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働き方改革(その11)(ギグワーカー化を推奨 「働き方改革」はいかがわしさ満載、年収制限のない「定額働かせ放題」ってマジ?「働かせ改悪」につながるタチ悪法案が今国会で成立見込み、安倍首相が窮地も…「働き方法案」断念できない3つの理由、「働き方改革」のイメージはなぜこれほど胡散臭くなったのか) ・・・タイトル変更(アベノミクスを外す、女性活躍も同様) [経済政策]

働き方改革については、昨年12月31日に取上げた。今日は、タイトルからアベノミクスを外し、(その11)(ギグワーカー化を推奨 「働き方改革」はいかがわしさ満載、年収制限のない「定額働かせ放題」ってマジ?「働かせ改悪」につながるタチ悪法案が今国会で成立見込み、安倍首相が窮地も…「働き方法案」断念できない3つの理由、「働き方改革」のイメージはなぜこれほど胡散臭くなったのか) ・・・タイトル変更(アベノミクスを外す、女性活躍も同様)である。

先ずは、同志社大学教授の浜矩子氏が1月8日付け日刊ゲンダイに寄稿した「ギグワーカー化を推奨 「働き方改革」はいかがわしさ満載」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2018年の干支は「戌」ではなく「人」じゃないか――。今年は「ヒト」がフォーカスされる年になると思います。 「ヒト・モノ・カネ」という言い方をしますが、グローバル時代が幕開けした当初は、ものづくりが国境を越え、それがどう発展していくのかがテーマでした。そのうちカネが国境を越え、リーマン・ショックが起きるなどして注目された。今度はいよいよ「ヒト・モノ・カネ」の主役であるヒトです。移民や難民、労働生産性や賃金、そしてAIやIoT、ロボットとヒトがどう共存していくのかなど、ここへきてヒトにまつわる話題が増えてきました。
・そんな中、「ギグエコノミー」という言葉が世界的にはやってきています。ギグは「パフォーマンスをする舞台」という感じの言葉。要は、芸人さんが巡業するようなもので、フリーランスや個人事業主となって仕事から仕事へ渡り歩くというライフスタイル。さまざまな理由でギグワーカーが増え、渡り職人化していく人々が増えてきた。被雇用者ではない彼らの働く者としての生存権や基本的人権は、従来の労働法制の枠組みによっては守り切れない。この事態にどう対応するか。この点が世界的に議論されています。
▽労組も復権に向けて頑張って
・ところが日本では、そのような議論に参加することなく、無防備なギグワークの世界に政府が人々を積極的に押し出そうとしている。「柔軟で多様な働き方」の名の下に、「働き方改革」がギグワーカー化を推奨しているのです。つまりは、生存権や基本的人権への配慮に煩わされることは一切なく、使う側が安上がりにこき使える「個人事業主」を増やそうということなのです。税制改正で、19年度から給与所得控除を減らし、基礎控除を増やすことになりました。いかにも、「税金をまけてあげるから、『渡り職人』になりなさい」といっている感じで、いかがわしさ満載です。世界は人々のギグワーカー化を心配している。ところが、日本はそれを奨励している。これが怖い。
・「生産性」という言葉を巡る論議も怪しげです。生産性が上がらないから賃金が上がらないということが盛んにいわれる。ところが、実をいうと、企業は省力化、つまりは人件費を節約するために生産性増強投資をしている。ということは、放置すれば、生産性増強投資が行われれば行われるほど、働く人々の所得は増えなくなることを意味しているわけです。生産性さえ上がればおのずと賃金が上がるというわけではないということです。この辺が実に混迷した形で議論されている。意図的に議論を混乱させている向きもあるでしょう。生産性上昇の成果を労使でどう分かち合うかということに関しては、労組の交渉力が大いに問われるところです。人が焦点となる年においては、労組にも復権に向けて頑張って欲しい。
・生産性上昇は誰のため、何のためなのか。この点について、あくまでも人を中心に据えるまっとうな共通認識が形成されていくといいと思います。さもなくば、これからの人間たちは、ひたすら生産性上昇を目指して頑張りまくることを強要されるか、さもなくば、そのうち機械に取って代わられるか、ということになってしまう。
・時あたかも、アホノミクスが五輪の年だ、日本にとって「目標年」だと騒いでいる2020年が近づいてくる。ますます「生産性だ」「競争力だ」「第4次産業革命だ」「ソサエティー5・0だ」などということが言われるようになるでしょう。そういう話にあおられて、猛烈に効率よく働かないと置いてきぼりにされると不安になったり、世をはかなんだりしないように、我々はしっかり考えなければなりません。
・2018年が人がいじめられるという意味での「人年」ではなくて、人が大切にされる「人年」となるよう、我々は常に覚醒された意識をもって、とんでもないことのごり押しを決して許さない構えで一年を過ごして参りましょう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/220832/1

次に、健康社会学者の河合 薫氏が1月23日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「年収制限のない「定額働かせ放題」ってマジ?「働かせ改悪」につながるタチ悪法案が今国会で成立見込み」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・先日、出演したテレビ番組で、「飲食業会で急増する“お得なサービス”」という特集があった。 月2000円を払えば、一回の来店に付きハンドドリップのコーヒーが一杯飲めるコーヒースタンド。毎日来てもいい。いや、朝晩来てもいい。いやいや、一日何回でも無制限に来店していいので、行けば行くほど、お得になる。 店長曰く、「来店するお客さんはコーヒーを飲むだけじゃなく、サンドイッチなども買ってくれるので利益はかなり大きい」とのこと。
・また月8600円で毎日、豚骨、味噌、汁なしの中から選んで一杯食べられるラーメン屋さんもある。大きなチャーシューとモヤシがトッピングされた、かなりボリュームのあるラーメンである。 店長曰く、「お客さんが新規のお客さんを連れて来ることが多いので、お店の売り上げは昨年比を大幅にクリアしている」とのこと。
・極め付けは月に1万5000円支払うと、料理食べ放題とワイン飲み放題が、何度でも楽しめるフレンチレストラン。店の雰囲気はかなりおしゃれ。ワインの種類も豊富にある。 やはり店長曰く、「連休や天気が悪くなったりするとキャンセルが増えるが、定額だとそれを心配する必要がない」とのこと。
・どれもこれも「こんなにお客さんにサービスしちゃって、お店は損しちゃうんじゃない?」と傍目には心配になる。だけど、なるほど、“定額制”はお店にとってお得なサービスらしい。
・で、まさかまさか「その流れに乗っちゃえ!」ってことではないのだろうけど、定額制が「働き方改革」に盛り込まれることになった。今国会で「企画業務型裁量労働制の適用拡大」、別名「定額働かせ放題法」が成立する見通しである。
▽年収の制限なく「働かせ放題」って
・厚生労働省の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」の答申には、次のような一文がある。 「企画業務型裁量労働制の対象業務への『課題解決型の開発提案業務』と『裁量的にPDCAを回す業務』の追加と、高度プロフェッショナル制度の創設等を行う」 メディアでは「高度プロフェッショナル制度」、いわゆる“残業代ゼロ法案”のことばかりが取り上げられているが、「裁量労働制の拡大」は運用次第では相当にタチの悪い法案になる。どちらも法律が定める労働時間規制から完全に逸脱する制度であるが、最大の違いは年収の制限の有無だ。
・既に知られているように「高度プロフェッショナル制度」では年収1075万円以上という制限がある。だが、「裁量労働制」には年収の制限がない。 企業側としては「見なし残業代を加えた賃金(定額)になっているんだから、どんどん働いてくださいな!労働時間の長さじゃなく、労働の質や成果で評価するのだから、効率よく能力を発揮してね」と、大手を振って「本音」が言えるようになる。 それが年収500万円だろうと、300万円だろうと、はたまた200万円という低賃金の労働者でさえ対象にすることが可能になるのだ。
・だいたい裁量労働制とは名ばかりで、対象となる労働者に「裁量」が与えられているかも、はなはだ疑問だ。それに「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」という、言語明瞭意味不明な言い回しも妙に気になる。 というわけで今回は「定額働かせ放題法のリスク」について、あれこれ考えてみる。
・まず本題に入る前に、裁量労働制について説明します。 裁量労働制は、正式には「裁量労働のみなし時間制」と呼ばれ、1987年の労働基準法改正で導入された。当初は、システムエンジニアなどの専門職だけに適用されていたが、98年の改正で「企業の中枢部門において企画・立案・調査・分析の業務」を行なう一定範囲のホワイトカラー労働者を適用対象とする新たな制度が設けられた。
・前者が「専門業務型裁量労働制」、後者が「企画業務型裁量労働制」である。時間外労働はあくまでもみなし時間が適用されるので、さっさと切り上げれば得するが、残業が増えれば増えるほど損をすることになる(時給が減る)。 企画業務型の方が濫用されるおそれがあるため、現行では労使委員会における5分の4以上の多数決による決議を要するなど、専門業務型より要件は厳格になっている。
▽「見なし残業」が激増しそうな予感…
・厚労省によれば、「専門業務型裁量労働制」を導入している企業は2.1%であるのに対し、「企画業務型裁量労働制」は0.9%と少ない(「平成 28 年就労条件総合調査の概況」より)。 また、みなし時間の根拠の算出方法について調査したところ、専門業務型では、「通常の所定労働時間」の割合が最も高く47.6%、次いで「今までの実績から算出」が33.5%。 企画業務型では、「不明」が44.9%で最も高く、「通常の所定労働時間」が31.7%、「今までの実績から算出」が20.0%(データはこちら)。
・以上のことからお分かりのように、「適用のハードルが高く、半数近くの企業がみなし残業の根拠もなんだかよく分かんな~い」としている企画業務型が、今回の法案で拡大される見込みなのだ。 「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」という、算出方法の不明以上に意味不明の文言が連なっているが、提出される法律案を読んでみると「な、なぬ!?」って感じでして。
・「課題解決型~」とは法人を顧客とした営業マンっぽい人、「裁量的~」とは管理職っぽい仕事をしてる人と解釈できる。 「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該顧客に対して販売又は提供する商品又は役務を専ら当該顧客のために開発し、当該顧客に提案する業務 (主として商品の販売又は役務の提供を行う事業場において当該業務を行う場合を除く)」(by 提出される法律案、該当記述は10ページ目))
▽野村不動産では問題をサキドリ
・17年末、野村不動産が裁量労働制を社員に違法に適用していたとして是正勧告を受けたが、これぞサキドリ! 野村不動産によれば、全社員約1900人のうち、約600人に裁量労働制を適用。課長代理級の「リーダー職」と課長級の「マネジメント職」に就く30~40代が中心で、営業戦略の企画・立案と現場での営業活動を担っていた。 つまり、先に説明したとおり、現行では「営業職」は違法だが、改訂されれば違法ではなくなる可能性が高い。
・ってことは……? ええ、そうです。「定額働かせ放題」の対象者は、とんでもなく増えるリスクが存在しているのである。 といった書き方をすると、 「裁量制の何が悪い?」 「煽ってる」 と口を尖らせる人たちがいるが、私は「裁量制を悪い」と言ってるわけじゃない。ましてや、煽っているわけでもない。
・「自分で自由に決めることができる権利」である裁量権は、ストレスの雨に対峙するための大きな傘であるとともに、働く人のやる気を喚起し、職務満足感や人生の満足度を高めるうえで非常に重要な役目を担う。国内外の多くの実証研究でも確かめられているし、寿命にも影響するほど強い影響力を持つ。
・そして、恐らくこれから組織を動かしていく上でも、個人の働き方を追求する上でも裁量制はキーワードになる。少なくとも、私はそう考えている。上司と部下の関係に代表される組織風土や人間関係と同程度、あるいはそれ以上に重要な、ストレスの雨に対峙する傘となることだろう。
・だが、 国会に提出される法律は、表向きには裁量権があるように見えるが、企業側に都合良く使われる可能性が高い。
・働き方改革だの、柔軟な働き方だの、過労死や過労自殺を撲滅したいのであれば、
 •インタバール規制(11時間)の徹底と厳罰化
 •みなし時間の根拠を明確にする義務と罰則規定
 •実労働時間の把握の義務と罰則規定 を付け加えるべき。努力義務ではダメ。罰則は必須だ。
・これらがない限り、働く人は雇用者側が投げかける「自由」という「不自由」に、囚われてしまうことになる。  それに裁量制の根底にあるのは、“ペイ・フォー・パフォーマンス”の考え方だ。 ならばそのパフォーマンスに見合ったペイを算出する方法の議論も欠かせないはずなのに、すべては企業任せだ。「職務内容・達成度・報酬などを明確にした労使双方の契約」とするなら、それが達成できなかったときのペナルティーは、いったい誰が払う? 働く人? そう。立場が弱い働く人。“命”をすり減らして働き続けることでペナルティーを払うという選択を余儀なくされるのだ。
▽グラフで見る「裁量労働制」の問題点
・2014年に厚労省と労働政策研究所が、「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査」を行なっているのだが、その結果をみれば問題点がより明確になる。 (「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査」の結果を基に河合作成)。
・「企画業務型裁量制の社員」と「一般の社員」の労働時間を比較すると、裁量労働制の方が労働時間は長いことが分かる。収入のボリュームゾーンは700万円前後。900万円以上が20.9%である一方で、500万円未満も14.3%。現在の厳しい条件の中でこれなのだから、今後対象者が拡大されれば当然、懸念すべきだ。そもそもみなし残業の算定を半数近くが「不明」としている時点で、“ペイ”の妥当性に言及しないのはおかしい。
・次に「裁量労働性への満足度」だが、7割以上が満足していると回答しているが、不満とした2割強に注目すべきだ。 不満の原因を探ると、
 •半数近くが「労働時間(在社時間)が長い」とし、
 •4割が「業務量が多過ぎる」とし、
 •3割が「賃金が低い」とした。  さらに、
 •3割弱が「パフォーマンス(人事評価)が不適切」とし、
 •4人に1人が「みなし時間の設定が不適切」としている。
・裁量労働制の適用を拡大するのに、これらの不満を解消する手立ては議論されたのか? 法律案に生かされているのか? 検証するための貴重な資料なのに、これをムダにしてどうする? さらに、現行では「企画業務型裁量制の対象業務に当たるか否かは、個々人の労働者ごとに判断され、「企画課」などの部門の全業務が対象業務になるわけではない」としているのに、調査では、59.1%が「部門または職種全体が適用されることとなっている」と回答している。
▽現状の「裁量労働制」にも課題ありあり
・で、ここからが「裁量制=自由、働きやすい」という方程式を議論する上で大切なのだが、「裁量労働制の適用は期待通りであったか?」との問いへの答えは次のようになった。
 •「仕事の裁量が与えられるので仕事がやりやすくなる」については、半数以下の45.1%が「概ね期待通り」 •「仕事を効率的に進められるので、労働時間を短くできる」については、3人に1人(38.3%)が、「あまり期待通りとなっていない」
 •「能力や仕事の成果に応じた処遇が期待できる」については、31.2%が「概ね期待通り」、41.1%が「一部期待通り」としている一方で、26.6%が「あまり期待通りとなっていない」。
・「仕事と生活のバランスを保ちやすくなる」については、
 •「概ね期待どおり」34.0% •「一部期待どおり」32.9%
 •「あまり期待どおりになっていない」31.7% と意見が割れた。
・いかなる試み(プログラム)も実態を捉え、当初目的とした成果が上げられているかどうかを評価し(プロセス評価)、問題点を見極め、それを改善しなきゃダメ。それをないがしろにして対象者を広げれば、どんどんと目的から外れ、使いものにならないプログラムと化す。
・繰り返すが「裁量制」という人が生きる力を高めるリソースを、いたずらに使わないでほしい。もし、今のまま法案を成立させるなら、裁量労働制などと、あたかも労働者に聞こえのいい言葉を使わず、堂々と「定額働かせプラン」と言ってほしい。 
・ふむ。ポスターにでも使えそうなフレーズだな。 「“定額制働かせプラン”でコストカットを! 厚生労働省」  労働者が払うのは「労働力」であることをお忘れなく……。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/012200140/?P=1

第三に、2月22日付け日刊ゲンダイ「安倍首相が窮地も…「働き方法案」断念できない3つの理由」を紹介しよう。
・裁量労働制の拡大を含む「働き方改革」関連法案をめぐって、安倍政権が窮地に陥っている。20日の衆院予算委集中審議でも厚労省の“捏造”データについて野党から徹底攻撃され、安倍首相は言い訳と防戦一方。政府は、今月下旬か、ずれ込んでも3月上旬、という関連法案の国会提出姿勢を崩していないが、与党内からは「これはまずいんじゃないか」と先行きを不安視する声も出てきた。
・「捏造」データは、一般労働者の「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」と裁量労働者の「1日の労働時間」を同列で扱い、裁量の方が労働時間が短いという結論を導き出したヒドいものだ。野党6党は法案提出の断念を求めることで一致。8本の関連法案から裁量労働制拡大の部分を外すことやデータの再調査などを提案している。これに政権は平謝り。だが、安倍には法案断念に絶対応じたくない理由が3つある。
①アベノミクスの代替(「日銀頼みの金融緩和政策も限界。それに取って代わる成長戦略が働き方改革です。法案が出せなければ成長戦略のシナリオが狂ってしまう」(官邸関係者) 少子高齢化を「国難」とする安倍政権の懸念は労働力不足で国力が落ちること。「生産性革命」のために老若男女問わずモーレツに働いてもらわなければならず、そのための法案なのである。)
②財界・連合とのバーター(法案は厚労省の諮問機関である労働政策審議会(労政審)の議論を経て決定されたものだが、その労政審の上に置かれたのが「働き方改革実現会議」だ。経団連の榊原会長と連合の神津会長はメンバーだった。 財界にとって残業代を減らせる裁量労働制の拡大は悲願。人件費抑制につながる働き方改革実現のため自民党への献金額を増やし、賃上げの官製春闘にも応じてきた。一方、連合も「長時間労働是正」とセット扱いにされ、法案作成で官邸と握ってきたのが実態だ。 「だからなのでしょう。今回の不適切なデータについて、連合はもっと批判していいのに反応が鈍い」(野党関係者) 連合を黙らせるためには8本セットで法案提出が絶対というわけだ。
③安倍首相のメンツ(実はこれが一番大きいかもしれない。今国会を「働き方改革国会」と命名したのは安倍首相本人である。 「安倍さんが自らクビを絞めてしまった。働き方法案は今国会の目玉ですから、予定通り出さなければ政権は持ちません」(自民党関係者) とはいえ、自民党内からは、「データを再調査してスッキリさせた後の方がいいのは事実」「生煮えのまま出したら、国会審議が持たない」「森友問題より世論の批判は激しくなるんじゃないか」などという見方も出てきている。安倍首相は、このまま押し切れると思っていたら甘い。)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/223688/1

第四に、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が2月23日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「働き方改革」のイメージはなぜこれほど胡散臭くなったのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽働き方改革関連法案が紛糾 何がいけなかったのか?
・国会で働き方改革関連法案に関する論戦が繰り広げられている。安倍晋三首相は裁量労働制で働く人の労働時間について「一般労働者より短いデータもある」と答弁し、「前提とするデータが不適切だ」と野党から追及されて、発言を撤回した。その影響もあってか、厚生労働省は裁量労働制拡大の実施を延期する検討に入った。与党は働き方改革関連法案を今国会中に成立させたい構えだが、議論は依然、紛糾している。
・この問題は、乗せられた安倍首相にももちろん責任はあるが、根本的には厚労省が自らの策に溺れた観がある。今回の働き方改革関連法案が、国民に胡散臭いイメージを与えてしまった段階で、すでによくないのだ。
・働き方改革には、「高度プロフェッショナル制度」という、より悪質な問題が控えているのだが、今回は国会で問題になっている裁量労働制を軸に、この問題を解説してみたい。 そもそも裁量労働について語り始めると、私が入社した頃の外資系コンサルファームでの出来事を思い出す。入社2年目、ある巨大企業の企業改革のコンサルティングが始まったばかりのことだ。
・プロジェクトが始まった当初、私を含むコンサルティングチームは、クライアントの本部長、部長級の管理職、現場のキーマンなどに対し、10日間かけて初期ヒアリングを重ね、会社の問題点を整理する作業に忙殺されていた。 週明けにクライアント幹部との最初の大きな検討会があり、そこではその巨大企業が抱える問題が何であり、それをどのように改革すべきか、コンサルファームとしての問題提起をぶつけることになっていた。私たち若手社員はほぼ2日間徹夜で、これまでのヒアリング作業をとりまとめていた。
・その日、コンサルファームのパートナー(共同経営者、つまり社内で一番偉い人)に対して、コンサルティングチームとしてのドラフト(ほぼ完成させた報告書)を見てもらい、内容を吟味する目的の社内ミーティングが開かれた。 私を含め、それほど寝ていない赤い目をしたチームメンバーが、10日間の幹部ヒアリングでわかったことを整理して報告した。「この会社の問題はAである」と。
・それを聞いていたパートナーは、おごそかに口を開いて我々にこう言った。 「おまえらは何もわかっていないんだな」 「実はな」とパートナーは話を続けた。「一昨日、今回のプロジェクトのキーマンである経営企画担当専務と1対1で話し合いをした」というのである。
・専務はこう言ったそうだ。 「おそらく御社のコンサルタントからは『Aが問題だ』という話が挙がって来るだろう。しかし、そんなわかり切ったことのために高い報酬を払ってコンサルファームを雇ったわけではない。その裏にある誰も気がついていないBという問題について取り上げることが、今回の依頼の中心命題なのだ」 
・覚えているのは、そこからまた2日間、週末を全部つぶして必死になってヒアリング資料を読み返し、Aという問題の陰にBという、より本質的な問題が存在しているという報告書に不眠不休で書き換える作業を行ったことだ。
▽若いときにいたコンサルでは時給が「マック以下」だった
・私ではないが、会社に土日を含めて朝9時から夜12時まで毎日いる若手社員がいた。彼が計算してみたところ、当時の1ヵ月の給料を実労働時間で割ると、マクドナルドの時給より低かったという。 その頃はそういった働き方が当然だと思っていたが、今になってみると理不尽であったことに改めて気づかされる。前述の話で言えば、パートナーがクライアント専務からの情報を入手した段階でチームに共有していれば、我々の週末作業は必要なかったのだから。
・残業代が支払われる会社だったら、この一件のようにチーム全体での週末作業が起きれば、100万円単位の残業代が追加発生する。だからそうならないよう、経営者も考えて指示を出すはずだ。しかし、裁量労働制で実労働時間と対価がクリアになっていないから、経営者は手抜きをして指示が遅れるのだ。
・足もとで働き方改革が叫ばれるようになった大きなきっかけの1つが、電通の女性社員が週に10時間しか寝られない環境下で働き続け、過労によって自らの命を絶った事件だ。ところが今回の法案では、これまで一部の仕事に限られていた裁量労働制の範囲を、顧客のニーズを分析して提案を行う営業社員にまで広げることが盛り込まれている。
・広告代理店の営業は、クライアントの置かれた状況を分析し、そこに対して最適な広告プランを提案し、クライアントから受注したプラン通りの広告を制作し、媒体に載せる仕事だ。だから今回の法案では、亡くなった電通社員も裁量労働者になってしまう。
・そもそも裁量労働とは、プログラマーがいる一部の職場のように、能率がよい社員が定時に帰り、能率が悪い社員がだらだらと残業をするような職場環境を是正するために導入されたものだ。ITエンジニアの世界で、能力が低い社員の方が残業と収入が増えるのは悪い労働環境だ、と言われるのはわかる話だ。これでは日本のIT競争力が下がってしまうという議論が起き、裁量労働制が導入されたのは理解できる。
・しかし、一部の広告営業もそうかもしれないが、お客の発言力が強くて逆らえない一方、上司が理不尽な仕事を要求してくるような職場は、世の中に少なくないはずだ。そうした現状を精査せず裁量労働制を導入するような法案を、厚労省がなぜ働き方改革の柱の1つと考えているのかは理解できない。
▽本当に企業の生産性は上がる? 成長戦略の部品となった働き方改革
・私は、過去のコンサルティング・プロジェクトで関わってきた経緯もあり、こうした問題はよくわかっているつもりだが、裁量労働制を導入して生産性が上がり、従業員が早く帰れるようになりそうな業務はそれほど多くはない。広告営業、不動産営業といった提案営業の分野では、むしろ労働時間は悪化する。ITの分野でも、プロダクト営業にとって裁量労働は、同様によくない仕組みだ。
・公正を期すために申し上げておくと、電通社内では女性社員過労自殺事件をかなり重く受け止めており、経営幹部は真剣に改革に取り組んでいる。この点はきちんと評価すべきことだと私は考えている。 しかし、厚生労働省の中ではこの事件はもう風化しているように感じる。働き方改革は関連法案の中で、日本の生産性を上げるための柱として提案されている。しかしその実は、企業に対する「ムチ」として残業時間の上限規制や同一労働同一賃金が唱えられる一方、それを緩和するための「アメ」として高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の拡大が盛り込まれているのが実情だ。
・つまり冒頭で述べた「なぜ働き方改革が胡散臭く思えるのか」という理由は、働き方改革が企業の手を離れ、労働者の労働環境の改革ではなく、国の成長戦略の一部品になってしまったからなのだ。
http://diamond.jp/articles/-/160999

第一の記事で、 『日本では、そのような議論に参加することなく、無防備なギグワークの世界に政府が人々を積極的に押し出そうとしている。「柔軟で多様な働き方」の名の下に、「働き方改革」がギグワーカー化を推奨しているのです。つまりは、生存権や基本的人権への配慮に煩わされることは一切なく、使う側が安上がりにこき使える「個人事業主」を増やそうということなのです』、との鋭く厳しい指摘は、さすが浜氏だ。 『生産性上昇の成果を労使でどう分かち合うかということに関しては、労組の交渉力が大いに問われるところです。人が焦点となる年においては、労組にも復権に向けて頑張って欲しい』、というのはその通りだ。
第二の記事で、 『裁量労働制とは名ばかりで、対象となる労働者に「裁量」が与えられているかも、はなはだ疑問だ。それに「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」という、言語明瞭意味不明な言い回しも妙に気になる』、 『国会に提出される法律は、表向きには裁量権があるように見えるが、企業側に都合良く使われる可能性が高い・・・これらがない限り、働く人は雇用者側が投げかける「自由」という「不自由」に、囚われてしまうことになる』、などは的確な批判だ。 『「企画業務型裁量制の社員」と「一般の社員」の労働時間を比較すると、裁量労働制の方が労働時間は長いことが分かる』、というのは、その後、問題化した厚労省の「捏造」データで、安部首相に誤った発言をさせたことを、明白に否定する材料だ。 『いかなる試み(プログラム)も実態を捉え、当初目的とした成果が上げられているかどうかを評価し(プロセス評価)、問題点を見極め、それを改善しなきゃダメ。それをないがしろにして対象者を広げれば、どんどんと目的から外れ、使いものにならないプログラムと化す』、というのはその通りだ。
第三の記事で、 『連合も「長時間労働是正」とセット扱いにされ、法案作成で官邸と握ってきたのが実態だ・・・今回の不適切なデータについて、連合はもっと批判していいのに反応が鈍い』、というのでは連合は余りに情けない。かつてであれば、法案は当然、流産になるところだが、連合がこの体たらくでは、安部首相や経産大臣がいまだに強気なのもうなずける。
第四の記事で、 『裁量労働制を導入して生産性が上がり、従業員が早く帰れるようになりそうな業務はそれほど多くはない。広告営業、不動産営業といった提案営業の分野では、むしろ労働時間は悪化する。ITの分野でも、プロダクト営業にとって裁量労働は、同様によくない仕組みだ』、というのは豊富な経験に裏付けられているだけに、説得力がある。
連合はやる気がないとしても、野党はどこまで政府を追及するのだろう。余り期待しないで、見守りたい。
タグ:裁量労働制を導入して生産性が上がり、従業員が早く帰れるようになりそうな業務はそれほど多くはない。広告営業、不動産営業といった提案営業の分野では、むしろ労働時間は悪化する。ITの分野でも、プロダクト営業にとって裁量労働は、同様によくない仕組みだ 「「働き方改革」のイメージはなぜこれほど胡散臭くなったのか」 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博 安倍首相のメンツ ②財界・連合とのバーター ①アベノミクスの代替 安倍には法案断念に絶対応じたくない理由が3つある 厚労省の“捏造”データ 「安倍首相が窮地も…「働き方法案」断念できない3つの理由」 国会に提出される法律は、表向きには裁量権があるように見えるが、企業側に都合良く使われる可能性が高い 企画業務型裁量労働制 専門業務型裁量労働制 年収の制限なく「働かせ放題」って 「年収制限のない「定額働かせ放題」ってマジ?「働かせ改悪」につながるタチ悪法案が今国会で成立見込み」 日経ビジネスオンライン 河合 薫 柔軟で多様な働き方」の名の下に、「働き方改革」がギグワーカー化を推奨しているのです 日本では、そのような議論に参加することなく、無防備なギグワークの世界に政府が人々を積極的に押し出そうとしている 「ギグワーカー化を推奨 「働き方改革」はいかがわしさ満載」 浜矩子 11(ギグワーカー化を推奨 「働き方改革」はいかがわしさ満載、年収制限のない「定額働かせ放題」ってマジ?「働かせ改悪」につながるタチ悪法案が今国会で成立見込み、安倍首相が窮地も…「働き方法案」断念できない3つの理由、「働き方改革」のイメージはなぜこれほど胡散臭くなったのか) ・・・タイトル変更(アベノミクスを外す、女性活躍も同様) 日刊ゲンダイ 「働き方改革」
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