘩」の悪夢 ジャーナリスト2人がインテリジェンスを語る(前編)」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は段落)。
・プーチン政権下で帝国化を目論むロシアと、トランプ政権で好戦的な姿勢を強めるアメリカの対立は、ますます複雑、深刻になっています。その背後には海洋大国を目指す中国の存在があり、朝鮮半島では北朝鮮の挑発ぶりがエスカレートしています。緊張が高まるなか、大国に挟まれる日本が、とるべき外交戦略は何か? 手嶋龍一さんと池上彰さん、情報に通じた当代のジャーナリスト二人は、何を語るでしょうか。(文中敬称略)
・池上:手嶋さんは最近、『汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 インテリジェンス綺人伝』を執筆されました。さすがインテリジェンスワールドを書かせたら右に出る者がいない、と言われるだけあって、大変面白く読みました。手嶋さんはNHK時代の同僚でもあるし、「インテリジェンスのいま」について、ぜひ一度語っておきたかった。いま、ちょうど、アメリカではトランプ大統領が、FBI(米連邦捜査局)やCIA(米中央情報局)ら、自分の国の情報機関と喧嘩していますよね。手嶋さんは、あれをどう見ているか、最初に聞いておきたいのですが。
・手嶋:情報の世界は二重底、三重底になっています。トランプ政権の問題を見ていく前に、まず米大統領と情報機関の関係を知っておく必要があるのですが、それを簡潔に、明晰に説明するのがなんとも難しいのです。
――そもそも、「トランプ大統領とFBI、CIAとの喧嘩」とは、どのようなものなのでしょうか。
・池上:トランプとFBIとの喧嘩の発端は、昨年の米大統領選挙において、ロシアが民主党、共和党双方のメールシステムをハッキングしたことにあります。 それによって、ロシアは両陣営の候補にとって不利な情報を握ったわけですが、アメリカの大統領選では、民主党候補だったヒラリー・クリントン陣営に不利な内容だけを拡散した。そうやってトランプ当選に恩を売りつつ、トランプが当選した後は、トランプに不利な内容を使って、アメリカの新しい大統領に圧力をかける意図だった、とされています。
+「ワシントン・ポスト」や「ニューヨーク・タイムズ」といった、アメリカの有力紙が報じたことから、問題が表面に浮上しましたが、トランプは「フェイク(嘘)ニュースだ」と、いつものように激怒のツイートを発しました。ところが、3月20日の米下院情報特別委員会では、FBIのコミー長官が、トランプ陣営とロシアとの疑惑について、捜査を進めていることを認めてしまった。
――それは異例なのですか。
・池上:はい。アメリカのインテリジェンスを司る一角、FBIの長官が、公に、自らの国のリーダーである大統領の疑惑を語る。これは大変異例な展開といっていい。
・手嶋:いまさら池上さんを持ち上げる必要はないのですが、池上さんの説明は正確です。昔から、込み入った事態を前にすればするほど、明晰に解説しないではいられないジャーナリストでしたね(笑)。今日の対談も冒頭から本領発揮です。
・池上:いやいや、なんですか、それは。褒めてもらっている気がしませんが。
▽「インテリジェンス」の訳語がない
・手嶋:2010年に「BP(ブリティッシュ・ペトロリアム)」が、メキシコ湾で原油の流出事故を起こした直後のことです。ふたりで環境外交に関する本を編んだのですが、ラジオでその解説を収録した際に、「手嶋さん、いまの説明には二つ傷があります」と、指摘されたことがあります。 一つ目は、「手嶋さんはBPを英国企業と言いましたが、もはや多国籍企業です」と。二つ目は「『米大統領のオーバルオフィス』なんて言っても、一般の人には分かりません。『ホワイトハウスにある大統領執務室』と表現しなければ」ということで、お叱りを受けました。解説おじさん、畏るべし(笑)。
・池上:いやいや、そうでしたっけ。
・手嶋:池上さんの指導を受けてからは、ニュースの解説をするときには、「池上さんに合格点をもらえるかな」と自問してやっています。とはいっても、解説魔王のようにはなかなかいきません。
・池上:話を本筋の「インテリジェンス」に戻しますと…。
・手嶋:はい、でも、これがやっかい。そもそも「インテリジェンス」には、適切な日本語の訳語がないのです。ということは、「インテリジェンス」という考え方が、この日本に根付いていないわけですね。
・手嶋:雑多で膨大な「情報」は、英語では「インフォメーション」。「インテリジェンス」とは、その雑多で膨大な情報の海から貴重な宝石の原石を選び抜き、分析し抜き、彫琢し抜いた、その最後のひと滴を指すのです。 このように、「インフォメーション」と「インテリジェンス」は、似て非なるものですが、日本語にしてしまうと、ともに「情報」になってしまいます。
+「インテリジェンス」とは、一国の指導者が、最後の決断を下す拠りどころになるもので、新聞情報や噂を含めた「インフォメーション」とはその重みがまったく違います。国家の舵を右にとるか、左にとるか、最後は一国のリーダーが孤独のうちに決断し、その責任を取るわけですが、その判断の拠り所となる情報こそ「インテリジェンス」です。 日本にそうした文化が根付いていなかったのは、戦後長く超大国アメリカに安易に頼ってきたことの、一つの証左なのです。
・池上:ちなみにアメリカには17ものインテリジェンス機関があるといわれています。
・手嶋:CIA、FBIが有名ですが、ほかにも電波傍受を担当するNSA(アメリカ国家安全保障局)、軍の情報部であるDIA(アメリカ国防情報局)と、様々な分野の情報機関が紡ぎ出す「インテリジェンス」が一つにまとめられ、アメリカ大統領の決断を支えてきました。
・池上:そのインテリジェンス機関の代表格、かつ、カウンター・インテリジェンス(機密の流出を阻止する)組織であるFBIのコミー長官が、アメリカ議会の下院情報特別委員会という重みのある場所で、トランプ大統領とロシアの関係について捜査していることを認めた。ということは、FBIは「トランプ大統領との対決」に本気になり始めているように見えます。
・手嶋:確かにそう見えます。アメリカの情報機関は冷戦期から、対ソ、対ロ強硬路線をとってきた伝統がありますから、不明朗な形でアメリカの政権がモスクワとつながっているとすれば、鉄槌を下したい思いは底流にはあるでしょう。
――すみません、FBIとCIAは、情報機関としてどう違うのでしょうか。
・手嶋:FBIは、アメリカ国内にスパイやテロリストが浸透してくるのを防ぐカウンター・インテリジェンス機関です。対してCIAは、海外に情報要員を配して機密情報を収集し、分析して、国家の意思決定を支えるインテリジェンス機関です。
・池上:所轄は違いますが、大統領の目となり、耳となる、という点では同じです。
▽マイケル・フリン辞任から歯車が狂いはじめた
・手嶋:その通りで、いずれも情報機関の両雄にして重要な組織です。それらを統括し、自らの決断の目となり、耳となるものを、大統領が信用しないとなったら、どうなるか。情報機関の側では、命を賭けて情報を集め、分析しなくなってしまうでしょう。
――としたら、どうなるんでしょう。
・手嶋:トランプ船長が舵を操る、アメリカという名の巨大なタンカーは、羅針盤もレーダーも故障して、機能していない。極めて危険なことになってしまいます。
・池上:そのタンカーとは、同盟国である日本も並走しているわけですから。
・手嶋:国家安全保障担当大統領補佐官のマイケル・フリンが辞任したあたりから、歯車が狂い始めましたね。彼が与えられたポストは、ホワイトハウスの側から情報機関を統括する要だったのですが。
・池上:トランプ政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任する前に、駐米ロシア大使と電話でやりとりをしていたことが、メディアにリークされて、フリンは就任早々に辞任という、ばたばたの結果になりました。
――メディアに機密情報をリークしたのは誰なんですか。
・池上:普通に考えればFBIでしょうね。FBIが駐米ロシア大使の電話を盗聴しているということは、これはいわば公然の秘密ですから。 しかし、いくら公然の秘密とはいえ、ロシアに対して「オレたちはお前のところの電話を盗聴しているぜ」と暴露するような振る舞いは、建前としてやってはいけないことです。
+ところが今回、彼らはその禁忌を破り、明らかに盗聴していることを認める形で、フリンとロシアとの接触をメディアにリークした。ということは、トランプをそこまで危険視する人たちが、大統領の目と耳である機関の中にいることを意味しています。
・手嶋:アメリカ政府の情報機関が関与していたことは間違いありません。フリンといえば、昨年の11月18日に、安倍晋三首相がニューヨークのトランプタワーにトランプを訪ねました。この日にトランプ次期大統領は、大統領補佐官にフリンを起用し、「我がホワイトハウスの外交・安全保障はこの人が取り仕切る」と、安倍首相に紹介しました。
・池上:このときは当然、トランプはまだ大統領に就任していません。これも建前になりますが、次期大統領が政権の座に就く前に、外交、安全保障に触るやり取りをすることは、これまでになかった。あり得ない行為です。
・手嶋:ええ、あくまで建前ですが、そのとおりです。アメリカの情報機関は、電話やメールの傍受に手を染めていることは公然の秘密でしたが、その情報をプレスにリークするなど、ぼくらもほとんど聞いたことがない。まさしく異例の事態です。
・池上:あきらかに政権中枢に、「トランプが大統領では大変なことになる」と思っている人たちがいるということですよね。だいたい、トランプは大統領選挙の最中に、ヒラリーの私用メール問題でFBIの対応を相当、攻撃しています。ツイッターでFBIのことを、あれだけあしざまに言っていたら、自分がいざ大統領になったとき、内部からの信頼を得るのは難しくなります。
+それなのに当選後も、ホワイトハウスの重要な日課であるインテリジェンスのブリーフィングを、「そんなのは時間のムダだから、週に一度か二度でいい」と切り捨てた。あれでは大統領に対する忠誠心、モラルは落ちますよね。
▽前大統領オバマの「罪と罰」
・手嶋:そう、落ちてしまいます。そして国家を率いていく目と耳を自ら閉ざしていると言わざるをえません。その一方で、ぼくはトランプ当選を、なす術もなく見ていたオバマ大統領の犯した「罪と罰」はもっと問題にされてもいいと思います。
――「オバマの罪と罰」とは、どういうことなのでしょうか。
・手嶋:すべては選挙期間中から始まっていました。ロシアのGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)がサイバースペースを通じて、選挙戦最中に民主党と共和党の中核にまで侵入していた。これはまぎれもない事実です。オバマ大統領は選挙期間中も毎日、インテリジェンスのブリーフィングを受けていたのですから、当然、ロシア関連の情報も受け取っていました。ならば、神聖であるべきアメリカの大統領選挙に、外国の情報機関が介入し、トランプ陣営を援護していることを、なぜ明らかにしなかったのでしょう。この件は、選挙の公正などという建前にこだわった、オバマ大統領という杓子定規な秀才の限界を露わにしてしまいました。
・池上:トランプが次期大統領に決まった後にオバマは、ロシアのハッキングが大統領選の結果に影響を与えたと問題視して、国家情報長官に調査報告の取りまとめを命じましたよね。
・手嶋:オバマは17年1月に25枚のペーパーを発表させました。ところが、この報告書には、大統領選で実際にロシアの介入があったエビデンス(証拠)が示されていないのです。「ロシアには先進的なサイバー攻撃体制がある」「ロシアはアメリカ政府、軍、外交など各方面で脅威となるサイバー空間の行為主体になっている」といった表現にとどまっています。
・池上:それらは、当たり前のことですよね。
・手嶋:ロシアのプーチン大統領の指示のもとでハッキングをしたと指摘するなら、その証拠を挙げなければいけないのに、「プーチンの指示と“思われる”」という自信なげな書きぶりです。
・池上:記者が自信のないときに、よく「逃げ」で使う手ですが、それですね(笑)。
・手嶋:情報世界では簡単に証拠を挙げるわけにはいかないのです。証拠を明示すれば、どんな手段で情報を集めているか、情報源を危険にさらしてしまう側面もある。そこも分かった上で、プーチン大統領のような情報のプロから見ると「ふん、しゃらくさい」と無視して終わりでしょう。
・池上:プーチンにとっては痛手でも何でもなく終わった。
・手嶋:アメリカという国が、とにもかくにも民主主義のリーダーとして国際社会に認められてきたのは、大統領が公正で開かれた民主的な選挙で選ばれてきたからです。その神聖であるべき選挙に、ロシアの情報機関が介入したのですから、オバマは証拠を挙げて、ロシア側を批判すべきでした。しかし彼は、選挙期間中にその決断ができなかった
――オバマ大統領はいずれ歴史の審判を受けざるを得ないでしょう。
・池上:ロシアにしてやられ続けた、という経緯も含めて、アメリカ政府の対ロ強硬派は、「このやろう」とロシアとトランプに恨みを溜めて、メディアにリークする。メディアが書き立てると、大統領とメディアとの関係は悪化する。そういう負のスパイラルになっています。
・手嶋:いまは北朝鮮の緊張が高まり、軍事的なオプションを検討し始めています。まさに選り抜かれたインテリジェンスが求められる時期に、アメリカ大統領と情報機関の間が険悪化している。これは危険なことと言わざるをえません。
▽トランプ氏のリップサービスの空虚さ
・池上:トランプはインテリジェンスのプロたちに敬意を示さないし、自らも意識が低くて、何かといえばツイッターで状況をダダ漏れにする。フロリダで安倍首相とゴルフをやったときに、「安倍さんから『F35(最新鋭ステルス戦闘機)を安くしてくれてありがとう』と、感謝された」なんてツィートしちゃうわけですからね。安倍さんにしたら、二人だけの話だったのに、それを垂れ流されてしまうと、日本の首相も立場がなくなりますよね。
――FBIとうまく行っていないトランプ大統領。海外を司るCIAとの関係はどうなっているのでしょうか。
・池上:CIAとトランプの間柄も大統領選から最悪でしたよ。CIAは対ロシア強硬派の拠点みたいなところですから、トランプが選挙期間中に唱えていたロシアとの融和なんて、到底受け入れがたい。CIAが、「トランプはロシアに弱みを握られている」といった情報を流すと、今度はトランプが「我々はナチスの時代にいるのか」と、また激烈にやり返す。
――それでも大統領就任の翌日には、CIAを公式訪問して、「あなたたちを100%支持する」と、リップサービスをしていましたよね。
・池上:突然CIA本部を訪ねて、入り口に幹部を集めて絶賛したのですが、それも実はハズしているんですよ。
――どうしてですか。
・池上:CIA本部の入口には、殉職した人に敬意を示す黒い星が飾ってあります。諜報機関だから名前を明かすことができないので、星で表す。一つの星が一人の殉職者なわけです。
・手嶋:「国家のために命をかけた人々の名誉とともに」といった碑文が掲げられていてね。CIAにとっては極めて重要な精神の中枢。
・池上:その殉職者たちの星を前にしながら、トランプはろくに敬意も払わないまま、「いかにして自分が大統領選で勝ったか」の自慢話をぶってしまいました。
・手嶋:小さなことと思われるかもしれません。ですが、この手の機微に敏感なことは、指導者にとって、大変に大事なのです。たとえば国賓としてアメリカに招かれた人は、アーリントン国立墓地を訪れて、そこで必ず頭(こうべ)を垂れます。そうやってアメリカの歴史に敬意を払うことが、外交の重要な儀礼なのです。
+アーリントン墓地には無名戦士の墓もありますが、居並ぶ墓標には、戦争で亡くなった兵士たちの名前がそれぞれ刻まれています。CIAの黒い星は任務上、名前が入っていないのだから、その機関の人たちはなおさら強い帰属意識を共に持っているわけです。そこに鈍感な大統領ということであれば、これはもう、怒りをもって見つめるしかないでしょう。
・池上:ですから、CIAは表敬訪問のときから、トランプに情報を出さなくなった、と言われています。これを聞いて、ぼくはウォーターゲート事件を思い出したんですけど。
・手嶋:あれも盗聴でしたね。
・池上:1972年、やはりアメリカ大統領選挙戦の最中でした。ニクソン共和党大統領の再選を目論んだ人たちが、民主党本部のあるウォーターゲートビルに盗聴器を仕掛けたのですが、盗聴器の具合が悪くて、再調整に行ったところで捕まった。当初は末端の小物によるコソ泥盗聴と思われていましたが、実は背後にはニクソンにつながる大物がいた。
+建前は別にして、インテリジェンスの世界では、盗聴はよくあることです。でも、この事件は、ワシントン・ポストのウッドワードとバーンスタインという二人の記者によって、広く世の中に知られることとなり、有権者の怒りを買ったニクソンは、大統領の任期途中で辞任という前代未聞の身の引き方をせざるを得なかった。ここでもメディアと大統領の緊張関係がありますね。
・手嶋:当時、ワシントン・ポスト側に内部情報を提供した「ディープ・スロート」と呼ばれる人物が話題になりました。事件から30年以上たって、事件が「歴史」になったとき、「ディープ・スロート」は当時のFBI副長官だったマーク・フェルトだった、と本人が自ら名乗り出て、明らかになりました。
+要するに「FBIがニクソンのやり方に怒っていた」ということですが、内部情報をリークする際は、出所が絶対に分からない形でしていました。これも大統領と情報機関との関係を示す事件ですよね。
▽北朝鮮の姿勢は、アメリカのインテリジェンス不調の表れ
・池上:いま、時代とともにリークの仕方も変わってきているでしょう。
・手嶋:ジュリアン・アサンジが始めたウィキリークスと、元CIAでNSAの仕事もしていたエドワード・スノーデンの暴露、それからパナマ文書。そのいずれもが歴史を塗り変えました。とりわけウィキリークスは、告発する側にとっては極めて安全な装置です。だれがリーク者なのか、その足跡が分かった例はこれまで一つもありません。
・池上:アフガンに行った米兵士のヘリ映像を明らかにして訴追された例はありましたが。
・手嶋:ただ、あれがは「俺がやった」と、自分で自慢して仲間にチャットしてしまったのです。捜査当局がウィキリ―クスを対象に犯人を突き止めたわけではありません。
・池上:ともあれ、インテリジェンスも、まったく新しい時代に入っていることが分かります。
・手嶋:ええ。これはぼくの新刊にも書いたのですが、リークする者が安全な手法を手にして権力を告発する、というやっかいな時代に突入したことを意味します。
――トランプ大統領とアメリカの諜報機関とのぎくしゃくした関係や、テクノロジーの変化とともにある「インテリジェンスのいま」は、日本にどう作用するのですか。
・手嶋:「インテリジェンスのいま」を考えるうえで、現在の北朝鮮情勢は特に重要です。 北の指導者は、アメリカ大統領の顔色を見ながら、中長距離ミサイルの発射ボタンを押すべきか否か、息をこらしてタイミングを図っています。
・池上:その意味で、先日来の連続的なミサイル発射は、トランプ大統領とインテリジェンス機関とがちゃんと噛み合っていない、その悪影響を示す証拠、ということになります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/book/15/101989/032900023/?P=1

第一の記事で、『ティラーソン国務長官と共に降り立った同行記者は、たったの一人だけ』、しかも、それはティラーソンの指示だったらしい。 『ティラーソン国務長官は・・・尹炳世外相主催の夕食会をキャンセル』、した問題はどちらに落ち度があったのかは不明だが、どうも次期大統領選挙を控えた韓国側なのではなかろうか。北朝鮮問題については、『第一ステップは、国連安保理による制裁で、もっと広範にやっていく』、ということは武力行使はその結果を見てからということになったようだ。 それにしても、『存在の耐えられない軽さ』、とはずいぶん厳しい評価だ。
第二の記事で、『「ディール・メーカー」としての能力に疑問符』、というのはその通りだろう。3月20日のブログで紹介した『オバマケアの「毒」』が回ったということだろう。シリアへの電撃的な空爆も、人気回復の狙いもあるに違いない。
第三の記事で 『トランプ大統領が、FBI(米連邦捜査局)やCIA(米中央情報局)ら、自分の国の情報機関と喧嘩しています』、についての解説は、なるほどと納得させられた。手島氏は、『オバマ大統領は選挙期間中も毎日、インテリジェンスのブリーフィングを受けていたのですから、当然、ロシア関連の情報も受け取っていました。ならば、神聖であるべきアメリカの大統領選挙に、外国の情報機関が介入し、トランプ陣営を援護していることを、なぜ明らかにしなかったのでしょう。この件は、選挙の公正などという建前にこだわった、オバマ大統領という杓子定規な秀才の限界を露わにしてしまいました』、と批判しているが、私には、この記事では取上げてないが、FBI長官が投票日前になって、クリントン候補にメール問題で新たな疑惑が出てきたと発表、その後、それを取り下げた問題の方が重大な選挙妨害として深刻であるように思う。いずれにしても、トランプ大統領も、いつまでも情報機関と喧嘩している訳にはいかない筈だ。どういう形で、関係正常化を図るのか、注視していきたい。なお、この対談の続きは、「森友事件と南スーダンとの共通項 ジャーナリスト2人がインテリジェンスを語る(後編)」(3月31日)で、テーマが違うので、今回は取上げなかった。
タグ:日経ビジネスオンライン 現代ビジネス 存在の耐えられない軽さ 手嶋 トランプ新大統領誕生 近藤 大介 (その14)米中首脳会談の前まで(ティラーソン国務長官の外交力は小学生レベルかも、身内に通じなかったトランプ流交渉術 立法府での第一ラウンドで完敗、「FBIと大統領の喧嘩」の悪夢) 米・ティラーソン国務長官の外交力は小学生レベルかもしれない ティラーソン国務長官のアメリカメディアの同行記者が、たった一人しかいなかったことだった インディペンデント・ジャーナル・レビュー』というあまり聞き覚えのない保守系インターネット・メディアのエリン・マクパイクという若い女性記者 ティラーソン氏が記者に語ったこと ティラーソン国務長官はあろうことか、尹炳世外相主催の夕食会をキャンセル :「韓国側はわれわれをディナーに招待していはいなかった。だがギリギリになって、それでは対面が立たないことに気づき、私の疲労のせいにして発表したのだ 第一ステップは、国連安保理による制裁で、もっと広範にやっていく。それは北朝鮮の恫喝外交を助長するためではなくて、彼らの道を変えさせるためだ もしそれでも彼らが核とミサイル開発を続けるなら、われわれは誰も望まない方向に向いていくだろう。そうしたアクションによって彼らの考えを変えさせていくしかない。それはいまよりもかなり危険な状態になる トランプ大統領以上に、小学生のような言い回しばかりが目につく 自信がないから、大のマスコミ嫌いなのだろう 国務省という組織を、予算削減に合わせてダウンサイジングしていく総務型、庶務型の国務長官に思える アジア太平洋担当国務次官補だったダニエル・ラッセル氏が、突然、国務省を去っていったことだ 中国としては、このような「素人国務長官」を任命するようなトランプ政権との本格交渉は、急ぐ必要がないと判断したことも考えられる 身内に通じなかったトランプ流交渉術 立法府での第一ラウンドで完敗、次ラウンドは税制改正 「ディール・メーカー」としての能力に疑問符 トランプ政権の命運を左右する「下院フリーダム議連」 トランプケアは「撤廃とはほど遠い内容」 共和党の穏健派は無保険者の増大を懸念 「税制改正」はトランプ大統領に可能か 池上×手嶋対談「FBIと大統領の喧嘩」の悪夢 ジャーナリスト2人がインテリジェンスを語る(前編) 汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 インテリジェンス綺人伝 トランプ大統領とFBI、CIAとの喧嘩 ロシアが民主党、共和党双方のメールシステムをハッキング ロシアは両陣営の候補にとって不利な情報を握ったわけですが、アメリカの大統領選では、民主党候補だったヒラリー・クリントン陣営に不利な内容だけを拡散した。そうやってトランプ当選に恩を売りつつ、トランプが当選した後は、トランプに不利な内容を使って、アメリカの新しい大統領に圧力をかける意図だった トランプは「フェイク(嘘)ニュースだ」と、いつものように激怒のツイートを発しました FBIのコミー長官が、トランプ陣営とロシアとの疑惑について、捜査を進めていることを認めてしまった FBIの長官が、公に、自らの国のリーダーである大統領の疑惑を語る。これは大変異例な展開 「インテリジェンス」の訳語がない 、「インテリジェンス」という考え方が、この日本に根付いていないわけですね 日本にそうした文化が根付いていなかったのは、戦後長く超大国アメリカに安易に頼ってきたことの、一つの証左なのです アメリカには17ものインテリジェンス機関があるといわれています FBIは「トランプ大統領との対決」に本気になり始めているように見えます アメリカの情報機関は冷戦期から、対ソ、対ロ強硬路線をとってきた伝統がありますから、不明朗な形でアメリカの政権がモスクワとつながっているとすれば、鉄槌を下したい思いは底流にはあるでしょう。 マイケル・フリン辞任から歯車が狂いはじめた 彼らはその禁忌を破り、明らかに盗聴していることを認める形で、フリンとロシアとの接触をメディアにリークした。ということは、トランプをそこまで危険視する人たちが、大統領の目と耳である機関の中にいることを意味しています あきらかに政権中枢に、「トランプが大統領では大変なことになる」と思っている人たちがいるということですよね。だいたい、トランプは大統領選挙の最中に、ヒラリーの私用メール問題でFBIの対応を相当、攻撃しています。ツイッターでFBIのことを、あれだけあしざまに言っていたら、自分がいざ大統領になったとき、内部からの信頼を得るのは難しくなります ホワイトハウスの重要な日課であるインテリジェンスのブリーフィングを、「そんなのは時間のムダだから、週に一度か二度でいい」と切り捨てた。あれでは大統領に対する忠誠心、モラルは落ちますよね 前大統領オバマの「罪と罰」 オバマ大統領は選挙期間中も毎日、インテリジェンスのブリーフィングを受けていたのですから、当然、ロシア関連の情報も受け取っていました。ならば、神聖であるべきアメリカの大統領選挙に、外国の情報機関が介入し、トランプ陣営を援護していることを、なぜ明らかにしなかったのでしょう 選挙の公正などという建前にこだわった、オバマ大統領という杓子定規な秀才の限界を露わにしてしまいました アメリカという国が、とにもかくにも民主主義のリーダーとして国際社会に認められてきたのは、大統領が公正で開かれた民主的な選挙で選ばれてきたからです。その神聖であるべき選挙に、ロシアの情報機関が介入したのですから、オバマは証拠を挙げて、ロシア側を批判すべきでした CIAとトランプの間柄も大統領選から最悪 CIAは対ロシア強硬派の拠点みたいなところですから、トランプが選挙期間中に唱えていたロシアとの融和なんて、到底受け入れがたい。CIAが、「トランプはロシアに弱みを握られている」といった情報を流すと、今度はトランプが「我々はナチスの時代にいるのか」と、また激烈にやり返す 北朝鮮の姿勢は、アメリカのインテリジェンス不調の表れ
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