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日銀の異次元緩和政策(その25)(“教祖様”にざんげされた日銀、日本が突入するハイパーインフレの世界 企業とあなたは何に投資するべきか、金融正常化で協調する世界 日銀は出口なしか 超緩和が招いた格差拡大) [経済政策]

日銀の異次元緩和政策については、4月11日に取上げたが、今日は、(その25)(“教祖様”にざんげされた日銀、日本が突入するハイパーインフレの世界 企業とあなたは何に投資するべきか、金融正常化で協調する世界 日銀は出口なしか 超緩和が招いた格差拡大) である。

先ずは、東短リサーチ代表取締役社長の加藤 出氏が6月9日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「“教祖様”にざんげされた日銀 バーナンキ前FRB議長の反省」を紹介しよう。
・「私はよく理解できていなかった。特に初期の論文では楽観的過ぎた。中央銀行がデフレを克服できると決意して金融緩和策を行うことに、私は確信を持ち過ぎた」 米連邦準備制度理事会(FRB)の前議長で、著名な経済学者であるベン・バーナンキ氏は、5月24日に日本銀行内で開催された講演で、そう語った。
・彼はかつて、日本のインフレ率が低いのは金融政策が誤っているせいだと、日本銀行を激しく罵倒していた。しかし、ここにきてその論調は様変わりを見せている。「他の見解に忍耐を示さなかった」と反省の弁を述べていた。
・この4年間の日銀は、バーナンキ氏が推奨した政策を全て取り込み、さらにそれを大胆に実施してきた。それにもかかわらず、日本の欧米型コア消費者物価指数(「総合」から食品とエネルギーを除いたもの)は、現在マイナス圏に戻ってしまっている。
・以前のバーナンキ氏は日本経済の構造的な問題に関心を示さなかった。ところが、今回は中立金利水準(完全雇用が実現され、かつ物価が安定している金利水準)が低下している中では、金融緩和策の効果が以前よりも得られにくくなっていると、日本経済の構造問題にも言及していた。
・また、今後の追加緩和策に関しては、「過去数年用いてきた手段は限界にぶつかっている。特に金利は、短期金利だけでなく、全般的に事実上の下限に近づいてしまっている」と指摘した。人々のインフレ予想を高められれば実質金利を引き下げられるが、「インフレ予想は低いままだ」と、その難しさにも言及している。
・ただ、講演の会場でバーナンキ氏のこうした一連の発言を聞いていた日銀関係者の胸中は、複雑だったに違いない。 というのも、黒田東彦総裁率いる現在の日銀の金融政策は、バーナンキ氏を“教祖”の一人とするリフレ派の考えに沿って実施されてきたものだからだ。そのため、“教祖様”に素直に「ざんげ」をされてしまうと、日銀としてはこれからどうしたらいいのかという問題が生じる。
・今後の日銀が取るべき方針についても、バーナンキ氏は講演内で言及している。インフレ目標の達成を目指す姿勢を維持しつつ、必要になった場合には財政出動を金融緩和策と協調させながら拡大させるべきだと指南した。
・もっとも、インフレ目標の実現は遠くても、世界経済の好調さに支えられて日本経済は現在良好な状態にある。近々にそういった政策が導入されることはなさそうだ。しかし、海外経済が失速してきたときには、「ヘリコプターマネー」やクリストファー・シムズ米プリンストン大学教授の「物価水準の財政理論」(FTPL)なども含めて、財政赤字を拡大する議論が活発化しそうだ。
・とはいえ、日本経済の根本的な問題は、人口減少や脆弱な社会保障制度、日本企業の国際競争力低下などといった課題の中で、多くの日本国民が将来に対して強い不安を抱いていることにあると思われる。 そのため、バーナンキ氏の発言を聞いて、「打ち出の小づちはまだあるらしい」と期待するのではなく、構造的な課題に向き合っていく必要がある。なぜなら、海外の著名な経済学者による日本への助言がまた誤っていたとしても、彼らは事後的に「楽観的過ぎた」と「ざんげ」すれば済んでしまうからである。
http://diamond.jp/articles/-/130528 

次に、経営コンサルタントの大前研一氏が6月26日付けJBPressに寄稿した「「日本が突入するハイパーインフレの世界。企業とあなたは何に投資するべきか」」を紹介しよう(▽は小見出し9.
・もしアメリカ合衆国大統領トランプ氏が、反グローバリズム、孤立主義といった政策を推し進めれば、世界は分断され、経済危機に陥るでしょう。世界はこれまで多くの経済危機を乗り越えてきましたが、現在、予見されている危機の要因は「政治」です。今、世界でいくつもの大きな変革が起き、経済を不安定にする要因が生まれています。この連載では、世界と日本にどんなリスクがあるのかを大前氏が解説します。(前回の記事:「分断された世界。『アメリカ・ファースト』はすでに達成されている」
▽外交・内政とも多くの課題を抱える安倍政権のゆくえ
・安倍政権は外交・内政ともに多くの課題を抱えています。 外交ではトランプ氏と日米関係をどう築くか、難しい舵取りを迫られています。 イギリスはEU離脱をめぐる混乱がしばらく続きますし、6月にはメイ首相が仕掛けた解散総選挙があります。 中国との緊張も高まっています。韓国では朴槿恵大統領の後任として文在寅(ムンジェイン)氏が新しい大統領に選ばれましたが、日本との慰安婦問題の合意は破棄すると言っており、韓国との関係再構築という難題が控えています。
・内政について安倍首相は成長戦略を強調していますが、いよいよ打つ手がなくなり、カジノを含む統合型リゾート施設、IR(Integrated Resort)が成長戦略の中心という「素晴らしい」展開になっています。 安倍首相は3本の矢に加えて地方創生や労働条件の改善などについて言及していますが、彼の政策の一丁目一番地は憲法改正です。衆議院選挙をもう一度クリアすれば、安倍首相は憲法改正に身を投じるとみられます。
・アベノミクスや3本の矢は効果が得られず、新3本の矢に至っては誰も覚えていないという状況です。ちなみに新3本の矢とは、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」です。 子育て支援としては、希望出生率を1.8としています。フランスでは出生率が瞬間的に2.0に伸びました。これに大きく影響しているのが、40年以上前に行った戸籍の撤廃と、「親子関係上の婚外子の差別撤廃」法の成立です。 フランスでは、長く一緒に暮らしてパートナー関係を築き上げた人たちに配偶者と同様の社会的権利を認めることを法で定めています。出産手当、出産費用の無料化、産休所得補償、ベビーシッターや保育ママの費用負担といった子育て、家族支援も、差別なく受けられます。
・日本には戸籍制度があり、婚外子が差別を受けたりする心配から、妊娠したけれど結婚して戸籍に入ることができないときに出産をためらうケースもあります。子どもを産むうえで、「籍を入れる」ことが大きな縛りになっているのです。これは非常に大きな社会問題だと思います。 戸籍制度があるのは日本や韓国、台湾など限られた国や地域のみで、私は20年以上前に戸籍撤廃を自治省(当時。現総務省)に掛け合ってきましたが、政府には全く動く気配がありません。
▽日本が国債暴落、ハイパーインフレという地獄の入り口に立つ
・日銀は物価上昇率2%の目標を掲げていましたが、黒田総裁は目標の達成時期を2018年度中に変更しました。自身の任期である2018年4月より先に目標を置いたのです。普通の国では敗北宣言と認識されるものと思いますが、日本のマスコミはきついことを書くと安倍首相に叩かれるのか、あまり批判するメディアはありません。
・アベノミクス3本の矢も、新3本の矢もいずれも結果は出ていません。 これが世界の金融市場からどうジャッジされるでしょうか。もともとアベノミクスの金融政策は世界が認めたわけではなく、「この道しかないというのだからやらせておこう」というムードのもので、結果が出ないことを放置し続ければ、いよいよ世界中から「NO」を突き付けられるでしょう。
▽アベノミクス失敗を市場が知った時に起こること
・アベノミクスの失敗を市場が認知すればどうなるか。 国債は暴落し、日本はハイパーインフレという地獄の入り口に足を踏み入れることになります。 日本の国債がこれまで安泰と受け止められてきたのは、そのほとんどを日本人が購入しているからです。自国の国債が暴落しては自分たちが困りますから、売りに走ったりはしないと考えるのが普通です。
・しかし明確に意識して国債を買っている個人は非常に少なく、実際に買っているのは日本の金融機関や日銀です。金融機関であれば、いざとなれば資産を守るために売り逃げに転じる可能性もあります。 海外では日本国民が国債を買っているのだと錯覚し、投げ売りが生じないと考えているようですが、そんなことはないのです。 また最近は外国人の持分も増えています。一気に売りに転じるなど、外国人の取引状況によっては暴落につながる可能性もあり、油断はできません。
▽世界のハイパーインフレ「コーヒーをお代わりするまでの間に値段があがるような世界」
・1990年以降、ハイパーインフレになった国はたくさんあります。 例えばブラジルはインフレ率1000%というすさまじい状況でした。私も見てきましたが、ここまでの事態になると、月の初めに給料を支払わなければ誰も会社に来てくれません。 月の終わりになると、月初めからさらに2~3割通貨価値が下がっているという感覚です。
・ついに月給では間に合わなくなって、週給で金曜日に支払うと、今度は月曜日に支払うよう要求されます。 月曜日に給料を支払うと、みんなシティバンクに行って1日帰ってこない。もらったお金をドルに換金するのです。だからブラジルの人は「週4日しか働かない」などと言われていました。
・私はかつてインフレ率1万%を経験したスロベニアにも、ハイパーインフレ時に行ってきました。スロベニアの中央銀行総裁になった方から伺った話ですが、友達に手紙を書くのに、大きい封筒でなければ駄目だったと言います。急激なインフレに切手の印刷が追い付かず、びっくりするくらい大量の切手を貼らなければならないからです。 切手の隙間に住所を書き、郵便局へ行くまでの時間にまた郵便料金が上がって、さらに切手を貼るように求められ、裏にもびっしり切手を貼ったそうです。
・喫茶店に行ってコーヒーを飲めば、1杯目を注文してから2杯目を頼むまでの間にコーヒーの値段が上がってしまう、ハイパーインフレとはそういう凄まじい世界です。
▽ハイパーインフレ時代のサバイバル術
・次にハイパーインフレへの対応策についてです。 これからの日本の最大の論点は、少子高齢化で借金を返す人が激減する中、膨張する約1000兆円超の巨大な国家債務にどう対処していくのか、という点に尽きます。 私は、このままいけば、日本のギリシャ化は不可避であろうと思います。歳出削減もできない、増税も嫌だということであれば、もうデフォルト以外に道は残されていません。
・日本国債がデフォルトとなれば必ずハイパーインフレが起こります。  そのとき、私たちはどうしたらいいのか?そのときのために今からできる対策を述べておきます。
▽ハイパーインフレで地獄を見る年金受給者
・ハイパーインフレになったら年金受給者は大変です。今までハイパーインフレになった国では、年金受給者が地獄を見ました。年金は固定額ですので、今まで20万円だと思っていたお金が、例えば実質2万円の価値になるのです。
・ロシアの場合、高齢者が食料品を購入できなくなり、家庭菜園で野菜を育て、それでなんとか7?8年食いつなぐという状況になりました。 私はハイパーインフレ時のロシアをこの目で見てきましたが、若い人の生活がよくなる反面、高齢者が非常に苦労していた姿が印象に残っています。 例えば、外出先から家まで5?6キロメートルあるというとき、若い人はタクシーやバスに乗りますが、高齢者はバスに乗るお金もなくて10キロメートルでも歩いていました。それくらい年金受給者(高齢者)の生活は大変になるのです。
・対策としては、資産を、キャッシュを生む不動産(好立地のマンション)や株などへとシフトさせることをお勧めします。タンス預金、定期預金などはいずれも紙くずになるだけですから、持っていても意味がありません。 キャッシュフローを生むものは、不動産以外に、都市部での民泊サービスなどがあります。今アメリカなどではAirbnbでお金を稼ぐ人が増えていますが、日本でも訪日外国人の宿泊に占める民泊の比率が高まっているようです。これは相当キャッシュを生む力を持っています。
・株を買うなら、生きていくために欠かせない商品、つまり日常必需品を作っている会社に投資するのがいいでしょう。ハイパーインフレのときはいろいろな産業・企業が経営不振に陥りますが、生活にどうしても必要なもの、これだけは残ります。
▽企業はどう備えるべきか
・ハイパーインフレに備えて企業がとるべき経営戦略ですが、やはり銀行に預けているお金は紙切れになってしまうので、手元資金を現金で持っていると地獄を見ます。 国家の借金を紙切れにしてチャラにするためにハイパーインフレが起こるわけですから、銀行自体も閉鎖されてしまう可能性があります。そうなれば、銀行にお金を預けている人はもうどうしようもありません。
・したがって、少なくとも手元の資金は、外債や外国株に分散しておく必要があります。資金を国内の銀行に入れて、それを担保に将来お金を借りるというような方法は、もう考える必要がないと思います。本当に有効な投資先があるなら、今こそ投資をしてはいかがでしょう。多くの中国人は今、手元資金をビットコイン等にしてどんどん海外に持ち出しています。
・企業はとにかく将来に対して積極的に投資をし、M&Aや研究開発に力を入れることが重要です。この先、国内市場が縮んでいくことは間違いないので、伸びている市場に目をつけて新規事業をはじめることをお勧めします。個人も同様に、たとえ5万円でも10万円でも、お金を分散投資することです。
▽若い世代は「稼ぐ力」を磨け
・ハイパーインフレが起これば当然企業のリストラも増えますので、個人は「稼ぐ力」を磨くための自己投資、個人の能力への投資をしておく必要があります。 これからの時代、能力のある人は必ず賃金が上がります。少し時間がかかるかもしれませんが、有能な人材を雇いたいと思っている国内外の企業は、その人の能力に見合う賃金を支払う新しい給与体系を導入するはずです。
・また、ハイパーインフレになれば倒産企業も続出しますが、できる人間は必ず誰かがいい給料で雇ってくれます。 世界のどこに行っても勝負できるようにする力をつけておき、いざとなったら世界へ出て行って世界企業で働ける準備をしておくこと。日本語以外に、1~2カ国語くらいは勉強して使えるようにしておくなど、国外で生活することも視野に入れて、今から様々な準備をしておくことが重要です。
・私はブラジルのインフレ率1000%、スロベニアのインフレ率1万%と、世界のハイパーインフレをこの目でいろいろ見てきましたが、そんなとき、自分の能力を磨くことに投資していた人は、仕事に困るどころか引く手あまた、という状況になっていました。
・そして、最後にみなさんに言っておきたいのは、あまり周りの人の言うことを聞くな、ということです。メディアも含め、みなさんの周りの多くの人は常識的なことしか言いません。 負けるだろうと言われていたトランプ氏が勝ち、世界の金融秩序を変えるかもしれない大統領が生まれてしまいました。ロシアの情報操作のおかげ、とも言われていますが、勝ってしまった大統領(及び、その影響)を今になって除去するのは並大抵ではありません。
・ですから、これからの激動の時代を生き抜いていくためには、国やメディアが言うことをそのまま鵜呑みにしないで、自分の頭で考え、自分で判断し、行動する。そして、いつの時代でも、世界のどこでも働けるように、常に自分の能力に磨きをかけていただきたいと思います。
(以下は本のPR)マネーはこれからどこへ向かうか 「グローバル経済VS国家主義」がもたらす危機  予測不能な「AT(アフタートランプ)」の経済を、大前研一が読み解く!  大前研一による、「ニュースで学べない」最新経済論。 トランプ政権誕生、イギリスEU離脱、そして欧州にくすぶる政治の火種・・・。 政治が経済危機を呼ぶ状況のなか、マネーはこれからどの国に向かうのか? 今でも世界を飛び回る大前氏が予測する「危機」の真相とは。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50340(P2以降は有料会員限定)

第三に、元日経新聞論説主幹でジャーナリストの岡部 直明氏が7月19日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「金融正常化で協調する世界、日銀は出口なしか 超緩和が招いた格差拡大」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・リーマンショックを受けて超金融緩和を続けてきた世界各国の中央銀行は一斉に金融正常化に動いている。真っ先に出口を出た米連邦準備理事会(FRB)に続いて、ユーロ危機打開を優先してきた欧州中央銀行(ECB)も出口戦略を探り始めた。欧州連合(EU)離脱による混迷のなかでイングランド銀行も出口に向かっている。カナダ中銀は7年ぶりに利上げに踏み切った。一連の動きは、通貨波乱を避けるための「協調行動」にもみえる。このなかで、日銀は超緩和の継続をうたうばかりで、「出口なし」の状態を続けている。出口戦略すら議論できない状況は、アベノミクスの限界を示している。
▽ECBの逆「ドラギ・マジック」
・「デフレの力はインフレの力に置き換わった」。ECBのマリオ・ドラギ総裁のこの発言は、ユーロ危機以来、超金融緩和を続けてきたECBがついにFRBに続いて緩和縮小に動くかと受け止められた。とりわけ、ユーロ危機のなかで登場したドラギ総裁は、危機打開に「何でもする」と大胆な金融緩和に動き「ドラギ・マジック」「スーパー・マリオ」と呼ばれた中央銀行家である。極め付きのハト派と目されるドラギ総裁の変身に、市場は潮の流れの変化を読み取り、ユーロは急上昇した。
・その背景にあるのは、ユーロ圏経済の好転である。ギリシャの債務危機やイタリアの金融不安などユーロ危機の芽が完全に消えたわけではないが、ユーロ圏経済そのものは回復基調にある。ドイツのメルケル首相が「ユーロ圏各国の経済はみないい」とことさら強調するのは、金融正常化とユーロ高への期待表明ともいえる。たしかに「ドイツ独り勝ち」とも批判されたユーロ圏経済が足並みをそろえて上向いてきたのは大きな変化だろう。
・とりわけドイツは国内総生産(GDP)の10%もの経常収支の黒字を抱え、トランプ米大統領の批判の的になっている。経常黒字をめぐる米独関係のきしみが、米欧関係全体の亀裂の背景にある。それだけに、メルケル首相にすれば、ECBの政策転換に期待を寄せるわけである。
・もっとも、ECBの緩和縮小は、量的緩和からマイナス金利までドラギ総裁が打ち出した超金融緩和のように、大胆なものにはなりそうにない。逆「ドラギ・マジック」は、なお脆弱なユーロ圏経済への影響や市場の反応を読みながらの慎重なものになるだろう。時には、発言の修正を繰り返しながら、慎重に出口を探ることになるとみられる。
▽トランプ旋風下のイエレンFRBの戦略
・リーマンショック後の世界の金融緩和からいち早く出口を出たのはFRBである。ベン・バーンナンキ前議長が敷いた路線だが、市場と米国経済の実態をにらみながら、混乱なく実践しているジャネット・イエレン議長の手腕は歴史的にも高く評価されていいだろう。それは、インフレと闘ったポール・ボルカー議長やニューヨーク株暴落による危機を乗り切ったアラン・グリースパン議長らにも並び称されるものだ。
・3回の利上げに続いて膨らんだ資産の縮小に取り掛かるのは、正しい選択だろう。資産圧縮を実施するかわりに、追加利上げには慎重姿勢をのぞかせるのは、政策の選択の幅を広げているようにもみえる。
・そのイエレン議長はしかし、トランプ政権下で試練にさらされている。2018年2月に任期を終える。FRB議長は、20年近くもその座にあったグリーンスパン氏を別にしても、ボルカー氏やバーナンキ氏のように2期8年続けるのが普通である。よほどの事情がないかぎり、1期4年で退任すれば不適格の烙印を押されたことになりかねない。たしかにこの小柄な女性経済学者には、「FRBの巨人」といわれたボルカー氏や「マエストロ」(巨匠)と呼ばれたグリーンスパン氏のようなカリスマ性はない。だが、超緩和からの出口戦略を地道に進めるうえでは、まさに適任といえるだろう。
・そのイエレン議長はトランプ大統領とのケミストリー(化学反応)がまったく合わない。トランプ氏の経済学者嫌いは有名だ。イエレンFRBが利上げに動いているとき、トランプ大統領は「低金利が好きだ」などとけん制していた。トランプ政権が進める金融規制の緩和に、真っ先に反対したのがイエレン議長だった。その金融規制緩和を推し進めるため、トランプ大統領はクオールズ元財務次官をFRB副議長に指名した。
・トランプ大統領とのぎくしゃくした関係が続くなかで、早くもFRB議長の後任候補が浮上している。米メディアが候補に取り上げたのはコーン氏である。コーン氏と聞いて、すぐ思い浮かんだのは、FRBの生え抜きでグリーンスパンFRB議長を右腕として支え、副議長にまでなったドナルド・コーン氏だった。ところが、FRB議長候補に浮上しているのは、トランプ政権で国家経済会議(NEC)委員長をつとめるゲイリー・コーン氏である。金融市場には通じているが、FRB議長の本流である経済学者やエコノミストではない。金融緩和に逆戻りするのではないかという観測もある。コーン氏がFRB議長に起用されれば、中央銀行であるFRBの独立性や中立性は損なわれ、米国の金融政策の信認が揺らぐ恐れもある。
・こうした様々な観測のなかで、イエレン議長は資産圧縮や追加利上げを通じて、ぶれることなく金融正常化に取り組むことになるだろう。金融政策のフロントランナーとしての矜持に期待するしかない。
▽BREXITでカーニー総裁の苦しい選択
・カナダ中銀は7年ぶりの利上げに踏み切ったが、カナダ出身のマーク・カーニー・イングランド銀行総裁は出口を前に苦闘している。もともとカーニー総裁は英国のEU離脱は英国経済を苦境に陥れると警告してきた。発言が政治的すぎると、EU離脱派から批判されていたほどだ。BREXITによる英国経済の混迷を想定すれば、金融政策のかじ取りはむずかしくなる。
・英ポンド安で消費者物価上昇率は2%を超えている。主要各国のなかで唯一物価目標を達成している国だ。すぐにでも利上げすべきだが、なかなか踏み切れないのは、BREXITで景気の落ち込みが懸念されるからだ。外資に依存している英国経済は、BREXITによる外資流出の心配がある。輸出に有利なポンド安を超えてポンド危機に陥る恐れがある。最悪のシナリオはスタグフレーション(景気停滞と物価高の同時進行)である。そうなれば、金融政策のかじ取りは至難になる。 こうした懸念のなかで、カーニー総裁は慎重な利上げによる出口戦略を選択するしかないだろう。
▽超緩和が格差広げポリュリズムを増幅
・リーマンショック後の超金融緩和は、世界経済危機の打開に避けられない選択だった。危機の蔓延を防ぐうえで、一定の効果があったのは間違いない。しかし、超緩和がめざした物価目標は、BREXITによるポンド安という特殊事情を抱える英国を除いてどの主要先進国も達成していない。超緩和は金融システム不安を防ぐのには役立ったが、実態経済の好転にはなかなかつながらなかった。
・問題は、危機の再来を恐れるあまり超緩和からの出口を出るのが遅れてしまったことである。そのひとつの後遺症は、金融資本主義の肥大化だろう。停滞する実物経済との落差は広がった。それが所得格差を広げる大きな要因になったのは間違いない。 BREXIT、トランプ旋風とポピュリズム(大衆迎合主義)が世界を揺るがしたが、金融資本主義が最も発達した英米発だったことに注目すべきだ。超金融緩和は金融資本主義の肥大化を通じて所得格差を広げ、それがポリュリズムを誘発する一因になったといえるだろう。
▽アベノミクスの限界示す黒田日銀の立ち往生
・世界が超金融緩和からの出口を探るなかで、アベノミクスの先陣を担わされた黒田東彦日銀総裁による異次元金融緩和は出口論議さえできない状況を続けている。出口戦略をめぐる各国の動きは、一斉利下げを実施したプラザ合意後の協調行動とちょうど逆である。黒田日銀はこの「逆プラザ合意」の埒外に置かれている。
・デフレ脱却のために異次元緩和に踏み切ったが、いつまでたっても2%の物価目標は達成できない。マイナス金利に踏み込んだことでかえって金融機関経営を圧迫するという誤算もあった。出口戦略については議論さえタブー視している。大量の国債購入は事実上の「財政ファイナンス」と受け取られている。先進国最悪の財政赤字国にあって財政規律は緩むばかりである。
・黒田日銀の国際的孤立は、安倍晋三政権によるアベノミクスの限界を浮き彫りにしている。「第3の矢」にすぎなかった成長戦略を「第1の矢」に置き直すとともに、少子高齢化社会にふさわしい財政規律を確保する。そして、各国と足並みをそろえて超金融緩和からの出口戦略を真剣に考えるときがきている。そうでなければ、国際社会から「円安誘導」という疑念が消えないだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/071800032/?P=1

加藤氏が、 『バーナンキ氏のこうした一連の発言を聞いていた日銀関係者の胸中は、複雑だったに違いない。 というのも、黒田東彦総裁率いる現在の日銀の金融政策は、バーナンキ氏を“教祖”の一人とするリフレ派の考えに沿って実施されてきたものだからだ。そのため、“教祖様”に素直に「ざんげ」をされてしまうと、日銀としてはこれからどうしたらいいのかという問題が生じる』、というのは、黒田総裁以下の執行部への痛烈な批判だ。 『海外経済が失速してきたときには、「ヘリコプターマネー」やクリストファー・シムズ米プリンストン大学教授の「物価水準の財政理論」(FTPL)なども含めて、財政赤字を拡大する議論が活発化しそうだ』、その場合には、大前氏のハイパーインフレ懸念が、現実化する公算が強い。
大前氏は、 『アベノミクスの失敗を市場が認知すればどうなるか。 国債は暴落し、日本はハイパーインフレという地獄の入り口に足を踏み入れることになります』、と警告する。 『ハイパーインフレ時代のサバイバル術』、については現在にところは、まだ参考程度に読んでもらえればいいと考える。 私が特に怖いと思うのは、国債の流通市場での利回りという経済にとって一番大事な「体温計」が、利回りまで金融政策の操作対象となり、本当の実勢が分かり難くなっていることに加え、国債の流通市場の市場参加者が激減し、市場の「厚み」が「薄く」なってしまったことだ。ある日、突然、市場が暴落するといった悪夢が、現実化する懸念が高まっているといえよう。
岡部氏が  『世界各国の中央銀行は一斉に金融正常化に動いている。・・・このなかで、日銀は超緩和の継続をうたうばかりで、「出口なし」の状態を続けている。出口戦略すら議論できない状況は、アベノミクスの限界を示している』、 『問題は、危機の再来を恐れるあまり超緩和からの出口を出るのが遅れてしまったことである。そのひとつの後遺症は、金融資本主義の肥大化だろう。停滞する実物経済との落差は広がった。それが所得格差を広げる大きな要因になったのは間違いない・・・超金融緩和は金融資本主義の肥大化を通じて所得格差を広げ、それがポリュリズムを誘発する一因になったといえるだろう』、 『アベノミクスの限界示す黒田日銀の立ち往生』、などのと指摘しているが、正論である。
昨日の日銀の金融政策決定会合では、「日銀2%目標の達成を6回目先送り」したようだ。2019年度に達成ということであれば、黒田総裁の任期中は無理ということらしい。
タグ:日銀 大前研一 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 異次元緩和政策 岡部 直明 (その25)(“教祖様”にざんげされた日銀、日本が突入するハイパーインフレの世界 企業とあなたは何に投資するべきか、金融正常化で協調する世界 日銀は出口なしか 超緩和が招いた格差拡大) 加藤 出 「“教祖様”にざんげされた日銀 バーナンキ前FRB議長の反省」 私はよく理解できていなかった。特に初期の論文では楽観的過ぎた。中央銀行がデフレを克服できると決意して金融緩和策を行うことに、私は確信を持ち過ぎた ベン・バーナンキ氏は、5月24日に日本銀行内で開催された講演で、そう語った。 以前のバーナンキ氏は日本経済の構造的な問題に関心を示さなかった。ところが、今回は中立金利水準(完全雇用が実現され、かつ物価が安定している金利水準)が低下している中では、金融緩和策の効果が以前よりも得られにくくなっていると、日本経済の構造問題にも言及 バーナンキ氏のこうした一連の発言を聞いていた日銀関係者の胸中は、複雑だったに違いない。 というのも、黒田東彦総裁率いる現在の日銀の金融政策は、バーナンキ氏を“教祖”の一人とするリフレ派の考えに沿って実施されてきたものだからだ。そのため、“教祖様”に素直に「ざんげ」をされてしまうと、日銀としてはこれからどうしたらいいのかという問題が生じる 海外経済が失速してきたときには、「ヘリコプターマネー」やクリストファー・シムズ米プリンストン大学教授の「物価水準の財政理論」(FTPL)なども含めて、財政赤字を拡大する議論が活発化しそうだ 海外の著名な経済学者による日本への助言がまた誤っていたとしても、彼らは事後的に「楽観的過ぎた」と「ざんげ」すれば済んでしまうからである 「「日本が突入するハイパーインフレの世界。企業とあなたは何に投資するべきか」」 外交・内政とも多くの課題を抱える安倍政権のゆくえ IR(Integrated Resort)が成長戦略の中心という「素晴らしい」展開になっています 日本が国債暴落、ハイパーインフレという地獄の入り口に立つ アベノミクス失敗を市場が知った時に起こること ハイパーインフレで地獄を見る年金受給者 金融正常化で協調する世界、日銀は出口なしか 超緩和が招いた格差拡大 世界各国の中央銀行は一斉に金融正常化に動いている 日銀は超緩和の継続をうたうばかりで、「出口なし」の状態を続けている。出口戦略すら議論できない状況は、アベノミクスの限界を示している ECBの逆「ドラギ・マジック」 トランプ旋風下のイエレンFRBの戦略 BREXITでカーニー総裁の苦しい選択 超緩和が格差広げポリュリズムを増幅 問題は、危機の再来を恐れるあまり超緩和からの出口を出るのが遅れてしまったことである そのひとつの後遺症は、金融資本主義の肥大化だろう。停滞する実物経済との落差は広がった。それが所得格差を広げる大きな要因になったのは間違いない。 BREXIT、トランプ旋風とポピュリズム(大衆迎合主義)が世界を揺るがしたが、金融資本主義が最も発達した英米発だったことに注目すべきだ アベノミクスの限界示す黒田日銀の立ち往生 各国と足並みをそろえて超金融緩和からの出口戦略を真剣に考えるときがきている
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