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航空会社(ユナイテッド航空乗客ひきずり事件)(「乗客流血事件」が物語る航空業界の死角、衝撃の映像に潜む真の問題) [社会]

今日は、航空会社(ユナイテッド航空乗客ひきずり事件)(「乗客流血事件」が物語る航空業界の死角、衝撃の映像に潜む真の問題) を取上げよう。

先ずは、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が4月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ユナイテッド「乗客流血事件」が物語る航空業界の死角」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽ユナイテッド航空「乗客流血事件」を招いた、信じがたい3つのミス
・今週、世界を一番騒がせたビジネス関連のニュースは、ユナイテッド航空の乗客が血まみれで機内から引きずりだされた事件だろう。この記事を書いている時点では、まだ情報は限られていて細部はわかっていない。一方で、航空業界のコンサルティングを多く経験した立場からニュース以上にわかる部分もある。今回はその「わかる部分」を解説しよう。
・この事件は3つのミスが重なって大事件になってしまった。結果はとにかくひどいものだった。 シカゴ発ルイビル行きのユナイテッド航空3411便は、乗客を一旦機内に案内し満席になった後で、さらに4人の従業員を乗せなければいけないことが判明した。これが第一のミス。 航空機で乗れる人数よりも多くの予約をとってしまうオーバーブッキングは頻繁に起きるが、通常は搭乗前に振り替えの処理をするので大きな騒ぎは起きない。乗客が乗り込んでしまった後の満席のフライトで、さらに4人の乗員を後から乗せなければならないことに気づいたというのは、明らかなオペレーションミスだ。
・第二のミスは、降りてもらう乗客を募集するにあたって通常の手続きを踏まなかったと言われていることだ。代わりの便に乗ってもらうために、通常は400ドルのクーポンから始めて、誰も応じなければ金額を上げて800ドル、その次は1350ドル(約15万円)まで補償金を上げて自主的に降りてくれる乗客を探す。ところが現場のマネジャーは、なぜか途中の段階までしか金額を上げず、申し出る乗客がいなかったため抽選で降りる客を決めるとアナウンスした。
・これは経験則だが、インセンティブを上限まで上げていれば、他の乗客が降りると申し出る可能性は十分あったと思う。逆に降りるのを拒否したのは、翌日に診療を控えていた医師だった。どのような勤務事情かは現時点ではわからないが、仮にその人が開業医で、月曜日の診察だけで2000ドルの仕事が予定されていたのであれば、飛行機を降りると損害の方が大きい。なぜ中途半端な補償金に止めて逸失利益の大きい人を降ろそうとしたのか。現場のマネジャーが通常の手順を踏んでいたとは思えない。
・そして第三のミスだが、話がつかなかったため、治安当局を呼び入れた際に不適格な担当者が混じっていたことだ。治安当局はユナイテッド航空の職員ではなく、空港の警察官である。シカゴは全米有数の犯罪都市であり、当局には手荒な担当官が少なくない。 担当官はユナイテッド航空の株価などには関心がないので、黙々と乗客を排除しようとしたようだ。目撃者によれば、3人いた保安員のうちの2人は穏やかに対応をしていたが、残る1人の職員は最初からけんか腰で、暴力的に顧客を排除した結果注意を受け、現在は休職処分を受けている。
・こうして起きた惨事により、血まみれになって通路を引きずり出されていく乗客の映像は、瞬く間にSNSを通じて世界を駆け巡った。この段階で不祥事としてアウトなのだが、ユナイテッド航空のオスカー・ムニョスCEOが第四のミスを犯す。 従業員宛てのメールで、「従業員は規定通りの対応をした」と伝えた上で乗客が抵抗したことで問題を増幅させたと書いたのだ。従業員宛てのメールはそのまま地元メディアの知るところとなり、このことも瞬く間に世界に向けて報道された。
▽15万円をしぶったために株主に与えた1100億円もの損失
・騒ぎはさらに大きくなり、全米の消費者が「ユナイテッド航空には乗りたくない」という反応を示し、ユナイテッドの株価は翌日最大で1100億円も下がった。これは株主が今回の事件で被った直接の被害額である。  経験則で言えば、今回の被害者への賠償金も安くて数千万円、高ければ1億円前後はかかることになるだろう。売上の減少はおそらく数百億円以上の規模。株主から見れば、最初から15万円の補償金で降りてくれる人を探してくれていれば起きなかった大損害である。
・では、なぜこんなことが起きてしまうのか。これも「細部の情報はわからない段階での話」という断りをした上で、航空業界の状況からそれが起きてしまうメカニズムについて要点を挙げてみたい。 まず現場サイドの問題だが、とにかく極限まで乗客を詰め込むことが航空産業の常態になっている。30年前なら航空機の搭乗率は70%が平均だったところが、現在はほぼどの便も満席で運行されている。
・これはITの進化の成果なのだが、ダイナミックプライシング(動的価格設定)という仕組みで、要するに空席が出ないようにインターネットなどで航空券の投げ売りをする仕組みが進化した結果、最後の席まできちんと埋まるようになってきたのだ。その予約数はキャンセル分を予めAIで予測して、空港で空席待ちをしている人たちを最後に詰め込むことで、最終的な辻褄を合わせている。
・このような実情があるから、搭乗ゲートでは昔と違い、常にオーバーブッキングをさばかなければいけない状況になっている。今回のような問題が起きる確率は、以前よりもずっと高まっているのだ。
▽ITの進化で飛行機は常にオーバーブッキング
・今回の報道の中で、抽選で降りる人を選んだにもかかわらず「降りる人が全員アジア人だった」ことが差別ではないかという指摘もあった。 たぶん、この推測は少し実態とは違っている。抽選で降りる人を選ぶ場合、安い航空券を持っている人の中から選ぶのだ。航空券はファースト、ビジネス、エコノミーの3種類しかないと我々は思いがちだが、価格や利用条件の違いで(航空会社によって異なるが)、実は全部で23種類くらいの航空券がある。
・その中で降りる抽選に当たる確率が多いのは、安い航空券を買った人が中心になる。昔で言えば、このような場合、所得が低い層が選ばれることになった。そう考えると、黒人やヒスパニック、アジア人が選ばれる確率が高くなるのは当然だったのだが、最近は少し事情が違う。 ネットやスマホの普及で、最近では富裕層も格安な航空券を発見して購入するようになってきた。だから今回のように、医師が抽選で当たってしまい、目的地に到着できなかった場合の逸失利益が大きすぎて、降機に抵抗するというような事態が起きる。安い航空券を持っていた人が電話で弁護士に連絡をとろうとするような事態は、航空会社がマニュアルをつくった際には想定していなかったのかもしれない。
・おそらく抽選でアジア人に差別があったのではなく、我々アジア人は、他のおっとりしたアメリカ市民よりも経済的な航空券を見つけるのが上手だという傾向があるからというのが、今回の事態の背景にあるのだと私は思う。
・さて、一歩引いてみると、会社のあらゆる現場では、以前よりもはるかに収益向上のプレッシャーが大きい。より少ない人数でより機械的に乗客をさばいていかないと、航空会社の経営は成り立たない。結果、現場のマネジャーに対する収益プレッシャーも、以前より強まっている。 真相はこれから解明されていくと思われるが、ユナイテッド航空が乗客を4人下ろしてまで従業員4人をルイビルに送らなければならなかった背景には、おそらくオペレーションコスト上の理由があったはずだ。
・降りる乗客に対する補償金が少なかったのも、現場のマネジャーがそうしたかった何らかの理由があるに違いない。そして大概のケースでは、その理由は経営者や責任者が現場に利益を出すように求めた何らかの通達や指示が根拠になっている場合が多いはずだ。
▽CEOが従業員を向かざるを得ない ユナイテッドの複雑な社内事情
・最後に、CEOはなぜ従業員の側を向いたメールを送ってしまったのか。ユナイテッド航空の取締役会では、昨年株主との間で内紛が起きている。現CEOはユナイテッドと合併したコンチネンタル航空出身だが、合併会社の中での微妙な政治的バランスの中で、リーダーシップをとるのに苦慮していることが推察される。  中でも、旧ユナイテッド航空側の組織を経営するのは難しいはずだ。ユナイテッド航空は1990年代に経営破綻をして従業員が会社を買い取るという前例のない形での経営再建が行われた。この形態は2000年までに完了したのだが、その当時から経営が顧客ではなく従業員を向いていることの問題が指摘されていた。 
・事件が起きた直後でまだ情報が少ない段階で、CEOが従業員に向けて、「従業員の皆さんが適切な対応をしていることを理解している」といった内容のメールを拙速に送るという状況を見るにつけ、CEOの地位が何らかのパワーバランスの中で従業員たちの支持を期待しなければ維持できない状況なのではないのかと、勘繰らせてしまう事件だった。
・今回のミスは、治安当局の暴力を除けば、すべてユナイテッド航空が「従業員ファースト」の企業であったがゆえに発生したミスだと私は考えている。その結果起きたことは、前代未聞の事件である。そしてそれが起きる背景には、業界常識的となっている複数の問題がからみ合っているものなのである。
http://diamond.jp/articles/-/124820

次に、元キャビンアテンダント(CA)で健康社会学者の河合薫氏が4月18日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「“流血動画”とハドソン川の英雄の間に 衝撃の映像に潜む真の問題」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「この衝撃動画に潜む真の問題」について考えてみようと思う。 はい、アレです。先週、世界中を震撼させたユナイテッド航空の“オーバーブッキング事件”です。 ご存知のとおり、発端はひとりの乗客のTwitterだった。
・一瞬、何が起こっているのか理解不能な衝撃的な画像と、オーバーブッキングという一般にあまり使うことのない言葉(航空関係者にとっては日常)、マッチョな警官、流血しているアジア系の乗客、周りの悲鳴……。  これだけで、突っ込みどころ満載なのだが、実際に現場で起きていたことを細かく調べていくと、この“事件”に関わった現場の人たちが「規定どおりにやっただけだよ!」と口を尖らせている様子が目に浮かんだ。
・男性を引きずり出した係官でさえ、「なんで? 俺が悪いの? 俺は乗客を降ろせというのがミッションだったからやっただけだよ」と。「確かに、暴力をふるっていいなんて規定はないけど……。あの場ではああするしかなかったじゃん」と内心思っているかもしれないのだ。
・もちろんいかなる場合も、あの通路の引きずり方はひどいし、あんなことが許されるとは到底思えない。なので擁護する気はない。 だが、「規定」という決めごと、予測できない人の「感情」、切迫した「時間」が掛け合わさったとき、当人たちに悪意がなくても、にわかに信じ難い“事件”が起こってしまうのだ。
・改めて見直すと「うん、それは確かに規定通りかもしれないね。でも、ああ、ここで臨機応変に対応していれば……」と思う残念なことがいくつもあり、“現場力”の大切さを痛感した次第だ。
▽事態の進行を追ってみよう
・というわけで、「規定」を交えつつ、まずは「いったい何が起きたのか?」を時系列で整理します。 “事件”が起きたのは4月9日(現地時間)。シカゴのオヘア国際空港発、ケンタッキー州ルイビル行きのユナイテッド航空3411便の機内だった。 運航していたのはユナイテッド航空ではなく、提携先のリパブリック・エアウェイズ。機材もリパブリック、クルーもリパブリックの社員である。
・予定では午後5時40分に出発し、午後8時7分に到着するはずだった。ところが、トラブルが起きたことで、出発は約2時間半ほど遅れ、実際には午後8時2分に空港を発ち、目的地ルイビルには午後9時53分に着陸している。
・事件の発端は、出発直前にユナイテッド航空から入った、 「4人の乗務員が業務上の理由により、客室に搭乗(デッドヘッド)することになった」 との連絡である。 しかしながら、3411便は満席。現場は、4人を乗せるためには「乗客4人を降ろす」必要があると判断した。
・そこで「オーバーブッキング時の規定」に従って、クルーは業務を遂行する。 最初に乗客には、後のフライトに移ってもらうのと引き換えに「400ドル(約4万4000円)とその夜のホテル宿泊、翌日午後のフライト」が提示された。 が、機内の乗客が誰も手を挙げなかったので、これまた規定に従い提示額を800ドルに倍増した。……それでも誰も応じなかった。そりゃそうだ。だって既に乗っているのだ。気分はとっくに到着地に向っているのに、ここで提示を受け入れるのは、よほど時間的余裕のある人しかいないはずだ。
・そこでユナイテッド(この場合はリパブリック・エアウェイズ)のマネージャーが機内に乗り込み、 「オーバーブッキングの規定により、降りる乗客4人をユナイテッド側が選びます」 と告げたのである。 日本の報道では「ランダムにクジで選ぶ」と報道されているところもあったが、実際には異なる。
・航空会社にもよるが、私が知る限りまず最初にターゲットとなるのは「優待券」や「マイレージの利用」など、正規の料金を払っていない乗客である。ツアーなどの場合も、航空運賃はかなり低料金になってるので対象になる。複数の乗客に降りてもらう必要があるときには、ツアー客からターゲットにされることも決して珍しくない。 今回は選ばれたのが全員アジア系だったため、「中国系だから選ばれたんでしょ?」「日本人はよくターゲットにされる」との批判も起きているけど、個人的にはこの時点で人種による選別があったとするのは、少々ムリがあると感じている。 一方、優遇されるのは高額なチケットで乗っている乗客やVIP、フリークエント・フライヤー(頻繁に乗る乗客)、子ども、障害のある人などだ。
・で、ここが大きなポイントなのだが、オーバーブッキングで「降りてください」と言われた乗客は、基本的に従わなくてはならない。 また「乗務員が乗るのだからオーバーブッキングじゃないじゃん!」という批判があったが、業務上の都合で乗務員が搭乗する場合、乗客より優先することができる。優先しないと、将来の飛行のキャンセルや遅延につながる可能性があるからだ。 (こちらに米国の法律家が答えるサイトがあるのでご覧下さい→「Can Airlines Really Do That? Bumping and the Law」)。
・そもそもオーバーブッキングは決して珍しいものではなく、昨年の米航空会社の全乗客数約6億6000万人のうち、航空便を取り消された人は約50万人。強制的に取り消されたのは約4万600人。ユナイテッド航空の取り消し数が、他社と比べて特段に多いわけでもない(ワシントンポストより)。
・また「乗務員がデッドヘッドで乗るのは、事前にわかっていただろう?」との指摘もあるが、トラブルで急遽、移送が決まるのは決して珍しくない。そのために空港には必ず「何かあったときに飛べるクルー」が待機しているのだ。
▽スタッフが取り得たいくつかのオプション
・ユナイテッド航空がどのよう選別を行ったのか? デットヘッドの情報が本当に直前に入ったのかは明らかにはなっていないが、結果的に男女4人の二組のカップル(夫婦)が選ばれることになった。 そのうちの一組のカップルは即座に降機。もうひとりの女性もすぐに同意した。 一部の報道では、この女性は無理やり降ろされた男性の妻だとされている。
・問題になった男性も一旦は同意。ところが、振りかえ便が翌日の午後になると知り、同意を取り消した。 「自分は医師で、翌朝には患者の診察がある」というのが理由だった。 問題はここから、である。
・この時点でユナイテッド側のスタッフは、臨機応変に対応することが必要だった。
 パターン1:提示額を最大1350ドルまで引き上げ、任意に降りてくれる乗客を募る(この金額は、オーバーブッキング時の規定に定めらている上限)。
 パターン2:デッドヘッドの乗員を陸路で移動させる(目的地までは450キロ程)。
 パターン3:デットヘッドで乗る4名のうち3名だけを乗せ、残りの1名はコックピットの補助席に乗せる(たいてい補助席があるはず。規則で使用不可の場合もある)。
・が、それをしなかった。 ユナイテッド航空の広報担当によれば、 「他の乗客に声をかけたのかどうかは確認できていないが、800ドル以上の提示はしなかった」 とのこと。 おそらく既に「3名」が800ドルで降りているので、この時点で提示額を上げるのは適当ではないと判断したのだと思う。加えて、出発予定時刻が大幅に過ぎていたので、 「降機を拒否した乗客を無理やり降ろさせる権利」 という、ユナイテッド航空の運行指針で認められている権利をマネージャーはチョイスしたのだろう。
・頑なに「降りない」という男性に、マネージャーは「降りなければ治安当局を呼ぶ」と告げた。そこであのマッチョな航空治安当局の係官2人が乗り込んできたというわけ。 その後の男性と係官のやりとりについては、最初の動画が公開された3日後の13日に映像が公開されている。
・座席に座っている男性が、シカゴ警察か弁護士(どちらかわからない)に電話。 男性は「自分の名前と航空会社の要請に答えられない理由(診察があること)」を告げ、電話を切る。 係官が「あなたを降ろさなくてはならない」と告げるも、 男性は「自分は降りない。今夜中に戻らなければならない」と反論。 すると係官が「あなたを引きずり降ろさなくてはならない」と言うと、男性は “Then drag me down.I am staying right here. I’d rather go to jail.” (だったらそうすればいい。私は絶対に降りない。いっそのこと牢屋にいったほうがましだ) こう反論したのだ。
▽すべてユナイテッド航空が悪いのか?
・動画を見る限り、ここでのやり取りは男性も係官も極めて冷静で、あのような暴力的行為にどうしてつながったのか疑問だ。 しかしながら、その後は動画に映っているとおりの衝撃的な顛末にいたってしまったのである。 係官は窓側の席から叫び声を上げる男性を無理やり引っ張り出し、飛行機の前方に向かって通路を引きずっていった。口から流血しているのは、係官が座席から引きずり出す際にアームレストにぶつけたのが原因だとされている。 その数分後、男性は機内に走って戻ってきて  “I have to go home. I have to go home” と動転した様子で、機内の最後尾でつぶやきつづけている動画も公開された。
・以上が現時点で明らかになっている経緯である。 動画が公開されてから、 「こんな暴力は許されない!」 「ユナイテッドには乗るな!」 「人種差別だろ!」etc… と、様々な怒りがネット上に渦巻いた。そりゃあ、あの衝撃動画を見れば、誰だってそう言いたくなる。
・この炎上に油を注いだのがムニョス。1年半前にユナイテッド航空CEOに就任し、3月に「傑出したコミュニケーション能力を示した人物」(広報業界誌PRWeek)に選ばれてたオスカー・ムニョス氏である。 ムニョス氏は事件直後、全従業員にこの際の対応を賞賛する内容のメールを送付。男性への謝罪もいっさいなかったことから、さらに“火”は燃え広がった。
・投資家が株式を投げ売り、引きずり降ろされた男性が中国・ベトナム系だったことから「人種差別」との批判も相次ぎ、結果的にムニョス氏は再び謝罪する事態に追い込まれる。そして、乗客対応の手順と方針の社内の見直しを今月末までに行うことを明らかにした。
・日本では炎上は収まったようだが、現地アメリカでは今だに鎮火する兆しはない。大手メディアは毎日のように「ムニョス」ニュースを流している。ちょっと前までの「籠池氏」のように……だ。  ふむ……。なんというか、動画の破壊力って恐いなと。もし、あの動画がなければここまで騒ぎは大きくならなかったように思う。だが、その一方で動画があったことで、オーバーブッキングという決してめずらしくない事態に潜む問題点も浮き彫りになった。
・例えば、今回のように「搭乗が終ったあと」にオーバーブッキングが分かったときの具体的な排除についての規定は、現在は存在しない。滅多に起こることではないけど、なんらかのルールはあってもいいように思う。 が、その一方で「すべての可能性」を記した規定を作るなんてムリ。うん、ムリだ。 そこで試されるのは“現場の力”。 その現場力が、クルーにもマネージャーにも、そして、係官にも足りなかった。
・従業員の対応は、規定上は正しかった。だからこそ経営者のムニョス氏も、当初は謝罪ではなく、彼らを称賛したのだ。 だがルールブックに明記されていない“最悪のリアル”が重なったとき、首尾よく事態を解決できる手段は、現場にいる人間の「規定に書かれていることを超えた」対応しかないのである。
▽逸脱を叩きすぎると対応力が失われる
・自分の昔話をひとつ。 私は新人のCAのときエコノミークラスの乗客から「ビジネスにアップグレードしてくれ」と言われ、規定に従い断った。 するとその客が「だったらビジネスのおつまみくらいもってこいよ」と言うので、それも規定に従い断った。 そしたら「キミ、わかってる? 俺は添乗員なんだよ。何度も何度も乗ってる添乗員」と言われ、「申し訳ございません」と私は謝るしかできなかった。だって、「機内でのアップグレードは禁止」されていたし、「添乗員だったら特別扱いしていい」なんて規定はどこにもない。だからただただ「申し訳ございません」と断る以外なかったのだ。
・ところが添乗員は逆上し、機内に響き渡る声で私に罵声を浴びせた。 「まともにサービスもできずに偉そうなこと言ってんじゃないよ。謝ることしかできないのか! だから全日空はダメなんだよ! 最低だな!」  あまりの突然の出来事にビックリした22歳の私はその場で号泣(無論、客に怒鳴られたら泣いてイイなんて規定はありません)。あわてて飛んできた先輩CAが対応し、その客はそのままエコノミーの座席でおとなしく過ごし、なんと驚くことに満面の笑みで降りていったのだ。
・先輩はフライトのあと、 断ったのは正しい。でも、どんなことがあってもお客の前で泣くな!」と怒っただけで、どういう風に対処すべきだったかは教えてくれなかった。 しかしながら、自分が経験を積むうちに私に足りなかったのは「話を聞くことだった」と痛感した。断るにしてももっと相手の話を聞き、もっと相手に寄り添った会話を通して説得できていれば、乗客が怒声を機内で張り上げるような事態は防げた、と今は感じている。
・もちろん「現場力=会話力」ではない。会話力は現場の人間が発揮できる力のひとつであり、現場力とは、咄嗟に「何をすべきか? 何を優先すべきか?」を判断できる能力のこと。経験が現場力に繋がることもあれば、失敗から学ぶこともある。 皮肉にもさまざまなルールが明確化され、ルールからちょっとでも逸脱すると叩かれる風潮が、本来身につけなきゃならない“現場力”を低下させているのでは?と思ったりもする。
▽惨事を回避し、奇跡を起こすのは
・ハドソン川の奇跡(Miracle on the Hudson)―― 。 2009年1月15日に、米ニューヨーク・ラガーディア空港離陸直後、突如両エンジントラブルに襲われ墜落の危機にあった飛行機を、ハドソン川に着水させた後、155名の命を救ったUSエアウェイズ1549便機長チェズレイ・サレンバーガー氏。 彼は「ハドソン川の英雄」と称えられたのに、一夜にして容疑者になった。 サレンバーガー機長の突然の対応が、同社の規定どおりの手順に従わず不時着したことが、「155名の乗客の命を危機にさらした」と問題視されたのだ。
・映画も公開され、DVDも出ているので見ていただければわかるけど、機長の無実を証明したのは機長自身だった。機長が常日頃から「乗客の命を守る」ことを忘れないで働いていたからこそ、「規定」より「自分の判断」を信じ、彼は真の「英雄」になったのである。
・結局のところ、現場力とは「自分はここに何のためにいるのか?」を常に考えながら働くことで育まれる力。それは会社が考えることでも、教えてくれるものでもない。 そのことを今回の流血事件は教えてくれたのだ。
 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/041400101/?P=1

鈴木氏は、カンサルタントだけあって、企業経営の視点での指摘は面白い。ただ、記事で 『ユナイテッドの株価は翌日最大で1100億円も下がった』、で「株価」としているのは、正確には「時価総額」のことと思われる。 『ITの進化で飛行機は常にオーバーブッキング』、というのは意外な指摘だ。 『CEOが従業員を向かざるを得ない ユナイテッドの複雑な社内事情』、との指摘で、CEOの一見、非常識な発言が出てきた背景をそれなりに理解できた。
河合氏はCA出身だけあって、さすがに問題点の指摘も具体的だ。 『今回のように「搭乗が終ったあと」にオーバーブッキングが分かったときの具体的な排除についての規定は、現在は存在しない』、 『「すべての可能性」を記した規定を作るなんてムリ・・・そこで試されるのは“現場の力”』、 『ルールブックに明記されていない“最悪のリアル”が重なったとき、首尾よく事態を解決できる手段は、現場にいる人間の「規定に書かれていることを超えた」対応しかないのである』、などの指摘はその通りだろう。ムニョスCEOが、『「傑出したコミュニケーション能力を示した人物」(広報業界誌PRWeek)に選ばれてた』、というのは何とも皮肉な話だ。 それにしても、現場力はどの職場でも強く求められている永遠の課題のようだ。
タグ:「“流血動画”とハドソン川の英雄の間に 衝撃の映像に潜む真の問題 日経ビジネスオンライン 河合薫 従業員ファースト」の企業 ユナイテッド航空は1990年代に経営破綻をして従業員が会社を買い取るという前例のない形での経営再建が行われた CEOが従業員を向かざるを得ない ユナイテッドの複雑な社内事情 い航空券を持っていた人が電話で弁護士に連絡をとろうとするような事態は、航空会社がマニュアルをつくった際には想定していなかったのかもしれない 予約数はキャンセル分を予めAIで予測して、空港で空席待ちをしている人たちを最後に詰め込むことで、最終的な辻褄を合わせている 搭乗ゲートでは昔と違い、常にオーバーブッキングをさばかなければいけない状況になっている ITの進化で飛行機は常にオーバーブッキング ユナイテッドの株価は翌日最大で1100億円も下がった 治安当局を呼び入れた際に不適格な担当者が混じっていたことだ 降りてもらう乗客を募集するにあたって通常の手続きを踏まなかったと言われていることだ 乗客を一旦機内に案内し満席になった後で、さらに4人の従業員を乗せなければいけないことが判明 3つのミスが重なって大事件になってしまった ユナイテッド「乗客流血事件」が物語る航空業界の死角 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博 (「乗客流血事件」が物語る航空業界の死角、衝撃の映像に潜む真の問題) 航空会社(ユナイテッド航空乗客ひきずり事件) ハドソン川の奇跡 現場力とは、咄嗟に「何をすべきか? 何を優先すべきか?」を判断できる能力のこと 逸脱を叩きすぎると対応力が失われる そこで試されるのは“現場の力 で「すべての可能性」を記した規定を作るなんてムリ 今回のように「搭乗が終ったあと」にオーバーブッキングが分かったときの具体的な排除についての規定は、現在は存在しない 3月に「傑出したコミュニケーション能力を示した人物」(広報業界誌PRWeek)に選ばれてたオスカー・ムニョス氏 炎上に油を注いだのがムニョス スタッフが取り得たいくつかのオプション 「オーバーブッキング時の規定」に従って、クルーは業務を遂行 この“事件”に関わった現場の人たちが「規定どおりにやっただけだよ!」と口を尖らせている様子が目に浮かんだ 空席が出ないようにインターネットなどで航空券の投げ売りをする仕組みが進化した結果、最後の席まできちんと埋まるようになってきたのだ ダイナミックプライシング 株主から見れば、最初から15万円の補償金で降りてくれる人を探してくれていれば起きなかった大損害
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