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トランプ新大統領(その19)(「パリ協定」離脱に 欧州首脳や米自治体米産業界も強く反発、FBIコミー前長官証言で情勢はどう変わるか?、元CIA・情報のプロがついにトランプの「フェイク政策」を見破った) [世界情勢]

トランプ新大統領については、5月29日に取上げたが、今日は、(その19)(「パリ協定」離脱に 欧州首脳や米自治体米産業界も強く反発、FBIコミー前長官証言で情勢はどう変わるか?、元CIA・情報のプロがついにトランプの「フェイク政策」を見破った) である。

先ずは、元日経新聞論説主幹でジャーナリストの岡部 直明氏が6月6日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「トランプ大統領が「地球の敵」になった日 「パリ協定」離脱に、欧州首脳や米自治体、米産業界も強く反発」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・それは米国の大統領が「G7(主要7カ国)の悪役」どころか「地球の敵」になった日だった。6月1日、ドナルド・トランプ米大統領は地球温暖化防止のためのパリ協定からの離脱を表明した。地球の危機を打開するためようやくまとまったこの国際的枠組みを、覇権国であり第2の温暖化ガス排出国である米国が破るというのである。
・欧州首脳はじめ世界各国は「歴史的過ち」と強く反発した。米国内でも環境意識の高い州や市が批判、産業界にも反対が渦巻いた。「地球温暖化はまやかし」と考えるトランプ大統領の行動は米国の国際信認を失墜させ、地球の将来を危険にさらしている。
▽「地球の危機」に国際社会から批判集中
・米国の大統領の行動が国際社会からこれほどの批判を受けたことはかつてないだろう。それは「地球の危機」にからんでいるからだ。とくに、G7サミットで煮え湯を飲まされたばかりの欧州首脳の反発は強かった。  ドイツのメルケル首脳は「地球を守る決意を止めることはできない。パリ協定はその土台だ」と協定を守る姿勢を鮮明にした。環境相として京都議定書を主導した経験があるだけに、トランプ大統領の「米国第一主義」に強い不満を抱いている。
・フランスのマクロン大統領は、トランプ大統領の口癖である「米国を再び偉大に」(Make America great again)をもじって「地球を再び偉大に」(Make the planet great again)と英語で強調した。仏独伊の3カ国首脳は共同声明で、トランプ大統領が求めた協定再交渉を明確に拒否した。 ベルギーのミシェル首相は「パリ協定に対する野蛮な行為を非難する」と述べた。英国のメイ首相は電話で「失望」を伝えるにとどめたが、総選挙さなかでもあり、野党労働党からその手ぬるさを厳しく批判されるありさまだ。
・一方で、第1の温暖化ガス排出国である中国の李克強首相は「パリ協定をしっかり履行し、国際責任を担う」として、EUと組んで米国に代わって地球環境問題を主導する姿勢を鮮明にした。 
・トランプ大統領によるパリ協定離脱に国際社会から猛反発が起きているのは、パリ協定が地球危機を防ぐためにようやくまとめた「最後の手段」になっているからだ。地球温暖化防止は、1997年の日米欧による京都議定書が先行したが、途上国は含まれず、2001年には米国が離脱して、実効性が薄れていた。これに対して、2015年にまとまったパリ協定は中国、インドなど新興国を含め世界の大多数の国や地域が参加している。参加していないのはシリアとニカラグアくらいである。これまでに147の国、地域が批准している。米国の離脱で途上国に対する資金協力が滞ることになれば、国際的枠組みが揺らぐ恐れもある。
▽米自治体、企業にも強い反発
・トランプ大統領によるパリ協定離脱には、米国内にも反発が広がった。最も怒ったのは、パリ協定を主導したオバマ前大統領だろう。「未来を拒む少数の国になった」と口を極めて批判した。オバマ政権の国際合意を次々にくつがえすのがトランプ流だが、なかでもパリ協定からの離脱は我慢ならなかったようだ。合わせてオバマ氏はトランプ政権下でも米国は自治体や企業が地球環境をリードできると表明することも忘れなかった。
・たしかに米国内では環境問題においては自治体主導の色彩が濃い。京都議定書から米国が離脱しても自治体は環境先進自治体を競ってきた。トランプ大統領を批判する自治体は、パリ協定順守への独自の連合を結成し始めている。ニューヨーク、カリフォルニア、ワシントン州の3知事は連合を結成した。85の市もそれに続いた。
・トランプ大統領は「われわれはピッツバーグ市民であり、パリ市民ではない」と、いわゆるラスト・ベルトの選挙民のための離脱だと表明したが、当のピッツバーグ市長はパリ協定維持を宣言したのだから、皮肉である。
・米産業界は、トランプ離れを鮮明にしている。反発はゼネラル・エレクトリック(GE)、IBM、ウォルマートなど先端産業から流通産業まで広範な分野に広がっている。パリ協定離脱を歓迎しているのは、規制を逃れられる石炭産業など一部に限られる。
▽反科学・反経済学の危険
・国際社会だけでなく、米国内の批判にもかかわらず、トランプ大統領がパリ協定離脱に動いたのは、トランプ政権内にある反科学・反経済学の思考がある。「地球温暖化はまやかし」というスティーブ・バノン首席戦略官の考え方が色濃く反映されている。もともと米国内のキリスト教保守派に潜在するこの見方は、欧州の極右ポピュリズム(大衆迎合主義)とも連動するバノン氏によって増幅されたといえる。
・バノン氏はこのところホワイトハウス内の権力闘争で退潮を余儀なくされていたが、最側近で女婿のクシュナー上級顧問がロシア疑惑で影響力が低下するなかで、再び浮上してきている。「米国第一主義」がさらに広がる危険をはらんでいる。
・パリ協定離脱は、石炭産業の雇用維持など目先の小さな利益につがっても、環境ビジネスというこれからの大きな成長機会を失うことになりかねない。米産業界の反発はそこにあるが、目先のディール先行のトランプ政権には長期的視野にたった「経済合理性」が欠けている。 そこには、「反科学」とともに「反経済学」の姿勢がみられる。トランプ政権の特徴は、重要ポストへの経済学者の起用がまったくないことである。経済学者がこの政権に参加すれば、学者生命が絶たれると考えているかもしれないが、トランプ大統領自身の「反経済学」の姿勢が反映されている。
▽変わるソフトパワー・バランス
・トランプ大統領によるパリ協定離脱は、国際秩序を大きく塗り替えることになるだろう。米国はオバマ政権がめざしてきた国際協調による「賢い米国」への道から後退し、ソフトパワーを大きく失うことになる。 このソフトパワーの空白を埋めるのは、独仏主導による欧州連合(EU)と中国だろう。G7サミットでの確執を受けて、メルケル独首相は「これからは他国に頼れない時代になった」と述べ、EUの結束を呼び掛けた。新任のマクロン仏大領が国民議会選挙を経て国内基盤を固められれば、独仏主導によるEUがグローバル・アクターとして指導力を発揮する可能性がある。
・米国とともにパリ協定を主導した中国もパワーの空白を埋めようとするだろう。しかしユーラシアの「一帯一路」構想と海洋進出をからめる戦略には、国際的な疑念が消えない。軍事的拡張をめざすかぎり、ソフトパワーは手に入れることはできない。ソフトパワーの空白は簡単には埋まらないだろう。それは国際社会をさらに混迷させる恐れがある。
▽甘すぎる日本の対応
・このソフトパワーの空白期に、日本への期待は高まるはずだが、トランプ大統領のパリ協定離脱の表明をめぐる日本の対応は甘すぎた。G7の各国首脳が即座にそれぞれ自らの言葉で発信しているのに、環境先進国である日本の安倍晋三首相の声は聞かれなかった。やっと週明けになって国会答弁で文書を読み上げただけだった。
・関係閣僚が批判を展開してはいる。麻生太郎副総理・財務相が、米国が第1次大戦後に国際連盟の創設を提唱しておきながら参加しなかったことを引き合いに出し、「米国はその程度の国だ」と捨て台詞をはいている。経済界からも批判が出ている。しかし、この地球の将来がかからむ重要問題には、首相が即座に自らの言葉で語るべきだった。
・トランプ大統領と親密であるために、批判をためらったとすれば、大きな問題である。こんなときこそ、友人として直言することが求められる。日本はパリ協定の批准も一歩遅れ、議論に参加できない場面もあった。京都議定書の発信国である日本の環境意識が低下しているとすれば、深刻だ。欧州諸国ととともに、パリ協定の順守に立ち上がることを鮮明にすべきである。 そうでなければ、国際社会における日本のソフトパワーにも、環境ビジネスを通じた経済の競争力にも響きかねない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/060500027/?P=1

次に、在米作家の冷泉彰彦氏が6月10日付けメールマガジンJMMに寄稿した「「注目のFBIコミー前長官証言で情勢はどう変わるか?」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・6月8日(木)東部時間午前10時から行われた、上院諜報委員会におけるFBI前長官ジム・コミー氏の証言については、「ポリティカル・スーパーボウル」(NBCのサベナ・ガスリーの表現)であるとか、皆でワイワイ言いながら見る「テストモニー(証言)・パーティー」が全国で開かれたなど、大変な話題になりました。
・私は、ちょっと外出していて自宅に戻るところだったのですが、たまたまNYのラジオを聞いていたら「証言開始の時刻が迫るにつれて市内の交通量が減っていった」のだそうです。こんなことは、OJシンプソン事件の判決公判以来です。
・今回の証言が行われた上院の諜報委員会というのは、米国の三権の中でも強大な権限を有しているもので、基本的にはFBI、CIA、NSA、軍の情報組織といった「インテリジェンス・コミュニティ」を指揮監督する権限があるとされています。その原型は、1975年に設置された「チャーチ委員会」で、この頃に問題になっていたCIAやFBIの権力濫用を立法権の立場から規制しようとしたものです。これが発展的に常設の委員会となって今日に至っているわけです。
・その諜報委員会というのは、ですから国家の最高機密にも触れる権限を持っているわけですが、これに加えて各諜報機関の予算決定権、決算監査権も持っています。ですから、考え方によっては立法府としての行政府に対するチェック機能を代表しているような委員会と言ってもいいでしょう。 ですから、基本的なスタンスとして、この委員会としては、議会として「任期10年」を慣例化することで、大統領に対抗できる独立性を与えたはずのFBI長官を、任期半ばで解任したトランプ大統領の判断に違法性がないかを調べるというのは、この委員会として憲政上「当然の行動」ということになるわけです。
・さて、コミー氏ですが、証言の前日に「ステートメント」を事前に提出しています。証言の際に一部の委員から「法学の教科書に採用してもいいぐらいの名文」だと持ち上げられ、コミー氏は「その点では親と先生方に感謝しています」などと応じていたわけですが、とにかく、簡潔に要点がまとめられたレポートでした。
・内容としては、(1)大統領がフリン前大統領補佐官の捜査をやめるよう求めていたこと、(2)大統領はロシア疑惑に関する捜査を「雲(クラウド)」だとして、その雲が国政を妨げていると漠然と捜査の中止を迫ったこと、(3)独立性の求められるFBI長官に対して「大統領への忠誠」を求めた、というような点が指摘されていました。
・一部のメディア(例えばNBCのチャック・トッド)などでは「この書面は前菜のようなもので、議会証言の本番ではもっと大きな爆弾が炸裂する」といった期待感を口にする向きもありました。 一方で、ホワイトハウスの側は、一連のロシア疑惑、つまりこの上院諜報委員会の調査だけでなく、既に任命されているミュラー独立検察官の捜査などに「対抗する」ために、「戦争対策室(war room)」という物々しい組織を作って「徹底抗戦」するという構想をブチ上げていました。
・当初は2016年の前半までトランプ陣営の選対責任者を努めていたコーリー・ルワンダスキーが「対策室長」になり、顧問弁護士には錚々たるメンバーを揃えて対抗するという話も出ていたのですが、結局のところ大手の弁護士事務所は乗って来ませんでした(負けが見えているというよりも、金払いの悪さが嫌われているという説があります)。またルワンダスキーではメディア対応は「荒っぽすぎる」ということだったようで、実際に「対策室長」というボスになったのは、「ドン・ジュニア」、つまり大統領の長男でした。
・この「ドン・ジュニア」とエリックという2人の息子は政治には関与せずに、トランプ家のビジネス、「トランプ・オーガニゼーション」の経営に専念するという話だったのですが、クシュナーとイヴァンカの夫妻が捜査当局に睨まれている現状では、他に「手駒がない」ということだったのでしょう。こうなると、家業と政治の利害相反などと言っている場合ではないということのようです。
・さて、8日の証言ですが、予定されていた午前10時キッカリに開始され、冒頭には委員長と副委員長の短い演説がされると、すぐにコミー氏の証言に移りました。コミー氏は「前日に提出した文書でのステートメントをここで朗読するのは二度手間」だからしないとして、すぐに各委員からの質問に答えたいと宣言、その通り質疑応答が始まったのでした。実に手際が良く、プロ中のプロという感じでした。
・結局のところは、丸々3時間近くガチンコの質疑応答が続いたのですが、前日の書面提出で出てきたネタ以上の「爆弾が炸裂」ということには至りませんでした。ただ、コミー氏の証言は断定を避けた緻密なもので、とにかく出来るだけ多くの証拠や判断材料を、ミュラー特別検察官に提供したいという熱意を感じさせるものでした。
・大きく話題になったのは「一連の大統領の言動は司法妨害に当たるか?」という質問で、これに対しては「特別検察官が判断することです」とコミー氏は逃げたように見せかけていましたが、正にこの一言が今回の証言の「核にあるもの」であったわけです。 後は事前のステートメントで出ていた内容ですが、「大統領が自分への忠誠を求めてきた」という部分です。コミー前長官は「驚いて気まずい沈黙を作ってしまった。 自分としては率直にお答えすることはできますということを言うしかなかった」という複雑な言い方をしていましたが、これも特別検察官を意識し、そして最終的に弾劾裁判となった場合には陪審員となる上院の議員たちを意識した発言であったと思います。
・ということで、証言自体には「新事実の爆弾発言」という局面はなかったわけですが、全体としては大統領が「FBIの独立性を侵害した」「特定の犯罪捜査に関して中止の圧力をかけた」「自身の解任は捜査機関への妨害行為に等しい」ということを、主張したかったのは明白だと思います。 
・これに対する大統領側の「反撃」ですが、かなり徹底した居直りと言いますか、無茶苦茶な攻勢に出ています。大統領は自身の発言として「コミー証言は虚偽」であり、特に「リーク(機密漏洩)の犯罪者」だとして猛烈に非難を開始しました。この「リーク」の部分ですが、コミー氏は「大統領が圧力を加えてきたこと」について「友人を介して報道機関に洩ら」したのは、特別捜査官設置に役立てばと思って行ったことだと胸を張っていたわけです。
・この点について、大統領としては「リーク犯だ」と猛烈な攻勢に出ているわけですが、どうも論理的に無理があります。仮にこの「リーク」が重大な機密漏洩になるのであれば、それは大統領が圧力をかけたことが事実であったということを証明してしまうことになるからです。一方で、大統領自身がまくし立てているようにコミー証言が100%虚偽であるのなら、その「リーク」自体には意味がない、せいぜいが名誉毀損とかそういう話になるだけだからです。
・とにかく、大統領サイドはそんなロジックはお構いなしに、政治的に反攻に出るしかないとして、一本調子に反撃を行っているのですが、そこには法律の専門家と厳密に打ち合わせた形跡などはありません。例えば「コミー氏の証言が虚偽だということを証明するために、大統領自身が宣誓証言するつもりはあるか?」といったメディアの挑発質問に対して、その場の勢いで「勿論だ」などと言っているのですが、そんなことを言っていては本当に宣誓証言の場に引っ張られて、弾劾への証拠を積み上げられることになります。
・どうも大統領の側には、この「ロシアゲート」というのはエスタブリッシュメントによる政権への攻撃であり、自分たちは当選した大統領として支持者のために徹底抗戦すべきであり、そのように毅然とした姿勢を見せれば有権者は「ついてくる」という思い込みがあるようです。
・ただ、現状はそんなに甘くはありません。女婿のジャレッド・クシュナーが、FBIと特別検察官から公然と捜査対象だと名指しされ、例えばレックス・ティラーソン国務長官など自分の弁護士がいて「この危険な政局の中でサバイバルするための一挙手一投足」に留意を始めている人間は、ほとんどこの問題には関与しなくなりました。
・反対に、公然と大統領を擁護しているのは、本来は政治には関与しないはずだった長男と次男、そしてロシア疑惑の対象にはなっていない初期の選挙参謀であるルワンダスキー、そしてそのウラにいるスチーブ・バノンといった人々で、ロクに弁護士との調整もしないで、素人的に墓穴を掘るような「強攻策」に出ている感じです。 今でも保守派のFOXニュースなどは、「コミー証言における最大の敗者はマスコミ」だというようなキャンペーンを張ったり、大統領に同調して「コミーは悪質な情報漏洩犯」だというようなコメントを「自称保守派のキャスター」に言わせたりしていますが、その影響力にも限界があるように思います。
・例えば、大統領の支持率低下というのは、どうにも隠しようのないレベルに来ています。6月8日発表のギャラップの調査では、支持37%、不支持58%と「マイナス21%の差」が出ていますし、また、現時点で注目されているのは6月20日に迫った連邦下院のジョージア6区補選という問題があります。
・ここは、基本的に保守の牙城と言っていい選挙区で、過去にはニュート・ギングリッチ氏が共和党の下院議長として「均衡予算」を主張してクリントン政権と対決した際に、この選挙区を地盤としていたという歴史があります。このジョージア6区で、民主党の新人ジョン・オソフ候補が7ポイントの差をつけて共和党のカレン・ハンデル氏をリードしていると報じられいます。仮にここでオソフ候補が勝利するようなことになれば、2018年の中間選挙へ向けて、共和党議員団には動揺が広がるのは目に見えています。
・例えば、一連のゴタゴタにも関わらず、アメリカの株式市場はそれほど大きな動揺は見せていません。この点を見て、トランプ政権は「逃げ切れる」という市場の判断があるという見方もありますが、私はどうも違うように思います。市場は「早期に政権が破綻し、ペンス安定政権が成立する」というような、政変の可能性も織り込んでいる、そのように見ておくことも必要ではないかと思うのです。

第三に、 ジャーナリストの山田 敏弘氏が6月20日付け現代ビジネスに寄稿した「元CIA・情報のプロがついにトランプの「フェイク政策」を見破った 「サウジに武器は売られてません」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽あの有名研究所が指摘
・いまや日本でもすっかり定着し、今年の流行語になってもおかしくない「フェイクニュース」という言葉。 最近でもサウジアラビアなど中東アラブ諸国がカタールと断交したことが大きなニュースになったが、カタール政府は、同国の国営通信社が何者かにハッキングされ、サウジなどを挑発するような「フェイクニュース」が知らぬ間に配信された、と主張したとして話題になった。
・「偽のニュース」という意味のフェイクニュースは、敵を貶めたり、世論を操作する手段として、古代から存在していた。だが、ここにきて再びスポットライトが当たるようになったのは、2016年の米大統領選で、ドナルド・トランプ候補が有利になるような偽情報やニュースがインターネットやSNSなどで大量に発信されたからだ。 トランプは大統領に就任してからも、「大手メディアはフェイクニュースを流している」と連呼し続けており、フェイクニュースという言葉を世に広めたのは、紛れもなくトランプの”功績”だと言えよう。
・だが、そんなトランプ自身がいま、重大で看過できない「フェイクニュース」を発しているという。6月5日、米国の有力シンクタンクのブルッキングス研究所が、公式サイトで提供しているニュース欄に、「サウジアラビアへの1100億ドルの兵器売却合意はフェイクニュースである」という衝撃的な記事を掲載したのだ。
・一体どういうことなのか。 まず簡単に、米国とサウジアラビアの兵器売却合意について説明したい。去る5月20日、トランプ大統領は就任後初となる外遊先にサウジを選び、2日間の日程で同国を訪問、サルマン国王と会談し、イスラム世界に融和的なスピーチを行ってみせた。 そしてトランプ政権は、サウジに1100億ドル(約12兆円)の兵器売却で合意したと大々的に発表したのだ。
・米ワシントンポスト紙は5月20日、この件についてこう報じている。 「サウジ訪問中のトランプ大統領は20日、世界舞台で派手なデビューを飾った。米国による1100億ドルの兵器売却と、その他の新規投資を含む『戦略的ビジョン』に共に署名をし、米サウジ関係の新しい時代の到来を告げたのである」
・また米ニューヨーク・タイムズ紙も同日の記事でこう書いている。 「トランプ氏は1100億ドルに近い兵器売却を発表した。これは米国が中東湾岸地域の安全保障について改めて深い関与を示すものである。この売却される武器には、サウジがイエメン国内で市民を殺害するのに使われる懸念から、オバマ前大統領が売却を保留していた精密誘導兵器も含まれている」
・このニュースは米国のみならず、日本でも大きく扱われた。5月21日付の日本経済新聞は、「米、サウジに兵器売却12兆円合意」とのタイトルで、「トランプ米大統領は20日、就任後初の外国訪問で最初の訪問国サウジアラビアに到着し、サルマン国王と会談した。米は1100億ドル(約12兆円)規模の兵器売却でサウジと合意し、両首脳が覚書に調印した」と報じている。
・ビジネスの才覚を大統領になっても発揮させたとして、世界の注目を集めたこのニュース。これが、米政権が喧伝した「フェイクニュース」だったと、ブルッキングス研究所が指摘したのである。
▽どこにも証拠がない
・同研究所のホームページに上げられたこの記事を執筆したのは、同研究所で上級研究員を務めるブルース・リーデル氏。中東情勢やテロ組織などの取材をする筆者のようなジャーナリストにとって、リーデル氏はあまりにも有名な人物である。 2006年に30年勤めたCIA(米中央情報局)を引退したリーデル氏は、NSC(米国家安全保障会議)の上級顧問として過去4人の大統領と仕事をしてきた。著書も数多く、ハーバード大学やジョンズ・ホプキンズ大学、ブラウン大学などで教鞭も執る。
・彼は記事の中で、トランプ大統領がサウジを訪問して1100億ドルの武器売買を発表したが、「問題は、合意などなかったことである。フェイクニュースなのだ」と指摘したのだ。 一体どういうことなのか。リーデル氏はこう続ける。 「私は軍需産業関係者や連邦議会にいる知り合いたちに話を聞いたのだが、全員が口を揃えてこう言ったのである。1100億ドルという合意など存在しない、と」 「(サウジ側が)購入の意向や興味を表明する書類は数多くあるが、それだけだ、という。契約書などは存在しない。それらの書類は、軍需産業から見ると、サウジ側がいつか興味をもつだろう武器を提供しますよ、という提案に過ぎないのである」
・売却提案の対象となったのは、例えば多目的水上戦闘艦艇や、韓国にも配備された高高度迎撃ミサイルシステムのTHAADだ。ただ、どちらも2015年の段階ですでにサウジ側に提案されているもので、その時も売却は実現していない。また多目的軍用ヘリのブラックホークも150機が売却希望リストにあるが、これも以前から検討が続いている話だ。 端的に言うと、今回米政府は、今後4、5年でサウジに売却したい兵器を提案しただけに過ぎないのだ。また、今後売却するかもしれない兵器についても目新しい提案などが見当たらないばかりか、オバマ政権時代の提案などをひとまとめにすることで、あたかも華々しく売却合意がなされたかのように発表しただけなのである。 リーデルは繰り返す。 「これはフェイクニュースである」
▽サウジはなぜ黙っているのか…
・そもそも、原油価格の下落で自国経済がひどい状況にあるサウジは、オバマ政権時に購入契約をした兵器の支払いもできていないのだ。また国内でも公共事業などへの支払いが滞る始末で、景気回復策としてサウジ在住の外国人労働者を狙い撃ちに課税をし、なんとか税収を増やそうとしている。 外遊時には大勢を引き連れて贅沢三昧、というイメージのサウジ政府だが、実情はいつまでも贅沢をしていられる場合ではないのだ。そんな状況にありながら、ぽんと気前よく武器購入に1100億ドルを払う、というのは考えにくいのである。
・では、なぜこんな「フェイク」がまかり通るのか。サウジ側にすれば、米国製の武器を大量に購入することに合意したと発表するのは、周辺国やライバルのイランへの牽制になる。 またロシアゲートなどで政権がぐらつき続けるトランプにとっても、武器売却契約でアメリカが潤い、それによって雇用が生まれる、と外交成果を主張できるのは願ってもないことなのである。つまり両者にとって、大風呂敷を広げることはウィンウィンなのだ。
・ただ、時の権力者がなかったことを「あった」かのように喧伝しているとなると、それは「フェイクニュース」という軽い言葉では済まされない問題だ。「フェイク政権」と呼ばれても仕方がないだろう。不動産取引の交渉ならそんなハッタリは通用するかもしれないが、国際情勢はそんな単純なものではない。
・とんでもない嘘を吐き続けているトランプ大統領。米国民が相手ならどれだけ騙してもいいのかもしれないが、嘘の蓄積は確実に米国という大国の評判と信用を今以上に貶めることになる。 「フェイク政権」が率いる米国を誰も信じなくなる日は、そう遠くないのかもしれない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52053

岡部氏の記事にあるように 『米自治体、企業にも強い反発・・当のピッツバーグ市長はパリ協定維持を宣言したのだから、皮肉である』、 『反科学・反経済学の危険』、などの指摘は、確かに困ったものだ。 『甘すぎる日本の対応』、は安部の米国に対する卑屈な姿勢を鋭く批判しており、正論だ。
冷泉氏の記事にある  『どうも大統領の側には、この「ロシアゲート」というのはエスタブリッシュメントによる政権への攻撃であり、自分たちは当選した大統領として支持者のために徹底抗戦すべきであり、そのように毅然とした姿勢を見せれば有権者は「ついてくる」という思い込みがあるようです。 ただ、現状はそんなに甘くはありません。女婿のジャレッド・クシュナーが、FBIと特別検察官から公然と捜査対象だと名指しされ、例えばレックス・ティラーソン国務長官など自分の弁護士がいて「この危険な政局の中でサバイバルするための一挙手一投足」に留意を始めている人間は、ほとんどこの問題には関与しなくなりました。 反対に、公然と大統領を擁護しているのは、本来は政治には関与しないはずだった長男と次男、・・・そしてそのウラにいるスチーブ・バノンといった人々で、ロクに弁護士との調整もしないで、素人的に墓穴を掘るような「強攻策」に出ている感じです』、というのはトランプがいくら追い込まれたとはいえ、信じられないようなお粗末な対応だ。
山田氏の記事にある、昨日の中東情勢で触れた1100億ドルの武器売買が、フェイクニュースだったとの驚きの内容だ。確かに、サウジ側、トランプ側、 『両者にとって、大風呂敷を広げることはウィンウィンなのだ』、との指摘は核心を突いていそうだ。 『「フェイク政権」が率いる米国を誰も信じなくなる日は、そう遠くないのかもしれない』、というのは正論だ。
明日もトランプ新大統領を取上げるつもりである。
タグ:トランプ新大統領 (その19)(「パリ協定」離脱に 欧州首脳や米自治体米産業界も強く反発、FBIコミー前長官証言で情勢はどう変わるか?、元CIA・情報のプロがついにトランプの「フェイク政策」を見破った) 岡部 直明 日経ビジネスオンライン トランプ大統領が「地球の敵」になった日 「パリ協定」離脱に、欧州首脳や米自治体、米産業界も強く反発 「地球の敵」 パリ協定からの離脱を表明 米国内でも環境意識の高い州や市が批判、産業界にも反対が渦巻いた 「地球の危機」に国際社会から批判集中 米自治体、企業にも強い反発 環境問題においては自治体主導の色彩が濃い 反科学・反経済学の危険 甘すぎる日本の対応 国際社会における日本のソフトパワーにも、環境ビジネスを通じた経済の競争力にも響きかねない 冷泉彰彦 JMM 「「注目のFBIコミー前長官証言で情勢はどう変わるか?」from911/USAレポート 上院諜報委員会 ジム・コミー氏の証言 「インテリジェンス・コミュニティ」を指揮監督する権限 大統領がフリン前大統領補佐官の捜査をやめるよう求めていたこと 大統領はロシア疑惑に関する捜査を「雲(クラウド)」だとして、その雲が国政を妨げていると漠然と捜査の中止を迫ったこと 独立性の求められるFBI長官に対して「大統領への忠誠」を求めた 大手の弁護士事務所は乗って来ませんでした(負けが見えているというよりも、金払いの悪さが嫌われているという説があります クシュナーとイヴァンカの夫妻が捜査当局に睨まれている現状では、他に「手駒がない」ということだったのでしょう 対策室長」というボスになったのは、「ドン・ジュニア」、つまり大統領の長男 「一連の大統領の言動は司法妨害に当たるか?」という質問 証言自体には「新事実の爆弾発言」という局面はなかったわけですが、全体としては大統領が「FBIの独立性を侵害した」「特定の犯罪捜査に関して中止の圧力をかけた」「自身の解任は捜査機関への妨害行為に等しい」ということを、主張したかったのは明白だと思います 大統領側の「反撃」ですが、かなり徹底した居直りと言いますか、無茶苦茶な攻勢に 大統領サイドはそんなロジックはお構いなしに、政治的に反攻に出るしかないとして、一本調子に反撃を行っているのですが、そこには法律の専門家と厳密に打ち合わせた形跡などはありません。例えば「コミー氏の証言が虚偽だということを証明するために、大統領自身が宣誓証言するつもりはあるか?」といったメディアの挑発質問に対して、その場の勢いで「勿論だ」などと言っているのですが、そんなことを言っていては本当に宣誓証言の場に引っ張られて、弾劾への証拠を積み上げられることになります どうも大統領の側には、この「ロシアゲート」というのはエスタブリッシュメントによる政権への攻撃であり、自分たちは当選した大統領として支持者のために徹底抗戦すべきであり、そのように毅然とした姿勢を見せれば有権者は「ついてくる」という思い込みがあるようです レックス・ティラーソン国務長官など自分の弁護士がいて「この危険な政局の中でサバイバルするための一挙手一投足」に留意を始めている人間は、ほとんどこの問題には関与しなくなりました 公然と大統領を擁護しているのは、本来は政治には関与しないはずだった長男と次男、そしてロシア疑惑の対象にはなっていない初期の選挙参謀であるルワンダスキー、そしてそのウラにいるスチーブ・バノンといった人々で、ロクに弁護士との調整もしないで、素人的に墓穴を掘るような「強攻策」に出ている感じです。 市場は「早期に政権が破綻し、ペンス安定政権が成立する」というような、政変の可能性も織り込んでいる、そのように見ておくことも必要ではないかと思うのです 山田 敏弘 現代ビジネス 元CIA・情報のプロがついにトランプの「フェイク政策」を見破った 「サウジに武器は売られてません」 フェイクニュース ブルッキングス研究所 ニュース欄に、「サウジアラビアへの1100億ドルの兵器売却合意はフェイクニュースである」という衝撃的な記事を掲載 リーデル氏はあまりにも有名な人物である。 2006年に30年勤めたCIA(米中央情報局)を引退したリーデル氏は、NSC(米国家安全保障会議)の上級顧問として過去4人の大統領と仕事をしてきた。著書も数多く、ハーバード大学やジョンズ・ホプキンズ大学、ブラウン大学などで教鞭も執る 問題は、合意などなかったことである。フェイクニュースなのだ」と指摘 軍需産業から見ると、サウジ側がいつか興味をもつだろう武器を提供しますよ、という提案に過ぎないのである サウジは、オバマ政権時に購入契約をした兵器の支払いもできていないのだ サウジ側にすれば、米国製の武器を大量に購入することに合意したと発表するのは、周辺国やライバルのイランへの牽制になる ロシアゲートなどで政権がぐらつき続けるトランプにとっても、武器売却契約でアメリカが潤い、それによって雇用が生まれる、と外交成果を主張できるのは願ってもないことなのである 両者にとって、大風呂敷を広げることはウィンウィンなのだ。
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