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北朝鮮問題(その5)(「北朝鮮危機」はあざとい猿芝居だ!、北朝鮮威圧策を諦め中国を批判するトランプ政権の迷走、米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない」) [世界情勢]

北朝鮮問題については、4月30日に取上げたが、今日は、(その5)(「北朝鮮危機」はあざとい猿芝居だ!、北朝鮮威圧策を諦め中国を批判するトランプ政権の迷走、米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない」) である。

先ずは、ジャーナリスト 半田 滋氏が5月3日付け現代ビジネスに寄稿した「「北朝鮮危機」はあざとい猿芝居だ! 日米朝「形だけ」の演出 軍事のプロなら一目でわかる」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽ひとつめのブラフ
・北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、朝鮮半島近くに空母「カールビンソン」 を派遣した米国、対抗するように300門の自走砲を並べて一斉砲撃をみせた北朝鮮、空母型護衛艦を初の米艦防護に派遣した日本…。  役者がそろい、大向こうをうならせるケレン味あふれる大芝居。「トランプ屋! 金屋!」。そして「安倍屋!」
・おや、と疑問を抱かせたのはまず米国だった。 米太平洋艦隊は4月10日、米韓合同演習「フォールイーグル」に参加し、シンガポールに寄港した後、オーストラリアへ向かう予定だったカールビンソンを「西太平洋の北部海域に派遣する」と発表した。朝鮮半島沖に地上攻撃ができる空母を差し向けるというのだ。
・北朝鮮では翌11日、国会にあたる最高人民会議が平壌(ピョンヤン)で開かれ、この日金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の党第1書記就任5周年を迎える。15日には金日成(キムイルソン)国家主席生誕105周年があり、各国メディアを招待して大規模な軍事パレードが予定されていた。
・空母派遣という物騒なプレゼントは、生誕を記念して6回目の核実験もしくは米国まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射など「絶対にやるなよ」というトランプ政権からのメッセージである。 これに対抗するように北朝鮮は軍事パレードに潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星」、新型の大陸間弾道弾(ICBM)など米国の脅威になる兵器を次々に登場させ、期待通り、もとい予想通りの見せ場を演出した。
・フィナーレは翌16日、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の新浦(シンポ)付近からの弾道ミサイル1発の発射だった。直後に空中で爆発し、数時間後、韓国のソウルに到着したペンス米副大統領が対応に頭を痛めることもなく、生誕式典は幕を閉じた。
・米国は北朝鮮の「誠意」に答える。米太平洋軍司令部当局者は18日、軍事パレードにあわせて派遣すると発表していたカールビンソンが、実はパレード当日には、朝鮮半島から約5600キロも離れたインドネシア近くを航行していたと発表した。 カールビンソンは当初の予定通り、オーストラリア海軍と共同訓練を行っており、朝鮮半島へは舳先を向けてさえいなかった。 トランプ大統領が「我々は大船団を送っている」と述べたのは、得意の「オルタナティブ・ファクト(もうひとつの真実)」だったのである。 米軍最高指揮官の大統領が空母の行動を知らないはずがない。朝鮮半島へ向かわせるとの発表は、ブラフだったと考えるほかない。
▽瞬殺できる無謀な配備
・カールビンソンはその後、海上自衛隊の艦艇と共同訓練しながらゆっくり西太平洋を北上した。米海軍は29日、カールビンソンの周囲を固めて進む海上自衛隊の護衛艦2隻と米海軍の巡洋艦と駆逐艦3隻の映像を公開した。
・しろうと目には頼もしい限りの「嗚呼、堂々の我が艦隊」だが、情勢が緊迫しているならカメラに映りやすいような位置関係にはならない。臨戦態勢ならば、潜水艦や航空機からの攻撃に備えてそれぞれの艦艇は15キロから20キロも離れて配置するのが当たり前だからである。
・空母の周囲を艦艇が守るように並ぶ映像は「フォト・エクササイズ(写真用訓練)」と呼ばれる。相当ヒマか、安全が確保されている場合に限定される。日米の共同訓練は北朝鮮に見せることが最大の狙いだったのだ。よっ、トランプ屋!
・最後の懸案だった4月25日の北朝鮮人民軍創建85周年は何事もなく終わり、締めくくりに29日、北朝鮮は平安南道北倉(ピョンアンナムドプクチャン)付近から北東方向に弾道ミサイル1発を発射したものの、これも途中で爆発して終わった。 最近では発射に成功することが多かったミサイルが二度連続して爆発したのは、トランプ大統領へのメッセージとみるべきではないだろうか。ミサイル発射をやめることはないが、現状では米国の脅威にはならない、という北朝鮮なりの回答である。
・金正恩委員長の考えを忖度することなく、「失敗」の一言で片づけては失礼というものだろう。 北朝鮮の「深謀遠慮」はまだある。 朝鮮中央通信によると、25日に軍創建後、史上最大規模とされる演習があり、300門以上の自走砲による一斉砲撃が行われた。公開された映像は3列に並んだ自走砲が列ごとに海を隔てた陸地へ向かって一斉に砲撃している。勇ましいことこの上ないが、これほどケレン味あふれる光景はない。
・自走砲と自走砲の距離はわずか10メートル程度。300門あろうが、それ以上だろうが、カールビンソンに搭載されたFA18戦闘攻撃機なら上空からの爆弾投下で瞬殺できる無謀な配置となっている。 演習とは、本番で想定される事態に備えて行うのが常識であり、本来なら自走砲は点々と離れ、上空から見つけにくいようカモフラージュされる。
・見てくればかりを強調したこの演習は、北朝鮮国民に対して「米国に毅然と立ち向かう我が人民軍」を「見せる」のと同時に米国に対し、「軍の威力を示すけれど、決して本番を想定してはいない」と訴えるシグナルとなっている。 「役者やのう…」(古いか)。 米国と北朝鮮の役者はそろった。最後は日本である。
▽形だけ」の米艦防護
・カールビンソンに航空燃料などを洋上補給する米海軍の補給艦を護衛するため、海上自衛隊の空母型護衛艦「いずも」が1日、横須賀基地を出航した。 安全保障関連法にもとづく、「武器等防護」適用の第1号である。「いずも」は太平洋で米補給艦と合流し、四国沖まで航行する。 米艦艇を守る「武器等防護」は現場の指揮官の判断で武器使用ができ、集団的自衛権行使と変わりないとして野党が憲法違反と批判した自衛隊行動のひとつである。
・奇妙なのは白羽の矢が立ったのが「いずも」だったことだ。 空母のように舳先から艦尾まで平らな全通甲板を持ち、ヘリコプターを搭載する役割の「いずも」は他の護衛艦と比べ、防御力で格段に劣る。自らを守ることさえ覚束ないのに米補給艦に対する攻撃を防ぐことなど不可能に近い。 もっとも北朝鮮海軍に太平洋で活動する能力はないので攻撃を受ける心配はないが、米補給艦と共同行動するのは四国沖で終わり、日本海には入らないというのは文字通り「形だけ」の米艦防護であることを示している。
・「いずも」は15日にシンガポールで開催される国際観艦式に参加する予定があり、同方向に進む米補給艦との「二人旅」に選ばれたのだった。 安全保障関連法にもとづく、自衛隊の活動は南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊に「駆け付け警護」を命じてから2件目。安倍晋三首相は任務付与から3ヵ月が経過した3月10日に撤収命令を出し、「駆け付け警護」は行わずに終わる。
・「いずも」による「武器等防護」が形式的にすぎないのと同様、「形だけ」だったといえる。安倍政権にとって、安全保障関連法は実施段階に入ったという実績づくりこそが重要なのだろう。 米軍と行動を共にすることでトランプ大統領に対米追従の姿勢をみせつつ、形式的な対米支援にとどめたことで、北朝鮮へは「戦うことまでは想定していない」というただし書きを示すことになった。
・「これが政治だ」といえば、それまでだが、真相を探れば北朝鮮問題を巧みに利用する安倍政権の姿が浮かび、日本国民という観客の大向こう受けを狙ったあざとい猿芝居の舞台裏が見えてくる。
▽なぜ中韓に向かう閣僚がいないのか…
・安倍首相は13日の参院外交防衛委員会で、北朝鮮の軍事力について「サリンを(ミサイルの)弾頭に着け、着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と指摘してみせた。 何を根拠に言うのか不明だが、国民に安全安心を提供するのではなく、脅しの言葉を吐くことにより、森友問題や共謀罪といった国内問題から目をそらさせようとする意図がうかがえる。
・脅しが効いたのか、金日成生誕記念日の4月15日、弾道ミサイル攻撃を受けた際の避難方法などを紹介する内閣官房の「国民保護ポータルサイト」のアクセス数は45万8373件と急増し、3月のアクセス数(45万858件)を1日で上回った。 海外渡航中の邦人に安全情報を提供する外務省のメールサービス「たびレジ」の登録者も急増し、韓国関連の登録者数は2倍にふくれあがった。
・遂に4月29日のミサイル発射時には東京メトロや新幹線の一部が運転を見合わせる事態にまでなった。  ミサイル発射の報道は午前6時6分だったが、5時半ごろには発射されており、日本に到達していたとすれば10分後の5時40分ごろのはず。第一報があった時点で終わった話だったのだから、噴飯ものというほかない。
・観客が大芝居に感情を激しく揺さぶられ、平常心を失いつつある一方で、ゴールデンウィークに外遊する閣僚は半数にあたる11大臣にものぼる。副大臣は11人、政務官は8人が日本を不在にする。 日本の行く末を心配していないか、実は心配いらないことを知っているかのどちらかであろう。
・訪問先は米国、英国、ロシア、東南アジア各国など。本気で北朝鮮情勢を不安視するなら北朝鮮に影響力がある中国や韓国に向かうはずだが、そんな閣僚は一人もいない。 背筋も凍るようなケレン味たっぷりの舞台を見せられ、「ああ、すごいお芝居だった」と感動する観客は次も入場料にあたる一票を安倍政権に捧げるのだろうか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51641

次に、 軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が6月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「北朝鮮威圧策を諦め中国を批判するトランプ政権の迷走」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国は北朝鮮の核・ミサイル問題で軍事的圧力を掛けるのを諦めた様子だ。 朝鮮半島沖に出していた空母2隻は6月6日、日本海を去り、近日中に西太平洋に残る空母は横須賀を母港とする「ロナルド・レーガン」1隻という平常の状態に戻る。
・米国防長官ジェームズ・マティス海兵大将は、国防総省の記者会見やCBSテレビの番組で「軍事的解決に突き進めば信じられない規模の悲劇的結果となる」と力説し「外交的手段による解決のため、国連、中国、日本、韓国と協力して行く」と述べている。国連安保理は北朝鮮への経済制裁強化を決議したが、ほとんど従来の制裁と変わらない内容で、日本に対する核・ミサイルの脅威は高まる一方だ。
▽空母3隻が1隻の体制に 原潜も攻撃能力低い
・核・弾道ミサイル開発を進める北朝鮮に対して、米海軍は4月8日、シンガポールからオーストラリア訪問に向かっていた空母「カール・ヴィンソン」を反転させ、北西太平洋に向かわせる、と発表。同艦は4月29日に日本海に入った。昨年11月から横須賀で定期修理に入っていた空母「ロナルド・レーガン」は5月7日修理を終え、試験航海の後16日出港、日本海に向かった。さらにワシントン州キトサップ港から6月1日に空母「ニミッツ」が出港、日本のメディアでは「空母3隻で北朝鮮に圧力を掛ける」とも報じられた。
・だが「カール・ヴィンソン」はすでに約6ヵ月の間、海外に展開しているため、乗組員の拘禁性ノイローゼを防ぐために、カリフォルニア州サンディエゴの母港に戻ることが必要だ。一方で「ニミッツ」はアラビア海など中東方面に展開する予定だから、西太平洋は通過するだけで、仮に日本海に入っても顔を出す程度。残るのは横須賀を母港とする「ロナルド・レーガン」1隻になり、普段の配置に戻ることになる。
・巡航ミサイル「トマホーク」を154発も搭載できる原潜「ミシガン」は、4月25日釜山に入港、攻撃能力を誇示した。だがその後、6月6日に釜山に入った原潜「シャイアン」はもっぱら艦船攻撃用の潜水艦で、魚雷に加え「トマホーク」は12発余りを積めるだけだ。
▽マティス国防長官 「軍事的解決は悲劇になる」
・マティス国防長官が「軍事的解決」に突き進むべきではないと公言するのだから、いかに米国が攻撃能力を誇示しても威嚇効果はない。日本海から空母が引きあげたのも当然だ。 その理由としてマティス長官が5月19日に国防総省での記者会見で「信じられない規模の悲劇的な結果となる」と語ったのには十分な根拠がある。
・北朝鮮は、1990年にソ連が、92年に中国がそれぞれ韓国と国交を樹立して孤立したため核兵器開発を始め、93年3月には核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言した。 しかし3ヵ月の脱退予告期限切れ寸前の6月に、米朝高官会談で脱退宣言を撤回し、国際原子力機関(IAEA)の査察も受けることになった。だが査察に非協力的で核兵器開発の疑いが濃くなったため、米国(クリントン政権)は北朝鮮寧辺(ヨンビョン)の原子炉とプルトニウムを抽出する燃料棒再処理施設に対する航空攻撃を計画した。
・しかし在韓米軍司令部は、航空攻撃を実行すれば、1953年の朝鮮戦争休戦協定は破棄となり、全面的戦争が再開される、と判断。そうなれば「最初の90日間で米軍の死傷5万2000名、韓国軍の死傷49万名、民間人死者は100万人を超える」との損害見積もりを本国政府に提出した。 航空攻撃だけを考えていたワシントンの高官たちはこれを見て愕然とし、攻撃を諦めてカーター元大統領を平壌に派遣、当面は火力発電用の重油を提供するとともに、高純度プルトニウムが出にくい軽水炉2基を建設するのと引き換えに核開発を停止することで合意し、危機は回避された。
▽北朝鮮のミサイル能力 朝鮮戦争当時とは格段に向上
・今日、米軍が北朝鮮を攻撃しようとすれば、その困難と危険は94年当時の比ではない。原子炉などは空から丸見えの固定施設だから、破壊自体は容易だが、核弾頭となれば、どこにあるかが分からない。 94年の北朝鮮には、地上部隊で侵攻する以外の反撃能力は無かったが、今日では弾道ミサイルがある。自走発射機に載せて移動し、谷間のトンネルなどに隠れ、命令が出れば出て来て、ミサイルを立てて発射するから、米軍が先制攻撃をしようにも目標の位置が分からない。仮に一部を壊せても残りのミサイルが韓国や日本に向けて発射されるだろう。
・またソウルの北約40キロの停戦ラインの北側は、朝鮮戦争中に中国軍が造った地下陣地となっている。半島を横断する全長240キロ、奥行き30キロの巨大な要塞地帯は、米軍の猛烈な爆撃、砲撃に耐えて戦線を守り抜いたから、それが今日の停戦ラインになっている。 北朝鮮軍はそこに170ミリ長距離砲、射程60キロの22連装の車載ロケット砲など、砲2500門を配備している。その数はソウル前面だけでも350門と見られる。これが一斉射撃すれば、「ソウルは火の海になる」と北朝鮮が言うのは嘘ではない。
▽日本にも打撃大きい 難民流入や投資の回収不能
・もし北朝鮮が米軍、韓国軍の攻撃を受け、滅亡が迫れば、金正恩氏は、自暴自棄で「死なばもろとも」の心境になり、核ミサイルを米軍基地や大都市に向け発射する公算は高い。 日本にとっても、仮にその戦禍を免れたとしても、風向きによっては放射性降下物が来るし、残留放射能と経済の混乱で韓国に住めなくなった難民が大量に流入することもありそうだ。韓国への企業の投資や融資は回収不能となる。戦争が終わっても、難民が帰国できるよう朝鮮半島の復興に日本は莫大な寄与を求められるだろう。
・これを考えれば、米国が23年前にあきらめた北朝鮮攻撃を今日実行する可能性はごく低い。このことを、私は「北朝鮮攻撃説」が高まった3月以来、ずっと説いてきたが、マティス長官が全く同じ判断を示したことに安堵した。 トランプ大統領は、おそらく状況を知らずに威勢のよい発言をしたものの、マティス長官や国家安全保障問題担当の大統領補佐官ハーバート・マクマスター陸軍中将ら、現実を知る軍人の説明を聞いて、振り上げた拳をそっと引きこめたように見える。
・日本の安全と国益にとっては、朝鮮半島で戦争が起こるより、起こらない方が良いのは当然だ。だが、米国がもし北朝鮮の核問題を事実上棚上げにし、核とミサイルの開発と配備がさらに進むならば、相手は将来、何らかの理由で自暴自棄の状況になりかねない国だけに危険は高まる。 一方、マティス国防長官は6月3日シンガポールでの「アジア安全保障会議」で演説し、中国の南シナ海、東シナ海での行動を強く批判しただけでなく、台湾に関して「防衛装備の提供で協力する」と中国をもっとも刺激する発言をした。
・北朝鮮の核問題に対処するには、北朝鮮の貿易額の90%を占める中国の協力が不可欠で、マティス長官自身もそれを言っている。 国連安全保障理事会が6月2日に決めた北朝鮮の制裁は、禁輸の対象となる物品や制裁手段などは従来のままだ。単に高官14人と4機関(従来39人、42機関)を渡航禁止、資産凍結のリストに追加しただけだから、効果がありそうになく、中国が独自で経済的圧力をかけてくれることに期待せざるをえない。
・にもかかわらず、米国防長官が中国と対立する姿勢を示したのは不可解だ。 トランプ政権としては、北朝鮮に対する軍事行動はできず、威圧も尻すぼみになったため、東アジアでの米国の威信が低下することを案じ、中国に対し強硬な発言をすることで存在感を保つことを狙ったか、とも考えられる。 また南シナ海での岩礁の領有権問題を抱えるベトナム、マレーシアなどの防衛関係者から「米国は北朝鮮の核問題で中国の協力を求めるあまり、南シナ海問題を放置するのでは」との懸念も出ているため、その不安の除去をはかったのかもしれない。
・だが東南アジア諸国はすべて中国主導のアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の加盟国で、中国との経済関係をさらに拡大しようと努めており、米中の対立を期待しているわけでもない。 中国、北朝鮮に対する米国の首尾一貫しない姿勢は、中東、欧州に対しても見られるトランプ政権の対外政策全体の迷走の一端とも言えよう。
http://diamond.jp/articles/-/131771

第三に、ガバナンスアーキテクト機構研究員 部谷 直亮氏が6月16日付けJBPressに寄稿した「米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない」 ソウルにおけるメガシティ戦闘で泥沼化の恐れ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今年の春、米軍の北朝鮮への先制攻撃の可能性を報じたメディアやジャーナリストは今やすっかり口を閉ざしてしまった。中にはいまだにそうした見解を述べる論者も散見されるが、現実的にはその可能性はきわめて薄い。
・5月21日、米軍の準機関紙「military times」は、北朝鮮への先制攻撃はリスクが高く、トランプ政権は攻撃を考えていないとする記事を掲載した。記事の概要は以下のとおりである。 トランプ政権は、北朝鮮への軍事的選択肢はないと考えている。 確かに北朝鮮の現政権によるミサイル実験は頻繁さを増し、金正恩は米西海岸への核攻撃能力獲得に近づいている。だが、米国の軍高官は、先制攻撃が大惨事を招き、最悪の場合、10万人の民間人を含む大量の死者を生み出すと懸念している。
・まず、国境地帯の花崗岩の山岳地帯に秘匿された北朝鮮の砲兵部隊は、砲撃から数分で山中に秘匿できる。また、韓国のソウルは非武装地帯から約56キロメートルにある人口2500万人の大都市である。シンクタンクの分析では、170ミリ自走砲、240ミリおよび300ミリの多連装ロケットシステムがソウルを攻撃できる。特に300ミリロケットがソウルに向けられた場合、都市火災が発生する。数百万人の民間人がソウルから南下して鉄道・航空・道路における大混乱をもたらし、大規模な人道危機を引き起こす。
・元航空戦闘軍団司令官のハーバート・カーライル元空軍大将は、「米韓連合軍が北朝鮮を倒すのは間違いないが、韓国の民間人犠牲者を減らすのに十分な迅速さで北朝鮮軍を機能停止に追い込めるかが最大の問題だ」と警鐘を鳴らす。専門家たちも、ひとたび通常戦争が始まれば戦いは数カ月以上続くとみている。
・米軍が特に懸念しているのが、ソウルの一角に北朝鮮軍が侵入する事態である。北朝鮮軍は非武装地帯に多数掘削した秘密トンネルから1時間に2万人を侵入させることができる。これは「恐るべきメガシティ戦闘」を引き起こす可能性がある。カーライル元空軍大将は「ソウルのどこかに北朝鮮軍が侵入すれば、航空戦力の優位性は相対化される。メガシティ戦闘では航空戦力は極めて限定的な役割しか発揮できない」と指摘する。
・米海兵隊の活動も困難である。第1の理由は、海兵隊は朝鮮戦争以来、大規模な強襲揚陸作戦を行っていないこと。第2は、現在西太平洋に展開中の5~6隻の水陸両用艦艇では、上陸作戦に必要な1~1.7万人の戦力を運べないこと。第3は、北朝鮮の沿岸防衛能力は1950年とは比較にならないほど向上し、何百マイル先の艦艇や舟艇を破壊できることだ。
・しかも、開戦となれば、米軍の地上基地が打撃を受ける可能性があるため、利用可能なすべての米空母がこの地域に吸引されることになる。陸空軍なども同様で、全世界における米軍の即応能力を低下させるリスクがある。また、ヘリテージ財団研究員のトム・スポウラー元陸軍中将は「戦争が始まると米陸軍は旅団戦闘団を新たに編成しなければならない。だが、イラクにおける経験で言えば2年間は必要だ」と指摘する。
▽考えれば考えるほどリスクが高い先制攻撃
・以上の記事から分かるのは、元軍人たちは我々が考える以上にリスクを重く見ているということだ。 元米軍人たちの指摘は、(1)海兵隊の脆弱性に伴う上陸作戦の困難性、(2)頑丈な花崗岩と複雑な地形を利用した砲兵陣地の強靭さと威力、(3)メガシティ戦闘、(4)戦力の枯渇、に集約できる。
・海兵隊の脆弱性は言うまでもないが、(2)(3)(4)については改めて説明が必要だろう。まず(2)についてだが、地形・地質の有効な活用は沖縄戦における日本軍の粘り強さを振り返れば、その効果がよく分かる。沖縄戦闘時の日本軍は、沖縄の硬い珊瑚岩と起伏の激しい地形を利用して砲兵陣地(いわゆる反斜面陣地)を形成して、航空・火砲の圧倒的な劣勢下でも米軍を苦しめた。
・(3)の「メガシティ戦闘」は、2014年頃から米陸軍が強調している概念である。米陸軍は、2030年には全世界人口の6割がメガシティ(人口1000万以上の大都市圏で、世界に27か所存在)に居住する時代になるとして、メガシティ戦闘に必要な将来の米陸軍の戦力構成やドクトリンの検討を続けている。 米陸軍は、メガシティでは民間人への配慮や戦力の分散が余儀なくされるため、作戦が極めて複雑になる他、敵戦力が建物や住民に紛れ込むことで航空戦力が活用できず、相手の情報も手に入らないため、大苦戦が予想されるとしている。イラク戦争時のファルージャ攻防戦や近年のイスラム国との各都市における死闘を思えば、元軍人たちがソウルに北朝鮮軍の部隊が侵入すればやっかいなことになると考えるのも当然だろう。
・(4)については、要するに北朝鮮問題以外にも米国の抱える脅威はたくさんあるということだ。米国は既にイスラム国との戦い、アフガンでの戦い、テロとの戦い、サウジアラビアとイランの覇権争いに巻き込まれている。米国としては、すでに炎上しているそちらの「戦線」にこそ、まず戦力を割く必要がある。特にイスラム国打倒はトランプ政権の主要公約であり、これを成し遂げねば北朝鮮どころではない。
・実際、トランプ政権のシリアへの肩入れはさらに深まっている。6月13日、米軍はついに「南シリア」に初めて長距離砲兵部隊を展開させた。しかも、国防総省のスポークスマンたるライアン・ディロン大佐は、記者たちに対して「これは親アサド勢力の脅威に備えるためである。今後もそのために米軍の現地におけるプレゼンスを拡大していく」と述べた。親アサド勢力とは、イランが支援する武装勢力のことであり、これは単にシリアへの深入りだけではなく、イランの代理勢力と米軍の戦闘すら秒読みに入ったことを意味する。要するに、米イラン関係の悪化の第一歩になりかねないということだ。
・このように、考えれば考えるほど、北朝鮮への先制攻撃は軍事的リスクが高く、それは外交的・政治的リスクに直結しているのである。もちろん、政治的に「詰み」に近づきつつあるトランプ大統領が北朝鮮攻撃を決断するといった可能性もあるが、その場合でも、現時点では中東でさらなる軍事行動の方がはるかに安易かつ安全なのは言うまでもない。やはり、北朝鮮への先制攻撃の可能性は「現時点」では低いだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50274

米空母の不可思議な動きには疑問を持っていたが、半田氏が見事に解いてくれた。 『カールビンソンは当初の予定通り、オーストラリア海軍と共同訓練を行っており、朝鮮半島へは舳先を向けてさえいなかった。 トランプ大統領が「我々は大船団を送っている」と述べたのは、得意の「オルタナティブ・ファクト(もうひとつの真実)」だったのである』、との指摘で納得できた。 『カールビンソンの周囲を固めて進む海上自衛隊の護衛艦2隻と米海軍の巡洋艦と駆逐艦3隻の映像・・・ 「フォト・エクササイズ(写真用訓練)」』との指摘には、すっかり騙されていた自分の馬鹿さ加減に苦笑せざるを得なかった。 『最近では発射に成功することが多かったミサイルが二度連続して爆発したのは、トランプ大統領へのメッセージとみるべきではないだろうか。・・・金正恩委員長の考えを忖度することなく、「失敗」の一言で片づけては失礼というものだろう』、というのもなるほどと思わされた。 『米海軍の補給艦を護衛するため、海上自衛隊の空母型護衛艦「いずも」が1日、横須賀基地を出航・・・「いずも」は他の護衛艦と比べ、防御力で格段に劣る。自らを守ることさえ覚束ないのに米補給艦に対する攻撃を防ぐことなど不可能に近い』、との指摘にも苦笑してしまった。「フォト・エクササイズ」用としては、大きな「いずも」は最適で素人の国民を騙すには格好の材料だ。 『朝鮮問題を巧みに利用する安倍政権の姿が浮かび、日本国民という観客の大向こう受けを狙ったあざとい猿芝居の舞台裏が見えてくる』、との指摘はこれから大いに心しておくべきだろう。 『ゴールデンウィークに外遊する閣僚は半数にあたる11大臣にものぼる。副大臣は11人、政務官は8人が日本を不在にする。日本の行く末を心配していないか、実は心配いらないことを知っているかのどちらかであろう』とは、、国民を馬鹿にし切っている。これでもまだ「入場料」を払い続ける人々がいるとすれば、よほど能天気なのだろう。
田岡氏の記事では、 『トランプ大統領は、おそらく状況を知らずに威勢のよい発言をしたものの、マティス長官や国家安全保障問題担当の大統領補佐官ハーバート・マクマスター陸軍中将ら、現実を知る軍人の説明を聞いて、振り上げた拳をそっと引きこめたように見える』、との指摘で、冷徹な軍人の判断に一安心させられた。
部谷氏の記事にある 『米陸軍は、・・・メガシティ戦闘に必要な将来の米陸軍の戦力構成やドクトリンの検討を続けている』、というのは、米陸軍が環境変化に柔軟に対応する姿勢に感心すると共に、富士山麓で総合火力演習を1961年以来続けている陸上自衛隊は大丈夫なのかとふと不安になった。まあ、米軍との共同作戦などで、最新の考え方は吸収しているから大丈夫なのかも知れないが・・・。
タグ:空母「カールビンソン」 半田 滋 北朝鮮問題 300門の自走砲を並べて一斉砲撃をみせた北朝鮮 北朝鮮危機」はあざとい猿芝居だ! 日米朝「形だけ」の演出 軍事のプロなら一目でわかる 現代ビジネス (その5)(「北朝鮮危機」はあざとい猿芝居だ!、北朝鮮威圧策を諦め中国を批判するトランプ政権の迷走、米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない」) 空母型護衛艦を初の米艦防護に派遣した日本 役者がそろい、大向こうをうならせるケレン味あふれる大芝居 空母派遣という物騒なプレゼントは、生誕を記念して6回目の核実験もしくは米国まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射など「絶対にやるなよ」というトランプ政権からのメッセージ カールビンソンは当初の予定通り、オーストラリア海軍と共同訓練を行っており、朝鮮半島へは舳先を向けてさえいなかった トランプ大統領が「我々は大船団を送っている」と述べたのは、得意の「オルタナティブ・ファクト(もうひとつの真実)」だったのである カールビンソンの周囲を固めて進む海上自衛隊の護衛艦2隻と米海軍の巡洋艦と駆逐艦3隻の映像を公開 臨戦態勢ならば、潜水艦や航空機からの攻撃に備えてそれぞれの艦艇は15キロから20キロも離れて配置するのが当たり前 フォト・エクササイズ(写真用訓練) 最近では発射に成功することが多かったミサイルが二度連続して爆発したのは、トランプ大統領へのメッセージとみるべきではないだろうか ミサイル発射をやめることはないが、現状では米国の脅威にはならない、という北朝鮮なりの回答 金正恩委員長の考えを忖度することなく、「失敗」の一言で片づけては失礼というものだろう 300門以上の自走砲による一斉砲撃 自走砲と自走砲の距離はわずか10メートル程度 FA18戦闘攻撃機なら上空からの爆弾投下で瞬殺できる無謀な配置 演習とは、本番で想定される事態に備えて行うのが常識であり、本来なら自走砲は点々と離れ、上空から見つけにくいようカモフラージュされる 米国に対し、「軍の威力を示すけれど、決して本番を想定してはいない」と訴えるシグナル 形だけ」の米艦防護 空母型護衛艦「いずも」 「いずも」は他の護衛艦と比べ、防御力で格段に劣る。自らを守ることさえ覚束ないのに米補給艦に対する攻撃を防ぐことなど不可能に近い 安倍政権にとって、安全保障関連法は実施段階に入ったという実績づくりこそが重要なのだろう 形式的な対米支援にとどめたことで、北朝鮮へは「戦うことまでは想定していない」というただし書きを示すことになった サリンを(ミサイルの)弾頭に着け、着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と指摘 国民に安全安心を提供するのではなく、脅しの言葉を吐くことにより、森友問題や共謀罪といった国内問題から目をそらさせようとする意図 国民保護ポータルサイト 東京メトロや新幹線の一部が運転を見合わせる事態にまでなった ミサイル発射の報道は午前6時6分だったが、5時半ごろには発射されており、日本に到達していたとすれば10分後の5時40分ごろのはず。第一報があった時点で終わった話だったのだから、噴飯ものというほかない ゴールデンウィークに外遊する閣僚は半数にあたる11大臣にものぼる。副大臣は11人、政務官は8人が日本を不在にする 本気で北朝鮮情勢を不安視するなら北朝鮮に影響力がある中国や韓国に向かうはずだが、そんな閣僚は一人もいない 背筋も凍るようなケレン味たっぷりの舞台を見せられ、「ああ、すごいお芝居だった」と感動する観客は次も入場料にあたる一票を安倍政権に捧げるのだろうか 田岡俊次 ダイヤモンド・オンライン 北朝鮮威圧策を諦め中国を批判するトランプ政権の迷走 米国防長官ジェームズ・マティス海兵大将 軍事的解決に突き進めば信じられない規模の悲劇的結果となる」と力説し「外交的手段による解決のため、国連、中国、日本、韓国と協力して行く」と 残るのは横須賀を母港とする「ロナルド・レーガン」1隻になり、普段の配置に戻ることになる マティス国防長官 「軍事的解決は悲劇になる」 米国(クリントン政権)は北朝鮮寧辺(ヨンビョン)の原子炉とプルトニウムを抽出する燃料棒再処理施設に対する航空攻撃を計画 最初の90日間で米軍の死傷5万2000名、韓国軍の死傷49万名、民間人死者は100万人を超える」との損害見積もりを本国政府に提出 航空攻撃だけを考えていたワシントンの高官たちはこれを見て愕然とし、攻撃を諦めて カーター元大統領を平壌に派遣 仮に一部を壊せても残りのミサイルが韓国や日本に向けて発射されるだろう ソウル前面だけでも350門と見られる。これが一斉射撃すれば、「ソウルは火の海になる」と北朝鮮が言うのは嘘ではない 日本にも打撃大きい 難民流入や投資の回収不能 トランプ大統領は、おそらく状況を知らずに威勢のよい発言をしたものの、マティス長官や国家安全保障問題担当の大統領補佐官ハーバート・マクマスター陸軍中将ら、現実を知る軍人の説明を聞いて、振り上げた拳をそっと引きこめたように見える 部谷 直亮 JBPRESS 米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない 米軍の北朝鮮への先制攻撃の可能性を報じたメディアやジャーナリストは今やすっかり口を閉ざしてしまった 米軍の準機関紙「military times 北朝鮮への先制攻撃はリスクが高く、トランプ政権は攻撃を考えていないとする記事を掲載 最悪の場合、10万人の民間人を含む大量の死者を生み出すと懸念 秘密トンネルから1時間に2万人を侵入させることができる 恐るべきメガシティ戦闘」を引き起こす可能性 メガシティ戦闘では航空戦力は極めて限定的な役割しか発揮できない メガシティ戦闘に必要な将来の米陸軍の戦力構成やドクトリンの検討を続けている 北朝鮮問題以外にも米国の抱える脅威はたくさんあるということだ。米国は既にイスラム国との戦い、アフガンでの戦い、テロとの戦い、サウジアラビアとイランの覇権争いに巻き込まれている 政治的に「詰み」に近づきつつあるトランプ大統領が北朝鮮攻撃を決断するといった可能性もあるが、その場合でも、現時点では中東でさらなる軍事行動の方がはるかに安易かつ安全なのは言うまでもない。やはり、北朝鮮への先制攻撃の可能性は「現時点」では低いだろう
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