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ハラスメント(その6)(「まだ結婚しないの?」安倍政権が進めた「官製婚活」5年で起こったこと、巨額税金投入で国家プロジェクトと化した「婚活」への違和感) [社会]

ハラスメントについては、4月26日に取上げた。今日は、(その6)(「まだ結婚しないの?」安倍政権が進めた「官製婚活」5年で起こったこと、巨額税金投入で国家プロジェクトと化した「婚活」への違和感)である。

先ずは、富山大学非常勤講師の斉藤 正美氏が5月21日付け現代ビジネスに寄稿した「「まだ結婚しないの?」安倍政権が進めた「官製婚活」5年で起こったこと 巻き込まれる企業や団体の実態」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ 財務省事務次官のセクハラ問題が発覚し、セクハラについて議論が沸騰している。また世界的に#MeToo運動が広がり、セクハラや性暴力の被害が次々と告発されるようになったことも記憶に新しい。
・あまり語られないが、婚活もセクハラの問題をはらんでいる。実は今年で、安倍政権が「官製婚活」に税金を投入し始めて5年になる。全国各地で自治体や企業が巻き込まれた結果、何が起きているのか。官製婚活について取材・研究してきた富山大学非常勤講師の斉藤正美氏が、問題点と危機感を綴る。
▽官製婚活とセクハラ
・福井県庁を1年半ほど前に訪問した際、エントランスには独身従業員の結婚を応援する「縁結び企業さん」の一覧リストが展示されていた。 これは社内に結婚のお世話をする「職場の縁結びさん」(婚活サポーター)を置くもので、「めいわくありがた縁結び」と呼ばれる。「ふくい応援企業が100社到達!」と書かれ、ハートの折り紙が飾られ、まるで営業成績を誇るかのようだった。
・本年4月現在、参加企業が212社に上るという。福井県の担当職員によれば、「職場の縁結びさん」は、独身の人に「あんた(結婚は)どうなのー」と声を掛けると言い、中小会社では社長が「縁結びさん」になる場合もあるという。 担当者によれば、「職場の縁結びさん」には、社長など「独身の方に物が言えるような人」や「職場の先輩とか同僚とかの既婚者」など、いわば断りづらい人を選ぶという。
・しかし、上司から「まだ結婚しないのか」や「そろそろ結婚したら」という声かけをされると、人によってはそれだけで十分セクハラになるのではないか。 また結婚を望まない人やレズビアンやゲイにとっては職場に独身社員の結婚を斡旋する部署があるだけで、毎日出社するのが苦痛になるだろう。
労働者の意に反する上司の性に関わる言動は、従業員の就業環境を不快にしたり、就業に支障を生じたりすることにもなりかねず、「環境型のセクシュアル・ハラスメント」に該当する。
・婚活についてはこれまで自治体主導で取り組まれてきたが、2016年6月「ニッポン一億総活躍プラン」の閣議決定により、企業・団体・大学等など地域全体が結婚応援をしていかなければならないとされ、自治体と地域企業や大学との連携を求める動きが加速している。
・上であげたような例が全国各地で進行しているのだ。しかも婚活の現場を取材すると、「結婚っていいよね」「いいことやっているから楽しい」などと同じ思いで突っ走る傾向も散見し、セクハラ、パワハラがあちらこちらで起きているのではないかと懸念される。
・安倍政権が「官製婚活」に税金を投入し始めて今年でちょうど5年になる。 官製婚活とは、少子化対策のために国が交付金を出し、全国の自治体が行う婚活支援のこと。官製婚活とは一体何だったのか。 官製婚活に、企業はどのように巻き込まれたのか。官製婚活は私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、実例を通して見ていこう。
▽企業や団体が次々と巻き込まれている
・官製婚活には、2013年より18年度まで毎年3〜40億の少子化対策の交付金が確保され、このための事業は、2015年には北海道から沖縄までの全国47都道府県に及んでおり、その事業数は353に達している。 事業の種類は、①お見合い型マッチング、②婚活パーティ・出会いイベント、女子力アップ、自己PR術などの婚活セミナー、③中高大学生に向けて「卵子の老化」や結婚適齢期の知識を教えるライフプラン教育。
・これらはいずれも、少子化対策には「20代の結婚や出産を増やす」ことが必要として盛んになっている。 また、官製婚活は、地方活性化や地方創生というアベノミクスの経済政策の一環として行われているため、婚活支援企業との連携のみならず、婚活事業への協賛や協力などという形でホテルやレストラン、旅行業者をはじめとする一般企業の巻き込みに拍車がかかっている。
・勤め先の会社が婚活の協賛企業になれば、婚活とは関係ないと思っていた人も会社で婚活セミナーを催したり、社員に婚活に参加するよう婚活メンターをやらなければならなくなったりする。 婚活は、企業や団体で働く人にとって、他人事ではないのだ。
・福井県は、ブライダル業や理容・美容業、お寺の住職、退職教員などを「地域の縁結びさん」に任命するなど婚活支援の先進県として知られる。福井県の西川一誠知事は、「めいわくありがた縁結び」というその事業名の「名付け親」である。
・婚活に熱心な自治体は、知事が企業や団体を婚活に巻き込むことにも熱心なところが多い。 企業のトップや管理職であれば知事との良好な関係を持とうとし、知事の応援団としてこうした動きに反応することもあるだろう。そうしたトップの下で働くと否応なく、婚活婚活と、職場から結婚を応援する雰囲気の中で働かざるを得なくなる。
・企業が燃えて宣言をしているのであれば、結婚したくない人は声を掛けられないように目立たないようにしてしのぐしかない。 しかし、中間管理職が結婚応援の盛り立て役を命じられでもしたら、結婚したくない人の人権侵害にならないよう配慮をしつつ会社の命に答えるのは、至難の業だ。セクハラ、パワハラとして訴えられるリスクもある。
・福井県の担当者に、県が結婚支援に力を入れることに対して疑問はないかと尋ねたところ、結婚を望む方に相手を紹介するだけである、関係機関や県の人権担当部署にも連携をとってやっているので問題はない、という認識を述べていた。
・しかし、婚活は「女性活躍課」の所管であった。女性活躍推進法が「女性の職業生活における活躍の推進」を図るための法律であることからすれば、女性活躍課というのは、女性が働きやすい環境をつくることを任務とする。 当然、セクハラがない職場環境を保持することはその重要な任務の一つだろう。そうした領域を担当する課が婚活施策の推進をするのは、ダブルスタンダードであり、悪い冗談としか思えない。
▽「企業子宝率」をご存知ですか?
・「企業子宝率」という指標があるのをご存じだろうか。 従業員(男女問わず)が企業在職中に持つことが見込まれる子どもの数を指し、ダイバーシティ・コンサルタントの渥美由喜氏が考案した。政府が白書や審議会資料でしばしば紹介し、日経新聞などのメディアが積極的に広報した。 現在この「企業子宝率」調査は、政府の交付金により福井、静岡、鳥取、富山、青森県の5つの県で実施されている。
・「職場の子どもの生み育てやすさ」を表す指標だとされ、子宝率が高い企業には入札における特典などの優遇措置をつける自治体もある。 通常、出生率調査は出産可能とされる15歳から49歳までの女性を対象とするが、渥美氏は子育てのしやすさを表すには「男女ともに対象」とした方がよいとし、在職中の男性従業員を含めて計上するという。
・この調査は、自治体が企業に依頼して、それぞれの企業で従業員のこどもの数と、いくつの時に子どもが産まれたかという年齢を調べるものだ。 調査段階で、企業に従業員の個人情報を調べさせ個人のプライバシーに介入させるリスクがあること、同時に、社員にとっては知られたくない個人情報を会社の上司から聞かれて答えざるを得ないか、断れば、個人的な事情を勘ぐられるなどの不利益を生む可能性がある。
・さらに、自治体担当者に、社員のプライバシーに踏み込む調査を行う際、調査対象者の人権をどう配慮しているか、筆者が尋ねたところ、「個人名を表記しない」「プライバシーに配慮している」程度の返答にとどまった。 個人の了解を得ることを義務づける、調査拒否を認めるなど社会調査上の倫理規定がないのは、人権侵害のリスクが高く、公的統計調査としては問題含みである。
・ゲイやレズビアンで法律婚がしたくない・できない人、あるいは結婚をしたくない人、自らの性的指向などを会社に明かさないで勤務している人、諸事情で子どもができない人、持ちたくない人、不妊治療をしている人など会社にプライベートを詮索されたくない人は、少なくないはずだ。
・もちろん結婚・出産圧力となってしまう問題もある。勤務している会社を通して、まだ結婚しないのか、今子どもは何人いるのか、などと調査であれ聞かれると、セクハラやパワハラと認識する人も少なくないだろう。 一方、会社の管理職としても、そうした従業員のプライバシー侵害に踏み込まざるを得ないリスクをこの調査は企業に強いることになりかねない。
・また、指標は本当に子育てのしやすさを表しているのだろうか。 2017年2月22日、渥美由喜氏を招いて行われた「富山県子宝モデル企業表彰式」では、男性経営者ばかりが満面の笑みをたたえひな壇で知事を囲んで表彰状を持って記念撮影していた。 会場を見回しても女性は後方に座るなど影が薄かった。さらに、「企業子宝率」が高いとして表彰された2社が事例発表していた。驚いたのは、2社とも男性従業員が約9割を占めていた。そのうちの1つである電力会社の役職者に占める女性比率は、わずか1.8%であった。
・渥美氏の講演や当日配布資料における総評は、渥美氏自身の労働・子育て経験が主で、子宝率データと子育てのしやすさに関する分析はなかった。 企業子宝率は、表彰式を見る限り、知事と企業の男性トップ同士の連携を強めたり、渥美氏のような男性コンサルの仕事の機会を増やしたりする手段になっていそうだ。
・企業子宝率について富山県議会では、共産党や社民党の議員がパワハラにもなりかねない調査は問題だ、算出方法も公開できず、後から検証もできない数値を使うことをやめたらどうかと追求した。 その影響か、2018年度表彰企業の代表には女性が若干名加わっていた。しかし富山県は、批判を受けても、石井隆一県知事の強い意向により2018年度もこの調査と表彰式を継続することになったという。
▽官製婚活に対する危機感
・この他に企業巻き込み策として特筆されるのは、福岡県が全国に先駆けて行った企業等に結婚応援宣言をする取り組みである。独身従業員に対してどんな結婚応援の取り組みをするかを、それぞれの社が宣言する。 例えば、従業員を対象とした出会いイベントを年何回開催する、社内で縁結び活動の担当者(婚活メンター)を決めるなどである。
・2016年12月に開催された第一回結婚応援宣言では、加藤勝信少子化担当大臣も出席した。 加藤大臣は「結婚や子供を産むことや価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりすることがあってはならない」と言いつつ、政府が示した「希望出生率1.8」という数値目標の実現に向けて頑張ろうと述べた。
・その会場では、福岡県内でも有名な明太子の会社や仏壇の会社が高らかに結婚宣言した。壇上には、それら企業トップの男性7名と知事、加藤大臣の男性ばかりがずらりと並んだ。 小川洋福岡県知事は、「個人の価値観に配慮の上」と述べつつも、従業員に結婚祝い金制度の創設などをすることを奨励した。大臣と知事の要望を前にした経営者が、従業員の価値観よりも会社ぐるみの結婚奨励に走るのもわからないわけではない。
・結局、官製婚活とは一体、なんだったのか。 最近の官製婚活は、自治体だけでは限界があると、企業や団体、大学などを巻き込んでくる。所属する企業や団体がこうした事業を始めると、担当者は不本意ながらセクハラで訴えられるリスクも抱え込むことになる。 ここで取り上げたのは、3つの県の事例にすぎないが、婚活で企業・団体・大学を巻き込む事例は全国各地で枚挙に暇がない。
・企業の独身従業員の中には結婚したくない人、会社とプライベートな生活とを切り離しておきたい人などさまざまな立場や価値観がある。 しかし国や自治体から補助金つきで婚活支援に協力することをこぞって求められている現在、企業は個々の従業員の価値観や人権をどれだけ尊重できるだろうか。
・婚活の名のもとに、セクハラ、パワハラがあちこちで起きているかもしれない現状に、危機感は募るばかりだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55627

次に、上記の続きである 5月22日付け現代ビジネス「巨額税金投入で国家プロジェクトと化した「婚活」への違和感 政官財のトライアングルで回っていた」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・安倍政権が推進した「官製婚活」とは何だったのか? この5年間、毎年3〜40億の少子化対策の交付金が確保され、自治体にとどまらず、企業や団体を巻き込んで行われてきた。 では、そもそも官製婚活はどのように進められてきたのか? 官製婚活について取材・研究してきた富山大学非常勤講師の斉藤正美氏がその構図・実態を明らかにする。
▽「政府お抱え」委員と婚活業界への利益誘導
・前回(「安倍政権が進めた『官製婚活』5年で起こったこと」)紹介したように「ニッポン一億総活躍プラン」が2016年6月に閣議決定され、婚活事業への支援を国・地方自治体の取り組みに加え、企業や団体、大学など民間の取り組みへと拡大して支援していく方針が決まった。 具体的な取り組み内容や手法等を検討するために、同年10月、内閣府「結婚の希望を叶える環境整備に受けた企業・団体等の取り組みに関する検討会(以下、検討会)」が設置された。
・この検討会がまとめた提言では、企業・団体・大学等の結婚に向けた取り組みを「国・地方自治体が連携して、適切に支援していくこと」が必要と指摘された。 ポイントは、地方自治体の取り組みに限っていた交付金を民間企業の取り組みへも回せるようにしたことだ。 具体的な内容には、一般に生涯の人生設計を指す「ライフプラン」という言葉が10回も頻出していた。 実はこれは、生殖機能も劣化するから「妊娠にも適齢期がある」ということを若い世代に教えるもので、暗に結婚、出産を急がせるために中高大学生向けにライフプラン講座を行うという提案だ。
・だが、提言をまとめた「検討会」の構成メンバー12名には偏りがあることが判明している。「検討会」が審議するのは、婚活事業への支援対象を企業や団体、大学などへと拡大することについてであったにもかかわらず、婚活支援事業者の母体企業リクルートの関係機関に在職する人が委員に就いていた。 他にも婚活業界と関係が深い研究者が「検討会」の座長や委員を務める一方、婚活業界ともつながりの深い知事も委員に選ばれていた。その一方で委員の中に婚活事業の対象となる労働者の代表は不在という有様だ。
・「検討会」は、婚活支援が民間に広がることで利益を得る側の関係者に偏っており、「検討会」及び提言の妥当性に疑問符がつく。
▽政官財のトライアングル
・この「検討会」が始まる前に、婚活支援業者の団体に、全国知事会ならびに自民党の議員が連携し、婚活支援の交付金を民間の婚活支援の取り組みへと拡大するよう政府に働きかける動きがあった。  2015年11月、尾崎正直高知県知事(全国知事会次世代育成支援対策PTリーダー)が知事会を代表して、婚活に関する少子化対策交付金の弾力的運用を求める緊急提言を出している。
・尾崎知事は、大蔵省(現・財務省)出身で知事3期目であるが、これまでも少子化対策の審議会委員には何度も選ばれている。 そして本「検討会」の委員にも選ばれ、民間業者への支援をバックアップする発言も行うなど、一貫して、婚活支援事業者らを側面支援する動きに関わっている人物だ。
・さらに、16年6月、大手民間婚活支援事業者の集まりである「一般社団法人結婚・婚活応援プロジェクト(以下、「婚活プロジェクト」)」が民間企業の知識を活用すべきだという要請書を、政府に提出していた。 その時、政府へと繋いだのが自民党内に設置されていた「婚活・街コン推進議員連盟(現在は、ブライダル・婚活議員連盟(以下、「婚活議連」))であった。先述の尾崎高知県知事は、「婚活プロジェクト」のパネルディスカッションにも登壇している。
・なお、「婚活議連」の設立時の会長であった小池百合子自民党衆議院議員(当時)は、ゆるキャラを婚活議連の公認キャラクターに認定するなどして婚活業界の盛り上げに力を尽くしてきた人物である。婚活議連は、「就活の次は婚活が当たり前」にしようと、婚活業界をバックアップしている。
・「婚活プロジェクト」が「婚活議連」と連携して提出した要請書の内容は、自治体の婚活では成果が上がらないとし、民間の蓄積された知識・手法を活用しやすくするために「民間婚活企業・団体への補助を可能とする予算措置や税制優遇措置の実現」を要請するものだ。 要は、交付金が配布されている自治体の取り組みでは成果が上がらないから、蓄積がある民間の結婚支援事業者にも交付金を回すよう求めたのである。
・民間事業者への支援を検討する「検討会」の委員に、リクルートの関係機関に所属する委員をはじめとして婚活業界とつながりのある研究者、知事など、婚活支援事業者の利害関係者が多数選任されていた。 またその背後には、婚活業界と婚活議連、全国知事会という政官財のトライアングルがあり、連携して政府や世論への働きかけを強めていたのである。これでは、「検討会」とその提言の適格性に疑念を抱かざるを得ない。
・そもそも内閣府の少子化対策関連の審議会には、様々な審議会で委員を歴任する「政府お抱え」のような人物が存在する。 ダイバーシティ・コンサルタントの渥美由喜氏は、多数の審議会委員を務め、全国の自治体等を婚活に関する講演やセミナーで飛び回り、婚活推進に貢献している人物である。 前回取り上げた「企業子宝率」は、渥美氏自身が考案したものだが、全国の自治体で交付金により推進されている。
・婚活支援のしくみでより問題なのは、「お抱え」委員たちは、事業の盛り上げ役をするだけではなく、事業の検証役も任せられていることだ。 少子化対策についてどのような事業をいかに進めていくかを審議する委員会の委員である渥美氏らが、事業を審査する側の外部有識者委員にも選任されている。さらに渥美氏は、内閣府の平成28年度「地域少子化対策重点推進交付金」の効果を検証する担当の企画・分析委員長に選任され、大部の報告書をまとめている。
・調査は詳細な調査票に基づいて行われているものの、少子化対策事業の推進に関わる委員が事業の成果・検証サイドの委員も務めるというのでは、税金を使う事業の公平性が疑われ、納税者の納得は得られるのだろうか。
▽婚活業界による自治体婚活の受注事例
・しかしながら、こうした交付金を受託する側は、すでに準備が整っている。 2018年現在、IBJ(日本結婚相談所連盟、東証一部上場)やパートナー・エージェント、ツヴァイ(イオン・グループ)、ノッツエなど多くの大手・中堅婚活業者は、婚活パーティや婚活セミナーをはじめとする自治体の婚活支援事業を受注している。
・さらに婚活支援の事業者らは、各社が「あなたの街の婚活支援を応援します」(IBJ)、「地方自治体の皆さまと共に、地域に根ざした婚活を」(パートナー・エージェント)などと地方自治体の婚活支援を受託しようとして準備万端の構えを見せている。 受注できるレパートリーも、自治体イベントや婚活セミナーの受託、ライフデザイン(プラン)講座の受託、移住促進プログラム(体験促進ツアー)から、結婚相談、マッチングシステムづくり、それに「プロのノウハウとシステムを活用した事業検証・改善提案」まで至れりつくせりである。
・公務員が素人ながらに婚活を推進し、単独での事業運営が難しい自治体であれば、交付金が使えるなら飛びつきたくなるだろう。 そうなると、自治体婚活とはますます名ばかりで、実際には、民間の婚活業者が運営している自治体の婚活事業が増えそうだ。
・尾崎委員が知事を務める高知県は、2007年から出会いの場を提供するなど、婚活に熱心な取り組みを続けてきた。現在、「高知家の出会い・結婚・子育て応援コーナー」を設置し、結婚に対する総合的支援を行っている。 先述の交付金の効果・検証報告書でも高知県の事業は「一定の効果が見られた」と評価されている。
・その中で、1対1の出会いをサポートするマッチングシステムの「高知で恋しよ!!」事業には、すでに大手婚活支援事業者のIBJが14年から11回も研修に入っている。 さらに本年3月2日には、石坂茂社長自らが研修に乗り込んでいる。IBJは、「婚活支援でお困りの地方自治体の皆様を、IBJは積極的にサポート」すると述べ、「オリジナル結婚支援ノウハウ」を伝授したと言う。 しかし、高知県のマッチング事業の年間の成婚数は、わずか4組(16年1月〜17年2月)と、民間婚活事業者の支援を受けても状況が劇的に変わるわけではないようだ。
・しかしながら、民間の婚活支援業者への交付金による支援が正式に決まった以上、自治体との関係づくりも終え、自治体婚活受注に備えて準備万端の婚活支援企業は、今後ライフプラン教育など予算のつきそうな事業にますます参入していく流れが加速しそうである。
▽リクルートが大学のライフプラン教育に進出
・次に、「検討会」で提案されたライフプラン教育が、実際どのように進められているかを事例でみてみよう。ライフプラン講座は、婚活関連企業が受注に備えて準備しているプログラムの一つでもある。 なお、「ライフプラン」とは、従来はキャリア教育などとして行われてきたが、安倍政権の婚活支援が始まってからは、中高大学生に「卵子の老化」や「妊娠適例期」など、20代の結婚を増やすための知識を啓蒙することが中心となっている。
・結婚情報誌『ゼクシィ』を発行し、「ゼクシィ縁結び」というマッチングサービスを行っているリクルート系列のリクルートブライダル総研の落合歩氏は2015年に岐阜大学、岐阜女子大学など岐阜県内の3大学でライフプランの授業を行っている。 その授業とは、「妄想婚姻届で考えるライフデザインセミナー」というもので、若い世代に対して、結婚や妊娠、出産、子育てなどの知識を提供しつつ生活設計を考えてもらうものという。
・なお、岐阜の5大学で行われた講座では『ゼクシィ』の付録を使ったというが、婚活関連業界が大学に講師を派遣し、自らの婚活業界になじみをもってもらうための布石づくりをしているといえよう。  実は、リクルート系列の民間結婚支援事業のゼクシィは、以前から全国各地の自治体と連携して「まちキュン・ご当地婚姻届」というご当地オリジナルのデザインによる婚姻届サービスを実施している。戸籍は国家が国民を管理するツールだが、それにファッション性を加え商品化するという突拍子もない取り組みである。
・しかもそれを大学の講座で活用するという。戸籍の差別性を考えると問題があるのではないか。おそらくリクルートが「ご当地婚姻届」の開発を行い、地方自治体に協力依頼をしていくうちに全国の自治体とつてができたのだろう。 結果、「未来のマーケット発展・創造に繋がる各種活動」を主な業務としているリクルート総研が、岐阜県からの受託を得て、講座の講師を請け負った。
・自治体の信用を得たという意味でも、財政負担なしで学生に広報できるという意味でも、「未来のマーケット発展・創造」を狙うリクルート側にとって願ったり叶ったりであろう。 こうしたライフプラン講座は、滋賀県、奈良県、島根県など多くの自治体で大学生や婚活サポーター向けに行われるなど広がりを見せている。
・大学が自治体と協力して行う授業が、ブライダル企業の営利目的の活動になっているのは、税の使われ方として納得できるものだろうか。 さらに言うなら、正規の授業ではないにしろ、戸籍を無批判にビジネスとして活用する講座が大学で行われることも問題を孕んでいよう。
▽「東京オリンピックを誰と一緒に見ますか」
・最後に、他の自治体とは様相を異にする東京都の事例を挙げたい。 都は1年前の3月に初の結婚応援イベント「TOKYO縁結び2017」を開催し、小池知事は「東京オリンピックを誰と一緒に見ますか」とオリンピックと婚活をひっかけたフレーズで婚活イベントに登場し話題を呼んだ。
・筆者はこのイベントの直後、都の担当者に取材を申し込んだが、当時は何も動いていないと語っていた。 しかし、本年2月、東京都は、「オリンピックとパラリンピック、あなたは誰と観ますか?」とオリンピックを目標に結婚をと言わんばかりの動画を3,000万円の予算で制作し、都内の地下鉄や映画館などで放映したことが報道され、かっこ悪い、予算が高すぎるなどとネットで炎上した。
・その直後に担当者に取材した際には、18年度も市町村やNPO団体の結婚関連イベントを掲載するポータルサイト開設、ならびに結婚後の新生活に関する情報を知らせるハンドブックの作成など、結婚に関する普及啓発事業として約5,000万円を計上していると答えていた。
・だが、3月に開かれた都議会で自民党議員が、なぜ東京都に結婚しろといわれなければいけないのかといった抗議の声が寄せられている、動画は税金を使った思いつきだ、と小池知事にただした。 他の都道府県では、自民党の議員が婚活事業を導入するよう提案することが多いが、東京都はそれとは一見異なる状況に見える。
・答弁で小池都知事は、自身が婚活街コン議連の会長を長年務めてきたことを例にあげ、婚活イベントは新たなビジネスモデルが共有できる場として賑わっていた、と反論し今後も結婚を後押しする政策を行うことを表明した。 だがこうした小池知事の答弁は、一部の事業者だけを支援するものだなどという反発も出るなど東京都の婚活事業については、議会でも議論を引き起こしている。小池都知事が婚活業界と繋がりが強いゆえに、東京都の今後の行方が注目される。
・官製婚活が国の政策として進められている背景には、全国知事会、自民党の婚活議連、それに婚活業界という政官財のトライアングルの活動が大きく影響していた。 そして最近では、リクルート系列の企業が大学でのライフプラン教育に進出するなど、婚活事業者が自治体の事業を受託し、婚活関連サービス市場が著しく拡大している。お金の動きからだけみると、婚活ビジネス花盛りで万々歳である。
・しかし、「結婚、結婚」と煽るような気運を育むことはセクハラをも生じさせる恐れがある。こうした弊害のある婚活支援が税金でまかなわれ、婚活支援企業に補助金として流れていく。 しかも、検証のしくみが十分に機能していないという無責任状況にある。官製婚活に税金が投入されてから5年を経た現在、官製婚活について、今一度改めて見直す時期ではないだろうか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55647

第一の記事で、『婚活もセクハラの問題をはらんでいる』、というのは鋭い指摘だ。ただ、細かく言うと、マリッジハラスメント(マリハラ)、シングルハラスメントと呼ばれるものだ。 『婚活についてはこれまで自治体主導で取り組まれてきたが、2016年6月「ニッポン一億総活躍プラン」の閣議決定により、企業・団体・大学等など地域全体が結婚応援をしていかなければならないとされ、自治体と地域企業や大学との連携を求める動きが加速している』、というのは初めて知った。 『企業が燃えて宣言をしているのであれば、結婚したくない人は声を掛けられないように目立たないようにしてしのぐしかない。 しかし、中間管理職が結婚応援の盛り立て役を命じられでもしたら、結婚したくない人の人権侵害にならないよう配慮をしつつ会社の命に答えるのは、至難の業だ。セクハラ、パワハラとして訴えられるリスクもある』、というのはその通りだ。 『「企業子宝率」・・・調査段階で、企業に従業員の個人情報を調べさせ個人のプライバシーに介入させるリスクがあること、同時に、社員にとっては知られたくない個人情報を会社の上司から聞かれて答えざるを得ないか、断れば、個人的な事情を勘ぐられるなどの不利益を生む可能性がある』、このような問題含みの指標が大手を振って登場するとは、所管は厚労省だろうが、同省はつい最近も裁量労働制に関する調査でみっともない問題を起こしている。安倍政権を忖度して、正常に慎重判断すべきことも、「イケイケ」で荒っぽい行政になってしまったようだ。 『企業巻き込み策として特筆されるのは、福岡県が全国に先駆けて行った企業等に結婚応援宣言をする取り組みである。独身従業員に対してどんな結婚応援の取り組みをするかを、それぞれの社が宣言する。例えば、従業員を対象とした出会いイベントを年何回開催する、社内で縁結び活動の担当者(婚活メンター)を決めるなどである』、企業も補助金を受け取れるとはいえ、こんなことをよくぞ恥ずかしげもなくするものだ、とあきれてものも言えない。
第二の記事では、『政官財のトライアングルで回っていた』、『「政府お抱え」委員と婚活業界への利益誘導』、『婚活支援のしくみでより問題なのは、「お抱え」委員たちは、事業の盛り上げ役をするだけではなく、事業の検証役も任せられていることだ』、『リクルートが大学のライフプラン教育に進出』、など「官製婚活」の闇が明らかにされて、厚労省もその歯車の1つに過ぎず、安倍自民党政権を挙げての壮大な仕組みだったことが理解できた。婚活に「業界」までができていたとは・・・。 『高知県のマッチング事業の年間の成婚数は、わずか4組(16年1月〜17年2月)と、民間婚活事業者の支援を受けても状況が劇的に変わるわけではないようだ』、財政負担はともかく、年間の成婚数が4組では成果はなきに等しいようだ。 『他の都道府県では、自民党の議員が婚活事業を導入するよう提案することが多いが、東京都はそれとは一見異なる状況に見える』、というのは東京都知事選挙での騒動を考えれば、何ら特筆すべきこととは思えない。
いずれにしろ、婚活にここまでダーティな仕組みができていたとは、改めて怒りを覚えた。
タグ:中間管理職が結婚応援の盛り立て役を命じられでもしたら、結婚したくない人の人権侵害にならないよう配慮をしつつ会社の命に答えるのは、至難の業だ。セクハラ、パワハラとして訴えられるリスクもある 調査段階で、企業に従業員の個人情報を調べさせ個人のプライバシーに介入させるリスクがあること、同時に、社員にとっては知られたくない個人情報を会社の上司から聞かれて答えざるを得ないか、断れば、個人的な事情を勘ぐられるなどの不利益を生む可能性 一般社団法人結婚・婚活応援プロジェクト 弊害のある婚活支援が税金でまかなわれ、婚活支援企業に補助金として流れていく 「「まだ結婚しないの?」安倍政権が進めた「官製婚活」5年で起こったこと 巻き込まれる企業や団体の実態」 より問題なのは、「お抱え」委員たちは、事業の盛り上げ役をするだけではなく、事業の検証役も任せられていることだ 「ニッポン一億総活躍プラン」の閣議決定 「東京オリンピックを誰と一緒に見ますか」 現代ビジネス 20代の結婚や出産を増やす 企業子宝率 中高大学生に向けて「卵子の老化」や結婚適齢期の知識を教えるライフプラン教育 検証のしくみが十分に機能していないという無責任状況 お見合い型マッチング 「めいわくありがた縁結び」 ハラスメント 事業数は353 企業巻き込み策として特筆されるのは、福岡県が全国に先駆けて行った企業等に結婚応援宣言をする取り組みである。独身従業員に対してどんな結婚応援の取り組みをするかを、それぞれの社が宣言する 婚活パーティ・出会いイベント、女子力アップ、自己PR術などの婚活セミナー 小池知事 最近の官製婚活は、自治体だけでは限界があると、企業や団体、大学などを巻き込んでくる。所属する企業や団体がこうした事業を始めると、担当者は不本意ながらセクハラで訴えられるリスクも抱え込むことになる 斉藤 正美 従業員(男女問わず)が企業在職中に持つことが見込まれる子どもの数 官製婚活とセクハラ 「政府お抱え」委員と婚活業界への利益誘導 「巨額税金投入で国家プロジェクトと化した「婚活」への違和感 政官財のトライアングルで回っていた」 (その6)(「まだ結婚しないの?」安倍政権が進めた「官製婚活」5年で起こったこと、巨額税金投入で国家プロジェクトと化した「婚活」への違和感) 企業・団体・大学等など地域全体が結婚応援をしていかなければならないとされ、自治体と地域企業や大学との連携を求める動きが加速 リクルートが大学のライフプラン教育に進出 委員の中に婚活事業の対象となる労働者の代表は不在 官製婚活には、2013年より18年度まで毎年3〜40億の少子化対策の交付金が確保 政官財のトライアングル 婚活・街コン推進議員連盟 福井県
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