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北朝鮮問題(その16)(米朝首脳会談の先に潜む日米離間、「文在寅の仲人口」を危ぶむ韓国の保守 騙されたと気がつけば トランプは激怒する) [世界情勢]

北朝鮮問題については、2月20日に取上げた。米朝首脳会談を控えた今日は、その16)(米朝首脳会談の先に潜む日米離間、「文在寅の仲人口」を危ぶむ韓国の保守 騙されたと気がつけば トランプは激怒する)である。

先ずは、3月12日付け日経ビジネスオンライン「米朝首脳会談の先に潜む日米離間 「米国第一」への回帰に翻弄される日本」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は川上氏の回答内の段落)。
・トランプ米大統領が3月8日、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談に応じると明らかにした。米安全保障政策を研究する川上高司・拓殖大学教授は、会談の先にあるシナリオのうち最も可能性が高いのは、核・ミサイル開発の凍結。それは日米の離間を促す可能性があると指摘する。
――ドナルド・トランプ米大統領が3月8日、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談に応じると明らかにしました 。驚きました。
・川上:実は私はあまり驚きませんでした。
――え、そうなのですか。なぜでしょう。
・川上:論理的に考えて、米国、北朝鮮、韓国それぞれに得るものがあるからです。 まず北朝鮮の事情からお話ししましょう。北朝鮮は平昌(ピョンチャン)パラリンピックが終了した後に予定されている米韓合同軍事演習をなんとしてでも中止させたい。この軍事演習は北朝鮮にとって切羽詰まった脅威だからです。米国が北朝鮮を先制攻撃する最大のチャンスになる可能性がある。
+北朝鮮が米本土に届く大陸間弾道弾(ICBM)を完成させれば、米国は先制攻撃をしづらくなります。一度の攻撃で、北朝鮮が保有するすべての核兵器を破壊できなければ、米本土が報復攻撃されるからです。米国が「そうなる前に先制攻撃をする」と考えてもおかしくありません。 演習中はさまざまな戦略兵器を朝鮮半島の周辺に動員します。米軍はそのまま、先制攻撃に移ることができる。北朝鮮は米国がこのチャンスを生かす可能性があると恐れています。
+既に決まっている南北首脳会談に続けて米朝首脳会談が行われれば、少なくともその間、米韓合同軍事演習を先送りさせることができる。北朝鮮はその間に、米本土に届く大陸間弾道弾(ICBM)の開発を進めることができるわけです。 北朝鮮としては、ICBMを完成させ最小限抑止を実現した上で、核保有国として米国と協議することが最善であるわけですが、この首脳会談の機会を生かさない手はありません。
――韓国にはどのようなメリットがあるのですか。
・川上:米国が先制攻撃をすれば、北朝鮮の報復を受けソウルが火の海になる公算が大きい。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、そのような事態は避けなければならない。また、彼の悲願である南北統一に向けて前進することができると考えているのでしょう。 加えて、米朝首脳会談の仲介役を果たすことで、文在寅氏は株を上げることができます。
+このように、米韓合同軍事演習の延期もしくは中止について、北朝鮮と韓国は完全に利害が一致しているのです。南北首脳会談を4月末に設定したのもこのためです。この時期は、本来なら演習がピークに達する時期です。南北首脳会談が開かれていれば、米国はその間、先制攻撃に踏み切ることができません。
――米国にはどのようなメリットがありますか。
・川上:米朝首脳会談の結果、北朝鮮が核兵器の開発と保有を完全に放棄することが あればノーベル平和賞ものです。会談に応じる価値は十分にある。 加えて、首脳会談に応じた場合と蹴った場合、そのどちらが秋に控える中間選挙で票につながるかを考えているのでしょう。トランプ大統領は4月末の南北首脳会談の行く末を見てから、米朝首脳会談に応じるか否かの最終決定をする。応じる方が得策と結論した場合には会う。会うだけでも画期的なことですから。決裂しても、北朝鮮がICBMを完成させる前であれば、先制攻撃のチャンスは残ります。決裂をその大義名分にすることもできる。
▽政治の舞台と化した平昌五輪
――マイク・ペンス米副大統領と、金正恩委員長の妹・与正(ヨジョン)氏が平昌に滞在していた2月10日 、両者の会談 が直前にキャンセルになる事態がありました。あの一件は、今回の米朝首脳会談の実現に影響を与えているのでしょうか。
・川上:そう思います。あの会談はけっきょく実現しませんでしたが、そこに至る過程で、米朝が水面下で接触しさまざまな話し合いをしていたと推測されます。米国はその場で、平昌オリンピック後に行われる米韓合同軍事演習が、北朝鮮への先制攻撃に転換しうるものであることを北朝鮮に強く印象づけたことでしょう。それが、北朝鮮の決断を促したと思います。
+ペンス氏が与正氏に声をかけなかった、見ることさえしなかった のは、そうしたプレッシャーが本気であること示す意図だったかもしれない。その後に平昌を訪れたイバンカ氏(トランプ氏の娘)にも、どのような態度を取るべきか、一挙手一投足について指示が出ていたと考えられます。 関連して、興味深い情報があります。米国の病院船「マーシー」が6月に東京港に寄港するのです 。朝鮮半島で有事が起き避難民が日本に押し寄せる事態に備えるもの--と北朝鮮に印象づけるためと考えられます。
――平昌では、オリンピックの祭典の裏で様々な駆け引きがあったのですね。
・川上:はい、まさにオリンピックの政治利用です。文在寅氏は、米朝首脳会談を仲介したことを自らの手柄として誇ることでしょう。オリンピックがこの時期に韓国で開催されたのは偶然にすぎないわけですが。
――米国の東アジア外交の劣化が言われています。トランプ大統領はスーザン・ソーントン氏を東アジア・太平洋担当の国務次官補に指名しましたが、上院の承認が得られていません。駐韓国大使も空席のままです。6カ国協議の米次席代表を務めたビクター・チャ氏の起用を撤回したことが報道されています 。
・川上:私はその点は懸念していません。現在の対北朝鮮外交は国務省ではなく国防総省、七課でもジム・マティス長官が主導していると見ています。
▽考えられる三つのシナリオ
――米朝首脳会談が実現するとして、核・ミサイル開発をめぐる話し合いはどう進むのでしょう。
・川上:米軍関係者と話をすると、次の三つのシナリオが浮かび上がります。 第1は北朝鮮が核の完全放棄を受け入れる展開。これが実現すれば、それに越したことはありません。しかし三つのうち最も可能性が低い。北朝鮮は在韓米軍の撤収、朝鮮戦争の終結と平和条約の締結を見返り条件として求めてくるでしょうし。
+第2は凍結のシナリオです。米国は、北朝鮮が既に完成している核兵器の保有はフリーズする*。しかし、保有数をこれ以上増やすことも、新たな核実験も絶対許さない。北朝鮮は、米本土を射程に収めるICBMの開発も凍結する。 *:数については諸説ある。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所は10~20個の核弾頭を保有していると推定
+第3は決裂です。これは第2のシナリオの次にあり得るでしょう。 北朝鮮は交渉決裂を米国のせいにして、核やミサイルの実験をさらに続ける。米国も、北朝鮮に責任があると訴え、「最大限の圧力」を加え続ける。
▽懸念される日米の認識のずれ
――現実となる可能性が最も高い第2のシナリオは日本にとって最悪のものですね。米本土は核兵器の脅威にさらされないので、非核化に対するトランプ政権の真剣度は薄れる。一方で、日本が受ける脅威は変わらない。日米間の脅威認識にずれが生じます。デカップリング(日米分断)の危機が高まる。
・川上:その通りです。日本は日米同盟に加えて、独自の防衛政策を考える必要に迫られるでしょう。この夏にもそうした状況が訪れるかもしれません。 次に挙げる三つの事態が起これば独自の防衛政策に対する切迫感が高まると考えられますが、いずれも起こる可能性は低い。第1は尖閣諸島をめぐる日中の衝突。第2は中国による台湾への侵攻。そして第3は朝鮮半島有事です。 こうした事態が起こらず日本人の切迫感が高まらない中で、デカップリングが進んでいく。
――第2の凍結のシナリオは米中関係にどのような影響を及ぼすでしょう。
・川上:米国と中国は大きく言うと、宥和の方向に向かっています。もちろん貿易の問題はありますが。米国は昨年12月に「国家安全保障戦略」を発表しました。この中で、中国を「revisionist power(修正主義勢力)」と位置づけています。従来は「potential adversary(潜在的な敵国)」としていた。つまり、中国は競争相手ではあるけれども、敵ではないということです。敵対姿勢を完全にトーンダウンしている。
+第2のシナリオはこの流れを加速させるかもしれません。米国は北朝鮮を先制攻撃しないのですから、中国にとっても歓迎すべき話です。 米中の宥和は日米同盟を希薄にすることにつながります。同盟は、敵があってこそ真剣味が増すもの。敵がいない同盟は希薄化せざるを得ません。
+北朝鮮の一連の動きを見ていると、日米の手の内を読み切っている観があります。中国がインテリジェンスを提供していることが考えられます。中国は100年の単位でものを考える国です。米国と歩調を合わせて制裁強化に進んでいますが、その一方で、北朝鮮への支援を続けていることでしょう。北朝鮮が核兵器を保有し、日米に脅威を与えている状況は中国にとって悪いことではありません。
+さらに言えば、北朝鮮に対しても冷徹な姿勢を保っているでしょう。金正恩氏を取り除き、金正男氏の息子に後を襲わせることも視野に入れていると考えられます。
――中国の外交は二枚腰、三枚腰というわけですね。日本独自の防衛策として、どのようなものが考えられますか。 
・川上:以前にお話しした、核持ち込みや核シェアリング、さらには核武装の議論が始まる可能性があります(関連記事「米安保戦略を読む、実は中ロと宥和するサイン」)。
▽「米国第一」の米国に頼り続けられるか
――第2のシナリオへの道は、大統領が代わると変わるものでしょうか。つまり、「米国第一」を主張するトランプ氏が大統領だから選ぶ選択肢なのか。それとも、誰が大統領になっても米国はこの選択肢を選ぶのか。
・川上:誰がなっても同じだと思います。米国はオバマ大統領の時から、米国第一の道を事実上歩んでいました。ロシアによるクリミア併合を許し、化学兵器を使ったシリアへの軍事攻撃も見送っています。オバマ氏は独立宣言の起草に加わった建国の父の一人、トーマス・ジェファーソンの考えを信奉していました。ジェファーソン主義は自由と平等を重視する一方で、「孤立主義」「一国平和主義」の性格も持っています。それゆえ「世界の警察」からも降りた。
+ジェファーソン主義は米国という国の本質です。第2次世界大戦後から今日まで覇権国であったことの方が米国にとって異常な状態と言えるかもしれません。米国は覇権国の座を戦争することなく他の国に明け渡すかもしれないですね。「トゥキュディデスの罠」(注)の話よろしく、覇権の交代は戦争を招いてきました。しかし、米国が自ら降りることも考えられる。
(注)トゥキュディデスの罠:古代アテナイの歴史家、トゥキディデスにちなむ言葉で、戦争が不可避な状態まで従来の覇権国家と、新興の国家がぶつかり合う現象を指す。アメリカ合衆国の政治学者グレアム・アリソンが作った造語(Wikipedia)
――少なくともアジアではそうなる可能性がある。
・川上:そうですね。
―― だとすると、TPP(環太平洋経済連携協定)やアジア・ピボットを進めていたのはいったい何だったのでしょう。
・川上:幻想だったのかもしれません。私は米国が「アジア・ピボット」を「リバランス」と言い換えたことに衝撃を受けました。米国覇権体制の下で平和を維持するのではなく、バランス・オブ・パワーを維持することで平和を維持する存在に、自国の位置づけを自ら変更したことを示す出来事だったからです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/030900126/?P=1

次に、日経新聞編集委員の鈴置 高史氏が3月15日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「「文在寅の仲人口」を危ぶむ韓国の保守 騙されたと気がつけば、トランプは激怒する……」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問)。
・(前回から読む) 米朝首脳会談がもたらすのは平和か、それとも戦争か――。 
▽「非核化」発言は本物か
・鈴置:金正恩(キム・ジョンウン)委員長は本当に「非核化する」と言ったのだろうか――。韓国政府の説明を疑う人が出てきました。  トランプ大統領を北朝鮮との対話に引き出すため、文在寅政権が「仲人口」(なこうどぐち)――縁談をまとめようと仲人が双方に都合のいい話をする――を駆使する様子が垣間見えるからです。
+
・3月5日に特使として北朝鮮を訪問し、金正恩委員長と会談した鄭義溶(チョン・ウィヨン)青瓦台(大統領府)国家安保室長。平壌(ピョンヤン)から戻った翌3月6日、訪朝結果を箇条書きにしてブリーフしました。 青瓦台の「鄭義溶首席特使の訪朝結果 言論発表」(3月6日、韓国語、動画付き)からポイントを翻訳します。  ①南北は4月末に板門店の(韓国側の)平和の家で第3回南北首脳会談を開くことにした。
②南北は軍事的な緊張の緩和と緊密な協議のため、首脳間のホットラインを開設することに合意した。
③北側は朝鮮半島の非核化の意思を明らかにし、北に対する軍事的な脅威が解消し、北朝鮮の体制安定が保証されるなら核を保有する理由がないとの点を明らかにした。
④北側は、非核化問題の協議と北・米関係正常化のため、米国と虚心坦懐に対話する用意があると表明した。
⑤対話が続く間は、北側は追加の核実験と弾道ミサイルの試射など戦略的な挑発の再開はしないことを明らかにした。同時に核兵器はもちろん、在来型の兵器も南側に使わないことを確約した。
⑥(略)
▽消えた条件
・「非核化」は③で言及されましたが「北に対する軍事的な脅威が解消し、北朝鮮の体制安定が保証されるなら」と条件が付いています。 こうした前提付きの主張は前から北朝鮮が表明してきたことです。「非核化を約束」と報じるほどのニュースではありません。だからメディアも見出しは他からとった。例えば日経新聞の3月7日付朝刊の見出しは以下の4本です。 +南北首脳 来月末に会談 +非核化へ「米と対話」 +北朝鮮 ミサイル発射凍結 +韓国側発表
・しかし3月8日、鄭義溶・室長はワシントンでトランプ大統領に「北に対する軍事的な脅威が解消し、北朝鮮の体制安定が保証されるなら」との条件を省いて「金正恩は非核化を約束した」と語った模様です。 なぜなら、トランプ大統領と会った直後、鄭義溶・室長は会見(3月8日、英語)でこう述べたからです。
+I told President Trump that, in our meeting, North Korean leader Kim Jong-un said he is committed to denuclearization.
▽「判断の根拠は?」
――条件がすっぽり落ちていますね。
・鈴置:だから「米朝会談、3つのシナリオ」で「トランプ大統領が『北朝鮮が全面的な非核化に向け大きく動き出した』と理解――誤解したフシがある」「韓国の仲人口」などと指摘したのです。  韓国の特使がトランプ大統領に会う前から「金正恩の言う非核化とは何か」が焦点でした。朝鮮日報の姜仁仙(カン・インソン)ワシントン特派員が特使の1人、徐薫(ソ・フン)国家情報院院長にこの点を問い質しています。  3月8日、特使団がソウルからワシントンに向かう飛行機に同乗し、機中で単独会見したのです。「金正恩は年内に核と平和体制で大筋にメドを付けるつもり」(3月10日、韓国語版)のうち、関連する一問一答の部分を翻訳します。
・(質問)金正恩が特使団に語った「非核化」とは「核開発の凍結」や「核不拡散」ではない、本当の非核化だと言うのか。  「そうでないなら我々(韓国の特使団)が受け入れるわけがない。金正恩委員長が直接、非核化を約束したことに意味を見いださねばならない」
・(質問)金正恩が本当に、心からの非核化の意思を語ったという判断の根拠は?  「こういう仕事をする際には、相手の意思を持ってして判断はしない。相手が語った言葉の中から意味あることを引き出して実践できるよう形を成していくことが重要である」
▽万暦帝に処刑された沈惟敬
――「金正恩は本気で非核化するつもりだ」との韓国政府の説明には、さしたる根拠もないのですね?
・鈴置:そうなのです。徐薫・国情院長が正直に語ったように「韓国側が北朝鮮を非核化に誘導したい」ということに過ぎないのです。徐薫氏が言葉を濁しているところから見て、金正恩委員長は「非核化」という言葉さえ使わなかった可能性があります。
・北朝鮮との交渉に長らく携わった韓国保守の長老、李東馥(イ・トンボク)氏も、特使団の「仲人口」を厳しく批判しました。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに載せた「沈惟敬の末路をたどる文在寅の北核特使外交」(3月10日、韓国語)がそれです。 見出しの「沈惟敬」は文禄慶長の役当時の明の対日交渉使節。日本と明の双方を偽って和解工作を進めたものの結局は露見、万暦帝により処刑されました。
▽「偽の肖像画」に怒ったヘンリー8世
・なお、前回引用した中央日報の「『何も見えない』仲立ち外交の危険性=韓国」(日本語版、3月7日)。筆者の金玄基(キム・ヒョンギ)ワシントン総局長は文字通りの「仲人口」により処刑されたエピソードを使って韓国の危さを説きました。 面食いのイングランド王のヘンリー8世(Henrry VIII)に「誇張された肖像画」を見せて政略結婚を成功させた側近がいた。本物を見て驚いたヘンリー8世はやむなく結婚したものの、半年後に離婚。怒って側近も殺した――そうです。
・話を戻すと、李東馥氏はまず「鄭義溶・室長はホワイトハウスの記者団に対するブリーフィングで、金正恩がかかげた『前提条件』を一切無視し、事実上その言葉を歪曲、変造した格好となった」と指摘しました。  さらに「北朝鮮は韓国を相手に常套的に『用語混乱戦術』を使ってきた」と説明したうえ、今回の「非核化」という言葉もその典型だと警告しました。訳します。
▽英語で「北のまやかし」を発信
+米国を含め世界が使う「非核化」(Denuclearization)とは、北朝鮮が保有する核物質と核関連施設、核開発計画を完全かつ検証可能で不可逆的な方法で解体するということだ。これには「北朝鮮を核保有国とは認めない」との前提がある。
+一方、北朝鮮の言う「非核化」とは実際は「非核地帯化」(Nuclear Free Zone)を意味する。北朝鮮の自衛用の核を撤去する前に、その原因となった米国の核兵器問題を先に――少なくとも同時に解決すべきだ、という主張である。これには「北朝鮮が核保有国であることを認める」との前提がある。
+米朝首脳会談を開いた場合、金正恩が「非核地帯化」を主張するのは確実だ。首脳会談は6カ国協議のように漂流し、その時間を北朝鮮は核兵器と運搬手段の開発に活用するだろう。 趙甲済ドットコムはこの記事を世界の人々にも読んで欲しかったのでしょう、2日後の3月12日には英語に訳した「Mounting Risks Confronting Moon’s Nuclear “Shuttle Diplomacy”」を掲載しました。
▽6カ国協議も悪用
――米朝首脳会談は北朝鮮の核開発の時間稼ぎに使われるだけ、ということですね。
・鈴置:首脳会談を開いている最中は、普通は攻撃されませんからね。李東馥氏も指摘していますが、6カ国協議がそれに悪用されました。トランプ政権内でも「時間稼ぎに利用されるだけ」との懸念が高まっています。 ホワイトハウスのサンダース(Sarah Sanders)報道官が3月9日の会見で「北朝鮮が約束したことがはっきりと行動で示されなければ、この(米朝首脳)会談は開かれない」と語ったのが一例です。
+And, again, this meeting won’t take place without concrete actions that match the promises that have been made by North Korea.
・韓国の保守も疑いを捨てていません。朝鮮日報も3月10日の社説「北を引っ張り出した『対北制裁』と『軍事圧迫』は最後まで貫け」(韓国語版)で次のように主張しました。
 +まだ、北朝鮮が崩壊する段階には至っていないため、金正恩の非核化への言及が心からのものであるかは不確実だ。ひょっとすると金正恩自身も確信がないのかもしれない。
 +ここで非核化以外のすべての出口を封じ、他の選択の余地を与えないための方法は、金正恩が非核化を実践するまで、現在の経済制裁と軍事的な圧迫を揺るぎなく続けていくことだ。それだけが北の核問題を平和的に解決するのだ。
▽「ホンとアベ」だけ
――日本政府の立場と同じですね。
・鈴置:ええ。ただ、韓国の左派はもろ手をあげて米朝首脳会談に賛成しています。金大中(キム・デジュン)大統領の腹心だった民主平和党の朴智元(パク・ジォン)議員は、韓国の保守と日本の安倍晋三首相をひとまとめにして批判しました。 中央日報が「朴智元議員、地球上で米朝対話に反対する人は『ホン・アベ』だけ」(3月13日、日本語版)で伝えました。「ホン」とは野党、自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表を指します。
・安倍首相は韓国で「極右の指導者」と見なされています。米朝首脳会談に懐疑的な「アベ」と一緒にすることで、保守派の「ホン」を「極右」と貶める作戦です。
――北朝鮮はさぞかし、米朝首脳会談に期待しているでしょうね。
・鈴置:そうとは言えません。労働新聞など北朝鮮のメディアは3月14日に至るまで一切、米朝首脳会談を報じていない。 朝鮮総連の機関紙、朝鮮新報だけが3月10日にウェブサイトで触れたものの、翌11日に削除したようです。聯合ニュースが「米朝首脳会談に北朝鮮の反応なし 韓国『慎重に取り組んでいるよう』」(3月12日、日本語版)で報じました。
・これに対し、韓国統一部の報道官は「北なりに立場を整理する時間を必要とする」と述べ、北朝鮮が「米朝」に慎重な姿勢で取り組んでいると分析しました。
▽自分の首を絞める時間稼ぎ
――北朝鮮はなぜ「慎重」なのでしょうか。
・鈴置:米朝首脳会談を開くことにすれば、軍事的な攻撃を防げる。しかし米国は、経済制裁に関しては緩めるつもりは今のところない。これでは「時間稼ぎ」したつもりでも、苦境からは脱出はできない。 北朝鮮は今、水面下で米国に「首脳会談を開くのだから制裁を緩めてくれ」と要求し、これに対する回答を見極めていると思われます。
・北朝鮮はもう1つ懸念を抱いているはずです。「トランプの逆上」です。首脳会談で金正恩委員長が「非核化などやるつもりはない」とか「北朝鮮式の非核化」を主張したら、トランプ大統領は「話が違う」と怒り出し、軍事行動の引き金になると予想する専門家がいます。 「『時間稼ぎ』の金正恩に『助け舟』出した文在寅」で紹介したスェミ・テリー(Sue Mi Terry)CSIS上級研究員です。
・朝鮮日報に寄せた「下手な米朝対話は逆効果だ」(3月5日、韓国語版)で「米国は北朝鮮に対し、本当に核開発計画を放棄する意思があるのかを質すであろう。北朝鮮が否定的に答えたり回答を拒否した場合、米朝対話はその瞬間に終了し、緊張はますます高まるであろう」と予測しました。
▽トランプの「激怒」リスク
・韓国外交部で北朝鮮問題を担当した魏聖洛(ウィ・ソンラク)ソウル大学客員教授も、中央日報への寄稿「米朝首脳会談、期待よりも危険に備えるのが先だ」(3月12日、日本語版)で、「トランプの激怒リスク」を指摘しました。
 +韓国は南北、米朝首脳会談が続く未曽有の状況を迎えることになった。北核問題の解決に対する期待も大きくなっている。しかし、冷静に考えると、大きな交渉の場は解決の機会にも、破局の契機にもなり得る。  +北朝鮮が核とミサイル実験の中断に触れたのは進展だ。一方、非核化協議をするという言葉は立場の変化なのか、米国が非核化を提起すれば聞いてみるという意思なのか不明だ。
 +米国は非核化への意志を確認するだろうし、さらなる譲歩を確保しようとするだろう。万一、北朝鮮の立場が前と同じであれば、会談は先行きが見えない中で開かれることになる。危険なことだ。
・外交官出身らしく上品に書いていますが、要は文在寅政権の「仲人口」が戦争を招きかねないとの危機感の表明です。
▽金正恩も疑う?
――トランプ大統領は文在寅大統領の「仲人口」に騙されたのでしょうか。騙されたフリをしているのでしょうか。
・鈴置:そこです。関係者は「韓国の特使団がトランプ大統領に会って報告する前に米政府は、金正恩委員長の首脳会談への意向を詳細につかんでいた」といいます。 トランプ大統領が韓国特使団との会談の場で、北朝鮮との首脳会談を即決してみせたことから見ても、それは事実でしょう。 米国の情報力を考えると、トランプ大統領は騙されたフリをして金正恩委員長を会談におびき出し「核を直ちに放棄するか否か」と迫る作戦を採用した可能性もあるのです。
・今、金正恩委員長も頭を悩ませているでしょう。「文在寅は我々と組んでいるように見せて、実は米国の手先ではないのか」「文在寅の仲人口を信用していいのか」と。
――3月13日、ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官が解任されました。
・鈴置:3月末に退任します。後任はポンペオ(Mike Pompeo)CIA長官です。金正恩体制の打倒を堂々と主張してきた人です(「『金正恩すげ替え論』を語り始めた米国」参照)。 「金正恩の悩み」はますます深まったでしょう。とりあえずは「時間稼ぎ」に出るでしょうが、それがうまくいく保証はますます減った。では白旗を掲げて降参するか、あるいは徹底抗戦するか――。注目すべきは北朝鮮の出方です。(次回に続く)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/031400156/?P=1

第一の記事で、 『ドナルド・トランプ米大統領が3月8日、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談に応じると明らかにしました・・・米国、北朝鮮、韓国それぞれに得るものがあるからです』、 (可能性が高い) 『凍結のシナリオ・・・日本にとって最悪のものですね。米本土は核兵器の脅威にさらされないので、非核化に対するトランプ政権の真剣度は薄れる。一方で、日本が受ける脅威は変わらない。日米間の脅威認識にずれが生じます。デカップリング(日米分断)の危機が高まる』、というのは困ったことだ。  『オバマ氏は独立宣言の起草に加わった建国の父の一人、トーマス・ジェファーソンの考えを信奉していました。ジェファーソン主義は自由と平等を重視する一方で、「孤立主義」「一国平和主義」の性格も持っています。それゆえ「世界の警察」からも降りた』、というのは、言われてみればその通りなのかも知れない。 『私は米国が「アジア・ピボット」を「リバランス」と言い換えたことに衝撃を受けました。米国覇権体制の下で平和を維持するのではなく、バランス・オブ・パワーを維持することで平和を維持する存在に、自国の位置づけを自ら変更したことを示す出来事だったからです』、というのは米国としては当然の選択なのかも知れないが、少なくとも「 バランス・オブ・パワーを維持することで平和を維持」することは、きちんと実行してもらいたいものだ。
第二の記事で、 『文在寅政権が「仲人口」・・・を駆使』、とは面白い比喩だ。 『李東馥氏は・・・「北朝鮮は韓国を相手に常套的に『用語混乱戦術』を使ってきた」と説明したうえ、今回の「非核化」という言葉もその典型だと警告しました』、しかしながら、 『米国の情報力を考えると、トランプ大統領は騙されたフリをして金正恩委員長を会談におびき出し「核を直ちに放棄するか否か」と迫る作戦を採用した可能性もあるのです』、というのも大いにありそうな話だ。 『ティラーソン国務長官が解任され・・・後任はポンペオCIA長官です。金正恩体制の打倒を堂々と主張してきた人です。「金正恩の悩み」はますます深まったでしょう。とりあえずは「時間稼ぎ」に出るでしょうが、それがうまくいく保証はますます減った。では白旗を掲げて降参するか、あるいは徹底抗戦するか――。注目すべきは北朝鮮の出方』、というのはその通りなのかも知れない。
タグ:北朝鮮問題 (その16)(米朝首脳会談の先に潜む日米離間、「文在寅の仲人口」を危ぶむ韓国の保守 騙されたと気がつけば トランプは激怒する) 日経ビジネスオンライン 「米朝首脳会談の先に潜む日米離間 「米国第一」への回帰に翻弄される日本」 ・トランプ米大統領 金正恩委員長との首脳会談 米国、北朝鮮、韓国それぞれに得るものがあるからです 考えられる三つのシナリオ 第1は北朝鮮が核の完全放棄を受け入れる展開 第2は凍結のシナリオ 第3は決裂 懸念される日米の認識のずれ ジェファーソン主義 米国が「アジア・ピボット」を「リバランス」と言い換えた 米国覇権体制の下で平和を維持するのではなく、バランス・オブ・パワーを維持することで平和を維持する存在に、自国の位置づけを自ら変更した 鈴置 高史 「「文在寅の仲人口」を危ぶむ韓国の保守 騙されたと気がつけば、トランプは激怒する……」 非核化 正恩がかかげた『前提条件』を一切無視し、事実上その言葉を歪曲、変造した格好となった」と指摘しました。  さらに「北朝鮮は韓国を相手に常套的に『用語混乱戦術』を使ってきた」と説明したうえ、今回の「非核化」という言葉もその典型だと警告 中央日報が「朴智元議員、地球上で米朝対話に反対する人は『ホン・アベ』だけ」(3月13日、日本語版)で伝えました 北朝鮮はもう1つ懸念を抱いているはずです。「トランプの逆上」です トランプの「激怒」リスク 文在寅政権の「仲人口」が戦争を招きかねないとの危機感 ポンペオ(Mike Pompeo)CIA長官です。金正恩体制の打倒を堂々と主張してきた人です
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