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企業不祥事(その12)(なぜ企業不祥事はこんなに起きるのか?、2万円強盗で逮捕 メリルリンチ社員は1億円宅セレブ暮らし、あの「ウーバー」がセクハラを容認したワケ) [企業経営]

企業不祥事については、1月10日に取上げたが、今日は、(その12)(なぜ企業不祥事はこんなに起きるのか?、2万円強盗で逮捕 メリルリンチ社員は1億円宅セレブ暮らし、あの「ウーバー」がセクハラを容認したワケ) である。

先ずは、日本大学教授の稲葉 陽二氏が4月14日付け現代ビジネスに寄稿した「なぜ企業不祥事はこんなに起きるのか? 「強い絆」が会社をつぶす 企業統治から見える「日本の危うさ」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽日本人ならではの「特性」
・日本人は他人へきめ細かい心遣いをする。 筆者は欧米に8年在住し、それ以外にも発展途上国を含めかれこれ数年海外を飛び回っていたが、こんなに他人へ心遣いをする人種は他にないのではないかとさえ思う。 言い換えれば、直裁な物言いによる直接対決を避ける。
・日本人のもう一つの特長は、この心遣いの延長線上のことかもしれないが、肉体も意思も持たないはずの法人を「さん」付けで呼んで擬人化することだ。 貴社(your highly esteemed company)という表現はビジネスレターなどでは多少古臭いが、英語でもありえよう。しかし、日常会話の中で法人名に「さん」を付けて呼ぶのは、おそらく日本人だけではないだろうか。
・加えて、日本企業は相変わらず、社員同士の結束を今でもとても重視する。飲み会や休日のゴルフなどの私的な交流、公私が混然一体となった社員同士の「強い絆」が社内ポリティックスでものを言う企業もいまだに多い。 この結果、多くの大企業でトップは後継者に社長を退任したあとまで自らを優遇してくれる者を選び、相談役として残る。
・「心遣い」「法人へのさん付け、つまり擬人化」「強い絆」「相談役」は、日本人やその組織の美徳かもしれない。逆に場の空気を読む、それができないKYは社会性に欠け社員失格という評価となる。 いずれにせよ、組織の独特の文化・規範が社員を支配するという神話が生まれる。
▽社会関係資本と企業風土
・人々や組織の間のネットワークと、それが醸成する信頼と規範は社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)と呼ばれ、筆者も、特に地域コミュニティの社会関係資本はご近所の底力となるので、その醸成やその結果としての共助が重要だと主張している。
・しかし、社会関係資本の考え方を企業に当てはめると、心遣いのあまりに法人を自然人のように扱い、強い絆を大切にし、組織特有の文化・規範を重んじる考え方は、筆者には、一般の地域コミュニティの話と異なり、とても危ないもののように思われる。 たとえば、企業不祥事の際に企業が第三者委員会を設け、原因と対策を調査し、その報告書に必ず「企業風土」という言葉が原因の一つとして挙げられる。
・しかし、不祥事の原因が法人という組織特有の文化・規範である「企業風土」だといってしまうと、責任の所在が曖昧になってしまう。 それどころか、不祥事を起こした企業の経営者は企業風土の犠牲者だと言わんばかりの論調さえ許されることになる。
・筆者の近著『企業不祥事はなぜ起きるのか ソーシャル・キャピタルから読み解く組織風土』(中公新書)では、具体例として、2016年5月19日の日経に掲載された、三菱自動車の益子修会長の「風土を変えられなかった」と相川哲郎社長の「開発部門の風土で育った私がそのままだと、改革の妨げになる」という発言を取り上げて、次のように述べている。
・「この記事に違和感を覚えた読者は多いのではないだろうか。生え抜きで1978年に入社して以来、ほぼ一貫して開発部門に在籍し、2005年から当社の取締役を10年以上も務めた社長と、三菱商事からの転籍とはいえ、2004年から足掛け13年も代表取締役を務めてきた会長が、まるで自分たちの手の届かないところに「風土」というものが存在して、それが不祥事の元凶であるがごとく語っている。」 企業が経営者の手に負えない「風土」という得体の知れないものに支配されているのでは、企業不祥事はどんな改革をしてもこれから未来永劫なくならないということではないか。 少なくとも、企業風土というものをきちんととらえる必要があるという点が、上述の近著の問題意識である。
▽企業風土は経営者が紡ぐもの
・このためには、企業風土を企業内の構成員間のネットワークとしての社会関係資本ととらえると問題の本質が明らかになる。まず地域住民のネットワークとしての社会関係資本と企業内のネットワークとしての社会関係資本は根本的に違う。
・第一に、企業内社会関係資本の特徴は、企業に属する者は必ず上司、最終的にはトップとのネットワークで結ばれている点だ。つまり、社長は、全社員にアクセス権を持っている。 したがって、社長はその意思があれば、社内の誰とでもコミュニケーションを取れる点で、通常の地域コミュニティの住民間の社会関係資本と全く異なる。企業内には職制のネットワーク、つまりフォーマルなネットワークがあるが、末端の従業員までつながることができるのはトップしかいない。
・第二に、企業内の職制のネットワークは、基本的に上司から部下への情報伝達網であり、下からみれば一方的に上から情報や命令を与えられ、上から下へは上司の一存で情報を流すことができる。 しかし、下から上へどういう情報をいつ流すかは上司のスタンスに左右されるという、非対称性がある。トップはよく自由に進言して構わないなどというが、それはトップのスタンス次第で、下がトップを信頼していない企業の中でそんなことをトップが言っても誰も信じない。 このような企業では、職制のネットワークでは下から上へ本当の情報は上がらない。つまり、職制のネットワークを本当に双方向のネットワークにできるのはトップしかいない。
・第三に、企業内の職制のネットワークは本来、業務を円滑に遂行させるもので、基本的にトップはそこからプラスの波及効果を期待している。 しかし、このネットワークは時として、粉飾、偽装、リコール隠し、談合などに用いられ、会社の近視眼的利益やトップの保身の観点からみたらプラスでも、社会的には大きなマイナスの波及効果を持つものとなる。 本来、従業員間の信頼を増すなど、健全なプラスの波及効果を持つネットワークが悪用され、証拠隠滅、隠匿、責任逃れなどのとんでもない目的のために利用されてしまう。
・第四に、そんなケースでは、往々にしてトップが信頼されておらず、一方的な上司からの命令しか流れないネットワークで企業内社会関係資本が壊れているのに、従業員から辞めるという選択肢がない。 賃金などの雇用条件・環境を考えれば、ほかによりよい選択肢がないからだ。特に、社会的に威信がある有名な企業の従業員は、転職しても現職以上の好条件を得るのは難しいと考えれば面従する。雇用条件・環境はよくても、従業員は働き甲斐や誇り、連帯感も感じない最低の職場となるかもしれない。
・つまり、経営者は社内のネットワークをその裁量でいかようにもデザインすることができるが、部下にはできない。その意味では、企業風土はコミュニティの歴史的文化的経緯を踏まえて住民同士が醸成する地域コミュニティの社会関係資本とは明らかに異なる。 企業風土は経営者が紡ぐものであり、その一義的責任は経営者にある。不祥事を惹起するようないい加減な企業風土を変革できないのなら経営者としての資格がない。 しかし、残念ながら、冒頭で述べた「心遣い」「法人へのさん付け、つまり擬人化」「強い絆」「相談役」という日本の特性は、本来の経営者の責任を著しく曖昧にしてしまう。
▽強い絆が会社をつぶす
・企業不祥事をタイプ別に分類すると、企業の存亡がかかるような重大な事案はほぼ例外なくトップの関与があり、したがって、取締役会が何らかの形で問題の本質を看過してしまっているケースである。 そこで、取締役会で本当に自由な議論ができているのかが重要になるが、これを客観的にとらえるのは難しい。ただ、取締役会の構成をトップと他の構成員との関係でみて、トップの影響力の強さの代理変数としてみることはできる。
・過去に不祥事を起こした企業のケースでは、トップが取締役の中で圧倒的に高い自社株式保有比率を持ち、他の取締役や監査役などの役員の年齢を超えて年長になればなるほど、利益率や企業の安定性が損なわれる傾向がみられる。
・東証一部上場企業で、トップと取締役会のメンバーの生え抜き度(卒業してただちに当該企業に入社すれば生え抜き度が高く、中途入社になればなるほど生え抜き度は低くなる)をみると、生え抜き度の高い企業と経営者ほど、利益よりも安定度を重視する保守的な経営をする傾向がみられる。 また、社外取締役の人数が多いほど、利益率が高い。実際に不祥事を起こした企業でみると、取締役を内輪の人材で固めてトップが取締役会の中で大きな発言力を持つ企業が多い。
・すなわち、「強い絆」を誇る企業ほど、重大な企業不祥事を引き起こす傾向があるのだ。 社員の強い絆は必要かもしれないが、経営者の間の内輪の強い絆は、むしろ互いの甘えを生み、不祥事の兆候を見過ごしてしまう。加えて、相談役という内輪のネットワークがこれを加速する。
・不祥事の原因として企業風土、組織風土などという曖昧な概念を挙げて、意思決定をした取締役会とその経営トップの責任を看過するようなことがあってはならない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51440

次に、5月16日付け日刊ゲンダイ「2万円強盗で逮捕 メリルリンチ社員は1億円宅セレブ暮らし」を紹介しよう。
・セレブぶりが“アダ”になったようだ。 強盗などの疑いで15日までに警視庁捜査第1課に逮捕された、メリルリンチ日本証券社員で米国籍のアルシニエガス・カルロス・アルホンソ容疑者(45=東京都目黒区上目黒)。今年1月5日午後8時50分ごろ、東急東横線都立大駅近くのマンションのエントランスに侵入し、帰宅した会社員女性(37)から現金2万8000円入りのバッグを奪ったとされる。
・「アルホンソ容疑者はその日、仕事帰りに被害女性宅のマンションを訪れ、帽子とマスク姿で待ち伏せしていた。入り口付近で女性からトートバッグを奪って逃走しようとしたところ、女性に追いつかれ、足首をつかまれたため、大きな声を上げ、英語で何か叫んだらしい。女性の額に果物ナイフを突きつけて脅迫し、そのままバッグを奪って逃走したということです」(捜査事情通)
・逮捕の決め手となったのが、被害女性のバッグとは別に、アルホンソ容疑者自身が犯行時に持っていたバッグだった。日本で36個しか販売していない珍しい一品という。  「現場周囲の防犯カメラには、珍しい形のバッグを持って逃走するアルホンソ容疑者の姿が映っていたそうです。それを手掛かりに、捜査員がアルホンソ容疑者の特徴を記憶し、駅や繁華街を歩いて似ている人を捜し出す、いわゆる『見当たり捜査』を続けていた。そうしたら中目黒駅前で、まさにその珍しいバッグを持っているアルホンソ容疑者を見つけ出し、逮捕に至ったというわけです」(警察関係者)
・アルホンソ容疑者は被害女性と面識はなく、酒に酔っていたわけでもなかった。容疑に関しては「間違いありません。すみません」と話しているという。 それにしても不思議なのは、動機だ。「メリルリンチの40代社員なら、少なくとも年収2000万円は下らないはず」(経済ジャーナリスト)。アルホンソ容疑者は数年前にメリルリンチ日本証券に転職し、「営業ではなくIT系の仕事をしていた」(関係者)。もともと“ヒルズ族”で、5年前に敷地面積113平方㍍の新築一戸建てを「1億円ほどで購入した」(近隣住民)という。
・「日本人の奥さんと、小学生、幼稚園の娘さん2人の4人暮らしでした。週末になると必ず家族で外食し、休日の朝は商店街のおしゃれなカフェで、家族そろってブランチをしていました。ご主人(アルホンソ容疑者)はとにかく子煩悩で、よく娘さんを肩車していましたね。奥さんはとてもきれいな方で、全身をハイブランドで固め、常に身だしなみには気を使っていました。人付き合いが苦手な奥さんに代わって、幼稚園の保護者会にはいつもご主人が顔を出していましたね。上の娘さんはこの春、名門私立大の小学校に入学したばかりなのに…」(別の近隣住民)
・強盗する理由がどこにも見当たらない。 「まあ、アルホンソ容疑者はセレブだから日本に36個しかないバッグも持っていたわけで、それがアダになった格好ですね」(前出の捜査事情通) 幸せいっぱいのセレブ暮らしとも、これでサヨウナラか。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/205440/1

第三に、健康社会学者の河合 薫氏が6月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「あの「ウーバー」がセクハラを容認したワケ 成功者が“バカなこと”を止められない背景とは」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「能力のある人が“そんなバカなこと”をやめられないワケ」について、アレコレ考えてみようと思う。  オンデマンド配車サービスという、革新的サービスを生み出した米ベンチャーの代表格「Uber technologies(ウーバー・テクノロジーズ、以下Uber)」が、とんでもないことになっている。 なんと「成績さえ良ければ、何をやってもオッケー」と、セクハラを容認していたことが表沙汰になり、20人を超える社員が解雇されたのである。
・コトの発端は、今年2月。 昨年の12月に退社した元従業員スーザン・ファウラーさん(エンジニア)の、「Reflecting On One Very Very Strange Year At Uber」(Uberで過ごしたとってもとっても奇妙な一年を振り返って)と題されたブログの公開だった。リンクはこちら。
・「ご存知のとおり私は昨年12月にUberを退職し、1月にStripeに再就職しました。そのことについてたくさんの質問を受けました。なぜ、私がUberを辞めたのか、私がUberで過ごした時間はどのようなものだったのか、と。 それはとても奇妙で、魅力的で、少しばかり恐ろしくて、みなさんに話す価値のあることなので、私の心の中に鮮明に残っているうちにありのままを綴っていきます。(河合が簡単に要約しました)」
・このような言葉で始まるブログは、エンジニアとして2015年11月にUber に入社してから辞めるまでの1年間の出来事を、A4のペーパーにすると5ページほどに丁寧にまとめたものだ。 ファウラーさんによれば、入社当時のUberは新しいモノを次々と開発し、学びのあるいい会社だった。ところが、数週間のトレーニングの後、参加したチームでの初日に“事件”がおこる。 彼女は上司から社内チャット(=company chat )を通じて、性的な誘いを受けたのである。
・驚いた彼女は上司とのチャットをスクリーンショットで撮り、人事部に報告。 「私は人事部が適切にこの件を処理し、再び(セクハラ上司のいない)すばらしい人生を歩めると期待した」(彼女のブログを簡約)
▽「セクハラだけど有能だから」
・ところが事態は予想外の方向に向かったのだ。 人事部は「これは明らかなセクハラであるが、彼(=セクハラ上司)の成績は極めて優秀で、今までセクハラの訴えを受けたことがない。今回のセクハラは彼の“初犯”であり、口頭での厳重注意のみとする」と回答。 そして、彼女に「チームを異動するか、そのまま残る(現状に耐える)か」の選択を迫った。“勝者”にはすべてが許される、とでもいわんばかりの物言いに彼女は当惑する。
・なんせ、そのチームは彼女の専門知識を活かせる最良の場だった。社員に与えられた「活躍したいチーム」を選ぶ裁量権を、なぜ放棄しなくてはならないのか。納得できない彼女は、「ここで仕事をしたい!」と人事部に抗議。 ところが、人事部は一貫していっさい受け付けず、「去るべきはセクハラ上司」と何度訴えても、「アナタには選択肢を与えた。それを選ばないアナタが悪い」と逆に批判されてしまったのだ。
・「このままでは自分にとってもマイナスになる」と考えた彼女は、出来たばかりの新しいチームに移る。そこでは充実した日々を過ごし、彼女が開発した製品が世界中で使われることになるなど、すばらしい経験をする。 で、その間に彼女は、他のエンジニアの女性たちも自分と同じようなセクハラを受け、同じように人事部から“初犯”と告げられていたことを知る。
・人事部も上層部も“競争に勝った優秀な社員”の愚行を隠蔽し、明らかに特別扱いをしていたのだ。さらに、社内には性差別も横行。社内を見渡してみれば、当初25人いた女性エンジニアが6人まで減少していた。  そこで彼女はセクハラや性差別の報告書をまとめ、人事部に提出。すると上司から「自分は何が違法で何が違法でないか熟知している。キミのことを切ろうと思えばいつでも簡単に切れる」と、脅された。その上司も「ハイパフォーマー」として評価されている人物だったのである。
・「その1週間後、新しい就職先を見つけ、Uberを辞めました。最後の日、女性の割合を計算してみると、150人以上のエンジニアのうち女性はわずか3%でした。 Uberで過ごした時間を振り返ると、エンジニアとして最高の仕事ができる機会をもらえたことに感謝しています。自分が開発した製品についても誇りに思います。 ただ、上記に記した出来事は、すべてバカげていて笑い飛ばすしかありません。奇妙な経験。変な一年」(彼女のブログを簡約) ブログはこう結ばれていた。
▽CEOも暴言を吐く
・ファウラーさんののブログは瞬く間に拡散。ブログには500件以上のコメントが付き、「あなたの勇気に感謝する」「こんな愚行は許されない」「私の会社でも勝者は特権を得ている」などなど、驚きと共感の嵐となった。テレビや新聞などのメディアも取り上げ、「競争に勝ちさえすれば、何でも許されるのか!」と批判された。  UberのCEO、トラビス・カラニック氏は慌てて火消しに奔走し、外部に委託して調査をすると明言した。
・その調査の結果、彼女が報告したセクハラは氷山の一角に過ぎないことが明らかになる。 メディアが行った調査でもセクハラやパワハラが横行し、女性の身体を触り、男性を殴っている事例や、ドラッグを使用するマネジャーの存在が確認された。 これらを通して、社内にはカラニック氏と親しい「Aチーム」と呼ばれる人たちがいて、ハイパフォーマーは何をやっても会社に容認されていたことが、明るみになった。社長がお墨付きを与えたハイパフォーマーには、人事部も手を出せず、黙認するしかなかったのである。
・さらに、カラニック氏自身の素行も問題になった。 今年3月。カラニック氏がUberのドライバーと、賃金体系について車内で口論している動画をBloombergが公開。 実は、Uberはライバル企業に対抗して運賃を下げ、ドライバーたちの時給は10ドルまで落ち込んでいたのだ。
・動画には、カラニック氏の連れが降り、彼が一人になったところで、「賃金が低過ぎてやっていけない」とドライバーが訴える姿が映し出されている。 「こんな給料じゃ生きていけない。賃金を上げてくれよ!」と、抗議するドライバーに対しカラニック氏は全く聞く耳を持たない。それでも食い下がるドライバー。そして、カラニック氏は、 “Some people don’t like to take responsibility for their own shit! ”( 何でもかんでも人のせいにしやがって。ふざけんな!) と吐き捨て、車を降りていってしまったのである。 なんとも……。 似たようなタイプは、日本にもいますね。
・「競争に勝ちさえすればいいんだよ。勝つ努力をしないオマエが悪いんだよ」と、勝者の特権を振りかざす……。どんなに能力があろうとも、最低――です。 いずれにせよ、同社はセクハラやパワハラが疑われる215件のうち、現時点で54件の差別、47件のセクハラ、33件のイジメが確認され、20人超を解雇。残りの57件は、調査継続中だそうだ(日本経済新聞朝刊 6月8日付「米Uber セクハラ20人超解雇」)。
・また、カラニック氏は、Apple Musicの消費者マーケティング責任者、ボゾマ・セイントジョン氏(女性)を、最高ブランド責任者(CBO)に迎え入れるという目玉人事を発表。Uberを「アップルのような人々から愛されるブランド」にするのが目的だそうだ(こちら)。
・215件のセクハラやパワハラの疑いって……。いったいどんな会社なんだ。しかも、競争に勝った社員には人事部も手を出せず、トップの側近としてやりたい放題って。トップの“お友達”に周りは忖度するしかないっていうのは、万国共通なのだろうか。 
・そういえば、Uberは「空飛ぶタクシー」構想を打ち出していたけど、アレってネガティブなイメージを“夢のあるお話”で払拭するのが狙いなのかも、と思ったりもする。 計画では3年以内の実用化を宣言しているけど、。「何でもかんでも人のせいにしやがって。ふざけんな!」的プレッシャーで、新たな被害者が出ないこと祈るばかりだ。
・カラニック氏は「魂を入れ替える」と宣言し、先のセイントジョン氏以外にも、米ハーバード大学ビジネススクールのフランセス・フレイ教授を副社長に起用する方針も明らかにしているけど、「勝つ」ことに執着してきた人の価値観を変えるのは容易ではない。
▽「成果主義は麻薬だ」
・もちろんいかなる世界にも、競争はつきものであることを否定する気はない。 だが、結局のところ、競争に過剰に執着する人の多くは周りよりもたくさん稼ぐことにプライオリティを置き、競争に勝った人だけを「価値ある人間」と評価し、勝者は権利を得てしかるべきと信じ込んでいる。
・世間からはカリスマだの成功者と持ち上げられ、その高揚感に酔いしれ、「負けていく奴は、努力が足りないんだよ」と切り捨て、「カネで買えないものはない」と平然と言い、マグロのように止まることなく泳ぎ続ける。 止まった途端に自分が終わるような気がして、その恐怖から逃れるために、どこまでもどこまでも競争に執着する。
・あれだけ世間から評価されたベンチャーの創業者が、「チームA」 に特権を与え、ドライバーに無慈悲に対応する、なんて馬鹿げた行動を繰り返したのも、「どれだけ人よりも多く稼ぐかが大切。そうしないと社会的地位を手に入れられない」という経験が骨の随までしみ込んでいるためとしか、私には思えないのである。
・以前、インタビューした人が、「成果主義は麻薬のようなもの」と話してくれたことがある。 彼の会社では、数年前から成果主義を導入した結果、社内の人間関係が悪化。だが、社長はそれを問題視しながらも、成果主義をやめることはできなかったというのだ。 「それまでの年功賃金か、成果次第の歩合制かを選べるようになった。歩合制は基本給が減る変わりに、トップセールスの社員には毎月10万円のボーナスが出る。ほとんどの社員が歩合制を選びました。10万は大きい。それに釣られたんです。
・成果主義で、確かに会社の業績は上がりました。 みんな目の色が変わったし、社内の活気も出ました。給料が上がる人も結構いました。 でも、ウツになる社員も増えた。互いの足をひっぱったり、密告が増えたり……、とにかく醜かったです。
・でも、社長は方針を変えないばかりか、競争を激化させた。成果主義の副作用を問題にしてるのにトップセールスのボーナスを上げたんです。また、ニンジンをぶら下げれば、事態が好転すると思い込んでいるのでしょう。 しかも、社長だけではなく、社員も新たなニンジンに喜んだ。最悪の職場環境でみんな窒息しそうになっているというのに。わけが分かりません。 結局のところ、成果主義(=競争)は麻薬です。味わった醍醐味が忘れられないんです」
▽有害な上司ほど従業員を“中毒”させる
・奇しくも、先日。彼の“麻薬発言”を裏付けるような調査結果が明らかになった。 米国のコンサルティング会社「ライフ・ミーツ・ワーク」が、大卒従業員1000人を調査したところ、非常に有害な上司(=toxic leaders)の下で働く従業員は、そうでない従業員よりも仕事に忠実に入れ込む傾向が高いことが分かったというのだ。  ここでの「有害な上司」とは、公然と部下をけなしたり罵倒したり、怒りを爆発させたり、他者の功績やアイデアを自分の手柄にしたりする管理職のこと。
・調査では「有害な上司」は、競争が激しく、勝つか負けるかといった雰囲気がある会社で多い傾向にあることもわかったとしていている。 また、有害上司の下で働く従業員は、そうでない従業員より平均で2年も長く勤めるという、予想に反した結果も出た。
・なぜか? 有害上司は、権力も持っているので一見「有能」に見える。 もともと仕事へのモチベーションが高い従業員は、「ここで踏んばれば、昇進するときに有利になる」と考え、「これは自分にとってチャンスだ。このチャンスをつかみ続けておかなくては」と自分に言い聞かせ、ひどい扱いに耐えるという、「過剰適応」に陥っているのだ。
・件の「成果主義は麻薬のようなもの」と語った男性は競争の渦に巻き込まれた結果、身体を壊し、2週間ほど休んだのち、競争を強いられる日常に戻るのが嫌になり退社した。 「休んでいるうちに気がついたんです。競争、競争って、オレ、何やってんだろう、って」 過剰適応の先にあるのは、バーンアウト。この男性はギリギリ燃え尽きる前に、立ち止まることに成功したのだ。
・「Reflecting On One Very Very Strange Year At Uber」というタイトルを、ファウラーさんがつけたのも、「私、何やってたんだろう」という気持ちがどこかにあるのではないだろうか。 競争に勝つことは刺激的だ。そのとき得た「快楽」は、まさしく魔物だ。
・競争社会が激化しているのは、揺るぎない事実だ。 だからこそ、私たちは「奇妙で、魅力的で、少しばかり恐ろしい」経験から身を守らなければならない。 バーンアウトは、文字通り燃え尽きること。灰になってしまってからでは元も子もない。
▽うまく行っている時ほどご用心!
・いま仕事にノッている人、勝ち続けている人にこそ考えて欲しい。 絶好調のときほど、成果の出ない人を下に見ていないか、大切な人との時間はちゃんととれているか、家族をないがしろにしていないか、身体にムリがいってないか、成果主義の麻薬にいつの間にか溺れていないか、と一度立ち止まる必要がある。
・だって、他者との競争に勝ったことで得た名声は、失敗で一夜にして落ちる。そして、誰も一生勝ち続けることなどできやしないのだから。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/061200109/?P=1

稲葉氏の記事にある  『企業風土は経営者が紡ぐものであり、その一義的責任は経営者にある。不祥事を惹起するようないい加減な企業風土を変革できないのなら経営者としての資格がない。 しかし、残念ながら、冒頭で述べた「心遣い」「法人へのさん付け、つまり擬人化」「強い絆」「相談役」という日本の特性は、本来の経営者の責任を著しく曖昧にしてしまう』、 『企業不祥事をタイプ別に分類すると、企業の存亡がかかるような重大な事案はほぼ例外なくトップの関与があり、したがって、取締役会が何らかの形で問題の本質を看過してしまっているケースである』、 『実際に不祥事を起こした企業でみると、取締役を内輪の人材で固めてトップが取締役会の中で大きな発言力を持つ企業が多い。 すなわち、「強い絆」を誇る企業ほど、重大な企業不祥事を引き起こす傾向があるのだ』、などの指摘はその通りなのだろう。
第二の記事は、新聞で事件を初めに読んだ時点では、我が目を疑った。日刊ゲンダイの記事でも、犯行動機については触れられてないのは、残念だ。IT系の仕事であれば、年俸はそれほど高くない可能性もある。ただ、 『帽子とマスク姿で待ち伏せしていた』、というのでは、単に「魔が差した出来心」でもなさそうだ。まあ、続報で動機が明かされるのを期待するほかなさそうだ。
河合氏の記事は、日経新聞の報道だけでは理解できなかったことについて、詳しく触れているので、お陰で理解できた。Uberほどの企業でも、こんなことがあるのかと改めて驚かされた。 『非常に有害な上司の下で働く従業員は、そうでない従業員よりも仕事に忠実に入れ込む傾向が高いことが分かった・・・有害上司の下で働く従業員は、そうでない従業員より平均で2年も長く勤めるという、予想に反した結果も出た。なぜか? 有害上司は、権力も持っているので一見「有能」に見える。 もともと仕事へのモチベーションが高い従業員は、「有害な上司ほど従業員を“中毒”させる・・・ここで踏んばれば、昇進するときに有利になる」と考え、「これは自分にとってチャンスだ。このチャンスをつかみ続けておかなくては」と自分に言い聞かせ、ひどい扱いに耐えるという、「過剰適応」に陥っているのだ』、などの指摘は、組織と人間の関係は一筋縄ではいかない複雑なもののようだ。
タグ:企業不祥事 (その12)(なぜ企業不祥事はこんなに起きるのか?、2万円強盗で逮捕 メリルリンチ社員は1億円宅セレブ暮らし、あの「ウーバー」がセクハラを容認したワケ) 稲葉 陽二 現代ビジネス なぜ企業不祥事はこんなに起きるのか? 「強い絆」が会社をつぶす 企業統治から見える「日本の危うさ」 日本人ならではの「特性」 「心遣い」「法人へのさん付け、つまり擬人化」「強い絆」「相談役」は、日本人やその組織の美徳かもしれない。逆に場の空気を読む、それができないKYは社会性に欠け社員失格という評価となる 『企業不祥事はなぜ起きるのか ソーシャル・キャピタルから読み解く組織風土』(中公新書) 企業風土は経営者が紡ぐもの 企業風土は経営者が紡ぐものであり、その一義的責任は経営者にある。不祥事を惹起するようないい加減な企業風土を変革できないのなら経営者としての資格がない 強い絆が会社をつぶす 企業の存亡がかかるような重大な事案はほぼ例外なくトップの関与があり、したがって、取締役会が何らかの形で問題の本質を看過してしまっているケースである 生え抜き度の高い企業と経営者ほど、利益よりも安定度を重視する保守的な経営をする傾向 社外取締役の人数が多いほど、利益率が高い 実際に不祥事を起こした企業でみると、取締役を内輪の人材で固めてトップが取締役会の中で大きな発言力を持つ企業が多い 強い絆」を誇る企業ほど、重大な企業不祥事を引き起こす傾向があるのだ 日刊ゲンダイ 2万円強盗で逮捕 メリルリンチ社員は1億円宅セレブ暮らし メリルリンチ日本証券社員 米国籍のアルシニエガス・カルロス・アルホンソ容疑者 都立大駅近くのマンションのエントランスに侵入し、帰宅した会社員女性(37)から現金2万8000円入りのバッグを奪ったとされる 少なくとも年収2000万円は下らないはず IT系の仕事 河合 薫 日経ビジネスオンライン あの「ウーバー」がセクハラを容認したワケ 成功者が“バカなこと”を止められない背景とは 能力のある人が“そんなバカなこと”をやめられないワケ 「成績さえ良ければ、何をやってもオッケー」と、セクハラを容認 20人を超える社員が解雇 元従業員スーザン・ファウラー Reflecting On One Very Very Strange Year At Uber」(Uberで過ごしたとってもとっても奇妙な一年を振り返って)と題されたブログの公開 入社当時のUberは新しいモノを次々と開発し、学びのあるいい会社だった 数週間のトレーニングの後、参加したチームでの初日に“事件”がおこる。 彼女は上司から社内チャット(=company chat )を通じて、性的な誘いを受けたのである チャットをスクリーンショットで撮り、人事部に報告 セクハラだけど有能だから 新しいチームに移る 他のエンジニアの女性たちも自分と同じようなセクハラを受け、同じように人事部から“初犯”と告げられていたことを知る 人事部も上層部も“競争に勝った優秀な社員”の愚行を隠蔽し、明らかに特別扱いをしていたのだ ハイパフォーマー」として評価 CEOも暴言を吐く 成果主義は麻薬だ 有害な上司ほど従業員を“中毒”させる 非常に有害な上司(=toxic leaders)の下で働く従業員は、そうでない従業員よりも仕事に忠実に入れ込む傾向が高い 有害上司の下で働く従業員は、そうでない従業員より平均で2年も長く勤めるという、予想に反した結果も出た 有害上司は、権力も持っているので一見「有能」に見える。 もともと仕事へのモチベーションが高い従業員は、「ここで踏んばれば、昇進するときに有利になる」と考え、「これは自分にとってチャンスだ。このチャンスをつかみ続けておかなくては」と自分に言い聞かせ、ひどい扱いに耐えるという、「過剰適応」に陥っているのだ 過剰適応の先にあるのは、バーンアウト うまく行っている時ほどご用心!
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