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トランプ訪日直前の日米関係(どうなる?トランプ訪日と日米FTA交渉、トランプは北朝鮮安保の見返りで日本にどんな経済的譲歩を迫るか、トランプは訪中で「ポスト金正恩」を話し合う) [外交]

2日後に近づいたトランプ大統領の訪日を控えた今日は、事前にポイントを整理しておくために、トランプ訪日直前の日米関係(どうなる?トランプ訪日と日米FTA交渉、トランプは北朝鮮安保の見返りで日本にどんな経済的譲歩を迫るか、トランプは訪中で「ポスト金正恩」を話し合う) を取上げよう。なお、今回のテーマに近いものとしては、2月15日に トランプ後の日米関係(日米首脳会談1) を取上げた。

先ずは、元経産省米州課長で中部大学特任教授の細川昌彦氏氏が10月20日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「どうなる?トランプ訪日と日米FTA交渉 日米経済対話から読み解く日米中の水面下の駆け引き」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・10月16日(日本時間17日午前)、日米経済対話の第2回会合が開かれた。11月上旬に予定されているトランプ大統領の訪日を控えているだけに、その前さばき、心構えの準備の意味も持つ。米国が意欲を示しているとされる2国間FTA(自由貿易協定)の交渉の行方や、中国の脅威にどう向き合うか、水面下の駆け引きを読み解く。
・10月16日、第2回の日米経済対話が開催された。11月上旬に予定されているトランプ大統領の訪日を控えているだけに、その前さばき、心構えの準備の意味も持つ。 結果は予想通り、日米の思惑の違いが明確になった。
▽米国の関心は貿易赤字削減だけ
・米国は、一言で言えば、貿易赤字の削減にしか関心がない。赤字の過半は対中国であっても、日本もその対象だ。それに絡めて、特定業界の要望を受けて、個別問題の要求を次々と持ち出してくる。米国産冷凍牛肉に対するセーフガードの問題しかり、米国からの自動車輸出の際の検査手続きの問題しかり、医薬品の薬価算定の手続きしかりだ。具体的な個別利益で成果を出すことにしか関心がない。そこには戦略のかけらもない。 戦略を語るべき国務省の政府高官が未だ任命されておらず、米通商代表部(USTR)が主導すると、米国はこういうパターンに陥りがちだ。
▽「中国の脅威」にどう向き合うか
・他方、日本はどうか。台頭する中国を念頭に、日米協力を目指して戦略を練る。そのポイントは「中国の脅威」と「アジアの機会」にどう向き合うかである。それに米国を関与させることが、台頭する中国に日本が向き合ううえで不可欠な戦略だ。
・例えば、中国の国有企業優遇問題や知的財産権の侵害、不公正な補助金問題などに、日米が共同でどう立ち向かうか。米国は中国に対して通商法232条や301条といった、かつて1980年代に使った古いツールを持ち出している。これらは「一方的措置」と言われるもので、かつて米国は日本など貿易相手国に対して振り回していたが、その時代への懐古だろうか。
・ところが、当時と違って、今や中国こそが、「一方的措置」を振り回す恐れがある最大の国となっている。地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備に関して、韓国への経済制裁しかり、かつてのレアアースの輸出規制しかりだ。米国が一方的措置を中国に対して持ち出すことによって、中国に今後のお墨付きを与えかねない。日本としてはそのリスクを米国に気付かせる必要がある。それに代えて、日米共同で世界貿易機関(WTO)を活用する「ルールの道」を選ばせるべきだろう。
▽インターネット安全法も日米産業界の脅威だ
・また今年6月に施行された中国のインターネット安全法も脅威だ。これは国内の情報統制だけが問題なのではない。外国企業に対して、サーバー設置の現地化を要求したり、ソースコードの開示を求められたりする可能性がある。
・国境を超える情報の移転を中国当局に規制される恐れもある。こうしたことはIT業界だけがターゲットではない。コマツの建設機械のように、今や製造業もIoT(モノのインターネット)として顧客データの収集、活用することがビジネスの重要な競争力になっている。そうしたグローバルな取り組みが制約されかねないことから、恣意的運用が大きな懸念となっている。 同様の規制はベトナムでも導入され、このような動きが広がるのは大きな問題だ。
・日米両国の産業界が利害を共有することから、中国に対してルールで追い込んでいくことを日米共同で行うことも重要だ。実は環太平洋経済連携協定(TPP)の中には、そうした懸念する動きを禁止する条項も入っている。
▽LNG協力も「アジアの機会」
・次に「アジアの機会」はどうか。LNG(液化天然ガス)分野での協力は、日米共同で向き合う典型例だ。米国産のLNG輸出に日本が協力するが、既に日本はLNGを長期契約で十分調達済みである。 そこで、今後需要拡大が望めるアジアの市場開拓に日本が協力する。例えば、インドネシアへのLNG船による発電事業を支援するのもその一環だ。米国とアジアを結びつける手伝いを日本がするという構図だ。これは中国が一帯一路構想をもって、アジアのインフラ整備を戦略的に行う動きをも睨んでいる。
・米国はややもすれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国に対して2国間での貿易投資問題で要求ばかりが前面に出る傾向にある。そうするとASEAN諸国の離反を招き、結果的に中国を利することにもつながりかねない。アジアを日米共通の「機会」と捉えて、具体的なプロジェクトを仕掛けていけるかがポイントだ。
▽トランプのアジア歴訪へのかすかな期待は
・このような「中国の脅威」と「アジアの機会」という2大テーマで、日米共同で具体的項目、具体的プロジェクトを仕掛けていくのが日本の戦略だ。しかしながら、米国は未だそういう思考回路になっていないのが現状である。残念ながら、今のトランプ政権にはそういう戦略を噛み合って議論をする相手を見つけることさえ難しいのかもしれない。それでも、日本政府は根気よく対話を重ねる努力をするしかない。 また腰の定まらないトランプ政権のアジア政策を考えると、トランプ大統領のアジア歴訪を、そのことを気付かせる機会にできるかどうかだ。
▽日米FTAをどうすべきか
・ペンス副大統領は日米自由貿易協定(FTA)への意欲を示したと言う。恐らく対日貿易赤字の削減や個別利益の要求をするうえで効果的だと思ってのことだろう。トランプ大統領も来日時に持ち出す可能性があるので、どう対応するかがポイントだ。
・日本政府は米国の意図が明らかなだけに、もちろん慎重なポジションで、できれば避けたいところだ。しかし外交的には最終的には受けざるを得なくなるのではないだろうか。むしろ、どういう内容をFTAに盛り込むかが大事である。米国の要求項目の交渉に終始するという受け身ではなく、対中国を睨んだルールを日米共同でモデルを作るとの「攻めの発想」を盛り込むことも必要だろう。
・もちろんその前に11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に、TPP11を固められることが大前提で、そのうえで日米2国間に臨むという基本戦略は揺るがせてはならない。そして「農業分野の関税などでTPP以上の譲歩をしない」という土俵で最後まで踏ん張り切れるかが試される。
・来年秋には米国は中間選挙を控えて、議会や産業界の圧力も増してくる。そのことを考えると、来年前半が日米FTA向けて具体的に動き出す可能性が高いのではないだろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/101900752/?P=1

次に、RPテック(リサーチアンドプライシングテクノロジー)株式会社代表取締役の倉都康行氏が11月2日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「トランプは北朝鮮安保の見返りで日本にどんな経済的譲歩を迫るか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月5日にいよいよトランプ大統領が日本を訪れる。その主たる目的である北朝鮮への対応協議は米国政府にとっても最重要な課題であり、相当に熱のこもった外交になると思われる。一方で日本は、対北朝鮮では米国の軍事力や対中外交戦略に依存せざるを得ず、「安保」の見返りとして、貿易自由化や為替(円安)問題などを持ち出されれば、米国の要求に「受け身」にならざるを得ないことになる。
▽「安保」の見返りに対日貿易赤字改善を迫る可能性
・今回のアジア歴訪は、日本を皮切りに韓国、中国、ベトナム、フィリピンと5ヵ国を1週間で飛び回る慌ただしいスケジュールだが、日本では拉致被害者の家族との面談や駐在米軍視察の予定が組まれており、北朝鮮を強く意識した訪日になることが予想されている。
・だが、貿易収支問題に執拗な執着心を寄せるトランプ大統領は、北朝鮮問題を最優先に置きつつも「日米間には解消すべき経済問題がある」との方針を強調することも忘れないだろう。 金総書記に対する強硬な姿勢を採ることで日本の安全保障を確約する見返りとして、暗に防衛費の拡大を求めるだけでなく、なかなか縮小しない対日貿易赤字の改善を迫ることは確実だ。
・国内では、米国が大統領訪問時に日米自由貿易協定(FTA)の早期締結への圧力を掛けるのではないか、との懸念が強まっている。 2016年に日米を含む12ヵ国で合意された環太平洋パートナーシップ(TPP)に対し、トランプ大統領は就任早々に離脱を表明、年間700億ドルにのぼる対日貿易赤字を一刻早く是正すべきだとして、新たな貿易協定の締結を望んでいるからだ。
・同大統領の「アメリカファースト」の姿勢からすれば、二国間交渉の舞台は米国が一方的な強硬姿勢で主役を演じるシナリオとなるだろう。 保護主義を扇動してきた主席戦略官のバノン氏が更迭されるなど、現政権は当初思われていたほどに反自由貿易主義的ではない、との見方も出始めているが、通商問題を担当するロス商務長官やライトハイザ―USTR(通商代表部)代表らの顔ぶれを見る限り、貿易赤字縮小を迫る強引な手法は常に手の内に準備されていると考えていた方が現実的である。
▽日本とのFTA締結は優先順位が低そうだが
・ただし、昨今のトランプ政権での通商問題の優先順位を付けるとすれば、喫緊の課題は北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉と米韓FTAの見直しであり、その次に来るのは中国との貿易収支不均衡の是正だろう。 先月に来日したローズ米副大統領補佐官は日米間での貿易・投資に関する新ルールの早期締結が必要との認識を示していたが、実際には、日本とのFTA締結はそれほどプライオリティが高くないようにも見える。
・NAFTAに関しては、自動車関税などにおけるカナダ、メキシコ両国と米国の考え方に大きな隔たりがあり、決着の見通しが見えないままの状況が続いている。3ヵ国は年内の妥結を断念し、具体的な協議の再開を来年第1四半期に持ち越している。
・また中国との通商協議は北朝鮮への制裁強化策次第だが、誤解を恐れずに言えば、今回のトランプ大統領のアジア歴訪の最大の山場は習近平総書記との対北朝鮮対応の協議であり、貿易不均衡や知的財産権などの経済問題は副次的な位置付けに止まるだろう。
・こうした状況では、今回の訪日に限って言えば、米国は日本とのFTA協議を急ぐムードにはないと思われる。何よりも米国経済は7-9月期も前期比年率3.0%成長と4-6月期の3.1%に続いて2期連続の3%台成長を達成し、主要株価指数が連日最高値を更新するなど、焦って通商交渉をまとめる必要は全くない状況にある。
・だが、安倍首相も安心ばかりしてはいられない。 総選挙で「国難」とまで言い切った北朝鮮問題に関して日本に打てる策はほとんどなく、米国の軍事力と対中外交戦略に依存するしかない現状では、トランプ大統領に対して有効なカードは一枚も持っていないからだ。 国内では「一強」と呼ばれる安倍首相も、トランプ大統領が「貿易赤字縮小を」と一言唱えれば、何らかの譲歩策を差し出さざるを得ない。
・ちなみに今年4月18日に始まった「日米経済対話」では、麻生副総理兼財務相とペンス副大統領が「自由で公正なルールに基づく貿易・投資」の必要性を確認したものの、10月16日に行われた第2回会合ではインフラ整備、エネルギー分野やデジタル・エコノミー分野での連携などを謳っただけで、FTAには表向きは触れずじまいだった。
・だが舞台裏では、ペンス副大統領がFTA交渉開始を強く迫ったとも言われており、トランプ大統領が首脳会談において具体的に言及する可能性もないとは言えない。 米国側も、来年秋の中間選挙が徐々に視野に入って来ることから、来年上半期までには通商問題で一定の成果を挙げたいとの思いが強い筈だ。
▽自動車、牛肉、医薬品は関心事項 時間をかけて成果求める
・昨今の動向からすれば、米国が強く要求して来るのは自動車の非関税障壁撤廃、牛肉市場の完全開放、医薬品の価格改定制度見直し、といった項目だろう。 特に牛肉に関しては、既に日本は豪州と経済連携協定(EPA)を締結済みで、関税が段階的に引き下げられる見通しとなっており、米国には出遅れ感がある。  自動車に関しては「日本には米国車がほとんど走っていない」と何度も不満を口にしてきたトランプ大統領が、今回の訪日でも、そんな発言を繰り返すかもしれない。
・もっとも、今年4月に公表されたUSTRの外国貿易障害報告書には、この他にもコメ・小麦・豚肉・乳製品・柑橘類・水産物といった農産・畜産関係から、金融・電気通信・法務・教育などサービス業関連などに至るまで、幅広い分野で「貿易障害が存在する」と指摘されている。 具体的な譲歩の要求が上記3項目以外に広がることは十分に有り得よう。
・これらのリストは2016年のTPP協議の際に既に言及されていたものだが、具体的な対日交渉で、トランプ政権が前政権以上の強烈な圧力を掛けてくることはほぼ確実である。 ライトハイザ―USTR代表は、レーガン政権下でUSTR次席代表として対日交渉で剛腕ぶりを発揮し、日本に鉄鋼輸出の自主規制を呑ませた「実績」がある。今回も妥協を急ぐことなく、じっくり時間をかけて日本を締め上げる作戦なのかもしれない。
▽円安・為替問題で日本は通貨政策の「監視対象」国
・日米間の経済的な課題は、通商問題に限定されるものではない。 為替レート問題は日本政府にとって触れてほしくない話題だろうが、米国はユーロや人民元と同じように、日本円の割安水準に対して常に不満を抱いている。
・今年4月に発表された米財務省の為替報告書で、日本は中国・ドイツ・スイス・韓国・台湾と並んでその通貨政策が「監視対象」と位置付けられ、「円は過去の平均に比べて20%弱い水準にある」と明記されていた。  今春のドル円相場は110円前後であり、20%の円高調整となれば約90円となる。現在は114円と若干ながらも更なる円安方向へと動いている。 今年のドルは総じて軟調傾向にあり、ユーロは対ドルで年初の1.04ドルから一時は1.20ドルと約15%上昇、人民元も6.96元から一時6.43元まで約8%上昇するなど「監視された通貨」が上昇する中で、円は下落傾向を辿っているため、米国がこの問題を再提起し始める可能性は否定できない。
▽1ドル=115円突破となれば大統領の「円安口先介入」も
・一方、日本市場では株高と同時に円安への期待も膨らみ始めている。 だが米連邦準備制度理事会(FRB)が着々と利上げを続け、バランスシート縮小を始める一方で、日銀が従来の「異次元緩和」という超金融緩和策を変更する可能性は乏しく、先の総選挙で安倍政権への支持が確認されたこともあって、日本の金融政策に転換点が到来することはまず考えられない。
・となると、日米の金利格差の点では、円の対ドルレートは確かに一段と円安へ向かってもおかしくない力学が働いている。 安倍政権は、物価目標が低迷している中で大規模な金融緩和を続けることに対しては、米国を含む世界各国が理解していると説明し続けてきたが、米欧ともに物価目標が未達の状況で正常化を目指し始めた以上、どこまでその理屈が通るのかは疑わしいところもある。
・日本株が上り調子になっているところに、「円安牽制」などで水を差されたくないだろうが、仮にドル円が115円を突破するような動きになれば、トランプ大統領の口先介入を避けて通るのは難しいかもしれない。
▽経済問題と北朝鮮問題はコインの裏表
・日本政府は本来、トランプ大統領を向いて仕事するのではなく、国民生活を直視した経済政策を中期的な視点で設定するべきである。それが総選挙で勝利した与党の責任でもあろう。 だが、9月の国連演説で「北朝鮮には対話でなく圧力で」と述べて、自ら対米従属以外の選択肢を捨ててしまった安倍首相が外交方針を軌道修正しない限り、日本経済はトランプ政権の「貿易赤字是正」との不当な圧力に押され、抵抗できないままに不必要な市場開放や為替レート水準訂正などに追い込まれるリスクに直面することも有り得る。
・日米関係において、北朝鮮問題と経済問題は実はコインの裏表なのだ。 日本経済はいま、好調な外需に恵まれて「いざなぎ景気」を超える景気拡大の基調にあり、雇用環境や企業業績は絶好調と言ってもいい状態だ。日経平均の連騰は、決してバブルや幻想ではなく、民間企業の実力が評価されたものだ。
・安倍首相は、この好況感を潰すことなく長期政権を目指すことが、果たしてできるのだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/147937

第三に、政治評論家の田原 総一朗氏が11月2日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「トランプは訪中で「ポスト金正恩」を話し合う 米国は北朝鮮を「第2のイラク」にしたくない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月5日にトランプ米大統領が来日する。安倍晋三首相と首脳会談を行うほか、拉致被害者の横田めぐみさんの父・滋さんと母・早紀江さんと面会することも予定に組まれている。 これについて、拉致被害者の家族たちは非常に喜んでいるという。ただ、トランプ氏の面会は一種のサービスに過ぎない。その見返りに、トランプ氏は日本に非常に厳しいことを要求してくるのではないかと思う。
・一つは、経済だ。個別分野では、まず自動車だろう。麻生太郎財務相が10月中旬に訪米し、ペンス副大統領とロス商務長官と会談をした時、麻生氏は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱する意向を示していたトランプ政権に対して「TPP離脱を見直したらどうか」と伝えようとした。
・そもそも日本がTPPに加盟したのは、オバマ前大統領から「日本もぜひ参加するように」と強い要請があったからだ。TPPは、米国にとってもメリットが多分にあるはずである。離脱は撤回したらどうか。麻生氏はそのように訴えようとしていた。
・ところが、ペンス副大統領とロス商務長官は交渉の余地を与えず、非常に厳しいことを突きつけてきた。「年間約700億ドルある対日貿易赤字を限りなくゼロにしたい。そのために、日本はもっと米国産の車を輸入しろ」「日本は非関税障壁が非常に高い。安全基準や環境規制などをもっと緩めるべきだ」などと要求したようだ。
・しかし、日本は米国産の車に対して特に非関税障壁を高くしているわけではない。ドイツ車などはどんどん輸入されている。つまり、問題は非関税障壁ではなく、米国の自動車メーカーが日本人のニーズに合う車を作っていないことだと言える。
・次に、米国産牛肉の輸入についても触れるだろう。具体的には、日本が8月に発動した米国産冷凍牛肉の緊急輸入制限(セーフガード)の見直しだ。 さらには、薬価制度の見直しも迫ってくるといわれている。例えば、米国の製薬メーカーが日本に新薬を導入しやすくすることなどを狙っている。
・その上で、米国は日米自由貿易協定(FTA)の交渉に進もうとしているのだろう。今回の訪日では、日米FTAについて進展はないとの見方が強まっているが、いずれは厳しい条件を提示してくることは間違いない。 日本側としては、日米FTAの締結には反対が強い。交渉で米国のペースに巻き込まれる可能性が高いからだ。特に、農水省は断固反対の立場である。
▽対話と武力行使、2つに割れるトランプ政権
・もう一つの焦点は、北朝鮮問題だ。一体、トランプ氏は日本に何を要求するのだろうか。 米国政府では、北朝鮮問題の対応について二つの見方がある、一つは、「米朝のトップ会談で解決すべきだ」という意見だ。マティス国防長官とティラーソン国務長官は、この選択肢を支持している。 米国が下手に武力行使に踏み切れば、北朝鮮がどんな報復措置を取るか分からない。その時、韓国や日本に多大な被害が出る可能性がある。 それを避けるために、マティス氏やティラーソン氏は、トップ会談での解決を考えている。
・9月末、ティラーソン氏が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。そこで米朝対話について、「私たちは厳密に調査している。期待してほしい。(北朝鮮に)話し合いたいか、と聞いている。平壌とは複数の外交ルートがあり、暗い状況ではない」などと発言したと報じられている。
・ところが、トランプ大統領はその発言に大激怒した。「冗談じゃない。対話などをやれば、北朝鮮に核開発の時間を稼がせるだけだ」ということだ。 トランプ氏とティラーソン氏の関係は、悪化しているのではないか。米国内では、近々国務長官を解任するのではないかという憶測が広がっている。 それに加え、ティラーソン氏がトランプ氏を「ばか」と呼んだことも話題になった。ティラーソン氏がその報道を否定していないところを見ると、両者の溝が深まっている可能性は高い。
・だから、トランプ氏は今回のアジア歴訪にティラーソン氏を同行させないのではないかとの見方もある。今のところ、外務省が得ている情報では、ティラーソン氏はトランプ氏と一緒に訪日するという。ただ、外務省関係者は「トランプ氏のことだから、いつどうなるか分からない」と述べている。
・なぜ、トランプ氏は北朝鮮との対話に反対しているのだろうか。 トップ会談になると、結局、米国が北朝鮮に対して「核廃棄」を迫れないからだろう。日本の専門家の間でも、仮に米朝トップ会談に漕ぎ着けたとしても、最終的には核廃棄ではなく、「核凍結」にとどまるのではないかという意見が多い。
・なぜ、北朝鮮が核兵器を放棄しないのかといえば、かつてのイラクやリビアの惨状を見て、核兵器は強力な抑止力となることをよく分かっているからだ。核兵器を持てば、米国は攻撃をしてこない。核兵器を廃棄すれば、すぐにやられてしまう。だからトップ会談では、北朝鮮は核廃棄の要求を絶対にのまないだろう。
▽北朝鮮の後処理は、中国に任せようとしている
・となれば、米国に残された道は、武力行使しかないのだろうか。 10月27日、マティス氏は韓国を訪れ、文在寅大統領と面会した。そこで「朝鮮半島の非核化を成し遂げることを目指している」と述べている。つまり、米国は北朝鮮の核保有を絶対に認めないと念を押したわけだ。
・そこで、トランプ氏は日本に何を求めてくるのか。 トランプ氏は、安倍首相に「米国が武力行使をする際は、日本に事前に伝える」と言ったという話がある。外務省と防衛省は、いよいよ武力行使が現実味を帯びてきたと戦々恐々としている。
・先日、僕は防衛省の高官に「結局、米朝問題はトップ会談になるんじゃないかな」と言ったら、「田原さん、それは甘い。そうじゃない可能性もありますよ」という答えが返ってきた。 10月下旬、親日派のリチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ元米国防次官補が来日した。その時、アーミテージ氏は「米国が北朝鮮を武力行使する可能性は、4分の1くらいある」と言ったという。
・今回のトランプ氏のアジア歴訪では、一部に習近平氏との対談で武力行使の後の話をするのではないかという見方がある。 米国が想定する武力行使とは、爆撃によって金正恩とその側近たちを殺害することだ。できる限り一般市民を巻き込まないように配慮すると思われる。あくまでも、狙いは金正恩政権だ。
・では、その後はどうするか。おそらく、中国に「後処理」を任せるのではないかと思う。ポスト金正恩をどうするのか。北朝鮮の体制をどのように建て直すのか。そこを中国に一任する。この点を、今回の訪中で確認するのではないかと思う。
・米国は、北朝鮮を「第2のイラク」にはしたくないと考えている。 かつて米国はイラク戦争を起こし、フセインを打ち負かした。ここでフセイン政権を倒せば、国民が安心して新しい政権をつくり、民主的なイラクが生まれると思ったわけだ。 ところが、実際は違った。周知の通り、フセインを倒したらイラクは大混乱に陥った。日本のように、敗戦後に戦時中の体制を潰し、民主主義の国をつくろうとしたが、完全に失敗したのである。
・だから、金正恩体制を倒した後、北朝鮮の体制は中国に任せて混乱を回避するのがベストだと考えている。 中国としては、北朝鮮という「外交カード」は手放したくないから、体制は維持したいだろう。ただ、コントロール不能となっている金正恩に対しては、不満を抱いている。金正恩は、中国と太いパイプのあった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長も処刑してしまった。
・その点を考えると、習近平は、北朝鮮のレジーム・チェンジ(体制転換)には賛同するのではないかと思う。米国も中国の思惑を十分に分かっているから、後処理を任せようと持ちかける。 今回、トランプ氏が訪中する目的の一つには、そういったすり合わせもあるのではないかと思われる。 まずは、11月5日の訪日で、トランプ氏からどんなことが語られるのかに注目したい。僕としては、「武力衝突を了解せよ」という話にならないことを願っている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/110100044/?P=1

第一の記事で、 『具体的な個別利益で成果を出すことにしか関心がない。そこには戦略のかけらもない。 戦略を語るべき国務省の政府高官が未だ任命されておらず、米通商代表部(USTR)が主導すると、米国はこういうパターンに陥りがちだ』、というのは困ったことだ。 『米国が一方的措置を中国に対して持ち出すことによって、中国に今後のお墨付きを与えかねない。日本としてはそのリスクを米国に気付かせる必要がある』、というのはその通りだ。 ただ、 『どういう内容をFTAに盛り込むかが大事である。米国の要求項目の交渉に終始するという受け身ではなく、対中国を睨んだルールを日米共同でモデルを作るとの「攻めの発想」を盛り込むことも必要だろう』、というのは、言葉だけが踊って、中身は薄そうだ。
第二の記事で、 『日本は、対北朝鮮では米国の軍事力や対中外交戦略に依存せざるを得ず、「安保」の見返りとして、貿易自由化や為替(円安)問題などを持ち出されれば、米国の要求に「受け身」にならざるを得ないことになる』、 『通商問題を担当するロス商務長官やライトハイザ―USTR(通商代表部)代表らの顔ぶれを見る限り、貿易赤字縮小を迫る強引な手法は常に手の内に準備されていると考えていた方が現実的である』、 『9月の国連演説で「北朝鮮には対話でなく圧力で」と述べて、自ら対米従属以外の選択肢を捨ててしまった安倍首相が外交方針を軌道修正しない限り、日本経済はトランプ政権の「貿易赤字是正」との不当な圧力に押され、抵抗できないままに不必要な市場開放や為替レート水準訂正などに追い込まれるリスクに直面することも有り得る』、などの厳しい指摘はその通りなのかも知れない。
第三の記事で、 (拉致被害者の家族と)、『トランプ氏の面会は一種のサービスに過ぎない。その見返りに、トランプ氏は日本に非常に厳しいことを要求してくるのではないかと思う』、 『今回の訪日では、日米FTAについて進展はないとの見方が強まっているが、いずれは厳しい条件を提示してくることは間違いない』、などの指摘は、やはり覚悟しておくべきなのだろう。  『米国に残された道は、武力行使しかないのだろうか』、 『外務省と防衛省は、いよいよ武力行使が現実味を帯びてきたと戦々恐々としている』、などの指摘は、総選挙実施などで、武力行使の可能性は小さくなったと思い込んでいた私にとっては、意外で、身が引き締まるものであった。 『僕としては、「武力衝突を了解せよ」という話にならないことを願っている』、というのは同感だ。
タグ:北朝鮮問題に関して日本に打てる策はほとんどなく、米国の軍事力と対中外交戦略に依存するしかない現状では、トランプ大統領に対して有効なカードは一枚も持っていないからだ 9月の国連演説で「北朝鮮には対話でなく圧力で」と述べて、自ら対米従属以外の選択肢を捨ててしまった安倍首相が外交方針を軌道修正しない限り、日本経済はトランプ政権の「貿易赤字是正」との不当な圧力に押され、抵抗できないままに不必要な市場開放や為替レート水準訂正などに追い込まれるリスクに直面することも有り得る 田原 総一朗 トランプは訪中で「ポスト金正恩」を話し合う 米国は北朝鮮を「第2のイラク」にしたくない 日米関係において、北朝鮮問題と経済問題は実はコインの裏表 通商問題を担当するロス商務長官やライトハイザ―USTR(通商代表部)代表らの顔ぶれを見る限り、貿易赤字縮小を迫る強引な手法は常に手の内に準備されていると考えていた方が現実的である 回の訪日に限って言えば、米国は日本とのFTA協議を急ぐムードにはないと思われる 安倍首相も、トランプ大統領が「貿易赤字縮小を」と一言唱えれば、何らかの譲歩策を差し出さざるを得ない ペンス副大統領がFTA交渉開始を強く迫った 習近平氏との対談で武力行使の後の話をするのではないかという見方 1ドル=115円突破となれば大統領の「円安口先介入」も 円安・為替問題で日本は通貨政策の「監視対象」国 トランプ氏とティラーソン氏の関係は、悪化しているのではないか トランプ氏の面会は一種のサービスに過ぎない。その見返りに、トランプ氏は日本に非常に厳しいことを要求してくるのではないかと思う 。「年間約700億ドルある対日貿易赤字を限りなくゼロにしたい。そのために、日本はもっと米国産の車を輸入しろ」「日本は非関税障壁が非常に高い。安全基準や環境規制などをもっと緩めるべきだ」などと要求したようだ。 米国産牛肉の輸入についても触れるだろう 対話と武力行使、2つに割れるトランプ政権 日本の専門家の間でも、仮に米朝トップ会談に漕ぎ着けたとしても、最終的には核廃棄ではなく、「核凍結」にとどまるのではないかという意見が多い トップ会談になると、結局、米国が北朝鮮に対して「核廃棄」を迫れないからだろう 習近平は、北朝鮮のレジーム・チェンジ(体制転換)には賛同するのではないかと思う 、米国に残された道は、武力行使しかないのだろうか 拉致被害者の家族 倉都康行 ダイヤモンド・オンライン インターネット安全法も日米産業界の脅威だ トランプ訪日直前の日米関係 「中国の脅威」と「アジアの機会」という2大テーマ 米国の関心は貿易赤字削減だけ LNG協力も「アジアの機会」 日本の戦略 (どうなる?トランプ訪日と日米FTA交渉、トランプは北朝鮮安保の見返りで日本にどんな経済的譲歩を迫るか、トランプは訪中で「ポスト金正恩」を話し合う) 細川昌彦 、対北朝鮮では米国の軍事力や対中外交戦略に依存せざるを得ず、「安保」の見返りとして、貿易自由化や為替(円安)問題などを持ち出されれば、米国の要求に「受け身」にならざるを得ないことになる 日経ビジネスオンライン どうなる?トランプ訪日と日米FTA交渉 日米経済対話から読み解く日米中の水面下の駆け引き トランプは北朝鮮安保の見返りで日本にどんな経済的譲歩を迫るか 中国の脅威」にどう向き合うか 日米経済対話の第2回会合 今や中国こそが、「一方的措置」を振り回す恐れがある最大の国となっている 外務省と防衛省は、いよいよ武力行使が現実味を帯びてきたと戦々恐々としている 米国が一方的措置を中国に対して持ち出すことによって、中国に今後のお墨付きを与えかねない。日本としてはそのリスクを米国に気付かせる必要がある その後はどうするか。おそらく、中国に「後処理」を任せるのではないかと思う 具体的な個別利益で成果を出すことにしか関心がない。そこには戦略のかけらもない。 戦略を語るべき国務省の政府高官が未だ任命されておらず、米通商代表部(USTR)が主導すると、米国はこういうパターンに陥りがちだ どういう内容をFTAに盛り込むかが大事である。米国の要求項目の交渉に終始するという受け身ではなく、対中国を睨んだルールを日米共同でモデルを作るとの「攻めの発想」を盛り込むことも必要だろう 米国は未だそういう思考回路になっていないのが現状である。残念ながら、今のトランプ政権にはそういう戦略を噛み合って議論をする相手を見つけることさえ難しいのかもしれない
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