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自衛隊が抱える問題(防衛問題)(その6)(「新品」を欲しがる自衛隊的発想 米陸軍少将が批判、防衛装備品“爆買い”の愚 元米軍人「ミサイル迎撃は困難」、「ポンコツ戦闘機」F35 こんなに買っちゃって本当に大丈夫?、航空自衛隊が「もう限界」事故続発) [国内政治]

自衛隊が抱える問題(防衛問題)については、8月28日に取上げたが、今日は、(その6)(「新品」を欲しがる自衛隊的発想 米陸軍少将が批判、防衛装備品“爆買い”の愚 元米軍人「ミサイル迎撃は困難」、「ポンコツ戦闘機」F35 こんなに買っちゃって本当に大丈夫?、航空自衛隊が「もう限界」事故続発) である。

先ずは、ガバナンスアーキテクト機構研究員の部谷 直亮氏が10月20日付けJBPressに寄稿した「「新品」を欲しがる自衛隊的発想、米陸軍少将が批判 「新装備を買う前に、もっと維持整備を考えよ!」」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・近年、自衛隊の装備調達が「維持費」を無視しているとして批判を受けている。実際に、それは自衛隊の装備品の稼働率を低下させ、また現場を苦労させることにもつながっている。
・こうした中、米陸軍安全保障援助コマンドの司令官がそうした発想を批判するインタビューが公表された。同司令官は、153カ国に対する1720億ドル(約19.4兆円)・5300件以上の米陸軍系装備品の提供と維持整備指導を担当している。 今回はその批判の概要を紹介し、我が国にとってどれほど重要な意味をもっているのかを論じたい。
▽その装備は本当にその国に必要なのか?
・米陸軍安全保障援助コマンド司令官、ステファン・ファーメン少将は、軍事情報サイト「ディフェンスニュース」(10月11日付)の中で、同盟国が予算の使い方を変えてもっと防衛装備品の維持を重視するよう早急に議論を始めるべきだとの考えを明らかにした。
・ファーメン少将は次のように述べる。 「(私の職務は相手国の陸軍に対して援助をすることだが)、世界各国の同盟国やパートナー国を訪ねていていつも思うのは、彼らはピカピカの装備ばかりを追いかけて、維持整備への投資が不足しがちだということだ。それは、多数の問題を生じさせる。
・我々は、同盟国のアパッチ戦闘ヘリやブラックホーク輸送ヘリが調達までに5年もかかったり、維持整備の失敗により、稼働できずに置物状態になることを望んでいない。仮にその国で20機のブラックホーク輸送ヘリが必要だとしても、これを18機にすれば、次の10~15年間、十分に維持整備をしてすべて稼働させられるだろう。 だからこそ、我々はこうした意味のある議論を早急に開始しようとしているのだ」
・またファーメン少将は、自分たちの任務は、その装備が本当にその国に必要なのか、どのように維持整備していくか、をアドバイスするのみならず、既存の装備の可能性を広げてあげることでもあると述べている。  これは、マティス国防長官が述べたように、民生品のIoT化と同じく、古いプラットフォーム(車両・航空機・艦船等)であってもちゃんと維持整備しておけば、新しいIT技術を取り入れることで強力な装備品にできるということである。
▽自衛隊にとっては耳が痛い指摘
・ファーメン少将の見解は、同盟国やパートナー国が、安易な「新品」志向によって防衛装備品を維持できなくなっている状況を指摘したものである。この指摘は非常に重い意味を持つと言えよう。
・以下では、ファーメン少将の指摘から読み取るべき3つのポイントを挙げてみたい。
(1)「維持整備」も製品である
+発展途上国や新興国を中心に、米国の装備品を買い込んだものの使えなくなっている事例が多発している。特にイラクやアフガンでは、米軍が撤退した駐屯地を装備事引き継いだがすぐに使えなくなってしまった事例が過去に相次いだ。そこで、武器輸出を目指す我が国も、維持整備も含めて売り込む必要があることを肝に銘じなければならない。そして、それは自衛隊と同じ装備を、自衛隊のシステムで何十年も稼働し、維持整備を通じて、当該国との何十年にもわたる「強固な絆」ができることをも意味している。
(2)自衛隊の維持整備軽視も改めるべき
+ファーメン氏の指摘は、まさしく自衛隊的発想を批判したものだと言うことができる。 例えばグローバルホークを調達したものの、その維持費は当初の想定を上回っている。また、V-22オスプレイやAAV7などの新規調達が防衛装備品の維持費を圧迫している。同時に、部品枯渇の問題は3自衛隊に共通しており、稼働できなくなる自衛隊の装備が増えてきている。
+元航空自衛隊空将であり、空自補給本部長を務めた吉岡秀之氏も「軍事研究」2016年10月号で、空自では予算における優先順位の低さや契約およびマネジメントの問題から、部品の在庫不足が発生しており、その結果、別の機体から部品を取り外して流用する「共喰い整備」を行い、空自装備の稼働率が低下していると指摘している。
+また、朝日新聞(2017年4月13日付)は、F-35戦闘機、V-22オスプレイ、E2D早期警戒機の4機種の維持費だけで年間800億円が消えるとしている。これに今後、誰も膨大な維持費を指摘せずに無責任に持ち上げている「イージスアショア」等が続けば、どれだけの維持費(特にイージスアショアは警備費や人事配置なども含めて膨れ上がる)がかかり、そして、どれだけその他の防衛装備品や「人員」の維持費を圧迫することになるか目に見えている。
+ファーメン少将の指摘はこうした自衛隊の現状を図らずも批判したものであり、重く受け止めるべきである。少なくとも、正面装備の調達数を削減し、それを3Dプリンタの現場での運用および研究、もしくは部品の在庫なりに振り向ける努力が必要だろう(自衛隊の3Dプリンタ活用への取り組みは、世界の中で大きく後れをとっている)。
(3)プラットフォームが新品である必要はない
+古いプラットフォームであっても、きちんと維持し、新しい技術に基づいた改良をするなり装備を載せれば強靭化できるという発想が重要である。実は、こうしたファーメン少将の発想は最近の流れでもある。もはやプラットフォームが新品である必要はなく、その上のソフトウエアや武装が最新鋭であることが重要なのだ。
+実際、米軍はB-52やC-17、台湾軍は潜水艦やミサイル、オランダ海軍は旧式艦艇、韓国やポーランドは旧式戦闘機などの部品を3Dプリンタで製造し、しかも能力向上と低コスト化に成功している(一体成型で作成できるため、強度を増加しつつ軽量化を実現できる)。古いプラットフォームの大きな可能性に、防衛省自衛隊はもっと注目すべきであろう。
・いずれにせよ、ファーメン少将の指摘は今後の防衛装備調達でより意識されてしかるべきである。我が国としても重く受け止めるべき大事な視点と言えるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51388

次に、11月10日付け日刊ゲンダイ「防衛装備品“爆買い”の愚 元米軍人「ミサイル迎撃は困難」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・9日、外国特派員協会で、宇宙関連事業のコンサルティング会社社長のランス・ガトリング氏が「北朝鮮のミサイルと核」をテーマに講演した。ガトリング氏は、米陸軍で北東アジア地域の軍事問題について米国と日本の連絡担当を務めた軍事専門家でもある。
・トランプ米大統領は、6日の日米首脳共同記者会見で「(米国からの)軍事兵器購入が完了すれば、安倍首相は北朝鮮のミサイルを撃ち落とせる」と胸を張っていたが、ガトリング氏は講演でこう語った。 「北朝鮮の大陸間弾道ミサイルを日本は迎撃できるのかと問われたら、答えは“ノー”です。(迎撃するには)どこからどこへ発射されるのか『正確』に捕捉しなければなりませんからね。加えて、北朝鮮が日本の上空に向けてミサイルを飛ばすときは、ほぼ真上に発射するロフテッド軌道になります。高高度を飛翔し落下スピードが速いため、通常軌道よりも迎撃が難しい。迎撃にセカンドチャンスはありません。当然ながら、推測ではどうにもできないのです」
・北朝鮮のミサイル技術については、こんな見方を披露した。 「北朝鮮のミサイルは短・中・長距離どれをとってもソ連やウクライナ、エジプトなどの技術や部品が組み合わされています。アメリカやイギリス、日本の精密部品も使われています」(ガトリング氏)
・元米陸軍人が「迎撃は難しい」と断言する一方で、安倍政権はすでに1基800億円の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を決めている。またカモられるだけか……。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/217373/1

第三に、東京新聞論説兼編集委員で防衛庁担当の半田 滋氏が11月11日付け現代ビジネスに寄稿した「「ポンコツ戦闘機」F35、こんなに買っちゃって本当に大丈夫? やっぱり日本はアメリカの金ヅルか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽本国アメリカでも問題が続々発覚
・トランプ米大統領の就任後、初めてとなるアジア歴訪の旅は「親愛なるシンゾウ」が一強体制を誇る日本から始まった。安倍晋三首相が先に来日した娘のイバンカ大統領補佐官をもてなし、57億円のカネを寄付することでトランプ一家を懐柔して用意万端。 来日したトランプ大統領は「日本の玄関口」である羽田空港ではなく、「日本占領のシンボル」ともいわれる首都・東京に置かれた横田基地に大統領専用機で降り立った。安倍首相とともにご機嫌にゴルフをし、翌日には日米首脳会談に臨んだ。
・会談後の共同記者会見で、トランプ氏が力を込めたのは、日本に武器購入を迫った場面。「非常に重要なのは、日本が膨大な武器を追加で買うことだ。我々は世界最強の武器をつくっている」とのセールス・トークから切り出し、「完全なステルス機能を持つF35戦闘機も、多様なミサイルもある」と具体的品目の購入を迫った。
・一方の安倍首相は「日本は防衛力を質的に、量的に拡充しなければならない。米国からさらに購入していくことになる」とあうんの呼吸で応じ、トランプ氏が列挙したF35や新型迎撃ミサイルのSM3ブロック2Aなどを購入することを挙げた。 はい、出ましたF35。 F35は、来年3月には青森県の航空自衛隊三沢基地に配備されることが決まっているものの、米国で自衛隊に渡された機体はソフトウェアが未完成なため、機関砲も赤外線ミサイルも撃てず、領空侵犯に対処する緊急発進待機の任務につけないことが判明している(参照:現代ビジネス2017年10月5日寄稿「自衛隊の次期戦闘機・F35、実は『重要ソフト』が未完成だった」)。
・今のところ、戦闘機というより「ただの飛行機」に近いF35をもっともっと買えというのだ。F35は来年度防衛費の概算要求では1機あたり147億円もする。すでに42機を米国から買うことになっているのだが…。 実はF35をめぐっては、トランプ大統領の訪日直前にも、米国内で深刻な問題が浮上していた。訓練ができないほどの深刻な部品不足と、整備体制の遅延である。
・米国会計検査院(GAO)は10月26日、部品不足により、機体の整備や修理に当初目標の約2倍に当たる約172日を要しているとの事実を指摘。この結果、今年1月から8月7日までの時点で、予定していた飛行訓練は計画の約22%が実行できなかったと影響の大きさを指摘した。 また、昨年のうちに完成予定となっていた関連部品の整備修理施設の建設は大幅に遅れ、完成は2022年までずれ込むとした。その結果、18年からの6年間で維持費が約15億㌦(約1700億円)不足する見込みとなり、整備体制はさらに悪化するとの悲観的な見通しを示している。
・このように、開発を進めた本家の米国でも問題が噴出しているのである。 そもそもF35は空軍、海軍、海兵隊と三者の異なる要求を基本設計に取り入れた結果、機体構造が複雑になり、重量増という戦闘機としての致命傷を負った。燃料を満載すると、エンジンが1個の単発にもかかわらず機体重量は35㌧にもなり、エンジン2個のF15戦闘機の40㌧に迫る。
・その鈍重ぶりは「曲がれず、上昇できず、動けない」と酷評され、2015年には40年も前に開発されたF16戦闘機との模擬空中戦で負けるという失態を演じている。 つまり、F35は「最先端」とは言っても、衛星や他の航空機が集めた情報を統合する攻撃システムの「先端」でしかなく、団体戦なら能力を発揮するものの、個人戦では驚くほど弱いことが証明されているのだ。
・こんな戦闘機に日本の防空を担わせようという航空自衛隊もどうかしているが、「もっと買え」というトランプ氏も相当に面の皮が厚いといわなければならない。
▽「日本製」なのにアメリカから買う?
・トランプ氏がF35にこだわるのは成功体験があるからだろう。 大統領に当選した後の昨年12月、トランプ氏は自らのツイッターで「F35は高すぎる」とつぶやいた。 すると製造元のロッキード・マーティン社の株価が急落。今年1月、同社のマリリン・ヒューソン最高経営責任者(CEO)はトランプ氏と会談し、F35を大幅に値下げすることを約束した。最終的に90機分の調達費を 7億2800万㌦(約820億円)も値下げしたのである。
・大統領に就任してから約10カ月、上下両院とも与党の共和党が多数を占めるにもかかわらず、重要法案は何一つ成立していない。大統領選で廃止を約束したオバマ・ケア(医療保険制度改革)は残り、税制の見直しもインフラ整備関連法も実現していない。 数少ない成功体験であるF35にすがりたいトランプ氏に対し、贋物をほめる骨董屋の主人よろしく、安倍首相が共感してみせたのが共同記者会見の「武器トーク」だったのではないだろうか。
・「武器トーク」に出てきた、弾道ミサイルを迎撃するSM3ブロック2Aの購入表明も素直には受けとめられない。 イージス艦から発射するSM3ブロック1は米国製だが、改良版にあたるSM3ブロック2Aは日米で共同開発し、日米で部品を生産する日米合作のミサイルである。 弾頭部を熱から守るノーズコーン、第2弾・第3弾ロケットモーター、上段分離部、第2弾操舵部といった精密技術が必要なパーツの開発を日本政府に依頼してきたのは米政府である。とくに宇宙空間に飛び出した後、自然な形で割れるノーズコーンは、下町工場の加工技術がなければつくれない現代の工芸品といえる。
・ところが、このSM3ブロック2Aも米国から購入するのだ。なぜ国内の防衛産業で製造しないのか。 防衛装備庁の堀江和宏統合装備計画官は「国内産業が組み立て施設を持っていないからです。国内で部品を製造して輸出し、米国のレイセオン社で組み立て、完成したミサイルを輸入するほかない」という。
▽返品はできません
・しかも調達方法は、「現代ビジネス」で何度も指摘している通り、悪名高い有償対外軍事援助(FMS)方式である。 FMSとは、米国の武器輸出管理法に基づき、(1)契約価格、納期は見積もりであり、米政府はこれらに拘束されない、(2)代金は前払い、(3)米政府は自国の国益により一方的に契約解除できる、という不公平な条件を提示し、受け入れる国にのみ武器を提供するというものだ。
・買い手に不利な一方的な商売だが、米国製の武器が欲しい防衛省はFMS方式による導入を甘んじて受け入れる。ただでさえ、防衛省のFMSによる調達額は近年極端に増えており、2016年度の米政府への支払い額は過去最高の4881億円に達した。
・当然ながら、問題も噴出している。日本の会計検査院は10月26日、防衛省がFMS取り引きを精査できず、米国の言いなりになってカネを支払っているのではないかと指摘した。 防衛省が2012年度から16年度までにFMSで購入した武器類の不具合は734件(91億9118万余円)ある。このうち12件(3194万円)は、防衛省の担当者と武器を受け取った部隊との間の確認作業などに時間がかかり、米政府が期限とした1年以内を越えて是正要求したところ、米政府から門前払いされた。日本側の大損である。
・例えば、海上自衛隊の要求にもとづき、防衛省がFMSで購入した151億3000万円にのぼるC130R輸送機(6機)と整備器材一式は、最初から整備器材が損傷していた。米政府に問い合わせている間に時間が経過し、修理を求めたにもかかわらず、米政府から「1年が経過している」として却下された。
・防衛装備庁によると、米側に問い合わせても回答すらない場合があり、何度もやり取りするのに時間がかかるという。最初から契約通りの武器類が米政府から送付されていれば、起こり得ない問題ではないだろうか。
・どれほど米政府の理不尽ぶりに腹が立とうとも、国内の防衛産業で同種の武器を製造すれば、開発、生産に膨大な時間とコストがかかる。限られた防衛費をやり繰りする防衛省としては唯々諾々として米政府に従うほかない。とはいえ、必要以上に米国から武器を買う必要がないことは言うまでもない。
・ところが、安倍首相は共同会見の「武器トーク」の中で「米国からさらに購入していくことになる」と述べた。これが事実上の対米公約となり、米政府からの売り込みが加速するおそれがある。 すでに防衛省はFMSで購入したイージス・システムを組み込んだイージス艦2隻を追加建造しているほか、12月には同システムを地上に置いた「イージス・アショア」もFMSでの購入を決める。米国にとって日本は「カネの成る木」に見えているに違いない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53473

第四に、報道ジャーナリストの伊藤 明弘氏が10月21日付け現代ビジネスに寄稿した「航空自衛隊が「もう限界」事故続発、観閲式もぶっつけ本番で!? 人も装備も疲弊しきって…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「完全なオーバーワークだ」
・航空自衛隊に、何が起きているのか。10月17日夜には、静岡県の浜松基地所属の救難ヘリが海上に墜落。翌18日には、茨城県の百里基地でF4戦闘機の主脚が折れて炎上した。 こうした状況下で、本稿執筆中の10月20日午後、22日の日曜日に予定されていた、航空観閲式の予行演習が中止されるという情報が筆者の耳に飛び込んできた(その後、HPでも発表。
http://www.mod.go.jp/asdf/pr_report/airreview2017/)。
・予行演習とはいえ、「観閲式事前公開」といって、メディア関係者など1万人近くを招待しての大イベントだっただけに、一人一人に電話連絡をして中止を伝えた航空自衛隊の苦労は並大抵のものではなかっただろう。 中止の第一の理由は、折あしく接近してくる台風21号による「荒天のため」とされている。だが、浜松沖で行方不明になっている隊員もいる中では、天候がよかったとしても同様の判断が下されたかもしれない。
 各パートごとの予行はそれぞれ行われており、29日の本番も予定通り開かれるというが、全体を通しての予行はない。不測の事態に備えるのが自衛隊とはいえ、「ぶっつけ本番」は正常なこととは言えないだろう。
・連日の重大事故の背景には、何があるのか。隊長経験もある幹部パイロットが、重い口を開いてくれた。  「怖れていたことが現実になってしまった。原因を一言でいえば、完全なオーバーワークだ」 そもそも航空自衛隊には、「専守防衛のための最低限の装備と人員しかない」のだと、この幹部は話す。
・実際、陸・海・空の自衛隊を見比べてみると、大災害の発生時などに警察・消防と協力関係にある陸自や、海上安全の面で海上保安庁と連携している海自など、陸・海には互いに補完する組織がある。だが日本の空には、航空自衛隊しかない。
・ここ数年で複雑化の度合いを増している東アジア情勢は、そんな航空自衛隊への負担をさらに重いものにしている。今年4月から9月までのスクランブル(緊急発進)の回数は、前年度より減少したとはいえ561回。1日3回(出動1回につき発進する戦闘機は2機だ)以上が、「国籍不明機」に対処している。 一時期、多かった中国機が減ったかと思えば、今度はロシア機が増えている。しかもこれまでのように周辺国の戦闘機がやってくるだけではなく、特異なケースも増加した。前出の幹部パイロットは、「爆撃機や情報収集機だけでなく、厄介なドローンも加わっている」と話す。
・さらに加えて、北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返すようになった。幹部パイロットは、この状態は「もはや平時ではなく有事に当たる」と指摘する。 目に見える戦争にならなくとも、いざそうなってしまったときのために、異変が起こるたびに準備をするのが実力組織たる自衛隊の役割ではある。そのため、スクランブルにしても北朝鮮の不穏な動きにしても、何かことが起こるたびに、航空機をサポートすための整備など、支援部隊もフル稼働を強いられている。
・敵の動きを察知すためのレーダーサイトや「北朝鮮の弾道ミサイル対処のためPAC3も臨戦態勢にある」と前出の幹部は明かした。全航空自衛官が、これまで経験した事のない状態にあると言っても過言ではない。
▽高難度の訓練ゆえに起きた事故
・そんなオーバーワークが続く中で、10月17日午後5時50分ごろに航空自衛隊浜松基地を離陸した航空救難団浜松救難隊所属のUH-60J救難ヘリコプターが、約10分後に同基地の南約30kmの遠州灘でレーダーから機影が消えた。 翌18日には「墜落」と公表されたわけだが、ある救難パイロットは「痛恨の極みだ。人命救助のスペシャリストに何があったのかは、フライトレコーダーを回収しないと真実は不明だ」と肩を落とした。浜松救難隊は約70名で編成されており、スローガンは「必ず帰還する」である。
・混乱の中、18日午前11時50分ごろ、今度は百里基地所属の第302飛行隊所属所属のF-4EJ改戦闘機が、誘導路を走行中に左脚部が折れ、主翼や燃料タンクが誘導路に接触、油圧装置の油や燃料などに引火する事故を起こしてしまった。出火直後、搭乗していたパイロット2名は、かろうじて機体から脱出した。 これらの事故の主役となってしまった機体を見比べると、それぞれ異なる事情が浮かび上がってくる。
・まずは、UH-60J救難ヘリコプター、通称「ブラックホーク」。アメリカ軍では1978年から運用され、航空自衛隊では1988年度から調達して全国10基地に36機が配備されている。アメリカでも現役であり、比較的新しい機体だ。 事故機は2015年10月に配備された最新型。空中給油装置を備えている。飛行時間は約440時間と新品同様だ。1機約38億円。
・航空救難団の任務は、自衛隊航空機の搭乗員を救助することを第一義とするが、災害派遣として急患空輸や山岳・海上における遭難者の捜索救助活動にも出動している。 「救難パイロットは他の航空機とは全く異なり、最も高い技能が要求される。高い技能ゆえに、他の組織(消防・警察など)が対応不可能と判断した案件で『最後の頼みの綱』として希望を託されることも多い」(救難ヘリパイロット)  実際、航空救難団は、陸上・海上を問わず2600人以上の救助実績を持つ。
・そんな実績あるパイロットたちにとっても、事故発生の午後6時頃は「魔の時間」だと言っていいだろう。パイロットたちは要救助者を捜索を、最終的には目視で行うのだが、日暮れ時、外はすでに暗闇に支配されている。 そこで彼らは、ヘルメットに装着された暗視装置ごしに海上の様子を覗くことになる。高度や方位は計器に記されるが、「海面ギリギリで飛行すれば、一瞬の狂いで海面に接触してしまうことになる」と救難ヘリのパイロットは指摘する。おそらく今回の事故も、そうした困難な状況での訓練中に発生したと思われる。
▽機体があまりに古すぎて…
・一方、火を噴いたF-4EJ改戦闘機、通称「ファントム」を見てみよう。こちらも元はアメリカ製で、本国では1960年から使用され、ベトナム戦争も経験しており、導入から57年が経っている。 アメリカにおいては、現在は全機が退役しており、標的機(ミサイルの的)として無人飛行されているだけだ。
・そのファントムを、航空自衛隊は1974年から配備しており、国内でも運用開始からすでに43年が経った。そもそも、米本国で生産されたF-4Eを日本向けに改修したF-4EJは、1989年、さらなる延命・能力向上のための改修を経てF-4EJ改となり、90機が防空任務に就いた。現在は徐々に退役して、48機が運用されている。
・しかし、「改」となった際の改造の内容は、主に電子装置の更新と、それにともなう兵装システムの向上だ。今回、事故の原因となった脚部の強化・改良はなかったのである。
・もともとファントムは米海軍機でもあり、航空母艦に着艦するときの衝撃に耐えるため、脚周りは頑丈とされていた。だが、40年以上の時を経て、さすがに金属疲労が進んでいたのではないだろうか……。冒頭の幹部パイロットはこう証言する。 「先進国で、まだファントムを飛ばしているのは日本だけだ。視察に訪れた外国の空軍関係者は一様に驚いている」
・自衛隊機の事故は陸・海・空をあわせてみると、昨年度から数えて10件になる。その他、事故につながりかねない「重大インシデント」も多発するようになっている。 防衛費に限りはあるが、老朽化している機材の更新も焦眉の急だ。民間ではとうの昔に退役したYS-11のような航空機を、未だに使用しているのは自衛隊だけだという事実が、それを物語っている。
・また人員、とくにパイロットの不足にも、早急に手を打たなくてはならないだろう。一人前のパイロットを養成するには最短で6年、その教育には1億円以上が必要だとされる。 短期養成の即席パイロットばかりでは制空権が保てず、戦いにすらならないことは、太平洋戦争の経過を見ても明らかだろう。
・自衛隊を巡っては、選挙戦を含め、憲法問題と絡んでかしましく議論されるが、現場からはそれ以前に、切実な悲鳴が上がっている。議論を深めることには大いに賛成だが、まずはともかくもこの窮状に対処するのが、政治の責任ではないだろうか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53269

第一の記事で、 『V-22オスプレイやAAV7などの新規調達が防衛装備品の維持費を圧迫している。同時に、部品枯渇の問題は3自衛隊に共通しており、稼働できなくなる自衛隊の装備が増えてきている』、 『空自では予算における優先順位の低さや契約およびマネジメントの問題から、部品の在庫不足が発生しており、その結果、別の機体から部品を取り外して流用する「共喰い整備」を行い、空自装備の稼働率が低下していると指摘している』、 『もはやプラットフォームが新品である必要はなく、その上のソフトウエアや武装が最新鋭であることが重要なのだ』、などの指摘を防衛省幹部は真摯に受け止める必要がある。維持費を無視して、新品を欲しがるのは、日本だけではなく、米国から武器を調達している多くの国に共通する傾向のようだが、困ったことだ。
第二の記事で、 『元米陸軍人が「迎撃は難しい」と断言する一方で、安倍政権はすでに1基800億円の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を決めている。またカモられるだけか……。』、との指摘もやれやれだ。
第三の記事で、  『F35は来年度防衛費の概算要求では1機あたり147億円もする。すでに42機を米国から買うことになっているのだが…。 実はF35をめぐっては、トランプ大統領の訪日直前にも、米国内で深刻な問題が浮上していた。訓練ができないほどの深刻な部品不足と、整備体制の遅延である』、 『その鈍重ぶりは「曲がれず、上昇できず、動けない」と酷評され、2015年には40年も前に開発されたF16戦闘機との模擬空中戦で負けるという失態を演じている』、1機あたり147億円もする鈍重な欠陥機を購入するとは、防衛省幹部は一体何を考えているのだろう。しかも、 『調達方法は、「現代ビジネス」で何度も指摘している通り、悪名高い有償対外軍事援助(FMS)方式』で、これに伴う各種の無駄が 会計検査院で指摘されているようだ。
第四の記事で、 『航空自衛隊が「完全なオーバーワーク」で、事故続発、観閲式もぶっつけ本番』、とはそら恐ろしいことだ。F-4EJ改については、 『改造の内容は、主に電子装置の更新と、それにともなう兵装システムの向上だ。今回、事故の原因となった脚部の強化・改良はなかったのである』、については、改造で寿命を延ばすこと自体は、第一の記事にある通り、望ましいことではある。しかし、やる以上は脚部を含めた機体の金属疲労なども当然チェックすべきで、それが漏れていたとすれば、お粗末としか言いようがない。
タグ:米国製の武器が欲しい防衛省はFMS方式による導入を甘んじて受け入れる 日刊ゲンダイ 民間ではとうの昔に退役したYS-11のような航空機を、未だに使用 伊藤 明弘 悪名高い有償対外軍事援助(FMS)方式である 半田 滋 「「新品」を欲しがる自衛隊的発想、米陸軍少将が批判 「新装備を買う前に、もっと維持整備を考えよ!」」 武器輸出を目指す我が国も、維持整備も含めて売り込む必要があることを肝に銘じなければならない F-4EJ改戦闘機が、誘導路を走行中に左脚部が折れ、主翼や燃料タンクが誘導路に接触、油圧装置の油や燃料などに引火する事故を起こしてしまった 先進国で、まだファントムを飛ばしているのは日本だけだ その6)(「新品」を欲しがる自衛隊的発想 米陸軍少将が批判、防衛装備品“爆買い”の愚 元米軍人「ミサイル迎撃は困難」、「ポンコツ戦闘機」F35 こんなに買っちゃって本当に大丈夫?、航空自衛隊が「もう限界」事故続発) 航空自衛隊が「もう限界」事故続発、観閲式もぶっつけ本番で!? 人も装備も疲弊しきって…」 FMSとは、米国の武器輸出管理法に基づき、(1)契約価格、納期は見積もりであり、米政府はこれらに拘束されない、(2)代金は前払い、(3)米政府は自国の国益により一方的に契約解除できる、という不公平な条件を提示し、受け入れる国にのみ武器を提供するというものだ 北朝鮮のミサイルと核」をテーマに講演 自衛隊の維持整備軽視も改めるべき 開発を進めた本家の米国でも問題が噴出 正面装備の調達数を削減し、それを3Dプリンタの現場での運用および研究、もしくは部品の在庫なりに振り向ける努力が必要だろう(自衛隊の3Dプリンタ活用への取り組みは、世界の中で大きく後れをとっている)。 同司令官は、153カ国に対する1720億ドル(約19.4兆円)・5300件以上の米陸軍系装備品の提供と維持整備指導を担当 ステファン・ファーメン少 もはやプラットフォームが新品である必要はなく、その上のソフトウエアや武装が最新鋭であることが重要なのだ 安倍政権はすでに1基800億円の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を決めている。またカモられるだけか……。 今後、誰も膨大な維持費を指摘せずに無責任に持ち上げている「イージスアショア」等が続けば、どれだけの維持費(特にイージスアショアは警備費や人事配置なども含めて膨れ上がる)がかかり、そして、どれだけその他の防衛装備品や「人員」の維持費を圧迫することになるか目に見えている ロフテッド軌道になります。高高度を飛翔し落下スピードが速いため、通常軌道よりも迎撃が難しい 原因を一言でいえば、完全なオーバーワークだ ただでさえ、防衛省のFMSによる調達額は近年極端に増えており、2016年度の米政府への支払い額は過去最高の4881億円に達した 。(迎撃するには)どこからどこへ発射されるのか『正確』に捕捉しなければなりませんからね ディフェンスニュース このSM3ブロック2Aも米国から購入するのだ SM3ブロック2Aは日米で共同開発し、日米で部品を生産する日米合作のミサイル 彼らはピカピカの装備ばかりを追いかけて、維持整備への投資が不足しがちだということだ。それは、多数の問題を生じさせる 安易な「新品」志向によって防衛装備品を維持できなくなっている状況を指摘 その鈍重ぶりは「曲がれず、上昇できず、動けない」と酷評され、2015年には40年も前に開発されたF16戦闘機との模擬空中戦で負けるという失態を演じている 弾頭部を熱から守るノーズコーン、第2弾・第3弾ロケットモーター、上段分離部、第2弾操舵部といった精密技術が必要なパーツの開発を日本政府に依頼してきたのは米政府である JBPRESS 現代ビジネス 北朝鮮の大陸間弾道ミサイルを日本は迎撃できるのかと問われたら、答えは“ノー”です レーダーサイトや「北朝鮮の弾道ミサイル対処のためPAC3も臨戦態勢にある 「「ポンコツ戦闘機」F35、こんなに買っちゃって本当に大丈夫? やっぱり日本はアメリカの金ヅルか」 イージス・アショア F-35戦闘機、V-22オスプレイ、E2D早期警戒機の4機種の維持費だけで年間800億円が消える なぜ国内の防衛産業で製造しないのか。 防衛装備庁の堀江和宏統合装備計画官は「国内産業が組み立て施設を持っていないからです 海面ギリギリで飛行すれば、一瞬の狂いで海面に接触してしまうことになる 空自では予算における優先順位の低さや契約およびマネジメントの問題から、部品の在庫不足が発生しており、その結果、別の機体から部品を取り外して流用する「共喰い整備」を行い、空自装備の稼働率が低下していると指摘している 元航空自衛隊空将であり、空自補給本部長を務めた吉岡秀之氏 (防衛問題) 完全なステルス機能を持つF35戦闘機も、多様なミサイルもある 部谷 直亮 会計検査院は10月26日、防衛省がFMS取り引きを精査できず、米国の言いなりになってカネを支払っているのではないかと指摘 トランプ F35は来年度防衛費の概算要求では1機あたり147億円もする。すでに42機を米国から買うことになっているのだが…。 百里基地でF4戦闘機の主脚が折れて炎上した F35は、来年3月には青森県の航空自衛隊三沢基地に配備されることが決まっているものの、米国で自衛隊に渡された機体はソフトウェアが未完成なため、機関砲も赤外線ミサイルも撃てず、領空侵犯に対処する緊急発進待機の任務につけないことが判明している 古いプラットフォームの大きな可能性に、防衛省自衛隊はもっと注目すべきであろう V-22オスプレイやAAV7などの新規調達が防衛装備品の維持費を圧迫している。同時に、部品枯渇の問題は3自衛隊に共通しており、稼働できなくなる自衛隊の装備が増えてきている が抱える問題 同盟国が予算の使い方を変えてもっと防衛装備品の維持を重視するよう早急に議論を始めるべきだとの考えを明らかにした 宇宙関連事業のコンサルティング会社社長のランス・ガトリング氏 「防衛装備品“爆買い”の愚 元米軍人「ミサイル迎撃は困難」」 仮にその国で20機のブラックホーク輸送ヘリが必要だとしても、これを18機にすれば、次の10~15年間、十分に維持整備をしてすべて稼働させられるだろう UH-60J救難ヘリコプター 連日の重大事故の背景 航空観閲式の予行演習が中止 自衛隊
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