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アベノミクス(その22)「働き方改革」8(「年収1075万以上」が「300万円以上」になる日、「残業代ゼロ」合意をドタキャンした“政権寄り”連合のこれから) [経済政策]

アベノミクス(その22)「働き方改革」8については、7月14日に取上げたが、今日は、(その22)「働き方改革」8(「年収1075万以上」が「300万円以上」になる日、「残業代ゼロ」合意をドタキャンした“政権寄り”連合のこれから) である。

先ずは、健康社会学者の河合 薫氏が8月1日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「年収1075万以上」が「300万円以上」になる日 ホワイトカラー・エグゼンプションという“感情論”」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「感情と論理」について考えてみる。 「論理的」に見える人が実は感情に突き動かされている、これ、そんな事例じゃないかというお話だ。
・「高度プロフェッショナル制度」、別名「ホワイトカラー・エグゼンプション」、またの名を「残業代ゼロ法案」が、ついに秋の臨時国会で働き方改革関連法案と一括して提出されることになった。 容認する姿勢を見せていた連合は“集中砲火”を浴び、政労使合意を見送るとのこと。
・第1次安倍政権の時から、要件を変え、名前を変え、手を尽くしてきた政府は、 「労働者団体の代表の意見を重く受け止め、責任をもって検討する」(by 菅義偉官房長官) そうだ。  思い起こせば、今から10年前……  「残業代が出ないんだから、早く帰れるし、家族団らんが増え、少子化問題も解決するじゃん!」(安倍首相)。 「そうだ!そうだ!『家族だんらん法』と呼ぶように、徹底しよう!」(当時の厚生労働大臣 舛添要一氏)  「だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんよ! これは自己管理です! ボクシングの選手と一緒です。つらいなら、休みたいと主張すればいい」(某女性起業家) などと、今だったら大問題になりそうな“ノー天気”な発言がありましたね。 はい。そうです。これらはすべて、第1次安倍政権の時に記者会見などであった発言である。 あ、失礼。実際の言い方はこんな“軽~い”感じではなく、もっと“丁寧”な物言いです。
▽ノリと勢いで導入しようとしてないか?
・しかしながら、こんな風に脚色したくなるほどどの発言も根拠に乏しい。当時から、この制度の議論は「ノリと勢い」だけで進められてきた感が否めないのである。 いずれにせよ、ご存知のとおり第1次安倍政権のときに、世間から総スカンされ一旦は頓挫。で、第2次安倍政権で、またしても産業競争力会議の提案というカタチでスタートした。
・その推進役を担った、長谷川閑史(はせがわ・やすちか)氏(前経済同友会代表幹事、武田薬品工業会長)は、2014年の朝日新聞のインタビューで次のように語っている(2014年5月22日朝刊 一部抜粋) (記者)長時間労働を招くとの懸念が相次いでいます。 「労使合意もあるし、最終的には本人の判断。うまくいかなければ、元の働き方に戻れる仕組みだ。(働き手を酷使する)『ブラック企業』が悪用するとの批判もあるが、「まずは労働者の権利をしっかり守れる企業にだけ認めればいい」(長谷川)  (記者)働き手が「同意」を強いられませんか。 「そうならないよう守るのが労組の役割のはず。労働基準監督署もしっかり見ないといけない」(長谷川)
・ふむ。当時もこのインタビューにはかなり驚いたけど、今改めて読み返しても突っ込みどころ満載である。  「労働者の権利をしっかり守れる企業だけに認めればいい」って?? 「労働者の権利をしっかり守っている企業です!」というのは、誰が決めるのか? 「わが社は、労働者の権利なんて守ってませ~~ン!」などと、胸を張る企業がいたら、それこそ問題である。
・「そうならないよう守るのが労組の役割のはず」って? 労組のトップである連合からしてその任を果たせるとは、私にはどうにも思えない。 連合について言えば「いったいどっちを向いているんだ?」が私の印象だ。 もちろんただ「異を唱えればいい」わけではない。 だが、連合側は「年間104日の休日の義務化」を主張する一方で、以下の措置は、「いずれかの選択でいい」とした。
 +1日の中で一定の休息時間を確保(インターバル制度)
 +労働時間の上限設定
 +2週間の休日
 +臨時の健康診断の実施 (ソースはこちら→「連合、批判から一転容認 「残業代ゼロ」修正を条件に」)
・なぜ、「いずれ」なんだ? す・べ・て労働者の健康面を守るには、必要なこと。特にインターバル制度の重要性は、いくつもの調査結果から確かめられている。それなのに「いずれかの措置」などとユルい条件を出すとは、経営者の味方なのか、労働者の味方なのか? 
・連合は、2015年5月、証券や国債などの市場情報を提供する東京都内の会社でアナリストとして働き、2013年7月に倒れ心疾患で亡くなった男性(当時47歳)が、過労死だと労災認定されことを、すっかり忘れてしまったのだろうか。
・この男性は、企業が行った人員削減の影響で1人当たりの業務量が増加。上司からは「他のチームはもっと残っているぞ」「他の従業員より早く帰るな」「熱があっても出てこい」と出勤を命じられ、極限状態まで追いつめられた。 発症前1カ月の残業が133時間、発症前2~6カ月の平均残業時間が108時間(遺族がリポートの発信記録や同僚の証言などを基に算出)。
・男性が亡くなったあと、会社は「居残りは本人が望んだこと」と宣言し、「自分たちの責任ではない」との姿勢を貫いた。 合意しただのしないだの、いずれでいいだのなんだのという、連合の言動は、長谷川氏の言う“その役割”をまっとうできる組織だとは、到底思えないのである。
▽いずれ年収300万円台にも適用が始まる
・「でもさ、今回の対象って、年収1075万円以上の専門職でしょ? こういう優秀な人たちは時間と成果を切り離して、個人の生産性をあげてもらうためにも必要でしょ?」 法案に賛成する人の意見は、大抵これ。「生産性向上」である。
・もちろん「働く時間の自由」を手に入れることで、個人の生産性は上がるかもしれない。無駄な残業代がなくなれば、企業の生産性も一時的に上がるかもしれない。だが、その先は? その“生産性”は、経営の行き詰まり感をとりあえず解消する、瞬間風速的なものじゃないのか。 「職務内容・達成度・報酬などを明確にした労使双方の契約」としながら、それが達成できなかったときのペナルティーは、立場が弱い「働く人」にしか課せられないのでは?
・いや、そもそもだ。 ペイ・フォー・パフォーマンスというのであれば、そのパフォーマンスに見合ったペイを算出する方法をどうするかの議論も欠かせないはずなのに、そんなの聞いたことがないぞ? とにもかくにも「?????」だらけだ。申し訳ないけど、私の小さい脳みそでは、全く理解できないのである。
・“そもそも”経団連が1995年に出した「新時代の『日本的経営』」の中での提案が、議論のスタートとなっているわけだが、当時から指摘されてきた“諸問題”は何一解決されていない。そればかりか、「解決しよう」という姿勢すら感じ取れない。
・もっとも懸念されるのが、これが「アリの一穴」となりやしないかということ。 「年収1075万円の専門職」は、20万人程度と試算されている(厚労省による)けど、私は、これは悪夢の始まりだと考えている。 「年収1075万以上」は「年収400万以上」「300万以上」になるだろうし、「高度」は「一般」になるだろう。どんどん条件が引き下げられ、この世から「残業手当」はなくなっていくのだ。いや、違う。「残業という概念」が消滅するのだ。
・こういったことを書くと「まさしく感情論だ。アリの一穴のエビデンスはあるのか!」と批判する人は少なくない。 なのでお答えしよう。 「過去」をみればわかる。 現在の「36協定」である。 現在の36協定は、1947年に労働基準法が制定されたとき、「国際労働条約の 1 日8時間制を取り入れたいのはやまやまであったが、 破壊しつくされた当時の日本では8時間労働で国民の必要とする最低生活を支えることは、不可能ではないか」という疑問が出た。
・1週間も激論が続いたあげく、労働組合との協定があれば25パーセントの割増賃金で時間外労働をさせることができるという結論に到達した」 と、法整備の中心的役割を果たした労働省の課長だった寺本廣作氏が, 自伝 『ある官僚の生涯』 (非売品、1976 年) で記している。 そしてまさしく“36協定”はアリの一穴だった。
・戦後復興期の当時の日本では、1日の労働時間を10時間にしているところも多かったが、8時間とする代わりに、出来るだけ経済復興を阻害しないよう時間外手当を欧米の50%の半分の25%にする36協定が、上記のような経緯で制定された。(参考:「なぜ労基法では一日8時間・時間外割増率25%となったのか」 この資料には、「25%」の“根拠”も丁寧に書いてあるので、興味ある方は是非、ご覧いただきたい)。
・「終戦後の国力回復」を目指した配慮とはいえ、この経緯が、「今の長時間労働大国ニッポン」という不名誉な事態のひとつの要因になったことは否定できない。 もろもろの事情を鑑みて36協定は成立し、会社側が従業員を法定労働時間よりも長く働かせたり、法定の休日に出勤させたりする場合は、「時間外労働・休日労働に関する協定書」を結んで、「36協定届」を労働基準監督署に届け出ることになった(協定届に労働者の代表の署名かはんこがあれば、協定書と届出書は兼用できる)。
・だけど、実態は…。 2013年10月、厚生労働省労働基準局の調査で、中小企業の56.6%がこのための労使協定を締結していなかったこと、うち半分以上が、「時間外労働や休日出勤があっても、労使協定を締結していない」ということが公表された。つまり、「違法に残業させている」ということだ。 そしてつい数日前。 電通が、「そもそも36協定の前提となる、“労働者の代表”としての資格を、同社の労働組合が持たない(加入率が5割以下)まま、協定を締結していた」ことが判明。しかも、厚生労働省もこれを知っていたというのだ。(「電通の36協定無効、厚労省が把握 有効を前提に立件」)
▽適正化ではなく、抜け道の拡大が進む
・一旦法律が作られても、企業側も行政側もそれを時代に合わせて適正化する…のではなく、どんどん拡大解釈し、あげく無視するようになる実例がこれだ。 ただし、念のため断っておくが、私は「時間と成果」を切り離す考え方そのものに、反対しているのではない。むしろ賛成である。だが、今の日本ではムリ。時期尚早。
・今までの労使関係が大きく変わる可能性がある制度であり、法案でありながら、 「どのようなデメリットがあるのか?」 「どんなメリットがあるのか?」 などの議論が尽くされていないのは極めて問題だ、と言っているのだ。 法制度の導入や変更を行った場合にもたらされる効果や問題点を、健康・医療面や経済面の立場からの分析がほとんどおこなわれていない現段階で、「生産性向上」というマジックワードで踏切るのは「悪夢の始まり」となる可能性のほうが高い。
・だって「アリの一穴」になる可能性は、歴史が教えてくれているが、「アリの一穴」にならないという証拠は何ひとつ示されていないのだ。 「感情的」なのは、むしろ推進派の人々であり、もっと「論理的」な議論を行うために、検証作業を行っておくべきなのだ。
・ここにひとつの興味深い、調査結果がある。 タイトルは「ホワイトカラー・エグゼンプションと労働者の働き方:労働時間規制が労働時間や賃金に与える影響」(黒田祥子・東京大学、山本勲・慶應義塾大学、研究者による解題はこちら、ディスカッションペーパーはこちら)。 この調査では「慶應義塾家計パネル調査(KHPS)」を用い、労働時間規制の適用除外となっている管理職や年俸制の労働者(=ホワイトカラー・エグゼンプション WE)と、適用されていない労働者を比較した分析。と同時に、同一の労働者がホワイトカラー・エグゼンプションの適用を受けたときに、労働時間や賃金がどのように変化したのかも検証している、国内で行われた数少ない「ホワイトカラー・エグゼンプション」に関する実証研究である。
・この調査は、2つの手法を用いている。 ひとつは同じ仕事内容が想定される対象者で「WE適用者」と「WE非適用者」を比較し、労働時間などの検討を行っていること。二つ目が、同一人物が、「管理職になる前(WE非適用)」と「管理職になった後(WE適用)を比較し、労働時間などの変化を分析していること。  その結果を以下にざくっと述べる(詳しい内容はリンク先をご覧ください)。
●ホワイトカラ ー・エグゼンプション(WE)が適用されている人とそうでない人の比較
 +週労働時間は、WE適用群が53.54時間、適用されていない群は52.18時間で、WE適用群の方が1.36時間統計的に有意に長い。
 +産業別では、第三次産業、卸小売・飲食・ 宿泊業で働く労働者が、約2~3時間長い。
 +年齢・属性別では、30~40歳の大卒以外で、約3時間長い。 ※週3時間は年間で144時間
 +卸小売などでも年収700万円以上の労働者では、両群に差は認められなかった。
 +週60時間以上働く労働者は、WE適用者の方が統計的に有意に多い。
●ホワイトカラー・エグゼンプションが適用前後の比較(同一労働者)
 +大卒以外の労働者は、週労働時間が2.05時間増。
 +大卒の労働者では、逆に3時間短縮。
 +年収を400万円上に限定すると、大卒以外の労働者の労働時間の増加は有意ではなくなる。
▽人事・昇進制度との兼ね合いを考えて論じるべき
・調査チームはこれらの結果を踏まえ、以下の疑問と仮説を検討している。
 +「WE適用者」で労働時間が増えているのは、いわゆる「名ばかり管理職(店長)」として企業が昇進させ、賃金抑制を行っている可能性はないのか? あるいは「雇用者は昇進に伴い、仕事に必要な労働時間とそれに見合った賃金」をもらっていて、結果的に雇用者の時給換算した賃金は変化していないのではないか? +「WE適用」前後(=管理職昇進前後)で、労働時間が異なるのは「(昇進前は)長時間労働を他者よりも行うことで相対的な生産性をあげ、高評価を得ようとする行動原理があるのではないか? で、検討した結果、
 +「名ばかり管理職(店長)」と呼ばれる人は昇進に伴い賃金も上がっている。長時間労働の帳尻あわせが行われている、という可能性がある。
 +労働時間の長い人ほど、昇進する確率が高い」ことが見受けられる。WE適用前の大卒労働者の労働時間が長く、適用後に短くなるという行動原理には、昇進にまつわる競争が存在している可能性がある。  と、示唆されたのである。
・これらの結果を、私流にまとめると、 「大卒じゃない低所得者は、WE導入で昇格・給与が上がり、残業も増える。大卒だと労働時間は減るけど、それは昇進競争の結果、無理に働かなくてもいい、という状況の変化によるもので、時間と成果を切り離した結果とは言い切れないよん」 ってことじゃないかと。
・つまり、この調査からは、 「ホワイトカラー・エグゼンプション法案」=「残業ゼロ法案」とは言い切れないと共に、 「時間と評価がセットでなくなる(=残業代が出ない」=『早く帰れる、あるいは帰る」) とも言い切れないことがわかったのである。
・しかしながら、筆者も指摘しているとおりあくまでも「労働時間の増加分」だけを比較しただけであり、「そもそもの労働時間が長い」という前提は加味されていない。 また、「WE適用前後」の検討では業務内容の変化や、それに伴う「ストレス要因(例:時間的切迫度、責任過多など)」、「パフォーマンスやモチベーションの変化」などの心理要因は捉えていない。
・大切なのはこのような実証研究を積み重ね、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の効用と問題点をクリアにすること。 ただ単にアンケートを行って、「○%の労働者もWEを望んでいる」だの、「米国でも生産性向上につながってる」だので議論するのではなく、きちんとした調査、分析により、効果と問題点を積み重ねたうえで、法を変えるなりなんなり規制緩和すべきだと思う。
▽経営者側のモラルを問うならば
・そういえば、先の朝日新聞のインタビューで、長谷川さんは次のようなことも言っていらっしゃった。 「米国では当たり前のことがどうしてできないのか。日本の経営者は(悪用が懸念されるほど)モラルが低いのか。かつて反対が強かったのは確かだが、いろんな選択肢を提供するのが時代の要請だ。厚生労働省もダメというなら、逆にどう経済成長に貢献するのか代案を示してほしい」 
・経営者のモラル……ですか。 高度プロフェッショナル制度を、秋の臨時国会で働き方改革関連法案と一括して提出される見通し」と報じられた、7月27日の日経新聞の朝刊の社会面に踊っていた見出しは……、 「違法残業4割超で確認ー16年度 厚労省立ち入り調査で」 「ストレスチェック実施82% 義務化後も徹底されず」 ……。  また、その夜には、電通が過去に残業代の未払いがあったとして調査に乗り出す方針を発表。 さらに、数日前には、宅配便最大手ヤマトホールディングス(HD)の残業代未払い分は総額約230億円となったと報じられ、平成27年度の賃金不払残業是正結果によれば、支払われた割増賃金は、99億9423万円。
・……残業代、きちんと払ってくださいな。 議論はそのあと、だ。 あ、ちょっと感情的になってしまった(笑)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/073100116/?P=1

次に、8月7日付けダイヤモンド・オンライン「「残業代ゼロ」合意をドタキャンした“政権寄り”連合のこれから」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・労働組合の中央組織である連合は7月27日、札幌市で開いた中央執行委員会で、「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設や裁量労働制の拡大が盛り込まれた労働基準法改正案の修正に関する「政労使合意」を見送ることを決めた。 「高プロは、残業代ゼロを容認し、長時間労働を助長する」と反対してきた連合だったが、一転、容認に回り、この約2週間前の13日には、神津里季生会長自らが官邸を訪れて、安倍首相に改正案の修正を要請したばかり。一体、何があったのか。
▽唐突に「高プロ」容認に転換  現場が反発、2週間で撤回
・「ずるずると引きずってはいけないという認識もあり、判断した」 中央執行委員会のあと、記者会見した神津会長、逢見直人事務局長の表情はげっそり。 執行部の全面敗北で終わった2週間のドタバタ劇を象徴するようだった。
・発端となった「高プロ」とは何かといえば、為替ディーラーやアナリストなどの特定の専門職で、一定以上の年収(1075万円を想定)のある人について労働時間の規制を外す制度のことだ。 労働基準法では、労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定め、この法定労働時間を超えて働かせる場合は、割増賃金の支払いを義務付けている。高プロの対象になれば、労働時間の規制がかからず、残業代はもちろん、休日労働、深夜労働にも割増賃金が一切支払われなくなる。
・第一次安倍政権のときに導入が検討され、猛反発を受けて頓挫した「ホワイトカラーエグゼンプション」の一種だ。 政府は2015年4月に、これを盛り込んだ労基法改正案を国会に提出したが、野党が「長時間労働を助長する」と反発。法案は審議もされないまま、たなざらしになっていた。 連合も一貫して反対し、法案の閣議決定の時も、「高プロの創設と裁量労働制の拡大を阻止するため、院内外の取り組みを強力に展開する」と“徹底抗戦”する事務局長談話を発表している。この時の事務局長が現会長の神津氏だった。
・だが唐突な形で今年7月、法案修正を政府に働きかける執行部の動きが表面化する。 7月8日に開かれた三役会の集中審議。会長、事務局長に加え、UAゼンセン、自治労、自動車総連、電機連合、基幹労連など、連合を支える主要な産業別組織のトップが集まる会合で、条件付きで「残業代ゼロ」を容認する執行部の意向が示された。寝耳に水の出席者からは異論が続出したという。
・主要幹部の了解を取った上で、13日に神津会長が官邸を訪れて安倍晋三首相に、働き過ぎを防ぐ対策を手厚くする修正を要請、これを受けて19日には、政府、経団連との「政労使合意」を結ぶ――。執行部が当初、考えていたシナリオだ。
・実際、13日には神津会長が官邸を訪れ、高プロの対象者に年104日の休日を義務づけることなどを首相に要請した。安倍首相も政労使合意を検討することを表明し、事態はシナリオ通りに動くかのように見えた。  だが8日の三役会以降、執行部の一部の「独走」に組織内や民進党、過労死遺族の団体から反対論が続出。 地方組織にも動揺が広がり、連合島根は、19日付で連合本部に意見書を提出。「十分な組織的議論と合意形成の努力を行うべきであり、今回の対応は手続きの面で大きな問題がある」と、反発した。
・組織内だけではない。SNS上では連合批判が飛び交い、19日夜には「連合は勝手に労働者を代表するな」「勝手に決めるな」と書かれたプラカードを持った人々が連合本部(東京都千代田区)前でデモをした。インターネットの呼びかけに応じて集まった人々を中心に100人以上が集まった。
・執行部は、19日の「合意」をいったん見送ったが、それでも主要産別などがそろう中央執行委員会で、組織内の了解を得られると踏んでいた。だが10以上の産別や地方組織が反対。結局、合意取り付けに失敗した。
▽「一強」政権に接近の現実路線 「表も裏も政府寄り」の批判
・「こんな大騒ぎになるとは思わなかった。判断が甘かった」と幹部の一人は言う。 現実路線を進める執行部の一部に対する、現場の不満のマグマは想定以上だった。 安倍政権が、デフレ脱却を掲げて企業に賃上げを求める「官製春闘」を展開、「働き方改革」では「同一労働同一賃金」などの、“労働者寄り”の政策を打ち出す中で、連合は政府に呼吸を合わせてきた。政府、経団連らとの「政労使会議」や、「働き方改革実現会議」など、官邸主導で作られる舞台に乗って、「実」を取ろうという路線が続いてきた。
・今回の「残業代ゼロ合意」への流れができる時も、政府側から働き掛けがあったという見方がある。3月末から事務局レベルで政府と調整が始まっていたことは、神津会長も認めている。 そのころ、働き方改革実現会議で、連合が求めた「罰則付きの残業時間規制」が決まり、それを盛り込んだ労働基準法改正案が国会に提出されることになった。 こうした中で、2年近くたなざらしのままの「高プロ」創設の労基法改正案と、「罰則付き残業規制」を入れた労基法改正案が「一本化」されそうだとの懸念が語られるようになったという。
・「法案が一本化されたら対応が難しい。高プロは反対だが、残業時間の上限規制は導入したい。いまの状況では政府が一本化した法案を強行採決しようと思えば、やれる。それなら、高プロの修正を求めて、話し合いで取とれるものは取ろう」 逢見事務局長を中心に「高プロ容認」の現実路線の考えが強まったという。
・だがもともと、罰則付きで長時間労働を抑えようという制度と、「残業代ゼロ」で長時間労働を助長しかねない制度を一緒に認めようというのは、水と油の話だった。 しかも国会審議すら始まっていない段階で「条件付き容認」に転じれば、組織内外の強い批判を浴びることは十分、予想できた。 連合の威信も傷つけることになったドタバタの混乱を招いた原因は、執行部の甘い見通しだった。
・「どこかで妥協は必要かもしれないが、政府と、労働者の権利や利益を守る連合とは立場が違う。表で戦うポーズをとって、裏では妥協するならともかく、表も裏も政府寄りになったのでは、労働組合の存在価値がなくなる」と関係者の一人は吐き捨てる。
▽『責任論』くすぶる中、会長続投 「残業代ゼロ」は労政審で仕切り直し
・一方で混乱があったとはいえ、連合内には土壇場での「決断」を評価する声もある。 27日の中央執行委員会終了後、連合北海道の会長は記者団に、「組織や現場で率直に意見をぶつけ合って反映する形で引き留めたのは、結果的には良かった」と語った。 「執行部の責任論」がくすぶる中で、8月1日、連合は、神津会長の続投(留任)と、「残業代ゼロ」容認を主導した逢見氏を会長代行にする人事を内定、立て直しを図る構えだ。
・だが今回のドタバタを経て、連合に「芯」が通ったのかどうか。 札幌で会見があった翌日、塩崎恭久前厚生労働大臣は、高プロの導入と残業時間の上限規制の法案を一本化する方針を正式に表明。一本化や修正の中身は、今後、労働政策審議会で議論される。 神津会長は労政審での対応について、「(一本化される)法案全体を見て、連合としての考え方をまとめたい」と、賛否の明言を避けている。 労政審でどのような議論を展開するのか、支持率急降下で求心力に陰りが出始めた安倍政権との距離をどうするのか、連合にとって次の正念場となる。
http://diamond.jp/articles/-/137666

河合氏が、 『「高度プロフェッショナル制度」、別名「ホワイトカラー・エグゼンプション」、またの名を「残業代ゼロ法案」・・・第1次安倍政権のときに、世間から総スカンされ一旦は頓挫。で、第2次安倍政権で、またしても産業競争力会議の提案というカタチでスタートした』、それが、政労合意一歩手前まで行ったというのは驚きだった。 『連合側は「年間104日の休日の義務化」を主張する一方で、以下の(4つの)措置は、「いずれかの選択でいい」とした・・・す・べ・て労働者の健康面を守るには、必要なこと。特にインターバル制度の重要性は、いくつもの調査結果から確かめられている。それなのに「いずれかの措置」などとユルい条件を出すとは、経営者の味方なのか、労働者の味方なのか?』、との指摘は正論である。 『アリの一穴のエビデンスは・・・現在の「36協定」である・・・この経緯が、「今の長時間労働大国ニッポン」という不名誉な事態のひとつの要因になったことは否定できない』、などの指摘は確かにその通りだ。 『念のため断っておくが、私は「時間と成果」を切り離す考え方そのものに、反対しているのではない。むしろ賛成である。だが、今の日本ではムリ。時期尚早』との考え方にも100%賛成だ。 『経営者のモラルを問うならば』、での事例にみるように、お世辞にも褒められたものではない。
第二の記事は、連合サイドの事情を説明しているが、 『唐突に「高プロ」容認に転換  現場が反発、2週間で撤回』 とのお粗末さには空いた口が塞がらない。ただ、労働組合の力が弱ったとはいえ、最低限の気骨は残っていたということだろう。 『今後、労働政策審議会で議論』するようだが、賛否の明言を避けている連合の対応が注目される。
タグ:「「年収1075万以上」が「300万円以上」になる日 ホワイトカラー・エグゼンプションという“感情論”」 日経ビジネスオンライン 河合 薫 表で戦うポーズをとって、裏では妥協するならともかく、表も裏も政府寄りになったのでは、労働組合の存在価値がなくなる (その22)「働き方改革」8(「年収1075万以上」が「300万円以上」になる日、「残業代ゼロ」合意をドタキャンした“政権寄り”連合のこれから) 国会審議すら始まっていない段階で「条件付き容認」に転じれば、組織内外の強い批判を浴びることは十分、予想できた 長谷川閑史 罰則付きで長時間労働を抑えようという制度と、「残業代ゼロ」で長時間労働を助長しかねない制度を一緒に認めようというのは、水と油の話 残業時間の上限規制は導入したい。いまの状況では政府が一本化した法案を強行採決しようと思えば、やれる。それなら、高プロの修正を求めて、話し合いで取とれるものは取ろう」 逢見事務局長を中心に「高プロ容認」の現実路線の考えが強まったという 「罰則付きの残業時間規制 3月末から事務局レベルで政府と調整が始まっていたことは、神津会長も認めている 8日の三役会以降、執行部の一部の「独走」に組織内や民進党、過労死遺族の団体から反対論が続出 7月8日に開かれた三役会の集中審議。会長、事務局長に加え、UAゼンセン、自治労、自動車総連、電機連合、基幹労連など、連合を支える主要な産業別組織のトップが集まる会合で、条件付きで「残業代ゼロ」を容認する執行部の意向が示された。寝耳に水の出席者からは異論が続出 アベノミクス 唐突に「高プロ」容認に転換  現場が反発、2週間で撤回 推進役 「「残業代ゼロ」合意をドタキャンした“政権寄り”連合のこれから ダイヤモンド・オンライン 第1次安倍政権のときに、世間から総スカンされ一旦は頓挫。で、第2次安倍政権で、またしても産業競争力会議の提案というカタチでスタート 平成27年度の賃金不払残業是正結果によれば、支払われた割増賃金は、99億9423万円 高度プロフェッショナル制度 当時から、この制度の議論は「ノリと勢い」だけで進められてきた感が否めないのである 残業代ゼロ法案 経営者側のモラルを問うならば きちんとした調査、分析により、効果と問題点を積み重ねたうえで、法を変えるなりなんなり規制緩和すべきだと思う ホワイトカラー・エグゼンプションと労働者の働き方:労働時間規制が労働時間や賃金に与える影響 第1次安倍政権の時から、要件を変え、名前を変え、手を尽くしてきた ホワイトカラー・エグゼンプション もっと「論理的」な議論を行うために、検証作業を行っておくべきなのだ 念のため断っておくが、私は「時間と成果」を切り離す考え方そのものに、反対しているのではない。むしろ賛成である。だが、今の日本ではムリ。時期尚早 適正化ではなく、抜け道の拡大が進む 電通が、「そもそも36協定の前提となる、“労働者の代表”としての資格を、同社の労働組合が持たない(加入率が5割以下)まま、協定を締結していた」ことが判明。しかも、厚生労働省もこれを知っていたというのだ 中小企業の56.6%がこのための労使協定を締結していなかったこと、うち半分以上が、「時間外労働や休日出勤があっても、労使協定を締結していない」ということが公表された。つまり、「違法に残業させている」ということだ 戦後復興期の当時の日本では、1日の労働時間を10時間にしているところも多かったが、8時間とする代わりに、出来るだけ経済復興を阻害しないよう時間外手当を欧米の50%の半分の25%にする36協定が、上記のような経緯で制定された この経緯が、「今の長時間労働大国ニッポン」という不名誉な事態のひとつの要因になったことは否定できない 容認する姿勢を見せていた連合は“集中砲火”を浴び、政労使合意を見送る ある官僚の生涯 寺本廣作 労働省の課長 1週間も激論が続いたあげく、労働組合との協定があれば25パーセントの割増賃金で時間外労働をさせることができるという結論に到達した 「過去」をみればわかる。 現在の「36協定」である 「年収1075万以上」は「年収400万以上」「300万以上」になるだろうし、「高度」は「一般」になるだろう。どんどん条件が引き下げられ、この世から「残業手当」はなくなっていくのだ。いや、違う。「残業という概念」が消滅するのだ。 もっとも懸念されるのが、これが「アリの一穴」となりやしないかということ いずれ年収300万円台にも適用が始まる す・べ・て労働者の健康面を守るには、必要なこと。特にインターバル制度の重要性は、いくつもの調査結果から確かめられている。それなのに「いずれかの措置」などとユルい条件を出すとは、経営者の味方なのか、労働者の味方なのか? 臨時の健康診断の実施 2週間の休日 労働時間の上限設定 1日の中で一定の休息時間を確保(インターバル制度) 連合側は「年間104日の休日の義務化」を主張する一方で、以下の措置は、「いずれかの選択でいい」とした 賛否の明言を避けている 今後、労働政策審議会で議論される そうならないよう守るのが労組の役割のはず」って? 労組のトップである連合からしてその任を果たせるとは、私にはどうにも思えない まずは労働者の権利をしっかり守れる企業にだけ認めればいい
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