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暗号通貨(仮想通貨)(その3)(ビットコイン分裂 仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める、仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大、中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理) [金融]

暗号通貨(仮想通貨)については、7月12日に取上げたが、今日は、(その3)(ビットコイン分裂 仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める、仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大、中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理) である。

先ずは、財務省出身で早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が8月10日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ビットコイン分裂、仮想通貨間競争の勝敗は「使いやすさ」が決める」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・8月1日に、中国の大手マイニング会社らが主導して「ビットコインキャッシュ」(BCC、またはBCH)という新しい仮想通貨が生み出されたが、滑り出しは低調だ。これに対して、ビットコイン(BTC)は、取引処理速度の高速化を図り、まったく新しいタイプの取引を可能にしようとしている。こうした見通しもあり、ビットコイン価格は史上最高値をつけた。 仮想通貨間の競争は、かつて経済学者のハイエクが夢見た貨幣発行が自由化された世界を実現しつつある。
▽新通貨BCCは、低迷 BTCは史上最高値
・8月1日にビットコインキャッシュ(以下BCC)という新しい仮想通貨が生み出された。 ビットコイン(以下BTC)には、取引が急増する中で、取引スピード低下などの「拡張可能性問題」があったが、これを解決するための1つの方策として、取引を記録するブロックのサイズの上限を8メガバイトまで拡大しようとしたのがBTCだ(現状では1メガバイト、(注)BTCではなく、BCCの間違いでは?)。
・しかし、滑り出しは低調だった。 最初のブロックが採掘されるまでに5時間かかり、つぎのブロックが13時間かかった(BTCでは1ブロックが10分間)。 これは、マイナーの支持を集められなかったためだ。 現状ではViaBTC、Bitcoin.comなどごく一部のマイナーしか採掘に参加しておらず、計算力がBTCに比べると低い。このため、BCCを売って他の仮想通貨にするのも困難だった。
・ただし、8月4日には、少し改善され、1時間に1ブロック程度になった。これは、プログラムの規則にしたがって、マイニングの難度を自動的に引き下げたからだ(「Bitcoin Cash Block Production Accelerates as Mining Difficulty Adjusts」参照)。
・しかし、マイニングの難度をあまり下げてしまうと、大手マイナーの優越性が失われる。ブロック形成のための時間は短縮されるが、マイナーにとっては「痛し痒し」といったところではないだろうか? 新通貨誕生後、図表1に示すように、BTCの価格は上昇して、史上最高値をつけた。これに対して、BCCの価格は、図表2に見るように、下落している。
▽BCCにはエコシステムがない 利用者が増えるほど「価値」上がる
・BTCが作られた背景は、この連載の「ビットコインは8月1日頃に本当に分裂するのか」(7月20日)で書いたとおり、取引処理能力を高める新規格「Segwit」が導入されると、ジハン・ウーが率いるマイニング会社ビットメイン(Bitmain)の製品「ASICBoost」が使えなくなってしまうからだ。 その意味では、BCCの創設は、ジハン・ウーによる「反乱」とも言えるもので、利用者の便宜を向上させるために作られたとは言えない。そのようなものに人気が集まらないのは、考えてみれば当然のことだ。
・重要な点は、BCCには開発者、利用者、取引所、受け入れる店舗などが結びついて形成される「エコシステム」が整備されていないことだ。「The Bitcoin Cash Price: Questions, Answers and More Questions」もこの点を指摘している。 仮想通貨は、使われることによって初めて価値を持つ。そして、利用者が増えるほど価値が上がる。つまり、「ネットワーク効果」が顕著に働く。
・BTCの場合は、日本では、資金決済法が改正されて仮想通貨の法的な位置づけが明確化されたこともあり、取引所も増えている。全世界的に見れば、取引所もウォレット(財布)も、すでに多数存在している。 また、いまだ限定的であるとはいえ、BTCを受け入れる店舗が増えている。 マイナーも多数いるし、優秀なコア開発者も多数いる。
・また、流動性も重要だ。1ブロックの取引を確定するのに何時間もかかるのでは、通常の経済取引では使えない。流動性を高めるには、多数の取引者、取引所、マイナーが存在することが必要だ。 こうしたインフラは、BTCから「分岐」したからといって自動的に生まれるわけではない。BCCが生き残るためには、インフラを整備し、BCCがBTCと同じように便利で使いやすい仮想通貨であることを、一般の利用者に説得的に示さなければならない。 そう考えた場合、BCCを受け入れる店舗や取引所が今後、増えるだろうか? BCCがBTCを上回るインフラを持つようになるとは、とても考えられない。
▽ライトニングネットワークの導入でBTCは高速化を図る
・他方で、BTCには今回の改善で「Segwit」が導入されることとなったが、これによって「ライトニングネットワーク」という仕組みを導入するための基礎的な条件が整備された。 8月3日の前回に指摘したように、これによって高速化とコスト引き下げが可能になり、マイクロペイメント(少額決済)が実用的になる。
・これまでの商取引で利用されている現実通貨がBTCに代替されるだけでなく、まったく新しいタイプの取引も可能になる。例えば、機械間でごく少額の金銭の受け渡しを行なうことなどができるようになるだろう。 これに対して、BCCではブロックの容量を増やすといっても、最大8倍になるだけだ。仮に取引量が増えたら、さらに拡張する必要が生じるだろう。
・ビットコインを巡る今回の一連の出来事で何よりも重要なのは、「Segwit」の導入が、強権的に行なわれたのではなく、民主的な方法で行なわれたことだ。 ただし、これですべてが決着したわけではない。「Segwit2」の合意では、11月にブロックのサイズを引き上げることになっている。これがどうなるかが注目される。
▽良貨が悪貨を駆逐する ハイエクの夢見た貨幣自由化が実現
・現在起きているのは、BTCとBCCの競争だ。そして、使い勝手でいえば「良貨」であるBTCが、「悪貨」であるBCCを駆逐している。 ところで、「悪貨が良貨を駆逐する」という有名な「グレシャムの法則」がある。これと、以上で述べたこととの関連について述べておこう。 オーストリア学派の経済者であるフリードリヒ・フォン・ハイエクは、1930年に出版した『貨幣の非国有化』(Denationalisation of Money)の中で、つぎのように論じた。 ハイエクは「悪貨が良貨を駆逐する」のは、「悪貨と良貨で貨幣の価値が違うにもかかわらず、同一の価格付けがなされているためである」と指摘する。仮に価値に応じて価格付けがなされるなら、「良貨が悪化を駆逐する」ことになる。 これこそが、BTCとBCCの間で、いま起こっていることだ。
・ハイエクによれば、現在の経済のさまざまな問題は、国家が貨幣発行を独占していることによって生じている。「そこで、これを改革し、銀行がそれぞれ独自の預金通貨を発行できるようにする。そしてお互いに価値の競争をさせる。そうすれば、価値の高い通貨が生き残るだろう」というわけだ。 ハイエクのこの提案は、実現することはなかった。
・しかし、仮想通貨間の競争は、かつてハイエクが夢見た「貨幣発行が自由化された世界」の実現だと考えることができる。
http://diamond.jp/articles/-/138209

次に、同じ野口氏が8月31日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「仮想通貨を用いた新しい資金調達法が爆発的に拡大」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・ICO(Initial Coin Offering)が、ブロックチェーン関係のスタートアップ企業の新しい資金調達方法として注目を集めている。 ブロックチェーン関連企業がICOで調達した資金総額は、この数ヵ月で急激に増えており、ベンチャーキャピタルからの調達額を上回っている。
・これまでスタートアップ企業は、アイディアを実際の事業に具体化する段階でベンチャーキャピタルの資金力に頼る必要があったが、もはやそれに頼る必要性がなくなった。このため、さまざまなイノベーションがビジネスとして孵化するスピードが高まる可能性がある。 ICOは、このように新しい可能性を開く革新的方法だが、最近の状況にはバブルの様相があることも否定できない。
▽独自の「トークン」を発行 仮想通貨取引所に「新規上場」
・ICO(Initial Coin Offering)は、これまでスタートアップ企業が行なってきたIPO(新規株式公開)のようなものだ。ただし、株式ではなく、仮想通貨を用いて資金調達を行なう。 これは、一種のクラウドファンディングであり、すべてはインターネット内で完結する。
・IPOより遥かに簡単であり、投資銀行や証券会社のような第三者の補助を必要としない。このため、IPOの場合のような巨額の手数料を必要としない。 『ニューズウィーク』(日本語版、2016年7月4日)は、「仮想通貨の投資ファンド『The DAO』が市場ルールを変える」の中で、ICOは投資家にも資金調達者にも新しい可能性を与えるものであり、「資本の民主化」だと評価した。
・新しいプロジェクトに関する「ホワイトペーパー」と呼ばれる事業計画を書けば、誰でもICOを実行できる。  逆に言えば、インチキも多い(これについては、後で述べる)。 ICOに関するニュースは、CoinDesk ICO Trackerで得ることができる。
▽プレセールからローンチへ そして上場
・資金調達は、つぎの3つの段階を経て行なわれる。
 (1)第1段階 ICO 新しいサービスを開始する前に、そのサービスで利用される仮想通貨を販売する。この仮想通貨は、「トークン」と呼ばれる。 プロジェクトの主催者は、サービスに使われる技術やビジネスモデルを「ホワイトペーパー」と呼ばれるレポートにまとめて公表する。 投資家は、ホワイトペーパーを読んで、投資する価値のあるサービスか否かを評価し、成功するだろうと考えれば、トークンを購入する。
+この段階では、サービスが実際に提供されるには至っていない。開発すらされていないかもしれない。だから、トークンの価値を評価するのは、きわめて難しい。 この段階がICOだが、「クラウドセール」とか「プレセール」とも呼ばれる。 投資家に情報を与えるため、プレセールの予定を取りまとめて公開しているウェブサイトが存在する。 そうしたサイトのリストを、CoinDeskが、The Ultimate List of ICO Resourcesとして作成している。 この中で有名なものとしては、ICO Countdownがある。
 (2)第2段階 ローンチ システムが開発されれば、実際にサービスの提供が開始される。これを「ローンチされた」ということが多い。
 (3)第3段階 上場 有望と判断されたトークンは、仮想通貨取引所で取引される。これは、「上場される」と表現されることが多い。
▽今年に入り14.9億ドル調達 日本でも今秋、立ち上げ
・上述したCoinDesk ICO Trackerが示しているグラフによると、今年に入ってから8月22日までのICOによる資金調達は、14.9億ドル(約1600億円)にのぼり、2016年通年の2.6億ドルをすでにはるかに上回っている(図表1参照)。
・ICOによる最高の調達額は、Tezosというプロジェクトが今年7月に調達した2.32億ドルだ。 これは、バグやシステム修正が必要な場合にブロックの分岐(フォーク)を行なわずに修正ができるブロックチェーンを開発しているプロジェクトだ。 また、エストニア共和国が、「e-Residencyプログラム」の一貫として、ICOを計画している(「This European country may hold an ICO and issue its own cryptocurrency」参照)。
・16年までのICOの主要なものは、拙著『ブロックチェーン革命』(日本経済出版社、2017年、第9章)で紹介した。そこでは、The DAO、Augur、Etherium、DigixDAOなどを紹介した。  その後の注目すべきICOとして、つぎのようなものがある。
*IOTA IOTAのプロジェクトは、前回コラム「仮想通貨はウェブコンテンツ有料配信の支払い手段として有望だ」で紹介した。 15年の11~12月にICOを行なっていたが、今年の6月に大手取引所Bitfinexに上場した。当初の資金調達額は3000BTC(約1億2000万円)だったが、bitfinnexに上場してすぐに、価格が500倍も上昇した。 そして現在は、仮想通貨の時価総額リストで第6位だ。  +Gnosis 17年4月にICOを行ない、10分で目標額に達した。
*Brave ブラウザ開発企業Braveが、今年の6月に、わずか30秒間で3500万ドルを調達した
*バンコール ブロックチェーン・プロジェクト「Bancor Protocol」が、ICOを通じ、3時間で1.5億ドル相当を調達した。
*COMSA 日本では仮想通貨取引所運営のテックビューロが、今年の10月に、COMSA(コムサ)というプラットフォームを立ち上げ、トークンを販売する仕組みを提供する予定だ。
▽プロジェクト失敗すれば無価値に 当局も規制対象にする動き
・ICOに関しては、「どうすれば儲かるか」という類いの話が多い。 しかし、もっとも重要なのは、対象とされているプロジェクトが成功するかどうかの見極めだ。 この評価は、普通はきわめて難しい。プロジェクトが失敗すれば、無価値なコインを入手することになる。
・そうでなくとも、ICOを利用した詐欺は多く発生している。 Chainalysisによると、仮想通貨関連の詐欺による被害額は、2017年で約2億2500万ドル(250億円)に達した(「Cryptocurrency Cyber Crime Has Cost Victims Millions This Year」参照)。
・アメリカ証券取引委員会(SEC)は、17年7月に、ICOで発行される仮想通貨は条件によって「有価証券」に該当し、規制対象になるという警告を発した。シンガポールでも同様に規制の動きがある。
▽値上がり期待でバブルの様相 可能性つぶさない規制の仕組みを
・18世紀のイギリスで、南海会社の株価値上がり期待からバブルが発生し、多くの人々が投機に走った。これに刺激されて多くの株式会社が設立されたが、その中には、「誰もそれが何であるかわからないが、とにかく莫大な富を生み出す企業を運営する会社」というのもあった(チャールズ・マッケイ『狂気とバブル』、パンローリング、2004年、原著は1852年)。
・これと似たようなICOが最近、実際に行なわれた。 それは、EOSという仮想通貨でのことだ。 「トークンの使い道がなく、無価値だ」と、EOSの公式サイトにはっきり書かれている(The EOS Tokens do not have any rights, uses, purpose, attributes, functionalities and features, express or implied, including, without limitation, any uses, purpose, attributes, functionalities and features on the EOS Platform)。  それにもかかわらず、今年6月に行なわれたICO開始後18時間で、16億円超の資金を調達してしまった。その後も資金調達が進み、第1回の調達額は時価191億円となった。 そして、EOSは、bitfinexという取引所に上場された。その一方で、ICOが1年も続く。つまり、「プレセール」中の公式サイトで安く買えるのに、取引所で価格が上昇し続けているという、なんとも不可解なことが起こっている。
・18世紀のイギリスでは、バブルが崩壊して暴落し、大きな社会問題となった。この経験から株式会社が禁止され、イギリス経済の発展に大きな制約となった。 ICOについても、同じようなことが起きれば、せっかくの新しい可能性をつぶしてしまうことになる。どのような規制の仕組みを作るかが、考えられなければならない。
http://diamond.jp/articles/-/140439

第三に、ジャーナリストの福島 香織氏が9月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「中国「仮想通貨取引全面禁止」のインパクト 自由な通貨 vs 党による管理、攻防の行方は…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・中国が全面的にICO(仮想通貨発行による資金調達)の禁止に踏み切った。そのせいで元建てビットコインは大暴落。9月8日までの一週間で20%ほど値下がりしたとか。今のタイミングで決断したのは、党大会前に金融リスク要因を少しでも減らしたいから、らしい。党大会後に中国経済のハードランディングは避けられないとみて、資本家や企業家、小金持ちの官僚・政治家たちは資金移動や資金洗浄の道を探しているのだが、習近平政権は徹底してキャピタルフライトへの監視の目を光らせている。近年、資金洗浄、資金移動の手法として需要がのびていたICOも9月4日、ついに全面的に取引所閉鎖の通達を出されたという。中国のビットコイン大手三大取引所、OKコイン、ビットコイン・チャイナ(BTCチャイナ)は8日までに、この情報を確認しており、中国では当面、ICOは締め出されることになる。
▽26億元以上が凍結・払い戻しに
・改めて説明すると、仮想通貨というのは、ブロックチェーンというコンピューターの分散型台帳技術を使って作り出すデジタルトークン・暗号通貨のことだ。ビットコインやイーサリアムといった名前がよく知られているだろう。その仮想通貨によるクラウドファンディングで資金調達をしてプロジェクトを遂行したり、あるいは資金洗浄、資金移動に使うことが中国ではこのところのブームだった。
・仮想通貨の魅力はとにかくその価値の乱高下の激しさだ。わずか数カ月で3倍から10倍の価値になるなど普通だ。ときには1000倍の収益率もあるとか。中国人はもともと博打が好きなので、一攫千金的なビジネスに惹かれる傾向がある。さらに中国の電気代の安さが、コンピューターによる高速計算が必要な仮想通貨を“掘り出す”マイニングを行うのに適しており、玉石混交の仮想通貨投資に熱狂する一種のバブル状態に突入していた。
・仮想通貨は中国の一般市民の家計にはほとんど影響はないが、2017年上半期のICO発展状況報告(国家インターネット安全技術専門家委員会)によれば、中国国内で65のICOプロジェクトがスタートしており、その累計融資規模は26.16億元、参加人数は10.5万人以上。つまり10万人以上が、65の仮想通貨プラットフォームによって集めた26億元以上の資金が事実上凍結、あるいは払い戻し処理を受ける、という話だ。この数字はむしろ控えめで、実際は200万人以上が仮想通貨投資を行っているという統計もある。
・中国当局側の規制理由の建前は、仮想通貨によるクラウドファンディングなどは一種の非合法融資であり、金融詐欺やねずみ講などの違法犯罪活動にかかわる行為、金融秩序を著しく乱すもの、というものだ。一説によると、中国の仮想通貨は700種類ぐらいあり、そのうち、まともな仮想通貨は1%に満たず、その他は詐欺まがいのものだとか。また匿名取引を可能にするICOはテロや反政府活動に資金が流入する可能性もあり、当局の監視をぬって北朝鮮を含めて第三国に資金移動することも可能という点では、中国で規制がかかるのは時間の問題とも思われていた。
▽公式不良債権は51兆元、実態は…
・ただ、この半年間で、ここまで企業家、資本家たちがICOバブルに熱狂したのは、習近平政権下での、いわゆる企業家や資本家への管理・監視強化の動きとも関係がある。対外投資一つ、国外資本の購入一つ、いちいち党の許可を受けなければならないようになっていく中、中国の正規金融システムが関与しない仮想通貨は柔軟な資金調達や資金移動の裏口という面もあった。
・中国の金融状況を少し整理しておくと、中国が目下抱える最大の経済リスクは言うまでもなく金融リスクである。英格付け会社フィッチ・レーティングスの中国⾦融アナリストがまとめたリポートでは中国の金融システムが抱える不良債権は公式数字を6.8兆ドル上回り、今年末までに最低7.6兆ドル(51兆元)、不良債権比率は公式値の5.3%を大きく上回る34%と発表したことが、フィナンシャル・タイムスなどによって報じられた。四大銀行の不良債権比率が今年6月時点で5年ぶりに低下したとして、改善傾向にあるとの報道もあるが、実際のところは、不良債権受け皿会社(バッドバンク)に不良資産を移しただけで、数字のごまかしともいえる。ウォールストリート・ジャーナルの最近のコラムによれば、バッドバンク業界二位の中国信達資産管理会社は大手銀行の不良資産の6割を引き受けているが、すでにその処理能力を超えており、引き受けた不良債権の減損額はこの半年で2倍以上に膨らんだという。
・しかも、習近平が打ち出す新シルクロード構想「一帯一路」戦略に従って、大手銀行四大銀行は目下最低でも一行につき100億ドル以上の融資を命じられている。当たり前のことだが、一帯一路戦略は経済利益を見込んだプロジェクトではなく、中国の軍事上の戦略の意味が大きい。一帯一路に投じられた資金が回収される見込みはまずないのだから(というより途中で頓挫するプロジェクトも多々あると予想される)、これは中国四大銀行がさらに不良債権を背負わされていくだろう、ということでもある。
▽シャドーバンキングの影
・さらに中国の金融リスクを複雑化しているのは、シャドーバンキングの存在である。シャドーバンキングは、当局の金融引き締めの網をかいくぐって地方政府やデベロッパーが資金を調達するために発達したが、その規模は金融管理当局の管理監督が及ばないだけあって不確かである。ムーディーズはその規模を8.5兆ドルと推計しているが、18.8兆ドルという推計を出しているリポートもある。中国が昨年、金融リスク回避のために債権市場のレバレッジ解消、不動産投機への資金抑制を行ったがため、今年に入ってシャドーバンキング経由の資金調達が再び増えているという。シャドーバンキングを規制すれば、債券市場の流動性が細り暴落するといわれ、債券市場を安定させるためにレバレッジ抑制強化するとシャドーバンキングが活発化し、リスクが一層複雑化する、という悪循環に陥っている。
・中国はこれまでシャドーバンキングによる理財商品のデフォルトをできるだけ回避する方向で来たがために、シャドーバンキングによる理財商品人気は一向に萎えていない。今後はデフォルト発生を増加させることで、痛みを承知で金融市場の健全化を進めるべきだという考え方も党内で出てきているのだが、そうなると金融のシステミックリスクに波及するおそれもある。
・こうしたリスクを内包しながら金融市場を安定させる微妙なかじ取りは、かなりのセンスが必要とされるはずだが、習近平政権はこの一年の間で、中国保険監督管理委員会(CIRC)主席だった項俊波を含む金融規制当局のトップ4人中3人を更迭、失脚させた。その後釜は習近平に忠実なイエスマンばかりの「お友達人事」と揶揄されている。同時に銀行、証券、保険を含む金融業界全般に積極介入し、党のコントロールを強化する方針を打ち出している。
▽金融安定優先も、かじ取りは…
・これは、習近平政権当初に打ち出されている金融市場の自由化、規制緩和に逆行する方針転換となる。規制強化、党の介入強化は、おそらくは中国の経済成長エンジンに大きなブレーキをかけることになるが、習近平としては経済成長を多少犠牲にしても金融の安定化を優先させたい、ということだろうか。だが、習近平にこうしたリスクを内包する金融市場のかじ取りをうまくできるほどの経済センス、金融センスがあるかどうかについては、疑問を持つ人が多い。
・なにせ、習近平はすでに二度、マクロ経済政策で大きな失敗をやらかしている。一度は株高誘導による国有企業債務危機の緩和政策。これは2015年夏の上海株大暴落「株災」という散々な結末で終わった。もう一つは2015年夏の人民元大幅切り下げ。これは国内外を震撼させ、人民元の信用低下を招いただけで、目的を達成しないまま軌道修正された。
・なので、中国の金融市場は、党大会までは安定優先で無理やりリスクを抑え込み経済の安定成長を演出したとしても、その後は、習近平は何かをやらかす可能性は非常に高く、それがリーマンショックより10年ぶりの金融危機の引き金になるのではないか、と中国の投資家たちは気が気ではない。この半年の、仮想通貨への投資バブルは、既存の証券や理財商品や不動産や人民元とは違う、新しい投資対象に資産を分散させたいという心理も手伝ったとみられる。中国の今回のICO規制は、こうした投資家に対する嫌がらせめいたものも感じる。そのあたりが、米国やシンガポールのICO規制と本質的に違うところだろう。
・では今後中国で、仮想通貨は全面的に排除されてしまうのだろうか。そうではないだろう。中国当局はブロックチェーンシステムについてはむしろ非常に期待を寄せており、人民銀行は「法定数字貨幣(仮想通貨)」の研究開発加速を打ち出して専門部署まで設けている。これは中国が官製仮想通貨を創設し、いち早く流通させ、まだその命運の定まっていない仮想通貨・暗号通貨の主導権を握りたいということらしい。
▽「一幣、二庫、三中心」で「党の完全管理」へ?
・人民銀行数字貨幣研究所長の姚前が昨年9月に行った講演録がネット上に掲載されていたので、それを参考にすると、中国としての設計原則として、コントロールの中心化、電子マネーのような生活の中で使えるような携帯化、簡易支払い機能、匿名性、安全性を確保するという。
・さらに「一幣、二庫、三中心」という抽象的概念をあげている。中央銀行が管理する暗号通貨は一種類とし、それを発行庫(人民銀行クラウド)と商業銀行庫(私有の仮想通貨を貯金するクラウド銀行)の二つに置き、認証センター、登記センター、ビッグデータセンターの三つのセンターによって管理するという。そう遠くないタイミングで、モデル地区で試験導入されるという話もある。 
・人民銀行が管理する仮想通貨が他の仮想通貨に先んじて中国国内で広がれば、一つには金融リスク監視や経済全体の取り引きの追跡が簡単となり、経済インフラそのものを劇的に変える可能性がある。そしてその市場の大きさを考えれば世界の基軸仮想通貨の地位も狙えるかもしれない。これは党が完全管理する金融という野望への一つの道となるかもしれない。実際、中国国内のスマホ(電子マネー)決済利用率が98%に上る中で、個人の消費追跡はビッグデータ化され、市民管理に応用されつつあるという。中国にこうした長期的目標があると考えれば、今回のICO規制は、人民銀行版仮想通貨ができる前に、競合するライバル仮想通貨を完全に排除しておく、という意味にもとれる。
・だが、これは暗号通貨の代表であるビットコインが掲げる「中央銀行の存在しない国境のない自由な通貨」という理念と完全に真逆の発想で、よくよく考えると、こんな通貨に支配された世界はなんか怖い。中国のフィンティックがすごい、とやたら持ち上げる記事が最近増えたが、未来をよりよく変えるイノベーションというポジティブなイメージでは到底受け取れないでいる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/091100117/

野口氏の第一の記事では、ビットコインの分裂で新たに生まれたBCCは今のところ、人気はないようだ。 『BCCには開発者、利用者、取引所、受け入れる店舗などが結びついて形成される「エコシステム」が整備されていない・・・仮想通貨は、使われることによって初めて価値を持つ。そして、利用者が増えるほど価値が上がる。つまり、「ネットワーク効果」が顕著に働く』、というのでは、当然のことなのかも知れない。 『良貨が悪貨を駆逐する ハイエクの夢見た貨幣自由化が実現』、との指摘はなるほどと納得させられた。
同氏の第二の記事で、 『今年に入ってから8月22日までのICOによる資金調達は、14.9億ドル(約1600億円)にのぼり、2016年通年の2.6億ドルをすでにはるかに上回っている』、というのは無視できない大きな規模になってきたようだ。 しかし、『仮想通貨関連の詐欺による被害額は、2017年で約2億2500万ドル(250億円)に達した』、ようであれば、 『当局も規制対象にする動き』というのも当然だ。
第三の福島氏の記事は、中国がICOを禁止した背景を、中国ならではの金融状況から見たものだ。金融状況の説明が長すぎるきらいはあるが、あえて全文を紹介した。確かに金融状況は、「薄氷の上を歩いている」ようなもので、割れるのは時間の問題かも知れない。それなのに、 『習近平はすでに二度、マクロ経済政策で大きな失敗をやらかしている』、というのでは、甚だ心もとない感じだ。 当局が 『「一幣、二庫、三中心」で「党の完全管理」へ』、といいうのも、 『ビットコインが掲げる「中央銀行の存在しない国境のない自由な通貨」という理念と完全に真逆の発想で、よくよく考えると、こんな通貨に支配された世界はなんか怖い』、そんな当局の目論みは、水泡に帰するのではなかろうか。
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