東芝不正会計問題(その31)(ソンビ企業化した東芝で「あり得ない珍事」が多発中! 潔く「破たん処理」をしたらどうか、ますます悪い方向に進んでいるとしか思えない東芝、総合電機メーカーの一部門で半導体はできない) [企業経営]
東芝不正会計問題については、5月20日に取上げたが、今日は、(その31)(ソンビ企業化した東芝で「あり得ない珍事」が多発中! 潔く「破たん処理」をしたらどうか、ますます悪い方向に進んでいるとしか思えない東芝、総合電機メーカーの一部門で半導体はできない) である。
先ずは、経済ジャーナリストの町田 徹氏が5月23日付け現代ビジネスに寄稿した「ソンビ企業化した東芝で「あり得ない珍事」が多発中! 潔く「破たん処理」をしたらどうか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽ゾンビ企業が闊歩する国
・東芝が「ゾンビ企業」化し、支離滅裂になっている。 その第一は、先週月曜日(5月15日)、45日前に終了した期の「決算」を、決算の「結果」ではなく、「見通し」として発表したこと。
・第二は、その「見通し」で、日本企業として歴代2番目の規模の巨額赤字(9500億円)を出して、事実上の経営破たんを意味する「債務超過」(債務超過額5400億円)に本決算ベースで陥ったこと。企業として死に体なのに、隆々とビジネス活動を続ける、まさに異常事態なのだ。
・そして第三は、その債務超過解消の切り札だったはずの半導体メモリー事業の売却手続きが暗礁に乗り上げていること、である。
・通常ならば倒産しているはずの状態で、あり得ない珍事のオンパレードだが、その原因は、ゾンビ企業を健全な企業であるかの如く扱う日本のビジネス風土にある。 一刻も早く混乱を収拾するために、決算発表をできない東芝の株式を上場廃止にするとともに、きちんと破たん処理することが肝要だ。さもないと、日本はゾンビ企業が闊歩する国だと、世界中から異端扱いを受けかねない。
▽「見通し」発表の背景
・終わった決算期の「決算見通し」を発表するという珍事が起きた直接の原因は、東芝が、2016年度第3四半期の「四半期レビュー報告書」に続いて、2016年度本決算の「監査報告書」でも、会計監査人(PwCあらた監査法人)から「無限定適正」や「限定付き適正」といった監査意見(会計上のお墨付き)を得られなかったことである。
・この結果、同社は5月15日に決算を公表できず、会社の独自見解に過ぎない「決算見通し」を公表するという対応を選択した。 もちろん、決算発表資料の定番である「決算短信」は無く、独自スタイルの「2016年度通期業績見通しに関するお知らせ」(http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20170515_1.pdf)という資料を公表するにとどまった。
・東芝の綱川智社長は発表の席上、「期末から45日が経過しており、情報開示の観点から重要と判断した」「(今後)早期の(正規の)決算発表を目指して、独立監査人(あらたのこと)と取り組んでいく」と釈明せざるを得なかった。 同社は一昨年春の粉飾決算の発覚時にも、長期にわたって決算を発表できなかったほか、2016年度第3四半期にも発表延期を繰り返した経緯があり、何度も同じ轍を踏みたくないとの判断が働いたのだろう。
・また、2016年度第3四半期決算で、会計上のお墨付きを得られなかった際、東芝は、監査法人の首のすげ替えを広言していたが、今回の記者会見ではそんな傲慢な物言いはなく、綱川社長は「変更を決めたとは聞いていない」とトーンダウンした。
▽早めに上場廃止した方がいい
・だが、今回も、監査意見を取得できなかったという事実は、深刻な問題だ。独自スタイルの「通期業績見通し」を公表すれば、それで済まされるというような生半可な問題ではない。 これこそ、会計監査を担当したあらた監査法人が、東芝の会計処理を不適切と見ている証左だからだ。
・あらたが問題視しているのは、前期末直前に東芝がようやく破たん処理した米原子力子会社ウエスチングハウスの損失額やその発生時期とされるが、このことは東芝が再度、粉飾決算を問われかねないリスクに直面していることを意味している。
・一方、東京証券取引所はすでに一昨年秋、東芝株を粉飾決算を理由に「特設注意市場銘柄」に指定、投資家に注意喚起してきた。今春以降、経営・ガバナンスの改善が確認できない場合、東芝株を上場廃止にしなければならないという事情があったからだ。 今回、東芝が債務超過に陥ったことで、東芝株は8月1日付で東証1部から東証2部に降格になる。さらに、来年3月末に債務超過状態から脱出できないと、東芝株は自動的に上場廃止だ。
・しかし、またしても決算でまともな監査意見を取得できない問題が発生した。過去や今回の不適切な会計処理の存在を認める大幅決算修正でもない限り、6月末に提出期限を迎える有価証券報告書でも、東芝が監査法人から決算のお墨付きを得ることが困難な状況を象徴している。 これ以上の市場の混乱を防ぐため、東証は来年3月を待たずに、東芝株の上場廃止を実施すべきだろう。杜撰な情報開示が罷り通る慣例を残さないためにも、早期の上場廃止が求められている。
▽銀行は守ってくれるのか
・次に、東芝が支離滅裂なのは、会計上、何の裏付けもない独自の言い分に過ぎないにもかかわらず、その見通しで巨額の最終赤字を出して債務超過に陥った問題だ。 債務超過は、負債があまりに多くて、保有資産をすべて売却しても返済できない状態を意味するものだ。こうなれば企業の信用は失われる。通常ならば、銀行は融資の回収を急ぎ、一般取引先の企業も取引を拒むか現金取引に絞り込むような状態だ。
・ところが、東芝の主力行である三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループは5月15日、それぞれの決算発表の席で、国部毅・三井住友FG社長が「可能な限り支援する」と、佐藤康博みずほFG社長が「今の段階で監査法人の意見が付いていないからといって、融資のスタンスを変えることない」と述べ、そろって融資を継続する姿勢を鮮明にした。
・両行とも、東芝向け融資は巨額過ぎて回収が難しく、破たんさせれば巨額損失が発生しかねないので、なんとか経営を維持させたいのだろう。 そのために、両行が東芝にかねて水面下で迫ってきたのが、虎の子の半導体メモリー事業の売却だ。これによって、東芝は将来の成長エンジンを失い中長期の経営ビジョンを描けなくなるが、資本を調達することで目先は債務超過を解消できると踏んだのである。
・短絡的なつじつま合わせとしか言いようがないが、主力行も背に腹は代えられないのだろう。 それゆえ、東芝の半導体メモリー事業の売却を巡って資本提携先の米ウエスタンデジタル(WD)との対立が表面化している問題に関して、国部・三井住友FG社長は会見で「東芝とWDでしっかり協議してもらい、メモリー事業の売却を早期に行って財務基盤の回復を行う必要がある」と強調したという。
▽残された道は「破たん処理」
・だが、別の利害が錯綜し、この事業売却には暗雲が垂れ込めている。 新聞各紙の報道によると、5月19日に期限を迎えた2次入札には、韓国半導体大手SKハイニックスをスポンサーとする米投資ファンド「ベインキャピタル」や、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業、米半導体大手のブロードコムの3グループのほか、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などが名乗りをあげたという。
・しかし、このうち現実味のある候補は、経済産業省傘下の官民ファンド「産業革新機構」や政府系金融機関の日本政策投資銀行が水面下で「日米連合」と称してアライアンス候補としているKKRぐらいである。 残りは、東芝にとって魅力的な提案であっても、経済産業省が外為法などを盾に容認しない姿勢を示唆しており、最終的に実現しない可能性が大きい。
・では、すんなり経済産業省の思惑通り、産業革新機構、政投銀、KKRなどの日米連合が形成されるかというと、こちらも簡単な話ではない。他の日本企業や金融機関は、この案件に経済産業省が言うほどの技術的優位性を感じておらず、投融資への腰が重く、十分な資金を集まられない可能性が依然として高いからだ。
・加えて、WDが持ち分の過半数を要求していることも難問だ。実は日米連合はWDを取り込む腹づもりだったが、日米連合はそうしたWDの突出は認められないという。だが、WDは、自社の承諾の無い第3者への東芝保有株の売却を認めない構えで、国際仲裁裁判所にその差し止めも申し立てている。
・こうした事情が絡み合っているため、解くべき方程式は難解だ。15日の2次入札締め切りで、機構ら「日米連合」はまとまらず、入札参加の意向を表明しただけで、肝心の金額などの条件を提示できなかった裏には、こうした事情があったという。
・結局のところ、東芝の半導体メモリー事業の売却は、白紙になるリスクが非常に大きい。そして、債務超過を解消して事業を継続していくために必要だとしていた2兆円の資金の獲得に、東芝が成功しない可能性が大きいのだ。 そうなれば、東芝に残される道は、オーソドックスな破たん処理だけという事態になりかねない。
・ならば、東芝は無為に時間を費すよりは、自ら破たん処理を活用した再建策を模索すべきだろう。そのためには、儲からない国内原子力分野からの撤退と、半導体メモリー事業中心の企業としての再出発を基軸に据えるべきだ。 そして、債務超過を解消するため、主力行と折衝して、債権を株式に交換するデット・エクイティ・スワップを活用した金融支援策を講じてもらうほか、更生計画で必要になる資本、資金の出し手に再生機構や政投銀が就くよう依頼すべきだろう。 綱川社長は、ゾンビのままでは東芝を再生できないと肝に銘じるべきである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51821
次に、闇株新聞が5月31日付けで掲載した「ますます悪い方向に進んでいるとしか思えない東芝」を紹介しよう。
・昨日はお休みしてしまいましたが、やっぱりどうしても気になる東芝についてです。東芝の現経営陣は相変わらず「目先」で「安直」なことしか考えておらず、その周りには「保身」で汲々とする勢力しか見えていないからです。
・本誌は東芝については3月末の米子会社・ウェスティングハウス(以下、WH)の破産法適用申請直後から、「オール日本」の損得で考えるべきと強調しています。それは破産法適用申請で「オール米国」を敵に回してしまったためWHの損失は果てしなく東芝本社に押し付けられ、虎の子の半導体事業は徹底的に買い叩かれる結果にしかならないからです。
・本来なら民間企業である東芝の行く末を「オール日本」で考えるとは見当はずれな議論ですが、このままだと東芝だけでは辻褄を合わせられなくなり、その負担は「オール日本」にツケ回されるはずだからです。 東芝の現経営陣はとっくに当事者意識を失っており、ここにきてその「オール日本」に含まれるはずの銀行団、経産省、産業革新機構、東証などが、それぞれ「保身」に汲々としてバラバラに動いているため、本日の表題となるわけです。
・その半導体事業の売却は、確かに海外から複数の買い手がいるものの、まず「オール日本」として売却すべきかどうかを考えなければならないはずです。そもそも半導体事業の売却は、1兆円規模の貸出し残高のある銀行団がパニックになっているからと、2018年3月までに債務超過を解消しなければ上場廃止になるからという「目先」の理由からでしかないからです。
・東芝独自の「試算」では2017年3月末で5400億円の債務超過となっていますが、その解消のためと銀行団のパニックを抑えるためだけに、虎の子の半導体事業を海外に何が何でも売り飛ばすというのも「目先しか見ていない安直すぎる判断」となります。
・仮に上場廃止となっても半導体事業を中心に必死に経営を建て直し、銀行団に対してもしっかりとした返済計画を提示してパニックを抑えるという判断もあるはずで、それなら(もう遅いですが)3月末に連結対象から外すだけの目的でWHの破産法適用を申請して「オール米国」を敵に回す必要もなかったはずです。
・すべて東芝の現経営陣が「目先」だけにとらわれ、その時々で「安直」な判断をしているため、結果として東芝はますます泥沼にはまり込んでいくことになります。 その「安直」な半導体事業の売却ですが、確かに複数の買い手がいるため東芝の現経営陣でも「簡単にできる」作業となり、こういう時だけ何が何でもと頑張ってしまいます。
・こういう時こそ前面に出るべき官業(官民ではありません)ファンドの産業革新機構は、最初はKKRに頼って体面だけ保つためだけに巨額資金(注)を提供しようとしていたところ、最近は半導体事業の売却を国際仲裁裁判所に差し止めている(買い叩くための作戦です)ウエスタンデジタル(WD)にその資金を提供しようとしている節操のなさです。 (注)産業革新機構の投資資金は、3000億円の出資金のうち2860億円が政府分(つまり国民負担)で、さらに1兆8000億円の借入れに政府保証がつけられており(つまり国民負担となる可能性があり)、こういう時こそ「オール日本」のために頑張らなければならないはずです。まあ産業革新機構の現在の志賀俊之CEOこそ、日産自動車をルノーに食い尽くされるままに放置した張本人で、そもそも「オール日本」でモノを考えられる人ではありません。
・さらに2005年に「すでにボロボロになっていたWHの民間原子力事業」を英国核燃料会社(BNFL)から日本企業に買収させようと躍起になっていた経産省は、そんな責任など全く忘れて、今度は東芝の半導体事業売却でも指導的立場を維持しようと躍起になっています。
・もちろん銀行団は資金回収のために半導体事業を一刻も早く売り飛ばせとの大合唱であり(まあ民間企業なので理解できないわけではありませんが)、東証は何とか自ら引き金(上場廃止)を引かないように優遇措置を次々に繰り出しています。ここまで東証が甘やかせたことも、東芝が経営危機となった理由の1つです。
・その東証は、3月に東芝から再提出された特設注意市場銘柄から抜け出すための改善報告書の審査結果をそろそろ発表しなければなりません。ただ東証は3月に、審査結果が出るまでと東芝を監理ポスト(審査中)に割り当ててしまったため、そこで不合格ならその段階で上場廃止(整理ポスト割り当て)としなければなりません。今ごろ必死に「そうしないための言い訳」を考えているはずです。また甘やかせてしまうわけです。
・かくして東芝現経営陣の当事者意識の決定的欠如と、「オール日本」であるはずの各勢力それぞれの「保身」が相まって、東芝はますます悪い方向に進んで行くことになります。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2018.html
第三に、6月2日付けダイヤモンド・オンライン「東芝メモリ、総合電機メーカーの一部門で半導体はできない」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは藤井氏の回答、+は回答内の段落)
・1980年代から2004年まで東芝の半導体部門に在籍した藤井美英氏は、DRAMからNAND型フラッシュメモリーへ転換を当事者として経験した一人だ。“強いNANDフラッシュメモリー”が誕生するまでのエピソードや、その事業が売却されるに至った現状について胸の内を聞いた。(ふじい・よしひで/セイコーインスツル会長。1973年京大法学部卒、東芝入社。03年4月セミコンダクター社副社長、04年上席常務、デジタルメディアネットワーク社社長、09年専務、12年退任。1950年生まれ)
Q:東芝のNAND事業はなぜ成功したんですか。
A:僕はいつも「成功の偶然、失敗の必然」と言っているんですが、成功は意外と偶然もある。人と人との個人的な関係に助けられたとか、トップのサポートもありました。 想定外のことはいろいろです。デジカメが年1億5000万台の市場になると思わなかったし、カメラの高性能化も読めなかった。最も想定外だったのは、スマートフォンで、NANDにとっては「盆と暮れと正月が一緒にきた」感じでした。 インターネットの進歩とNANDフラッシュメモリーの生産のコスト削減が、結果的にすべて同じタイミングで進んだという幸運に助けられました。
Q:フラッシュメモリーが時代の製品に合致したと。
A:「ノンボラタイル(不揮発性)でハイエンド」のメモリーをやるべき、というのはDRAMの失敗ですでに学んでいて、進むべき方向性はわかっていた。 それと、他の競合フラッシュメモリーメーカーがたまたま事業を辞めてくれたのも幸運でした。「あれだけ巨額な赤字を生んだDRAMと同じメモリーをまたやるなんてとんでもない」と半導体をよく知らない経営者が逃げたのかもしれないし、「東芝に特許を握られているフラッシュメモリーなんてやってられない」という判断になったのかもしれないですね。
Q:1992年に東芝がサムスンに技術供与したことはいまだに批判があります。
A:僕はちょっと違うと思っています。当時サムスンと東芝は協業関係にあって、後の合弁相手である旧サンディスクとの大手3社で良い市場を構成できました。これによってNANDは、DRAMのような「自分が死ぬか、相手を殺すか」といった激しい競争環境とは、かなり違う市場ができたのです。
Q:2000年からサンディスクと共同投資をスタートします。
A:小林(清志・元東芝副社長)君と二人でサンディスクに行っていろいろ話をしました。苦労もあったし楽しみもあったよ。サンディスクの創業メンバーとは夢を共有できたから。エリ・ハラリ(元CEO)とはこれからフラッシュメモリーが広げる市場のこととかを語りあったね。
+最初にサンディスクとの最初の合弁契約を作ったときに、チェンジ・オブ・コントロール条項(資本拘束条項。経営権の移動に関する条項)を入れたのは僕。当時ベンチャー企業だったサンディスクが将来的にどこかに買収されることを想定しての条項だったけど、まさか買収される主体が東芝になるとは、思ってもみなかった。
Q:サンディスクは競合企業、しかも米国企業と合弁を組むという判断は当時の東芝としては画期的でした。
A:そうは言っても、当時から「東芝は国際展開力では他社に負けない」という自負はありました。STマイクロエレクトロニクスやフィリップス、シーメンスにモトローラ、それに台湾メーカーなど、ほとんどの大手半導体メーカーとは何らかの提携を組んできた経験がありましたから。
+80年代から2000年代まで、当時の半導体業界の中でもこれほどいろいろな相手と組んで何かをやった会社はないんじゃないかな。だから、サンディスクと組むベースはあって、何の違和感もなかったですね。ビジネス的にはいろいろ困難もあったけれど。
Q:DRAM撤退とNANDフラッシュへの集中は、ほぼ同じ時期に併行して行われたのですか。
A:それまで、プロセスドライバー(技術開発をけん引するもの)であり“神様”だったDRAMから撤退するのだから、大ごとですよ。しかも、撤退と集中と提携を一緒にやった。設備投資も、経営は決断してくれた。半導体は度胸とかいい意味での「いい加減さ」も大事で、そういう意味では当時の半導体カンパニー社長の判断もよかったといえるかもしれない。
+DRAMで負けた総括はそのころ社内ではしていて「景気が悪いときに投資をやめたら負ける」ということが、経営幹部の中で共通認識として出来ていたのもよかった。 フラッシュメモリーそのものは80年代からあったけど、本格的に量産投資を始めたのは03年から04年にかけてのことです。だから、いよいよ本格投資をするということが決まったとき、僕はもうセミコンダクター社(半導体部門)を離れて、次世代DVDの規格争いの当事者としてデジタルメディアネットワーク社(家電部門)にいました。
+よく覚えているけど、西田厚聰社長(当時)が NANDフラッシュへの集中投資と、(私が担当していた)HDDVD規格からの撤退を発表したのは、まさに同日。自分がずっと育ててきたNANDフラッシュ事業は晴れの日を迎えたのに、その時の自分は針のムシロ。「なんで自分は今向こうにいないんだろう」と恨めしく思ったりしたものですよ(笑)。
▽総合電機の一部門で半導体事業はできない
Q:日本の半導体の最後の勝ち残りの東芝メモリは、日本企業が買う可能性が低くなってきました。このことは、日本の半導体産業にどんな影響をもたらすのでしょうか。
A:フラッシュメモリーは日本が発明した唯一の半導体製品です。DRAMなどその他の製品は外国発のもので、日本はその改良に成功したに過ぎなかった。これが日本の会社の事業として消えていくのは個人的にはさみしい。
+ただ、一方で「誰が買おうと関係ないんじゃないの」とも思います。装置や素材など半導体産業の裾野を考えると影響はゼロではないけれど。
+そもそも「日本の産業」とは何か。日本に工場があるから?株主が日本人だから? 例えば英ARMをソフトバンクが買いましたが、では「これからARMは日本の会社になるのか」といったら、それは違う。国際化とはそんなものです。日本企業というアイデンティティを求めすぎると、おかしなことになる。そりゃあ、事業の方向性を共有できない買い主では困りますが。
+一方で「なぜ日本の半導体業界はダメになったのか」ということについては、きちんと総括をして、次に生かさなければならないと思う。 僕の昔からの持論ですが、総合電機メーカーの一部門として半導体事業をやることはできないと考えています。世界の半導体メーカーで、総合電機なのは韓国サムスン電子だけ。あとはすべて専業メーカーです。経営判断のスピードが違いすぎるから。
+だから、元部下もたくさんいる東芝が今回こんなことになってしまったことには胸が張り裂ける思いだけれど、分社してほんとうにようやく「外に出られた」のは、結果的には良かったと考えるべきなのかもしれない。
Q:外に出る東芝メモリの将来をどうみますか。
A:東芝について一番心配なのは次世代メモリー戦略です。10年先20年先に出てくるであろうフラッシュの「次」を開発するときに、きわめて有効である現在のフラッシュメモリーの知見を捨ててしまっていいのかと。失敗の経験と成功の経験を合わせもっていることは、次世代メモリーの開発に有効のはず。
+フラッシュメモリーの価値はこれからIoT(モノのインターネット)やビッグデータ時代にますます重要になる。プロセッサで処理した情報をためるために必ず、そしていくらでも必要になる。 「次」をどうするのかについても、ストレージは頭脳であるプロセッサと同期して開発していく必要がある。従来こういうロードマップはストレージデバイスであるサーバーメーカーなどが書いていたけれど、これを今後は半導体メーカー側が提案していくことになる。
+しかし、こうした「半導体は今後何を目指していくべきなのか」についての、全体としての戦略が検討されていないのは、大変心配なところです。
+東芝メモリをどこが買うのかはまだわかりませんが、ファンドはいつかエグジットしていなくなる。となると次の事業戦略を描く主体となるのは株主ではなく、今東芝メモリにいる経営者であり社員一人ひとりなんです。だから、気概は無くしてほしくないです。
http://diamond.jp/articles/-/130392
町田氏が、『東芝が「ゾンビ企業」化し、支離滅裂になっている』、 『通常ならば倒産しているはずの状態で、あり得ない珍事のオンパレードだが、その原因は、ゾンビ企業を健全な企業であるかの如く扱う日本のビジネス風土にある。 一刻も早く混乱を収拾するために、決算発表をできない東芝の株式を上場廃止にするとともに、きちんと破たん処理することが肝要だ。さもないと、日本はゾンビ企業が闊歩する国だと、世界中から異端扱いを受けかねない』、などと指摘しているのは、その通りだ。 『結局のところ、東芝の半導体メモリー事業の売却は、白紙になるリスクが非常に大きい・・東芝は無為に時間を費すよりは、自ら破たん処理を活用した再建策を模索すべきだろう。そのためには、儲からない国内原子力分野からの撤退と、半導体メモリー事業中心の企業としての再出発を基軸に据えるべき』、などの指摘にも大賛成だ。
闇株新聞は、経産省はWHを東芝に買わせたスネに傷を持つのに、『そんな責任など全く忘れて、今度は東芝の半導体事業売却でも指導的立場を維持しようと躍起になっています』、 『東芝現経営陣の当事者意識の決定的欠如と、「オール日本」であるはずの各勢力それぞれの「保身」が相まって、東芝はますます悪い方向に進んで行くことになります』、などの指摘は、町田氏ほど明確ではないものの、やはり「破綻」しかないと示唆しているようだ。
第三の記事は、上記2つとは全く違って、NAND型フラッシュメモリー事業について、その立ち上げに関与した元技術者の述懐である。他社が、『「あれだけ巨額な赤字を生んだDRAMと同じメモリーをまたやるなんてとんでもない」と半導体をよく知らない経営者が逃げたのかもしれないし、「東芝に特許を握られているフラッシュメモリーなんてやってられない」という判断になったのかもしれないですね』、として日本で独占的地位を築けた幸運があったとは、初めて知った。 『フラッシュメモリーは日本が発明した唯一の半導体製品です』、というのも、初めて知った。 『総合電機メーカーの一部門として半導体事業をやることはできないと考えています。世界の半導体メーカーで、総合電機なのは韓国サムスン電子だけ。あとはすべて専業メーカーです。経営判断のスピードが違いすぎるから』、との指摘も面白い。ゾンビの東芝から出る方がいいのかも知れない。
先ずは、経済ジャーナリストの町田 徹氏が5月23日付け現代ビジネスに寄稿した「ソンビ企業化した東芝で「あり得ない珍事」が多発中! 潔く「破たん処理」をしたらどうか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽ゾンビ企業が闊歩する国
・東芝が「ゾンビ企業」化し、支離滅裂になっている。 その第一は、先週月曜日(5月15日)、45日前に終了した期の「決算」を、決算の「結果」ではなく、「見通し」として発表したこと。
・第二は、その「見通し」で、日本企業として歴代2番目の規模の巨額赤字(9500億円)を出して、事実上の経営破たんを意味する「債務超過」(債務超過額5400億円)に本決算ベースで陥ったこと。企業として死に体なのに、隆々とビジネス活動を続ける、まさに異常事態なのだ。
・そして第三は、その債務超過解消の切り札だったはずの半導体メモリー事業の売却手続きが暗礁に乗り上げていること、である。
・通常ならば倒産しているはずの状態で、あり得ない珍事のオンパレードだが、その原因は、ゾンビ企業を健全な企業であるかの如く扱う日本のビジネス風土にある。 一刻も早く混乱を収拾するために、決算発表をできない東芝の株式を上場廃止にするとともに、きちんと破たん処理することが肝要だ。さもないと、日本はゾンビ企業が闊歩する国だと、世界中から異端扱いを受けかねない。
▽「見通し」発表の背景
・終わった決算期の「決算見通し」を発表するという珍事が起きた直接の原因は、東芝が、2016年度第3四半期の「四半期レビュー報告書」に続いて、2016年度本決算の「監査報告書」でも、会計監査人(PwCあらた監査法人)から「無限定適正」や「限定付き適正」といった監査意見(会計上のお墨付き)を得られなかったことである。
・この結果、同社は5月15日に決算を公表できず、会社の独自見解に過ぎない「決算見通し」を公表するという対応を選択した。 もちろん、決算発表資料の定番である「決算短信」は無く、独自スタイルの「2016年度通期業績見通しに関するお知らせ」(http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20170515_1.pdf)という資料を公表するにとどまった。
・東芝の綱川智社長は発表の席上、「期末から45日が経過しており、情報開示の観点から重要と判断した」「(今後)早期の(正規の)決算発表を目指して、独立監査人(あらたのこと)と取り組んでいく」と釈明せざるを得なかった。 同社は一昨年春の粉飾決算の発覚時にも、長期にわたって決算を発表できなかったほか、2016年度第3四半期にも発表延期を繰り返した経緯があり、何度も同じ轍を踏みたくないとの判断が働いたのだろう。
・また、2016年度第3四半期決算で、会計上のお墨付きを得られなかった際、東芝は、監査法人の首のすげ替えを広言していたが、今回の記者会見ではそんな傲慢な物言いはなく、綱川社長は「変更を決めたとは聞いていない」とトーンダウンした。
▽早めに上場廃止した方がいい
・だが、今回も、監査意見を取得できなかったという事実は、深刻な問題だ。独自スタイルの「通期業績見通し」を公表すれば、それで済まされるというような生半可な問題ではない。 これこそ、会計監査を担当したあらた監査法人が、東芝の会計処理を不適切と見ている証左だからだ。
・あらたが問題視しているのは、前期末直前に東芝がようやく破たん処理した米原子力子会社ウエスチングハウスの損失額やその発生時期とされるが、このことは東芝が再度、粉飾決算を問われかねないリスクに直面していることを意味している。
・一方、東京証券取引所はすでに一昨年秋、東芝株を粉飾決算を理由に「特設注意市場銘柄」に指定、投資家に注意喚起してきた。今春以降、経営・ガバナンスの改善が確認できない場合、東芝株を上場廃止にしなければならないという事情があったからだ。 今回、東芝が債務超過に陥ったことで、東芝株は8月1日付で東証1部から東証2部に降格になる。さらに、来年3月末に債務超過状態から脱出できないと、東芝株は自動的に上場廃止だ。
・しかし、またしても決算でまともな監査意見を取得できない問題が発生した。過去や今回の不適切な会計処理の存在を認める大幅決算修正でもない限り、6月末に提出期限を迎える有価証券報告書でも、東芝が監査法人から決算のお墨付きを得ることが困難な状況を象徴している。 これ以上の市場の混乱を防ぐため、東証は来年3月を待たずに、東芝株の上場廃止を実施すべきだろう。杜撰な情報開示が罷り通る慣例を残さないためにも、早期の上場廃止が求められている。
▽銀行は守ってくれるのか
・次に、東芝が支離滅裂なのは、会計上、何の裏付けもない独自の言い分に過ぎないにもかかわらず、その見通しで巨額の最終赤字を出して債務超過に陥った問題だ。 債務超過は、負債があまりに多くて、保有資産をすべて売却しても返済できない状態を意味するものだ。こうなれば企業の信用は失われる。通常ならば、銀行は融資の回収を急ぎ、一般取引先の企業も取引を拒むか現金取引に絞り込むような状態だ。
・ところが、東芝の主力行である三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループは5月15日、それぞれの決算発表の席で、国部毅・三井住友FG社長が「可能な限り支援する」と、佐藤康博みずほFG社長が「今の段階で監査法人の意見が付いていないからといって、融資のスタンスを変えることない」と述べ、そろって融資を継続する姿勢を鮮明にした。
・両行とも、東芝向け融資は巨額過ぎて回収が難しく、破たんさせれば巨額損失が発生しかねないので、なんとか経営を維持させたいのだろう。 そのために、両行が東芝にかねて水面下で迫ってきたのが、虎の子の半導体メモリー事業の売却だ。これによって、東芝は将来の成長エンジンを失い中長期の経営ビジョンを描けなくなるが、資本を調達することで目先は債務超過を解消できると踏んだのである。
・短絡的なつじつま合わせとしか言いようがないが、主力行も背に腹は代えられないのだろう。 それゆえ、東芝の半導体メモリー事業の売却を巡って資本提携先の米ウエスタンデジタル(WD)との対立が表面化している問題に関して、国部・三井住友FG社長は会見で「東芝とWDでしっかり協議してもらい、メモリー事業の売却を早期に行って財務基盤の回復を行う必要がある」と強調したという。
▽残された道は「破たん処理」
・だが、別の利害が錯綜し、この事業売却には暗雲が垂れ込めている。 新聞各紙の報道によると、5月19日に期限を迎えた2次入札には、韓国半導体大手SKハイニックスをスポンサーとする米投資ファンド「ベインキャピタル」や、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業、米半導体大手のブロードコムの3グループのほか、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などが名乗りをあげたという。
・しかし、このうち現実味のある候補は、経済産業省傘下の官民ファンド「産業革新機構」や政府系金融機関の日本政策投資銀行が水面下で「日米連合」と称してアライアンス候補としているKKRぐらいである。 残りは、東芝にとって魅力的な提案であっても、経済産業省が外為法などを盾に容認しない姿勢を示唆しており、最終的に実現しない可能性が大きい。
・では、すんなり経済産業省の思惑通り、産業革新機構、政投銀、KKRなどの日米連合が形成されるかというと、こちらも簡単な話ではない。他の日本企業や金融機関は、この案件に経済産業省が言うほどの技術的優位性を感じておらず、投融資への腰が重く、十分な資金を集まられない可能性が依然として高いからだ。
・加えて、WDが持ち分の過半数を要求していることも難問だ。実は日米連合はWDを取り込む腹づもりだったが、日米連合はそうしたWDの突出は認められないという。だが、WDは、自社の承諾の無い第3者への東芝保有株の売却を認めない構えで、国際仲裁裁判所にその差し止めも申し立てている。
・こうした事情が絡み合っているため、解くべき方程式は難解だ。15日の2次入札締め切りで、機構ら「日米連合」はまとまらず、入札参加の意向を表明しただけで、肝心の金額などの条件を提示できなかった裏には、こうした事情があったという。
・結局のところ、東芝の半導体メモリー事業の売却は、白紙になるリスクが非常に大きい。そして、債務超過を解消して事業を継続していくために必要だとしていた2兆円の資金の獲得に、東芝が成功しない可能性が大きいのだ。 そうなれば、東芝に残される道は、オーソドックスな破たん処理だけという事態になりかねない。
・ならば、東芝は無為に時間を費すよりは、自ら破たん処理を活用した再建策を模索すべきだろう。そのためには、儲からない国内原子力分野からの撤退と、半導体メモリー事業中心の企業としての再出発を基軸に据えるべきだ。 そして、債務超過を解消するため、主力行と折衝して、債権を株式に交換するデット・エクイティ・スワップを活用した金融支援策を講じてもらうほか、更生計画で必要になる資本、資金の出し手に再生機構や政投銀が就くよう依頼すべきだろう。 綱川社長は、ゾンビのままでは東芝を再生できないと肝に銘じるべきである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51821
次に、闇株新聞が5月31日付けで掲載した「ますます悪い方向に進んでいるとしか思えない東芝」を紹介しよう。
・昨日はお休みしてしまいましたが、やっぱりどうしても気になる東芝についてです。東芝の現経営陣は相変わらず「目先」で「安直」なことしか考えておらず、その周りには「保身」で汲々とする勢力しか見えていないからです。
・本誌は東芝については3月末の米子会社・ウェスティングハウス(以下、WH)の破産法適用申請直後から、「オール日本」の損得で考えるべきと強調しています。それは破産法適用申請で「オール米国」を敵に回してしまったためWHの損失は果てしなく東芝本社に押し付けられ、虎の子の半導体事業は徹底的に買い叩かれる結果にしかならないからです。
・本来なら民間企業である東芝の行く末を「オール日本」で考えるとは見当はずれな議論ですが、このままだと東芝だけでは辻褄を合わせられなくなり、その負担は「オール日本」にツケ回されるはずだからです。 東芝の現経営陣はとっくに当事者意識を失っており、ここにきてその「オール日本」に含まれるはずの銀行団、経産省、産業革新機構、東証などが、それぞれ「保身」に汲々としてバラバラに動いているため、本日の表題となるわけです。
・その半導体事業の売却は、確かに海外から複数の買い手がいるものの、まず「オール日本」として売却すべきかどうかを考えなければならないはずです。そもそも半導体事業の売却は、1兆円規模の貸出し残高のある銀行団がパニックになっているからと、2018年3月までに債務超過を解消しなければ上場廃止になるからという「目先」の理由からでしかないからです。
・東芝独自の「試算」では2017年3月末で5400億円の債務超過となっていますが、その解消のためと銀行団のパニックを抑えるためだけに、虎の子の半導体事業を海外に何が何でも売り飛ばすというのも「目先しか見ていない安直すぎる判断」となります。
・仮に上場廃止となっても半導体事業を中心に必死に経営を建て直し、銀行団に対してもしっかりとした返済計画を提示してパニックを抑えるという判断もあるはずで、それなら(もう遅いですが)3月末に連結対象から外すだけの目的でWHの破産法適用を申請して「オール米国」を敵に回す必要もなかったはずです。
・すべて東芝の現経営陣が「目先」だけにとらわれ、その時々で「安直」な判断をしているため、結果として東芝はますます泥沼にはまり込んでいくことになります。 その「安直」な半導体事業の売却ですが、確かに複数の買い手がいるため東芝の現経営陣でも「簡単にできる」作業となり、こういう時だけ何が何でもと頑張ってしまいます。
・こういう時こそ前面に出るべき官業(官民ではありません)ファンドの産業革新機構は、最初はKKRに頼って体面だけ保つためだけに巨額資金(注)を提供しようとしていたところ、最近は半導体事業の売却を国際仲裁裁判所に差し止めている(買い叩くための作戦です)ウエスタンデジタル(WD)にその資金を提供しようとしている節操のなさです。 (注)産業革新機構の投資資金は、3000億円の出資金のうち2860億円が政府分(つまり国民負担)で、さらに1兆8000億円の借入れに政府保証がつけられており(つまり国民負担となる可能性があり)、こういう時こそ「オール日本」のために頑張らなければならないはずです。まあ産業革新機構の現在の志賀俊之CEOこそ、日産自動車をルノーに食い尽くされるままに放置した張本人で、そもそも「オール日本」でモノを考えられる人ではありません。
・さらに2005年に「すでにボロボロになっていたWHの民間原子力事業」を英国核燃料会社(BNFL)から日本企業に買収させようと躍起になっていた経産省は、そんな責任など全く忘れて、今度は東芝の半導体事業売却でも指導的立場を維持しようと躍起になっています。
・もちろん銀行団は資金回収のために半導体事業を一刻も早く売り飛ばせとの大合唱であり(まあ民間企業なので理解できないわけではありませんが)、東証は何とか自ら引き金(上場廃止)を引かないように優遇措置を次々に繰り出しています。ここまで東証が甘やかせたことも、東芝が経営危機となった理由の1つです。
・その東証は、3月に東芝から再提出された特設注意市場銘柄から抜け出すための改善報告書の審査結果をそろそろ発表しなければなりません。ただ東証は3月に、審査結果が出るまでと東芝を監理ポスト(審査中)に割り当ててしまったため、そこで不合格ならその段階で上場廃止(整理ポスト割り当て)としなければなりません。今ごろ必死に「そうしないための言い訳」を考えているはずです。また甘やかせてしまうわけです。
・かくして東芝現経営陣の当事者意識の決定的欠如と、「オール日本」であるはずの各勢力それぞれの「保身」が相まって、東芝はますます悪い方向に進んで行くことになります。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2018.html
第三に、6月2日付けダイヤモンド・オンライン「東芝メモリ、総合電機メーカーの一部門で半導体はできない」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは藤井氏の回答、+は回答内の段落)
・1980年代から2004年まで東芝の半導体部門に在籍した藤井美英氏は、DRAMからNAND型フラッシュメモリーへ転換を当事者として経験した一人だ。“強いNANDフラッシュメモリー”が誕生するまでのエピソードや、その事業が売却されるに至った現状について胸の内を聞いた。(ふじい・よしひで/セイコーインスツル会長。1973年京大法学部卒、東芝入社。03年4月セミコンダクター社副社長、04年上席常務、デジタルメディアネットワーク社社長、09年専務、12年退任。1950年生まれ)
Q:東芝のNAND事業はなぜ成功したんですか。
A:僕はいつも「成功の偶然、失敗の必然」と言っているんですが、成功は意外と偶然もある。人と人との個人的な関係に助けられたとか、トップのサポートもありました。 想定外のことはいろいろです。デジカメが年1億5000万台の市場になると思わなかったし、カメラの高性能化も読めなかった。最も想定外だったのは、スマートフォンで、NANDにとっては「盆と暮れと正月が一緒にきた」感じでした。 インターネットの進歩とNANDフラッシュメモリーの生産のコスト削減が、結果的にすべて同じタイミングで進んだという幸運に助けられました。
Q:フラッシュメモリーが時代の製品に合致したと。
A:「ノンボラタイル(不揮発性)でハイエンド」のメモリーをやるべき、というのはDRAMの失敗ですでに学んでいて、進むべき方向性はわかっていた。 それと、他の競合フラッシュメモリーメーカーがたまたま事業を辞めてくれたのも幸運でした。「あれだけ巨額な赤字を生んだDRAMと同じメモリーをまたやるなんてとんでもない」と半導体をよく知らない経営者が逃げたのかもしれないし、「東芝に特許を握られているフラッシュメモリーなんてやってられない」という判断になったのかもしれないですね。
Q:1992年に東芝がサムスンに技術供与したことはいまだに批判があります。
A:僕はちょっと違うと思っています。当時サムスンと東芝は協業関係にあって、後の合弁相手である旧サンディスクとの大手3社で良い市場を構成できました。これによってNANDは、DRAMのような「自分が死ぬか、相手を殺すか」といった激しい競争環境とは、かなり違う市場ができたのです。
Q:2000年からサンディスクと共同投資をスタートします。
A:小林(清志・元東芝副社長)君と二人でサンディスクに行っていろいろ話をしました。苦労もあったし楽しみもあったよ。サンディスクの創業メンバーとは夢を共有できたから。エリ・ハラリ(元CEO)とはこれからフラッシュメモリーが広げる市場のこととかを語りあったね。
+最初にサンディスクとの最初の合弁契約を作ったときに、チェンジ・オブ・コントロール条項(資本拘束条項。経営権の移動に関する条項)を入れたのは僕。当時ベンチャー企業だったサンディスクが将来的にどこかに買収されることを想定しての条項だったけど、まさか買収される主体が東芝になるとは、思ってもみなかった。
Q:サンディスクは競合企業、しかも米国企業と合弁を組むという判断は当時の東芝としては画期的でした。
A:そうは言っても、当時から「東芝は国際展開力では他社に負けない」という自負はありました。STマイクロエレクトロニクスやフィリップス、シーメンスにモトローラ、それに台湾メーカーなど、ほとんどの大手半導体メーカーとは何らかの提携を組んできた経験がありましたから。
+80年代から2000年代まで、当時の半導体業界の中でもこれほどいろいろな相手と組んで何かをやった会社はないんじゃないかな。だから、サンディスクと組むベースはあって、何の違和感もなかったですね。ビジネス的にはいろいろ困難もあったけれど。
Q:DRAM撤退とNANDフラッシュへの集中は、ほぼ同じ時期に併行して行われたのですか。
A:それまで、プロセスドライバー(技術開発をけん引するもの)であり“神様”だったDRAMから撤退するのだから、大ごとですよ。しかも、撤退と集中と提携を一緒にやった。設備投資も、経営は決断してくれた。半導体は度胸とかいい意味での「いい加減さ」も大事で、そういう意味では当時の半導体カンパニー社長の判断もよかったといえるかもしれない。
+DRAMで負けた総括はそのころ社内ではしていて「景気が悪いときに投資をやめたら負ける」ということが、経営幹部の中で共通認識として出来ていたのもよかった。 フラッシュメモリーそのものは80年代からあったけど、本格的に量産投資を始めたのは03年から04年にかけてのことです。だから、いよいよ本格投資をするということが決まったとき、僕はもうセミコンダクター社(半導体部門)を離れて、次世代DVDの規格争いの当事者としてデジタルメディアネットワーク社(家電部門)にいました。
+よく覚えているけど、西田厚聰社長(当時)が NANDフラッシュへの集中投資と、(私が担当していた)HDDVD規格からの撤退を発表したのは、まさに同日。自分がずっと育ててきたNANDフラッシュ事業は晴れの日を迎えたのに、その時の自分は針のムシロ。「なんで自分は今向こうにいないんだろう」と恨めしく思ったりしたものですよ(笑)。
▽総合電機の一部門で半導体事業はできない
Q:日本の半導体の最後の勝ち残りの東芝メモリは、日本企業が買う可能性が低くなってきました。このことは、日本の半導体産業にどんな影響をもたらすのでしょうか。
A:フラッシュメモリーは日本が発明した唯一の半導体製品です。DRAMなどその他の製品は外国発のもので、日本はその改良に成功したに過ぎなかった。これが日本の会社の事業として消えていくのは個人的にはさみしい。
+ただ、一方で「誰が買おうと関係ないんじゃないの」とも思います。装置や素材など半導体産業の裾野を考えると影響はゼロではないけれど。
+そもそも「日本の産業」とは何か。日本に工場があるから?株主が日本人だから? 例えば英ARMをソフトバンクが買いましたが、では「これからARMは日本の会社になるのか」といったら、それは違う。国際化とはそんなものです。日本企業というアイデンティティを求めすぎると、おかしなことになる。そりゃあ、事業の方向性を共有できない買い主では困りますが。
+一方で「なぜ日本の半導体業界はダメになったのか」ということについては、きちんと総括をして、次に生かさなければならないと思う。 僕の昔からの持論ですが、総合電機メーカーの一部門として半導体事業をやることはできないと考えています。世界の半導体メーカーで、総合電機なのは韓国サムスン電子だけ。あとはすべて専業メーカーです。経営判断のスピードが違いすぎるから。
+だから、元部下もたくさんいる東芝が今回こんなことになってしまったことには胸が張り裂ける思いだけれど、分社してほんとうにようやく「外に出られた」のは、結果的には良かったと考えるべきなのかもしれない。
Q:外に出る東芝メモリの将来をどうみますか。
A:東芝について一番心配なのは次世代メモリー戦略です。10年先20年先に出てくるであろうフラッシュの「次」を開発するときに、きわめて有効である現在のフラッシュメモリーの知見を捨ててしまっていいのかと。失敗の経験と成功の経験を合わせもっていることは、次世代メモリーの開発に有効のはず。
+フラッシュメモリーの価値はこれからIoT(モノのインターネット)やビッグデータ時代にますます重要になる。プロセッサで処理した情報をためるために必ず、そしていくらでも必要になる。 「次」をどうするのかについても、ストレージは頭脳であるプロセッサと同期して開発していく必要がある。従来こういうロードマップはストレージデバイスであるサーバーメーカーなどが書いていたけれど、これを今後は半導体メーカー側が提案していくことになる。
+しかし、こうした「半導体は今後何を目指していくべきなのか」についての、全体としての戦略が検討されていないのは、大変心配なところです。
+東芝メモリをどこが買うのかはまだわかりませんが、ファンドはいつかエグジットしていなくなる。となると次の事業戦略を描く主体となるのは株主ではなく、今東芝メモリにいる経営者であり社員一人ひとりなんです。だから、気概は無くしてほしくないです。
http://diamond.jp/articles/-/130392
町田氏が、『東芝が「ゾンビ企業」化し、支離滅裂になっている』、 『通常ならば倒産しているはずの状態で、あり得ない珍事のオンパレードだが、その原因は、ゾンビ企業を健全な企業であるかの如く扱う日本のビジネス風土にある。 一刻も早く混乱を収拾するために、決算発表をできない東芝の株式を上場廃止にするとともに、きちんと破たん処理することが肝要だ。さもないと、日本はゾンビ企業が闊歩する国だと、世界中から異端扱いを受けかねない』、などと指摘しているのは、その通りだ。 『結局のところ、東芝の半導体メモリー事業の売却は、白紙になるリスクが非常に大きい・・東芝は無為に時間を費すよりは、自ら破たん処理を活用した再建策を模索すべきだろう。そのためには、儲からない国内原子力分野からの撤退と、半導体メモリー事業中心の企業としての再出発を基軸に据えるべき』、などの指摘にも大賛成だ。
闇株新聞は、経産省はWHを東芝に買わせたスネに傷を持つのに、『そんな責任など全く忘れて、今度は東芝の半導体事業売却でも指導的立場を維持しようと躍起になっています』、 『東芝現経営陣の当事者意識の決定的欠如と、「オール日本」であるはずの各勢力それぞれの「保身」が相まって、東芝はますます悪い方向に進んで行くことになります』、などの指摘は、町田氏ほど明確ではないものの、やはり「破綻」しかないと示唆しているようだ。
第三の記事は、上記2つとは全く違って、NAND型フラッシュメモリー事業について、その立ち上げに関与した元技術者の述懐である。他社が、『「あれだけ巨額な赤字を生んだDRAMと同じメモリーをまたやるなんてとんでもない」と半導体をよく知らない経営者が逃げたのかもしれないし、「東芝に特許を握られているフラッシュメモリーなんてやってられない」という判断になったのかもしれないですね』、として日本で独占的地位を築けた幸運があったとは、初めて知った。 『フラッシュメモリーは日本が発明した唯一の半導体製品です』、というのも、初めて知った。 『総合電機メーカーの一部門として半導体事業をやることはできないと考えています。世界の半導体メーカーで、総合電機なのは韓国サムスン電子だけ。あとはすべて専業メーカーです。経営判断のスピードが違いすぎるから』、との指摘も面白い。ゾンビの東芝から出る方がいいのかも知れない。
タグ:総合電機メーカーの一部門として半導体事業をやることはできないと考えています。世界の半導体メーカーで、総合電機なのは韓国サムスン電子だけ。あとはすべて専業メーカーです。経営判断のスピードが違いすぎるから 「次」を開発するときに、きわめて有効である現在のフラッシュメモリーの知見を捨ててしまっていいのかと 日本企業というアイデンティティを求めすぎると、おかしなことになる フラッシュメモリーは日本が発明した唯一の半導体製品です 総合電機の一部門で半導体事業はできない 最初にサンディスクとの最初の合弁契約を作ったときに、チェンジ・オブ・コントロール条項(資本拘束条項。経営権の移動に関する条項)を入れたのは僕。当時ベンチャー企業だったサンディスクが将来的にどこかに買収されることを想定しての条項だったけど、まさか買収される主体が東芝になるとは、思ってもみなかった。 他の競合フラッシュメモリーメーカーがたまたま事業を辞めてくれたのも幸運でした。「あれだけ巨額な赤字を生んだDRAMと同じメモリーをまたやるなんてとんでもない」と半導体をよく知らない経営者が逃げたのかもしれないし、「東芝に特許を握られているフラッシュメモリーなんてやってられない」という判断になったのかもしれないですね DRAMからNAND型フラッシュメモリーへ転換を当事者として経験した一人 藤井美英 東芝メモリ、総合電機メーカーの一部門で半導体はできない ダイヤモンド・オンライン 東芝現経営陣の当事者意識の決定的欠如と、「オール日本」であるはずの各勢力それぞれの「保身」が相まって、東芝はますます悪い方向に進んで行くことになります 2005年に「すでにボロボロになっていたWHの民間原子力事業」を英国核燃料会社(BNFL)から日本企業に買収させようと躍起になっていた経産省は、そんな責任など全く忘れて、今度は東芝の半導体事業売却でも指導的立場を維持しようと躍起になっています すべて東芝の現経営陣が「目先」だけにとらわれ、その時々で「安直」な判断をしているため、結果として東芝はますます泥沼にはまり込んでいくことになります 虎の子の半導体事業を海外に何が何でも売り飛ばすというのも「目先しか見ていない安直すぎる判断 東芝の現経営陣はとっくに当事者意識を失っており、ここにきてその「オール日本」に含まれるはずの銀行団、経産省、産業革新機構、東証などが、それぞれ「保身」に汲々としてバラバラに動いているため、本日の表題となるわけです。 、「オール日本」の損得で考えるべきと強調 ますます悪い方向に進んでいるとしか思えない東芝 闇株新聞 東芝は無為に時間を費すよりは、自ら破たん処理を活用した再建策を模索すべきだろう 東芝に残される道は、オーソドックスな破たん処理だけという 債務超過を解消して事業を継続していくために必要だとしていた2兆円の資金の獲得に、東芝が成功しない可能性が大きいの 東芝の半導体メモリー事業の売却は、白紙になるリスクが非常に大 事業売却には暗雲 残された道は「破たん処理」 両行とも、東芝向け融資は巨額過ぎて回収が難しく、破たんさせれば巨額損失が発生しかねないので、なんとか経営を維持させたいのだろう。 そのために、両行が東芝にかねて水面下で迫ってきたのが、虎の子の半導体メモリー事業の売却 融資を継続する姿勢を鮮明にした これ以上の市場の混乱を防ぐため、東証は来年3月を待たずに、東芝株の上場廃止を実施すべきだろう あらたが問題視しているのは、前期末直前に東芝がようやく破たん処理した米原子力子会社ウエスチングハウスの損失額やその発生時期とされるが、このことは東芝が再度、粉飾決算を問われかねないリスクに直面していることを意味 会計監査を担当したあらた監査法人が、東芝の会計処理を不適切と見ている証左 さもないと、日本はゾンビ企業が闊歩する国だと、世界中から異端扱いを受けかねない 決算発表をできない東芝の株式を上場廃止にするとともに、きちんと破たん処理することが肝要だ ゾンビ企業を健全な企業であるかの如く扱う日本のビジネス風土 務超過解消の切り札だったはずの半導体メモリー事業の売却手続きが暗礁に乗り上げていること 「債務超過」(債務超過額5400億円)に本決算ベースで陥ったこと 「決算」を、決算の「結果」ではなく、「見通し」として発表 支離滅裂 ソンビ企業化した東芝で「あり得ない珍事」が多発中! 潔く「破たん処理」をしたらどうか 現代ビジネス 町田 徹 (その31)(ソンビ企業化した東芝で「あり得ない珍事」が多発中! 潔く「破たん処理」をしたらどうか、ますます悪い方向に進んでいるとしか思えない東芝、総合電機メーカーの一部門で半導体はできない) 不正会計問題 東芝
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