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イノベーション(技術革新)(英ダイソンの頭脳拠点、産学連携の現実) [科学技術]

今日は、イノベーション(技術革新)(英ダイソンの頭脳拠点、産学連携の現実) を取上げよう。

先ずは、昨年12月14日付け日経ビジネスオンライン「ダイソンは「課題発見力」を徹底的に鍛える 英ダイソンの頭脳拠点に潜入(前半)」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・英国の家電メーカー、ダイソン。独特の色使いとユニークな形状、高いデザイン性を評価するファンを世界中に持つ。日本での人気も高い。掃除機から始まった取り扱い製品は、空調機や照明など5種類に広がった。今年、その最新製品となるヘアドライヤーを発表した。
・業績も好調だ。2015年12月期の売上高は前期比26%増の17億ポンド(約2380億円)と過去最高を記録。営業利益に償却費を加えたEBITDAは同19%増の4億4800万ポンド(約627億円)となった。世界72カ国の市場で事業を展開しており、顧客数は6700万人を超える。
・独創的な製品は、いかにして生まれるのか。その秘密を探るため、ダイソンが開発拠点を置く英国本社を訪れた。そこで見たのは、エンジニアの創発を促す様々なシカケ。同社のユニークな職場を歩きながら、「革新を生む組織」の条件を探った。
・英ダイソンの本社があるのは、ロンドンの西に位置するブリストル市郊外のマルムズベリー。丘陵地帯にのどかな緑地が広がる、英国の伝統的な自然景観が残る町だ。ロンドン中心部からは、電車とタクシーを乗り継ぎ、2時間ほどの道程。決して立地の良い場所ではないが、受け付けロビーは早朝から取引先やダイソンの他の拠点からの訪問者でにぎわっていた。
・本社に到着し、敷地内にある駐車場から受け付けのあるビルに向かう。その途中で、ダイソンらしい光景を早速目にした。駐車場の一角に、無数の巨大な展示物が設置されているのだ。 展示しているというよりも、無造作に置かれているという方が正しい表現かもしれない。戦闘機の「ハリアー」、民間ヘリコプターの「ベル47」、自動車の「ミニ・クーパー」…。すべて模造品ではなく、実物。創業者のジェームズ・ダイソン氏の所有物だ。 いずれも、貴重なコレクション。だが、単なる趣味で置いているわけではない。それぞれの展示物には、エンジニアが守るべき「心得」のようなものが込められている。
▽展示物にはすべて意味がある
・例えば、上の写真にあるハリアー。同機は「実用垂直離着陸」を、世界で初めて実現した戦闘機だ。英国で開発された。文字通り、ほぼ垂直に離着陸できるため、滑走路を必要としない。 「ハリアーは、コンセプトの大切さを教えてくれる」 ダイソンのエンジニア、クリス・ビンセント氏はこう言う。垂直離着陸の技術が着目されたのは1950年代。当時、欧州各国で開発競争が活発化した。機体を垂直に浮き上がらせる技術として、当時、複数のアイデアがあったという。中でも、主流だったのは、垂直に浮上するための専用エンジンを搭載する案だった。しかし、専用の浮上エンジンを搭載すると機体重量が大幅に増える。これは、戦闘機の飛行速度を低下させるデメリットをもたらす。
・速度を落とすことなく、垂直離着陸をいかに実現するか。この課題に対して、ハリアーは、飛行に使うエンジンノズルを回転させるアイデアを採用した。浮上する際に、エンジンノズルの向きを90度傾け、下に向けるのだ。 この仕組みなら、浮上専用エンジンが不要となり、その分、機体の重さを維持できる。しかし、アイデアは机上の空論の域を出なかった。そこで、開発陣はエンジンノズルの回転に焦点を絞り、何度もプロトタイプ(試作機)を作っては検証を繰り返した。結果的に、コンセプトは証明され、最終的に実機の開発につながった。
・「革新的な製品には、必ず画期的なコンセプトがある。そこには、興味深いストーリーがあり、人に話さずにはいられない」とビンセント氏は言う。ハリアーは、その貴重な教材というわけだ。 他の展示物もハリアーと同様に、ダイソンのエンジニアが心得ておくべき教訓が込められている。民間ヘリコプターのベストセラーとなったベル47は、操縦席の部分がガラスの球体状になっているのが特徴だ。「透過性は、ダイソンの製品開発におけるとても大切な要素」(ビンセント氏)。
・半分に切断された状態で展示されているローバー・ミニ。コンパクトにまとめることの大切さを伝えている。「空間をムダにしない内部構造を作ることの大切さを再認識させてくれる」(ビンセント氏)。 開発にあたってエンジニアは何を大切にしなければならないか。日々の会話や研修の中で繰り返すことも大切だが、時には、目に見える形で見せることも大切。ビンセント氏らダイソンのエンジニアは、煮詰まってアイデアが出なくなると、ふらっと外に出て、こうした展示物を見ながら、忘れていた心得を思い出す。
▽本社社員の3分の1、2000人がエンジニア
・23万平方メートルの広大な敷地を持つダイソン本社で働く社員は約6000人。このうち、エンジニアは約2000人に上る。 エンジニアが作業する建物は、もともとは工場で、現在は販売を停止している洗濯機を生産していた。2002年、ダイソンは、すべての製品の生産をマレーシアに移転した。シンガポールで生産するモーターを含め、生産体制は東南アジア地域に移管している。
・一方、英国本社は製品企画や基礎研究、新規事業開拓を担う。プロジェクトの数は年々増えており、現在進行中のものは200件を超える。拠点の拡充も続けており、今年8月には新しい研究開発センターを完成させた。
・「この20年で会社は大きく変わったよ」。こう語るのは、アレックス・ノックス氏。社員が10人の頃からダイソンで働く古参社員だ。従業員数が7000人近くになった今でも、エンジニアとして忙しい毎日を送っている。「ビジネスや市場は確かに拡大したが、新しい製品を生む仕組みは昔のままさ」。ノックス氏はこう語る。 ダイソン流の革新的なモノづくりの秘密とは何か。ノックス氏が真っ先に指摘したのは、創業者であるダイソン氏の積極的な関わりだ。ダイソン氏は社内にいても、ほとんど自室にいることはなく、開発現場を歩き回っている。エンジニアに声をかけては開発状況を聞き、自分の意見をぶつける。「ジェームズも対等なエンジニアとして議論し、一緒になって開発に取り組む。昔から変わらない光景だ」(ノックス氏)。
▽「オープン」「シナジー」「スペース」
・もちろん、それだけではない。職場環境にも、エンジニアの創発を促すために工夫を施している。ポイントは3つあると言う。 第1は、空間がオープンであること。エンジニアが机を並べるオフィスは、仕切りやパーティションがない大部屋。お互いに、どこにいて、何をやっているかがひと目で分かる。「誰がどこにいるかが分かれば、すぐに目当ての人をつかまえられる」(ノックス氏)。コミュニケーションにかかる余計な障壁を取り除く効果がある。 もともと生産工場だったため、オフィスは超大部屋。ホワイトボードにはキャスターがついており、いつでも動かして、オープンな空間を作り出すことができる。
・第2は、オープンな空間の中で、チームの連携を生み出しやすい環境を作ること。具体的には、関連する製品を開発するグループは、できるだけ近い場所に席を配置する。例えば、掃除機の場合、大きく(1)デザイン、(2)製造、(3)検証――の3チームが中心となる。これらは、なるべく寄せて配置している。 この近くには、ロボット掃除機の開発部隊を置いた。関連するチームが、すぐに話し合うことができる。
・最後は、物理的な「空きスペース(隙間)」をあえてつくることだ。オフィスを見ると、至るところに、ぽっかりと空間があるのが目につく。そこで社員は立ち話をしたり、ホワイトボードを持ち込んで議論を交わしたりする。「簡単な打ち合わせやブレストをきっかけに面白いアイデアが生まれることも多い。それを誘発する場所を設けておくことが大切」(ノックス氏)。
・移動に使う通路も、エンジニアに様々なメッセージを発する場として活用する。ある壁には、「失敗の壁」と書かれ、過去のエンジニアの失敗談や失敗事例が詳細に記載されていた。失敗の壁は2つのメッセージを発しているという。一つは「失敗から学ぼう」、もう一つは「先輩もこれだけ失敗したから、失敗を恐れるな」だ。
・別の壁には、製品を分解して展示していた。入社間もない社員は、毎日この壁の前を通りながら、ダイソンの掃除機の仕組みを理解していく。こうして、ダイソンのエンジニア文化を吸収していくのだ。 こうした環境の下、エンジニアはどのようなプロセスで製品を開発するのか。 ジェームズ・ダイソン氏がエンジニアに繰り返すのは、「課題発見」の大切さだ。入社したエンジニアはまず、課題を発見することの重要性を先輩から徹底的に叩き込まれる。
▽すべては課題発見から
・「普段使っている製品やサービスに不満はないか。その問いを適切に立てることが、ダイソンのエンジニアとしての出発点」。ダイソンのニュープロダクション・イノベーション・ヘッドを務めるスティーブン・コートニー氏は言う。 問題の設定次第で、アウトプットとなる製品は全く違ったものになる。例えば、同社が2009年に発売した扇風機「Air Multiplier」を開発した時のことだ。同製品は、一般の扇風機のようなブレード(羽)を持たず、リング状の筐体にモーターで空気を巻き込み、風を発生させる。ユニークな形状は、当時、世界中の耳目を集めた。
・「当初の製品開発の問いが、『性能の優れた扇風機を開発せよ』だったら、この製品は生まれていなかった」。ダイソンのマックス・コンツCEO(最高経営責任者)は言う。「モーターの性能やデザインなどはより洗練されたものになっていたかもしれないが、ブレードがついた従来の『扇風機』の殻は破れなかった」。 この時、ダイソンは問題をこう設定した。「より快適な送風体験を得る製品とは何か」。エンジニアは、空気の流れをデザインすることから始めた。そして、飛行機のエンジンなどから着想を得て、ユニークな形が生まれた。
・ただ「従来にない製品を開発せよ」と繰り返しても、エンジニアは何を開発していいか、行き詰まってしまう。「そうではなく、革新的な製品の開発ほど、適切な課題を立てることが必要になる」とコンツCEOは言う。 もちろん、言うは易く、行うは難し、だ。問題設定が適切かどうかを、即断するのは難しい。それでも、「課題発見力」を20年以上磨き続けてきたダイソンは、過去の経験から2つのことを大切にしている。
・一つは、コミュニケーションしやすい環境をつくること。様々な人と会話することで、自分の問題意識を検証しやすくなる。先に見てきたオフィス環境は、この目的に沿って設計されている。もう一つは、自分の立てた問題の解決策をすぐに試すことができる環境を用意することだ。 例えば、ダイソンの社内には、ワークショップと呼ばれる巨大な作業場所がある。3Dプリンターや様々な工作機械が用意されており、自分の立てた問題と、それを解消する手段が適合しているのか、すぐに確認できる。
・かつて、米グーグルが就業時間の20%を個人の自由な開発プロジェクトに充ててもよいというルールを導入して話題になった。ダイソンは、明確なルールは設けていないが、「時間が許す限り、自分のアイデアを検証してもよい」(ダイソンのデザインエンジニア、オリビア・レグランド氏)。ある程度形になったアイデアを社員仲間に披露する「アイデアデー」と呼ばれる機会も定期的に設定している。
・仮に、自分の問題設定が甘かったり、アイデアが形にならなかったりしても、それらが捨てられることは決してない。「アイデアはエンジニアの記憶のライブラリーに永遠に残る。それらが何年後かに、思わぬ形で日の目を見ることも多い」と、エンジニアのビンセント氏は言う。実際に、ダイソンが開発した独自モーターは18年間、ロボット掃除機は9年間あたためられていたアイデアが形になったものだ。
・もちろん、これらの開発には相応のカネがかかる。ダイソンが開発に投じる資金は、1週間に500万ポンド(約7億円)。単純に年換算して、約360億円、売上高の15%程度に達する。最新製品のヘアドライヤー「Supersonic」には5800万ポンド(約80億円)を投じている。
・ここまでの投資が許容されるのは、ダイソンが非上場企業であり、オーナー経営であることが大きい。同社が市場に繰り出す独創的な製品を見る限り、同社の研究開発投資は、今のところ投資以上のリターンを生んでいる。
・もちろん、課題もある。事業拡大に伴い進出した新たな領域での人材確保だ。例えば、同社がいま最も力を注いでいるのは独自の電池開発。米ベンチャーのサクティー3を昨年10月に買収するなど、意欲的に開発を進めている。今年3月には、ダイソンが電気自動車(EV)ビジネスへの参入を検討しているとの報道も駆け巡った。 ただし、電池開発は、ダイソンにとって新しいビジネス領域であり、従来にないタレントの確保が求められる。同様に、今後IoT(モノのインターネット)が普及していく中で、ハードウエアだけでなく、ソフトウエアに習熟したエンジニアの数も増やしていく必要がある。
・それでも、コンツCEOは人材確保に自信を見せる。「ダイソンにはエンジニアにとって理想的な開発環境がある。優秀な人材も絶対に満足するはずだ」。実際、選りすぐりの技術者が今も世界中から同社への入社を希望しているという。
・自由闊達な雰囲気の中で、優秀なエンジニアが日々、新しい課題を考え抜いている。与えられる責任は重いが、やり甲斐と権限、それに資金の豊富さはそれ補って余りある魅力を持つ。皆が目を輝かせて開発に没頭している。開発現場を覆う雰囲気は、製造業よりも、シリコンバレーの米グーグルや米フェイスブックのキャンパスに近い。 いかに効率よく課題を解決するか。カイゼンの追求はもちろん大切だ。しかし、それと同じくらい、課題を探求する能力を養うことも大切。それを理解し、実現するための文化と環境を作り上げてきたところに、ダイソンが持つイノベーションの原動力がある。(後半に続く)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120600509/?P=1

次に、上記の続きである12月15日付け日経ビジネスオンライン「ダイソン、コンツCEOに聞く技術革新を生む組織 英ダイソンの頭脳拠点に潜入(後編)」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・(出だし省略)同社の強みである「革新を生む組織」の背景にある秘訣を、マックス・コンツCEO(最高経営責任者)に聞いた。
――ダイソンが考える「革新を生む組織」の条件とは何でしょうか?
コンツ:言葉で説明するのはなかなか難しいですが、我々が常に意識しているポイントが4つほどあります。  一つは、若い才能を積極的に組織に取り入れることです。ダイソンでは、大学を卒業したばかりの20代のエンジニアを重宝しています。彼らは、ベテランにはない、輝きに溢れたアイデアをたくさん持っています。  仕事における「経験」は確かに大切ですが、時にそれが新しいアイデアを生む邪魔になることも我々は理解しています。「今まではこのやり方でうまくやってきた」という経験は、こだわり過ぎると、イノベーションの障害になります。ですから、それを防ぐために、何の経験もないエンジニアを常に組織に混ぜる必要があると考えています。
+もちろん、経験の浅いエンジニアがただプロジェクトに参加しても、変化は起こりにくいでしょう。なので、若いエンジニアに大きな仕事を任せ、権限と責任を与えます。これが2つ目のポイントです。 創業者のジェームズ(ダイソン氏)はほぼ毎日、4~5人のエンジニアと膝をつきあわせて新製品に関わる会議に参加しています。その会議でジェームズは、全員を対等に扱います。10年以上のベテランの意見であっても否定するし、入社わずか1週間の新人のアイデアでも、興味深ければ採用します。そうやってダイソンのエンジニアは、この職場がやり甲斐のある職場だと理解していきます。 もちろん、権限と同時に責任も与えられますから、決して楽なことばかりではありません。しかし、若いうちからエンパワー(権限委譲)された社員は目の輝きが違います。どんどん仕事に没頭していきます。
+3つ目が、リスクを許容するカルチャーを醸成することです。画期的な発明は、数え切れない失敗の上に生まれることを、エンジニアに理解してもらいます。身をもって体現しているのが、ジェームズです(笑)。決して上っ面だけの言葉を繰り返しているわけではありません。 このヘアドライヤーの「Supersonic」も、300以上のプロトタイプ(試作品)を試し尽くした末に生まれました。製品を形にするために、いくつものアイデアが生まれましたが、そのほとんどは、最後まで日の目を見ませんでした。同様に、いま開発中の製品だって、すべてが形になるわけではありません。
▽生まれたアイデアは決して死なない
+しかし、我々はアイデアが不採用になっても、それを決して捨てません。「今回はたまたまタイミングがよくなかっただけ」と考え、次のタイミングまで寝かせるのです。こういった作業を、エンジニア一人ひとりが日々繰り返しています。それを20年以上続けることで、「失敗を許容する文化」が育まれてきました。だから、若いエンジニアも、難しい課題に思いっきりチャレンジします。
+最後のポイントは、あきらめずに執着する文化を育むことです。失敗を許容する一方で、失敗したあとも、自分の成し遂げたい目標を達成すべく愚直に努力し続けることを奨励しています。先に、ダイソンで生まれたアイデアは決して捨てられることはないと言いました。本当にそれは事実で、製品の中には、長い時間を経て、ようやく製品化されたものも少なくありません。
+例えば、我々のパワフルな家電製品の原動力となっている小型モーターは、自社で開発しました。これが形になるまで、18年かかりました。ロボット型掃除機のアイデアも2006年頃には形にできそうでしたが、タイミングが早すぎると判断して当時は製品化を見送りました。日の目を見たのは、それから9年経った2015年です。
+面白いのは、アイデアはデータベースで管理しているわけではなく、常にエンジニアの頭の中にしまわれている点です。それが、ある議論をきっかけに突然、“エンジニアの元に降ってくる”。だから、ダイソンは今でもエンジニア同士の議論やコミュニケーションを大切にします。
――確かに、いずれの要素もイノベーションを生む組織に不可欠な気がしますが、一方で、ダイソンだからこうした要素を実現できる、というものはありますか?
コンツ:我々がこうした経営を実現できるのは、我が社が非上場のオーナー企業であることが大きいと思います。仮に上場していれば、株主の要求に耳を傾けないといけません。革新を生む組織作りと、投資家が求める短期的な利益とがどうつながるのか、説明しなければならない場面も出てくるでしょう。より具体的に言えば、「こうした職場環境は、ムダも多く、非効率的なのではないか」と。
+しかし、イノベーションを生む組織を構築したいのであれば、どの企業も遠からず、我々と同じ答えにいきつくのではないでしょうか。それを投資家に理解してもらうことも、経営者の大きな仕事の1つだと思います。
――ダイソンのエンジニアには、課題を見つけることの重要性を繰り返しているそうですね。
コンツ:ダイソンの製品開発は、常に課題発見から出発します。エンジニアは、身の回りの製品に、決して満足してはいけないんです(笑)。何か不満はないか、問題の本質を探すよう常に言っています。 慣れてくると、あらゆる製品が不満だらけのものになってきます(笑)。そこから始めて、課題を解決する方法を考える作業が始まります。ここで大切なのは、課題設定の重要性です。問いの立て方を誤ると、出来上がる製品が随分と違ったものになってしまいます。
+例えば、我々が2009年に発売した扇風機「Air Multiplier」。製品開発にあたって立てた問いは、「高品質の扇風機の開発」ではなく、「心地よい送風体験を得る製品の開発」でした。もし高品質の扇風機と設定していれば、たしかに素晴らしい扇風機が生まれていたと思いますが、デザインは相変わらずブレードがついた、あの形だったでしょう。
▽日本は貴重な課題先進国
+Supersonicも同じです。40年以上変わっていないヘアドライヤーの問題は何か。あらゆる関係者の声を拾い、ヘアドライヤーとは何かを再定義してみました。 日本市場は課題の宝庫ですよ。例えば、最新スティック型掃除機のクリーナーヘッド「Fluffy(フラッフィ)」は、日本のユーザーの声から生まれたものです。「畳の目に入り込んだゴミを取りにくい」という課題に応えるための試行錯誤を経て、このヘッドが生まれました。
+もちろん、このヘッドは他国の市場でも好評です。日本は、ダイソンにとって貴重な「課題先進国」です。  さらに、課題を発見する上で大切なのは、すべて自分たちで試してみることです。 ダイソンの本社には、開発から完成後の製品検証まで、必要な設備をすべて自前で用意しています。これは、秘密を保持するためという理由に加えて、すべてのプロセスを自分たちが経験することで、その仕組みを理解することができるようになるからです。
――IoT(モノのインターネット)時代が到来し、ハードウエアだけでなく、それらをつなぐソフトウエアの重要性も高まっています。ダイソンも無縁ではいられないと思います。これにはどう対応しますか?
コンツ:我々の事業環境はどんどん変わっています。5年前、ダイソンの販売高の約8割を掃除機が占めていました。しかし今年は、約8割が掃除機以外の製品になりました。 ソフトウエアの比重が今後高まっていくのは間違いないでしょう。例えば、ロボット掃除機の「Dyson360 Eye」はハードだけでなく、ソフトがカギを握ります。それ以外の家電製品も、スマートフォンとの連携などを始めています。
+変化に対応するために、ソフトウエアのエンジニアを今後さらに増やしていきます。既に、100人ほどのエンジニアを増員すると決めました。今後はスマホのアプリ分野に強いスタートアップなどとの連携も増やしていく考えです。
――ソフトウエア化が進むと、これまでのダイソンのビジネスモデルが変わる可能性はありますか?
コンツ:興味深い質問ですね。今のところ、私も答えを持ち合わせていません。ユーザーはメカニカルな満足度だけでなく、データやアプリを通じた利用体験も価値だと考えるようになっているのは確かです。 先に述べたように、ソフトの比重が高まる中で、変化を迫られる可能性はあるでしょう。ただし、私は楽観しています。結局、ダイソンが考えるべきはオーナー(顧客)の満足度を高めることに尽きます。それがハードなのか、ソフトなのかは、手段に過ぎません。
▽政府と連携して教育機関を設立
――話は変わりますが、英国が国民投票でEU(欧州連合)からの離脱を決めました。英国企業として、この決断の影響はありますか?
コンツ:正直に言って、まったくないですね。我々は既に72カ国で展開するグローバル企業です。英国の選択は、EUとの貿易関係に影響を与えることになります。しかしEU市場は我々にとって、数ある市場の一つに過ぎません。収益の分散が進んでいます。EU市場より、むしろアジアでの売り上げが伸びていますし。 ただし、英国という国の立場に立てば、これをチャンスにしていかなくてはならないでしょう。
――ダイソン氏も離脱に賛成していました。
コンツ:英国として、競争力をより高めていく必要があるでしょうね。英国企業として我々も協力は惜しみません。 例えば、人材育成は今後英国にとって重要な課題になるでしょう。この課題を解決する方法の1つとして、ジェームズが運営する基金を使って教育機関を創設すると11月に決めました。
+生徒は、学費無料で工学エンジニアリングを修得できます。その教育課程の中で、ダイソンは学生をインターンのような形で学生を受け入れ、彼らの技術力向上を支援します。人材とテクノロジーに向けた英国の投資を象徴するプロジェクトになるでしょう。いずれにしても、私自身はこれからの英国の展開を楽しみにしていますよ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120800513/?P=1

第三に、 2月28日付け日経ビジネスオンライン「産学連携の現実、企業と大学のお寒い関係」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・大学の存在意義は授業を通じて学生を「教育」し、人材育成をすることにある。そしてもう一つ大きな役割があり、それは新しい技術を生み出したり新たな事実を発見したりする「研究」である。典型例の1つが京都大学・山中伸弥教授によるiPS細胞に関する成果だろう。
・こうした大学で生み出された技術や研究成果を世の中に早く活用する方法として、企業と大学がタッグを組む「産学連携」ということばをよく耳にする。最近ではオープンイノベーションという名のもとに、大学も連携相手として注目度が増している。
・しかし考えてみてほしい。一般の人が「産学連携で生み出された成果や製品で、インパクトがある有名なものを挙げてください」と聞かれたら答えられるだろうか。ほとんどの人が答えられないだろう。 理系の人なら、青色LED技術を豊田合成と共同開発した名古屋大学の例や、建材などに使われている光触媒技術をTOTOやパナソニックなどと開発した東京大学の例が浮かぶかもしれないが、いくつも挙げられるほどでもない。
・このことに疑問を持った記者は、日経ビジネス2月20日号の特集「行きたい大学がない」でもこの点の取材に取り組んだ。その中で明らかになったのは、企業と大学のお寒い関係だった。
▽お互いを信用しない
・「はした金で研究に口出ししてくる」(国立大学教授) 「納期も守らない、知的財産の考えも適当」(メーカー技術者) これは産学連携がうまくいかない理由を聞いたときに返ってきた答えだ。複数に取材したが、いずれも同じような内容だった。すべての産学連携がそうだとは言わないが、この「同床異夢」とも言える状況が、うまくいかない原因の一つであることは間違いない。
・大学の言い分を詳しく聞くとこうだ。 「億を超える研究費を扱う中で、企業が出す研究開発費は数百万円程度。本気だとも思えないし、それで厳しく成果をって言われても…」 「大学は研究して論文を書いてそれが学会などで認められないと偉くなれない。産学連携ばかりに没頭すると、基礎研究に費やす時間がなくなって自分の居場所がなくなる」
・大学は企業が本気でないのを見抜いているし、自分の組織での立場を守るためにもあまり時間をさけないというシステム上の問題があることが分かる。一方の企業の言い分は、 「ちゃんと研究成果が出るか未知数のものに、多額の研究開発費を出すのは難しい。リスクを背負える額を見積もって出しているだけ」 「投資した以上は、会社への説明責任があるので、成果がどうなったかを聞くのは当然」  といったものだった。
・企業側も思い切った投資が許されるような組織になっていないことなどがうかがえる。さらには、 「先生が複数の企業から研究費を受け取っていて、新しい知財の成果が誰のものかごちゃごちゃになってもめた」 「秘密裏に開発していた研究内容を、大学の先生が学会であっさりしゃべってライバルに知られてしまうことがあった」 といった大学側の“常識のズレ”を指摘する声もあった。こうした構図で生み出された失敗は、大学側も企業側も互いに組むのはもう嫌だと避けるようになって、ますます産学連携で成果を生み出すことが難しくなるという状況になっている。
・大学は現状、毎年補助金を減らされるなど十分な資金を得られているとは言い難い状況だ。その一助として企業からの資金をうまく取り入れられるかがカギになるが、企業と大学の現場の相互不信は根深い。
▽成功例も出始めている
・そんな中で、しっかりとした枠組みを作れば、日本でも産学連携は成功するという一つのモデルケースが生まれている。東京大学大学院生物有機化学教室の菅裕明教授が自らの研究成果を生かして設立した、創薬支援の「ペプチドリーム」だ。ペプチドリームの開発した「特殊ペプチド」を使えば、長期間かかる創薬の時間短縮が図れるとして注目を浴びている。
・同社は2013年に上場し、現在は内外の製薬会社16社と協業している。菅氏は自身の特許を東京大学に帰属させ、そのライセンス管理は「東京大学TLO」という管理会社に委託した。ペプチドリームはそこから特許使用の許可を得る。製薬会社とペプチドリームは契約によって成果が誰のものかなどが明確になっている。
・菅教授は「企業同士で成果などを細かく定めて契約を結ぶため、企業もお金を出しやすい。誰の知財か複雑になることもない」と説明する。さらに「知を追及するアカデミアな研究と製品開発は目的やそれを達成するまでのスピード感も違う。別の組織にすることで研究も製品化も互いに阻害しない」とメリットを語る。菅教授は現在、東京大学や文部科学省など内外に、この「ペプチドリーム型」とも言える産学連携の形を標準的にするように働きかけていく予定だという。
・日本の大学が資金不足で劣化しないためにも、日本の企業や大学の競争力を向上させるためにも、産学が連携することは欠かせない。文科省と経済産業省は昨年12月、経団連の提言を受けて「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を策定したが、こうしたきっかけがあっても、大学が意識を大きく変えるほど取り組めなければまた掛け声倒れで終わってしまう危険性もある。うまく機能することを期待したい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/022300417/?P=1

第一の記事にある、 『駐車場の一角に、無数の巨大な展示物が設置・・・それぞれの展示物には、エンジニアが守るべき「心得」のようなものが込められている』、 『「革新的な製品には、必ず画期的なコンセプトがある』、 『開発にあたってエンジニアは何を大切にしなければならないか。日々の会話や研修の中で繰り返すことも大切だが、時には、目に見える形で見せることも大切』、などはさすがだ。 『失敗の壁は2つのメッセージを発しているという。一つは「失敗から学ぼう」、もう一つは「先輩もこれだけ失敗したから、失敗を恐れるな」だ』、というのも素晴らしい仕組みだ。 『すべては課題発見から』、というのも極めて重要な考え方だ。開発に『売上高の15%程度』を充てるというもさすがだ。 記者が、『カイゼンの追求はもちろん大切だ。しかし、それと同じくらい、課題を探求する能力を養うことも大切』、と指摘しているが、これには違和感を覚えた。ダイソンはカイゼンの追求よりも、課題を探求する能力を重視しているのではなかろうか。日本の家電メーカーは黄金時代でも、横並びの過当競争を繰り広げ、体力を消耗してきた。オリジナリティ溢れる商品で高付加価値経営をしているダイソンとの格差は余りに大きい。しいて言えば、創業期のソニーがダイソンに似ていたのかも知れない。
第二の記事にある 『何の経験もないエンジニアを常に組織に混ぜる必要があると考えています・・・若いエンジニアに大きな仕事を任せ、権限と責任を与えます』、 『失敗を許容する一方で、失敗したあとも、自分の成し遂げたい目標を達成すべく愚直に努力し続けることを奨励しています』、なども成功の秘訣だろう。 『日本は貴重な課題先進国』、としているが、「課題先進国」を初めに言い出したのは、東大元総長の小宮山宏氏だったと思う。
いずれにしろ、IoTなどでソフトの比重が高まるなかで、開発力を如何に維持してゆくかに注目したい。
第三の記事にあるように、『産学連携の現実、企業と大学のお寒い関係』、というのは、残念ながら現実のようだ。 『成功例も出始めている』、とはいっても、例外的事例に過ぎないのではなかろうか。
タグ:ダイソン イノベーション オープンイノベーション 日経ビジネスオンライン IoT (技術革新) (英ダイソンの頭脳拠点、産学連携の現実) ダイソンは「課題発見力」を徹底的に鍛える 英ダイソンの頭脳拠点に潜入(前半) 独特の色使いとユニークな形状、高いデザイン性を評価するファンを世界中に持つ 業績も好調 顧客数は6700万人を超える 英国本社 エンジニアの創発を促す様々なシカケ 駐車場の一角に、無数の巨大な展示物が設置 それぞれの展示物には、エンジニアが守るべき「心得」のようなものが込められている 革新的な製品には、必ず画期的なコンセプトがある 開発にあたってエンジニアは何を大切にしなければならないか。日々の会話や研修の中で繰り返すことも大切だが、時には、目に見える形で見せることも大切 本社で働く社員は約6000人 すべての製品の生産をマレーシアに移転 英国本社は製品企画や基礎研究、新規事業開拓を担う 創業者であるダイソン氏の積極的な関わりだ。ダイソン氏は社内にいても、ほとんど自室にいることはなく、開発現場を歩き回っている。エンジニアに声をかけては開発状況を聞き、自分の意見をぶつける 「オープン」「シナジー」「スペース」 オープンな空間の中で、チームの連携を生み出しやすい環境を作ること 物理的な「空きスペース(隙間)」をあえてつくることだ ある壁には、「失敗の壁」と書かれ、過去のエンジニアの失敗談や失敗事例が詳細に記載 失敗の壁は2つのメッセージを発しているという。一つは「失敗から学ぼう」、もう一つは「先輩もこれだけ失敗したから、失敗を恐れるな」だ すべては課題発見から コミュニケーションしやすい環境をつくること 自分の問題設定が甘かったり、アイデアが形にならなかったりしても、それらが捨てられることは決してない。「アイデアはエンジニアの記憶のライブラリーに永遠に残る。それらが何年後かに、思わぬ形で日の目を見ることも多い」 非上場企業であり、オーナー経営 ソフトウエアに習熟したエンジニアの数も増やしていく必要 ダイソン、コンツCEOに聞く技術革新を生む組織 英ダイソンの頭脳拠点に潜入(後編) マックス・コンツCEO 何の経験もないエンジニアを常に組織に混ぜる必要 若いエンジニアに大きな仕事を任せ、権限と責任を与えます リスクを許容するカルチャーを醸成 我々はアイデアが不採用になっても、それを決して捨てません。「今回はたまたまタイミングがよくなかっただけ」と考え、次のタイミングまで寝かせるのです それを20年以上続けることで、「失敗を許容する文化」が育まれてきました 失敗を許容する一方で、失敗したあとも、自分の成し遂げたい目標を達成すべく愚直に努力し続けることを奨励しています 製品の中には、長い時間を経て、ようやく製品化されたものも少なくありません アイデアはデータベースで管理しているわけではなく、常にエンジニアの頭の中にしまわれている点です。それが、ある議論をきっかけに突然、“エンジニアの元に降ってくる”。だから、ダイソンは今でもエンジニア同士の議論やコミュニケーションを大切にします 課題設定の重要性 日本は貴重な課題先進国 政府と連携して教育機関を設立 産学連携の現実、企業と大学のお寒い関係 お互いを信用しない はした金で研究に口出ししてくる 納期も守らない、知的財産の考えも適当 億を超える研究費を扱う中で、企業が出す研究開発費は数百万円程度。本気だとも思えないし、それで厳しく成果をって言われても 大学は研究して論文を書いてそれが学会などで認められないと偉くなれない。産学連携ばかりに没頭すると、基礎研究に費やす時間がなくなって自分の居場所がなくなる 先生が複数の企業から研究費を受け取っていて、新しい知財の成果が誰のものかごちゃごちゃになってもめた 秘密裏に開発していた研究内容を、大学の先生が学会であっさりしゃべってライバルに知られてしまうことがあった 企業と大学の現場の相互不信は根深い 成功例も出始めている
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