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クールジャパン戦略(その6)(世界で「クールジャパン」が苦戦する原因、一風堂ニューヨーク店の成功でわかった日本人の「ヒドい勘違い」 日本ブームで何でも売れる は大ウソ、「クールジャパン」はこんなにひどいことになっていた) [経済政策]

クールジャパン戦略については、昨年8月14日に取上げた。今日は、(その6)(世界で「クールジャパン」が苦戦する原因、一風堂ニューヨーク店の成功でわかった日本人の「ヒドい勘違い」 日本ブームで何でも売れる は大ウソ、「クールジャパン」はこんなにひどいことになっていた)である。

先ずは、モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授の渡部 幹氏が昨年11月8日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「世界で「クールジャパン」が苦戦する原因」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽マレーシアのイセタンはなぜダメなのか?
・世界で「クールジャパン」が苦戦中と伝えられる原因とは――  「クールジャパン」のイベントが軒並み苦戦しているというニュース(記事はこちら)を読んだ。その中にも紹介されていたが、マレーシアの首都、クアラルンプールの中心部での、イセタン(伊勢丹)・ジャパンの苦戦ぶりが伝えられていた。
・そのイセタンには、開業以来、筆者も何度も足を運んでいる。「本物の日本」を売り込もうとするコンセプトのもと、ここでしか手に入らない優れた日本の品々が並んでいるからだ。だがその一方で、残念ながら、地元の人々の心をつかむのは難しいとも感じた。 例えば開業直後、食品売り場には、日本の麺類が多数置かれていた。そばだけでも、二八、十割、更科など、なかなか日本でも見かけないくらい素晴らしい品ぞろえだった。そばつゆも、市販のものから、さまざまな産地特産のユニークな出汁までたくさん揃えてあった。
・筆者が感心して見ていると、中華系マレーシア人と思しきカップルも興味深そうにみている。見るからに裕福そうな彼らは、店員にこう尋ねた。 「Do you have Towari-soba, which is made from 100% Soba-flour? (そば粉100%で作った、十割そばはありますか?)」 十割そばを知っているとは、かなりの「日本通」だと思った。 だがマレーシア人の店員が「これですよ」と指さしたのは、二八そばだった。失礼とは思ったが、筆者はその場に割り込み、十割そばの場所を教えた。
・その後、そのカップルは再び店員に、「そばつゆはどこですか」と尋ねた。店員が指さしたのはなんと醤油のコーナーだった。差し出がましいとは思ったものの、再び筆者はそばつゆのコーナーへ彼らを案内した。  この一件から、店員の教育がうまくいっていないことがわかる。まず、マレーシア人の店員自身、そもそも「そば」というものについてほとんど知らないはずだ。そこで、二八とか十割とかいきなり言われても何のことか、何が違いなのかも分からないし、学ぶモチベーションも低いだろう。
▽クールジャパンに欠けている「おもてなし」の精神
・彼らに「意識の高い」マレーシア人富裕層を惹きつける商品説明をさせるためには、相当な教育が必要なはずだ。しかし、コストと時間を考慮すれば、そのような教育が効率的とは思えない。 ならば、製品の説明を事細かに書いた解説を各所に置いておき、「本物の日本」に興味のある富裕層マレーシア人の購買意欲を刺激するような工夫が必要だと筆者は感じた。
・この例の根底にあるのは、「マーケティング不在」だと筆者は思っている。ターゲットである、日本に興味のあるマレーシアの富裕層の購買意欲を刺激するような情報をうまく与えなくては、購買行動まで結びつかない。上記の例のように、せっかく興味を持って売り場に来てもらっても、それを削ぐような案内をしていては、売れるはずがない。
・冒頭に挙げたニュースでは、クールジャパンを「戦略なき投資」と見ている。極端にいえば、相手国の事情や文化について深い考察をせずに「ジャパンってクールだろ?」と「日本の押し売り」をしている、と見ているのだ。 もともと日本の「おもてなし」は、きめ細かなマーケティングが基本のはずだ。京都のお茶屋である「いちげんさんお断り」は、排他的な意味ではなく、紹介者によってお客の好みを把握し、個人のニーズを満たす「カスタマイズされた」サービスを提供するためのものだ。
・オバマ元大統領が現役時に来日したときには鮨、今回来日したトランプ大統領は鉄板焼きでおもてなしをしたのも、個々人の好みをリサーチしてのことだろう。
▽マーケティングなき押し売りはかつての「アメ車」と同じ
・日本は親米度の高い国だが、かつて左ハンドルで図体が大きく、燃費の悪いアメリカ車が、日本用のカスタマイズをしないまま、日本市場に来て大失敗したことは、誰しも知っているだろう。日本人からしてみれば、いくらアメリカのことが好きでも、そんな仕様の車に日本では乗れるわけがないと感じるのは当然だ。「アメリカの押し売り」だからだ。
・同じことを、外国人は「日本の押し売り」について感じているはずだ。マレーシアは東南アジアの中でも、相当の親日国だ。好きな国の第1位は、自国を抜いて日本になるくらいなのだ。だがそれに胡坐をかいて、マーケティングなしで日本を売り込んでも、うまくいくはずがない。
・先日、日本の老舗着物屋と、シートベルトを使ったバッグなどを生産するマレーシアの社会起業家が組んで、新しい製品を開発。その発表会を、日馬国交60周年イベントとして行った。 そのイベントはかつてない盛り上がりを見せた。何よりもマレーシアメディアの取り上げ方が、他の周年イベントとは比較にならないくらい大きかった。日本の老舗伝統企業が、マレーシアのベンチャー企業と意気投合し、真の意味で「日本とマレーシアのコラボ」を実現してみせたことが、現地の人々にとって大きな喜びとなったのだ。 それは、マレーシアの文化を深く知り、マーケティングをしたうえでのコラボーレーションだから成しえた成功だと筆者は考えている。
・日本製品は優れている、日本文化は素晴らしい。筆者もそう感じる。だが、それを世界に知ってもらうには、現地の人々の文化や考えを真摯に知ることがまず必要なのだ。
http://diamond.jp/articles/-/148554

次に、『最強の働き方』『一流の育て方』著者で投資家/ビジネス作家のムーギー・キム氏が2月23日付け現代ビジネスに寄稿した「一風堂ニューヨーク店の成功でわかった、日本人の「ヒドい勘違い」 日本ブームで何でも売れる、は大ウソ」を紹介しよう(▽、○は小見出し)。
・「世界MBAランキング」で、直近2年連続で世界第1位、名実ともに世界最強の経営大学院「INSEAD(インシアード)」。世界80か国以上から学生が集まり、グローバル性、多様性を大きな特徴とするこの大学院、いったい何がそれほどすごいのか。 ビジネスパーソンのバイブルとも呼ばれる大ベストセラー『最強の働き方』『一流の育て方』、最新刊『最強の生産性革命』(竹中平蔵氏との共著)の著者で、自らインシアードの卒業生でもあるムーギー・キムさんをガイド役に、「世界最強の経営大学院」が生み出す人材たちの「最強の仕事術」に迫る。《これまでの連載はこちら》 
▽「ほっけの開き1枚40ドル」の世界もあるけれど
・シンガポールや香港に住んでいると、日本食の人気と価格に驚かされる。 寿司の値段は3倍、味のクオリティは格段に落ちるが、行列のない日本料理屋は海外には存在しない。 最近、シンガポールのリバーバレー(日本人駐在員に人気の地域)にある和食チェーンで、ほっけの開きを注文してビックリ。小ぶりのほっけ一枚が、実に40ドルという恐ろしい値段で売っているのだ。
・マンダリンオーチャード(シンガポールを代表する五つ星ホテル)の中にある最高級寿司店「はしだ」に行けば、二人でおまかせを食べて、軽く獺祭を一本入れるとその値段は1500ドル。それでも予約は途切れず、いつ行こうとしても予約で一杯である。
・近年の世界的な和食ブームで、世界各国で日本料理店の進出が目立つようになっている。「いきなりステーキ」のニューヨークでの快進撃の話などを聞くと、我も我もと海外進出を考える飲食店が出てくるのもわからないではない。 しかしながら、メディアで取り上げられる成功例の陰には、数えきれないほどの死屍累々とした「海外進出失敗組」がいることを忘れてはならない。
・今回のインシアード卒業生は、ニューヨークで飲食に限らず日本発サービスの海外進出をサポートする斎藤晃さん。「海外進出に失敗する日本人の残念な特徴」と「成功の秘訣」について、ニューヨークからの現地レポートを届けていただこう。
▽「自動車、ハイテク製品、寿司」は過去の話
・「3か月以内に売上伸ばせなかったらクビ」と上司から宣告され、泣かず飛ばずの時期を何度も乗り越えて、ニューヨークを拠点にコンサルタントを5年以上やってきました。仲良くなった同僚が突然クビになるのを目の当たりにし、次は自分の番かと怯えながら、恥ずかしい失敗を何度も重ね、何とかいままで食いつないでいます。
・サバイバルのためには、利益率の良いアメリカのコンサルティング案件だけやっていればいいものを、採算度外視でつい熱が入ってしまうのが、日本発の海外進出案件です。海外に住む日本人ビジネスマンとしては、日本のものが売れていくのは、ただ単純にうれしいものなのです。
・日本と言えば、高品質な自動車、ハイテク製品に寿司……というのはもう10年、20年も前の話。いまニューヨークで一番勢いがあるのはラーメン、アニメにゲームです。日本発のオリジナリティとクリエイティビティが求められているのです。
・日本を海外に売り込む可能性はまだまだあると思います。いくつもの案件に携わってきた経験から、日本人が海外で事業展開するときに陥りがちな失敗と、最低限これだけはやってほしいと思う秘訣を紹介したいと思います。海外進出を考えていない人にとっても、足もとのビジネスを見つめ直す役に立つのではないでしょうか。
▽アメリカに進出する日本人の誤解「あるある」
○ありがちな失敗(その1)「日本」と言えば売れると思っている
・確かに世界で和食店は増えています。寿司のファンも多いです。だからといって、世界中で日本ブームが巻き起こっていると思うのは、いくらなんでも勘違い。日本に好意的な印象を持っている人は多いと感じますが、実際のビジネスでお金を払うかどうかはまた別の話。ましてや「メイドインジャパンなら売れる」的な考えは、時代錯誤もはなはだしいというほかありません。
・けれども、筆者が初めてお会いするクライアントのなかには、そんな安易な考えに頼っている方が少なくありません。ニューヨークの人から見た東京というのは、東京の人からみた日本の地方都市のようなイメージ。東京は聞いたことはあるし、ある程度は認めるけど、ニューヨークで通用するかは別の問題でしょ、という感じなのです。
○ありがちな失敗(その2)「モノさえよければ売れる」という誤解
・日本には「いいモノを作れば売れる」という、一種のものづくり信仰があります。しかし、アメリカではそうはいきません。「何も言わなくても、わかる人にはわかってもらえる」などというのは甘い幻想です。過去の製品からの性能向上をアピールするだけでも不十分で、これまでにない目新しさや、どう役に立つのかをアピールすることが求められます。
・日本の商品をニューヨークに売り込みたいという人に共通なのは、商品ありきのプロダクトアウトの発想で話がはじまることです。最初に相談されるのはたいてい、「日本で作ったいい商品があるんだけど、アメリカで売れないか」。「アメリカにある課題を解決できるから、アメリカに進出したい」と考えている人に会ったためしがありません。
・また、日本(本社)側の事情で、アメリカでの売上目標があらかじめ設定されている場合が多いことにも驚かされます。日本での売れ残りを売り切るのが販売目標ということもありました。アメリカ市場の状況を考えずに、国内事情ありきで話が進んでいるので、現実離れしたプランを聞かされることもよくあります。 外国で成功したいなら、その国のどんな課題に対してあなたの商品がどう役に立てるのか、そのことをしっかりと考える必要があります。
▽堂々と語れば、自然と貫禄が出てくる
・では、海外展開で成功するためにはどうしたらよいのでしょうか。その秘訣はいくつもあるのですが、日本人にとって特に重要と思われる3点について紹介しましょう。
①あたかもその分野の第一人者として、商品の課題解決機能をひと言で表現する
・まず大切なのが、進出先の地域でオンリーワン・ナンバーワンの存在として、自分たちの売ろうとしているモノやサービスが、買い手の課題をどう解決できるのか、ひと言で説明できることです。買い手がその商品を買うべき理由を、堂々と淀みなく一文で説明してください。 
・ニューヨークは世界中からさまざまな個性を持ったモノやサービスが集まる場所。次々と新しいものが出てくる競争のなかでは、たとえ日本でナンバーワンであっても、ニューヨークにすでにあるもののコピーと見られてしまったらお終い。逆に、日本では2番手、3番手、いや10番手でも、ニューヨークでオンリーワン・ナンバーワンならチャンスはあるのです。
・筆者もコンサルティングというサービスを売っている一人です。何度も失敗を重ねました。 東京での実績をアピールしても大した関心が得られず、「で、私の課題をどう解決してくれるの?」と聞かれ、こちらが必死に答えようとしているうちに相手の興味が失われていくのがわかり、あっという間に打ち切られたことも幾度となくあります。アピールポイントを間違えたために、5分でミーティング終了ということもありました。
・それがうまく行きだしたのは、自分を「世界最高水準の日本の製造業のオペレーションで実績のあるコンサルタント」とひと言でアピールするようになってからです。正直言って、日本の製造業コンサルタントのなかでは平均程度の私ですが、ニューヨークでは珍しいタイプのハイレベルな経験をもった人材とみなしてもらうことができたのです。
・一つのトピックに精通した人間として堂々と語りだすと、貫禄のようなものが出るのでしょうか。相手は一目を置いて話を聞いてくれるのです。 なお、筆者は英語が堪能ではありませんが、それは問題ではありません。自分の専門分野に関する単語とアピールするための表現はしっかり覚えて、あとは自信たっぷりにふるまうことです。英語の文法や発音をエレガントにするための努力よりも、伝える中身で勝負しましょう。
▽「和牛」を宝飾品と同様に扱う発想
②ストーリーを語る~和牛とラーメンがニューヨークで売れているワケ
・「日本で人気」と言えば、アジア圏なら売れるかもしれませんが、ニューヨークではそうはいきません。あらゆるモノやサービスが身のまわりに揃っているニューヨーカーは、商品を買うにあたってあっと驚くようなストーリーを求めています。買い手にとって、その商品を買うことがどのような体験なのかをわかりやすく伝える必要があります。
・たとえば、「和牛」に関する私の経験をご紹介しましょう。 ニューヨークでは、和牛の値段は米国産高級ステーキ肉の3倍はします。そこで、近所のスーパーの陳列棚に並べるような売り方ではなく、洋服や宝飾の高級ブランドと同じように扱う必要があると考えました。 具体的にはどうしたかと言うと、タキシードを着たウェイターが和牛を桐の箱に入れて顧客に見せつつ、「この牛にはビールを飲ませ、モーツァルトを聴かせて育てたんです」といったエピソードを披露し、注文する時点からスペシャルな体験を演出しました。
・ストーリーを変えることで、同じ商品でもこれまでと違う価値をアピールして買ってもらえるようにもなります。
▽「一風堂ニューヨーク店」の成功に学ぶ
・ラーメン「一風堂」はこの点でとても成功しています。 一風堂ニューヨーク店は、混雑時には席に着くまで60分待ちという超人気店。待ち時間はウェイティングバーでカクテルを飲みながらゆっくりと過ごします。日本人の抱くラーメン店のイメージからは遠く離れた、おしゃれなデートスポットなのです。
・席に着いたら、まずは前菜をつまみながらワインを飲み、落ち着いたところでラーメンを食べて、最後にデザート。みなフルコースのディナーを2時間かけて楽しんで帰ります。ラーメン1杯で20ドル、お酒も合わせると2人で合計150ドル支払うこともざらにあります。
・日本では、ラーメン1杯1000円以下という感覚が染み込んでいますが、アメリカ人にはそういう思い込みはありません。日本人がおしゃれなイタリアンで前菜・パスタ・デザートにワインを飲むデートに2人で1万円使うのと同じ感覚で、ニューヨーカーにラーメンを食べてもらうことに成功した一風堂の作戦勝ちです。
・海外現地に住んでいる人と同じ視点に立って日本を見つめ直し、相手があっと驚くようなストーリーを生み出すことができれば、日本で売られているのと同じ商品を別の付加価値があるものととらえて、喜んでお金を払う人たちがいるのです。
③失敗をおそれないガッツを持つ~優秀さより、ガッツが重要
・アピールポイントが見えてきたところで、次はどう売り込んでいくかです。この問題の最良の解は、失敗を覚悟で「数を打つ」ことでしか見つかりません。失敗しても失敗しても、トライをくり返すことです。 私もこれは苦手でしたが、同僚のインド人が目を覚ましてくれました。彼は自分の営業のため、片っ端から電話しまくっているのです。そのしつこさで嫌がられることも多いのですが、コンタクトする量が多いので気がつくとトップクラスの売り上げを達成していました。
・受注確率を上げるよりも、圧倒的なコンタクト量を作るほうが受注を増やすための近道だと、彼のおかげで気づかされました。実際やってみると、やはりことごとく断られるのですが、「ニューヨークは失敗が許される街だからハートを強く持て」「失敗の量が少ないやつは成功しない」と同僚や上司に励まされ、とにかく続けています。
・「とにかく数を打て」だなんて、MBAホルダーの体験談なんだから、もっと深みのあるサジェスチョンを……と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかしこれこそが、私がインシアードに入学して間もなく教わったことなのです。 インシアードに留学して最初に受けた講義のゲストスピーカーに「インシアードに入学した時点で君たちが優秀なのはわかったから、これ以上の勉強は必要ない。君たちがビジネスで成功するために必要なのは『ガッツ』だ」と言われました。これから勉強しようという人に何てことを言うんだろうとそのときは思いましたが、いまは本当にその通りだと思います。
▽トライ&エラーのサイクルを回しまくれ
・海外に住んでいると日本の商品の良さをますます実感して、日本がまるで宝の山に見えてきます。とりわけ、アメリカは日本の数倍の市場規模があり、日本ファンも多いので、商品を売り込むチャンスはいくらでもあります。実際に売り上げを伸ばしている例を、私自身もたくさん目にしてきました。
・いまのニューヨークで新規事業を成功させるには、トライ&エラーをくり返してサイクルをどんどん回し、実験の量を速く多くこなすのが一番の近道だと言われます。第一線のビジネスパーソンたちはみなそれを実践しているのです。うまくいかないことも一つの成果と思って、どんどん前に進んでいくことが何より大事なのです。
・日本製品というだけでは売れず、東京で売れたからと言って世界では売れません。いかに現地で目立てるのか、いかにストーリーで付加価値をつけるのか、そして優秀さではなくガッツで負けないハートが、ニューヨークに限らず海外進出を成功させる三大要素なのだと思います。
(今回のインシアード卒業生:齋藤 晃(さいとう・あきら)  名古屋大学工学部を卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。2007年からINSEADへMBA留学。卒業後にコンサルタントとして拠点をニューヨークに移し、北米、中南米、ヨーロッパ、アフリカなどの企業のグローバル展開を、市場参入、現地組織・オペレーション立ち上げ、グローバル統合まで幅広く支援。)
http://diamond.jp/articles/-/148554

第三に、政治・外交ジャーナリストの原野 城治氏が4月23日付け現代ビジネスに寄稿した「「クールジャパン」はこんなにひどいことになっていた もちろん、最終評価は先の話だが」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽クールジャパン投資事業で44億円の損失
・大々的に喧伝されてきたクールジャパン政策が迷走している。 日本の文化を海外に紹介し、マンガ・アニメ、食、ファッションなどの輸出を支援すると官民ファンドの産業革新機構が投資した事業が成果ゼロのまま次々に打ち切られ、その株式が民間企業に極めて廉価で売却されている。
・中には20億円以上の「全損」案件もあり、税金の無駄遣いがはなはだしい。特に、2013年11月に鳴り物入りで設立された「海外需要開拓支援機構」(クールジャパン機構、東京都港区)のいくつもの投資事業案件が苦戦続きとなっている。 会計検査院は4月13日、アベノミクスの推進役として相次いでつくられた官民ファンドの投資損益調査結果を発表した。それによると、2017年3月末時点で全14のファンドの4割強にあたる6つのファンドが損失状態になっていることが判明した。
・言うまでもなく、官民ファンドの財源の大半が公的資金(税金)である。日本文化・インフラの輸出促進やベンチャー支援などのため企業や事業に投融資し、ファンドごとに保有株売却などで最終的に利益を確保、回収前することを目指している。 もちろん、官民ファンドの中には利益を上げて順調なところもある。しかし、出資先の純資産などをもとに時価評価額を試算したところ、6ファンドで回収額と保有株などの評価額合計が投融資額を下回り、損失状態となっていた。
・各ファンドは10~20年程度の設置期間を終えるまで運用実態が外部から見えないだけに、この損失状態を放置するとリスクを膨らませる可能性が高い。 その中でも、クールジャパン機構の損失が突出している。具体的には、2017年3月末時点での投融資17件、総額約310億円のうち損失は約44億円に上る。「森友学園」へ国有地売却での8億円値引き疑惑に劣らぬ無責任ぶりだといえる。
・当然、官民ファンドの損失が拡大すれば、今後は省庁をまたぐ再編が政治問題化するのは避けられず、当然、クールジャパン機構もその統廃合の対象になる可能性が高い。
▽中身の薄い官製”クール”
・第二次安倍政権の誕生(2012年12月)のあと、内閣府、経産省の主導で開始された「クールジャパン戦略」は、外国人が〝クール″ととらえる日本の魅力を情報発信して、海外への商品やサービスを展開、さらに観光によるインバウンドの増加を図ろうというもの。
・アベノミクスが掲げる成長戦略のひとつの柱であり、クールジャパン機構が大々的に事業を展開してきている。 同機構の名称からすると文化事業と勘違いするが、コンテンツへの補助金を配分する機関ではなく、海外需要を取り込むため民間事業者に対し投融資で支援する組織である。換言すれば「日本の魅力」を産業化し、海外需要獲得のためリスクマネーの供給を軸とする民間企業支援を行うというものだ。
・しかし、ブランド戦略である「クールジャパン」の戦略的コンセプトはイメージ先行で、コアが判然としない。  経産省商務情報政策局によれば、〝クール″とは「日本の生活文化の特色を生かした商品又は役務を通じて日本の生活文化が海外において高い評価を得ていること」と官庁用語で説明をするが、要は外国人がクール(かっこいい)と捉える日本の魅力のに他ならない。
・具体的にはマンガ・アニメ、ゲーム、ファッション、食、伝統文化、デザイン、ロボット、環境技術などを挙げている。しかし、マンガ・アニメを除けば、先進国の大半が広報戦略で普通に挙げる項目の羅列に過ぎない。官製クールの〝薄っぺらさ″が透けて見える。
・この中で、最も無責任な失敗投資が株式会社「ALL NIPPON ENTERTAINMENT WORKS」(ANEW)といえるだろう。 ANEWは、経産省が主導し官民ファンド・産業革新機構が2011年に総額60億円、100%出資という形で設立された官製映画会社である。その事業目的は、コンテンツの海外展開として日本の知的財産を活用しハリウッドで映画を製作するというものだった。
・しかし、ANEWは映画7作品の企画開発を打ち上げたが、1本も映画制作に至ることなく、2017年5月にベンチャーキャピタルに3400万円という破格の価格で身売りした。その結果、産業革新機構が投資した22億2000万円の出資をほぼ全額が損失した。
・設立当時から問題を抱えたANEWは日本側の最高執行責任者が次々と交代し、国会でも追及されたがうやむやになり、困った果てた末に損切り。しかも、身売り先の新会社は、所在地も人員も旧ANEWの業務執行体制を引き継いだだけ。不透明極まりない身売りだといえるだろう。
・官製クールジャパンの甘い計算で巨額公的資金が消えた出来事と指摘できる。関係者によると、6年間の総売上高が1500万円にも関わらず、外国人幹部には1回のボーナスで2000万円を支払っていたというような杜撰な経営が行われていた。
▽低空飛行の海外放送事業
・特に注目度の高いクールジャパン機構の出資金は2017年4月時点で、政府出資586億円、民間収支(正しくは「出資」?)107億円で総額693億円に上る。対象は、1)メディアコンテンツ、2)ライフスタイル、3)食・サービス、4)インバウンド、5)分野横断――の5ジャンルで、既に25件、約529億円が投資されている。
・ところが、設立から満4年を経過した時点で、投資案件の4割にあたる事業で赤字が累積しているという苦戦状況だ。 同機構の太田伸之社長は、『月刊経団連』(2017年5月号)への寄稿で、日本の魅力的コンテンツの海外展開の呼び水として、〝空中戦″の海外放送事業「WAKUWAKU JAPAN」と〝地上戦″の全館クールジャパンの百貨店「ISETAN the Japan Store」(クアラルンプール)を紹介しているが、この代表的案件がともに迷走状態にある。
・海外放送事業「WAKUWAKU JAPAN」は、スカパーJSATとの合弁事業で、日本のアニメ、ドラマ、スポーツ、音楽、情報などの番組を現地語で放送し、2020年までに22カ国で展開するのが目標。 しかし、著作権や版権さらにはコンテンツ自体の質的問題などから番組の視聴率は低迷し、赤字を垂れ流している。「日本へのインバウンド誘導に貢献できる」と太田社長は強調したが、電通関係者によると「やればやるほど赤字が増える」というのが実情のようだ。
▽アグリージャパンとならぬように
・地上戦″の代表例として挙げられた「ISETAN the Japan Store」も、2016年10月末にクアラルンプール中心部に地下1階、4階までという日本商品だけを展示したデパートとしてオープンしたが、歓迎されたのは初めだけ。 太田氏は「この店を舞台に日本のテレビ局がドラマを製作、マレーシアでも人気となった」(同誌)と自賛したが、現地の価格設定がバラバラで高すぎる上に、ありきたりな酒、寿司、そば、工芸品といった展示は自治体の「アンテナショップ」の拡大版でしかないというのが現地の冷めた評価だ。
・計画を推進した三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋前社長も2017年3月、独善的な経営手法が批判を浴びて突然失脚した。 現地の在留邦人の間では「マレーシア進出の日本企業は3年以内に7割が撤退」というジンクスがある中、日本製品特化のデパートはまさに、スタートから採算度外視のビジネスだとしか言えないのかもしれない。
・クールジャパン機構はそれに10億7000万円を投資している。日本ブランドの紹介で日本への観光インバウンドを期待することのようだが、税金が投入されている組織の仕事としては十分な説明が必要だ。そもそも、〝クールジャパン″は商売用の看板ではない。 しかも、投資案件は出資した民間企業23社(1社5億円、地方銀行2行は1億円)が手掛ける事業への投資が目立つ。
・三越伊勢丹HDもその1つだが、ニューヨークで人気のあるラーメン店「一風堂」を展開する「力の源ホールディングス」に7億円を投資し、ラーメンダイニング形式の店舗を展開している。融資枠は最大13億円まで確保されている。 しかし、海外展開を望む他の中小サービス企業への支援ならいざ知れず、海外で認知度が高く営業利益を上げている有力企業に敢えて支援する理由が分からない。
・さらに問題なのは、クールジャパン機構内で今年2月に従業員に対するセクハラ問題が表面化し裁判沙汰になるなど、組織自体のガバナンスも極めに杜撰としか言いようのない状況に陥っていることだ。 経産省は3月、クールジャパン機構の太田社長を6月開催予定の定時株主総会で、ソニー・ミュージックエンタテイント元社長の北川直樹氏に交代させる人事を発表した。
・組織立て直しの意図は明瞭だが、果たしてこうした人事で〝クールジャパン″の現場に立ち込める不可解な霧が晴れる保証はどこにもなさそうだ。 もちろん、投資案件は10年の期間を経て最終的に評価されるが、他の官民ファンドの苦戦状況と合わせて考えれば、省庁をまたぐ官民ファンドの整理や統廃合問題の中で、クールジャパン機構もその対象になる可能性は十分にある。
・官庁主導の"クールジャパン"はクールでないとの批判が常にあるが、いい加減な事業展開を続け一部で言われる「アグリージャパン」にならないよう最大限の注意が必要だろう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55359

第一の記事で、クアラルンプールの中心部での、イセタン(伊勢丹)・ジャパンで、 『日本でも見かけないくらい素晴らしい品ぞろえだった』、なのに、店員の商品知識がないという問題に対し、 『彼らに「意識の高い」マレーシア人富裕層を惹きつける商品説明をさせるためには、相当な教育が必要なはずだ。しかし、コストと時間を考慮すれば、そのような教育が効率的とは思えない。 ならば、製品の説明を事細かに書いた解説を各所に置いておき、「本物の日本」に興味のある富裕層マレーシア人の購買意欲を刺激するような工夫が必要だと筆者は感じた』、との冷静な判断は説得的だ。 『マーケティングなき押し売りはかつての「アメ車」と同じ』、 『日本製品は優れている、日本文化は素晴らしい。筆者もそう感じる。だが、それを世界に知ってもらうには、現地の人々の文化や考えを真摯に知ることがまず必要なのだ』、などの指摘もその通りなのだろう。
第二の記事で、 『タキシードを着たウェイターが和牛を桐の箱に入れて顧客に見せつつ、「この牛にはビールを飲ませ、モーツァルトを聴かせて育てたんです」といったエピソードを披露し、注文する時点からスペシャルな体験を演出しました』、との演出には恐れ入った。なるほどである。ただ、2度目、3度目の客にはどうするのだろう。 『一風堂ニューヨーク店は、混雑時には席に着くまで60分待ちという超人気店。待ち時間はウェイティングバーでカクテルを飲みながらゆっくりと過ごします。日本人の抱くラーメン店のイメージからは遠く離れた、おしゃれなデートスポットなのです』、というのは、なるほど上手いやり方だ。 『インシアードに留学して最初に受けた講義のゲストスピーカーに「インシアードに入学した時点で君たちが優秀なのはわかったから、これ以上の勉強は必要ない。君たちがビジネスで成功するために必要なのは『ガッツ』だ」と言われました。これから勉強しようという人に何てことを言うんだろうとそのときは思いましたが、いまは本当にその通りだと思います』、というのは、さすがインシアードだ。
第三の記事で、 『クールジャパン機構・・・2017年3月末時点での投融資17件、総額約310億円のうち損失は約44億円に上る』、というのは目を覆いたくなるような酷さだ。  『ANEWは・・・国会でも追及されたがうやむやになり、困った果てた末に損切り。しかも、身売り先の新会社は、所在地も人員も旧ANEWの業務執行体制を引き継いだだけ。不透明極まりない身売りだといえるだろう』、というのはやはり問題だ。野党ももっと追及すべきだ、 『〝空中戦″の海外放送事業「WAKUWAKU JAPAN」と〝地上戦″の全館クールジャパンの百貨店「ISETAN the Japan Store」(クアラルンプール)を紹介しているが、この代表的案件がともに迷走状態にある』、前者はニーズを度外視した無謀な事業、後者は支援する意味自体が疑問な事業だ。 『投資案件は10年の期間を経て最終的に評価される』、とはいえ、会計検査院がやったような投資損益調査を、毎年のようにやることで時価評価してゆくべきだろう。クールジャパン機構の社長を交代させて済む話ではなく、推進の主役、経産省の責任が問われている。そろそろ、マスコミも安部政権への遠慮を止めて、現政策の問題点を明確に伝えるべきだろう。
タグ:anew 中身の薄い官製”クール” クールジャパン機構 「「クールジャパン」はこんなにひどいことになっていた もちろん、最終評価は先の話だが」 官民ファンドの投資損益調査結果を発表 投融資17件、総額約310億円のうち損失は約44億円に上る 原野 城治 、〝空中戦″の海外放送事業「WAKUWAKU JAPAN」 会計検査院 官製映画会社 地上戦″の全館クールジャパンの百貨店「ISETAN the Japan Store」(クアラルンプール) INSEAD(インシアード) マーケティングなき押し売りはかつての「アメ車」と同じ なかなか日本でも見かけないくらい素晴らしい品ぞろえだった 「一風堂ニューヨーク店の成功でわかった、日本人の「ヒドい勘違い」 日本ブームで何でも売れる、は大ウソ」 相手国の事情や文化について深い考察をせずに「ジャパンってクールだろ?」と「日本の押し売り」をしている アメリカに進出する日本人の誤解「あるある」 現代ビジネス 戦略なき投資 「世界で「クールジャパン」が苦戦する原因」 「一風堂ニューヨーク店」の成功に学ぶ (その6)(世界で「クールジャパン」が苦戦する原因、一風堂ニューヨーク店の成功でわかった日本人の「ヒドい勘違い」 日本ブームで何でも売れる は大ウソ、「クールジャパン」はこんなにひどいことになっていた) タキシードを着たウェイターが和牛を桐の箱に入れて顧客に見せつつ、「この牛にはビールを飲ませ、モーツァルトを聴かせて育てたんです」といったエピソードを披露し、注文する時点からスペシャルな体験を演出 ダイヤモンド・オンライン ストーリーを語る~和牛とラーメンがニューヨークで売れているワケ マレーシアのイセタンはなぜダメなのか マーケティング不在 ムーギー・キム クールジャパン戦略 渡部 幹
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