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ベンチャー(その2)(日本からアップルやグーグルが生まれない根本的な理由、金の亡者でもロマンチストでもないベンチャーキャピタルの二面性、大企業とスタートアップ企業の協業に潜む4つの落とし穴) [経済]

ベンチャーについては、昨年8月21日に取上げた。今日は、(その2)(日本からアップルやグーグルが生まれない根本的な理由、金の亡者でもロマンチストでもないベンチャーキャピタルの二面性、大企業とスタートアップ企業の協業に潜む4つの落とし穴)である。

先ずは、昨年11月28日付けダイヤモンド・オンライン「日本からアップルやグーグルが生まれない根本的な理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・若者の聖地である東京・渋谷に、起業家を支援するための大型施設が誕生する。起業といえばシリコンバレーが真っ先に浮かぶが、渋谷の新拠点はそれと一線を画している。ベンチャー企業という世界の片隅で起きている変化に目を凝らす特集の第1回(全6回)は、日本で始まった“胎動”を追う。
▽若者の聖地である渋谷に起業支援ビルがオープン
・2017年11月下旬、東京・渋谷の「タワーレコード渋谷店」の壁面には、9月20日に引退を発表した歌手・安室奈美恵さんのベストアルバムを宣伝する大型看板が掛かっていた。茶褐色の看板からは哀愁が漂い、まるで一時代の終わりを示すかのようだった。 タワレコといえば、1990年代、若者文化の情報発信拠点として一時代を築いた。安室さんのファッションをまねした女子高生、通称「アムラー」の“聖地”として栄えた。しかし、それも今は昔。若者は、スマートフォンの画面を眺めるばかりで、タワレコに備え付けられた大型モニターなど目もくれず、かつてのにぎわいはどこにもなくなっていた。
・だが、そんなタワレコの地で、新しいムーブメントが起きようとしている。それは、時代の転換を示す“シグナル”だった。 タワレコから道路を挟んだ向かい側に、えんじ色で「EDGEof」との文字が頂上に書かれた、地上8階建ての真っ白なビルがそびえ立つ。 実はこのビル、1階の飲食店を除き、起業家の育成・支援を行う複合施設となる予定だ。コワーキングスペースのほか、イベントスペースやショールームにメディアセンターもできるという。今秋からイベントが始まり、来春には正式オープンする予定だ。
・このビルを運営するEDGEof(エッジ・オブ)共同代表の小田嶋・アレックス・太輔氏は、「イノベーションは新しいコミュニティの中から生まれる。エッジな(最先端に立つ)人たちを集め、渋谷の地から新しい文化を創り、世界に発信していきたい」と話す。 もっとも、こうした起業支援施設は日本各地に数多く存在する。では、エッジ・オブは一体、何が違うのだろうか。それを説明する前に、起業支援の最前線であるシリコンバレーの現状を振り返ろう。
▽米トップ5に入る企業を育てたシリコンバレーの「エコシステム」
・現在、世界のトップ5社の時価総額を合計すると3.3兆米ドル(約372兆円)にも上る。この中のアップル、グーグル(アルファベット)、フェイスブックの3社は、いずれもシリコンバレーの会社だ。こうした企業を育てたのが、後述する「エコシステム」だと言われており、日本には十分にないものだ。
・そもそも、スタートアップ企業(ベンチャー企業)が成長するためには、投資家から資金を集めて優秀な人材を獲得し、製品やサービスに磨きをかけていく必要がある。もちろん、金融機関から融資を受ける手もあるが、時間のかかる審査を待っていては商機を失ってしまう。そこで投資家の出資を受ける場合が多い。
・そうしたスタートアップに資金を提供しているプレーヤーの一つが「ベンチャーキャピタル」(VC)だ。VCは、9割の投資が失敗したとしても、1割で大成功すればよいと考えており、金融機関では取ることができないリスクを負って出資してくれる。 また、「エンジェル投資家」も、スタートアップを足元で支えている。その多くが自ら企業経営者として成功を収め、財を成した人物たちだ。創業間もない企業にも寛容で、出資だけでなく、人材の紹介やアドバイスなども行う。 シリコンバレーには、こうした投資家たちがそこら中にいる。例えば大学で先端技術の研究に打ち込んでいる若者に、エンジェル投資家がポンとカネを提供し、新しい技術が花開くといったケースは枚挙に暇がない。
▽日本のベンチャー投資額は米国のわずか2%
・こうした投資家の厚みは、スタートアップの誕生と成長に大きく影響する。実際、2016年のベンチャー投資額は、米国の7.5兆円に対して、欧州が5353億円、日本は1529億円(米国の約2%)にとどまる(「ベンチャー白書2017」)。
・投資家から資金提供を受けて成長し、花開いたスタートアップ企業には大きく二つの道ができる。一つは株式上場(IPO)によって市場から資金を得て、さらに成長する道。そしてもう一つは、M&Aによって経営権を売却し、どこかの企業の傘下に入る道だ。 VCから出資を受けた企業は、ファンドの運用期間が5~10年程度であるため、10年足らずでどちらの道を選択するか迫られることになる。逆に言えば、こうした“期限”があるからこそ、急成長を果たすスタートアップが次々と生まれるのだ。
・特に、グーグルやアマゾンといった巨大IT企業はさらなる成長を果たすため、スタートアップの技術や人材を取り込もうと積極的にM&Aを仕掛けている。それもあって、米国ではVCから出資を受けたスタートアップの約9割がM&Aでどこかに売却されている。
・こうした仕組みによって、起業家には多額の資産が転がり込む。そこで、次なる起業につなげたり、自身が投資家となって別の企業を支援したりする。そうした“循環”を見て世界中から人と金が集まるため、情報交換や人材交流も活発となり、新産業の創出に至っているのだ。
・残念ながら、日本にはこうした土壌、いわゆる「エコシステム」が醸成されていない。新興企業のIPOこそ増えているものの、M&Aとなるとまだまだ限られている。 なぜなら、受け入れる側の日本の大手企業は、給与体系や人事体制が古いなど、受け皿になる“下地”がないからだ。また、スタートアップを育てて、その結果としてリターンを得ようという考え方ではなく、自社の新規事業のネタ探しが中心で、人材やノウハウを囲い込もうとするため、スタートアップは育たない。 海外企業からのM&Aにしても、言葉の壁が立ちはだかって対象になることはまれだ。
▽大企業や行政支援とは一線を画すエッジ・オブ
・話を戻そう。「エッジ・オブ」は、こうしたエコシステムを作る担い手になろうとしている。しかも、最初からグローバルを意識しているのが特徴だ。 コワーキングスペースのように“場所貸し”をする企業も増えているが、こぢんまりとしたケースが多い。入居者同士の交流を促し、化学反応を起こさせるためには、数百人程度を収容する規模感が必要であるにもかかわらずだ。 また、運営者にもスタートアップ経営者のような「熱量」が求められる他、さまざまな関係者を束ねる「顔」がいないと新しい機運が生まれにくい。
・行政主導のプログラムもあるが、熱心な担当者に依存する、つまり属人的なケースが多い。また、行政機関だから数年で異動・交代してしまい、一過性のものに陥りやすい。しかも、自治体ごとにバラバラで行われているため、広がりにも欠ける。
・エッジ・オブは、こうしたものたちとは一線を画している。単なる起業家支援ではなく、研究者や投資家との橋渡し、メディアとの連携、アーティストの招致などを通じて、新しいコミュニティ作りをしようとしているのだ。  実際、創業者6人は多彩な顔ぶれだ。
▽音楽、ゲーム、イベントなどに精通 多彩な経歴を持つ創業者たち
・小田嶋氏と共にCEOを担うのが、イノベーションプロデューサーであり音楽業界に関係の深いケン・マスイ氏だ。また、世界的な評価を受けているゲームクリエイターの水口哲也氏、伝説のシミュレーションゲーム「シムシティ」の開発者で投資家のダニエル・ゴールドマン氏、世界的プレゼンテーションイベントの日本版「TEDxTokyo(テデックス・トーキョー)」の創立に関わったトッド・ポーター氏。そして自らも連続起業家であり、世界中で起業家の支援・育成を行っているMistletoe(ミスルトゥ)ファウンダーの孫泰蔵氏がいる。いずれも、世界的に幅広い人的ネットワークを持っている人々だ。
・「6人の創業者たちは、幅広いネットワークを持っている。それらを活用し、メンバーをサポートしていきたい」(小田嶋代表)。 そんな小田嶋代表自身も、欧州のスタートアップ事情に通じており、今回のエッジ・オブ設立においても欧州、とりわけフランスから大きなヒントを得ている。というのも現在、フランスは欧州で最もベンチャー投資資金が集まっており、次のシリコンバレーとして世界からの注目が一気に集まっているからだ。
・連載の2回目では、スタートアップに対する投資熱が加速するフランスの今をレポートする)
http://diamond.jp/articles/-/150976

次に、ネットサービス・ベンチャーズ・マネージングパートナーの校條 浩氏が12月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「金の亡者でもロマンチストでもないベンチャーキャピタルの二面性」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨今、米国のベンチャーキャピタル(VC)への出資を検討する日本企業が増えてきている。 それ自体は意味があるのだが、そのときに気になるのが、「わが社は投資リターンを求めていない。あくまでVCから新事業情報を得るのが目的だ」という経営トップの発言だ。 ここには大きな誤解がある。それを明かす前にVCがどう理解されているのか、日本のウィキペディアを参考に見てみよう。
・「VCとは、ハイリターンを狙った投資を行う投資ファンドのこと。主に高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行い、投資した企業を株式公開させたりして利益を得る。資金を投下するのと同時に経営コンサルティングを行い、投資先企業の価値向上を図る。担当者が取締役会等にも参加し、経営陣に対して多岐にわたる指導を行う」(筆者要約)
・必ずしも間違ったことを言ってはいないものの、シリコンバレーのVCの実態を知る者としては違和感がある。 その違和感を生む原因は、既存の株式投資の枠組みで語られていることだ。本物のVCは、既存市場や既存事業で成長している未上場企業へ投資してハイリターンを目指す、わけではない。 ではVCをどう理解すべきなのか。ここで、VC界の大物の一人、ビノッド・コースラ(Vinod Khosla)をご紹介しよう。
▽大物が説く本当の役割
・コースラは、米サン・マイクロシステムズを立ち上げた一人として有名だ。同社といえば、主に業務に利用される高性能のコンピューター「ワークステーション」の市場をけん引した会社である(後に米オラクルが買収)。 世界最高峰といわれるVC、クライナー・パーキンス(Kleiner Perkins Caufield & Byers)に転じたコースラは、そこでも大きな成果を残し、自らコースラ・ベンチャーズというVCを設立した。個人資産は1500億円超ともいわれる。
・そのコースラが強調することは二つ。一つは「主役は起業家であり、VCはそれを支援するプロデューサーである」ということ。次に「失敗」の重要性である。 「専門家や経験を積んだ経営者、それにVCによる未来事業に関する意見はほとんど当てにならない」とコースラは喝破する。 起業家は、24時間寝ても覚めても事業のことを考え、市場に最も近いところにいて最も多くの情報を持っている。専門家たちの「コンサルティング」や「指導」を真に受けてしまうような起業家が成功するのかといえば、答えは否だ。
・周りの誰も理解できない未来の市場を見据え、自分のビジョンのみを信じて切り開く。そうした起業家を発掘し、後押しし、本人の成長を助けること。それこそがVC本来の仕事であるのだと、コースラは言う。 また、世の中にインパクトを与えるような事業を創造するのに失敗は付きものだ、とも言う。失敗なく立ち上がるようなことはあり得ないし、逆に失敗がない事業はインパクトが小さい。
・よく誤解されることだが、何も失敗を奨励しているわけではない。失敗はない方がいい。 問題は、その質だ。致命的な失敗は避け、なるべく小さくし、早く結果が出る形で失敗を重ねる。失敗の条件を知ることが大きな成功への道につながっている。
・コースラもそうだが、実はVCの動機は、スタートアップを通して世界を変えるような新しい事業や産業を創造したい、という根源的な欲求にある。 もちろん、成功のバロメーターはもうけであるが、それが真の動機にはならない。世界を変えるような事業を創造すれば、巨万の富は後からついてくると考えているからである。
・とはいえ、VC自身も投資先企業の失敗を想定しているから、複数のスタートアップに投資することにより、リスクを抑えている。 失敗の可能性が大きい事業を多く手掛け、一握りの大成功した事業によって、全体の投資リターンを得る。そんなパラドックスを抱えるのが他の投資ファンドとは違うところだ。
▽「ジキルとハイド」の二面性
・一方、その資金は、年金ファンドや大学の基金のような「既存の枠組み」にいる金融機関から調達する。  なぜ、一寸先も分からないような事業創造へ投資するVCに、リスクに敏感で投資リターンの予想が中心課題である金融機関が出資するのか。 それは、VCに投資リターンの長期的なトラックレコードがあるからだ。実際、VCに投資する金融機関は、VCの仕事の中身にはあまり関知しない。あくまで関心は投資リターンなのだ。
・だから、VCの運用者であるジェネラルパートナー(GP)には、運用の仕方に関し最大限の裁量が与えられる一方で、VCへの出資者(LP)には投資リターンだけを心配するように役割分担がされている。 これが、お互いに全く文化や価値観の違うGPとLPの世界をつなぐことによって新しい産業を創造する、という見事なシリコンバレー流の仕組みなのだ。 その点、投資リターンが高ければ高いほど、よりよい案件が集まってくる。LPは必ず投資リターンを求めるべきで、冒頭の経営者の誤解はここにある。
・VCとは不思議なものだ。金の亡者でもロマンチストでもない。金もうけが動機ではないのに、巨額のもうけが成功の証しとなる。世界を変えたいという自己中心的な動機で、起業家という他人の成功を後押しする。  その実現のためには、折り目正しい金融機関から資金を調達し、利益を還元しながら、コンプライアンスや財務報告も完璧にこなす。そんな二面性がある。 真のVCとは、「ジキルとハイド」なのだ。(敬称略)
http://diamond.jp/articles/-/150305

第三に、Translink Capital(トランスリンク・キャピタル)マネージング・パートナーの秋元信行氏が12月27日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「大企業とスタートアップ企業の協業に潜む4つの落とし穴」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽大企業とスタートアップの協業が上手く行かない理由
・大手企業とスタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指した取り組みが活況を呈している。以前はIT関連企業が多かったが、最近では金融や鉄道、食品、スポーツ業界などでも非常に積極的に取り組まれており、もはやオープンイノベーションはIT業界の専売特許ではなくなってきた。
・オープンイノベーションとは、自社内だけでなく、他社(異業種、スタートアップ企業、大学など)の技術やサービス・経験を組み合わせることで、新たな価値を創出しようとするもの。イノベーションが起こりにくい大手企業と、イノベーション発想は持っているものの企業としての総合力が不足しているスタートアップ企業が、互いの強みと弱みを補完し合う意味で協業するケースも多い。 特に「インキュベーションプログラム」「アクセラレーションプログラム」といった、オープンイノベーションへの取り組みが大企業で多く実施されるようになってきたのも最近の傾向だ。
・これは、大手企業側がプログラムを主催し、社外専門家のサポートを受けながら、技術・経営など様々な点からスタートアップ企業の成長を支援するもので、出資提携、協業等のオープンイノベーションのパートナーとなり得るスタートアップ企業の発掘を主な目的とするケースが多い。 また、大手企業がスタートアップ企業への出資、協業促進することを目的にしたコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立する動きも加速している。
・この大きな流れに呼応するように、最近では企業の垣根を超えたオープンイノベーション実務担当者、CVC関係者のコミュニティも形成され、各社の取り組み概要や失敗事例、ノウハウ共有が活発に行われている。だが、こうした取り組みが増加しているものの、その一方で、これらが事業として成功するケースはまだまだ少ないのが実情だ。
・取り組みが増えている今、なぜ失敗したのか、どこに落とし穴があるのかを学ぶことで、成功の可能性を高めることが必要になっている。そこで今回、大手企業がスタートアップ企業との協業で陥りがちである「代表的な落とし穴」について見ていきたい。
▽落とし穴1:手段の目的化
・落とし穴の1つ目は、「手段の目的化」だ。オープンイノベーションの本来の目的が明確になっており、常にそこを目指して活動していくことが徹底されていないと、単に短期間で「やっている感」を出すための取り組みに走ることになる。
・前述したとおり、「アクセラレーションプログラム」は、大手企業が自社の持つ総合的な企業力とスタートアップ企業の持つ斬新なアイデアとを掛け合わせて新たな価値を創出したり、スタートアップ企業に対してビジネスに資するメンタリングを提供したりすることで、その成長を加速させたりする。また、そのプログラムを通じて大手企業社員もスタートアップ企業と接することで、起業家目線を身につけ、自社企業文化に新しい風を吹き込む人材へ成長するなど、様々な目的がある。
・非常に意義ある取り組みではあるが、本来、目指していた目的を達成できたか否かを判定できる結果が出るには、かなり時間が掛かる。だが、変化の速い昨今のビジネスにおいて「結果が出始めるのは3年後くらいから」というものは、なかなか許容され難い。そこで、短期的に「成果を出している感」を醸し出す必要が出てきてしまう。ここで起こりがちなのが「手段の目的化」だ。
・プログラムそのものを無難に回すことや、イベントが盛り上がっているかどうかを重視してしまう。本来、その取り組みを行うことで結果に結びつけることが目的であるのに、盛り上げることそのものが目的化されてしまうといった状況である。
・また、大企業がスタートアップ企業に対して、少額な業務委託契約を発注する行為も、手段の目的化にあたるだろう。新たな価値創造といった大きな成果を目指す協業は、そう簡単に実現しない。しかし、短期的な「やっている感」を出すために、とりあえず下請け的業務をスタートアップ企業へ発注し、お茶を濁すという行為である。
・戦略的なシナジー創出を目的とするCVCの場合であれば、「とりあえずの出資件数稼ぎ」が該当するかもしれない。出資そのものは有望スタートアップ企業発掘のための手段であり、目的ではないケースでも、独立したCVCにとっては各年度のKPIのひとつに出資件数が採用されることが多い。短期的な成果として、出資件数稼ぎに注力してしまうのだ。これも、よくある「手段が目的化」しているケースだ。
▽落とし穴2:スタートアップへの「リスペクト」
・オープンイノベーションを推進するパートナーとして、大手企業がスタートアップ企業と対等な立場で案件に取り組む姿勢は非常に重要だ。 共に新たな価値創造を目指す仲間であるわけで、下請け扱いをしていたら新たな価値創造など実現するわけがない。感情的な部分ではあるが、スタートアップとの協業においては極めて重要である。
・このポイントは10年以上前から同じことが言われており、日々スタートアップ企業と接している大手企業の関連部門メンバーにはかなり浸透している。 だが、他部門メンバーなど全体にそのマインドが根付いていないケースも多い。いくつかの理由があるが、結局はスタートアップ企業をリスペクトすることが「腹落ち」していないのではないか。
・そこで、次のような考え方をしてもらうと「腹落ち」につながると思うので紹介したい。 昨今のスタートアップ企業は、社会課題の解決に正面から挑戦しているケースが増えている。本気で世の中を良くしたい、困っている人たちを助けたいという強いモチベーションを胸に起業している起業家が多い。それに対して、新規事業を立ち上げようとしている大手企業では、一人ひとりが社会課題の解決まで本質的に考えているとは言い難い。 産声をあげたばかりの小さな会社が、本気で社会課題の解決に向けて汗水垂らしている。彼らの信念、視座の高さを純粋に見れば、自然とリスペクトの念が湧いてくるはずだ。
▽落とし穴3:エッジに「ヤスリ掛け」
・新しい価値を生み出すアイデアや事業は、常に“エッジ”が立っているものだ。よって初期段階では、賛否両論が多く飛び交う傾向にある。オープンイノベーションを「異質なアセットの組み合わせによる新しい化学反応=新しい価値創出」と捉えるのであれば、なおさらである。
・しかし、大手企業がある案件を進めようとすると、社内関係部門との合意形成や経営幹部の承認を得る必要がある。様々な関係者からの要求や質問、疑問を解決するために尖った部分を丸くしていかざるをえないことが多々発生する。この「合意形成」プロセスが、まさに「エッジにヤスリを掛けてしまっている」行為だ。  その結果、エッジの効いた技術・サービスに魅力を感じ、スタートさせようとした取り組みは、丸くヤスリ掛けされ、結局多数の合意形成が可能な、無難な部分だけに限定した通常の業務委託契約になってしまう。 せっかくのオープンイノベーションを目指したスタートアップとの取り組みが、結局「少しだけ従来と違うアプローチをした業務委託契約」になってしまう。
▽落とし穴4:1/1評価
・大手企業によるスタートアップ企業への投資や協業がスタートした当初は、オープンイノベーションによる価値創造のための活動や案件に対して「ポートフォリオの一部」、全体の1/10や1/100といった見方がされる。 しかし少し時間が経過し始めると、「ポートフォリオの一部」という考え方が薄れ、協業案件や出資案件を一つひとつの独立案件として、1/1で評価し始めてしまう傾向がある。1件1件をきちんと評価すること自体を否定するものではないが、オープンイノベーションの取り組みは百発百中というわけにはいかず、1/1での評価には馴染まない活動である。
・こういった評価に移行すると、実質的に百発百中を求められることになり、失敗が許容されないという雰囲気が醸成され、活動そのものが萎縮していく。エッジの効いたスタートアップ企業との新たな取り組みに、チャレンジし難い環境が定着してしまうのだ。
▽落とし穴を避けるには?
・これらの落とし穴を避けるためにはいくつかポイントがあるが、重要な2点を紹介する。 1つ目は、骨太なゴール、実現したい青写真を明確化することである。オープンイノベーションやスタートアップ企業との協業もその実現手段であって、目的ではないはずである。その上で常にブレずに、骨太なゴールに向かうプロセスを回すことが重要である。
・アクセラレーションプログラム内のスタートアップ企業に対するメンタリングでよく指摘される、ゴール、それに向けてのマイルストーン、仮説、KPI設定を行い、それに向かってPDCAを回すといった作業を、大手企業自身の取り組みでも実践することが重要である。 注意しなければいけないのは、これらのプロセスがしっかりとゴールを向いているかである。これを徹底することが「手段の目的化」という落とし穴を回避する近道だ。
・2つ目は、評価手法の見直しだ。 オープンイノベーションは、実践の場に数多く立ち続けることが重要になる。そのため、アクセラレーションプログラムやインキューベーションプログラム、CVCなどの取り組みが活発化している現状は、非常に好ましい状況だと思う。しかし、ここで確認しなければならないのは、オープンイノベーションの推進を担う大手企業のメンバーに対する評価制度が、ある程度長い時間軸で、失敗を評価する仕掛けになっているか否かである。
・オープンイノベーションの取り組みは、チャレンジが大前提だ。しかし、チャレンジには必ず失敗がつきまとう。特にスタートアップ企業とのオープンイノベーションの場合、高い確率で失敗するだろう。しかし、失敗の中身をきちんと見ることが大切だ。大手企業では、社員の業績評価は半年サイクルが一般的だが、数年単位で取り組みを評価するなど、「失敗を評価しながら、成功を粘り強く待つ」仕掛けを持つことが何よりも重要である。
http://diamond.jp/articles/-/154463

第一の記事で、 『シリコンバレーの「エコシステム」』、は確かにうらやましいような素晴らしい仕組みだ。 『日本のベンチャー投資額は米国のわずか2%』、というのはさんざん言われていることだが、こうした記事のなかで読むと、改めて彼我の差の大きさを痛感させられる。 『大企業や行政支援とは一線を画すエッジ・オブ』、 『音楽、ゲーム、イベントなどに精通 多彩な経歴を持つ創業者たち』、などを読むと、エッジ・オブは面白いインキュベーションの場になる潜在力を秘めているようで、今後を注目したい。
第二の記事で、VC界の大物の一人、ビノッド・コースラ(Vinod Khosla)の主張はさすがに説得力がある。 『「専門家や経験を積んだ経営者、それにVCによる未来事業に関する意見はほとんど当てにならない」とコースラは喝破する。 起業家は、24時間寝ても覚めても事業のことを考え、市場に最も近いところにいて最も多くの情報を持っている。専門家たちの「コンサルティング」や「指導」を真に受けてしまうような起業家が成功するのかといえば、答えは否だ。 周りの誰も理解できない未来の市場を見据え、自分のビジョンのみを信じて切り開く。そうした起業家を発掘し、後押しし、本人の成長を助けること。それこそがVC本来の仕事であるのだ』、 『真のVCとは、「ジキルとハイド」なのだ』、などからみると、日本のVCの多くが大手銀行などの関連会社である現状は、心細い限りだ。
第三の記事で、『落とし穴』として、 『手段の目的化』、 『スタートアップへの「リスペクト」』、 『エッジに「ヤスリ掛け」』、 『1/1評価』、などが列挙されているが、なるほどと納得させられた。 『落とし穴を避けるには?』、ももっともであるが、実際にそれに従うのは容易ではなさそうだ。
タグ:(その2)(日本からアップルやグーグルが生まれない根本的な理由、金の亡者でもロマンチストでもないベンチャーキャピタルの二面性、大企業とスタートアップ企業の協業に潜む4つの落とし穴) ベンチャー ダイヤモンド・オンライン 「日本からアップルやグーグルが生まれない根本的な理由」 渋谷に起業支援ビルがオープン 「EDGEof」 米トップ5に入る企業を育てたシリコンバレーの「エコシステム」 日本のベンチャー投資額は米国のわずか2% 大企業や行政支援とは一線を画すエッジ・オブ 音楽、ゲーム、イベントなどに精通 多彩な経歴を持つ創業者たち 校條 浩 「金の亡者でもロマンチストでもないベンチャーキャピタルの二面性」 ビノッド・コースラ(Vinod Khosla) 主役は起業家であり、VCはそれを支援するプロデューサーである」 「失敗」の重要性 「専門家や経験を積んだ経営者、それにVCによる未来事業に関する意見はほとんど当てにならない」とコースラは喝破する 起業家は、24時間寝ても覚めても事業のことを考え、市場に最も近いところにいて最も多くの情報を持っている。専門家たちの「コンサルティング」や「指導」を真に受けてしまうような起業家が成功するのかといえば、答えは否だ 周りの誰も理解できない未来の市場を見据え、自分のビジョンのみを信じて切り開く。そうした起業家を発掘し、後押しし、本人の成長を助けること。それこそがVC本来の仕事であるのだ VCの動機は、スタートアップを通して世界を変えるような新しい事業や産業を創造したい、という根源的な欲求にある ジキルとハイド」の二面性 秋元信行 「大企業とスタートアップ企業の協業に潜む4つの落とし穴」 大企業とスタートアップの協業が上手く行かない理由 落とし穴1:手段の目的化 落とし穴2:スタートアップへの「リスペクト」 落とし穴3:エッジに「ヤスリ掛け」 落とし穴4:1/1評価 落とし穴を避けるには?
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