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村上ファンド関連(その3)(「黒田電気」取締役候補の"わが闘争"、異色対談!「村上世彰氏vs伊藤邦夫教授」、日本に資本主義はよみがえるか) [金融]

村上ファンド関連については、昨年4月26日に取上げた際には「村上ファンドへの強制調査」としていたが、今日は、「強制調査」はカットし、(その3)(「黒田電気」取締役候補の"わが闘争"、異色対談!「村上世彰氏vs伊藤邦夫教授」、日本に資本主義はよみがえるか) を取上げよう。

先ずは、 5月31日付け東洋経済オンライン「村上銘柄「黒田電気」取締役候補の"わが闘争" 安延申氏が村上世彰氏の要請を受けたワケ」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは安延氏の回答、+は回答内の段落)。
・5月29日、独立系電子部品商社・黒田電気が株主提案に反対する決議をしたことを明らかにした。株主提案は同社筆頭株主のレノが5月2日にしていたもの。社外取締役に一橋大学客員教授の安延申(やすのべ・しん)氏を推す、という内容である。
・レノは野村(旧姓・村上)絢氏ら旧村上ファンド関係者と35%の黒田電気株を共同保有している(大量保有報告書の最新の変更報告書が提出された3月29日時点)。絢氏は旧村上ファンド創設者・村上世彰氏の長女である。 安延氏は1956年生まれ。東京大学経済学部を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。機械情報産業局情報処理振興課長、同電子政策課長を経てウッドランド社長に就任。フューチャーアーキテクト社長、佐川急便を擁するSGグループの情報処理子会社SGシステム社長を歴任した官僚出身の経営のプロである。安延氏に取締役候補となった理由を聞いた。
▽「村上ファンドの人間はいらない」
Q:社外取締役候補を引き受けた経緯は。
A:3月21日に村上世彰氏に会った際、黒田電気のことが話題に上がった。その後、4月11日には私のほか、村上ファンドの関係者、海外M&Aに強い弁護士、商社の大物OBら複数の候補者を社外取締役として黒田電気に提案したいという話があった。 正式に社外取締役候補の話があったのは4月19日のこと。帰国していた村上氏から申し出があった。私は、あまり多くの取締役を提案しても現経営陣は不安に感じて拒絶するのではないか、と心配になったこともあり、「弁護士はいいとしても村上ファンドの関係者はいらないのではないか」「私1人であっても構わない」といった趣旨のことを伝えた。そうしたら、ゴールデンウィークの前に、一人で提案するけどいいか、と打診があったので快諾した。
Q:それだけ村上氏とは関係が深いということか。
A:そうではない。確かに村上ファンドの株主提案で、かつてニッポン放送への社外取締役候補になったこともある。子会社であるフジテレビの持ち分だけでも、ニッポン放送そのものの時価総額よりも大きいというねじれ現象はおかしい、これではニッポン放送の経営は無価値だということになるし、このねじれは正すべきではないか、という村上氏の言い分は正しいと思ったので、取締役候補になることを引き受けた。実際に、その後フジテレビがニッポン放送株の買い取りを宣言して実行し、ねじれを解消した。この部分については村上氏の主張が正しかったことになる。
+ただし、彼の主張がすべて正しいとは思わないし、私は村上氏の思った通りに動くようなこともない。あくまで是々非々。そのことは村上氏にも伝えてある。
Q:黒田電気の件は村上氏の主張に賛同した、ということか。
A:日本の電子部品商社業界は今、業界再編が急務。大きな転換点を迎えており、村上氏の問題意識は間違っていないと思う。 電子部品・半導体ビジネスは、サプライヤーもユーザーも、合併や吸収、あるいは撤退などを繰り返してきており、市場構造が激変してきている。一方で自動車などのIoTといった新しい市場も急成長している。ディストリビューター(商社)も今までの取引に頼っているだけでは市場競争に勝ち残れないという時代になっている。
+このため、世界的に急速なM&Aや合従連衡が進んでおり、米国のAvnet社、Arrow Electronics社、台湾のWPG社などのメガ・ディストリビューターが台頭し、特に、海外を中心に日本企業の市場を脅かしている。しかし、日本の専門商社は相変わらず小さいまま。間接コストなどがかさむこともあり、これではとても世界で戦えない。
▽黒田電気は再編の核になるべき
Q:業界再編を促すために黒田電気の社外取締役になるということ? 
A:黒田電気は電子部品業界の中では規模が大きくて強い存在。十分に再編の核になりうると思う。私自身、買収側に回ったこともあるし、買われる側に回ったこともある。 買収側の経験としては上場企業であったアソシエントテクノロジー社やセキュリティ大手だったヒューコム社を買収したことがある。買われる側の経験としては通産省退官後、最初に作った会社(ヤス・クリエイト)はウッドランドに吸収され、そのウッドランドはフューチャーアーキテクトと合併した。
+このようにM&Aの当事者としてさまざまなことを経験してきたわけだが、その中で痛感したのは「企業が存続することと事業が存続することは全く別物で、社員は事業の存続を願っている」ということ。黒田電気は、いわゆる仲介取引だけでなく、製造部門の売り上げ寄与が大きいなど、他の会社にない強みを持っており、そうした事業はさらに発展していく余地がある。おそらく黒田電気の現場におられる社員の方々も今のままで安泰とは思っていないだろうし、事業存続のためにM&Aが必要だと考えている人も少なくないだろう。実際、現経営陣もM&Aの必要性に言及している。
Q:社外取締役に選任されても1人では多勢に無勢。取締役会で正論を言っても否決されるだけではないか。
A:6人の他の取締役に対して私1人だけでは確かに否決されるだろう。ただ、現場の営業担当者などは危機感を相当持っているはずだ。何しろ2年前に3200億円以上あった売上高が2200億円台にまで落ち込んでいる。2018年3月期は1600億円と3年前の半分に落ち込む見通しだ。現場のリーダーたちとは危機感が共有できるのではないか。
Q:5月26日に発表した新中期経営計画では「売り上げ規模の拡大は目指さない」「脱専門商社を目指す」としている。
A:前回の中計がまだ1期残っているのに「新中計」を出したわけだが、前回の中計では、2018年3月期に売上高4000億円・営業利益130億円を目指していたところ、結果は大幅未達(会社計画では売上高1600億円、営業利益57億円)の見通しである。
+まだ前回の中計の発表から2年しかたっていないのに、ここで新しい中計を出し、しかも、新中計の3年目の目標が売上高1800億円、営業利益88億円と、売上高は今年の3月期よりも低く、利益は10%少ししか伸びない計画になっている。これは、それぞれに苦しんでいる電子部品商社の中でも、著しく低い目標。今までの戦略は正しかったのかどうか、もっと真摯に検証すべきではないか。
Q:会社側は株主提案に3つの理由を挙げて反対している。第一の反対理由に「特定の株主からの意向を強く受ける状態が継続する可能性すら惹起し」と書いてある。
A:5月15日、東京・南大井の本社で指名委員会による65分間の私への面接の際、冒頭で「特定の株主の利益を代表して行動するつもりはない」と明確に申し上げたし、これは村上さん側にも伝えてある。にも拘わらず、こういう理由が挙げられるというのは、はなはだ遺憾。旧村上ファンドの人たちも「会社価値が上がればいいのであって、個別の戦略は議論してもらって取捨選択すればいい」と言っているのではないでしょうか。
+幸いに私は過去の経験から、電子部品や半導体のメーカー、ユーザーともに多くの知己がある。これから伸びると言われている自動車などのIoT部門にもそれなりの人脈があるので、M&Aにしても営業にしても、いろいろな人を紹介できるし、応援できると思っているのだが。
▽ガバナンスが改善しているとは言い難い
Q:第二の反対理由として、株主提案で「(2年前に従業員団体の反対声明を黒田電気の関係者が捏造するなどのコーポレート・ガバナンスの不備を挙げているが、)ガバナンスが改善しているのでさらなる社外取締役の選任は必要性は乏しい」としている。
A:韓国サムスン電子が国際商業会議所に仲裁申し立て(黒田電気など3社に計4億ドル)をし、その申立書を1月5日に受理しているのに、同19日まで情報開示しなかったことを見ても、ガバナンスが改善しているとは言い難い。
Q:第3の理由は「今期中に300万株(総額80億円)程度の自己株取得を実施するために社外取締役1名の選任を求めているが、本来独立性を有すべき人材を通じて具体的な経営判断に介入することに繋がる」とするものだ。
A:電子部品業界では自己株取得をする上場企業が多い。それは分母を減らすことでROEを上げるためだ。黒田電気の低いROEを上げるのにも自己株取得は良い選択肢である。 私は黒田電気の現経営陣が、なぜたった1人の取締役選任を頑なに拒絶しているのかがわからない。
+2015年に持株比率16%の村上氏側が提案した4人の取締役選任は僅差で敗れたが、今回は35%もの株を保有していることも勘案すれば、むしろ、うまく協調しながら成果をあげるように考えた方が良いのではないか。村上氏側は、特定の提案に対して、自分たちの主張のとおりにしろと言っている訳ではないし、また業界でもM&Aや株主還元などについては、どちらかというと村上氏の主張の方向で検討している企業も多い。
+自分としては取締役として相当の時間と労力をここに割いても構わないと思っているし、現場の応援が出来れば良いと考えているので、『うまく使いこなす』くらいの度量を発揮してほしかったというのが正直なところだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/174093

次に、 6月19日付け東洋経済オンライン「異色対談!「村上世彰氏vs伊藤邦夫教授」 ROE8%以上達成で日本を変えろ」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問)。
・旧通商産業省(現経済産業省)を辞した村上世彰氏が投資会社M&Aコンサルティング(通称・村上ファンド)を立ち上げたのは1999年8月のことだ。村上氏は昭栄や東京スタイルに投資。「会社の資産を有効活用していないのは経営者の怠慢」「使う予定のない内部留保は株主に返すべき」と主張した。株式を持ち合うなど旧態依然の経営をしていた日本企業への問題提起になったものの、2006年のインサイダー取引容疑による村上氏逮捕で後退。村上ファンドの主張は忘れ去られた。
・だが、逮捕から8年後の2014年8月。かつて「異端」だった村上氏の主張は世の中の本流へ躍り出る。伊藤邦雄・一橋大学教授(当時。現同大特任教授)が座長を務めた経済産業省の研究会で、最終報告書の通称「伊藤レポート」は、「グローバルに通用する指標はROE(自己資本利益率)。グローバルな投資家に認められるために8%を最低限上回るROE達成に企業経営者はコミットする(=責任を持つ)べきだ」と提言。日本の経済界に大きな反響を呼び、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の指針と位置付けられた。
・18年前にファンドを設立した村上氏と、25年前から資本コストやコーポレートガバナンスの重要性を指摘してきた伊藤氏。投資家と研究者で立場は違うが、両者の主張には共通点が少なくない。
▽ROE8%を掲げて度肝抜いた伊藤レポート
Q:3年前に公表した「伊藤レポート」はROEを強調しました。その意図はどこにあったのですか。
伊藤:日本企業の株価水準と収益性が四半世紀にわたって低迷を続けたという危機的ともいえる「不都合な現実」に目を向けたことにある。日本企業の経営者は「市場」というと製品やサービスの市場を思い浮かべるばかりで、株式市場への目配りが当時薄かった。資本生産性の話をすると「それって何?」となる。
+ところが資本市場と上手に会話できなければ、資本獲得競争に負けてしまうという現実がある。株式市場や投資家に迎合することなく、投資家が関心のある指標をKPI(Key Performance Indicators。経営者がコミットする指標)にしないと、日本企業は立ち後れる。そんな危機感があった。日本社会では「投資家と経営者の関係は本来敵対的な関係だ」と先験的に思い込んでいるが、その固定観念を壊したいという思いもあった。
村上:私が昭栄への敵対的買収や東京スタイルとのプロクシーファイト(委任状獲得競争)を手掛けたことで、「株主は経営者に敵対的な存在」という固定観念を強めてしまったのかもしれない。伊藤レポートは「ROE8%」と数値目標を示したことで、多くの日本企業の経営者に衝撃を与えた。
伊藤:非常にオーソドックスなメッセージは「資本コスト(投資家が期待する最低限のリターン)を上回るROEを上げてください。そうしないと企業価値の創造にはなりませんよ」というもの。「これがいい」という委員と、「いやそれではインパクトがない。具体的な数字を出しましょう」という委員がいて、数値目標を最終報告書に盛るかどうかで、委員会の最後のほうで緊迫した場面があった。
村上:ただトヨタ自動車やソフトバンクグループは例外的に達成しているが、(自己資本という分母の大きい)多くの日本企業にとってROE8%の達成はなかなか「しんどい」目標なのでは。
伊藤:伊藤レポートを公表した後もISS(Institutional Shareholder Services。議決権行使助言会社の1つ)は、ROE8%ではなく、同5%を株主総会で議案に賛成するかどうかの基準にしている。それは、8%基準を採用したらかなりの数の会社に「反対すべき」と助言しなければならなくなるからかもしれない。
▽リーマンショックが日本企業に残したつめ跡
Q:最新の『会社四季報』(2017年3集)では、ROE5%未満が1236社、同8%未満が1939社。つまりROE5%なら3分の2が「合格」ですが、8%なら過半が「経営者失格」です。
村上:伊藤先生が言うようにRすなわち「稼ぐ力」を上げるのも大事だが、私はROEを上げるために分母のE、すなわち自己資本を減らすのも大事だと思う。内部留保をしすぎた結果、自己資本は日本企業の全社合計で約500兆円規模に達している。これだけのおカネが企業内に滞留しているというのは、貯めすぎだと思う。500兆円のうち2割か3割、100兆〜150兆円は減らしていいだろう。それだけのおカネが社会に回れば、経済全体に良い資金循環が生まれるのではないか。
+2008年のリーマンショック直後、どの国でも企業の配当額は減った。海外では2、3年経つと株主還元比率が急激に高まった。ところが日本はそうではない。
伊藤:リーマンショックが日本企業に残したつめ跡は依然大きい。「銀行が貸してくれなければ破綻する」と当時の取締役会での緊張感はすごかった。それで内部留保をますます積み増すようになった。
Q:実際の投資でROEをどう活用するのでしょうか。 
村上:ROEの水準そのものよりも、ROEが今後どうなっていくか。その変化率を分析する。稼ぐ力でRをどう伸ばしていけるか、意味のないEをどこまで減らせるかが主な注目点だ。
伊藤:会計数値というのは言うまでもなく過去情報。過去は過去でしかない。ただ、経路依存性というものがある。過去の上に今があり、今の先に将来がある。5月29日に経産省から公表した略称「価値協創ガイダンス」は、過去と現在と将来のリンケージ(結びつき)を強く意識した「対話」の着眼点を示したものだ。持続可能性を意識しながら、経営者は投資家とどう対話すべきか。その留意点が盛られている。
Q:「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」が発表した「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と無形資産投資-」ですね。伊藤先生が座長でした。
伊藤:研究会のメンバーは「伊藤レポート2.0」という意識で議論を詰めてきた。企業価値の成長因子が機械設備などバランスシートに載る有形資産から人材・ブランドなどバランスシートに載らない無形資産に移ってきていることを意識。ESG(Environment〈環境〉・Social〈社会〉・Governance〈ガバナンス〉の頭文字を取ったもの)など非財務情報を重視。いわばCSR報告書を見ながら将来ROEを予測するような考え方だ。
+どんなことにも潜在的な毒というものはつきものだ。ROEを追い求めるあまり、稼ぐ力をつけずにEばかり減らすことになりかねない。逆にESGを言いすぎると、資本生産性が低いことの隠れみのになりかねない。ROEもESGも両方大事という意味で「これからはROESGだ」と言っている。すると、多くの企業は「それはそうだ」と賛同してくれる。
▽村上ファンドの動きも、ある意味では早すぎた
Q:伊藤先生は、資本コストやガバナンスの重要性を四半世紀前に指摘していました。
伊藤:1993年刊行の『通産研究レビュー』創刊号(通産省・通産研究所編集)に資本コストの実証研究論文を掲載したが、日本企業のリアリティがなかなかついてこなかった。村上さんは先見性を持ってコーポレートガバナンスの確立に取り組んできたが、今から思うと村上ファンドの動きも、ある意味では早すぎた。
村上:日本企業にガバナンスを普及するために、優秀な社外取締役をプールする仕組みを作るべきではないか。私が推薦すると「お前のところの手下だろ」と言われるのがすごくしゃくだ。
伊藤:なるほど。
村上:そういう仕組みができるなら私は寄付をしてもいいと思っている。コーポレートガバナンスの普及活動をNPO(非営利組織)として作るなら、私はいくらでも社会貢献したい。
伊藤:それはとてもいい考えですね。
http://toyokeizai.net/articles/-/176448

第三に、NHK出身の経済学者の池田 信夫氏が6月30日付けJBPressに寄稿した「日本に資本主義はよみがえるか 村上ファンド事件で「失われた11年」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・大阪の電子部品商社、黒田電気の株主総会が6月29日に開かれ、筆頭株主である投資会社「レノ」の株主提案(社外取締役の選任議案)が可決された。レノは「村上ファンド事件」で知られる村上世彰氏の経営するファンドで、社外取締役に元通産官僚の安延申氏が選任された。
・会社側はレノの提案に「乗っ取りだ」として反対したが、議決権の37.5%をもつレノと外資系ファンドが提案に賛成して可決した。株主総会で経営陣の反対する株主提案が可決されるのは異例で、村上ファンド(MACアセットマネジメント)もできなかった。日本でもようやく資本主義が機能するようになったのだろうか。
▽村上ファンド事件の衝撃
・もう覚えている人も少ないと思うので、一連の事件のおさらいをしておこう。この始まりは、2005年に起こった「ライブドア事件」だった。これは堀江貴文氏の経営していたライブドア(のちにLINE株式会社が吸収)がニッポン放送株を買収し、その保有するフジテレビ株を支配しようとしたものだ。
・これは日本では珍しい敵対的企業買収だったが、ライブドアはフジテレビ株の過半数を買うことができなかった。ライブドアのTOB(株式公開買い付け)やフジテレビの買収防衛策など派手な争いの末に、フジテレビがライブドアに出資する形で和解した。 ところが翌年1月、東京地検特捜部がライブドアを強制捜査し、堀江社長など4人が逮捕された。このときの容疑は証券取引法違反(風説の流布)だったが、のちに粉飾決算でも起訴された。堀江氏は最高裁まで争ったが、2011年に懲役2年6カ月の実刑が確定した。
・堀江氏にニッポン放送株の買収を勧めたのが村上氏だったといわれ、彼も2006年6月に逮捕された。彼がニッポン放送株をライブドアに買わせて売り抜けた行為がインサイダー取引に問われ、最高裁で懲役2年(執行猶予3年)の判決が確定した。
・その経緯については双方の言い分が食い違っているが、ニッポン放送の時価総額がその保有するフジテレビ株より低い逆転現象に気づいたのは、村上氏だったようだ。堀江氏はフジテレビを支配してネット企業にしようとしたが、村上氏は単なる売り抜けによる鞘取りだった。その狙いは成功したが、刑事事件になることは想定していなかったようだ。 
・彼はファンドを救うために逮捕容疑を認めるような記者会見をしたが、結果的にはファンドは解散した。彼もファンドの世界から足を洗うといってシンガポールに移住し、一時は忘れられていたが、2015年から黒田電気の株を買い増し、取締役を送り込もうとしていた。それが今回ようやく成功したのだ。
▽「国策捜査」が企業買収を萎縮させた
・ライブドア・村上ファンド事件の捜査は、検察があらかじめ書いたストーリーに沿って行われた「国策捜査」だった。それは小泉政権で進められた金融分野の規制改革で出現したマネーゲームに歯止めをかけようとするものだった。特捜部の大鶴基成部長は、法務省のウェブサイトで当時こう書いた。 額に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち,法令を遵守して経済活動を行っている企業などが,出し抜かれ,不公正がまかり通る社会にしてはならないのです。
・こういう「法律家の正義」が単なる企業買収を刑事事件にした原因だろう。検察はその背後にグローバルな「闇の資金」があるという見込みで捜査をしたが、何も出てこなかった。村上氏の行動はほめられたものではないが、刑事罰を課すほどの事件だったのだろうか。
・刑事事件の萎縮効果は大きく、これで日本の企業買収ブームは終了した。図のように国内のTOBは2007年を最後に激減し、今もピーク時の半分にも満たない。人々がいくら額に汗して働いても、利益が出ないと資本主義は成り立たないのだ。
・こういう刑事事件は、企業買収ブームの初期にはありがちだ。映画「ウォール街」で有名になった1980年代のドレクセル事件は、投資銀行ドレクセル・バーナム・ランバートを中心として日本よりはるかに大規模に行われ、中心人物マイケル・ミルケンは、敵対的買収の技術としてジャンク債(信用が低く金利の高い債券)を開発した。
・TOBがかかるとフジテレビのように株価が何倍にも上がるので、巨額の利益が出る。ただミルケンが買収相手の株式を買うとインサイダー取引になるので多くの仲介業者をダミーに使い、彼らにTOBの情報を教え、それによって上げた利益の一部をキックバックさせていた。これがインサイダー取引として1988年に検察に摘発された。
・ミルケンは合法だと主張したが、司法取引で有罪を認めて合計11億ドルの罰金を払い、二度と証券業界ではビジネスをしないことを条件に釈放された。ドレクセルは倒産し、企業買収ブームはいったん終わったが、その後また盛んになり、今のアメリカの企業買収総額は、ドレクセル事件のころよりはるかに多い。
▽産業政策から株主資本主義へ
・日本は主要国の中で企業買収が極端に少なく、海外企業による日本企業の買収は世界の買収総額の2~3%で、ほとんど変わらない。このような新陳代謝の不足が無能な経営者と非効率な企業を温存し、日本経済の活性化をはばんでいる。
・この原因は規制ではない。日本の資本市場には公式にはほとんど規制はなくなり、参入障壁はないのだが、株式の持ち合いと経産省の産業政策が資本市場の発展を阻害している。資本市場で企業の再編成が柔軟にできるようになると、彼らの好きな「ターゲティングポリシー」の出番がなくなるからだ。
・村上氏も安延氏も元通産官僚であり、安延氏は経済産業研究所(RIETI)で私の同僚だった。通産省(経産省)には、産業政策を復活させようとするターゲティング派と、政府は競争の枠組づくりだけにすべきだというフレームワーク派があり、橋本龍太郎内閣のころまでは彼らのようなフレームワーク派が優勢だった。  2001年の省庁再編を仕掛けたのも通産省のフレームワーク派だったが、再編が失敗に終わって権限が減ることを恐れるターゲティング派が巻き返した。これに対して改革派の牙城としてつくられたのがRIETIだったが、改革は挫折して青木昌彦所長は辞任した。
・村上ファンドの評価には賛否両論あるが、日本に株主資本主義を根づかせるためには企業買収は不可欠だ。「ガバナンス改革」のかけ声だけでは企業は変わらない。もちろん黒田電気だけで日本の企業風土が変わるはずもないが、これが日本の資本主義が立ち直る第一歩になってほしい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50388

第一の記事で、黒田電気が反対するなかで、安延氏が唯一人の社外取締役を引受けたのは勇気ある行動だ。もっとも、経産省出身で企業経営でもM&A場数を踏んでいる同氏にすれば、当然の行動なのかも知れない。黒田電気にとっては、社外取締役が1人でもいると「うっとうしい」というのは理解できるにしても、業界再編を考える上で、恰好の人物に来てもらったと前向きに考えるべきだろう。
第二の記事で、伊藤氏が 『リーマンショックが日本企業に残したつめ跡は依然大きい。「銀行が貸してくれなければ破綻する」と当時の取締役会での緊張感はすごかった。それで内部留保をますます積み増すようになった』、と指摘しているが、リーマン・ショック当時ならいざ知らず、現在でも同じ保守的態度を採り続けているのは、もはや 『つめ跡』というよりも、新規投資に極度に慎重になった保守性とみるべきではなかろうか。 『ROEを追い求めるあまり、稼ぐ力をつけずにEばかり減らすことになりかねない。逆にESGを言いすぎると、資本生産性が低いことの隠れみのになりかねない。ROEもESGも両方大事という意味で「これからはROESGだ」と言っている』、というのは、その通りなのだろう。
第三の記事で、 『「国策捜査」が企業買収を萎縮させた』というのは、一見、その通りに見えるが、上記の伊藤氏と同様に、経営者の言い訳に過ぎないのではなかろうか。現在の経産省で『ターゲティング派』が権勢を振い、東芝問題でも「日の丸半導体」論などを振りかざし、不必要な介入で事態を一層混乱させているのは、困ったことだ。
タグ:フレームワーク派 ターゲティング派 通産省(経産省) 産業政策から株主資本主義へ 「国策捜査」が企業買収を萎縮させた フジテレビの買収防衛策 フジテレビ株 ライブドア 村上ファンド事件の衝撃 日本に資本主義はよみがえるか 村上ファンド事件で「失われた11年」 JBPRESS 池田 信夫 ROEを追い求めるあまり、稼ぐ力をつけずにEばかり減らすことになりかねない。逆にESGを言いすぎると、資本生産性が低いことの隠れみのになりかねない。ROEもESGも両方大事という意味で「これからはROESGだ」と言っている 伊藤:リーマンショックが日本企業に残したつめ跡は依然大きい。「銀行が貸してくれなければ破綻する」と当時の取締役会での緊張感はすごかった。それで内部留保をますます積み増すようになった リーマンショックが日本企業に残したつめ跡 非常にオーソドックスなメッセージは「資本コスト(投資家が期待する最低限のリターン)を上回るROEを上げてください。そうしないと企業価値の創造にはなりませんよ」というもの グローバルに通用する指標はROE(自己資本利益率)。グローバルな投資家に認められるために8%を最低限上回るROE達成に企業経営者はコミットする(=責任を持つ)べきだ 伊藤レポート 経済産業省の研究会 伊藤邦雄・一橋大学教授 かつて「異端」だった村上氏の主張は世の中の本流へ躍り出る 異色対談!「村上世彰氏vs伊藤邦夫教授」 ROE8%以上達成で日本を変えろ 自分としては取締役として相当の時間と労力をここに割いても構わないと思っているし、現場の応援が出来れば良いと考えているので、『うまく使いこなす』くらいの度量を発揮してほしかったというのが正直なところだ 2年前に3200億円以上あった売上高が2200億円台にまで落ち込んでいる 企業が存続することと事業が存続することは全く別物で、社員は事業の存続を願っている 私自身、買収側に回ったこともあるし、買われる側に回ったこともある 黒田電気は電子部品業界の中では規模が大きくて強い存在。十分に再編の核になりうると思う 日本の電子部品商社業界は今、業界再編が急務 私は村上氏の思った通りに動くようなこともない。あくまで是々非々 官僚出身の経営のプロ レノは野村(旧姓・村上)絢氏ら旧村上ファンド関係者 社外取締役に一橋大学客員教授の安延申(やすのべ・しん)氏を推す 黒田電気 (その3)(「黒田電気」取締役候補の"わが闘争"、異色対談!「村上世彰氏vs伊藤邦夫教授」、日本に資本主義はよみがえるか) 東洋経済オンライン 村上銘柄「黒田電気」取締役候補の"わが闘争" 安延申氏が村上世彰氏の要請を受けたワケ 村上ファンド関連
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