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民主主義(その3)(強権政治家と独占企業家が牛耳る世界 民主主義と資本主義の危機、SNSが日本の政治に与える無視できない影響 大量の「機械的な投稿」が世論を歪めている、フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」 危機に直面する「民主的なプロセス」) [世界情勢]

民主主義については、1月2日に取上げた。今日は、(その3)(強権政治家と独占企業家が牛耳る世界 民主主義と資本主義の危機、SNSが日本の政治に与える無視できない影響 大量の「機械的な投稿」が世論を歪めている、フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」 危機に直面する「民主的なプロセス」)である。

先ずは、元日経新聞論説主幹でジャーナリストの岡部 直明氏が2月28日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「強権政治家と独占企業家が牛耳る世界 民主主義と資本主義の危機」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・グローバル化し急旋回する世界は、いま強権政治家と独占企業家に牛耳られようとしている。中国の習近平国家主席は任期撤廃によって3選に道を開いた。再選が確実なロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領など世界のあちこちで強権政治家が幅を利かす。極右ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭も加わって、中道政治は脇に追いやられる。一方で、グローバル経済は米国のアップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックのIT(情報技術)ビッグ5が新市場を独占している。飛躍的な技術革新で巨大な富が集中する一方で、これまで経済発展の基盤になってきた中間層の衰退を招いている。「『中』の時代の終わり」は民主主義と資本主義の危機を告げている。
▽「中華覇権」へ習近平の野望
・中国共産党は国家主席の任期を連続して2期までとする規定を撤廃する憲法改正案を発表した。これによって、習近平国家主席は、3期目に入ることが可能になる。10年を超える長期政権に道を開いたことになる。独裁を阻止するための2期までの制限が破られたことで、習近平国家主席への権力集中は一段と進むことになる。とくに「反腐敗」で締め付けを強化すれば、反対勢力は沈黙せざるをえず、権力集中による強権化に拍車がかかることになる。
・習近平国家主席は自ら打ち出した広域経済圏構想「一帯一路」が当初、警戒的だった日米も含め国際社会の信認を一応得たことに自信を深めている。「一帯一路」構想そのものは、トランプ米大統領の登場で保護主義の風潮が広がるなかで、グローバル経済化の進展に貢献するようにみえるが、そこには「中国第一主義」の思考が潜んでいる。中国企業の受注が9割を占めるという調査もある。
・とくに、この構想が東シナ海、南シナ海からインド洋に広がる中国の海洋進出にからんでいるところに大きな問題がある。習近平国家主席は「海洋強国」をめざす方針を鮮明にしている。海外港湾30カ所の整備計画を打ち出しているが、情勢次第で軍事転用する構えである。
・こうした習近平路線がめざすのは「中華覇権」だろう。それは「海洋強国」として米国の覇権に挑戦しようとするものである。もちろん、そこには大きな矛盾がある。「海洋強国」と「人民元の国際通貨化」は相容れない。強権国家に、国際通貨の信認は得られないからだ。中国経済が「国家資本主義」のまま拡大することになれば、国際社会とのあつれきは深まるばかりだろう。
▽プーチン流拡張主義
・ロシアのプーチン大統領は3月の大統領選挙で「圧勝」するとみられている。2024年までの権力を掌握することになる。2000年以来、一貫して権力の座にあり続けることになる。この権力集中によって強権化がさらに進むはずだ。
・プーチン大統領はウクライナのクリミア併合、ウクライナ東部への介入などウクライナ危機を引き起こした。ウクライナの米欧接近に危機感を強めたためだが、国内の強固な基盤が介入に踏み切らせた。 さらに、欧州連合(EU)内の北欧諸国もロシアへの警戒を強めている。バルト3国だけでなく、スウェーデンやフィンランドでもロシアの拡張路線に警戒感が強く、北大西洋条約機構(NATO)への加盟も課題に浮上している。そうなれば、ロシアと北欧のあつれきは強まることになりかねない。
・プーチン大統領は中東でもパワーの空白をついて進出姿勢を取りつづけている。とりわけ戦乱が続くシリアのアサド政権との関係が深く、米欧との溝を深めている。中東危機が複雑化する大きな要因になっている。  問題は、こうした拡張主義をロシアの国内経済が支えられるかである。韓国ほどの経済規模で、資源国にすぎないロシアは経済危機に見舞われる危険がつきまとう。そこが中国との違いである。強権化するプーチン政権のもとでいまは封じ込まれているが、軍事拡張による国内経済のしわ寄せから国内の不満が噴出することも想定される。
▽エルドアンがもたらした亀裂
・トルコのエルドアン大統領も強権化が目立つ。EUへの加盟をめざすイスラム国家として、キリスト教社会とイスラム社会の橋渡し役として、さらには「文明の融合」の担い手として期待されたが、エルドアン大統領の強権化でEUとの亀裂は深刻化してきた。このままでは、EU加盟は頓挫しかねない情勢である。
・EUは2016年のトルコのクーデター失敗後のエルドアン政権の強権化に、神経をとがらせている。とりわけ言論統制に強く警告している。最近、拘束され続けていたドイツの特派員をようやく解放したが、言論統制に変わりはない。マクロン仏大統領はエルドアン大統領との会談で「民主主義とは法の支配を完全に守ることだ」と警告した。
・中東でも混乱の要因になっている。トルコ軍はシリア北部の米軍が支援するクルド人民兵組織を排除するため空爆と地上作戦を開始した。「地域パワー」として存在感を示そうというエルドアン戦略が、中東危機を一層、複雑化させている。
▽跋扈するグローバル独占企業
・国際政治の舞台で習近平、プーチン、エルドアンら「強権政治家」が台頭する一方で、グローバル経済では、米国のITビッグ5など独占企業が跋扈している。これら独占企業が巨大な資金力を背景に買収を繰り返し、人工知能(AI)など技術革新を先行させ、追随を許さない状況になっている。
・独創的な技術革新をテコに新興企業が次々に生まれるはずだった米国で起業の芽が摘み取られる。独占の弊害は明らかになっている。米国のITビッグ5はグローバル展開がめざましいだけに、独占の弊害は米国にとどまらず、グローバル経済全体を巻き込んでいる。 
▽EUは反独占に立ち上がったが
・跋扈するグローバル独占企業に対して、立ち上がったのはEUである。もともと欧州委員会の独禁当局は市場独占に監視の目を光らせ、EU域内外を問わず、カルテル行為などに巨額の罰金を科してきた。 それだけにとどまらず、個人データ保護を大幅に強化する新規制を実施する。欧州の消費者や従業員など個人データを保有したりEU域外に持ち出す企業に保護体制を整備するよう求め、違反には巨額の制裁金を科すというものだ。EUに進出する日本企業も対象にされるから、対応に追われているが、EUの規制強化は、データ覇権をめざす米ITビッグ5に照準を合わせている。ビッグデータ時代の米EUの攻防ともいえる。
・EUはグローバル独占企業への課税強化もめざしている。20カ国・地域(G20)はアマゾン・ドット・コムなど電子商取引業者に対する課税強化を打ち出そうとしているが、EU案がベースになっている。インターネットで国境を越えて売買される電子書籍などの利益には、各国が法人税をかけられないが、EU案は国ごとの売上高に課税するというものだ。この課税強化が実現すれば、グローバル独占企業の展開にもかなりの影響が出るだろう。 しかし、このEUの反独占の動きもG20全体の合意を取り付けられる保証はない。このままでは技術革新を先取りするグローバル独占企業は、さらに大きな影響力を発揮することになるだろう。
▽「グローバル独禁法」の制定を
・IT分野では「ウィナー・テイク・オール」(勝者総取り)が常識だという。しかし、これは健全な市場と資本主義の原則からはずれている。たしかに先行者利潤は認めなければ、独創的なイノベーションは生まれないが、「総取り」は行き過ぎである。小さな国家並みの資産を誇るグローバル企業家が当然のように巨額の寄付をするというのは、グローバル経済のゆがみを示している。
・各国ごとに富裕層への課税強化を進めるのは当然だが、それだけでは不十分だ。経済協力開発機構(OECD)が音頭を取って国境を越えた「グローバル独禁法」を制定すべきだろう。それこそがグローバル資本主義の健全な発展に資することになる。
▽「『中』の時代」をどう甦らせるか
・これ以上、強権政治家と独占企業家が世界を牛耳じり続けるのは危険である。世界が激変するなかで、民主主義のコストを支払わずに独裁的な決断をする強権政治は機能しやすい面があるだろう。グローバル経済の変化を先取りする決断は、サラリーマン経営者にはできず独占企業家ならできるかもしれない。しかし、その弊害もまた大きい。
・強権政治家とポピュリストのはざまで、苦闘する中道政治をどう復活させるか。資本主義の土台である中間層をどう復活させるか。「『中』の時代」をよみがえらせなければ、人類の知恵である民主主義と資本主義は空洞化しかねない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/022700055/?P=1

次に、ドイツ在住ジャーナリストの高松 平藏氏が2月27日付け東洋経済オンラインに寄稿した「SNSが日本の政治に与える無視できない影響 大量の「機械的な投稿」が世論を歪めている」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2018年は、日本で10年ぶりに国政選挙や統一地方選挙といった「大型選挙」がない年となりそうだ。選挙があると政策議論が停滞しがちだが、一方で選挙報道の増加により国民の政治への関心が高まるというメリットもある。昨今では報道のみならず、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を介した政治的メッセージの発信も増えた。2010年末ごろから起こった中東の民主化運動「アラブの春」では、SNSが大きな役割を果たしたと言われる。
▽日本の選挙期間のツイッターを分析
・SNSが選挙に与える影響について、興味深い研究がある。ドイツのエアランゲン=ニュルンベルク大学日本学部教授、シェーファー・ファビアン博士は、「2014年の日本の衆議院議員総選挙で、政治的な意見やキーワードがどのように共有・拡散がされたか」について、短文投稿SNS、Twitterをもとにビッグデータ分析を行い、論文を発表した。
・その分析から、「あらかじめ設定された特定の単語を含む投稿を自動的にリツイート(再投稿)するプログラム『ボット』による大量の投稿があり、それらが結果的に言論の多様性を弱めるような働きをしているのではないか」とシェーファー教授は指摘する。
・読者諸氏にはTwitterのユーザーもいることだろう。Twitterを見ると、機械的に投稿されたとみられるツイートが多く目につくが、これは「ボット」によるものだ。 シェーファー教授は、電子化されたテキストがどのように運用されているかに焦点を当て分析を行う『コーパス言語学』の研究者らとチームを組み、2014年の衆議院議員総選挙中のTwitter上の投稿についての研究を行った。 さらに、「2013年当時は、日本でよりメジャーなSNSはFacebookではなくTwitterだった。また、Twitterに投稿されるテキストの量が世界で2番目に多い言語は日本語だった。ただ、日本語による投稿の多くはボットによるものと推測される」という。
▽ボットを操るのは見えない人間
・ある投稿を100回ツイートしろ、といったことをボットにさせるのは人間だ。だがどんな人物なのかは特定できないし、もちろん安倍政権関係者がボットを利用しているかどうかはわからない。「つまり、われわれは、ボットがどのように働いていたかという現象を事後的に見るしかない」(同氏)。
・極端な例をあげると、特定のある内容の投稿で1万回程度を数えるものがあったが、解析するとオリジナルは50ほど。ボットがオリジナルの投稿をそのまま、あるいは少し変更して1万回分リツイートしたわけだ。 こういったボットによる「活動」は近年増えている。たとえばトランプ大統領による頻繁なTwitter投稿はよく知られるところだが、投稿するやいなや、すぐに2万ぐらいの「いいね!」「リツイート」などの反応がある。「しかしボットによるものがかなりあると思う」(同氏)。
・さらにシェーファー教授はこう続ける。「ボットの機能は進化もしています。人間はオリジナルの投稿に反応するにしても、ある程度時間差が生じる。たとえば夜中に投稿されたものをリツイートするのは朝起きてからになる。また、人間はリツイートする時に少し文章を変えたり追加したりすることもある。ボットはそういう人間らしさを意図的に取り入れるようにもなっている」。
・実はドイツでも極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に関して、SNSには同様の投稿があふれている。現地の報道では有権者への政治的影響を危惧している。 日本を見ると、たとえば、ここ数年で「反日」という言葉が随分ポピュラーになった。シェーファー教授はSNSでの投稿量が増えたことが大きな原因のひとつではないかと指摘する。「反日という言葉は、『A人は反日だ』『B党は反日だ』というように、人によって異なる対象に『反日』をつかっている。それらがボットで増幅され、投稿量がどっと増えた」。
・また、人間も深く考えることなく扇動的なフレーズを取り入れてネットに書き込んでいるという問題もある。たとえば、ある人物がネットに「反日」という言葉を何度も書き込み、気に入った投稿に対してほぼ反射的に「いいね」ボタンを押す。「反日」というメッセージが記号的に増幅され、人間がボット化しているといえる。 
・このように現在はSNS発の「ポピュラーな言葉」が存在する。かつては辞書に掲載されるか否かが「ポピュラーな言葉」の指標だった。「辞書への掲載基準は新聞での掲載実績などが根拠とされます。新聞には『編集』という主体的な行為があり、一種のフィルター機能が働いている。しかし、SNS発の言葉がポピュラー化するにあたってはフィルターがない。ボットはそれに加担している」とシェーファー教授は言う。
▽SNSがネットの役割を変えた
・インターネットは20世紀末に普及がはじまったが、当初は「知識の公共化」とか「国境を越えたコミュニケーション」や「グローバルな公共空間の構築」といった民主主義の進化に役立つものと期待された。 「人間によるコミュニケーションには決まった結果はない。もちろんそのせいで感情的になり、例えば殴り合うといったリスクもある。しかし、人間はコミュニケーションを続けることで学習できる。初期のインターネットではそういう方向でコミュニケーションが深化するのでは、という期待があった」(シェーファー教授)
・ところが今世紀に入り、SNSが普及すると状況は変わった。ネット空間は高度なアルゴリズムを伴うSNSのプラットフォームと化した。 「ここでは『いいね!』やリツイートなどを通じて、ユーザー同士がただ『つながっているだけ』という関係性の比重が高くなりました。そこへボットが特定の情報やフレーズの流通量を増やしてさらに極端な方向性を生む。しかも個人の検索履歴などをもとにその人に合った情報のみが提供されるため、情報や思想が偏り、情報社会の中で孤立する『フィルターバブル』に陥りかねない」とシェーファー教授は警鐘を鳴らす。そしてさらにこう続ける。
・「こうした現状を見ると、アイデアが偶然に生まれる可能性が低くなり、人々の考え方も狭めることにつながる。そんなふうに思えてなりません。今日、ネットは現実世界になくてはならないものになっているが、民主主義の健全性という点でいえば憂慮すべきだと思います」
https://toyokeizai.net/articles/-/210287

第三に、ロンドン在住フリーテレビディレクターの伏見 香名子氏が4月6日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」 日本は大丈夫か?危機に直面する「民主的なプロセス」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・英データ分析会社が米フェイスブック上の個人情報を不正利用したとされる問題で、米大統領選に加えて、英国のEU(欧州連合)離脱を決めた国民投票との関連も疑われている。4月4日、フェイスブックは不正に取得された個人情報は最大で8700万人にのぼると発表。当初、不正取得は5000万人分の個人情報とされていた。「民主的なプロセス」が歪められるリスクに日本も無縁ではない。
・2016年、世界は2つの「民主的なプロセス」において、極右勢力の勝利に震撼した。トランプ大統領を選出した米大統領選と、EU(欧州連合)離脱を決めた英国民投票の結果である。しかし3月、これらの投票結果の正当性に対し、ここ英国では相次いで深刻な疑惑が持ち上がった。
・これら疑惑は、憲法改正における国民投票を模索している日本にとっても、決して無関係ではない。むしろ危機感を持って注視すべきスキャンダルであろう。巨額の資金とテクノロジーのノウハウ、また、個人情報へのアクセスを有する側が、選挙や国民投票などにおいて、思惑通りの政治的勝利を得る可能性を浮き彫りにしたからだ。
・この問題は、米大統領選で鍵となったといわれる英データ分析会社でリサーチ担当者として働いていた男性が告発を行い、彼の情報をもとに、調査報道に定評のある英オブザーバー紙およびガーディアン紙、英チャンネル4ニュース、米ニューヨーク・タイムズ紙が詳細を報じたものだ。告発者のクリストファー・ワイリー氏は3月27日、下院の特別委員会で、3時間半に及ぶ克明な証言を行っている。
・米英の企業や富豪、政治家など、いくつものプレイヤーが複雑に絡み合う疑惑を、ワイリー氏の証言および上記報道から読み解くと、概要はこうだ。 まず、米大統領選では、トランプ陣営を支えた「英データ分析会社・ケンブリッジ・アナリティカ(以下CA)」が、米フェイスブック上の実に5000万人分の個人情報を不正に取得したとし、その中から、まだ候補者を決めあぐねていた層、つまり、特定の「ターゲット」を検出した(フェイスブックは4月4日、CAが不正に取得していた個人情報は最大で8700万人にのぼると発表。また、全20億人のユーザー情報が不正利用されるリスクにさらされていたことも公表した。既に対策を講じ始めているという)。
・そして、その人たちの思考や思想など、個々人の心理プロファイリングを行い、その人たち向けの「カスタマイズされた情報」を意図的にフェイスブックのタイムラインなどに流し、投票結果を左右しようと試みた、というものだ。
・同様の手法は、英国のEU離脱を問う国民投票でも、CAとの関連があるといわれるカナダの企業、AIQによって行われたと指摘されているが、フェイスブックの情報がこちらでも流用されたのかは未だ不透明だ。ただし、AIQは、離脱派陣営の団体Vote Leaveから270万ポンド(約4億600万円)に及ぶ多額の報酬を得ており、これはVote Leaveの支出の実に40%に上ると報じられた。デジタル戦略の効果を測ることは容易ではないが、Vote Leaveのキャンペーン担当者は離脱決定後、AIQなしには「(勝利は)成し得なかった」と発言したと言われている。
・告発者のワイリー氏も特別委員会での証言で、このような「不正な行為」がなければ、EU離脱決定に際し、異なる結果であった可能性に言及した。 ワイリー氏の証言によれば、EU離脱を問う国民投票で、デジタル戦略によって有権者による実際の行動を転換させることに成功した率はおよそ5~7%であったという。離脱を問う投票では、離脱支持が52%、残留が48%と僅差だったことを考えると、効果は否定できないのではないか。
▽規制を回避し情報戦に資金を投入か
・CAのサイトには「データを利用したキャンペーン展開を行い、5大陸にまたがる100以上のキャンペーンを支援してきた。米国だけでも大統領選や議会選、州選挙における主要な役割を果たした」と明記されている。 ワイリー氏は特別委員会において、過去のナイジェリアの選挙戦などでCAやAIQが暗躍し、勝つためなら手段を選ばない同社の実態を証言した。事実、チャンネル4によるCAの幹部に対して行われたおとり取材の内容は、衝撃に満ちている。
・スリランカのある候補者の支援者に扮した「おとり」に対しある幹部は、CAが世界で最も巨大で影響力のある政治コンサルティング企業であり、「おとり」との「長期的で秘密の関係を」築きたいと電話で売り込んでいる。対立候補を徹底的に陥れるため、偽の贈賄現場を捏造してその模様を撮影する、また、女性を使ったいわゆる「ハニー・トラップ」を使うなど様々な策を、隠しカメラの前で堂々と披露した。別の幹部は、対立候補を陥れるためにはMI5やMI6の元情報部員まで投入できると述べた。
・更に、こうしたキャンペーンでは有権者の「希望や恐れ」を利用するものだと指摘し、「選挙戦を事実を持って戦ってもダメだ。つまるところ(人々の)感情が物を言う」とまで明言している。 本稿執筆現在(4月2日)、CAはこうした数々の疑惑に関して、不正を否定している。
・もう一つ、英国で問題になっているのはVote Leave側による国民投票法違反の疑いである。英国の国民投票法では規制の少ない日本のそれとは異なり、一つの団体が広告やキャンペーンに投じて良い資金の上限が700万ポンド(約10億円)と定められている。Vote Leaveは、その上限を超えた資金投入を行ったのではないかとの疑惑だが、からくりはこうだ。
・当時、EU離脱に賛同していた若い学生などが組織したボランティアグループBeLeave(ビリーブ)へ、投票数日前になって、突然62万5000ポンド(約9300万円)もの「寄付」がVote Leaveから行われた。しかし、交通費すら自腹を切って活動していた若者らにその金が配分されることはなく、なぜかほぼ全額が、この団体を通じ、彼らと全く関わりのなかったAIQ社に流れたと、ワイリー氏とは別の、BeLeaveで活動に携わった内部告発者により指摘された。
・つまり、すでにキャンペーンに投入して良い700万ポンドを使い果たしたVote Leaveは、BeLeaveを介して、上限を超えた63万ポンド近くもの金をAIQに流したのではないか、という疑いである。 ボランティアに参加した若者らはいずれも若く、彼らなりにEU離脱を支持する信念のもとに活動を行った。しかし彼らは現在、離脱派陣営のいわば「資金洗浄」に利用されたのではないか、との疑惑を抱いている。 
・この告発者は、今でも離脱を支持しているという。しかし、その「勝利」が不正に勝ち取ったものであるならば、国民投票という民主的なプロセスを踏みにじる行為であり、あってはならないことだと告発に踏み切った。疑惑に対し、離脱運動を主導したボリス・ジョンソン外相は「馬鹿げている」と一蹴し、その他関連を指摘されているVote Leaveの元関係者らも、次々に否定している。
・疑われている資金流用について、英ブルネル大学で政治学専門のジャスティン・フィッシャー教授はニューヨーク・タイムズ紙に対し、国民投票の際の選挙管理委員会による規制が「役立たず」であったと指摘している。離脱派、残留派にかかわらず、資金を有効に使うため、複数の団体が並行して活動を行い、上限を回避したのだという。
・国民投票法により、日本よりも明確な規制が存在すると言われてきた英国ですら、今回こうした重大な不正が疑われている。日本では憲法改正を議論すると同時に、あるいはそれより以前に、まずは今回英米で相次いだ事例を教訓として、各陣営が投じることを許される資金の上限や、デジタルを含む広告に関する規制、あるいは明確なガイドラインを策定し、厳格かつ有効な国民投票法を定めることが急務ではないだろうか。
▽情報戦略の本当の怖さ
・筆者はEU離脱を問う国民投票の際、地方の取材現場で、離脱派のキャンペーンを取り仕切っていた広告代理店関係者らに遭遇した。残留派、離脱派双方にこうしたキャンペーン担当の代理店やストラテジストが関与していたことは、「法律の範囲内であれば」本来は適正である。
・しかし、当時の離脱派のなりふり構わぬ移民・難民敵視のPR戦略はすさまじく、ついに投票直前、残留派の労働党女性議員の殺害(参照:英国の女性議員殺害が問う“憎悪扇動”の大罪)に至るまで、両陣営とも熱に浮かされたように互いへの攻撃を強め、深刻な社会の分断を招いた。その功罪は、投票が終わったあとも、離脱支持者による何ら罪のない移民や難民に対する苛烈なヘイト・クライムとして爪痕を残したことにもある。
・離脱派による怪しげかつ大々的な宣伝工作は、離脱決定の朝に行われた、当時の英国独立党(UKIP)ナイジェル・ファラージ党首によるインタビューに象徴されていた。 民放ITVテレビに生出演したファラージ氏はキャスターに「キャンペーン中の主張、現状EUに支払っている3億5千万ポンド(約530億円)の金は、本当に国民保健サービス(NHS)に投じると確約できるのですね」と問われ、「いや、できない」と、いともあっさり即答した。離脱派の象徴であった赤いキャンペーンバスにははっきりと「3億5千万ポンドをNHSに」と明記されていたにもかかわらず、である。
・NHSは近年、慢性的な財政難に見舞われ、医療の現場が混乱することもしばしばだ。高額な保険料を支払えず、プライベート医療を受けられない多くの、特に低所得層の人たちにとって、このレトリックが離脱を支持する理由として有効だったことは、想像に難くない。仮にこうした情報さえも、デジタル戦略で使用されていたとしたら、結果にどう影響しただろうか。
・当事者によるデマの垂れ流しは言うまでもなく言語道断であるが、一方の側の「デマ」や偏った主張を、デジタルを含む広告への多額の資金投入により「真実」として刷り込まれてしまう危険に、有権者はもっと敏感であるべきだろう。
・20年近く前になるが、ボスニア紛争報道で頻用された「民族浄化」というキーワードが、実はボスニア外相が、ある米国のPR会社に依頼した「情報戦略」だったという内容のドキュメンタリーが放送された。(NHKスペシャル「民族浄化 ユーゴ・情報戦の内幕」) ボスニアやコソボのイスラム系住民が、対立するセルビア人から一方的に迫害、虐殺され「民族が浄化された」という「物語」は、報道機関に拡散され、主力欧米メディアなどが大々的に取り上げた。
・当時、現在のようなSNS(交流サイト)を通じた情報ツールは存在せず、ましてやフェイク・ニュースなどの概念も存在しなかった。情報の拡散は、現在ほど容易ではなかったはずだ。それにもかかわらずこの紛争において、たった一つの民間PR会社により、ある特定の側(セルビア側)を世界的に孤立させる情報操作は、見事に成功したと言われている。
・広告会社などによる情報戦略は、圧倒的な財力を投じることにより、巧みに世論を左右することのできる強大なツールであろう。本来、国民全員に影響を及ぼす重大な意思決定プロセスに際し、財力のある片方だけが多額の資金を投じて一方的な世論形成を行うことは、選挙や国民投票などの民主的プロセスにおいて、あってはならないことだ。
・同時に、こうした思惑に惑わされず、適正な判断を行う知識を個々人が蓄え養うことも、氾濫する情報に対抗する有効な手段ではないだろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/040400017/?n_cid=nbpnbo_mlpum

第一の記事で、 『世界は、いま強権政治家と独占企業家に牛耳られようとしている・・・極右ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭も加わって、中道政治は脇に追いやられる。一方で、グローバル経済は・・・IT(情報技術)ビッグ5が新市場を独占・・・これまで経済発展の基盤になってきた中間層の衰退を招いている。「『中』の時代の終わり」は民主主義と資本主義の危機を告げている』、というのは、なかなか面白い分析だ。ただ、ITビッグ5については、最近、逆風が吹いて株価時価総額も大きく減少しているが、「『中』の時代の終わり」という大きな論旨そのものは正しいと思われる。 『これ以上、強権政治家と独占企業家が世界を牛耳じり続けるのは危険である・・・強権政治家とポピュリストのはざまで、苦闘する中道政治をどう復活させるか。資本主義の土台である中間層をどう復活させるか』、というのは確かに重要な課題だ。EUには頑張ってもらいたいところだ。
第二の記事で、 『「あらかじめ設定された特定の単語を含む投稿を自動的にリツイート(再投稿)するプログラム『ボット』による大量の投稿があり、それらが結果的に言論の多様性を弱めるような働きをしているのではないか」』、とのシェーファー教授の指摘はなるほどと納得させられた。 『特定のある内容の投稿で1万回程度を数えるものがあったが、解析するとオリジナルは50ほど。ボットがオリジナルの投稿をそのまま、あるいは少し変更して1万回分リツイートしたわけだ』、というボットの威力には改めて驚かされた。 『人間がボット化しているといえる』、とは上手い表現だ。 『個人の検索履歴などをもとにその人に合った情報のみが提供されるため、情報や思想が偏り、情報社会の中で孤立する『フィルターバブル』に陥りかねない」』、という弊害は由々しいものがある。 『今日、ネットは現実世界になくてはならないものになっているが、民主主義の健全性という点でいえば憂慮すべきだと思います』というは同感だが、本当に困った問題である。
第三の記事で、 『米大統領選では、トランプ陣営を支えた「英データ分析会社・ケンブリッジ・アナリティカ(以下CA)」が、米フェイスブック上の実に5000万人分の個人情報を不正に取得したとし、その中から、まだ候補者を決めあぐねていた層、つまり、特定の「ターゲット」を検出した・・・その人たちの思考や思想など、個々人の心理プロファイリングを行い、その人たち向けの「カスタマイズされた情報」を意図的にフェイスブックのタイムラインなどに流し、投票結果を左右しようと試みた』、 『同様の手法は、英国のEU離脱を問う国民投票でも、CAとの関連があるといわれるカナダの企業、AIQによって行われたと指摘・・・Vote Leaveのキャンペーン担当者は離脱決定後、AIQなしには「(勝利は)成し得なかった」と発言したと言われている』、などこうした不当な働きかけが、極めて大きな役割を果たしたようだ。 『本来、国民全員に影響を及ぼす重大な意思決定プロセスに際し、財力のある片方だけが多額の資金を投じて一方的な世論形成を行うことは、選挙や国民投票などの民主的プロセスにおいて、あってはならないことだ』、というのはその通りだ。ただ、 『同時に、こうした思惑に惑わされず、適正な判断を行う知識を個々人が蓄え養うことも、氾濫する情報に対抗する有効な手段ではないだろうか』、というのは「百年河清を待つ」ようなものではないだろうか。
タグ:民主主義 東洋経済オンライン フェイスブック 日経ビジネスオンライン 岡部 直明 (その3)(強権政治家と独占企業家が牛耳る世界 民主主義と資本主義の危機、SNSが日本の政治に与える無視できない影響 大量の「機械的な投稿」が世論を歪めている、フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」 危機に直面する「民主的なプロセス」) 「強権政治家と独占企業家が牛耳る世界 民主主義と資本主義の危機」 「中華覇権」へ習近平の野望 プーチン流拡張主義 エルドアンがもたらした亀裂 跋扈するグローバル独占企業 EUは反独占に立ち上がったが 「グローバル独禁法」の制定を 「『中』の時代」をどう甦らせるか 高松 平藏 「SNSが日本の政治に与える無視できない影響 大量の「機械的な投稿」 シェーファー・ファビアン博士 2014年の日本の衆議院議員総選挙で、政治的な意見やキーワードがどのように共有・拡散がされたか」について、短文投稿SNS、Twitterをもとにビッグデータ分析 あらかじめ設定された特定の単語を含む投稿を自動的にリツイート(再投稿)するプログラム『ボット』による大量の投稿があり、それらが結果的に言論の多様性を弱めるような働きをしているのではないか ある人物がネットに「反日」という言葉を何度も書き込み、気に入った投稿に対してほぼ反射的に「いいね」ボタンを押す。「反日」というメッセージが記号的に増幅され、人間がボット化しているといえる SNSがネットの役割を変えた 個人の検索履歴などをもとにその人に合った情報のみが提供されるため、情報や思想が偏り、情報社会の中で孤立する『フィルターバブル』に陥りかねない」 伏見 香名子 「フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」 日本は大丈夫か?危機に直面する「民主的なプロセス」」 個人情報は最大で8700万人 トランプ大統領を選出した米大統領選 EU(欧州連合)離脱を決めた英国民投票の結果 ケンブリッジ・アナリティカ 5000万人分の個人情報を不正に取得したとし、その中から、まだ候補者を決めあぐねていた層、つまり、特定の「ターゲット」を検出した その人たちの思考や思想など、個々人の心理プロファイリングを行い、その人たち向けの「カスタマイズされた情報」を意図的にフェイスブックのタイムラインなどに流し、投票結果を左右しようと試みた
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