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ハラスメント(その7)(ハラスメント指摘のやりすぎで会社は壊れる このままいくと世の中が窮屈になってしまう、セクハラ・パワハラの心理を徹底分析〜サイコパスの「真実」を明かす 身近に潜む「マイルド・サイコパス」) [社会]

昨日に続いて、ハラスメント(その7)(ハラスメント指摘のやりすぎで会社は壊れる このままいくと世の中が窮屈になってしまう、セクハラ・パワハラの心理を徹底分析?サイコパスの「真実」を明かす 身近に潜む「マイルド・サイコパス」)を取上げよう。いずれも、参考になるところ大である。

先ずは、5月11日付け東洋経済オンラインが掲載した草食投資隊(「長期投資を根づかせたい」という投信業界のグループ)の 渋澤 健氏、中野晴啓氏、藤野英人氏らによる座談「ハラスメント指摘のやりすぎで会社は壊れる このままいくと世の中が窮屈になってしまう」を紹介しよう(▽は小見出し、+は発言内の段落)。
・このところ、メディアなどを通じて毎日と言っていいほど「ハラスメント」(嫌がらせ)の言葉を耳にします。セクハラ、パワハラだけでなく、ハラスメントにはなんと30以上の種類があるとの話もあります。しかし調べてみると、なかには「これって、日本だけのハラスメント?」と思われるようなものも……。草食投資隊の3人は、ハラスメントについてどう考えているのでしょうか。
▽ビジネス関係だけでもハラスメントの種類が多すぎる!
・渋澤:ハラスメントって、いろいろな種類があるってご存じでした?
・中野:セクハラ、モラハラ、パワハラ、ぐらい?
・藤野:たぶん、もっとたくさんあるのですよね。
・渋澤:30以上あるそうですよ。たとえば「ブラハラ」ってご存じですか。
・藤野:それはちょっと……。のっけから人を試そうという話ですか?「男性目線」で答えを言うと、それ自体がセクハラになるというやつでしょうか?
・中野:私も同じようなことを考えていたのですが。
・渋澤:ブラッドタイプ・ハラスメント。
・藤野:あ、違った(笑)。
・中野:それ、何ですか。
・渋澤:よくあるじゃないですか。「ああ、確かにキミはAB型だからちょっと変わっているよね」って、つい口にしてしまうことが。これで嫌な思いをしている人が結構いるって話です。
・中野:それ、ヤバイですよ。飲んでいるときとか、つい言ってしまいがちです。
・藤野:でも、スマホで調べてみたのですが、本当にハラスメントって多いのですね。ビジネスパーソンがかかわりそうなものだけを挙げると、アルハラ、テクハラ、カラハラ、スモハラ、テクハラ、エイハラ、スメハラ、エアハラ、ソーハラ、パーハラ、マタハラ、カスハラ……。う~む。
・中野:なんでもハラスメントにするのはゆきすぎだと思いますよ。飲酒の無理強いはハラスメントですが、そのうち「飲みに行かない?」って誘うこと自体がハラスメントだと言われかねない。そうなったら、誰もコミュニケーションをしようと思わなくなるでしょう。
+確かに福田淳一前財務事務次官の行動はセクハラだったのかもしれませんが、あれを機に、なんでもハラスメントだなどという拡大解釈が横行したら、経済は確実に停滞します。些細な言動がハラスメントで訴えられるような時代になったら、人々の行動は萎縮しますよ。グローバルでも、こんな流れが一段と深刻になっているのでしょうか。
・藤野:「♯Me Too」は世界的に話題になっていますが。
・中野:渋澤さん、実際のところアメリカはどうなんですか。
▽日本は「ネンハラ」がひどい!?
・渋澤:なんでもかんでもハラスメントに結びつけるようなことは、少なくとも私自身は、見たことがないし、経験したこともありません。セクハラ(sexual harassment)やパワハラ(power harassment)という言葉として存在して社会で使われていますが、今、藤野さんがスマホで調べてくれたように、ハラスメントの種類が30以上もあるというのは、メディアなどが作った言葉遊びのようなものも中にはあるでしょう。ちなみにアメリカの場合、ハラスメントよりもディスクリミネーションのほうが、社会的に根深い問題であると認識されていると思います。
・中野:嫌がらせではなく差別ですね。アメリカは多民族・多宗教国家だから、差別は非常に深刻な社会問題ですよね。もちろんハラスメントはいけないことですが、このように、ハラスメントが言葉遊びのように使われると、本質を見誤る恐れがあります。
・渋澤:私が(幼少期から大学までアメリカで過ごし)日本で就職したとき、一番理解できなかったのが、上下関係でした。実力で上に立つならわかるのですが、生まれた年齢が1年早いというだけで先輩風を吹かせる人っているじゃないですか。あれ、まったく意味不明。これもハラスメントみたいなものじゃないですか。年功序列ハラスメント。「ネンハラ」(笑)。
・中野:年功序列を重んじる日本企業の縦社会に通じるものがありますね。
・藤野:私たちがまだ社会人になったばかりの頃は、そういうものなんだと受け容れてきたところはあります。
・中野:でも、藤野さんが昔勤めていたゴールドマン・サックスのような外資系金融だと、そんなものはないように思えますが。
・藤野:特にゴールドマン・サックスが株式を公開する前の、パートナーと呼ばれた人たちは雲上人というか、神のような存在でしたからね。縦社会どころの騒ぎではなくて、神と下々(笑)。もちろん、外資系でもパワハラのようなことはありますよ。ただ、パワハラを受けた側は即、自分からその組織を離れて、次の新天地を目指すのが普通です。
・中野:結局、さまざまなハラスメントは、年功序列と終身雇用という日本的な雇用慣習によってかなりの部分が醸成されたような気がしてならないのですよ。実力とは関係なく、入社年次で上下関係が構築される組織に、新卒で入社して定年まで働き続けるものという意識があるから、上からどれだけ無理難題が飛んできても、下の人たちは必死に耐えるしかない、というパワハラ関係に陥りやすいのではないでしょうか。
+「忖度する」なんて、パワハラの典型例です。若い頃、上司から「そんなこと、いちいち言わせるな。察しろよ」と怒られましたが、まったく教えてもらっていないのに、わかるはずないでしょう。
▽日本人はキレやすい?
・渋澤:アメリカの人種差別は、そもそもパワハラの一種だと思うのですが、日本の場合、アメリカほどの多民族国家ではないから、ハラスメントといえば、人間の上下関係に根差したものになりがちなのかもしれません。
・藤野:今の中野さんの話でふと思い出したことがあります。先日、上海に行く用事があって、何となく中国人と日本人の違いはどこにあるのかを考えていたのですが、ひとつ気づいたことがありました。それは、怒りの沸点が違うことです。
+たとえば、中国人って、ディスカッションしているときは大声で怒鳴り合っているように聞こえるのですが、彼らは必ずしもケンカしているわけではないのです。ひととおり言い合った後は、何事もなかったかのようにケロッとしています。 これに対して日本人は、ちょっとしたことで切れる。怒りの沸点が非常に低いのです。当然のことですが、切れた側も、切れられた側も、嫌な気持ちになるから、最初から何も言わずに黙っている。それが日本人の特徴です。だから忖度などという、「奇跡のコミュニケーション術」が大手を振ってまかり通っているのではないでしょうか。
・中野:日本企業にいる場合、自己主張しすぎるとレッテルを貼られるのですよ。「あいつは反体制派だ」とか言われてしまう。だから、私に言わせれば、日本企業で出世してきた人は、ひたすらパワハラに耐えてきた人ばかりです。彼らは、右から左に受け流す能力に長けているわけですが、そんな能力は、これからは何の役にも立たないと思います。
+正直、日本の組織で出世した人の大半は、劣化しているとさえ思います。で、これがまた癖の悪いところで、自分がパワハラを受けた人は、自分の部下に対して同じことをしようとします。
▽「減点主義」の日本、「加点主義」のアメリカ
・藤野:仕返し文化ですね。私はかつて外資系の運用会社にも勤務していた時期があったのですが、そこでは「360度評価」といって、上司、同僚、部下が、それぞれ自分をどう評価しているかで、昇進、給与が決められました。そのとき、アメリカ人と日本人の評点に差があることに気づいたのです。たとえばアメリカ人が50点と評価した同一人物への、日本人の評点は40点というように、低くなる傾向がつねに見られたのです。その原因は、アメリカ人が加点主義であり、日本人が減点主義だからだと思うのです。冒頭の話に戻りますが、そもそもハラスメントが30種類以上もあると自体、日本人がいかに減点主義であるかを物語っています。
・中野:しかしですよ、なぜ「あの子、可愛いね」というだけでセクハラになるのでしょうかね。時と場合にもよるでしょう。
・渋澤:それはダメでしょう。でもごく普通のビジネスシーンで「今日の服、似合っているね」くらいは大丈夫でしょう?
・藤野:渋澤さん、それはかなり危ないですよ。
・渋澤:えっ、本当?
・藤野:はい。基本的にアウトです。
・渋澤:「あ、髪切ったんだ」っていうのは?
・藤野:それも残念ながらダメです。セクハラに関していえば、相手に性的関心を持っていると受け取られことは、すべてアウトだと思ったほうが。
・中野:ほらね、わからないではないですが、どんどん拡大解釈されているように思えませんか。女性に「髪切ったんだ」って言うのがセクハラだとしたら、男性が男性に同じことを言ったとき、セクハラに問えるのかどうか。
・藤野:まあ、確かに男性が男性に「髪切ったんだね」って言ったとしても、その場合はセクハラに問われるリスクは低いのかもしれません。
・中野:おかしいでしょ。もし女性に対して男性が普通に「髪切ったんだね」と言ったとしても、そのどこに性的関心があるのでしょうか。単に髪を切っているからそう言っただけですよ。それって、自意識過剰なのでは。
▽他人に嫌な思いをさせていないかどうかを考えるべき
・藤野:でも、常識は時代の流れによって変わっていくものだから、セクハラの定義も、徐々に変わっていくのかもしれません。
・中野:それはわかりますよ。福田前事務次官の発言は明らかにセクハラですし、それは批判されるべきことですが、ハラスメント全般について言えば、30数種類もあるというのは明らかにゆきすぎです。それは組織の行動を制限する方向に作用するものであり、経済的には何のメリットにもならないと思います。
+しかも、セクハラって、男性が女性に行うものというイメージが強いのですが、逆だってありますよね。香水の匂いがきつい女性が「あのおじさん、加齢臭がきつくない?」なんて発言は、立派なセクハラです。「おばさん」という言い方をセクハラだと批判するのなら、「おじさん」という呼称だって、立派なセクハラでしょう。でも、そんなことを言っていたらキリがないし、事態はエスカレートする一方です。何というか、世の中全体的に寛容性が失われているような気がします。
・渋澤:ハラスメントって「嫌がらせ」の意味でしょ。昔、親に言われましたよね。「自分がされて嫌だと思うことを人にしてはいけない」って。ハラスメントの種類が30以上もあるなどと言うと、ハラスメントは自由な行動を制限するものだと考えてしまいがちですが、種類には大した意味がなくて、自分の発言、行動が他人に嫌な思いをさせていないかどうかを、きちんと考えるべきなのでしょうね。
https://toyokeizai.net/articles/-/219728

次に、筑波大学教授(臨床心理学、犯罪心理学)の原田 隆之氏が5月6日付け現代ビジネスに寄稿した「セクハラ・パワハラの心理を徹底分析?サイコパスの「真実」を明かす 身近に潜む「マイルド・サイコパス」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽ニュースを賑わすハラスメント事件
・ここのところ、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント事件が立て続けに起き、世間を賑わせている。 今年になってからでも、大相撲行司による若手行司へのセクハラ、レスリング協会強化本部長による伊調馨選手に対するパワハラ、財務省次官による記者へのセクハラなど、次々と大きな社会問題となっている。
・私もこれらの問題について、繰り返し寄稿してきた。
 +大相撲行司セクハラ事件、式守伊之助の言い訳に潜む「2つの問題点」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54090 
 +「伊調馨さんは選手なんですか?」衝撃会見で露呈したパワハラの構造 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54900 
 +「セクハラ調査お願い文書」からほとばしる財務省の強権体質 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55324 
・海外でも、大韓航空の「水かけ姫」こと、チョ・ヒョンミン氏が、広告会社の社員に激怒してコップの水をかけたことが刑事事件に発展して、大きな問題になっている。 彼女は、「ナッツ・リターン事件」で有罪判決を受けたチョ・ヒョンア氏の妹だ。いずれも創業者一族の令嬢である。
・また、スウェーデンでは、ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーが、セクハラ・スキャンダルに揺れている。 アカデミーメンバーの夫が、複数の女性に対してセクハラや性的暴行を行ったと告発され、さらに同人による情報漏洩疑惑なども発覚した。その結果、今年の文学賞の発表が見送られるという前代未聞の事態に陥っている。
・ハラスメントとは、端的に言うと「嫌がらせ行為」である。その種類にはさまざまなものがあるが、あるサイトによると30種類を超えるという。 代表的なものには、上に挙げたもののほか、アルコールを無理強いする「アルコールハラスメント」、大学などで教員が指導学生に行う「アカデミックハラスメント」、相手をことさらに無視したり嫌味を言ったりする「モラルハラスメント」、妊娠中・出産後の女性に対する「マタニティハラスメント」などがある。
・これらの行為が、最近になって急に増えたわけではないだろう。 社会の変化や意識の高まりにつれて、それまで日常的に「当たり前」として行われていたことに、被害者が声を上げるようになってきたという理解が正しいと思う。
・従前は、被害者のほうも、それらの行為を受け入れざるを得ない状況にあったり、自分のほうが悪いと思っていたりした場合もある。 しかし、社会の変化、人々の意識の高揚に伴って、当たり前ではないこと、自分に非があるわけではないこと、異議を申し立ててよいことなどに気づき、声を上げるようになったのである。
・いつの世にも社会の変化に取り残され、古い制度や意識に雁字搦めになったままの者はいて、相も変わらず「当たり前」だと思って態度や言動を変えないものだから、ハラスメントはなくならない。 さらに、ネット社会になって、見ず知らずの第三者によるハラスメントも増えてきた。これは従来にないタイプのハラスメントである。 内容としては、匿名をいいことにSNSなどで誰かを中傷したり罵倒したりする「ネットハラスメント」がある。
・もっと卑劣なケースは、事件やハラスメントの被害者に対し、被害者には非がないのに、その非をあげつらったりするようなハラスメントであり、「セカンドハラスメント」などと呼ばれることもある。 最近では、セクシャルハラスメントや性犯罪の被害者が声を上げる「#MeToo」運動に対して、被害者をことさらに誹謗中傷するような動きが広がりをみせている。
▽ハラスメント防止対策に効果はあるか
・こうしたハラスメントに対して、社会のひずみの是正、意識改革が声高に唱えられるが、それで加害者は本当に考えを改めるのだろうか。 確かに意識改革や啓発運動は大事である。それによって世の中の大多数の意識が変わってきたからだ。 加害者の多くは「無意識的に」ハラスメント行為を行っているので、意識改革や教育はそれなりに意味のあることのように思える。
・しかし、依然として古い意識に凝り固まっている人々は、他人の意見を聞いても頑なになるばかりで、「そのつもりはなかった」などと言い逃れをして、ほとぼりも冷めぬ間に相も変わらず、同じ言動を繰り返してしまうのではないかという危惧もある。
・たとえば、前財務次官は、いまだに非を認めておらず謝罪もしていない。「全体を聞いてもらえばわかる」などと言い訳をしていたが、全体を聞こうが部分だろうが、あの発言が彼自身のものであれば、誰がどう聞いてもセクハラである。 日本の官庁のトップのトップにまで上り詰めた人が、なぜこんな簡単なことがわからないのだろうか。
・ほかにも、伊調選手へのパワハラ事件について、「なぜこれがパワハラかわからない」などと放言した至学館大学の学長についても然りである。ハラスメントは知性とは関係のない別の要因がからんでいるのだろうか。 もしかすると、他人の権利や感情について、それに反応するスイッチが切れている人がいて、このような人々に対しては、いかなる異議申し立てや批判の言葉も、そして啓発活動や人権教育も響かないのかもしれない。
・最近、欧米ではハラスメントを行う人々のパーソナリティに着目した研究が大きな関心を呼んでいる。 そうした研究のなかで、他人の人権を顧みることができず、その気持ちに共感ができない一群の人々を、「マイルド・サイコパス」と呼んでいる。
▽「マイルド・サイコパス」とは
・サイコパスと聞くと、誰もが思い浮かべるのは、連続殺人鬼や猟奇的犯罪者などの姿かもしれないが、研究によれば、サイコパスはどの社会にも人口の1%から数%は存在する。そして、その圧倒的大多数は犯罪行為までは行わない。 仮に日本に1%のサイコパスがいるとして、その数は100万人を超えるのだから、これは当然と言えば当然である。
・ただ、犯罪までは行わないにしても、彼らは日常的に他人の人権を踏みにじったり、嫌がらせ行為をしたり、嘘をついたりして、世の中にじんわりと迷惑をかけ続けている。 つまり、彼らの多くが加担するのは、凶悪犯罪のような突発的な悪事ではなく、日常に溶け込む慢性的な悪事である。
・サイコパスとはスペクトラム(連続体)のようなもので、その極端な一端に猟奇的犯罪者のような人々がいるが、別の端には犯罪的ではないが、慢性的に社会を蝕む「マイルド・サイコパス」がいる。
・サイコパス研究の第一人者であるカナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアは、サイコパスの特徴を4つの因子に分けて記述している。 それを簡単に説明すると、以下のようになる。
  第1因子(対人因子):表面的魅力、虚言癖、尊大な自己意識、他者操作性
  第2因子(感情因子):不安や良心の欠如、浅薄な感情、共感性欠如、冷淡性、残虐性
  第3因子(生活様式因子):衝動性、刺激希求性、無責任、長期的目標の欠如
  第4因子(反社会性因子):幼少期の問題行動、少年非行、多種多様な犯罪行動
・これらの特徴の掛け合わせによって、さまざまなサイコパス像が浮かび上がる。 ヘアは、サイコパス傾向を測定するために、「サイコパス・チェックリスト」を開発している。 犯罪的なサイコパスは、そのチェックリストにおいて、どの因子も最高得点を取るような人々である。 一方、マイルド・サイコパスは、これらの特徴は満たしていても、ある程度「マイルド」に抑えられている。
・身の周りに連続殺人鬼はいなくても、人当たりがよく魅力的で、行動力はあるが、感情が薄っぺらく、無責任で平気で嘘をついたり、人の気持ちを思いやることのできない人物については、多くの人に心当たりがあるのではないだろうか。
▽職場のサイコパス
・企業や組織における「マイルド・サイコパス」の研究では、サイコパス上司のいる会社の場合、部下の離職率、うつ、モチベーションの低下が際立っていることが相次いで報告されている。 ハラスメントに限ってみれば、サイコパス上司がいない会社では、ハラスメント発生率が58%だったのに対し、サイコパス上司がいる会社では93%だった。つまり、サイコパス上司は、必ずといっていいほどハラスメント行為に及ぶのである3。
・イギリスの研究では、サイコパス上司のハラスメント行為による社会的損失は、年間35億ポンド(約5200億円)と見積もられている。 こうした研究を受けて、企業内で「マイルド・サイコパス」を早期に見つけ、彼らを責任ある地位に就かせないようにする試みも広がっている。
・ヘアらは、「ビジネス・スキャン」という企業版「サイコパス・チェックリスト」を開発し、これを採用する会社が増えている。 これまでリーダーシップに関しては、指導力、チームワーク、コミュニケーション能力、プレセン能力、対人能力など、そのプラスの側面について論じられることが多く、書店のビジネスコーナーに行けば、そのような書籍がたくさん並んでいる。 しかし、近年は、上述のようなリーダーシップの負の側面についても研究が進んできたというわけである。
・「マイルド・サイコパス」が企業内の重要な位置に就いてしまえば、ハラスメント行為にとどまらず、横領、情報漏洩などに手を染める恐れも大きいし、粉飾決算、談合、製品偽装、検査偽装などの企業犯罪に主導的に加担することもある。
・彼らは表面的には魅力的で、コミュニケーション能力に優れているうえ、不安がないので、思い切りがよく卓抜した行動力や実行力を見せることがあり、そのために誤ってリーダーに選ばれやすい。 事実、職場で指導的地位にいる者の4人に1人は、「マイルド・サイコパス」の基準に当てはまるという研究もある。
・企業のトップ、政治家、科学者、芸術家などにも、「マイルド・サイコパス」が多く、彼らはまた「成功したサイコパス」とも呼ばれている。 サイコパスはパーソナリティの問題であるが、知能や他の能力が優れていれば、社会的な成功を収めることも可能だからである。
・先ごろ行われた南北会談で、北の指導者に対する印象がガラリと変わったと口々に述べる人がいて、「ノーベル平和賞か」などと言われている始末である。 しかし、「表面的な魅力」「優れたコミュニケーション能力」にまんまと騙されているような気がしないわけではない。
▽「マイルド・サイコパス」にどう対処するか
・一連のハラスメント事案を見るにつけ、一旦事件が明るみに出ると、企業や組織に対するダメージが著しく大きくなる。 冒頭でも述べたように、社内研修や教育だけで、こうした人々に対処することは難しい。 そもそも人の権利を侵害し、無責任に行動し、共感性や罪悪感などが備わっていないのが彼らの特徴であるから、いくら知識を与えても、効果がないのである。
・啓発によって意識を高める効果があるのは一般的な人々だけであって、一番のリスクグループである「マイルド・サイコパス」には、まさに馬の耳に念仏に終わってしまう。 では、彼らにはどのように対処すればよいのか。 残念ながら、現時点で効果的な対処法はない。 サイコパスの原因の多くは、脳の機能的な障害であるとわかっており、それを治療する方法は、今のところない。 心理療法を行った場合、逆効果になったという研究すらある。
・近著『サイコパスの真実』では、これまで論じてきた「マイルド・サイコパス」のほか、犯罪的サイコパスについても分析し、その原因、対処、治療についても解説した。 サイコパスは、ホラー映画や犯罪小説のなかだけにいるのではなく、われわれの社会にも確実に存在して、さまざまな害を与え続けている。
・サイコパスの真実を知り、その対策を検討することは、繰り返されるハラスメント事案だけでなく、多くの社会的な害を防ぐためにも今後一層重要になってくるだろう。(論文等の出所の注は省略)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55555

第一の記事で、『ハラスメントの種類が30以上もあるというのは、メディアなどが作った言葉遊びのようなものも中にはあるでしょう』、については、「社会人の教科書:全35種類の○○ハラスメント一覧」が参考になる。
http://business-textbooks.com/harassment32/
『さまざまなハラスメントは、年功序列と終身雇用という日本的な雇用慣習によってかなりの部分が醸成されたような気がしてならないのですよ。実力とは関係なく、入社年次で上下関係が構築される組織に、新卒で入社して定年まで働き続けるものという意識があるから、上からどれだけ無理難題が飛んできても、下の人たちは必死に耐えるしかない、というパワハラ関係に陥りやすいのではないでしょうか』、(中国人に比べて)『日本人は、ちょっとしたことで切れる。怒りの沸点が非常に低いのです。当然のことですが、切れた側も、切れられた側も、嫌な気持ちになるから、最初から何も言わずに黙っている。それが日本人の特徴です。だから忖度などという、「奇跡のコミュニケーション術」が大手を振ってまかり通っているのではないでしょうか』、『日本の組織で出世した人の大半は、劣化しているとさえ思います。で、これがまた癖の悪いところで、自分がパワハラを受けた人は、自分の部下に対して同じことをしようとします』、『ハラスメントは自由な行動を制限するものだと考えてしまいがちですが、種類には大した意味がなくて、自分の発言、行動が他人に嫌な思いをさせていないかどうかを、きちんと考えるべきなのでしょうね』、などの指摘、特に最後の点は大いに参考になった。
第二の記事は、心理学者たしく理論的だが、これはこれで理解が深まり、参考になる。『ハラスメントとは、端的に言うと「嫌がらせ行為」である』、『これらの行為が、最近になって急に増えたわけではないだろう。 社会の変化や意識の高まりにつれて、それまで日常的に「当たり前」として行われていたことに、被害者が声を上げるようになってきたという理解が正しいと思う』、『欧米ではハラスメントを行う人々のパーソナリティに着目した研究が大きな関心を呼んでいる。そうした研究のなかで、他人の人権を顧みることができず、その気持ちに共感ができない一群の人々を、「マイルド・サイコパス」と呼んでいる』、『彼らの多くが加担するのは、凶悪犯罪のような突発的な悪事ではなく、日常に溶け込む慢性的な悪事である』、『カナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアは、サイコパスの特徴を4つの因子に分けて記述している』、『企業や組織における「マイルド・サイコパス」の研究では、サイコパス上司のいる会社の場合、部下の離職率、うつ、モチベーションの低下が際立っていることが相次いで報告されている 彼らは表面的には魅力的で、コミュニケーション能力に優れているうえ、不安がないので、思い切りがよく卓抜した行動力や実行力を見せることがあり、そのために誤ってリーダーに選ばれやすい。事実、職場で指導的地位にいる者の4人に1人は、「マイルド・サイコパス」の基準に当てはまるという研究もある』、などの指摘は、新鮮で大いに教えられた。特に、『思い切りがよく卓抜した行動力や実行力を見せることがあり、そのために誤ってリーダーに選ばれやすい』、というのは、昔の職場を思い出しても、役員のかなりが当てはまっていたようだ。 『啓発によって意識を高める効果があるのは一般的な人々だけであって、一番のリスクグループである「マイルド・サイコパス」には、まさに馬の耳に念仏に終わってしまう。では、彼らにはどのように対処すればよいのか。残念ながら、現時点で効果的な対処法はない。サイコパスの原因の多くは、脳の機能的な障害であるとわかっており、それを治療する方法は、今のところない』、というのはショッキングな指摘だが、そうしたことを前提に考えていく必要があろう。
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