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電気自動車(EV)(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか) [科学技術]

電気自動車(EV)については、昨年11月29日に取上げた。今日は、(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか)である。

先ずは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が昨年12月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽世界でEVへの移行が進めば日本自動車メーカーの競争力はどうなる!?
・世界の自動車市場で、今後の“命運”を握る競争が進んでいる。それが、EV(電気自動車)の開発競争だ。その背景には、世界最大の自動車生産・販売国である中国や欧米諸国で、重要な環境対策としてEVを重視することが明確に打ち出されたことがある。 中国や欧米諸国、その他新興国でもEV化に向けた政策が議論され、自動車業界に参入する企業も増えている。この流れは、今後も続くだろう。
・一般的に、内燃機関を搭載した自動車に比べ、EVに使われる部品数は少ない。部品点数が減ると、自動車メーカーの競争力を支えてきた技術力が差別化の要因とはなりづらくなる。 また、EVへの移行のスピードもかなり速い。大規模にEV開発が進めば、供給圧力が高まり、価格に下落圧力がかかる可能性がある。また、IoT(モノのインターネット化)などに伴い、自動車は多くのセンサーを搭載し様々なデータを収集する“デバイス”としての役割を強くするだろう。
・これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される。少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない。
▽EVが主流になることで“すりあわせ”からユニット部品の組み立てへ
・一般的に、レシプロエンジン(燃料が生むエネルギーでピストンを動かす原動機)を搭載した自動車には、3~5万点の部品が必要だ。部品数が多いため、自動車産業のすそ野は広い。トヨタなどの完成車のメーカーをトップに、下請け、孫請けというように、業界内で重層的な取引関係が蓄積されてきた。
・部品が多い分、各パーツの調整が完成車の性能を左右する。走行時の振動、エンジンルームから車内に伝わるノイズなどをコントロールするためには、「経験と知識」の蓄積が欠かせない。高級車ともなればなおさらだ。それらの高い技術が参入障壁にもなった。
・ドイツ、日本の完成車メーカーが競争力を高めてきた理由は、一国内で高品質の自動車部品を生産し、それを“すりあわせ”して完成車を生産することに長けてきたからだ。それは、トヨタがハイブリッドシステムを開発、実用化するためにも不可欠だった。
・EV化は、この産業構造を一変させてしまうだろう。 なぜなら、EVに使われる部品は、内燃機関を搭載した自動車の6割程度で済むからだ。その分、すりあわせ技術への依存度は低下する。言い換えれば、自動車の生産は、“部品のすりあわせ”から、フレーム、バッテリーなどの“ユニット(部品の集合体)の組み立て”にシフトする可能性が高い。
・例えばスマートフォンの生産は、ユニットの組み立てによって成り立っている。アップルのiPhoneには日本製の部品が多く使われているが、それが組み立てられるのは中国にあるフォックスコンの工場だ。 同じことが自動車でも進もうとしている。
・見方を変えれば、部品ごとのバランスなどを調整し、付加価値を生み出すという既存の自動車メーカーが担ってきた役割は、さまざまな業界に溶け出していく可能性が高まっている。状況によっては、完成車メーカーは単なる“車体組み立て業”に変化することも考えられる。
▽異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化
・もっとも、世界の自動車メーカーがこの動きに対応しようとしている。 同時に、中国、インドなどでのEV需要を取り込もうと、他業種からの参入も増えている。EVの開発競争は激化するだろう。決断が遅れると「挽回が難しくなる」と、危機感を募らせる経営者は多い。
・それを印象づけた動きの一つが、日本電産がEVの駆動用モーターへの参入を決定したことだ。 同社は、フランスのPSAと組み量産を目指す。合弁を足掛かりにして、日本電産がEVの生産に取り組む可能性もある。世界最大の電子機器の受託製造サービス(EMS)企業である台湾のホンハイも、EV事業の強化を重視している。
・その他にも、自動車業界に参入する企業は増えている。英国ではダイソン、国内ではヤマダ電機が参入を決めた。鉱山業界からは、BHPビリトンがバッテリー向けの素材供給能力を増強しようとするなど、EV需要を取り込もうとする企業は急速に増えている。
・こうした動きをもとに将来の展開を考えると、かなりダイナミックに自動車業界の構図は書き換えられていくだろう。特に、アマゾンやグーグルが自社ブランドのEVを市場に投入すれば、かなりの社会的なインパクトがあるはずだ。 自動車は、交通状況や部品の稼働状況など、ありとあらゆるデータを収集するデバイスとしての性格を強くしている。オンラインのネットワークと自動車がつながる“コネクテッドカー”が実用化されれば、自動車の運転が自動化されるだけでなく、移動や物流などの仕組みも大きく変わるだろう。
・そう考えると、ハイテク企業と自動車の関係は接近するはずだ。中国ではバイドゥ(百度)がインテルやダイムラーをはじめとする有力企業とともに、自動運転化技術の実用化に向けた実験を開始した。こうした動きが自動車とネットワーク技術の融合を促す。自動車メーカーが自動車をつくるという常識で、今後の自動車業界を論じることは難しくなっている。
▽重要性高まる、EV化の先を見据えた経営戦略
・現時点でわが国の行政と自動車業界は、EV化に出遅れている。 特に、トヨタにとってはハイブリッドカーの生産ラインを維持しつつ、EVの生産能力を整備するのは容易ではない。このままの状況が続けば、国内自動車メーカーの競争力は低下するだろう。 中長期的な目線で考えると、中国での需要を見込んでEVの供給能力は増えるだろう。一方、需要が右肩上がりで増え続けるとは考えづらい。10年単位で考えると、世界経済が減速に向かうことも考えられる。どこかで需給バランスは崩れ、EVの価格に下落圧力がかかる可能性がある。
・EVではバッテリーの性能が問われる。その他のユニットに関しては差別化が難しいといわれている。ブランド(メーカー)や外見が違うが、中身は同じという流れに行き着くことも考えられる。その見方が正しければ、EVにはコモディティー化しやすい要素がある。生産面では先進国よりも新興国の方が有利だ。
・1990年代、アジア新興国が台頭する中で、半導体などの電機業界では同様の展開が進んだ。わが国の企業は、各社独自の規格に従って完成品を作ることに固執し、結果的に競争力を失った。その教訓を生かすべきだ。
・重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ。バイドゥにはその意図がある。トヨタもマツダ、デンソーと組み、他社の参画を呼び掛けながらEVの開発を急いでいる。同時に、トヨタは人工知能やネットワーク技術のための研究所も開設し、ブロックチェーンなどの研究に力を入れている。同社が11月28日に発表した経営陣の刷新にも、EV化の先を見据えた戦略的な視点が反映されている。
・将来的には、日常生活の中で自動車が家電と同じような位置づけになることも考えられる。その中で国内企業が競争力を発揮するためには、環境が大きく変わることへの危機感を各企業で共有し、新しいモノやサービスの創造に注力することが欠かせない。それが、世界規模でモビリティとネットワークの融合が進むことへの対応につながるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/152413

次に、1月12日付け日経ビジネスデジタル「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界に驚きを与えたダイソンのEV参入。ファンは沸き立つ一方、自動車業界は実現性を疑問視する。 「本当に成功するのか」─。創業者、ジェームズ・ダイソン氏が決断の背景を打ち明ける。
・「A Dyson EV」。2017年9月26日、英ダイソン創業者のジェームズ・ダイソン氏は全社員宛てにこう題したメールを送り、EV(電気自動車)事業への参入を表明した。サイクロン掃除機、羽根のない扇風機など、ユニークな機能とデザインを兼ね備えた家電を開発し、消費者の支持を獲得してきたダイソン氏。「次はなぜ、EVなのか」。そう問うと、話は自動車メーカーに対する痛烈な批判から始まった。
▽VWの排ガス不正問題で決断
・なぜダイソンがEVを手掛けるのか。皆さんには多少の驚きを与えたかもしれませんが、決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想でした。 ダイソンがEVを開発する理由。一言で言えば、世界で広がる環境汚染に対して行動を起こしたいという切実な思いです。とりわけ自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻です。この惨状を変えたい。
・英国の大学キングス・カレッジ・ロンドンによると、大気汚染を理由に命を落とす人は、ロンドン市内だけで毎年9500人近くに上ります。世界で見ると犠牲者の数はさらに増え、世界保健機関(WHO)は、2012年に世界中で約700万人が死亡したと報告しました。大気汚染は、今では世界最大の環境リスクと言って過言ではありません。ここに解決策を示すことが、今のダイソンの使命だと考えています。
・私自身、この問題には30年近く取り組んできました。1990年、まだダイソンを創業する前ですが、自動車の排気システムに取り付ける、粒子状物質を捕集するサイクロンフィルターの開発に着手しました。サイクロンの原理は、掃除機に利用したものとほぼ同じです。きっかけは、偶然に目にした米国立労働安全衛生研究所の論文でした。ディーゼルエンジンの排気ガスが含む有害物質と、実験用のマウスやラットが早期に死亡することを関連付ける内容でした。後で分かったことですが、ガソリンエンジンも、同様の問題を抱えています。
・日々、何気なく自動車を利用することが、我々を死に至らしめる可能性がある。とても深刻な問題のはずですが、自動車メーカーを含め社会の関心はとても低かった。そこで、自分自身でその解決策を考えることにしたのです。 サイクロンフィルターはその後、試作と検証を繰り返しながら、93年までには実用に耐え得るレベルになりました。当時、BBC(英国営放送)で試作品が紹介されて、それなりに話題にもなったのです。
・しかし、自動車業界の反応はとても薄いものでした。ディーゼルの排気ガスは環境にも人体にも大きな問題はないとし、我々が開発したフィルターの重要性について、どこも真剣にとりあってはくれませんでした。それでも諦めず、2000年まで開発を続けました。 そうしている間に、欧州連合(EU)当局が「クリーンディーゼル」エンジンの採用を奨励するようになりました。ディーゼルが環境に与える影響は問題のないレベルであり、EUとしてクリーンディーゼルの普及に力を入れると。英国もEUの考えをそのまま取り入れ、ディーゼルエンジンは環境に優しいものとのイメージが広がりました。さすがに、プロジェクトを中断せざるを得ないという結論に至りました。
・ところがです。大気汚染の問題は一向に収束していません。先進国、途上国に関係なく、大都市は空気が汚染され、人々が苦しんでいます。問題を放置してきた大手自動車メーカーは、その責任を免れることはできません。 決定的だったのは、15年に発覚した独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼルスキャンダルです。自動車メーカーは、大気汚染問題に正面から取り組むことなく、規制を巧みに回避してきたことが明らかになりました。信じられない背信行為を続けていたのです。
・幸いなことに、今のダイソンには当時のフィルター開発とは別の方法でこの問題に対処する技術があります。長年開発を続けてきたモーターと電池、そしてAI(人工知能)などのソフトウエア。(15年に米スタートアップを買収して手に入れた)全固体電池は誰もが開発したがっている技術です。ファンヒーターや空気清浄機能などの空調家電で培ったノウハウなども組み合わせれば、ダイソン流のアプローチで大気汚染問題に立ち向かえます。それが、ダイソンがEVに乗り出す理由です。
・ですから、米テスラの成功に我々も追随しようというわけではありません(笑)。私には、長い間、世界的な社会課題を解決したいという、燃えるような強い思い(desire)があったのです。 今、自動車メーカーがせきを切ったようにEV開発に乗り出しています。多くは「環境への配慮」をうたっていますが、私から見れば、規制によって無理に強制されているようにしか見えません。我々の動機とは明らかに違います。
▽外部の懸念、気にしない
・創業前からの強い思いが自身をEV開発へ突き動かしたと繰り返したダイソン氏。一方で、EV開発はこれまで成功を収めてきた家電開発とは複雑さも投資規模も異なる。「本当に成功できるのか」と疑問を呈する声も少なくない。ダイソンは、テスラに転職した元社員や前CEO(最高経営責任者)のマックス・コンツ氏を情報漏洩の疑いで訴えるほど、徹底した秘密主義を貫く。そのため謎が多い。
・EV開発は既に約3年前から開始しています。私自身も多くの時間をこのプロジェクトに割いていますが、現時点では内容についてのコメントはしません。我々は従来も秘密主義でやってきましたし、自動車開発の競争は激しく、秘密保持は鉄壁にする必要があります。
・本当にできるのかという疑問の声がある? 声の主が我々の何を知っているかは分かりませんが、今は「できる」とだけ答えておきましょう。20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります。評価は、ぜひ完成した製品を見てからにしてほしいですね。
・ダイソンはもはや家電メーカーではなく、テクノロジー企業です。15年に発売したロボット掃除機「360アイ」には、360度の視界を持つパノラマレンズのカメラを搭載して“自動運転”を実現しています。リアルタイムに部屋の特徴を認識し、室内の位置関係を計算して地図を作製します。英インペリアル・カレッジとは画像処理技術について研究していますが、これらは全てEVに活用していきます。
・AIや機械学習の研究にも資源を注いでいます。ダイソンのデジタルモーターの回転速度を調整するためには、従来は機械的に回転数を設定しておく必要がありました。しかし、今は全てソフトウエアで制御しています。スマートフォンで家電を操作するといった目に見える部分から、モーターの制御といった裏側まで、ソフトの研究開発は急ピッチで拡大中です。社内のエンジニアもソフトに精通する人材が今や多数を占めます。
・EVを開発している他社の動向は気にしていません。自動車メーカーも、EVで本当に成功しようと思うなら、エンジンを搭載した自動車の開発を引きずらず、開発体制をリセットする必要があります。EVの中核となるモーターと電池の開発も同様です。彼らにアドバンテージがあるとは思いません。
▽「デザイン」が革新を生む
・ダイソンは、掃除機や扇風機など、一般には技術革新が乏しく「コモディティー(汎用品)」と呼ばれる成熟市場に飛び込み、イノベーションを起こしてきた。ここ数年の業績は急拡大しており、16年12月期の売上高は前の期比45%増の25億ポンド(約3625億円)と、5年前に比べ2倍以上の規模になっている。そんなダイソンが次に照準を定めたのがEV。クルマもコモディティーになったことを意味するのか。
・自動車がコモディティーになったのか? 私は全くそう思いません。むしろ、自動車は最もコモディティーから遠い製品の一つだと考えています。とても複雑で、感情的な製品です。付け加えれば、我々が手掛けた製品はいずれもコモディティーだとは考えていません。消費者には、掃除機もドライヤーも日々の生活を送る上でとても価値のある製品です。コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります。
・なぜ、ダイソンは他社と違う製品を開発できるのか。それは我々が「デザイン」という概念を一般よりも、より包含的に捉えているからです。デザインとは、単に製品の見た目を指すだけではありません。製品がどう機能するかであり、使われ方を徹底的に考え抜く行為も含みます。突き詰めれば、製品によって消費者が抱える課題や不満をどう解消するかを考えることなのです。 これを実践するには、デザインとエンジニアリングは分けない方がいい。ダイソンのエンジニアは全員、デザイナーでもあります。製品とは、機能とデザインが密接に関わり合いながら生まれていくとの哲学があるからです。
・歴史を振り返れば、デザイナーという職業は存在しませんでした。エンジニアがその役割を担っていたのです。これが分離するきっかけを作ったのが、自動車産業です。大量生産・大量販売を志向した自動車メーカーは、エンジニアリングからデザインを切り離し、マーケティングに活用するようになったのです。デザインという役割は自動車を売るために分離され、流れは一般製品を売る企業にも広がっていきました。
・もう一つ、他社とダイソンが違うように見えるのは、エンジニアである私が会社を率いているからでしょう。昔も今も、エンジニアが経営のトップに存在する企業は稀有なケースでした。 その昔、私が商談相手に製品を持っていくと、「エンジニアではなくビジネスマンはいないのか?」とバカにされたものでした。しかし、製品の可能性は誰よりもエンジニアが理解しています。仮にあなたが、新製品のアイデアを持ち込んできたら、その試作機を見て、製品として成功しそうかどうかを即決できます。ビジネスやマーケティングといった話は、その後についてくるものです。日本の企業だって、ソニーやホンダの創業期はそのような哲学を持った会社だったと思います。 もちろん、私の経営が唯一の正しい方法だとは言いません。しかし、私自身はこのやり方が素晴らしい製品を生むものだと信じています。
▽破壊の先に未来がある
・ダイソン氏は現在70歳。EV開発の陣頭指揮を執り、現在も世界を飛び回る日々を続ける。その一方で、後継者に指名した長男のジェイク・ダイソン氏が15年から経営に参画し、世代交代に向けた準備も進めている。EV参入の先には、どのようなビジョンを描いているのだろうか。
・EVの先、ですか。もちろん、24時間365日、常に考えていますよ。詳しくは言えませんが、30年後にダイソンがどうあるべきか、ビジョンも明確に持っています。それに向かって、ダイソンの企業文化は日々進化していくことになるでしょう。 技術の変化はかつてなく激しくなりました。昨日の成功体験が明日も役立つとは限らない時代です。過去の経験は価値になるどころか、むしろ障害となる可能性もある。ダイソンもこれまでの成功体験は捨て、未来に向けて変わり続ける必要があります。我々が新卒の学生を積極的に採用するのは、彼らが社会人として成功体験を積んでいないからです。こうした人材の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう。
・これから参入するEVは比較的長い時間をかけて準備をしてきましたが、10年後、20年後は全く違うものを手掛けているかもしれません。私は元来、技術による既存業界の破壊(disruption)が好きなのです。それ自体は不安定ですが、その先には常に新しい機会が広がっているのですから。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/010900888/?ST=pc(このリンクにアクセスするには、日経ビジネスオンラインでのポイントが必要)

第三に、1月17日付け日経ビジネスオンライン「全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・英ダイソンのEV(電気自動車)参入表明で注目を集めるのが「全固体電池」だ。現在主流のリチウムイオン電池が抱える走行距離などの限界を突破する電池として期待されている。ダイソンのみならず、トヨタ自動車など多くの会社が開発に力を注ぎ始めている。第一人者、東京工業大学の菅野了次教授に、全固体電池がEVを変える可能性について聞いた。
――全固体電池は、現在主流のリチウムイオン電池と比べて、どんな点が優れているのでしょうか。
・菅野了次・東京工業大学物質理工学院副学院長・教授(以下、菅野氏):まず、今のリチウムイオン電池というのはすごくいい電池です。鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池などに比べてはるかにエネルギー密度が高く、充放電の特性も素晴らしい。これよりもいい電池を作るというのは、なかなか難しい。
+この素晴らしいリチウムイオン電池の電解液を固体にしたらどうなるか、というのが、そもそもの全固体電池の発想です。まだ実用段階の製品としては世の中に出てきてはいませんが、電解液を固体にした際に発揮されるであろう、優れた特性が明らかになるにつれて注目が高まってきました。
+例えば、現在のリチウムイオン電池は、電解液を充てんした独立したセル(電池の構成単位、単電池)を直列につないで使用します。一方、電解質を固体にすると、正極と固体電解質、負極を重ねて1枚のシート状にして、そのシートを順番に積み上げていくことでパッケージにできます。液体を使わないために構造が簡単になり、容量を上げやすくなるだろうと期待されています。
▽出力を大きくできるのが最大の利点
――全固体電池の開発が加速しているのは、菅野先生などが新しい物質を発見したからと言われていますね。
・菅野氏:電解質の中でイオンが活発に動くほど、電池の出力は大きくできるのですが、かつては、固体の中をリチウムのイオンが動くという現象を起こさせること、そのものが難しいとされていました。しかし、我々(東工大とトヨタ自動車)は2011年に、固体の中でもイオンがよく動く材料を見つけました。
+電解液を使う今の電池の欠点は、大電流を流すと電解質の中をイオンが動きにくくなるということです。それを、大変高度に設計することで、大きなパワーを取れる電池に仕上げているのが現状です。 一方、我々はさらに16年に、固体材料に塩素を添加するとイオンがさらによく動くことを発見しました。イオンの動きが速いと出力を大きくできると先ほどお話ししましたが、(これによって従来のリチウムイオン電池よりも)全固体電池の出力を大きくできる可能性が出てきました。それが、全固体電池の最大のメリットとして、注目されている理由だと思います。
――リチウムイオン電池を使う今のEVは、充電に時間がかかることも欠点の1つだと言われています。全固体電池を使うと、充電速度も速くなるのでしょうか。
・菅野氏:電流をたくさん取れるようになると、充電も速くなると期待できます。ただし、電池自体の電圧の限界といった問題もありますので、電流がたくさん取れるということがすなわち、充電が速くできるというわけではありません。それでも、工夫次第で速くなる可能性はあると考えています。
▽心臓のペースメーカーに使われるほど信頼性が高い
――現在のリチウムイオン電池は、自動車事故などの際に爆発したり、炎上したりすることが懸念されています。全固体電池になると、安全性は増しますか。
・菅野氏:固体材料の場合、液体が蒸発して引火することはないので、液体の電池より燃えにくいと言っていいと思います。 実は、これまで全固体電池は、固体の中でイオンが動くことが難しいために、大きな電流が取れず用途が非常に限定されていました。その1つが、心臓のペースメーカーです。微弱の電流でも十分だからですが、心臓のペースメーカーに利用されていたのは、信頼性が高いからです。
・ただし、我々が今開発している材料は、多少空気中で分解しても、とにかくイオンが動くことを重視していますので、実際の電池に使ったときの安全性は、大きな電池にしてみなければ分からないところはあります。
▽全固体電池でクルマの設計の自由度が増す
――そもそも、全固体電池の用途として、なぜEVが有望視されているのでしょうか。
・菅野氏:これまでの全固体電池は、実用化されたのが心臓のペースメーカーくらいで、ほとんど電池として認められていなかったような状況でした。信頼性はあるけれど、パワーは取れない。「使い道はあるのか」と問われれば、「ない」と答えるしかありませんでした。
+しかも、リチウムイオン電池という非常に優れた電池があり、それを全固体電池に置き換える必要はないと考えられてきました。 実際、電池という分野はこれまで、既存の電池を新たな電池が置き換えたという事例はないんですよね。新しい電池が登場した時には、必ずと言ってよいほど、その電池を必要とする新たな用途、新たな製品が世の中に誕生しています。例えば、リチウムイオン電池が登場したのは、ノートパソコンや携帯電話が誕生したのと、ちょうどタイミングが一緒でした。
+だから、もし全固体電池がうまい成長ストーリーを描けるとするならば、やはり新たな用途や製品に使われるということだと思います。
――全固体電池によって、クルマ全体の設計の自由度は増すでしょうか。
・菅野氏:例えば、固体電解質は100℃でもマイナス30℃でも動くので、リチウムイオン電池に比べて、(安定して動く)温度範囲が広がります。つまり、それほど厳しい温度管理をしなくても良くなるという点で、設計の自由度は増す可能性があります。リチウムイオン電池は60℃以上になると劣化が進むので、現在のEVは冷却装置などで温度管理をきちんとする必要があります。
+もちろん、容量の大きな電池にした場合に、様々なややこしい問題が出てくるかもしれません。それでも、固体電解質は低温から高温までたぶん大丈夫なので、設計の自由度が増す可能性はあると思います。
――英ダイソンは全固体電池のベンチャーを買収し、開発を加速しています。ダイソンがどのような電池を出してくるか、研究者の間で噂になっていませんか。
・菅野氏:全然分かりません。あまり情報は聞こえてきませんね。
――やはり、先頭を走っているのはトヨタですか。
・菅野氏:トヨタでしょうね。
――菅野先生などの基礎研究のおかげで、素材開発は進んできました。一方、製品化に向けた各社の生産プロセスの開発はどんな状況と見ていますか。
・菅野氏:電池が実用化されるまでには、我々のような基礎研究から応用研究、そして実際のデバイスの生産というように、それぞれの段階でギャップがあります。メーカーが実際のデバイスとして製品化するのが一番の課題ですが、いつまでに製品化するという宣言もしているところを見ると、それは多分、乗り越えたんだろうなと思います。
+。競争はなかなか激しいですよ。固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています
――全固体電池を使えば、EVの走行距離がガソリン車を超えてしまうということも起こり得るのでしょうか。
・菅野氏:全固体電池がEVでどういう使われ方をするのか、あまり分からないですけれども、(電池の)パッケージを小型化できたり、エネルギー密度を上げられたり、長く走れたりといったメリットは、多分あると思います。 可能ならば、やはり充電速度を上げたいですけれども、たぶんそれは次のステップでしょうね。  クルマが道を走ったら充電できたりとか、ボタンを押したらクルマが迎えに来たりとか、そういう将来が見えてきていますよね。全固体電池によって電池の実力がもっと上がれば、そういった未来もたぶん一気に近づくでしょう。
――全固体電池が、EVのあり方を変えるということですか。
・菅野氏:今はまさに、全固体電池がものになるかどうかという瀬戸際のようなところでもあります。これまでの電池とはそもそもの発想が違うので、うまくいくならば、たぶん行き着く先も違うものになるだろうと期待しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011100194/011100003/?P=1

第一の記事で、 『これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される。少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない』、というので、改めて深刻さを再認識させられた。 『異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化』、 『重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ』、などはその通りなのかも知れない。
第二の記事で、 『EVを手掛けるのか。皆さんには多少の驚きを与えたかもしれませんが、決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想』、 事実、ダイソン氏が、創業前の1990からサイクロンフィルターを開発していたというのは、初耳だが、なるほどと納得した。 『コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります』、というのは、興味深い指摘だ。 『「デザイン」が革新を生む』、というのも、あのユニークなデザインを考えると説得的だ。 『我々が新卒の学生を積極的に採用するのは、彼らが社会人として成功体験を積んでいないからです。こうした人材の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう』、との考え方もユニークだ。やはりダイソン氏は、イノベーションのスーパースターだ。
第三の記事では、全固体電池の開発がどんな段階にあるか、についてはハッキリしてないが、完成すれば素晴らしいものらしい。 『固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています』、とは驚きだ。計算科学で特許を取ってしまうとは、時代もずいぶん進んだものだ。いずれにしろ、全固体電池が実用化されると、我々の生活もますます便利になりそうだ。
タグ:、EVに使われる部品数は少ない。部品点数が減ると、自動車メーカーの競争力を支えてきた技術力が差別化の要因とはなりづらくなる これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される (EV) )(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか) 「中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか」 真壁昭夫 ダイヤモンド・オンライン 電気自動車 少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない EVが主流になることで“すりあわせ”からユニット部品の組み立てへ 自動車の生産は、“部品のすりあわせ”から、フレーム、バッテリーなどの“ユニット(部品の集合体)の組み立て”にシフトする可能性が高い 、部品ごとのバランスなどを調整し、付加価値を生み出すという既存の自動車メーカーが担ってきた役割は、さまざまな業界に溶け出していく可能性が高まっている 異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化 自動車の運転が自動化されるだけでなく、移動や物流などの仕組みも大きく変わるだろう 重要性高まる、EV化の先を見据えた経営戦略 現時点でわが国の行政と自動車業界は、EV化に出遅れている 重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ 日経ビジネスデジタル 「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン」 創業者、ジェームズ・ダイソン 決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想でした ダイソンがEVを開発する理由。一言で言えば、世界で広がる環境汚染に対して行動を起こしたいという切実な思いです。とりわけ自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻です。この惨状を変えたい この問題には30年近く取り組んできました。1990年、まだダイソンを創業する前ですが、自動車の排気システムに取り付ける、粒子状物質を捕集するサイクロンフィルターの開発に着手 EUとしてクリーンディーゼルの普及に力を入れると。英国もEUの考えをそのまま取り入れ、ディーゼルエンジンは環境に優しいものとのイメージが広がりました。さすがに、プロジェクトを中断せざるを得ないという結論に至りました 今のダイソンには当時のフィルター開発とは別の方法でこの問題に対処する技術があります。長年開発を続けてきたモーターと電池、そしてAI(人工知能)などのソフトウエア。(15年に米スタートアップを買収して手に入れた)全固体電池は誰もが開発したがっている技術です。ファンヒーターや空気清浄機能などの空調家電で培ったノウハウなども組み合わせれば、ダイソン流のアプローチで大気汚染問題に立ち向かえます。それが、ダイソンがEVに乗り出す理由です。 20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります ・ダイソンはもはや家電メーカーではなく、テクノロジー企業です デザイン」が革新を生む コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります 我々が「デザイン」という概念を一般よりも、より包含的に捉えているからです。デザインとは、単に製品の見た目を指すだけではありません。製品がどう機能するかであり、使われ方を徹底的に考え抜く行為も含みます。突き詰めれば、製品によって消費者が抱える課題や不満をどう解消するかを考えることなのです これを実践するには、デザインとエンジニアリングは分けない方がいい。ダイソンのエンジニアは全員、デザイナーでもあります 製品とは、機能とデザインが密接に関わり合いながら生まれていくとの哲学 エンジニアである私が会社を率いている 破壊の先に未来がある 日経ビジネスオンライン 「全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか」 全固体電池 東京工業大学の菅野了次教授 電解液を固体にした際に発揮されるであろう、優れた特性が明らかになるにつれて注目 液体を使わないために構造が簡単になり、容量を上げやすくなるだろうと期待されています 出力を大きくできるのが最大の利点 充電も速くなると期待できます 液体の電池より燃えにくい 全固体電池でクルマの設計の自由度が増す 固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています
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