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福祉問題一般(その1)(引きこもりの利用者を「うつ」にする就労支援施設 隠れパワハラの実態、旧優生保護法 見過ごされた被害、高齢者や低所得者に空家を貸し出す「セーフティネット住宅」の闇と光) [社会]

今日は、福祉問題一般(その1)(引きこもりの利用者を「うつ」にする就労支援施設 隠れパワハラの実態、旧優生保護法 見過ごされた被害、高齢者や低所得者に空家を貸し出す「セーフティネット住宅」の闇と光)を取上げよう。

先ずは、ジャーナリストの池上正樹氏が5月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「引きこもりの利用者を「うつ」にする就労支援施設、隠れパワハラの実態」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「自死しても責任はとらないよ」 利用者に高圧的な就労支援事業所
・「当事者(本人)が自死した場合、事業所は一切の責任を負いません」 ある就労移行支援施設を辞めようとしたら、そんな誓約書にサイン、捺印させられて、疑問に感じたというのは、利用者のAさん(36歳)である。
・施設側が捺印を迫った誓約書には、他にも「掲示板などで事業所の悪口や業務妨害に該当するような書き込みがあり、事業所が訴えを起こした場合、異論はないと約束します」といった文言も記されており、Aさんは「利用者を最後まで苦しめるような自己保身的なやり方に、ショックと怒りを感じた」と話す。
・Aさんは、大学を卒業後、なかなか就職が決まらず、その後も企業の採用試験で落とされ続けた。半年以上にわたって働けない状態が続いたことから、接客業のパートで生活を続けた。 その頃、Aさんは“燃え尽き症候群”のような状況に陥り、医療機関に診てもらったところ「適応障害」と診断された。
・結局、薬の副作用が原因で、2度目の職場で退職を強要されたのです」 それ以来、職業訓練校に通ったものの、企業からは不採用と言われ続け、3年ほど前までの間、何もできなくなって自宅に引きこもってきた。
・このままではいけない。働かなければ……」 そう焦ったAさんは、頑張って役所の窓口にメールなどで相談したものの、いい返事が来なかったという。そして、ネットで見つけた専門家の紹介で医療機関に連絡。しばらく通院した後、冒頭の就労支援事業所に辿り着いた。
・辞めるきっかけとなったのは、支援員から理不尽な理由で怒られたことだ。これ以上、継続して通所することに、自分の体調を壊す懸念があったという。 このまま事業所にいても、就労に繋がる適切な支援を受けられそうにないことや、事業所に継続して通所していたら、より体調(精神面)が悪化する恐れがあると感じたので、退所する決意をしました」
・Aさんは、他の利用者が同じ作業をしている中で、1人だけ施設長の指示で別の作業を長時間させられていた。 「このような行いは、障害者虐待防止法に記載されている心理的虐待(仲間に入れない)に該当するのではないでしょうか。障害福祉の就労支援事業所として問題ないのでしょうか」 Aさんは、そう疑問を投げかける。
▽恫喝し、誓約書を書かせる 事業所の深刻な「隠れパワハラ」
・施設内では、施設長がたびたび利用者に怒鳴り散らしていた。いわば、パワハラ行為だ。施設長から「ここを辞めてもらってもいい」と言われた利用者もいたという。 また、事業所の利用についての話し合いを行った際に、「精神疾患を抱えている人は、注意や指導によって体調を崩すことがある」との意見が出ると、施設の支援員は「それはただの甘えだ」と発言することもあった。
・Aさんによると、利用にあたっての仲介者から、施設のサービス管理責任者に、利用者に合った支援を行うよう依頼があったと聞いているが、事業所としてそのような対応は行われていないという。
・別の30歳代の利用者Bさんも、この事業所の相談室で、3人に囲まれて凄まれるという「圧迫面談」を何度も受けて通所できなくなり、今も精神的ショックに陥っている。「3人で取り囲まれる圧迫面談以外にも、施設の外で怒鳴られたり、就労のための指導の名の下、追いつめられたりしました」(Bさん)。
・Bさんは管轄する自治体に相談したものの、相談支援業者に会って話し合うよう勧められるだけ。「実際会って話せば、心が揺れてしまうし、大丈夫かな……と思って話した後、怖い目に遭ったこともある」と、不安で身動きできなくなっている。「いざ自分がこの立場になってみて、面と向かって言い返せない自分の弱さも痛感しております。役所ももうあてにはならず、自分もいま本当に弱くて、どうすればいいかわかりません」
・就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービス。就労を希望する障害者を対象に、職場体験や求職活動に対する支援、適正に応じた職場開拓など、就労につなぐためのサポートをしていく。利用期間は2年間となっている。 事業所に支給される額は、定員や実績に応じて、利用者1人あたり、1日5000円から1万890円。国が2分の1、都道府県と市長村がそれぞれ4分の1ずつ負担する。事業所の指定や監査は、都道府県が行うことになっている。
・Aさんは、都道府県の窓口に相談したものの、「氏名を出さなければ対応できない」と言われたという。 厚労省によれば、そのような誓約書に捺印を迫ることや、利用者に怒鳴るなどのパワハラ、圧迫面談などは、事実であれば不適切であり、障害者総合支援法の理念にも反する行為。悪質な場合には、口頭や文書での注意に留まらず、行政処分の対象になるという。
・利用は公費で賄っているため、目的は規則に縛られる。施設側が利用者に明確な理由もなく「来なくていい」などと言う行為は、「サービス提供拒否の禁止」に抵触する。そもそも誓約書を書かせること自体、法令に書いてあるわけではなく、任意のやりとりの中での話になるので、安易に署名しないよう注意してほしいとしている。
▽そもそも「引きこもり」脱出を助けるための事業では?
・Aさんは、こう話す。「引きこもりの人たちを受け入れるはずなのに、ここではまったく逆。自分たちの言うことを聞く人だけを受け入れている。この施設に通っていると、おかしなことが多すぎて、精神的な症状が悪化しそうになります」
・周囲の施設長らに尋ねてみたものの、「利用者を怒鳴る、誓約書を交わすなどということは考えられない」と驚く。 多くの就労支援事業所は、法の理念や規則に則って、利用者のための就労サポート事業を丁寧に行っている。一方で、様々な事情から、長年働くことができなかったり、引きこもらざるを得なかったりした当事者たちにとっては、就労だけがゴールではなく、多様な生き方を見つけることができる時代になった。
・そんな人たちを応援するツールの1つである就労支援事業の一部の現場で、反論しにくい弱い立場の障害者に対する“見えない虐待”が野放し状態になっている。同じような“パワハラ施設”が他にも潜在している可能性がある。
https://diamond.jp/articles/-/170186

次に、5月17日付けNHK時論公論「旧優生保護法 見過ごされた被害」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・障害などを理由に子どもをできなくする不妊手術を強制されたとして、5月17日、東京、仙台、そして札幌で、3人が国に損害賠償を求める裁判を起こしました。手術を行う根拠となったのは優生保護法という法律でした。なぜ、許されるはずの無い人権侵害が、法律が見直されるまでの半世紀もの間続いたのでしょうか。
▽解説のポイント
・解説のポイントです。優生保護法とはどのような法律だったのか。なぜ、被害は見過ごされてきたのか。そして、救済の課題についてです。
▽優生保護法とは
・優生保護法が施行されたのは戦後間もない昭和23年。「不良な子孫の出生を防止する」という「優生思想」のもと、精神障害や知的障害などを理由に子どもをできなくする不妊手術が始まりました。当時は親の障害や病気が子どもにそのまま遺伝すると考えられていたからです。
・そして、法律のもうひとつの柱が中絶の合法化です。大量の引揚者や出産ブームで人口が急増する一方、食料や住宅の不足が深刻化していたからです。当時の国の会議の資料には人口の抑制と国民の質を向上させる2つの狙いが記されています。不妊手術は本人の同意がなくても、医師の診断の上、都道府県の審査会が認めれば実施されました。
・当時の厚生省の通知には、身体の拘束や、麻酔薬を使ったりだましたりしても手術が許されると記されています。こうして、国を挙げて手術を推し進めていったのです。 法律は平成8年まで施行され、およそ1万6500人が本人の同意がないまま手術を強いられました。形式的には本人の同意を得ていても、ハンセン病の患者など、療養所での結婚の条件に、実質的には手術を強制されたケースを含めると、被害者の数はおよそ2万5000人に上ります。手術が最も多く行われていたのは昭和30年代で、その後、件数は減っていきますが、平成に入ってからも実施されていました。
▽被害者の訴え
・裁判を起こした東京に住む75歳の男性です。14歳のとき、強制的に手術を受けさせられました。子どもを欲しがった妻には亡くなる直前まで、打ち明けることができなかったといいます。男性は「このまま胸にしまっておくことはできず裁判に踏み切った。人生を返して欲しい」と話します。厚生労働省はこの問題についてこれまで一貫して「当時は合法だった」として謝罪も補償もしていません。
▽優生保護法 改正の機会も
・多くの人の人権を踏みにじってきた優生保護法。昭和40年代と50年代に見直しが議論されたこともありました。しかし、その過程で、強制不妊手術が広く問題にされることはありませんでした。当時、最も注目されたのは、増加していた中絶の規制強化について。「生命の尊重」を掲げる団体が、規制の強化を求めたのに対し、「産む産まないは女性の選択」だとして女性団体が猛反発。結局、国会に提出された改正案も廃案となります。優生保護法を改正する機会はあったものの、別の議論の影に隠れ、強制不妊手術の実態が明らかになることはなかったのです。
▽なぜ遅れた 法律の見直し
・法律の改正は平成8年になってようやく行われます。 強制不妊手術などを認めた条項が削除され、法律の名前も母体保護法に変わりました。 他の法律や制度との整合性がとれなくなったことが大きな理由です。
・前年には、精神保健福祉法が成立。障害者の権利を尊重し、福祉を手厚くするという政策を進めようという足元で、強制的な手術を強いる優生保護法は異質な存在になっていたのです。そして、長らく療養所にハンセン病患者を強制的に隔離してきた「らい予防法」も廃止。合わせて療養所の中で行われてきた不妊手術の法的根拠となってきた優生保護法も見直されたのです。当時、海外から非難の声があがっていたという事情もありました。
・なぜ、もっと早く法律を見直すことができなかったのでしょうか。 法律を所管していた当時の厚生省の官僚たちはおかしな法律だと思ったが、「何十年も肯定されてきた法律を否定するのは躊躇した」とか「法律が誤っていたとなると国家賠償の対象になるので慎重にならざるを得なかった」と証言します。たとえ人権を著しく侵害する差別的な法律であっても、一度つくったものは簡単には見直せないというのです。そもそも、優生思想が盛り込まれた条項については、「死に法」ですとか「死文化」していたと認識していたといいます。つまり、実害のない法律だったというのです。
・しかし、実際は平成に入ってからも数件、手術は行われていて、法律は生きていたのです。 こうした法律が半世紀もの間残った理由は3つあると思います。ひとつは、官僚の、過去の政策の否定は許されないという考え方です。
・そして、もうひとつは、被害者が声をあげられず被害の実態が明らかになってこなかったということです。手術を強いられた人の中には障害が重く声を上げられないという人もいるとみられます。そして、障害者が子どもを育てるのは大変だといわれ、手術に同意させられた家族は後ろめたさで声を上げられなかった。こうした事情も考えられます。
・さらには、私たち社会もこうした人たちに目を向けてこなかった、知ろうとしなかったということがあります。自分と同じように尊厳や権利が守られているのか思いを致さなかったのです。被害の実態が明らかにならない中、問題は埋もれ、行政だけでなく、政治も動くことはありませんでした。
▽救済の課題は
・その反省から、いま政治の場で救済を図ろうと議論が進められています。 きっかけはことし1月。被害者が声を上げ、初めて裁判を起こしたのです。いま、課題となっているのが時間の壁です。手術の記録など資料の多くが保存期間を過ぎ廃棄されているとみられています。では、どうやって被害を特定し、救済を進めていけばいいのか。参考になるのが、海外のしくみです。昭和50年まで障害者への不妊手術が行われていたスウェーデンでは、政府が謝罪した上で新たな法律をつくり被害者に補償金の支払いを行いました。この中では当事者の言い分を尊重するとともに、新たにつくられた補償委員会が本人に代わって病院などから必要な資料を入手し被害を認定しました。
・被害者はすでに高齢化が進んでいます。当事者だけでなく、医療機関や施設の関係者など埋もれた被害の断片でも知っている人の証言を拾い上げ、速やかに救済を進める必要があります。そして、もうひとつ忘れてはならないのは、過ちを繰り返さないために国の責任で問題を検証することです。同じ様に国の政策の誤りが問われたハンセン病の問題では検証会議が2年半に渡って調査を行い、被害の実態に加え、専門家やメディアなどの責任を明らかにしました。この経験を生かさなければなりません。
・優生保護法を長年、許してきたのは私たちの社会でもあります。 人権を踏みにじられた人たちに目を向けてこなかった責任を重く受け止め、事実に基づかない考えや偏見を持ち、他の人を傷つけていないか。絶えず考えていく必要があると思います。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/297638.html

第三に、福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)の浅川澄一氏が8月30日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「高齢者や低所得者に空家を貸し出す「セーフティネット住宅」の闇と光」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・国交省が高齢者や低所得者、障害者などに向けて、空家を貸し出す新たな住宅政策を始める。名付けて「セーフティネット住宅」。住宅困窮者への「安全・安心住宅」というわけだ。 貸すのは新築ではない。全国に広がっている空家に着目した。その着想自体はとてもいい。国交省のかねてからの課題の空家対策と自宅暮らしが難しくなった単身高齢者などの不安解消を結びつけた、一石二鳥のアイデアだ。国交省では入居者を「住宅確保要配慮者」と名付けた。分かり難い日本語だ。
・この4月に公布された「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)の一部を改正する法」によるもので、10月には施行される。
・空家、空き室を抱える大家さんが、都道府県と政令市、中核市の自治体にセーフティネット住宅として登録する。自治体はその登録情報を地域住民(住宅確保要配慮者)に知らせ、入居者を募る。大家には最高200万円の改修費、入居者には最高4万円もの家賃補助が国や自治体から出る。
・入居できるのは高齢者だけではない。賃貸住宅への入居が難しい人たちを想定している。障害者や子育て者、被災者、月収15万8000円以下の低所得者、外国人、失業者、新婚世帯、DV被害者などとかなり幅広い。
・賃貸住宅の単なる紹介でないところが売り物である。入居希望者に対して、自治体ごとに「居住支援協議会」を新たに設置して生活支援にあたる。同協議会は、(1)家主や宅地建物取引業者、賃貸住宅管理業者などの不動産関係者(2)NPOや社会福祉法人、それに新設の「居住支援法人」などの居住支援団体(3)都道府県や市区町村の住宅と福祉部局――で構成する。
・既に、全都道府県と京都市、福岡市、東京都杉並区など21の区市町村で設置されている。協議会には、国から上限1000万円の活動費が助成される。 この中で居住支援法人が新制度の要となるだろう。家賃の債務保証などを行うNPO法人などを都道府県が指定する。介護保険制度のケアマネジャーや地域包括支援センターに近い役割といえそうだ。
・想定している住宅は、マンションなど集合住宅や一般民家など何でもいい。マンションの場合は、オーナーが不動産業者などを通じて空き室を解消する努力がかなり成されている。問題は古い民家である。 かつて家族世帯が住んでいた2階建ての戸建て住宅が格好のモデルとなる。2階にあるかつての子ども部屋2~4室に住んでもらい、家主の老人が1階で暮らすイメージだ。家主がいなければ入居者は増える。これを「共同居住型住宅」(シェアハウス型)と命名した。
・こうした説明だけ聞いていると万々歳の政策のように見える。国交省は登録住宅の目標をこの10月から2020年度末までの3年半の間に17万5000戸と設定した。
▽「セーフティネット住宅」への疑問
・果たして、そんなに増えるのだろうか。民家の持ち主が、社会貢献事業に前向きになるだろうか。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)でも5年間で約20万戸だった。それを上回るハイピッチの目標を掲げている。
・首を傾げざるを得ない仕組みも目を引く。まず第一の疑問は入居者の居住面積についてだ。 個室で9m2以上とした。一般民家の2階の子ども部屋を想定すると、多くは6畳間だから9.9m2となる。これを念頭に置いて9m2としたようだ。 改装費や家賃に税を投入しているにもかかわらず、9m2で構わないとしたのはこれまでの政策との整合性を問われかねない。歴史を振り返ってみる。
・国交省は、建設省の時代から住宅建設計画法に基づく住宅建設5ヵ年計画の中で、最低居住面積の基準を設けてきた。罰則を伴わないが、国としての考え方である。 1976年からの第3期5ヵ年計画で短期滞在の単身サラリーマンを想定して、「1人16m2」と決めた。現実に単身者向け住宅の促進を目指したものではなくあくまで目安だ。それが1986年からの第5期5ヵ年計画で16m2は維持しながら、新たに単身の中高齢者だけは25m2とした。
・2006年には継承された住生活基本法により住生活基本計画が策定され、若年者を含めすべての単身者について最低居住面積を25m2とした。 2011年に始まったサ高住では、この数値を引き継ぎ、「標準型は25m2」となる。ただ、1人での入浴や調理が難しい高齢者もいるため、浴室とキッチンを居室に設けず共用とした場合は「特例として18m2以上」も認めた。
・こうして現行基準では、18m2が最低居住面積となっている。それなのに、いきなり半分の9m2で構わないとは。あまりにも無謀だ。18m2の根拠が改めて問われてしまう。「まず、空家対策ありき」と受けとめられる。
・おまけに、「居室にトイレがなければ住宅とは言えない」という長年の持論もあっさり取り下げて共用でいいとした。18m2の特例でも、サ高住はすべてトイレが居室内にある。住宅の基本理念が消えてしまったようだ。
・住宅を求めている「住宅確保要配慮者」は特別な人たちなのだろうか。特別な人たちは、従来のあるべき基準を無視していい。狭い劣悪な住宅で我慢してもらおうということだろうか。 国交省では、9m2では狭いと感じているようで、「その代りに住宅全体の面積を広くとっている」と強弁する。  住宅全体は「15m2×入居者数+10m2」という基準を設けた。例えば、3人の入居者が2階の3室の子ども部屋に入居すると、9m2×3人=27m2となり、全体面積は15m2×3人+10m2=55m2。つまり1階が28m2、2階が27m2となるわけだ。取り立てて、一階が広いわけではない。
▽高齢者の場合、認知症ケアはどうする?
・第二の疑問は高齢者が入居した場合の生活とケアについてである。住宅確保要配慮者とはいえ、現実的に自宅に代わる「第二の自宅」を最も求めているのは高齢者である。それも要介護度の軽い、あるいは要介護直前の虚弱な高齢者だろう。初期だが確実に認知症ケアの必要性がありそうだ。
・しかし、要介護度が中重度にならないと特別養護老人ホームには入居できない。認知症の人の最適施設のグループホームは足りない。サ高住や有料老人ホームに入居するには金銭のゆとりがない。 そんな高齢者にとっては家賃補助が出るこのセーフティネット住宅は誠に喜ばしい。では入居するとどうなるか。
・民家活用は若者に人気のシェアハウス型と説明される。古い戸建て住宅に見知らぬ高齢者や低所得者たちが雑居する。本物のシェアハウスでは、若者たちが食事を作り、掃除機や洗濯機を使い、浴槽も自分たちで洗う。家事を皆で協力しあい共同生活を楽しむ。 溢れる好奇心が新しい人間関係を築き、コミュニティが生まれる。だが、人生の老年期を迎えた高齢者が入居するとそうはなり難い。
・まず、三度の食事を自分たちで作り続けられるだろうか。大家が食事を提供することになる可能性が高い。あるいは、介護保険の訪問介護サービスでヘルパーが来るかもしれない。 そうなると状況が一変する、有料老人ホームに合致するので有料老人ホームの届けを自治体に提出しなければならない。たとえ一人でも、入居者に食事や介護保険サービスを大家が提供すれば、老人福祉法の有料老人ホームの規定を満たすからだ。
・自治体に届けを出すと、各自治体が定める「有料老人ホーム設置運営指導指針」を守らねばならない。そこには、「居室面積を13.2m2(8畳)以上に」と記され、廊下幅やスタッフの配置数など事細かに基準が定められており、とても普通の民家では対応できそうにない。
・まず、居室面積が大違いである。6畳(9.9m2)間を8畳間に変えるのは容易でない。つまり、国交省の新法が、厚労省の老人福祉法と相いれないことになる。 とはいえ、「有料老人ホーム設置運営指導指針」は単なる「ガイドライン」。法律ではないから、脱法行為にはならない。しかし、自治体の職員の中には、ガイドライン違反を大事と捉え、事業者がすくみ上るような言説を弄し、「脅し」に近い指導があるとよく耳にする。大家にとっては、ガイドライン違反という後ろめたさはつきまとう。
・つまり、国交省は要介護高齢者の入居をほとんど想定していないまま法律案を作りあげた。現実は、要介護高齢者がこうした賃貸住宅を最も必要としているにもかかわらずだ。
▽実は、認知症ケアの切り札に?
・そして第三の課題であるが、これは疑問点というよりも逆に、前向きな施策に転じる可能性を指摘したい。一般の民家を活用することで、認知症ケアへの素晴らしい呼び水になるからである。 第一、第二で述べた矛盾は、戸建ての空家に固執したために生じた。実は、このこだわりがとんでもない光明に通じるから面白い。
・認知症ケアの大原則に、生活の継続性がよく言われる。認知症になる前のライフスタイル、暮らし方を変えてはいけない。同じような生活環境を保つことが重要であるということ。元々は1982年にデンマークで提起され、その後国際的に浸透した高齢者ケアの三原則の一つである。
・暮らしの基本は住まいである。高齢者が親しんできた住まいを、認知症になっても大きく変えてはならない。今の高齢者が、「私の住まい」と感じるのは木造りの民家だろう。 その古い日本独特の和風建築こそが、認知症高齢者に欠かせない生活環境となる。この事実にいち早く気づき、実践してきたのが「宅老所」活動である。戸建ての自宅や古い空家を活用した、認知症の高齢者に寄り添う日本独特のケアスタイルとして知られる。宅老所の「宅」は、自宅の宅である。
・大病院や大施設の医療や介護に疑問を抱いた女性(看護師や薬剤師、介護職などが多い)たちが、地域に根を下ろして、高齢者の生活を丸ごと手助けしようと始めた。介護保険施行以前の1990年代の話である。 その支援方法がいい。利用者から見ると、「通って(通所)、泊まって(短期入所)、来てくれて(訪問)、そして住まいも(住宅)」という4つの機能が1ヵ所に詰まっている。まことに融通無碍なサービス拠点だ。
・家族がいない日中にまず本人が「通い」出す。昼食を摂り、職員と一緒に入浴も。その居心地がいいので、家族が不在の夜に「泊まり」が始まる。週末に家族が自宅にいても、外出の際には本人は同行できないのでヘルパーとして宅老所から職員が「訪問」する。そのうち認知症の症状が進むと、家族が夜間寝られなくなるので、本人の宅老所での泊まりが続き、結果として「住まい」として使い出す。
・全面的に本人に関わるこうしたケア手法は、各地で高く評価された。その基本に住まいがある。個人活動でもあり、宅老所といえば家賃の安い、使い込まれた民家が大半だった。襖や障子に囲まれ、こたつや仏壇のある普通の民家。
・これが、認知症ケアの鉄則「生活の継続性」に適合した。宅老所の機能は、介護保険に取り込まれ「小規模多機能型居宅介護」を生み出す。ただし、4機能のうち「住まい」は外れる。 民家活用のセーフティネット住宅は、かつての宅老所が持っていた機能のうちの「住まい」である。であれば、残りの3機能(通所、短期入所、訪問)を視野に入れねばならない。そうすれば認知症ケアの理想郷である宅老所そのものに近付く。
・現行制度に合わせると、「デイサービス+泊まり」が最善の選択肢だろう。24時間のケアを実現できる。生き残った宅老所の中には、このスタイルを採っているところもある。 介護保険制度では認知症の本人の住まいとしてグループホームがある。9人定員で、ほぼ同数のスタッフが配置される。日中は3人のスタッフが常駐する手厚い介護態勢は特養など他の居住系施設が及ばない。
・だが、利用者はわずか20万人ほどにとどまり絶対数が足りない。度重なる制度改定で運営基準が厳しくなる一方で、厚労省も増大に及び腰である。 国交省では、思いもしなかったことだろうが、空家の活用という一筋の赤い糸が認知症ケアを手繰り寄せることになる。その可能性を強く指摘したい。前段階として、セーフティネット法の運用をサ高住と同様に、厚労省との共同所管にすべきだ。
・認知症ケアが国家戦略として取り上げられる時代である。民家活用を舞台に載せたのであれば、認知症ケアに結びつけない手はない。まずは省庁の縦割りを乗り越えて考えてみるべきだろう。
https://diamond.jp/articles/-/140250

第一の記事で、就労支援『事業所に支給される額は、定員や実績に応じて、利用者1人あたり、1日5000円から1万890円』、もらっておきながら、『恫喝し、誓約書を書かせる 事業所の深刻な「隠れパワハラ」』、している就労支援事業所があるというのは、社会福祉施設ではありがちな話とはいえ、ここまでのケースがあるのには驚かされた。 『Bさんは管轄する自治体に相談したものの、相談支援業者に会って話し合うよう勧められるだけ』、『厚労省によれば、そのような誓約書に捺印を迫ることや、利用者に怒鳴るなどのパワハラ、圧迫面談などは、事実であれば不適切であり、障害者総合支援法の理念にも反する行為。悪質な場合には、口頭や文書での注意に留まらず、行政処分の対象になるという』、といったように、問題は自治体、さらには厚労省の監督のいいかげんさにありそうだ。自殺者が出るといった悲惨なことが起きる前に、監督体制を見直してもらいたい。
第二の記事で、 『昭和40年代と50年代に見直しが議論されたこともありました。しかし、その過程で、強制不妊手術が広く問題にされることはありませんでした。当時、最も注目されたのは、増加していた中絶の規制強化について。「生命の尊重」を掲げる団体が、規制の強化を求めたのに対し、「産む産まないは女性の選択」だとして女性団体が猛反発。結局、国会に提出された改正案も廃案となります』、というのは、『ポイントのズレた議論が「罪つくり」になるケースもあり得ることを示したものといえよう。放置して厚労省の責任も重大だ。 ただ、『優生保護法を長年、許してきたのは私たちの社会でもあります』、というのは、厚労省と並んで重大な責任があるマスコミについては、明示的に触れることから逃げているのは残念だ。訴訟での時間の壁を突破する仕組みや、『ハンセン病の問題では検証会議』、といった仕組みも必要だろう。
第三の記事で、 『国交省・・・「セーフティネット住宅」・・・かねてからの課題の空家対策と自宅暮らしが難しくなった単身高齢者などの不安解消を結びつけた、一石二鳥のアイデアだ』、とはいうものの、『「セーフティネット住宅」への疑問』、にあるように安易さも目立つようだ。『実は、認知症ケアの切り札に?・・・その古い日本独特の和風建築こそが、認知症高齢者に欠かせない生活環境となる。この事実にいち早く気づき、実践してきたのが「宅老所」活動である』、と筆者は評価しているようだが、肝心の「宅老所」活動についての説明が不十分なのが残念だ。「宅老所・グループホーム全国ネットワーク」のホームページ(https://www.takurosho.net/)をざっと見ただけでは、十分には理解できなかった。
タグ:優生保護法 「自死しても責任はとらないよ」 利用者に高圧的な就労支援事業所 「居室にトイレがなければ住宅とは言えない」という長年の持論もあっさり取り下げて共用でいいとした 昭和40年代と50年代に見直しが議論されたこともありました。しかし、その過程で、強制不妊手術が広く問題にされることはありませんでした。当時、最も注目されたのは、増加していた中絶の規制強化について。「生命の尊重」を掲げる団体が、規制の強化を求めたのに対し、「産む産まないは女性の選択」だとして女性団体が猛反発 池上正樹 浅川澄一 速やかに救済を進める必要 「セーフティネット住宅」 空家対策と自宅暮らしが難しくなった単身高齢者などの不安解消を結びつけた、一石二鳥のアイデア 9m2で構わないとしたのはこれまでの政策との整合性を問われかねない 高齢者や低所得者、障害者などに向けて、空家を貸し出す新たな住宅政策 大家には最高200万円の改修費、入居者には最高4万円もの家賃補助が国や自治体から出る NHK時論公論 「旧優生保護法 見過ごされた被害」 事業所に支給される額は、定員や実績に応じて、利用者1人あたり、1日5000円から1万890円 国に損害賠償を求める裁判 古い日本独特の和風建築こそが、認知症高齢者に欠かせない生活環境となる。この事実にいち早く気づき、実践してきたのが「宅老所」活動である 恫喝し、誓約書を書かせる 事業所の深刻な「隠れパワハラ」 このまま事業所にいても、就労に繋がる適切な支援を受けられそうにないことや、事業所に継続して通所していたら、より体調(精神面)が悪化する恐れがあると感じたので、退所する決意 援員から理不尽な理由で怒られた 「引きこもりの利用者を「うつ」にする就労支援施設、隠れパワハラの実態」 ダイヤモンド・オンライン 過ちを繰り返さないために国の責任で問題を検証すること 障害などを理由に子どもをできなくする不妊手術を強制 管轄する自治体に相談したものの、相談支援業者に会って話し合うよう勧められるだけ 被害者の数はおよそ2万5000人 「セーフティネット住宅」への疑問 国交省 「高齢者や低所得者に空家を貸し出す「セーフティネット住宅」の闇と光」 高齢者が入居した場合の生活とケアについて 福祉問題 (その1)(引きこもりの利用者を「うつ」にする就労支援施設 隠れパワハラの実態、旧優生保護法 見過ごされた被害、高齢者や低所得者に空家を貸し出す「セーフティネット住宅」の闇と光) 一般 入居者の居住面積 介護保険の訪問介護サービスでヘルパーが来るかもしれない。 そうなると状況が一変する、有料老人ホームに合致するので有料老人ホームの届けを自治体に提出しなければならない
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