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”右傾化”(その4)(神社本庁で不可解な不動産取引、神社本庁の「政治力」と「資金力」、神社本庁「恐怖政治」の実態) [社会]

”右傾化”については、昨日、世界的潮流を取上げた。その際に、池上氏が右傾化は現在の潮流を捉えるには不適切であるとして、” ”で囲った”右傾化”としたので、本稿でもこれを使うこととし、(その4)(神社本庁で不可解な不動産取引、神社本庁の「政治力」と「資金力」、神社本庁「恐怖政治」の実態) を取上げよう。これは、ダイヤモンド・オンラインが3回にわたって掲載したものである。

先ずは、6月21日付けダイヤモンド・オンライン「神社本庁で不可解な不動産取引、刑事告訴も飛び出す大騒動勃発」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・大半の国民にとって神社と言えば、初詣や七五三、結婚式など人生の節目、節目で神に祈りを捧げる場だ。ところが、そんな明鏡止水の場の裏側で今、ある不可解な不動産取引をめぐって大騒動が起きている。特集「瓦解する神社」第1回ではその実態に迫る。(週刊ダイヤモンド編集部・ダイヤモンドオンライン編集部 『瓦解する神社』取材班)
・「神社界の “中枢”にいる全員が疑心暗鬼に陥っている。誰が敵で、誰が味方なのか分からない」──。  日本最大の信者数を誇る宗教である「神道」。その中で全国約8万社の神社を“包括”する組織が、宗教法人「神社本庁」(東京都渋谷区。以下、本庁)だ。安倍政権の伸長に絡んで昨今、注目が集まっている政治団体「神道政治連盟(神政連)」の実質的な母体組織でもある。
・そんな本庁で、目下、ある疑惑をめぐり「全国の神職を巻き込んだ騒動が勃発している」と本庁関係者は明かす。 というのも、本庁の一部幹部たちが「怪文書」や「名誉毀損文書」と呼ぶ、複数の匿名文書が、全国の神職関係者の間で飛び交っているからだ。さらに今月、業を煮やした本庁首脳がこれら匿名文書に対し、被疑者不明のまま名誉毀損で刑事告訴に踏み切るというから穏やかでない。
・争い事、ましてや法廷闘争とは無縁に思える神社界で、一体、何が起きているのか。 「事情を知る本庁職員や有力神社の神職は、神社界における『森友学園問題』と呼んでいる」と自嘲するのは、本庁の役員会関係者だ。 
・本庁は、週刊ダイヤモンド編集部の取材に対し、騒動のあらましこそ認めたものの、「顧問弁護士に一任している」と口をつぐむ。その顧問弁護士は、「宗教法人内部の財産処分の話なので外部に話すことはない」とだけ答え、受話器を置いた。 だが、複数の本庁関係者や、神職などに対する取材を進めると、「本庁の実権を握る一部の幹部が、特定の不動産業者と癒着し、貴重な本庁の財産を損なっているのではないか」という疑惑が浮上してきた。
▽最終的に3億円超になった不動産を1.84億円で売却
・事の発端は、一昨年の2015年10月までさかのぼる。 本庁の議決機関で、全国の神職などから選出される「評議員会」において、本庁が所有し、20世帯以上が入る職員用宿舎「百合丘職舎」(川崎市)を、新宿区の不動産会社「ディンプルインターナショナル」に売却することが承認された。その額は、1億8400万円だった。
・ところが、売買契約日の同年11月27日、本庁からディンプルへ売却されるかたわらで、同じ地方銀行の別室において、もう一つの不動産売買契約が交わされる。ディンプルから東村山市の不動産会社A社への“即日転売”だ。「ディンプルに売られる」とだけ説明されていた本庁の役員会は、ふたを開けてびっくりしたという。 その上、A社への売却額は、ディンプルへの売却額1億8400万円よりも高い「2億円を大きく超える金額だった」と別の本庁関係者は明かす。
・この取引について、不動産取引に詳しい弁護士や不動産業者は、「経緯を見る限り、『三為(さんため)契約』を使った典型的な“土地転がし”だろう」と指摘する。 三為契約とは、民法の「第三者のためにする契約」の略称で、簡単に言えば、3社の間で不動産を転売する際に、要件を満たせば途中の登記を省略することができるというもの。だが、「買値よりも2〜3割の金額を上乗せして転売するケースが多い」(不動産関係者)ため、合法ではあるが各地で問題となっているスキームだ。
・ただ、話がこれで終われば、「不動産取引に疎い宗教法人が、不動産会社に合法的に手玉に取られた」という話。ところがだ。昨年5月、今度は、A社がさらに大手ハウスメーカーB社に不動産を転売、その価格が一気に3億円超に跳ね上がったというからひっくり返る。
▽原則売却禁止の基本財産を随意契約でたたき売り
・そもそも、今回、対象となった百合丘職舎は、本庁の「基本財産」だ。基本財産とは「本庁永続の基幹となる財産」(神社本庁規)であり、やむを得ない事情がある場合を除いて原則、「処分することはできない」(同)とされている。 たとえ、事情があって処分が認められたとしても、三者以上の競争入札で行わなければならないと規定されている。ただし、競争入札が「特に不利、または不可能な場合」(神社本庁財務規程)に限って初めて随意契約が可能となるなど、基本財産の処分には幾重もの制限がかけられている。
・それもそのはず。基本財産を取得する“原資”の多くは、過疎化にあえぐ地方の神社を含めた全国の神社から吸い上げた、言わば“上納金”だ。 さらに、そのおおもとをたどれば、地元の氏子や参拝者たちからコツコツ集めた大切な浄財。地方になればなるほど、地域コミュニティに参加するための“税金”の色彩が強くなり、それゆえ、本庁の財産はおいそれと売却してはならない、とされているわけだ。
・基本財産目録に記された百合丘職舎は、簿価ベースで土地建物合わせ7億5616万円。もちろん、これは減価償却をしておらず、現在の資産価値ではない。それでも、本庁の基本財産のうち、かなりの部分を占める“虎の子”だった。 実は、本庁は百合丘職舎の売却案が内部で出た当初、当時の財務部長(前任)は競争入札を行うべく大手信託銀行などに相談していた。その過程で、相談先からは「3億円前後の値がつくだろう」という評価を受けており、また、実際に内々に「3億円近い買い取り額を提示する買い手もいた」(当時の事情に詳しい本庁関係者)という。それが、内規で原則禁じられているはずの随意契約により、1億円以上低い金額でたたき売られたことになる。 では、なぜ随意契約による1億8400万円という売却額が、評議員会で承認されたのか。
・ディンプルとの随意契約に後ろ向きだった前財務部長が“更迭”され、K氏が財務部長に変わると話は一気に進む。評議員会や役員会で説明を求められたK氏が、売却の経緯や金額の根拠を説明した議事録(神社業界誌掲載)によれば、「入札に至るまでの時間的制約により、随意契約的な内容で契約を取り交わした」。また、「不動産鑑定評価書に示す価格(中略)など総合的に検討した結果、提示価格は適正の範囲内であると判断した」とある。
・まず、入札にかけられないほど緊急の時間的制約があったのかだが、「不動産の価格は流動的で、ディンプルに即座に売らなければ、値下がりするかもしれない」などとディンプルとの契約を推し進めた幹部たちは説明したという。「そんな理由がまかり通るなら、不動産売買全てが随意契約でしか行えないことになる」と、さらに別の本庁関係者は呆れる。実際、即日転売で2億円を超え、さらに、わずか半年後には当初の想定していた売価3億円を超える値で買い手がついており、何とも苦しい。
・また、売価の根拠として真っ先に挙げられたこの不動産評価鑑定書は、実は、購入者であるディンプル自身が持ち込んだもの。そこには、鑑定時の同行者としてご丁寧にもディンプル社員の名前まで記載され、その評価額は1億7500万円となっていた。 これを本庁側が本当に信用したのか、その真相は分からない。しかし、三為契約の舞台となった地銀は、A社のものになっていた百合丘職舎の土地・建物に計3億円の根抵当権を設定していた。無論、根抵当の額は必ずしも資産価値を担保するものではないが、B社の買い取り額を見ても安すぎることは間違いないといえる。B社担当者は言う。「われわれも不動産のプロ。実勢価格などを精査し、3億円超の価値があると判断したが、常識的に考えてわずか1.84億円という額には『ちょっと待ってくれよ!』と文句を言いたくなる」。
▽売却益で幹部職舎に高級マンション 危機管理名目にも疑問の声
・この話には二つの“オチ”がつく。 まず、神社本庁が百合丘職舎の売却益で購入した“モノ”が問題視されている。 複数の本庁幹部と役員関係者は、異口同音に眉をひそめる。「危機管理用の新たな職舎という名目で、渋谷区代々木の中古の高級マンションを購入。その入居予定者が、なんとディンプルへの早期売却を推し進めた本庁の幹部2人だった」(前出の本庁関係者)からだ。 つまり、職員用宿舎から入居者を追い出して得たカネを使い、一部の幹部が住むための家を買っていたというわけだ。
・この「2人の入居予定者」とは、百合丘職舎の売却時、本庁総務部長だった小野崇之氏と、当時は秘書部長で、現在は小野氏の後任の総務部長に“出世”したS氏。本庁人事において、実質的な権力を握る二大ポストがこの総務部長と秘書部長だ。 だが、昨年2月、小野氏が伊勢神宮に次ぐ有力神社の一つで、全国8000社の八幡神社の頂点、宇佐神宮(大分県)の宮司に栄転。それが影響してか、当初は2戸購入する予定だったものが、総務部長(つまりS氏)が入る1戸に減らされた。
・これには末端の本庁職員も一様に苦笑いだ。 「緊急時の危機管理対応用と言っておきながら、入居予定者が外部に栄転したら買わないとは、そもそも始めから1戸は必要なかったのではと言われても仕方ない。S氏は秘書部長当時、『秘書部長は役員との連絡係だから緊急時に備えて宿舎が必要だ』と言っていたが、役員には携帯で連絡すればいいし、自分が総務部長になった途端、秘書部長用の宿舎を買わないのはそれまでの説明と矛盾している」 「緊急時に実働する職員たちの大半は、百合丘職舎より遠い郊外に住んでいる。緊急の事態に、総務部長1人だけが駆け付けて、一体何ができるんですかね? ましてや、今回購入したマンションは、それまでの危機管理対応宿舎よりも遠い。本当に危機管理対応が目的なのかと言いたくなる」
・こうした声があちらこちらから上がっているが、現総務部長のS氏が入居したマンションの購入価格は、中古ながら都心の一等地に建っているだけあって、なんと7260万円にも上る“超高級物件”だ。
・そして、もう1つの“オチ”が、3億円超を出して“ババを引いた”格好の大手ハウスメーカーB社が今年2月までに、「百合丘職舎の躯体(柱など構造的部分)に購入後、大きな瑕疵があった」(B社担当者)と指摘したことだ。 B社は元々、リノベーション物件として再販するために百合丘職舎を購入したが、この瑕疵により、いまだ着工できない状態にあるという。B社は現在、「買い戻してもらうか、損害賠償を請求するか検討しており、売主(つまりA社)にクレームを入れている最中だ」(同じ担当者)。
・ここで更なる疑惑が浮上する。さらに別の本庁関係者は言う。 「神社本庁の一部やディンプル社が、実は瑕疵を隠して売ったのではないかという疑惑が出ている。もしそうなら、1億8400万円という売価は腑に落ちる。だがそうなると詐欺に該当し、刑事事件に発展する可能性もある」 こうした疑惑の根拠となっているのが、先の議事録。財政部長のK氏は売価が安くなった理由の1つに、問われてもいないのに「売却後の瑕疵による経費発生の有無」を挙げているのだ。不動産評価鑑定書に「瑕疵」についての記載は一つも見当たらないにもかかわらず、である。
▽ディンプルの社長と神社界“大物”の浅からぬ関係
・では、なぜディンプルが「随意契約的な内容」で、百合丘職舎を手中に収めることができたのか。 「ディンプル社長のT氏は、小野氏と懇意な関係にある神社界の“大物”とかねて繋がりがある」と、複数の本庁関係者はため息を漏らす。
・ある本庁関係者は「本庁の人間なら誰でも知っていることだが…」と前置きした上で言う。 「ディンプル社長のT氏は、実は『日本メディアミックス』という会社の社長も務めており、その取締役に、日本レスリング協会長を務める福田富昭氏が就いている。その福田氏は、本庁の元幹部である神政連会長の打田文博氏と懇意にしている。そして打田氏は、本庁の総長である田中恆清氏と盟友という関係。こうした流れで、ディンプルは本庁との関係を深めていた。また、小野氏は打田氏の腹心で、その後継者が現在の総務部長S氏だ。小野氏は、本庁の関係財団の過去の土地取引でディンプルと密接な関係があった」
・ちなみに日本メディアミックスは、「日本で唯一の『皇室』専門誌」と謳って「全国の神社が半ば強制的に買わされている」(ある神職)という季刊誌『皇室』(扶桑社)の販売会社だ。 実際、ディンプルと本庁との関係は古い。 2000年に本庁の関係財団が、神職養成機関である國學院大学に土地を売ったことに端を発する。この売却益を元手に関係財団が、本庁に隣接するビルを購入。そのビルを3カ月前から所有していたのがディンプルだ。当時、本庁の財政部長で、この関係財団の事務局長を兼務していたのが、小野氏である。そして、12年には、本庁の所有する中野職舎(中野区)と、南青山のマンションもディンプルに売却されるなど、同社は本庁の不動産取引に深くコミットするようになった。なお、この2物件とも百合丘職舎と同じく、即日転売されている。
・百合丘職舎をめぐる一連の取引について、小野氏は弁護士を通じ、書面で「神社本庁の問題であり、現在、神社本庁においてしかるべき調査が進行中と聞く。(小野氏が宮司を務める)宇佐神宮の問題ではないため回答すべき事項ではない」とした。 また、ディンプルから百合丘職舎を三為契約で購入した不動産会社A社担当者は、「(瑕疵の存在は)知らなかった」とする一方、「何も話すことはない。社長もそう言っている」とした。
・そしてディンプルのT社長は、期限までに取材に応じることはなかった。だが、本庁関係者によれば、瑕疵が発覚した今年2月以降、T氏は数度にわたって本庁を訪れ、「百合丘職舎が解体されていれば問題はなかった」とし、「『随意契約ではない』『3億円の価値はなかった』と言うよう約束してほしい」などと、本庁幹部に迫ったという。
・不動産取引をきっかけに、揺れる神社界の中枢である神社本庁。田中総長は今月、「司法の場での判断に委ねられるような問題」として、名誉毀損による刑事告訴に向けて動き始めた。片や、百合丘職舎の契約に疑問を抱く小串和夫・本庁副総長は、調査委員会を立ち上げ、今月から真相解明に乗り出している。つまり、「本庁首脳間でねじれ現象が起き、分裂状態にある」(前出の本庁関係者)わけだ。
・一連の出来事をおかしいと感じていた人たちも一部にはいたが、ほとんどの神職は性善説に立ち、争いを好まないため、事務方の決定を踏襲するだけだった。それが今回の問題を生んでいる」(本庁役員会関係者) 神社界の疑惑はどこまで白日の下にさらされるのか、関係者は固唾を飲んで見守っている。
http://diamond.jp/articles/-/132516

次に、6月26日付け「神社本庁の「政治力」と「資金力」、不気味がるほどではなかった!」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・不可解な不動産取引に揺れる神社本庁だが、一心同体ともいうべき政治団体「神道政治連盟」が安倍政権と近く、大きな政治力を及ぼしているとみられている。また全国8万社の神社を束ねているだけに、その資金力も恐れられている。特集「瓦解する神社」第2回目では、その実態に迫る。(週刊ダイヤモンド編集部・ダイヤモンドオンライン編集部 『瓦解する神社』取材班)
・昨年の正月。初詣で賑わう各地の神社で、“不穏”な動きが表面化した。 参拝客でごった返していた都内のある神社では、境内に「誇りある日本をめざして」「憲法は私たちのもの」と書かれたのぼりが掲げられ、近くに設置されたテントには、「国民の手でつくろう美しい日本の憲法」「ただいま、1000万人賛同者を募集しています。ご協力下さい」なる文言が書かれたポスターとA4の署名用紙、それを入れる箱が置かれていたのだ。
・じつは、こうした神社はここだけではなかった。というのも、東京都の神社をまとめる「神社庁」が、各神社で憲法改正に賛同の署名活動を行うよう指示していたからだ。 なぜ神社庁が支持を出し、神社が署名活動を行ったのか。 実は、全国8万社の神社を管理・指導する神社界の“中枢”であり“総元締め”でもある「神社本庁」、そしてその地方機関である神社庁は、「神道政治連盟(神政連)」という政治団体と関係が深い。
・神政連は、「神道精神を国政の基礎に」を合言葉に、神社界を母体として1969年に設立された政治団体。本部は神社本庁内にあり、役職員には神社本庁の評議員らが名を連ねていることから見ても、神社本庁や神社庁と神政連は“一心同体”の組織。そこで、以下では神政連の動きを通し、神社界と政治の“距離”について見ていこう。
▽安倍政権の応援団でも集票力は皆無の神政連
・神政連は、自民党、引いては安倍政権との関係の深さが、かねてから指摘されている。 神政連の活動を支持する議員連盟として「神道政治連盟国会議員懇話会」という組織があるが、2017年6月20日時点で、自民党を中心に衆議院議員228人、参議院議員81人の合計309人の国会議員が所属している。 しかも、第三次安倍政権の現閣僚20人の内、公明党出身の石井啓一国土交通大臣を除いた19人全員が懇談会のメンバー(下図参照)。その懇談会の会長は、安倍晋三首相が務めているからだ。
・そんな安倍首相の悲願は憲法改正。思いを同じくする神政連も、日本最大の保守組織「日本会議」とともに政権を支える保守勢力として影響力を発揮するチャンス。そこで神政連が神社庁に働きかけ、署名活動という“行動”に出たというわけだ。
・こうした動きを捉えて、「すわ、国家神道の復活か」などと危ぶむ声も一部で上がるが、そこまではいかなくても、神社界と安倍政権との距離の近さに、どこか不気味さを感じる方も少なくないだろう。 ところが、である。「今や神政連は、政治に対してたいした影響力があるわけではない」と神社本庁関係者は口を揃える。
・事実、今回の署名活動も、日本会議から指示されるがままで、それに従っただけ。以前は神政連の方が勢力を誇っていたにもかかわらずだ。 01年の参議院選挙でもこんなことがあった。神政連は、自民党公認候補として比例区から出馬した有村治子氏を支援していたのだが、得票数が少なくて苦しみ、当選確実の報が明け方まで出なかった。最終的には当選したが、蓋を開けてみれば、神社は全国津々浦々にあるにもかかわらず、票が入っていない地域が少なからずあったというのである。
▽パワーなくても政治家が頼るのは地域の祭りに出れらるから
・戦後の混乱期以降、神政連は陰になり日向になって政治への働きかけを行い、「元号法制定」「剣璽御動座(けんじごどうざ・天皇が行幸する際に、剣と勾玉を携えて移動し、滞在先に奉安すること)の復活」「紀元節の復活」など、数々の“華華しい”成果を収めてきた。
・それが今では、「見る影もない。昔は、政治に対する影響力も大きかったが、今や集票力は無きに等しく、影響力も日本会議とは比べものにならないほど小さくなった」と神社関係者は語る。 そればかりか、6月19日まで開かれていた国会では、天皇の退位をめぐる皇室典範に関する議論がなされるなど、神社界にとっては“一大事”だった。
・にもかかわらず、今特集「瓦解する神社」第1回の記事(「神社本庁で不可解な不動産取引、刑事告訴も飛び出す大騒動勃発」)で報じたような不動産取引をめぐるドタバタで組織が混乱、なんら行動を起こすことができなかった。 こうした神政連の姿を見て、「神社側もついてこなくなった」と、この関係者は明かす。
・「神社の神主たちも世代交代が進んでしまった。そのため、新憲法の制定や、皇室と日本の文化伝統を大切にする社会作り、靖国の英霊に対する国家儀礼の確立といった、神政連が掲げてきた目標に関心がなくなっており、積極的な活動もしなくなっている」(神社本庁関係者)
・しかし、このようにすっかり力を失いつつある神政連に対し、国会議員たちはなぜ懇談会のメンバーになってまで支持を仰ぐのか。 「議員たちは票がほしいというよりは、神社が主催する地元の“祭り”が狙い。地方では、いまだ多くの人が集まるため、祭りは有権者の前で演説できる絶好のチャンス。その機会を得るために懇談会のメンバーになっているだけで、神社本庁や神政連に対する忠誠心など何もない」と神社本庁関係者は明かすのだ。
▽神宮大麻というお札の頒布で神社に厳しい“ノルマ”
・ここまでは、神社界と政治の距離を見てきた。それでは、神社本庁のカネはどうなのであろうか。 「最近、頒布が減少しているぞ。式年遷宮を目指してとにかく増やせ!」 今から5〜6年前のこと。全国各地の神社に対し、一斉にこんな “げき”が飛ばされた。発信源は神社本庁だ。
・神社本庁が増やせと命じていたのは「神宮大麻」の頒布数だ。神宮大麻とは、簡単に言えば、神社界のピラミッドの頂点に立つ伊勢神宮が配る「天照皇大神宮」と書かれた「お札」のこと。各家庭の神棚にまつり、日々、祈りを捧げれば、遠くからでもお伊勢さん(伊勢神宮)のご加護を授かることができるというものだ。  この神宮大麻は、その大きさによって大・中・小とあるが、小で1体800円。全国の神社は、これを氏子などに販売し、最大の“収益源”としているのだ。
・神社本庁は、バブル時代、この神宮大麻の帆布数を「1000万体まで増やす」との目標を掲げ、全国の神社に厳しい“ノルマ”を課していたが、バブルの崩壊によりその数は減少の一途をたどっていた。 しかし当時、20年に一度、社殿を新たに造営し、旧殿から神体を移す伊勢神宮の「式年遷宮」という神社界最大のイベントを控えており、神社本庁はその費用を賄う必要に迫られていた。そのため傘下の神社に対し、げきを飛ばしていたというわけだ。
・左図を見ていただきたい。これは、神宮大麻をめぐるカネの流れを簡単にまとめたものだ。 まず、神社は氏子などに神宮大麻を“販売”。その“売り上げ”を、都道府県の「神社庁」に“上納”する。その後、各神社庁は神宮大麻の“発行元”である伊勢神宮に“上納”、伊勢神宮は半分程度を懐に入れた後、「本宗交付金」として神社本庁に渡すという形だ。2014年度の決算資料によれば、その金額は32億8450万円、神社本庁の歳入のじつに67.3%を占める。
・しかし、ここから神宮大麻をめぐるカネは不思議な流れをたどる。神社本庁に集められたカネは、数%上乗せされ(14年度決算書では34億7530万円)、都道府県神社庁、各神社へと戻されていくのだ。 つまり、神社が販売した神宮大麻1の売り上げは、いったん、都道府県の神社庁→伊勢神宮→神社本庁と吸い上げられた後、再び神社へと戻されているわけだ。
・どうしてこんな面倒なことをするのか。 「税務当局から、神社が売り上げをそのまま手にすれば、神社は伊勢神宮の『代理店』に該当し、売り上げは手数料収入となって課税対象となると指摘された。そのため、いったん神社本庁に集め、交付金として神社に交付する形がとられるようになった」と神社本庁の関係者は解説する。
・こうした流れをたどるため、「歳入の7割近いカネは、神社に“還付”され神社本庁には残らない。頒布してもらうための“助成金”も出しているから、正確に言えばマイナスだ。だから、一般会計の歳入は48億7899万円となっているが、実際の収入は、寄付金や神職の資格試験などで得られる手数料など16億円程度に過ぎず、ある意味“自転車操業”的な運営だ」と神社本庁関係者は自嘲気味に言う。 ちなみに、職員の給料もさして高くないようだ。ある40代の職員の場合、基本給は40万円程度。それに住宅手当や月に一度の宿直手当などがわずかに加算される。ボーナスは年間で「200万円くらい」(職員)だという。
▽全国8万社を束ねている割に資産は94億円程度しかない
・そもそも、全国8万社の神社を束ねているわりには、神社本庁にそこまでの資産がない。下図を見ていただきたい。これは、14年度の決算資料を基にまとめた神社本庁の主な資産だ。 宗教法人神社本庁のベースとなる「基本財産」として最も大きいものは、神社本庁の境内地と建物。それ以外は、職員が住む職舎と現預金くらいで、合わせても43億3185万円に過ぎない。このうち、百合丘職舎は、前回記事「神社本庁で不可解な不動産取引、刑事告訴も飛び出す大騒動勃発」で紹介したように、すでに売却されているから、今は40億円にも満たない金額となる(金額はいずれも簿価)。
・これに、以前、皇室と関係を維持するために使われていた資金がそのまま残っている「特殊財産」が1億8276万円、そして宗教法人として行う通常の活動費用に充当する「普通財産」が48億6182万円で、神社本庁の「正味財産」は93億7644万円程度なのだ。
・少し話がそれるが、普通財産の中には、歴史教科書を出版している教科書会社の株式や、「運用のことなど分からない担当者が、証券会社からうまい話を持ち掛けられて買ってしまい、後に大きな損失を出して内部で問題となった」(神社本庁関係者)エルピーダメモリの社債なども含まれているのは興味深い。
・こうして見ていくと、神社本庁には「政治力」「資金力」ともに恐れるほどのものはないことが分かる。それでも世間から不気味がられるのは、「外からその内情をうかがい知ることができないから」に尽きるのではないか。 だが、現在の神社本庁には問題が山積し、組織がぐらついている。現執行部は、それを押さえつけようと強権を発動し、多方面から批判や不満が吹き出している。次回、その詳細についてお伝えする。
http://diamond.jp/articles/-/133401

第三に、7月5日付け「神社本庁「恐怖政治」の実態、地方の大神社で全面戦争も」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・“お江戸”の大神社が6月、全国8万社の神社を束ねる「神社本庁」からの離脱を決定した。片や、地方では神社本庁と地元の“全面戦争”も勃発。特集「瓦解する神社」最終回の第3回は、本庁で強まる恐怖支配に迫る。(週刊ダイヤモンド・ダイヤモンドオンライン編集部 「瓦解する神社」取材班) 「深川の八幡さま」として知られる富岡八幡宮(東京都江東区)が6月中旬、神社本庁(以下、本庁)からの“離脱”を決めたことが、週刊ダイヤモンド・ダイヤモンドオンライン編集部「瓦解する神社」取材班の取材で分かった。宗教法人法に基づく東京都の認証手続きを経て、早ければ9月までに離脱が認められる。
・富岡八幡宮は、大相撲の起源とされる「江戸勧進(かんじん)相撲」の発祥地で、江戸三大祭、「深川祭」でも有名な“江戸”を代表する神社の一つ。18代宮司の故・富岡盛彦氏はかつて、本庁事務総長(現在の総長)だった人物だ。 それだけに、ある本庁関係者は「明治神宮が2004年に本庁から離脱(10年に復帰)したとき以来の衝撃。誰も得をせず、神社界全体への余波も大きい」と嘆く。
・どうして、こうした“最悪”の事態に陥ってしまったのか。 本庁秘書部は「答えることはない」と取材を拒否したが、事情に詳しい神社関係者は「直接的な理由は、富岡八幡宮の宮司人事について、責任役員会の具申を本庁が無視し続けてきたため」と明かす。実際、富岡八幡宮では、トップを宮司“代務者”が6年以上も務めているという大手神社としては異常な事態が続いている。
・宮司の人事は、氏子などから選出された3人以上の責任役員のうち、代表役員(神社の場合は宮司)を除いた責任役員の推薦(具申)をもとに、神社本庁(正確には「統理」)が任命すると神社本庁庁規、神社規則に定められている。 
・それが、富岡八幡宮の場合、「先代宮司の引退後、長女が代行役の『宮司代務者』に就いた。その長女を正式に宮司にしようと、13年から今春まで合わせて3回具申したものの本庁側が認めず、先延ばしされ続けてきた」(前出の神社界関係者)という。 その理由について、本庁と富岡八幡宮の双方に対し、様々な憶測が飛び交う。真相はさておき、関係者が共通して危惧するのは、こうした“大神社”と本庁の確執から富岡八幡宮のように本庁を離脱する大神社が近年、相次いでいることだ(表参照)。 とりわけ、本庁関係者が「富岡八幡宮以上に頭が痛い」という問題が勃発しているのが九州・大分県だ。
▽大分の宇佐神宮では本庁と全面戦争に発展
・大分県宇佐市の宇佐神宮。祭神・信仰別の神社数で全国4万社あまりという神社界の“最大勢力”である「八幡宮」の総本宮で、伊勢神宮に次ぐ有力神社として出雲大社や明治神宮などと共に名が挙がる有名神社である。
・宇佐神宮を地元で支え続けてきた県神社庁宇佐支部が今年5月、氏子などで構成される支部総代会総会で、前代未聞の決議を行った。 その中身は、「高圧的、独善的な宮司に関係修復をする心は皆無」と宇佐神宮の新任宮司を批判し、宇佐神宮の祭典や、遷宮に対する氏子への寄付要請を一切拒否することなどが盛り込まれた事実上の“絶縁状”だ。こうした事態に、県の神社関係者、本庁関係者は「本庁と大分の全面戦争の様相だ」とため息をつく。
・大分県神社庁宇佐支部は総代会総会で、前代未聞の決議を行った “戦端”は昨年2月、宇佐神宮に新たな宮司が着任したことで開かれた。 新任宮司とは、今特集「瓦解する神社」第1回の記事(「神社本庁で不可解な不動産取引、刑事告訴も飛び出す大騒動勃発」)で、疑惑の不動産取引を主導した本庁幹部の1人とされる前総務部長の小野崇之氏、その人だ。
・本題に入る前に、宇佐神宮で起きた宮司職を巡る過去のいきさつを説明しよう。 時計の針を08年に巻き戻す。先代の宮司が亡くなったため、世襲家である到津家で唯一の末裔となった女性が急遽、神職の資格を取得。その上で、女性が宮司になるまでの“中継ぎ役”として、当時の県神社庁長が宮司を務めていた。だが、この年、その中継ぎ役がこの世を去ってしまったのだ。
・宇佐神宮の責任役員会は、その死の直前、女性を新しい宮司にすべしという具申を行ったが、本庁側は女性の経験不足を理由に拒否し、またも当時の県神社庁長を特任宮司(任期3年程度)として任命する。 これを不服とした女性が09年に本庁に離脱届を叩きつけ、10年には宮司の地位保全を求めて提訴する。ところが、13年に最高裁で敗訴が確定し、翌14年に女性は宇佐神宮から解雇されてしまう。この間、社務所内で小競り合いも起き、女性がけがを負わされたとして告訴する事態まで起きている。
・確かに、大分県内外の神社関係者からは「女性も神職としての人格に難があった」という声は少なくない。  その一方で、南北朝時代から続く到津家は出雲大社の千家家、阿蘇神社の阿蘇家と並ぶ家格とされ、歴史と伝統を重んじる地元の支持が高かったことも事実だ。そして、「性別がもし男性であったならば、結末は違ったはず」(複数の関係者)という声も多い。
・そして15年末、今度は宇佐神宮の氏子総代会が、前出の特任宮司(宮司に昇格済み)の能力欠如を理由とする解任嘆願書を本庁に提出。16年2月には、この宮司も自ら退職願を出し、受理されたことを受けて、同月に本庁が後任の新たな宮司として送り込んだのが、小野氏だった。
▽天下り宮司とのバトルで祭りの寄付が半分以下に激減
・そして、現在――。 取材班は前述の支部総代会総会の決議について、小野氏に見解を求めたが、小野氏は弁護士を通じて、「事実について与り知らぬ」と書面で回答してきた。そこで、本庁と県神社庁、支部の各関係者の証言から何が起きたのか紐解いてみる。
・小野氏の宮司就任に対し、「地元の人間を宮司にしたい」との思惑があった支部は、当初から反対の姿勢だった。ところが、当時の宇佐神宮の責任役員3人のうち、2人が小野氏の就任を認めたことで潮目が一変したという。
・「この2人は地元・宇佐の人間ではないことに加え、本庁に呼び出された直後に小野氏就任の賛成に転じた。しかも、宇佐神宮の宮司人事は“全会一致”が原則だったのに、それを覆して多数決による“強行採決”に踏み切るなど、全てが異例づくめだった」(支部関係者) それでも着任した小野氏に対し、支部の幹部が16年3月、あいさつに出向いたところ、小野氏から、支部が反対したことに対する作成済みの謝罪文を提示され、それに対する署名・捺印とともに、宇佐神宮内にあった支部事務局の退去を求められたという。
・その際、小野氏が「自分が宮司となった以上、支部は出て行ってもらいたい。宇佐神宮の神職は支部会員にはさせない。今後は支部との関係を断つ」などと述べたため、当時の支部長が激昂したとされる。 ただし、これらの経緯については「小野氏は『謝罪文は支部側から提出された』、『支部の方が自ら出て行った』などと周囲に説明している」(本庁関係者)ことから、互いの主張に食い違いがある。
・とはいえ支部は、関係改善を引き換え条件に一旦は謝罪要請に応じ、事務局も移転させた。だが、小野氏への反発が支部内や氏子の間で日に日に強まったため、「小野氏の求めには今後は一切の協力をしない」と姿勢を転換。同年5月の総代会総会では、7月末に開かれる宇佐夏越祭(御神幸祭)への協賛金(氏子による寄付金)の取りまとめ中止を決議した。
・その結果、例年は支部傘下の約200社から寄せられていた1000万円以上の協賛金が、昨年は半分も集まらなかったとされる。 「地元で生まれ育った神職たちは地域の信用を集める人々。氏子がどちらの言い分を信じるかは明らかだ」と市関係者は言う。
・片や、宇佐神宮も6月時点で、従来は支部を通じて納入する神社負担金や神職負担金(今特集の第2回の記事「神社本庁の『政治力』と『資金力』、不気味がるほどではなかった!」を参照)を、「根拠となる規定がない」などとして支払いを拒否。県神社庁からの請求にも応じていないという。 さらに今年6月。“小野”・宇佐神宮を巡るいざこざは、行政や地元商店街にも波及する。宇佐神宮が、自らが所有する土地に新たな有料駐車場を建設する、と突如発表したのだ。
▽宮司人事をめぐって、泥沼化している宇佐神宮
・これまでの駐車場は、市が出資する第三セクターの所有で、参道沿いの地元商店街入り口の手前に位置していた。ところが、新たな駐車場ができれば、参拝客は商店街を通ることなく境内に入ることができる。そのため、地元商店街には「客足が遠のく」と動揺が広がっている。
・「宇佐神宮の説明では『参拝客の利便性向上のため』という名目だが、支部との断絶で協賛金が減ったことで自分の新しい財布が欲しいのだろう」と皮肉るのは別の市関係者だ。 その上、宇佐神宮は新たな駐車場の整備費用の全額と、土地代の通年の賃貸契約を三セク側に求めているとされ、困った三セクの社長である市長が直接交渉に臨み、通年契約する代わりに、宇佐神宮にせめて整備費用の一部を負担するよう求めたという。ところが、宇佐神宮側はこの代替案も拒否。交渉は暗礁に乗り上げている。
・別の市関係者は「正月や夏越祭などの繁忙期は、三セクが宇佐神宮から臨時駐車場を借りていたが、先代宮司までは『地元から儲けるわけにはいかない』として初穂料のみだった。ところが、小野氏が来てからは一変。1日当たり5万円程度を請求され、大赤字だった」と憤る。
▽“地元”の宇佐神宮が“本庁の”の宇佐神宮に
・片や、小野氏の矛先は支部に止まらず、県神社庁にも向けられている。 今年4月、小野氏から県神社庁長宛てに『匿名文書の配布に関する申し入れ』と題する抗議文が送付された。この「匿名文書」とは、今特集の第1回で取り上げた疑惑の不動産取引について、小野氏らの関与をほのめかす複数の文書を指すと推測される。
・小野氏は、そうした匿名文書が、県神社庁理事会で配布されたことを問題視。抗議文で「配布されたことが事実であれば、(中略)法的責任についても重大な疑義を生じる」とし、「貴庁(県神社庁)の対応に応じて、相当な措置を検討させて頂く」と結び、対抗措置をほのめかす。だが、取材班の取材には、小野氏側は書面で、名誉棄損による県神社庁長への告訴の可能性について否定した。
・この騒動に、“元締め”である本庁は何をしているのかというと、やはり小野氏と歩調を共にする。 小野氏のかつての上司、田中恆清総長は5月、これまた県神社庁長宛ての文書で、「当該文書(匿名文書)は事実と異なる内容であることは言を俟(ま)たないが、何故、貴庁(県神社庁)役員会に於いて配布されたのか甚だ疑問を禁じ得ない」と、本庁で現在進行中の調査委員会の目的を否定するような文言と合わせて非難したのだ。
・県神社庁関係者は、「匿名文書は県神社庁宛てに送付されてきたので、規則に基づいて役員会で対応を協議するため配布しただけなのだが…」と苦渋をにじませる。 一方、前出の市関係者はこの現状にため息を漏らす。 「地元の宇佐神宮が今は『本庁の宇佐神宮』になってしまった。かつて宇佐神宮の責任役員が『これは本庁の乗っ取りだ』と言っていた。当時は真に受ける者は少なかったが、その予言通りになった。初めからオール宇佐態勢で臨めばよかったのだが、後の祭りだ」
▽懲戒処分規定を改定 締め付けを強化へ
・「本庁に入るということは、全国の神社の人事権を掌握するということ。どこの神社にどんな空きのポストが出るのか、どんな問題を抱えているのか、全て把握できる」 かつて神社界のある重鎮は、本庁の人事介入に起因する騒動が各地で頻発する背景について、こう指摘した。
・しかし、本庁職員が大神社の宮司人事に介入するのはなぜなのか。その理由は、本庁職員が背負う“宿命”にあるようだ。 「本庁職員は、神社の次男や実家が神社ではない者が多い」と明かすのは別の本庁関係者だ。 各神社のトップ、宮司は伝統的に世襲制。しかも、地方ほどその傾向が強い。それゆえ、嫡男が継ぐことが基本で、次男以下は実力があっても宮司になれず、やむなく本庁に入庁するケースが多いという。給与も公務員並みで、退職者も後を絶たない。
・対して、神社界の“大企業”とも言える「別表神社」の宮司ともなると、年収は本庁職員をしのぐ。さらに一国一城の主として、地元の名士に仲間入りもできる。それゆえ、本庁幹部職員の定年退職後の天下り先として、「数少ない大神社の宮司ポストが狙われている」と複数の関係者は言う。
・「今後、宇佐や富岡のような本庁による人事介入がさらに加速するのではないか」(複数の神職)――。  昨年7月、本庁職員だけでなく全国の神職が震え上がったのが、70年ぶりとなる本庁の「懲戒規定」の抜本的な見直しだ。見直しを進めた中心人物は、小野氏と共に疑惑の土地取引を主導したとされる本庁のS総務部長(当時・秘書部長)だ。
▽70年ぶりに見直された本庁の「懲戒規定」が波紋を拡げる
・その骨子を一言で言えば、厳罰化と、法廷闘争を視野に入れた懲戒対象の具体化。とりわけ、本庁職員や神職の間で懸念されているのが、懲戒対象に盛り込まれた「その他、神職としての資質に欠ける行為」の項目だ。
・しかも、「(施行の)以前に発生した事件についても適用する」と、憲法や労働法などに規定された「不利益不遡及の原則」(過去にさかのぼっての懲戒処分は不可)に抵触しかねない附則まで存在する。 複数の本庁関係者は「体制派の意に沿わない職員のみならず、神社の宮司や神職を適当な口実をつけて懲戒処分にしてしまう可能性が高まる」と口をそろえる。そして、「最も恐ろしいのが、宮司を免職して自分たちに都合のいい宮司を送り込むこと」(別の神社界関係者)だ。
・「解任された宮司が裁判で処分の無効を主張しても、規定の改正で、本庁側は『神職の資質に欠けたから免職した。神職の資質について裁判所は判断できるのか。宗教への不当介入ではないか』と主張して、裁判所の介入を拒むことが可能となった」(同じ関係者)。
・ある重鎮の神職は言う。 「神社本庁職員といえば、昔は国家公務員でいうキャリア組のような存在で、部長級ともなれば人格面でも学識面でも群を抜いていた。そのため、宮司の後継者問題に悩む地方に乞われて赴任していったものだ。だが、今ではその慣例を逆手に取り、天下り先として利用しているとしか思えない」
▽震災時の不祥事にも小野氏の“影”
・東日本大震災の発生から間もない11年6月、週刊ダイヤモンド編集部と時事通信の同日報道により、明るみとなった本庁の不祥事がある。 当時、伊勢神宮が、天皇家に代わって栽培する神事に欠かせない“神の米”、「御料米(ごりょうまい)」を被災地支援のために本庁を介して送ったところ、本庁がその一部を伊勢神宮や被災地に知らせないまま、職員に配ってしまったというものだ(『週刊ダイヤモンド』2011年7月2日号「仏教・神道大解剖」106ページ、ダイヤモンド・オンライン「消えた被災者支援用の“神のコメ” 行方は神社本庁職員の胃袋へ」参照)。
・実は、当時の記事では触れなかったが、「御料米の職員配布を決定し、これが露見しかけると全職員に箝口令を強いた人物が小野氏」(複数の本庁関係者)だ。 当時の報道からほどなく、オフレコ取材の際には口をつぐんだある本庁関係者は、「報道は全て事実。(取材時は)小野氏が怖くて本当のことが言えなかった」と打ち明けた。
・報道後、釈明に追われた小野氏は「報道内容に事実誤認がある」と関係各所に文書を配り、火消しに走った。ところが、御料米が届けられるはずだった当の福島県神社庁が、小野氏を名指しし、小野氏の釈明内容こそ事実誤認であり、「極めて遺憾」、「貴職(小野氏)による対応への猛省を要望」するという激しい抗議文を送付した。小野氏はその年、減給処分を受けている。
・別の本庁関係者は「小野氏の行動は、伊勢神宮ひいては天皇家に対する冒涜だった」と今も怒りを覗かせる。本庁職員の中には、配布された御料米を、畏れ多くて食べることも捨てることもできず、6年経った今も、保管し続けている者が少なくないという。
・「本来、神職にとって争い事は全て『穢れ』。ましてや、司法の場での争いなど最も忌避すべきこと。だが、その規範たるべき本庁が内外で起こす昨今の世俗的な騒動を見ていると、怒りを通り越してむなしくなる」と、ある本庁関係者は吐露する。「本庁の傘下にいてプラスになることは一つもない」(大神社宮司)という声が日々高まる中、神社界を束ねる神社本庁はその存在意義を失いつつある。
・そして今月1日。神社本庁の年度初めに当たるこの日、新たな人事が発令された。 神社界関係者の耳目を引いたのは二つの人事。その一つが、今特集の連載第1回で“予測”したように本庁前財政部長のK氏が、兵庫県の大神社のナンバー2、権宮司に“栄転”したこと。そして、もう一つが、神奈川県の大神社に“中途採用”された「期待の新人」(別の本庁関係者)が、小野氏の子息の名であったことだ。配属先は父の前職と同じ総務部だった――。
http://diamond.jp/articles/-/134148

第一の記事の内容は、あまりの酷さに空いた口が塞がらない。 『原則売却禁止の基本財産を随意契約でたたき売り』、 『ディンプルとの随意契約に後ろ向きだった前財務部長が“更迭”され、K氏が財務部長に変わると話は一気に進む』、 『小野氏は、本庁の関係財団の過去の土地取引でディンプルと密接な関係』、など本来の組織の形を成していない「ガバナンス欠如」の悪しき例だ。自浄作用が働かないようであれば、宗教法人を監督する文科省の出番なのではないだろうか。
第二の記事では、 (集票の)『パワーなくても政治家が頼るのは地域の祭りに出れらるから』、というのはさもありなんだ。
第三の記事で、 『“大神社”と本庁の確執から富岡八幡宮のように本庁を離脱する大神社が近年、相次いでいる』、というのは初めて知った。 『“地元”の宇佐神宮が“本庁の”の宇佐神宮に』、 『70年ぶりに見直された本庁の「懲戒規定」が波紋を拡げる』、というのも、地元から反発を買っても、強引にねじ伏せようとする姿勢では、発展はおぼつかない筈だ。 震災時の不祥事での 『「小野氏の行動は、伊勢神宮ひいては天皇家に対する冒涜だった」』、との指摘には、驚きを通り越して、その小野氏を減給処分にしただけで、総務部長から宇佐神宮の宮司に昇進させた本庁の「ガバナンス欠如」ぶりには、あきれるばかりだ。神道政治連盟国会議員懇話会会長の安部首相も、泥をかぶる覚悟で、正常化に汗をかいてもいいのではなかろうか。
タグ:”右傾化” (その4)(神社本庁で不可解な不動産取引、神社本庁の「政治力」と「資金力」、神社本庁「恐怖政治」の実態) ダイヤモンド・オンライン 神社本庁で不可解な不動産取引、刑事告訴も飛び出す大騒動勃発 全国約8万社の神社を“包括”する組織が、宗教法人「神社本庁」( 神道政治連盟(神政連)」の実質的な母体組織 本庁の実権を握る一部の幹部が、特定の不動産業者と癒着し、貴重な本庁の財産を損なっているのではないか」という疑惑が浮上 典型的な“土地転がし”だろう 職員用宿舎「百合丘職舎」 原則売却禁止の基本財産を随意契約でたたき売り ・ディンプルとの随意契約に後ろ向きだった前財務部長が“更迭”され、K氏が財務部長に変わると話は一気に進む 売価の根拠として真っ先に挙げられたこの不動産評価鑑定書は、実は、購入者であるディンプル自身が持ち込んだもの。そこには、鑑定時の同行者としてご丁寧にもディンプル社員の名前まで記載 売却益で幹部職舎に高級マンション 危機管理名目にも疑問の声 ディンプルの社長と神社界“大物”の浅からぬ関係 神社本庁の「政治力」と「資金力」、不気味がるほどではなかった! 神政連は、「神道精神を国政の基礎に」を合言葉に、神社界を母体として1969年に設立された政治団体。本部は神社本庁内にあり、役職員には神社本庁の評議員らが名を連ねていることから見ても、神社本庁や神社庁と神政連は“一心同体”の組織 神政連の活動を支持する議員連盟として「神道政治連盟国会議員懇話会」 「日本会議」とともに政権を支える保守勢力として影響力を発揮するチャンス。そこで神政連が神社庁に働きかけ、署名活動という“行動”に出たというわけだ パワーなくても政治家が頼るのは地域の祭りに出れらるから 神宮大麻というお札の頒布で神社に厳しい“ノルマ” 神社本庁「恐怖政治」の実態、地方の大神社で全面戦争も 富岡八幡宮 神社本庁(以下、本庁)からの“離脱”を決めた 大分の宇佐神宮では本庁と全面戦争に発展 天下り宮司とのバトルで祭りの寄付が半分以下に激減 宮司人事をめぐって、泥沼化している宇佐神宮 “地元”の宇佐神宮が“本庁の”の宇佐神宮に 懲戒処分規定を改定 締め付けを強化へ 70年ぶりに見直された本庁の「懲戒規定」が波紋を拡げる 震災時の不祥事にも小野氏の“影” 「小野氏の行動は、伊勢神宮ひいては天皇家に対する冒涜だった」
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