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ネットビジネス(その4)(メルカリ上場を認めた東証の判断は本当に正しいか、メルカリ上場、スマホに特化したビジネスモデルの「光と影」、GDPRより怖い? EUが準備中の「クッキー法」 個人情報保護の規制が、ネット広告に波紋) [産業動向]

ネットビジネスについては、昨年9月17日に取上げた。今日は、(その4)(メルカリ上場を認めた東証の判断は本当に正しいか、メルカリ上場、スマホに特化したビジネスモデルの「光と影」、GDPRより怖い? EUが準備中の「クッキー法」 個人情報保護の規制が、ネット広告に波紋)である。

先ずは、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が5月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「メルカリ上場を認めた東証の判断は本当に正しいか」を取上げよう(▽は小見出し)。
▽上場を迎えるメルカリがこれまで懸念されてきたこと
・長い間「日本唯一のユニコーン企業」と呼ばれてきた「メルカリ」。同社が東証マザーズへ6月中旬に新規上場することを、東京証券取引所が承認した。ユニコーンとは、株式を公開しないままその市場価値が1000億円を超える企業で、アメリカのシリコンバレーや中国国内にはうようよ存在しているが、日本でそう呼ばれていたのはメルカリただ1社と長らく言われてきた。
・ユニコーン企業の上場であるがゆえに、その株式時価総額も巨大なものになる。現時点で、上場の想定仮条件の上限となる1株あたり2700円で算出すると、時価総額は最大で3730億円。現在東証マザーズの時価総額トップとなるミクシィの時価総額が3000億円弱だから、メルカリは株式を公開した段階で東証マザーズの1位銘柄になりそうだ。
・さて、そのメルカリだが、昨年あたりからずっと「いよいよ株式公開が実現しそうだ」と報道されながらも、結局実現できないという状態が続いていた。メルカリのビジネスモデルに問題があると指摘されたからだ。
・メルカリは、スマホを使って会員同士が要らないものを売ったり買ったりできるフリーマーケットアプリだ。部屋の中にある不用品をスマホで撮影して出品すると、すぐに買い手が見つかるという手軽さから人気となり、先行するヤフオクを凌ぐ人気アプリとなった。
・しかし、メルカリ自身に責任はないものの、スマホを使ったビジネスサービスの常として悪意を持つ利用者も登場し、そのことが問題視された。買い手がお金を支払ったのに商品が届かない、世間で物議を醸す商品が出品されるといった事例は初期に起きたが、その後メルカリ側が制度を整えて、そのような欠陥は改善された。
・一方で、なかなか撲滅が難しかったのが盗品の販売だ。以前、メルカリは登録時に身分証明が不要だったことから、盗品の出品が多いと言われていた。その結果、新聞を騒がすような事件が起きる。四国では、書店から大量の書籍を盗んで出品していた女性が逮捕された。高校の野球部から野球道具を盗んで、メルカリで販売する事件も話題となった。
・この点は、昨年の上場審査の段階でボトルネックになっていた。そしてメルカリは昨年10月に「違法・規約違反行為への対策強化のお知らせ」を発表して、初回出品時に住所、氏名、生年月日を登録させた上で、売上金を振り込む銀行口座と氏名が一致しないと送金されないように仕組みを改めた。裏側では捜査機関との連携も強化することを発表した。
▽上場前に「アッテ」も終了  法的リスクは払拭されたか
・メルカリの姉妹サービスとして登場した、「メルカリアッテ」も問題が多かった。これはスマホのGPS機能を利用して、近所に住んでいる人同士が色々な仕事や、近所だからこそできるような取引を行うというサービスだった。 たとえば「犬の子どもが生まれたのでお譲りします」「力仕事ができないので大型冷蔵庫を粗大ゴミとして出すのを手伝ってください」といったサービスを想定していたものだが、実際にやってみるとトラブルが指摘されるようになった。
・「若い女性が取引のつもりで会いに行ったら、怖い人に囲まれた」といった事件は多く報道された。「話相手になります」というサービスが少女売春に発展したり、バイトの応募かと思ったら詐欺グループにひっかかるという事態が起きたという報道もあった。一時「メルカリアッテは無法地帯ではないか」と言われるほどだった。
・このメルカリアッテも、今年5月31日で閉鎖される。サービス終了の真の理由ははっきりしないが、「6月の上場を見据えてのことではないか」という世間の推測は、それほど外れていないだろう。
・メルカリ上場に最後まで抵抗していたのは、金融庁だったという話がある。これも昨年問題になった事件だが、メルカリに4万円の現金が4万7000円で出品された。この一見わけがわからない出品の意図は、闇金と同じ仕組みのお金の貸し借りをネット上で行うことである。購入者は4万円の現金を手にした上で、クレジットカードの決済が来る40日程度の期限までに、カード会社に4万7000円を支払うようにするのだ。
・闇金と違い、4万円を借りた人は闇金業者からの取り立てに怯える必要はない。とはいえ、お金にルーズな多重債務者予備軍がこの手のサービスを使うため、最後は借り手が自己破産してクレジットカード会社が大損する可能性がある。
・この仕組みの問題は、闇金的なサービスの仲介をすることでメルカリも安全に利益を上げられるということだ。メルカリは問題発生後、現金の出品を禁止した。しかしすぐに、「お札でつくったペーパークラフトを売ります」「河原で拾った石を買ってくれたら4万円キャッシュバックします」といった脱法行為が相次いだ。
▽東証が上場を認めた理由は?  投資家から「企業寄り」との声も
・こうしたなか、金融庁は法的リスクの観点から、メルカリの上場に難色を示していたと見られるのだ。そんなメルカリが晴れて上場となったのは、なぜだろうか。注目されるのが、企業の上場の可否を判断する東証の意向である。
・実は東証の審査については、近年「企業寄りではないか」という指摘が相次いでいる。以前は東証の審査は投資家寄りであることを重視していて、粉飾をしたカネボウやライブドア、株主を虚偽表示していた西武鉄道など、有力企業が相次いで上場廃止にされていた。
・その東証の姿勢が、企業寄りになる転機になったと考えられる事件が2つある。1つは、2007年に日興コーディアル証券の不正会計が発覚した事件だ。これは組織ぐるみで行われた利益の水増しだと第三者委員会で認定され、その決算書を前提に社債の発行が行われたという点で悪質だった。しかし、課徴金5億円が課せられただけで上場は維持された。
・日興コーディアルの事件が「東証は身内に甘い」という理由による例外的な決着だったとすれば、一般企業の巨額不正会計にもかかわらず上場が維持された2011年のオリンパスの損失隠し事件の方が、より明確な姿勢の転機であったかもしれない。 この事件をきっかけに、その後の東芝のように企業の存続すら危ぶまれる不正事件が起きても、上場維持の判断を下すといった体質へと、東証は変わって行ったように見える。
▽証取所がビジネスを重視するのは悪いことか
・では、そもそもそれは「悪い」ことなのか。 問題は何をもって悪いというかだが、従来の基準を曲げて上場の可否を判断しているかもしれないという観点で言えば、今の東証には大きな問題があるだろう。しかし、より大所高所に立ち、日本の株式市場を繁栄させるという観点で考えれば、今の東証の判断はビジネスとしては悪くないと考えることができるかもしれない。
・実際に過去、日本航空、ダイエー、西武鉄道、カネボウ、ライブドアといった企業が次々と上場廃止になったことが、株式市場全体の株価の上昇に大きく水を差すことになった。 ところが、日本経済がリーマンショックから回復している過程で起きたオリンパス事件の場合、損失を被ったのは事件を知って慌てて株式を売った個人投資家だけである。事件の記憶が薄れた後のオリンパスは、本業も順調で株価は事件当時の3倍の水準で推移している。以前のルールであれば上場廃止の後に底値でファンドに売却され、株主の損失はもっと大きかったに違いない。
・東芝問題も一時はどうなるかと思ったが、結局は東芝メモリを売却しなくても企業が存続できるのではないかと言われるまでに状況は好転している。このような結果が出ているのを見ると、筋はどうであれ、ルールを曲げることも東証のビジネスをうまく運営するためには重要なのではないかと、逆説的ながら考えさせられてしまうのである。
・投資家は、今回のメルカリ上場をどのように受け止めるだろうか。
https://diamond.jp/articles/-/170325

次に、元銀行員で法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が6月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「メルカリ上場、スマホに特化したビジネスモデルの「光と影」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽スマホのフリマアプリで急成長したメルカリが上場
・6月19日、フリマアプリなどを手掛けるメルカリが、東証マザーズ市場に上場した。同社は、わが国にとって大きな希望となり得る潜在性を持っている。そうした期待を反映して、公開価格(3000円)を上回る5000円で初値がつき、後場に入ると、値幅制限いっぱいまで買われて株価は6000円をつける場面があった。同社の成長を期待する投資家は多かった。
・メルカリは、他のIT企業と異なりスマートフォンをベースにアプリ開発を進めてきた。その結果、スマートフォン上でフリーマーケットのように消費者同士が物品などを取引する使いやすさがヒットし、目覚ましい成長を遂げてきた。今後、そのプラットフォームを生かし、さらなる事業分野の拡大を目指している。その意味では、メルカリには大きな期待がかかっている。
・一方、メルカリには、これからまだやらなければならないこともある。盗品の出品など、コンプライアンス体制の強化は喫緊の課題といってもよいだろう。現在は、主に人間の目に頼る手法で法令に違反する出品などを摘発していると言われている。しかし、それはいずれ限界に直面するだろう。
・メルカリには、輝かしい将来性があることは間違いない。その一方、将来のためにやらなければならないことも多い。海外事業の拡充を図るためにも、メルカリは法令遵守の体制を強化し、安心かつ安全な取引環境を整備しなければならない。
▽マッチングに着目した メルカリのビジネスモデル
・メルカリのビジネスモデルには、興味深いポイントが多い。スマートフォンという日常生活に欠かせないデバイスをベースに、同社は個人間の取引を仲介してきた。取引が成立すれば、メルカリは手数料を得る。これがビジネスモデルだ。
・具体的には、ネットワーク上での“フリーマーケット”のプラットフォームを提供し、消費者と消費者(個人同士)がダイレクトに取引を行うこと(C2C、Consumer to Consumer)を可能にした。その上で、メルカリは出品者から売り上げ代金の10%を手数料として徴収し、収益を獲得してきた。
・突き詰めていえば、メルカリが目指していることは、スマートフォンを用いた個人の需要と供給の“マッチング”だ。スマートフォンを使う利点は、出品したいモノの写真を撮り、ネット空間に出品し、売り上げを管理するなど、すべてのプロセスを片手で、簡単に行えることだ。パソコンではこうはいかない。
・このマッチングは、ありそうでなかった。わたしたちが必要なモノやサービスを手に入れる場合、企業から購入することが多い。しかし、欲しいモノやコトを提供してくれるお店が、常にあるとは限らない。
・メルカリは、スマートフォンのアプリ上でウインドウショッピングをするような気軽さで、「あったらいいな」と思うものを何気なく探し、見つかれば買うことを可能にした。それは大手企業がカバーしきれてこなかった経済圏といえる。“ありそうでなかった”ビジネスを、メルカリはスマートフォンという生活に欠かせない要素を用いることで実現した。それがメルカリの強さであり、興味深いポイントだ。
・その着眼点を応用できる分野は多いだろう。ネット上でのフリーマーケットのプラットフォームを支えるテクノロジーを応用して、同社はスキルのマッチングである“teacha(ティーチャ)”も展開している。メルカリは決済サービスである“メルペイ”の普及も重視している。それは、同社の経済圏の拡大が目指されていることを意味する。
▽メルカリのアプリは本当の“蚤の市”ではない
・同時に、メルカリへの不安の部分もある。メルカリのビジネスを見ていると、確かに、人と人のマッチングの機能はある。しかし、そこから得られる安心感を高めるための取り組みは不十分、との印象があることも確かだ。ユーザーが安心してC2Cの取引契約を結び、欲しいものを手に入れるためのテクノロジーの開発は道半ばに見える。
・ユーザーの不安は、掲示板である“メルカリボックス”を見ればよくわかる。「品物が届かない」、「出品者と連絡が取れない」、「写真で見た状態と全然違う」などだ。要は、フリーマーケットの機能が完全に実現できていないのである。その状況が続くことは、メルカリそのものへの不信感につながるだろう。
・フリーマーケット(もともとは、“蚤の市”)とは、物と物を交換する場として社会に広がってきた。買い手は品物を実際に手に取り、自分の目で確認する。納得できれば買う。反対に、納得できないなら買わない。これがフリーマーケットだ。
・実際に確認できれば、安心できる。だからこそ、欧米では“蚤の市”を中心に、個人間の取引が社会に組み込まれてきた。この基本的なフリーマーケットの機能に比べると、メルカリのアプリはこなれていない。
・米国では、蚤の市の役割を重視した、個人間の取引アプリも使われている。代表例が“OfferUp”だ。同社のアプリでは衣類から自動車まで、あらゆるモノが出品されている。同社は、「対面での引き渡し」を基本にアプリを開発している。興味を持った人は、実際に出品者を確認し、モノを目で見て、確認し、気に入れば買う。それがヒットしているということは、実際に目で見ることは、わたしたちの安心感に大きな影響を与えるということだ。
・メルカリは、ネット空間で取引を完結し、全国配送を強みとしている。しかし、それがいつ、いかなる場でも通用するとは限らない。その強みを発揮するためには、利用者の安心感を高めることが欠かせない。実際、品物の品質などに不安があるからメルカリを使わないという人も少なくはないようだ。
▽今、最も必要な コンプライアンス強化
・そのほかにもメルカリには問題がある。一時、象牙など国際条約に抵触するものが取引されていたことは記憶に新しい。夏休みの宿題の代行サービスなど、本来の目的から逸脱した出品もあった。今なお、盗品、ブランド品の偽物など法令に違反した出品は後を絶たないようだ。
・法令違反の対象となる出品を、メルカリは人海戦術によってモニターし、問題があると判断された場合には取引を停止している。それは根本的な解決にはならない。隠語などを使うことで、監視を回避する手立てはあるからだ。
・また、新プロジェクトのリスクを評価する組織力にも不安がある。すでに終了した“メルカリアッテ”は典型例だ。同サービスは地域密着型のコミュニティアプリを謳い、対面による物品取引(手数料無料)も可能。しかし、このサービスを利用したところ、トラブルに巻き込まれそうになったとの報道がある。これは、安全な取引を実現するための本人確認の徹底など、基本的な認識の甘さ、欠如に起因しているように思えてならない。それが続くと、市場参加者やユーザーから、メルカリは社会的な責任を果たしていないとみなされる恐れがある。
・同社は海外進出によって、さらなる成長を目指そうとしている。しかし、その前にやらなければならないことは多い。上場当日、山田会長は不正を検知するためのAI(人工知能)などテクノロジーの開発に注力すると述べたが、それは上場する前に実施されるべき内容だ。
・メルカリはアマゾンを目指している。アマゾンは不正を検知すると即時にユーザーのアカウントをブロックするだけでなく、電話での質問にも対応している。一方、メルカリのWebを見ると、問題が発生した場合に電話で相談できるのか否かなど、すぐにはわからないことが多い。
・そうした部分から、メルカリはユーザーの利便性と安心感の向上を目指すべきだ。そのために、コンプライアンス体制の強化や取引ルールの厳格化は欠かせない。メルカリへの安心感が高まれば、ユーザーが増加し、悪意ある取引者を減らすこともできるだろう。コンプライアンスの強化とともにユーザーの評価が高まるか否かは、メルカリの成長を左右する要因の一つと考える。
https://diamond.jp/articles/-/173156

第三に、5月28日付け日経ビジネスオンライン「GDPRより怖い? EUが準備中の「クッキー法」 個人情報保護の規制が、ネット広告に波紋」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・欧州連合(EU)は5月25日、個人情報に関して世界で最も厳しい規制とされる「一般データ保護規則(GDPR)」を施行した。データを本人がコントロールする権利を明文化し、域外への個人情報の転送を厳しく取り締まる同規制に、日本企業の多くはまだ対応ができていない。
・一部ではGDPRよりも大きな波紋を呼びそうな「eプライバシー規制」の準備も進んでいる。ユーザーのオンライン上の行動を追跡できる、「クッキー」の取り扱いが大きく変わる可能性がある。違反企業に対する課徴金の最大額もGDPRと同じ、世界売上高の4%か2000万ユーロ(約26億円)の高い方という途方もない金額になる見込みだ。
・リスクマネジメントに関して助言するニュートン・コンサルティング(東京・千代田)が5月9日に発表したアンケート調査(調査期間は4月下旬~5月上旬)では、GDPRについて「対応している」と答えた会社はわずか21%しかない。莫大な課徴金におののきつつも「取り締まりの実例がないあいだは後回しにする企業が多いのではないか」(個人情報に詳しいある弁護士)。
・GDPRについて、日本企業が最も注目してきたのが「第三国への移転」に関する規制だ。欧州の提携企業が取得した個人情報を欧州域外に持ち出しする際は、個別にユーザーの保護などに関する契約を両者の間で結び、当局の承認を得なければならない。
・しかし、実はこの問題は出口が見えてきている。欧州委員会は昨年10月、欧州がユーザー保護の体制が整っていると認めた国や地域に付与する「十分性認定」を日本にも付与する方針を明言した。認定を受ければ、個人情報の転送を自由にできるようになる。日本の個人情報保護委員会は認定に向けて日本企業が対応すべき5項目を掲げた。例えば取り扱いを特段慎重にする必要がある「要配慮個人情報」に「性的嗜好」や「労働組合での活動内容」を含めることなどだ。
・GDPRに詳しいあるコンサルタントは「この5項目に対応するのは、それほど難しくない。しかし、欧州と日本の法制度の違いを棚上げしたまま議論が進んでいる」と指摘する。その違いが「クッキー」の取り扱いだ。
▽「ポップアップ」だらけの欧州サイト
・まずは、こちらのリンクをクリックしてほしい。表示されるのは、日本経済新聞の子会社である英フィナンシャル・タイムズのウェブサイトだ。過去にこのサイトを訪れたことがない場合、ウェブブラウザーのどこかにクッキーの利用を求める「ポップアップ」が表示されているはずだ。日本ではあまりお目にかからないこうしたポップアップが、欧州のサイトでは頻繁に表示される。クッキーに対する考え方が、日本と欧州では異なるからだ。
・クッキーは、サイト側が利用者のパソコンやスマートフォンと言った端末を識別するための「目印」のようなものだ。例えば、EC(電子商取引)サイトでは、会員IDとパスワードでログインする前でも、カートの中に欲しい商品を入れておくことができるだろう。これはクッキーによりサイト側がそれぞれの端末を区別しているからできることだ。
・ユーザーの利便性を高めてくれるクッキーだが、ネット広告の配信でも重要な役割を果たしている。他のサイトで見た商品の広告が別のサイトでも表示される「行動ターゲティング広告」がその典型だ。ネット広告事業者は各サイトがユーザーの端末に付与しているクッキーを名寄せし、サイト間でユーザーの行動履歴を共有する「クッキーシンク」と呼ばれる仕組みを提供している。「この仕組みが10年ほど前にできたことで、広告枠の単価は100倍になった」とあるネット広告業の経営者は語る。
・中には行動ターゲティング広告を「つきまとわれているようで気持ち悪い」と感じるユーザーもいるだろう。そのため、欧州はクッキーを個人情報として保護対象に指定。ポップアップなどで注意を喚起し、クッキーを取得することや第三者提供をすることについて、ユーザーの同意を取るよう各企業に求めている。他方、日本の個人情報保護法はクッキーを保護対象にしていない。そのため、同意がなくても取得や第三者提供ができてしまう。
・GDPRはクッキーを個人情報として取り扱うことを一部の域外の企業にも求めている。西村あさひ法律事務所の石川智也パートナーはこう解説する。「欧州居住者を対象にしたサービスを提供しているサイト、または欧州居住者の行動を“監視する”仕組みがあるサイトは、日本の企業でも対象になる」。
・前者に該当するのはドイツ語やフランス語でも表示をしているゲームや旅行関連のサイトなど。より適用範囲が広いのは後者だ。「グーグルアナリティクスのようなアクセス解析ツールを利用しているだけで“監視”とみなされる可能性がある」(石川氏)。欧州居住者が自社のサイトを訪れるかどうかは前もってわからない。「クッキーと解析ツールを使っているサイトは原則対応すべきだと思った方がいい」(同)。運用会社のMFSインベストメント・マネジメントのように、欧州のサイトと同様のポップアップで同意を求める日本企業も出てきている。
▽クッキーを巡るルールが一変?
・こうした対応をさらに厳しく迫るのが、欧州委員会が最終調整を進めている「eプライバシー規則」だ。一部では「クッキー法」とも呼ばれている。本来、GDPRと同じタイミングで施行されるはずだったが、域内企業の反発が多かったため継続審議となっている。「2018年内か19年にも内容が固まる見通しで、GDPRと同じ課徴金と域外適用の制度が組み込まれるとみられる」(石川氏)
・そのポイントは、行動ターゲティング広告のような追跡行為を受け入れるか否かをユーザーに明確に確認することや、クッキーの提供を拒否するユーザーにも平等にウェブサービスを提供することなどだ。つまり、ユーザー側が希望しないクッキーでの追跡行為を排除することを求めている。
・ポップアップの説明が「マーケティングに利用する」などあやふやなものだと、同意とは認められなくなる可能性がある。前出のネット広告業の経営者は「クッキーの提供者が激減し、ネット広告の収益モデルがひっくり返る可能性がある。ネット上の無料サービスが維持できず、課金が必要になる例が増えるかもしれない」とeプライバシー規則の先行きに気をもむ。
・これまで多くのネット事業者が「分かりにくい説明をすることはユーザーにかえって不親切だ」という理屈で、同意をせずに、あるいはあやふやな同意でクッキーを取得したり外部提供したりしてきた。しかし、米フェイスブックの情報流出問題などを背景に、こうしたネット広告の“常識”に疑問を抱くユーザーも増えている。
・マーケティング会社のイーライフ(東京・渋谷)が5月に発表した約2400人へのアンケート調査では、「ネット広告で印象が良かった、または役に立った」ことは「ない」という回答が約80%に上った。ネット広告に懐疑的な人にも関係なくクッキーを使って追跡している現在の広告ビジネスモデルは、むしろ広告主のブランドを傷つける可能性すらある。
・eプライバシー規則により、こうしたユーザーの懐疑的な声はさらに強くなる可能性がある。現在のネット広告がはらむ問題に大きな波紋を投げかけることになりそうだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/052500827/?P=1

第一と第二の記事は、いずれもメルカリ上場問題を取上げたもので、前者は上場前にビジネスモデル上の各種問題点や認可した東証の姿勢の変化をみたものだ。後者は上場後に、市場の反応や今後の課題を見たものである。第一の記事で、 『この仕組みの問題は、闇金的なサービスの仲介をすることでメルカリも安全に利益を上げられるということだ。メルカリは問題発生後、現金の出品を禁止した。しかしすぐに、「お札でつくったペーパークラフトを売ります」「河原で拾った石を買ってくれたら4万円キャッシュバックします」といった脱法行為が相次いだ』、というのはいくら規制しても、それをかいくぐる「悪知恵もの」とのいたちごっこといった様相で、規制の現実的な難しさを露呈している。 『より大所高所に立ち、日本の株式市場を繁栄させるという観点で考えれば、今の東証の判断はビジネスとしては悪くないと考えることができるかもしれない』、としているが、これは投資家の株式市場への信認という長い目で見る必要があり、私個人としては、少なくともオリンパスや東芝については、上場廃止すべきだったと考えている。
第二の記事で、 『同社は海外進出によって、さらなる成長を目指そうとしている。しかし、その前にやらなければならないことは多い。上場当日、山田会長は不正を検知するためのAI(人工知能)などテクノロジーの開発に注力すると述べたが、それは上場する前に実施されるべき内容だ』、というのはその通りで、コンプライアンスに殊の外厳格な海外への進出には慎重であるべきと思う。
第三の記事で、『行動ターゲティング広告を「つきまとわれているようで気持ち悪い」と感じるユーザーもいるだろう』、私なぞもその典型だ。 『アンケート調査では、「ネット広告で印象が良かった、または役に立った」ことは「ない」という回答が約80%に上った。ネット広告に懐疑的な人にも関係なくクッキーを使って追跡している現在の広告ビジネスモデルは、むしろ広告主のブランドを傷つける可能性すらある。 eプライバシー規則により、こうしたユーザーの懐疑的な声はさらに強くなる可能性がある。現在のネット広告がはらむ問題に大きな波紋を投げかけることになりそうだ』、というのであれば期待できそうだ。
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