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「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その1)(検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか、株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか、米国GEとP&Gの対応姿勢の違い) [企業経営]

今日は、「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その1)(検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか、株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか、米国GEとP&Gの対応姿勢の違い) を取上げよう。

先ずは、10月19日付け東洋経済オンライン「検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか アクティビストに買われた企業の株価は?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・知らぬ間に株を買い集めて、気づけば保有比率は2ケタ以上。大株主として、会社側に「配当など株主還元の強化」「取締役の派遣」「不採算事業の売却、事業分割」などさまざまな要求を行う――。一般的な「物言う株主」(アクティビスト)のイメージはそんなものだろうか。
▽復活する「物言う株主」たち
・2015年から上場会社にコーポレートガバナンス・コードが適用されたことを機に、日本でも株主の権利が重要視されてきている。過剰な資産の貯め込みを戒め、株主価値を重視する動きも強まり、「ROE経営」という言葉も定着しつつある。
・個人投資家にとって、まとまった株式を確保することは難しく、会社側に働きかけをするのは難しい。一方で、アクティビストはファンドを組成し、資本の論理を駆使して利益を得る。その内容は冒頭のように経営陣との対話要求から株主還元の拡大、株主提案による取締役の派遣や事業売却までさまざまだ。
・日本でも、2000年代前半から中盤に掛けて村上世彰氏が立ち上げた、村上ファンドや米国のスティール・パートナーズなどのアクティビストが東京スタイル(現TSIホールディングス)やニッポン放送(現フジ・メディアHD)、サッポロHDなどに投資し、活発に活動していた時期があった。
・しかし、2006年のインサイダー事件で村上ファンドが解散に追いこまれ、スティール・パートナーズも敵対的TOBとその防衛策をめぐって行ったブルドッグソースとの訴訟で敗訴。それにリーマンショックによる市場の冷え込みが追い打ちをかけ、多くのファンドが撤退していった。
・ところが近年、再びアクティビストの活動が活発化している。2015年6月に村上世彰氏は娘・絢氏とともに黒田電気に対し株主提案を行い、世彰氏を含む4名の取締役就任を求めた。また、2016年6月には旧村上ファンド出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメント(エフィッシモ)が川崎汽船株の1/3を取得したことも話題となった。
・アクティビストの要求によって株価の上昇や還元の拡大が起きれば個人投資家もその恩恵を享受できる可能性がある。アクティビストが株式を保有していることを知ることができるのは株式保有割合が5%を超え、大量保有報告書が提出されてから。その時点から現在までどの程度株価が上昇したのかを検証してみた。
▽平均上昇率79.7%!
・主要なアクティビストが過去に大量保有報告書を提出しており、現在も保有している銘柄から、5銘柄ずつ無作為に抽出したものだ。 なお、損切りや利益確定で現在は保有していない銘柄は対象外で、保有期間中も株価変動に応じてトレードをしている場合がある。そのため、この騰落率は必ずしもファンドの損益とは一致しない。
・現在、アクティビストのうち、エフィッシモとストラテジックキャピタル、レノは旧村上ファンドのメンバーが立ち上げたファンドだ。特に、レノは村上世彰氏が直接影響力を及ぼしているファンドだ。一方でタイヨウ・ファンドは10年以上前から日本で活動しており、2014年にはローランドのMBOにも参画。経営陣と対話を重視する「ゲスト株主」を掲げる。
・全体の騰落率の平均は79.7%。ファンド別に見ると、騰落率に差はあるものの、どのファンドも平均2ケタ以上の上昇率だ。もっとも上昇したのはMCJで、株価は8倍以上になった。20銘柄中株価が倍増したのは5銘柄だ。 報告義務が発生した日で分類をすると、2012年までに義務が発生した銘柄の平均上昇率は196.6%と極めて高い。2013年以降の銘柄の平均上昇率は29.7%だ。これは、投資を開始して間もない銘柄ではアクティビスト活動の成果が出づらいこと、上昇し続けている銘柄はホールドし続けられやすいことに加え、アベノミクスによる株価上昇の恩恵を受けられたかどうかが反映されていると見られる。
・相場全体の上昇による影響を補正するため、東証株価指数比較(TOPIX)との比較も行った結果、20銘柄のうち11銘柄がTOPIX騰落率を上回った。TOPIX騰落率の平均は20.1%で、アクティビスト銘柄の騰落率が大きく上回る結果となった。
・また、アクティビストの株式保有は株主還元拡大の圧力となる。アコーディアゴルフは2014年にレノからの要求で200億円以上の株主還元を発表し、9割という配当性向も掲げている。また、宝印刷もストラテジックキャピタルキャピタルの大量保有発覚後、配当を大きく引き上げた。直近では、黒田電気が2016年3月期に年間の1株配当を前期比2倍以上にしている。
・2016年に入ってから冴えない相場環境の中、アクティビストの突破力に乗ってみるのも一つの手かもしれない。
http://toyokeizai.net/articles/-/140798

次に、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が10月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽機関投資家は投資先企業にどう関わるべきか
・近年、年金積立金などの運用の世界では、資産運用の在り方に関する「ESG」「コーポレート・ガバナンス・コード」、「スチュワードシップコード」「エンゲージメント」「議決権行使」といった言葉が頻繁に登場する。 たとえばESGとは、アセットマネージャーャー(運用会社)、アセットオーナー(年金基金など運用会社に運用を任せるスポンサー)ともに投資先企業の経営をチェックし、議決権行使を適切に行うことで経営者にプレッシャーをかけ、投資先企業のE(環境)・S(社会的価値)・G(ガバナンス)を改善することが、企業の長期的な成長、引いては株式のリターンを改善しうるのではないかという考え方だ。 そこから派生した「ESG投資」などと称するものは、環境や社会的価値などに反するような企業への投資を忌避するというものだ。
・いずれにしても、株主、あるいは潜在的株主である投資家が、投資先企業の経営を望ましい方向に導くことで、投資のリターンを高めたり、社会的に望ましい行動を選択させたりすることができるのではないかという考えだ。
・こうした影響力の行使が、どの程度有効なのか定かではない。だとしても、株主として、あるいは投資家として、市場や社会に参加しておきながら、企業の在り方に対して何も働きかけないのは「無責任ではないか」と言われると、何かしなければならないような気になる(世間体を気にする気の弱い人では、反論が難しかろう)。 日本でもこうした議論が目につくようになった。さて、どう考えたらいいものだろうか。
▽スポンサーと運用会社の事情
・少々、下世話な話になって恐縮だが、株式運用の大手プレーヤーである年金基金などのスポンサー(アセットオーナー)と、資金の運用を請け負う運用会社(アセットマネージャー)の事情を考えてみよう。 スポンサーは、その資金規模が大きく、同時に運用の意思決定において合理的であるほど、いわゆるインデックス運用を中心とする「パッシブ運用」(ベンチマークと同じパフォーマンスを目指す手数料の安い運用)への委託が多くなる傾向がある。加えて、アクティブ運用に委託しても、数多くのアクティブ運用者に資金運用を委託した場合、それらを合計するとインデックス運用に近づく傾向がある。
・特に運用資金が大きな公的年金のようなスポンサーは、自らの運用資金のうち、国内株式で運用している資産状況を見ると、ベンチマークから大きく離れることができないポートフォリオになっていて、実質的に大きくは身動きが取れないのが現実だ。
・こうなると、国内株式ポートフォリオのリターンを改善するためには、投資先企業の経営を株主にとって好ましいものに改善させるしかない。そのために、投資先企業に対して、株主としての影響力を少しでも行使できないかという発想が生まれた。 しかし、年金基金のようなスポンサーは、個々の投資先に関わるほどの人的リソースを持っていないし、公的年金などの場合は民間企業の経営に直接には関わらないのが建前である。
・そこで運用会社に対し、株主利益の立場からの議決権行使を促す動きが始まったわけだが、(1)判断の原則を示して運用会社に議決権行使や投資先企業との対話を促す、加えて(2)個別の議決権行使について事後チェックする、(3)スポンサー自身も企業と対話する、といった試みが順次行われるようになってきた。
・他方、運用会社の側にして見れば、運用手数料の高いアクティブ運用が、手数料の安いパッシブ運用に傾向として勝ちにくいことが世間や顧客に知れ渡り、特に運用資金額の大きなスポンサーの運用資金が、パッシブ運用に流れる傾向があった。そのため、一つには「ESG」を強調した運用商品が、手数料的にはインデックス運用よりも“まし”なのではないかというビジネスの可能性に着目するようになった。
・少し前までは、「SRI」(社会的責任投資)と呼んでいたような運用商品や、最近は「ESG運用」と呼ぶようになった運用を、例によって「欧米では広がりを見せている」と言って売るようになっている。
・一方、投資先企業に対する議決権行使を個別に検討することや、株主として経営者と対話することについて、一部の会社を除くともともと気乗りしないし、「形だけやっているふり」をしておけばいいというのが本音の運用会社が多かったが、スポンサーからの要求の高まりに応えるビジネス上の必要性から、徐々にこれらに力を入れざるを得なくなってきている。 また、不祥事を起こした企業や、敵対的な買収が問題になっている企業の株主総会で、機関投資家がどのように議決権行使するかが注目されるケースが増えてきたことも影響した。
・ところで、大手運用会社では、数千ある投資先企業について株主総会の議案を検討し、時には経営者に働きかけるといった「建前」を、「本気で」実行しようとすると人手もお金もかかる。しかし、もともと「これまでも投資家としてベストを尽くしてきました」という建前もあり、運用会社同志の競争の現実もあって、「議決権行使を熱心にやります」「投資先の成長のために経営者に働きかけます」といった行動をサービスとして提供することを理由に、運用手数料を値上げできたという話は今のところ耳にしない。
・つまり、運用会社は増えつつある手間を、ビジネス上の理由から我慢している段階にあるように見える。  こうした状況に対応したビジネスとして、議決権行使について機関投資家にアドバイスするサービスを営む会社が登場しており、こうした会社のアドバイスに従って議決権を行使していますという運用会社もある。
・こうした現状に対する評価は複数あり得るように思う。たとえば、以下のような意見があり得る。
 +機関投資家の保有株が、企業経営者にとって常に「口を出さない与党票」であるようなかつてのような状況よりは、企業の経営者にプレッシャーがかかるのはいいことだ。何もやらないよりはいい。
 +理想にはほど遠い。アセットオーナー(スポンサー)、アセットマネージャーャー(運用会社)ともに、建前を積み重ねた“おままごと”のような現状を打破して、もっと積極的に株主として行動すべきだ。
 +実質的な効果が上がっているようには見えない。余計な手間とコスト、あるいは運用への制約(ESG運用の場合)が生じているだけなので、やめた方がいいのではないか。
・こうした意見について、読者はどのように思われるだろうか。以下、いくつかの論点を拾ってみよう。
▽論点1 「売り」と「反対票」のどちらが強力か
・そもそも素朴な疑問がある。企業に収益を上げさせることが目的なのか、社会的に正しく行動させることが目的なのか、いずれの目的であるとしても、企業に対する影響力は、(A)「正しく行動しないと株式を売るぞ」というプレッシャーをかけることが有効なのか(例えばESG運用)、逆に(B)「株式を持って議決権行使するぞ」(例えば取締役の選任議案などに反対する)というプレッシャーをかけることが有効なのか、どちらなのだろうか。
・直感的には、全てではないとしても、自分の報酬がしばしば株価に大きく連動する米国の経営者には(A)が有効だろうし、世間体を気にして株主総会を無事に乗り切ることが大切な日本の経営者には(B)が有効な気がする。
・筆者の個人的な意見を言うと、(A)はリスクと期待リターンの観点から最適なポートフォリオを歪める可能性があり、(B)は日本の経営者が結構気にしてくれそうなので、日本の株式に投資するアセットオーナーは、運用手数料の安いインデックス運用で株式をまんべんなく保有しつつ(B)のアプローチに訴える方が、投資収益目的でも、社会正義目的でも、効果的であるように思える。
・例えば「悪い企業」には、政府と消費者が罰を下せば株価は下がるだろうが、機関投資家は下がったところをさらに売り叩くよりは、株主として例えば経営者を更迭するなど、プレッシャーをかけるといいのではないか。
▽論点2 エンゲージメントつきで手数料プラスの運用を採用するか
・アセットオーナーの側で、真に判断を迫られるのは、例えば(A)議決権行使や企業との対話(エンゲージメント)を積極的に行うけれど少し運用手数料が高いインデックス運用と、(B)これらを手抜きする(アドバイス会社の助言通りに議決権行使するというのは「準手抜き」と言ってよかろう)代わりに運用手数料が安いインデックス運用と、二つの選択肢が生じたときにどちらを選ぶかだ。
・アセットオーナーの義務(専門家として最善の運用を行う)を厳密に解釈するなら、(B)を選んで、(A)を選んでくれた資金の効果にフリーライドしつつ、安い運用手数料を享受するのが正解だ。
・しかし、それでは社会的な役割負担として不十分だという議論もあり得る。この場合、年金加入者などさらに一段上のアセットオーナーの同意が必要に思えるが(代議員会などで議決するのだろう)、あえて(A)を選び、他のアセットオーナーにも同調を呼びかけるような「運動」をしてもいいかもしれない。
・思考実験上、このような(A)と(B)を設例したが、アセットオーナーがアセットマネージャーに投資先への積極的なエンゲージメントを求めるなら、最終的にはその費用を自分たちが負担するような形になるだろう。つまりは、アセットオーナーたちは、現在、すでにこの問いかけを受けていると考えるべきである。
▽論点3 インデックス運用者の寡占
・先に、アセットオーナーは、アセットマネージャーに対して議決権行使や、投資先企業との対話を任せている実態をご説明した。また、公募の投資信託のように、不特定多数のアセットオーナーの資金で保有されている株式や、日銀が大量に保有するETF(上場型投資信託)の議決権行使なども、実質的に運用会社に委ねられている。
・さて、こうした状況で、少数の運用会社が大きなシェアを取ることになると、彼らの行動が企業経営に大きな影響力を持つようになる。 特に、インデックス運用にあっては、ETFも含めて同一指数に連動する運用商品は、競争力のある一つ、もしくは二つのファンドに資金が集中する傾向が顕著だ。例えば、米国では、ブラックロック、ヴァンガード、ステートストリートの3社がインデックス運用資金の大半を握っており、寡占化が進んでいる。インデックス運用の資金は今後も増えることが予想されるので、株式保有の寡占化はさらに進むことだろう。
・日本でも、こうした寡占化が進む可能性はある。判断は最終的に運用会社ごとに決まるものとなろうが、行動は透明化して、個人投資家も含むアセットオーナーにも分かりやすいものであるべきだろう(注:個別の議決権行使を公開することは、運用の制約になるので良くない、という異論も存在する)。
▽論点4 アセットオーナーの責任
・投資信託に投資する個人投資家の場合、投資先企業へのエンゲージメントは運用会社に任せざるを得ないが、年金基金、特に公的年金のようなアセットオーナーの場合、例えば議決権行使について「アセットマネージャーに任せているので、個別企業の経営には介入していません」という建前と、「我々は運用会社の議決権行使について、個々にその適切性を、責任を持ってチェックしている」という別の建前とを使い分けているのが現状なのだが、これら二つの建前はよく考えてみるまでもなく相互に矛盾している。
・顧客の立場から運用会社に対して、事後的にではあっても個々のケースについて判断するというなら、運用会社はスポンサーの意向を忖度するはずであり、アセットオーナーが個々の企業の経営に影響を与えていないというのは嘘だ。他方、議決権行使は運用会社の採否に影響しないし、その判断の自由は運用会社にあると言うのであれば、それは、個々の案件の適切性に対して責任を持っているとは言い難い。
・この問題は、特に公的年金にあって本来深刻なものだが、今のところ表立っては、突き詰めて問題にしないことにしているように見える。 もともとは、公的年金でも国内株式に投資するという制度設計の建て付けの悪さに問題があると筆者は考えているのだが、この問題もそろそろスッキリ整理すべき時期にきているのかもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/146073

第三に、闇株新聞が10月17日付けで掲載した「絶好調の米国株式市場で「ちょっと気になる」ニュース」を紹介しよう。
・CEOが交代したばかりのゼネラル・エレクトリック(以下、GE)は10月9日、トライアン・ファンド・マネジメント(以下、トライアン)の最高投資責任者(CIO)であるエド・ガーデン氏が同日付けで取締役に就任したと発表しました。 また日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(以下、P&G)は10月10日に株主総会を開催し、同じトライアンを主宰するネルソン・ペルツ氏が株主提案していた同氏の取締役就任を否決したと発表しました。
・ここでトライアンとは2005年にこのネルソン・ペルツ氏、エド・ガーデン氏らが立ち上げた投資ファンドで、運用資産は100億ドル(1兆1000億円)を超えています。米国でも最大級のアクティビスト(物言う株主)とされており、かなりの大企業でも果敢に投資した上で、大胆な事業再編案やリストラ案を提案して株価上昇を狙う投資手法となります。
・そのトライアンが、GEには取締役を送りこむことに成功し、P&Gには失敗したことになります。逆に言えばGEはトライアンの要求を受け入れ、P&Gは拒絶したことになります。
・トライアンは2015年からGEに投資しており、合計25億ドル(2800億円)を投入してGEの約1%を保有しています。しかしGEの株価は年初から27%も下落しており、トライアンの持ち株も含み損となっています。
・GEの新CEOであるフラナリー氏は、このままでは株主である機関投資家がかなりトライアンに賛同して今後の経営がやりにくくなると考え、早めに要求を受け入れたはずです。また今後もトライアンの提言や要求を、ある程度は受け入れた経営となるはずです。
・一方でトライアンは本年に入ってからP&Gを大量に買い増し、合計35億ドル(3900億円)を投入してP&Gの約1.5%を保有しています。P&Gの株価は年初から5%上昇していますが、同期間におけるS&P500の12%上昇、同業・ユニリーバの29%上昇と比べれば「かなり」見劣りします。
・P&Gは株主総会における委任状争奪となり、P&Gの合計4割を保有する機関投資家や大手株主アドバイザーがトライアンを支持するなど拮抗していたはずですが、結果は否決でした。 トライアンは早速、独立した機関による票数確認を要求しています。また今回の委任状争奪を巡るキャンペーンに、P&Gとトライアン双方が合計で6000万ドル(67億円)を費やしたそうです。
・またトライアンのこれまでのアクティビストとしての活動は、ハインツ(ケチャップで有名)、ペプシコ、BNYメロン(大手の銀行持ち株会社です)、デュポンなどに投資して、同じような提案・要求を繰り返しています。BNYメロンには取締役1名を送り込みました。
・さてここからが本題です。 確かにトライアンはGEに25億ドル(2800億円)、P&Gに35億ドル(3900億円)と、巨額資金をつぎ込んでいますが、対象が大企業であるためそれぞれ1%、1.5%の株式を保有しているだけです。 それにも関わらずGEは委任状争奪の前に要求を受け入れ、P&Gは株主総会の委任状争奪で(今のところ)拮抗しているところまで漕ぎつけました。
・アクティビストの提案・要求とは、突き詰めれば投資している企業の株価を「手っ取り早く」上昇させるためであり、その企業の長期展望はあまり気にしないものです。 しかも同じように目先の株価上昇を求める機関投資家が比較的簡単に賛同するため、自らはそれほど大量の株式を保有する必要はありません。
・ということはアクティビストを含む株主が、比較的簡単に上場企業に提案・要求を受け入れさせられるようになり、(今でもその傾向がありますが)ますます上場企業は目先の業績や株価を重視する経営となってしまいます。
・つまり上昇を続ける米国株式市場では、今後ますます「将来の株価上昇まで先取りする」ことになりそうです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2105.html

第一の記事で、 『主要なアクティビストが過去に大量保有報告書を提出しており、現在も保有している銘柄から、5銘柄ずつ無作為に抽出したものだ・・・全体の騰落率の平均は79.7%』、 『20銘柄のうち11銘柄がTOPIX騰落率を上回った。TOPIX騰落率の平均は20.1%で、アクティビスト銘柄の騰落率が大きく上回る結果となった』、と予想以上に高いようだ。そうであれば、 『アクティビストの突破力に乗ってみるのも一つの手かもしれない』。
第二の記事で、 『運用会社は増えつつある手間を、ビジネス上の理由から我慢している段階にあるように見える。 こうした状況に対応したビジネスとして、議決権行使について機関投資家にアドバイスするサービスを営む会社が登場しており、こうした会社のアドバイスに従って議決権を行使していますという運用会社もある』、というのは、個々の機関投資家が議案を調査するより、アドバイスサービスを営む会社に任せた方が効率的だろう。  『年金基金、特に公的年金のようなアセットオーナーの場合、例えば議決権行使について「アセットマネージャーに任せているので、個別企業の経営には介入していません」という建前と、「我々は運用会社の議決権行使について、個々にその適切性を、責任を持ってチェックしている」という別の建前とを使い分けているのが現状なのだが、これら二つの建前はよく考えてみるまでもなく相互に矛盾している』、との指摘は本質的で、 『そろそろスッキリ整理すべき時期にきているのかもしれない』、というのはその通りだ。
第三の記事で、 『アクティビストを含む株主が、比較的簡単に上場企業に提案・要求を受け入れさせられるようになり、(今でもその傾向がありますが)ますます上場企業は目先の業績や株価を重視する経営となってしまいます』、と企業経営の短期志向がさらに強まる方向にあるというのは、米国だけでなく日本でも進むとすれば、困ったことだ。
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