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アベノミクス(その24)(内閣改造後のアベノミクスに制御不能のインフレ 円安の懸念、安倍政権「人づくり革命」の露骨な魂胆、すべては憲法改正のため!?安倍政権「人づくり革命」の真意とは) [経済政策]

アベノミクスについては、8月8日に取上げた。今日は、(その24)(内閣改造後のアベノミクスに制御不能のインフレ 円安の懸念、安倍政権「人づくり革命」の露骨な魂胆、すべては憲法改正のため!?安倍政権「人づくり革命」の真意とは) である。なお、最近は、「アベノミクス」というネーミングそのものが死語になりつつあるが、ここでは安部政権の経済政策として引き続き、これを使うつもりだ。

先ずは、財務省出身で中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員の森信茂樹氏が8月4日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「内閣改造後のアベノミクスに制御不能のインフレ、円安の懸念」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・安倍第3次改造内閣が発足した。目新しさは特に見当たらないが、注目は、政権が、急降下した支持率を回復するために、今後どのような経済・財政政策をとってくるのかという点だ。 全体的なストーリーとしては、「金融政策」が手詰まりにあることから、支持率回復を目指す「財政政策」に重心がシフトすると考えられる。財政赤字が先進国ではすでに最悪の状況、一方で景気回復が続き完全雇用の状態で、財政のアクセルをふかすとどういうことになるのか。
▽消費増税は3度目の先送りか 「教育無償化」で国債増発
・財政シフトでまず考えられるのは、具体的には、2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げの3回目の延期である。 延期が問題なのは、単に経済政策上の理由からだけではない。 10%引き上げの際には同時に軽減税率が導入されることになっているが、これについては、軽減品目とそうでない品目との仕分けや納税手続きが煩雑になることなどからスーパー業界、税理士会、青色申告会などが依然として反対している。 筆者も納税義務者(事業者)・消費者・税務当局の全員にコストを負わせる軽減税率の導入は廃止すべきという立場である。消費増税引延ばしは、この問題の先送りにつながる。
・また、軽減税率導入のためには1兆円の恒久財源を探さなければならない(法律に明記されている)が、増税を嫌う安倍政権が1兆円規模の増税を行うとは考えられない。 消費増税の先送りは、短期的には、マクロ経済へのマイナスを避ける効果があるかもしれないが、その効果は長続きしない。 株式市場などは、増税先延ばしをほとんど織り込んでおり、それによる株価の上昇も期待できない。
・むしろ、前回の本コラム(7月26日)で書いたように、国家の歳入(税収)構造が変わりつつある中で、社会保障の財源を消費増税により確保していくという政策を中断することのマイナス効果、つまり必要な社会保障はきちんと手当てして国民の将来不安を解消する、というメッセージが発せられないことのデメリットの方が大きい。
・次に財政政策として、補正予算も含めた歳出増による需要喚起策が考えられる。 公共事業の追加は、効果も限定的で、国民のイメージが悪いことからすると、追加措置の主体は、子育てや教育の分野になるのではないか。
▽教育で改憲の突破口狙う 景気拡大局面に真逆の財政出動
・すでに「教育国債」の発行による教育無償化に向けて、自民党で具体的な議論が行われてきている。教育国債に対する合意は得られていないものの、議論としては根強いものがある。 この問題が厄介なのは、「維新と組んで憲法改正を発議する」という戦略と絡んでいることである。支持率急降下で、憲法改正に向けてのハードルは高くなったとはいえ、安倍政権の最大関心事がそこにあることには変わりないだろう。 つまり、憲法9条の改正だけでは国民はついていかない。そこで出てくるのが教育の無償化という、国民の多くが賛成する(反対しない)改正項目である。維新を取り込むうえでも、それは必要だ。
・だが教育無償化は、財源さえ確保できれば、何も憲法を変える必要はない。 このことは、法学者ならずとも常識的に考えればわかるはずだが、安倍政権は、これを一つの突破口にする可能性がある。 しかし教育国債という赤字国債の安易な発行を認めれば、確実に財政規律は取り返しのつかないほど緩んでしまう。
・しかもこうした財源論の前に、なぜ教育が無償である必要があるのか、重点は幼児教育か高等教育なのか、奨学金の給付の仕方を変えるのではだめなのか、これで格差問題が本当に解消するのかなど、様々な論点で、国民的な議論を深めることが先ではないか。
・また、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年にむけて、ただでさえ膨張する社会保障費をいかに抑え、負担が有効に使われるようにすることが必要となる。 数の多い高齢者の利害が優先されがちなシルバー民主主義からの脱却が求められる中、社会保障の効率化を行うことなく教育無償化、というのでは、財政規律は吹っ飛んでしまう。 景気回復局面が長く続き失業率などがバブル期並みに低下している現在、追加財政政策というのは、真逆の政策といえよう。
▽財政拡張のツケは日銀が背負う 政府は「アコード」を守れ
・では金融政策はどうなるのか。 これは安倍政権の政策というより日本銀行の政策だが、安倍政権(官邸)は、今回の人事で退任する緩和慎重派の2人の審議委員に替えてリフレ派の審議委員に送りこんだ。 政権の意向を、彼らが「忖度」する形で緩和策が維持されるだろうということが、おのずから見えてくる。しかしリフレ的な金融政策が行き詰まっていることは、もはや誰の目にも明らかだ。
・日銀は、拡張的な財政政策が行われても、財政規律が弛緩しても、その影響が国債市場に現れないように、イールドカーブコントロールなどで長期金利を抑え込もうとするだろう。しかし、このような財政・金融政策は、ますます将来のハイパーインフレーションへのマグマをため込むだけではないか。
・3度目の消費増税先送りが行われ、財政追加策が行われて、国債が増発されても、、日銀が国債購入を続けることで国債市場の価格形成が歪められ、本来、市場が発すべき「警戒警報」が鳴らない。 完全雇用の下で、こうした拡張的な財政政策が続くと、いずれインフレが制御できなくなり、所得分配や資源分配がさらに歪められる。
・原点に返って考えるには、2013年1月、政府と日銀との間で結ばれた「アコード」をもう一度思い返すことではないか。 この「約束」では、政府は、構造改革と財政再建(正確には、「財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」)を、日銀は2%のインフレターゲットの実現を、という役割分担を明確に定めている。
・これに対して、日銀が14年10月末に追加金融緩和を行った翌11月、安倍政権は1回目の消費増税の先送りをするという、いわば“約束違反”をした。 その後、国民の信任を得るとして衆議院を解散・総選挙を行い、自民党は大勝したが、そこから日銀は、安倍政権の拡張的財政政策のツケを、すべて背負い込むことになった。「異次元緩和」を進めるという名分のもとでの大量の国債購入やマイナス金利政策である。
・日銀のこうした政策が、市場や投資家から明らかな「財政ファイナンス」とみなされれば、一気に日銀の信頼性は失われ、国債は暴落(長期金利は上昇)し、さらには円に対する信任も失われるので、円安となる。  公的債務への懸念が長期金利の上昇圧力と円安への圧力を生み出すので、日本は否が応でもハイパーインフレーションの道に進んでいく。
・円安でインフレが生じると、長期金利にはさらなる上昇圧力がかかり、これを日銀が無理やり国債購入などで抑え込もうとすると、実質金利の低下を通じさらなる円安となって、インフレのスパイラルが生じるのである。
・結論を言えば、本来、目指すべきは、低成長でも持続可能な社会保障と財政制度の再構築である。 そのためには、歳入面では消費税を主体とした税構造に変えることと富裕高齢層への増税のパッケージ、歳出面では社会保障、とりわけ年金支給年齢引き上げ、医療・介護の効率化を図りながら、勤労世代や教育に必要な分野への重点のシフトを進めることである。
http://diamond.jp/articles/-/137488

次に、同志社大学教授の浜矩子氏が8月12日付け日刊ゲンダイに寄稿した「人間をマシンに…安倍政権「人づくり革命」の露骨な魂胆」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・新内閣の目玉政策「人づくり革命」。革命的に人を改造するということですから、人を人と思っていない安倍政権の思想が露骨に表れています。
・今年3月に出された働き方改革実行計画は、「同一労働同一賃金と長時間労働の是正」「柔軟で多様な働き方」が2つの大きな柱ですが、いずれも非常に問題がある。「同一労働同一賃金と長時間労働の是正」については、労働生産性の向上のためにやると、実行計画に明確に書かれています。労働者の当然の権利としての同一労働同一賃金ではなく、過労死を避けるための長時間労働の是正ではない。「労働者」という名前の機械の生産効率を高めるためにやると明示されています。
・「柔軟で多様な働き方」も労働法制によって保護された状態の労働者の数を減らすことが狙い。働きたい時に働きたい場所でやりたい仕事ができると、フリーランスや個人事業主になることを勧めていますが、被雇用者でなくなれば企業はその労働者の健康や働く環境に一切責任を持たなくていい。これを先取りしたのが、問題になっている高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ)で、専門性や時間を切り売りすることにつながっていくでしょう。実はこのことは、はやりの「シェアリングエコノミー」と表裏一体の関係にある。人間を人権が守られている状態から追い出し、“労働マシン”としてこき使うための政策なのです。
▽アベノミクスの失敗を挽回するため
・一連の働き方改革に安倍政権が執着する背景には、アベノミクスがうまくいっていない焦りがある。首相本人も最近はアベノミクスという言葉を使わなくなっていて、「三本の矢」についても国民の記憶からデリート(消去)したいと思っているのではないか。失敗を挽回するため、強い経済づくりの別のテーマが必要。革命的に突破したいという必死さがにじみ出ています。
・「高プロ制度」をめぐり連合が混乱しましたが、先日、講演会で一緒になった神津里季生会長は、「決して容認したわけではなく、メディアに流れをつくられてしまった」と釈明していました。神津会長はきちんとした人なので、実際そういう感触があることは理解します。ただ、働き方改革実行計画は、次の国会で「高プロ制度」を必ず実現すると宣言しているのです。働き方改革実現会議に労働側の代表として参加しながら、ブレーキをかけられなかったのは事実です。
・とはいえ、最終的に連合が高プロ制度を認めない態度を明確にしたのはよかった。どうも野党も労働側も、「同一労働同一賃金」や「長時間労働の是正」を安倍政権に言われた段階で、自分たちのお株を奪われたような喪失感に陥ってしまい、このテーマから逃避している感じがあるのです。しかし実行計画をよく読めば、その思想は全く異質なものだと分かるはず。本来、ILO(国際労働機関)が示す「同一労働同一賃金」は、同一価値を生み出した労働には同一賃金が支払われるというものですが、働き方改革では、同一賃金の基準は「成果と貢献度」だとしていて、ILOの考え方とは違う。
・今からでも遅くありません。野党と労働側は“敵情視察”を徹底し、政府の意図を見抜いて暴走を止めて欲しい。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211300/1

第三に、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏へのインタビューを掲載した8月21日付けダイヤモンド・オンライン「すべては憲法改正のため!?安倍政権「人づくり革命」の真意とは」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・8月3日の内閣改造によって、凋落する一方だった支持率が5~10ポイントほど回復。安倍政権は瀬戸際で踏みとどまったかのように見える。だが、衆院の任期も残り1年あまりで、来年9月には自民党総裁選も予定されている。政局の行方は依然として予断を許さない。今後、安倍総理はどのような政策をおこなっていくのか。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。
▽安倍内閣が看板政策を絶えず変えていく狙いとは?
・2012年12月の発足の第二次政権以降、安倍官邸は、「女性活躍」、「地方創生」、「一億総活躍」、そして今回の「人づくり革命」と、目玉となる政策を毎回ころころと変更している。このことの意味について鈴木氏が解説する。 「第二次安倍政権は、内閣改造のたびに新しい看板政策を繰り出しています。ですが実は、これらの政策は看板こそ違えど、その中身は大きく変わっていません。ある経産省OBがこうした現状を『船の名前を変えているだけ。中に乗っている積み荷(政策)や、船長(安倍総理)や船員(閣僚)は全然変わっていない』と厳しく評していましたが、まさにその通り。実際は、看板を書き換えることで、何か新しい政策をやっているようなイメージを作り出そうとしていると言ってもいいでしょう」(鈴木氏、以下同)
・今回の内閣改造における新しい看板政策は、茂木敏充・経済財政担当大臣が担当する「人づくり革命」だ。幼児教育や高等教育の無償化、社会人教育の推進などをテーマとするもので、8月中に有識者会議『人生100年時代構想会議』を発足させ、来年6月頃を目途に具体的な方向性を打ち出す予定だ。耳慣れない名称でもあり、早くもわかりにくいとの批判が出ている。
・「『何をやるものなのかわからない』という批判がすでにありますが、逆に言うと、実はそれこそが政権の狙いかもしれません。というのは、安倍政権の看板政策は、いつも非常に国民運動的な要素を含んでいるんです」 「『地方創生』や『一億総活躍』もそうでしたが、今回掲げる『人づくり革命』も、これから地方を回りながら、何に取り組むのか、担当大臣が各地の議論を掘り起して声を吸い上げていく。国民運動的に政権への期待感や盛り上がりを醸成して、政権への求心力を高めて行くことが狙いの一つと見ていいでしょう。石破茂・元地方創生相も『一億総活躍』が突然出てきたときに『これは国民運動以外の何ものでもない』と指摘していましたね」
▽支持率低下に悩まされるも憲法改正は諦めない
・従来、霞が関で最も強い影響力を持つ省庁は財務省であった。しかし、安倍政権の政策決定を見ると、財務省ではなく経済産業省の影響が強く感じられる。 「安倍政権は初めての本格的な経産省内閣と言われていて、政権に最も影響力があるのは、今井尚哉・総理秘書官の出身官庁でもある経済産業省です。政権構想も、経産省関係者や経産省に近い識者などの色合いが強い。もちろん、政策の方向性も、経産省の考える経済効率や生産性向上といったものが見えます」
・「『人づくり革命』もその一つで、茂木大臣が就任早々、高齢者の活用について言及しましたが、本来なら再雇用だけでなく、趣味を生かしたい、社会に奉仕したい、もっと勉強したい、などの高齢者の生き方全体についても考えないといけません。ただ高齢者の働き口を増やそうという話だけなら、結局、生産性や経済効率を重視したものという目的が透けて見えてきます」
・第二次安倍政権の発足以降、安倍総理は、念願の憲法改正実現ではなく、「アベノミクス」をはじめとする経済政策に力を入れてきた。ただし、今年5月には東京五輪の開催される2020年を目標に、憲法9条に自衛隊の根拠規定を加える形での改正を提案するなど、憲法改正に向けても動き出している。
・「元々、安倍総理の戦略は、経済を立て直すことで国民からの支持を得て、その高支持率を背景に次には自らの政治信念でもある憲法改正を実現させようというもの。経済政策は、憲法改正を実現するための前段という見方もできます。支持率の低下によって、当初の計画に狂いが生じている可能性はありますが、安倍総理はそれでも憲法改正を断念しないでしょう。前回の総選挙では、最大の訴えは経済でしたが、選挙後の私のインタビューでも『憲法改正は私の信念ですから』と明言しましたし…」 
・安倍総理は、いくら支持率が下がろうとも、あらゆる手段を講じて憲法改正に邁進するだろうというのが、鈴木氏の見解。しかし客観的に考えてこのままでは憲法改正は難しい。では起死回生の策として、安倍政権は何をやろうとするのか、大規模な経済政策か、あるいは外交で歴史的な成果を上げるのか。いずれにせよ、追い込まれた政権の今後の政策に注目したい。
http://diamond.jp/articles/-/139215

森信氏が懸念する 『制御不能のインフレ 円安』、については、これまで他の論者も指摘しているが、 『「教育無償化」で国債増発』、 『景気拡大局面に真逆の財政出動』、など最悪のシナリオに向かう方向がハッキリしてきたのは、気になるところだ。 『教育無償化は、財源さえ確保できれば、何も憲法を変える必要はない。 このことは、法学者ならずとも常識的に考えればわかるはずだが、安倍政権は、これを一つの突破口にする可能性がある』、というのは困ったことだ。
浜氏が、 『「柔軟で多様な働き方」も労働法制によって保護された状態の労働者の数を減らすことが狙い。働きたい時に働きたい場所でやりたい仕事ができると、フリーランスや個人事業主になることを勧めていますが、被雇用者でなくなれば企業はその労働者の健康や働く環境に一切責任を持たなくていい』、と指摘しているのは、キレイなキャッチフレーズに隠された真の狙いをズバリ突いている。 『働き方改革では、同一賃金の基準は「成果と貢献度」だとしていて、ILOの考え方とは違う』、というのは、私が見落としていた点だ。『野党と労働側には・・・政府の意図を見抜いて暴走を止めて欲しい』、はその通りだ。
鈴木氏が、 『船の名前を変えているだけ。中に乗っている積み荷(政策)や、船長(安倍総理)や船員(閣僚)は全然変わっていない』と厳しく評していましたが、まさにその通り。実際は、看板を書き換えることで、何か新しい政策をやっているようなイメージを作り出そうとしていると言ってもいいでしょう?』、とは言い得て妙だ。 『安倍総理は、いくら支持率が下がろうとも、あらゆる手段を講じて憲法改正に邁進するだろう』、とは当然のことながら、不吉な予言だ。
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