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東京電力問題(その2)(原発処理費用22兆円のウソとそのワケ、東電 なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか、「政治家と官僚は東電問題を解決したくない」) [国内政治]

東京電力問題については、昨年12月18日に取上げた。東電の新々・総合特別事業計画が発表されたことも踏まえ、今日は、(その2)(原発処理費用22兆円のウソとそのワケ、東電 なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか、「政治家と官僚は東電問題を解決したくない」) である。

先ずは、4月24日付け日経ビジネスオンライン「原発処理費用、22兆円のウソとそのワケ 国民負担、国と電力会社のフリーハンドに」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨年末、政府の東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会)が発表した資料では、福島第1原子力発電所の事故処理費用が約22兆円と試算された。当初想定の2倍に膨らんだことが話題を呼んだが、東京電力ホールディングスの改革の動きに注目してきた識者からはむしろ「この程度の額で収まるわけがない」と批判の声が上がっている。国はなぜ、こんな杜撰な試算を公表したのだろうか。
・下の表は公益社団法人、日本経済研究センターの小林辰男・主任研究員らが事故処理費用を試算した金額である。総額は国の試算の2~3倍という結果になった。費用が増える要因を1つ1つ見ていこう。
▽国の試算の3倍以上に費用が膨らむ可能性も
・まず、国による22兆円という事故処理費用の試算で最も明らかな疑問点は、放射性廃棄物の問題だ。  除染により生じた汚染土などは、焼却による減容化の後でも2200万立方メートルにも上ると推計されている。だが、福島第1原発の近隣の中間貯蔵施設(福島県双葉町、大熊町)で最大30年間保管された後の最終処分方法も決まっていない。さらに、原発内から出る放射性廃棄物はその発生量の予測すらついていない。
・小林氏は、青森県の六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターでコンクリートピットによる埋設で汚染土を処分すると仮定。除染費用は6兆円から30兆円に膨らむと計算した。 原発内の廃棄物については、メルトダウン(炉心溶融)を起こした1~3号機は全て放射性廃棄物になるとすれば、廃炉費用は8兆円には収まらず、最低でも11兆円はかかるとの考えだ。
・最終処分が決まってない汚染物質はまだある。建屋内に流れ込んで汚染された地下水だ。福島第1原発内に保管されている汚染水の総量は100万トンを越える。そして今も1日平均120トンの汚染水が新たに発生している。 この汚染水に含まれる放射性物質のうち、トリチウム(三重水素)は水素に非常に似た性質を示すため、効率的に分別・除去する方法が確立されていない。廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」の運転に関連して試験的に開発されたトリチウムを除去する方法では、汚染水1トン当たり2000万円もの費用がかかってしまう。この場合、廃炉費用はさらに約20兆円積み増しされて32兆円となる。
・これらを合算すると事故処理費用の総額は50兆~70兆円となり、国の試算の2~3倍になってしまう。 経済産業省はトリチウム汚染水の処理方法について、稀釈して海洋放出することも検討している。しかし、福島県漁業協同組合連合会はこの案に強硬に反対している。 そもそも2015年、建屋近くでサブドレン(井戸)によりくみ上げた水を海洋放出して地下水流入を減らすプランの実行に関して、県漁連と東電、国が合意した際、トリチウム汚染水の海洋放出をしないことが条件の1つになっている。県漁連の野崎哲会長は「国と東電は条件を受け入れたものと理解している」と話す。
・今後、県漁連が海洋放出をやむなしと認めるとしても、追加賠償が発生するのは避けられない。小林氏は約1500人の漁業者への賠償を3000億円と見積もる。ただし、これは福島県内だけに限る賠償額だ。周辺の漁業者からも賠償を求める声が上がる可能性は大きい。
▽国側の識者も認める試算の穴
・小林氏の試算にも盛り込まれていないコスト増のリスクはまだある。例えば、メルトダウンした核燃料デブリの取り出しにまだメドがついていない。22兆円の試算のうち8兆円の廃炉費用は、米国のスリーマイル島原発の廃炉をもとにしてそろばんをはじいた。しかし、スリーマイル島事故では燃料デブリが圧力容器の底を突き抜ける「メルトスルー」は起きていない。 スリーマイル島事故の現場指揮に当たった米原子力規制委員会元幹部で、今回の試算に助言を求められた識者の1人であるレイク・バレット氏も「作業員が原子炉建屋に侵入できないほどの高度の汚染はスリーマイル島でもなかったことだ。様々な要因によるスケジュールの遅れがコスト増につながる」と指摘する。
▽法廷闘争で賠償額の増額も
・特に空間線量が高い「帰還困難区域」を除き、強制避難区域は今春で解除された。住民への賠償も概ねメドがついた。しかし、国と東電の法的事故責任を初めて認める判決が、3月に前橋地裁で出た。 賠償額の増額が認められたのは主に強制避難区域外からの「自主避難者」。これまで4万~72万円の一時金しか支払われていない。判決で認定された賠償額は20万~70万円だった。
・自主避難者の総数は明確になっていない。仮にピーク時の総避難者数(約16万人)の大半に今回の増額が認められたとしても、賠償額は数百億円にとどまり、処理費用への影響は小さい。しかし、避難者側の弁護団長の鈴木克昌氏は「地裁では避難先でのいじめといった被害に関する訴えを十分にできていなかった」としており、原告の約半数が控訴。二審も勝訴すれば、賠償額の増額もあり得る。
・南相馬市、浪江町、楢葉町で除染を検証する委員会に参加した東京大学の児玉龍彦教授は「除染費用も6兆円で終わるわけがない」と指摘する。前述した汚染土の最終処分の問題だけでなく「避難自治体は森林の除染を徹底するよう求めている。これには莫大な費用がかかる」。
・さらに、中間貯蔵施設も用地の買収に同意している地権者はいまだ全体の3分の1にとどまる。地権者約100人からなる30年中間貯蔵施設地権者会は環境省との交渉を続けているが、最大のネックとなっているのが原状回復についての問題だ。 国側は30年後の返還を約束しているが、地権者の間では中間貯蔵施設を最終処分場に切り替えるのではないかという警戒感が根強い。地権者会は返還を担保するため、原状回復費用の算定を要求している。地権者会の門馬好春事務局長は「22兆円の試算が出たとき、環境省には原状回復費用、除染廃棄物の最終処分の費用、最終処分場までの運搬費用が入っているのか問い詰めたが、入っていないという回答だった。こんな不誠実な試算はあり得ない」と憤りを隠さない。
▽ウソの狙いはどこにある?
・あまりに杜撰な22兆円の試算。廃炉に係わる東京電力ホールディングスの関係者も「現時点でこんな数字を出せるわけがない」といぶかしむ。原子力損害賠償・廃炉等支援機構も試算について説明した資料中に「見解の一例を紹介するもの」「機構の責任において評価したものではない」と逃げ口上を併記している。しかし、この22兆円という数字に、今後の東電の改革は寄って立っている。なぜこんなことが起きたのか。
・龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は、「東電を破綻させずに国民負担を迫ることが目的だ」とみる。  今回の改革提言には22兆円のうち2.4兆円を新電力などの送電網の利用料で賄うことになった。電力料金に上乗せされれば標準的な家庭で毎月18円の負担になる。少額ではあるが、東電の廃炉事業のツケを国民が担うことへの反発感情は未だある。
・大島教授は「国民負担を実現するには、費用の増大を演出して『福島のために』と迫る必要があった。一方、事細かに費用を計上すれば、東電が負債の認定を迫られる恐れがある」と指摘する。事故処理費用が膨らみすぎれば、原発の社会的コストも増大することになる。「原発が火力や水力よりも割安だと訴え続けてきた国の理論に傷が付き、各地の原発の再稼働にはマイナスに働く」
・原子力委員会委員長代理も務めた長崎大学の鈴木達治郎教授は、昨年末の東電委員会による東電の改革提言に関して「東電を存続させて事故処理を担わせるという事故直後の前提の下で積み上げた計画にすぎない。今はもう前提を見直すべき時に来ているのではないか」と指摘する。
・電力料金を通じて国民負担を迫る形は「国や電力会社が自由に負担の枠組みを変えられてしまう。あまりに不透明だ」。鈴木教授は東電を解体して、事故処理を担う新たな事業体を発足することを提言する。「基金の形で新たに事業体を作り、第三者機関による監査もつけることが必要。そうすれば、電気料金という形ではなく税金の投入も可能になる。原発を維持したい企業からの寄付も募ることができる」
・これは日経ビジネスの4月24日の特集の中で提言した「東電消滅」ともつながるものだ。「東電の名を残し続けることは、いつまでも事故のみそぎを終わらせないということだ。十字架を背負いながら廃炉事業に邁進している福島の作業員にとっても好ましいことではない」(鈴木教授)。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/042000132/042500003/

次に、5月12日付け東洋経済オンライン「東電、なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか 原発再稼働が前提、史上空前の利益シナリオ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・東京電力ホールディングスは5月11日、50%強の株式(議決権ベース)を握る原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、機構)と共同で策定した「新々・総合特別事業計画」(いわゆる新々総特)を明らかにした。福島原発事故に伴う廃炉・賠償費用が総額22兆円と倍増する見通しとなったことを踏まえて作り直したもの。国による東電に対する資金支援の総枠は、従来の9兆円から13兆5000億円に拡大する。
・だが、今回の再建計画に並べられた数字は、これまでの延長線上での努力で達成できるレベルではない。 従来からの合理化努力に加えて、柏崎刈羽原発の再稼働(最大で7基)、送配電や原子力分野での他社との「共同事業体」設立を想定。現状年約3000億円の廃炉・賠償費用を約5000億円と見積もり、それを自力で賄ったうえで、10年以内に前2017年3月期比3割増の3000億円超、10年後以降には4500億規模の連結経常利益達成を目指す。
▽計画未達なら国有状態が長引く
・しかし、この4500億円規模の連結経常利益は、東電自身が過去に一度も達成したことのない水準だ(過去の最高益は2007年3月期の4412億円)。 新再建計画策定に関与した西山圭太・東電取締役によれば、「書かれた数値自体は他社との再編統合、海外展開など、数字の盛り込みが難しい課題もすべて実施して初めて実現できるかどうかというもの」だという。経済産業省から出向する西山氏は、「(数字の達成は)エネルギー行政の行方ともかかわっている。電力事業に関する制度の予見性がなければ、計画を書いても実現できない」と国にも注文を付けた。
・収益力の向上が思うように進まない場合にはどうなるのか。東電が経営破綻に追い込まれることはないものの、国有化状態が長引き、国が投入した資金が回収できなくなる。 その際に鍵を握るのが柏崎刈羽原発の再稼働の行方だ。新再建計画では「2019年度以降」「2020年度以降」「2021年度以降」に、現在、安全審査を申請中の6、7号機を含む4基が順次再稼働していくシナリオ、および全7基が再稼働するシナリオの計6パターンを示している。
・たとえば、最も早い2019年度に6、7号機が再稼働した場合、連結営業利益はそれまでの約2500億円から5000億円規模に倍増する。そうなれば、廃炉・賠償費用が5000億円規模に増えても吸収できるというシナリオだ。
・ただ、こうした計画自体がもろい構造であることは明らかだ。 まず第一に、柏崎刈羽の再稼働自体のハードルがきわめて高い。米山隆一・新潟県知事はこれまで、再稼働の前に福島事故の検証が必要だと言い続けてきた。そのうえで「事故の検証作業には3~4年かかる」と語っている。米山氏の在任期間は2020年10月まであるだけに、原子力規制委員会の審査をパスしたとしても、再稼働へとスムーズに事が運ぶ保障はない。
▽円安、原油高、需要減少がリスク要因
・為替が円安に転じたり、原油価格が高騰した場合のマイナス影響も大きい。新再建計画によれば、円ドルレートが10円円安方向に動くと、約1100億円のコスト増になる。原油価格が1バレル当たり10ドル上がると約1600億円も利益を圧迫する。いずれもありえないシナリオではない。 加えて、節電が進んで電力需要が落ち込んだり、他社への契約切り替えが進むことも、東電にとっての大きな痛手となる。今後、地盤の関東圏で少子高齢化や人口減少が進んでいくこともマイナス要因だ。
・一方で、新たな利益を生み出すためのビジネスモデルの改革は緒に就いたばかり。東電は2000万世帯以上という巨大な顧客基盤を生かし、AI(人工知能)やIOT技術も活用して新たな収益源を作り出していこうとしている。しかし、現在はまだ種蒔きの段階だ。
・送配電や原子力分野では、他社との共同事業体設立によるシナジー効果を追求する。これについてはパートナー探しの具体的な進め方を今年秋までに決め、交渉を本格化させる。東電では原子力分野の共同事業体のモデル事業として、青森県内で2011年1月に着工した東通原発(現在は工事中断中)を例に挙げた。 廣瀬直己社長は「国が定めた2030年度のエネルギー構成割合で原子力の割合は20~22%。この数字を達成し、原子力に必要な人材を育成していくことは電力各社共通の課題。(東通原発を)解決策のモデルにしたい」と説明している。
・もっとも、パートナーとして期待されていた東北電力の原田宏哉社長は、東電との事業再編・統合の可能性をきっぱりと否定。関西電力の岩根茂樹社長も「原子力は再編・統合ではなく、現行体制の中でいかに信頼を高めていくかが重要だ」とする。東電と燃料・火力発電分野での事業統合で合意した中部電力の勝野哲社長も、原子力や送配電分野での再編統合について、「どういう効果があるのか見極めが必要だ」という。
▽廃炉・賠償費用の根拠はあやふや
・今回の再建計画で前提とされた廃炉・賠償費用の「22兆円」についてもきわめてあやふやなものだ。特に、廃炉費用の8兆円については、スリーマイル原発事故でかかった費用から推定計算したものに過ぎない。シンクタンクの日本経済研究センターでは、除染で発生した土砂の最終処分費用を、青森県六ヶ所村での低レベル廃棄物処理費用並みと見積もったうえで、廃炉・賠償費用総額を「40年間に50兆~70兆円」と試算している。
・廣瀬社長が強調するように、ここ数年、コストダウンが進み、東電が「筋肉質になってきた」ことは確かだ。そうしたことを踏まえ、廣瀬社長は「2014年3月期以降の4年間、(旧再建計画で想定していた)柏崎刈羽の再稼働なしに黒字を出せた。さらに直近の2年間では(廃炉・賠償で)必要とされる5000億円の原資を確保した。おカネがないので廃炉や賠償費用を払えないということはないところまで持ってきた」と胸を張る。
・ただし、合理化やコストダウンなどの成果の一方で、火力燃料価格の大幅な下落といった追い風があったことも間違いない。 東電が目指す脱国有化の道のりは極めて厳しい。機構は保有株の売却益として4兆円を捻出し、それを除染費用に充てる計画。それだけ東電は企業価値を上げなければならない。東電があえて明らかにした史上空前の利益達成シナリオは、それを実現できなければ国有化から脱出できない厳しさの裏返しでもある。
http://toyokeizai.net/articles/-/171436

第三に、5月12日付け日経ビジネスオンライン「「政治家と官僚は東電問題を解決したくない」 東京理科大の橘川武郎教授インタビュー」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)
・東京電力は5月11日、新新総合特別事業計画を発表した。6月には川村隆新会長と小早川智明新社長という新経営陣が正式に就任する。 福島第一原子力発電所の事故処理と東電の再建が進んでいくように見えるが、東電による民業圧迫など課題は多い。事故処理費用はさらに膨らみかねないため、常に東電改革のあるべき姿を考えておくことは不可欠だ。電力業界に精通し、東電改革の提言を続ける東京理科大イノベーション研究科教授の橘川武郎氏に聞いた。
――東京電力が再建計画「新々総合特別事業計画」を発表し、新たな枠組みが定まりつつあります。どのように評価していますか。
橘川:東電の新々総特については、東電の関与が残存している限り、他電力は「福島リスク」の波及を恐れて、原子力分社・連携案に参加するはずはなく、実現可能性は皆無だと思います。 せっかく、川村隆氏のような立派な経営者を招聘しても、実現性がない新新総特を押し付けられては、数土文夫会長の場合と同様に、身動きがとれなくなるでしょう。
+そもそもの問題からお話します。 福島の事故処理費用が21兆5000億円。東電がすべて出せる訳ではないので、多くの部分が国民負担になります。 ただ、けじめがありまして、少なくとも廃炉は東電の負担。除染、賠償の費用は東電が出すべきだが、被災者に払えないと問題なので国民負担にならざるをえないのでしょう。電力会社が送電線を利用する託送料から徴収し、電気料金を通じて国民が負担するという仕組みは、仕方がない面があります。
+それでも物事には順番があります。 これだけ国民が巨額負担をするのですから、東電がやるべきことを全部する。資産売却をしなければなりません。まずは柏崎刈羽原子力発電所。火力発電所も資産売却の対象となるでしょう。 発電所で残るのは出力調整用の揚水発電所くらい。原発と火力を売れば、兆円単位の資金になるので、廃炉に充てた瞬間から、福島リスクから切れる枠組みにします。
――柏崎刈羽は別の事業者が運営するということですか。
橘川:そうです。私は反原発ではありません。日本経済のために柏崎刈羽の騰水型軽水炉(BWR)を動かした方がいいでしょう。その立場から東電は邪魔だと言っています。地元が納得しないでしょう。地元なので東北電力が絡まざるを得ませんが、キャッシュが足りません。
+財務省は国営を嫌がるでしょうから、日本原子力発電を核とする受け皿にやってもらう。準国営会社の原電が運営すれば、柏崎刈羽は準国営ということになります。
▽原電は「問題児沸騰水オペレーション会社」
――受け皿としてなぜ原電がいいのでしょうか。
橘川:原電は今、「原発なき原電」になっています。3つある原発のうち、敦賀1号は廃炉、2号も活断層で問題になって再稼働が厳しい。東海村はさほど原発を必要としていないので、柏崎刈羽より動かすのが難しいでしょう。最終的に頼みの綱だったベトナムへの原発輸出も望みがなくなりました。
+こうした事情から、原電が生きる道は柏崎刈羽のオペレーションになります。私は原電を「問題児沸騰水オペレーション会社」と呼んでいます。 準国営の柏崎刈羽が、中立的な値段で卸市場に電気を卸し、新電力も活用できるようにする。まだ卸市場が電力市場全体の約3%しかありませんが、シェアが高まれば電力自由化にも寄与します。
――閉塞感のある電力の小売り市場が活性化するかもしれません。
橘川:浜岡原発と大間原発まで動いて卸売市場に流したら、シェアは高まるでしょう。ターゲットは8%です。米国の電力卸市場関係者は、最低8%は卸市場がないと自由化は成り立たないと話していました。「日本には卸市場がほとんどないのに、自由化がうまくいくわけがない」と。
+原発由来の電気が増えることは、地球温暖化対策にも貢献します。東京湾岸で多くの石炭火力の建設計画がありますが、これらが立ち上がると、温暖化対策に急ブレーキがかかってしまいます。 東京電力と共同出資でJERAを設立した中部電力の経営陣は、こんな展開を読み切っていたのではないでしょうか。浜岡では地震対策をやって再稼働させることを追求し、最終的には株主に国を訴えさせる、そんな狙いがあるように見えます。そうでないと、会社が株主から訴えられます。
+防潮堤を作り規制基準をクリアしたのに、超法規的措置で原発が動かない。ということで、柏崎刈羽と一緒に浜岡を国に買ってもらい、準国営の運営に任せる。 中電はJERAを使って東電の火力が手に入る。東電が資産売却をしなければ、福島リスクが完全に消えることはありません。大阪ガスは中部電力と組んでいたのにJERAに乗りませんでした。 東電の組合はこのシナリオがいいでしょう。経営は安定するし、職場も変わりません。東北電力の原子力部隊には、抵抗があるかもしれませんけれど。
▽日本の反原発勢力には対案がない
――東京電力には残す事業は何ですか。
橘川:東京電力パワーグリッド(PG)とエナジーパートナー(EP)です。この会社はやっていけると思います。資産は大きく、分社化の際にはここに人材が殺到しました。 東電委員会ではPGまで再編しようという議論がありましたが、安定収入の素がなくなってしまいます。 EPが基盤とする東京はすごくいい市場です。住宅が途切れない都市圏という定義だと世界一の広がり、という見方があります。
+自由化後の離脱率は10%に満たず、EPがその顧客を取り返せる可能性もあります。 大手電力系の小売りの中で、東電の小早川社長が一番まともだと思います。関西電力などは、原発が再稼働すれば安い電力を手に入れられるのでそれから値下げできるという姿勢で、まじめに小売りをやっているように見受けられません。 今後、関電と九州電力、四国電力の原発は再稼働の可能性があるので、電力小売りに熱を入れているように見えません。
+小早川社長は原発なしを覚悟しているのではないでしょうか。そうでなければ、ソフトバンクやニチガスと組みません。ブランドが傷つくかもしれないですから、小早川社長の本気を感じます。 東電のPGとEPから継続的に賠償の負担をできるのではないでしょうか。そうすると東電問題は解決に向かっていくように思います。
+水俣病におけるチッソと同じです。同社は液晶部材で稼ぎ、水俣病の補償を長くやってきました。 世界の経営史でこんな会社はありません。みんな逃げるか、潰れてしまうのです。儲かる仕組みがあり、新しい技術者が入って、賠償を続けています。50年経ったら東電は立派な会社だったね。と言われるように今、頑張らないといけません。
+水俣の町は環境問題のために世界で有名になりました。賛成か反対かではなく、こうした前向きな話をしていくべきです。 少し話が逸れますが、日本の反原発勢力が説得力のある反原発政党を育てられなかったのは、対案を示さないからです。 ドイツの緑の党は、一言で言うと石炭をうまく使いながら原発を減らしていく政策です。石炭ももちろん反対ですが、本当のところで反対しません。
+日本のように原発も火力もダメだと、選択肢は省エネと再エネしかなく、対案が作れません。時間の稼ぎ方の対案がないのです。
――東電に批判的な人の間でも、具体的な対案について議論は活発になされていません。そうした状況の中で議論が深まらず、先送りの案が採用されているように映ります。
橘川:これまでの東電改革は、ごまかしが続いてきました。官邸は原発の建て替えを言いません。政治は次の選挙までの短期的な視野で考えています。資源エネルギー庁は様々な問題を分かっていますが、官邸と次のポストを気にして、結局は3年先しか考えていません。
+東電問題がすっきりするのは、政治家と官僚にとってリスクなのです。東電という悪者がいるために、自分たちに批判の矛先が向かないからです。 最初は東電を悪者にして、その悪者の範囲を電力会社からガス会社に広げて、自由化のみに力を入れ、電力会社やガス会社を叩く構図が必要なのです。その一方で原発や東電については、できるところまで問題を先送りしたいのです。私には、政治家や官僚は東電が改革にもたもたしていることを望んでいるとしか思えません。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/042000132/051100006/?P=1

第一の記事にある 『日本経済研究センターの小林辰男・主任研究員らが事故処理費用を試算した金額である。総額は国の試算の2~3倍という結果になった』、 『小林氏の試算にも盛り込まれていないコスト増のリスクはまだある。例えば、メルトダウンした核燃料デブリの取り出しにまだメドがついていない。22兆円の試算のうち8兆円の廃炉費用は、米国のスリーマイル島原発の廃炉をもとにしてそろばんをはじいた』、 『「国民負担を実現するには、費用の増大を演出して『福島のために』と迫る必要があった。一方、事細かに費用を計上すれば、東電が負債の認定を迫られる恐れがある」と指摘する。事故処理費用が膨らみすぎれば、原発の社会的コストも増大することになる。「原発が火力や水力よりも割安だと訴え続けてきた国の理論に傷が付き、各地の原発の再稼働にはマイナスに働く」』、といったように、当局にとって微妙なバランスを考慮した都合のいい試算といったところのようだ。
第二の記事にある 『今回の再建計画に並べられた数字は、これまでの延長線上での努力で達成できるレベルではない。従来からの合理化努力に加えて、柏崎刈羽原発の再稼働、送配電や原子力分野での他社との「共同事業体」設立を想定』、にも拘らず、東北電力や関西電力からは逃げられ、 『東電と燃料・火力発電分野での事業統合で合意した中部電力の勝野哲社長も、原子力や送配電分野での再編統合について、「どういう効果があるのか見極めが必要だ」という』、と慎重で、原子力分野での「共同事業体」設立は難題のようだ。
第三の記事で、橘川教授は柏崎刈羽を準国営会社の原電が運営、『中立的な値段で卸市場に電気を卸し、新電力も活用できるようにする』 ことを提唱している。面白いアイデアではあるが、原電が原発の運転・管理で東電より優れているといえるのだろうか、はなはだ疑問である。ただ、最後の 『電問題がすっきりするのは、政治家と官僚にとってリスクなのです。東電という悪者がいるために、自分たちに批判の矛先が向かないからです。 最初は東電を悪者にして、その悪者の範囲を電力会社からガス会社に広げて、自由化のみに力を入れ、電力会社やガス会社を叩く構図が必要なのです。その一方で原発や東電については、できるところまで問題を先送りしたいのです。私には、政治家や官僚は東電が改革にもたもたしていることを望んでいるとしか思えません』、との指摘はその通りだろう。
明日は、更新を休むので、明後日にご期待を!
タグ:最初は東電を悪者にして、その悪者の範囲を電力会社からガス会社に広げて、自由化のみに力を入れ、電力会社やガス会社を叩く構図が必要なのです。その一方で原発や東電については、できるところまで問題を先送りしたいのです。私には、政治家や官僚は東電が改革にもたもたしていることを望んでいるとしか思えません 東電問題がすっきりするのは、政治家と官僚にとってリスクなのです。東電という悪者がいるために、自分たちに批判の矛先が向かないからです 水俣病におけるチッソと同じです 東京電力パワーグリッド(PG)とエナジーパートナー(EP)です。この会社はやっていけると思います 東京電力 岡を国に買ってもらい、準国営の運営に任せる 閉塞感のある電力の小売り市場が活性化 準国営の柏崎刈羽が、中立的な値段で卸市場に電気を卸し、新電力も活用できるようにする 原電は今、「原発なき原電」になっています 日本原子力発電を核とする受け皿にやってもらう。準国営会社の原電が運営すれば、柏崎刈羽は準国営ということになります 産売却をしなければなりません。まずは柏崎刈羽原子力発電所 東電の関与が残存している限り、他電力は「福島リスク」の波及を恐れて、原子力分社・連携案に参加するはずはなく、実現可能性は皆無 「政治家と官僚は東電問題を解決したくない」 東京理科大の橘川武郎教授インタビュー」 廃炉・賠償費用の根拠はあやふや 茂樹社長も「原子力は再編・統合ではなく、現行体制の中でいかに信頼を高めていくかが重要だ」とする。東電と燃料・火力発電分野での事業統合で合意した中部電力の勝野哲社長も、原子力や送配電分野での再編統合について、「どういう効果があるのか見極めが必要だ」という 関西電力の岩根茂樹社長も「原子力は再編・統合ではなく、現行体制の中でいかに信頼を高めていくかが重要だ」とする パートナーとして期待されていた東北電力の原田宏哉社長は、東電との事業再編・統合の可能性をきっぱりと否定 円安、原油高、需要減少がリスク要因 6パターン 鍵を握るのが柏崎刈羽原発の再稼働の行方 計画未達なら国有状態が長引く 今回の再建計画に並べられた数字は、これまでの延長線上での努力で達成できるレベルではない。 従来からの合理化努力に加えて、柏崎刈羽原発の再稼働(最大で7基)、送配電や原子力分野での他社との「共同事業体」設立を想定 国による東電に対する資金支援の総枠は、従来の9兆円から13兆5000億円に拡大 新々総特 新々・総合特別事業計画 東電、なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか 原発再稼働が前提、史上空前の利益シナリオ 東洋経済オンライン 大島教授は「国民負担を実現するには、費用の増大を演出して『福島のために』と迫る必要があった。一方、事細かに費用を計上すれば、東電が負債の認定を迫られる恐れがある」と指摘する。事故処理費用が膨らみすぎれば、原発の社会的コストも増大することになる。「原発が火力や水力よりも割安だと訴え続けてきた国の理論に傷が付き、各地の原発の再稼働にはマイナスに働く」 避難自治体は森林の除染を徹底するよう求めている。これには莫大な費用がかかる 法廷闘争で賠償額の増額も 小林氏の試算にも盛り込まれていないコスト増のリスクはまだある。例えば、メルトダウンした核燃料デブリの取り出しにまだメドがついていない 国の試算の2~3倍 事故処理費用の総額は50兆~70兆円 廃炉費用はさらに約20兆円積み増しされて32兆円となる 試験的に開発されたトリチウムを除去する方法では、汚染水1トン当たり2000万円もの費用 トリチウム メルトダウン(炉心溶融)を起こした1~3号機は全て放射性廃棄物になるとすれば、廃炉費用は8兆円には収まらず、最低でも11兆円はかかるとの考えだ 除染費用は6兆円から30兆円に膨らむと計算 放射性廃棄物の問題 日本経済研究センターの小林辰男・主任研究員らが事故処理費用を試算した金額である。総額は国の試算の2~3倍という結果になった 福島第1原子力発電所の事故処理費用が約22兆円と試算 東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会) 原発処理費用、22兆円のウソとそのワケ 国民負担、国と電力会社のフリーハンドに 日経ビジネスオンライン (その2)(原発処理費用22兆円のウソとそのワケ、東電 なぜ型破りな「再生計画」が必要なのか、「政治家と官僚は東電問題を解決したくない」) 東京電力問題
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