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司法の歪み(その9)(裁判員10年目へ 『見えなくなる』刑事裁判」、「日本版司法取引初適用事例」への”2つの違和感”~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性、司法取引で会社が社員を「売る」時代に 誰も「会社のため」に罪を犯さなくなる) [社会]

司法の歪みについては、7月19日に取上げた。今日は、(その9)(裁判員10年目へ 『見えなくなる』刑事裁判」、「日本版司法取引初適用事例」への”2つの違和感”~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性、司法取引で会社が社員を「売る」時代に 誰も「会社のため」に罪を犯さなくなる)である。

先ずは、清永 聡 解説委員による5月23日付けNHK時論公論「裁判員10年目へ 『見えなくなる』刑事裁判」」を紹介しよう。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/298010.html
・『市民が裁判官とともに刑事裁判の審理を行う「裁判員制度」。スタートから9年が経過し、10年目に入りました。 裁判は公開が原則です。しかし今、非公開の手続きが長期化しているほか、市民に開かれた司法という理念から、逆行するような課題もあります・・・【解説のポイント】●裁判が始まるまで、見えない期間が長くなっています。●裁判が終わってからも、見えません。●さらに裁判員裁判に限らず、法廷が傍聴席から見えないケースも増えています』、市民に開かれた司法という理念から逆行するような課題があるとは、穏やかでない。順にみていこう。
・『JR千葉駅前で、1人で署名活動を続けていたのは、ベトナム国籍のレェ・アイン・ハオさんです。ベトナム国籍で小学3年生だった娘のリンさんは、去年3月、登校途中に連れ去られ、殺害されました。 父親のハオさんが署名を始めたのは、事件から1年近く経っても、裁判が始まらず、裁判所から連絡もないためでした・・・【課題①:長引く公判前整理手続き】その後、この事件の裁判員裁判は、来月開かれることが決まりました。しかし、どうしてこの間、裁判は始まらなかったのでしょう。 それは「公判前整理手続き」があるためです。 これまでは通常、逮捕、起訴されて、刑事裁判が始まります。しかし、裁判員制度は市民が加わるため、審理が長引くと裁判員の負担が重くなります。そこで、裁判官と検察官、それに弁護士が争点や証拠の取り扱いを事前に話し合い、絞り込みます。これが公判前整理手続きです。その分、裁判を短くして、裁判員の負担を減らします。 リンさんの事件では、この非公開の手続きが5か月あまり続き、裁判の始まる時期が決まらなかったのです。 その公判前整理手続き。年々、長くなっています。最高裁によると、平均期間は最初の年は2.8か月だったのに、去年は8.3か月。複雑で大規模な事件ほど、長くなる傾向があります。手続きの期間が5年を超える事件もあります』、公判前整理手続きの意義は認めるとしても、事件から1年近く経っても、裁判が始まらず、裁判所から連絡もないため父親のハオさんが署名活動を始めたとは、裁判所が十分説明してなかったとしたら、問題だ。平均期間は2.8か月から去年は8.3か月。複雑で大規模な事件ほど、長くなる傾向があります、というのはやむを得ない面もあるのだろうが、「手続きが長引けば、事件を詳しく知っているプロの裁判官と、何も知らない裁判員に情報格差が一層大きくなり、裁判員は裁判官に対して違う意見を言いにくくなる」との問題点もあるようだ。
・『【課題②:終わった後も見えない】裁判が終わった後の課題もあります。 裁判員を経験した人の数は、今年3月までに全国で83000人を超えました。当初期待されたのは、元裁判員が全国でその経験を語り、市民の刑事裁判への理解を深めることでした。 しかし経験を語る人が、増えているようには感じられません。 その背景として、「守秘義務」が指摘されています。裁判員は「評議」と呼ばれる話し合いの内容、そして事件関係者のプライバシーなどは、一生、守秘義務を守ることが求められます。これに対して、法廷で見聞きしたことや自分の考えは公にしても構いません。ただ、一般の人たちは、どこまでなら話しても大丈夫かがわかりにくいため、守秘義務を気にして口を閉ざしてしまう人が少なくないのではないでしょうか。市民団体からは「守秘義務を緩和すべき」という提言も行われています』、やはり守秘義務緩和も必要なようだ。
・『【刑事参考記録の公開の仕組みを】また、確定した後の裁判の記録の扱いにも問題があります。現在は、重要な裁判記録は「刑事参考記録」として法務大臣の指定で検察庁に保管されることとなっています。しかし、指定されている800件あまりが、どういう事件か、具体的な名前は明らかにされていません。閲覧も学術研究などの目的に限られ、一般に公開されているものではありません。 この問題では、先月、法務省がプロジェクトチームを作り、刑事参考記録の扱いについて、検討を始めています』、オウム事件では永久保存となったようであるが、一般公開も検討すべきだろう。
・『【課題③:遮蔽と秘匿は慎重に検討されているか】裁判員制度の目的の1つは、市民に開かれた司法を通じて、理解を深めてもらうことにあるはずです。 しかし、最近の刑事裁判を取材していると、こうした理念とは逆に、裁判員裁判に限らず、公開が十分と言えるのか、疑問を感じる法廷もあります・・・「遮蔽」と呼ばれる措置です。犯罪被害者を守るために導入されたもので、裁判官や裁判員は見ることができますが、被告あるいは傍聴席からは見えません。この遮蔽が増加しています。最高裁によると、一昨年は裁判員裁判以外を含めて、1832件。10年前の1.7倍になりました。多くは被害者が希望し、裁判所が妥当だと判断した場合です。 しかし、本当に隠す必要があったのか疑問も残るケースもあります』、「遮蔽」は本当に必要な場合に限定すべきだろう。
・『【公開の原則を大切に】江戸時代の名裁判官と言われた京都所司代の板倉重宗に、次のような逸話が伝えられています。彼は双方の主張を聞くとき、先入観を抱かないよう、彼だけが、当事者をあえて見ないようにして、耳を傾けて主張を聞いたというものです。 今は、どうでしょうか。反対に自分たちだけが見て、傍聴席つまり市民には見せない、知らせないというのでは、この逸話とは逆です。 被害者の保護や裁判員の負担軽減も大切です。合わせて、憲法が定めた公開の原則をどう守り、どのようにバランスを取るか。 裁判員制度が10年目を迎えた今、市民に開かれた司法というその理念を、裁判所は、忘れないでほしいと思います』、その通りだ。

次に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が7月17日付け同氏のブログに掲載した「日本版司法取引初適用事例」への”2つの違和感”~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2018/07/17/%E3%80%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%89%88%E5%8F%B8%E6%B3%95%E5%8F%96%E5%BC%95%E5%88%9D%E9%81%A9%E7%94%A8%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%80%8D%E3%81%B8%E3%81%AE%EF%BC%92%E3%81%A4%E3%81%AE%E9%81%95%E5%92%8C/
・『タイの発電所建設事業をめぐる不正競争防止法違反・・・事件で、事業を受注した「三菱日立パワーシステムズ」(MHPS)と、捜査している東京地検特捜部との間で、法人の刑事責任を免れる見返りに、不正に関与した社員への捜査に協力する司法取引(協議・合意)が成立し、今年6月に施行された刑訴法改正で導入された「日本版司法取引」・・・「日本版司法取引」は、検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者・被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するものだ。 導入の目的については、「組織犯罪の末端の関与者に刑事責任の軽減の恩典を与えることで、組織の上位者の犯罪について供述しやすくすること」と説明されてきた。ところが、その初適用事例が、「外国公務員贈賄」という犯罪に関して、事業上の利益を得る「会社」が免責されるのと引き換えに、犯罪行為に関わった「社員」の刑事責任を追及する方向での「取引合意」だった。「想定とは逆」であることに、違和感が生じるのも当然と言えよう』、私も新聞を読んでわが目を疑った。
・『今回の事例には、二つの面で違和感を持たざるを得ない。 法人免責が「取引合意」の対象となったことへの「違和感」 第一の「違和感」は、MHPSと検察官との間で、「法人」の刑事責任を免れることと引き換えに、贈賄行為に関わった「社員」が刑事処罰されることに協力するという「合意」が行われたことだ。 日本での法人処罰は、刑法以外の法律の罰則に設けられた「両罰規定」に基づいて行われる。 両罰規定とは、「法人の役職員が、その業務に関して、違反行為を行ったときは、行為者を罰するほか、法人に対しても各本条の罰金刑を科する」という規定に基づき、行為者個人だけではなく、法人も処罰されるというものだ・・・自然人個人に対する「道義的非難」が中心の日本の刑事司法では、「意思も肉体も持たない抽象的存在」の「法人」に対する処罰は、重要視されてはこなかった。日本法での法人処罰は、法人の役職員個人について犯罪が成立することを前提に、副次的に行われるものに過ぎず、法人に対する罰金の上限も、3億円から5億円程度にとどまっている・・・法人に対して数百億円、時には数千億円もの罰金が科されることもある米国などとは大きく異なる。今回問題になっている「外国公務員贈賄」の不正競争防止法違反の法人に対する法定刑の上限も3億円に過ぎない・・・「個人処罰」中心の考え方の日本法による「法人処罰」は、独立した制裁としての位置づけが十分なものではなく、それ自体の制裁機能も、決して十分なものではなかった・・・日本法による「法人処罰」の実情からは、法人の処罰を免れることと引き換えに、行為者たる役職員「個人」の刑事責任の追及に協力する「取引合意」が成立するというのは、想定し難いことだった。 しかし、今回の件は「両罰規定によって処罰され得る『法人』」が、役職員「個人」の処罰に協力することの見返りに、法人の処罰を免れさせてもらうという取引だ。 MHPS側が、法人に対する処罰を免れることを優先したのは、僅か上限3億円に過ぎない法人処罰自体より、法人が処罰されることに伴って国際協力銀行(JBIC)等の融資が停止されるなど、他の制裁的措置がとられることを恐れたからだと考えられる。しかし、そのような「企業そのものが被る事業上の不利益」を免れるために、行為者の役職員「個人」が刑事処罰を受けることに積極的に協力する「取引合意」を行うことが、果たして、企業として適切な対応と言えるのだろうか』、確かに、MHPS側にとっては、「僅か上限3億円に過ぎない法人処罰自体より、法人が処罰されることに伴って国際協力銀行・・・等の融資が停止されるなど、他の制裁的措置がとられることを恐れたからだと考えられる」というのはその通りなのだろう。
・『もう一つの「違和感」は、法人に対する処罰を免れさせる見返りに、行為者たる社員の側の刑事責任を追及することに協力する「取引合意」が、「東南アジアの国での外国公務員贈賄」という「特殊な事情から発生することが多い犯罪」について行われたことだ。 東南アジア諸国では、古くから、公務員が公務の受益者から直接報酬を受け取る慣習がある・・・そのような慣習が存在するところで行う事業のために現地に派遣される社員は、事業を進める中で、現地の公務員から賄賂を要求された場合に、極めて辛い立場に立たされることになる。要求どおり賄賂を支払わなければ、有形無形の不利益が課され、事業の大幅な遅延というような事態に追い込まれることは必至だ。海外での事業では、契約時に「履行遅延の場合の損害賠償の予定」(リキダメ)が合意されていることが多く、事業が遅延すると、そのリキダメの発生が予想されることで、その会計年度末に多額の損失引当金を計上せざるを得ないことになる。 現地に派遣されている社員は、事業の遅延を生じさせないよう、本社側から強く要求され、一方で、現地の公務員から賄賂を要求され、それに応じないと事業が遅延するというジレンマに立たされることになる。 社員に「コンプライアンスの徹底」を指示しても、社員を窮地に陥れるだけだ・・・結局のところ、そのような東南アジアの国で事業を行う場合には、公務員側から賄賂を要求されるリスクが相当程度あることを前提に事業を行うか否かの意思決定を行わざるを得ないのである・・・まさに、タイという東南アジアの国で、そのような事業を行うのであれば、意思決定を行う際に、当然、現地公務員による賄賂要求のリスクを認識した上で決定する必要があったのであり、事件は、そのような当然のリスクが顕在化したものに過ぎない。 発生することが分かっていたリスクにさらされ、ジレンマに悩んだ末に、賄賂を贈った社員を処罰することと引き換えに、会社に対する制裁を免れさせるというのは、納得できることではない』、「リキダメ」とは初耳だが、そんな条項があったら、賄賂要求を拒否すれば損害賠償に直面することになり、踏んだり蹴ったりだ。それを承知で契約した上で、社員だけを血祭にするというのでは、社員はたまったものではなかろう。
・『今回の「司法取引」で「法人が免責された」ということは、まさに、法人が自社の事業に関して発生した犯罪について積極的に内部調査を行って事実を明らかにし、その結果に基づいて捜査当局に協力することが法人の責任を軽減するものと評価されたことになる。それは、「法人処罰」に対する従来の運用を大きく変える可能性につながるものと言える。 本来、違法行為や犯罪行為に対する制裁・処罰は、全体として、その責任の程度、悪質性・重大性のレベルに応じたものでなければならない。しかし、日本では、企業や法人に対する制裁は、「行政上の措置としての課徴金」と「刑事罰」が併存し、その関係についての理論的な整理も必ずしも十分ではなく、制裁の在り方についての総合的な研究は、これまで殆ど行われて来なかった・・・今回の事件が、法人に対する制裁の在り方についての議論の契機になるとすると、そこで避けては通れないのが、従来、特別法犯に限定されてきた「両罰規定」を、刑法犯にも導入することの是非の検討である。例えば、「談合罪」など、刑法犯の中にも「法人の利益」のために行われることが多い犯罪があるが、それらについても法人を処罰する規定がないことが、かねてから問題とされてきた。 それに関して、既に、具体的な動きとなっているのが、重大事故の遺族の方々が中心となって行っている、「業務上過失致死傷罪」に対する「組織罰」実現をめざす活動である。 2005年の福知山線脱線事故、2012年の笹子トンネル事故など、多くの重大事故の遺族の方々が中心になって、当初、イギリスで導入された「法人故殺罪」のような「法人組織自体の行為についての刑事責任」を問うことをめざして、2014年に「組織罰を考える勉強会」が立ち上げられた・・・その会に私が招かれた際、日本の刑法体系からは実現が容易ではない「法人処罰」ではなく、現行法制上可能な、業務上過失致死傷罪についての「両罰規定」を導入する刑事立法を行うことを提案したところ、その趣旨が理解され、それ以降の会の活動が、「両罰規定」によって重大事故についての企業の責任を問うことをめざす、「組織罰を実現する会」に発展していった』、今後、「組織罰を実現する会」の発展を期待したい。
・『「業務上過失致死傷罪」への「両罰規定」の導入に関して最も重要なことは、法人の業務に関する事故について、法人役職員に同罪が成立する場合には、法人にも両罰規定が適用されるが、「当該法人における安全確保のためのコンプライアンス対応が事故防止のために十分なものであったにもかかわらず、予測困難な逸脱行為によって事故が発生した場合には、法人を免責する」ということである。事故防止のための安全コンプライアンスが十分に行われていたことを、法人側が立証した場合には免責されるとすることで、刑事公判で、企業の安全コンプライアンスへの取組みが裁かれることになるのである』、というのは妥当だろう。

第三に、経済ジャーナリストの磯山 友幸氏が7月27日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「司法取引で会社が社員を「売る」時代に 誰も「会社のため」に罪を犯さなくなる」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/072600073/?P=1
・『内部告発をきっかけに社内調査を進めたMHPSが不正を把握。会社自らが東京地検特捜部に申し出て、捜査に協力した見返りとして、不正競争防止法による会社への刑事訴追を免除された。会社が訴追されれば、多額の罰金を科される可能性があった。 もともと「司法取引」が導入された目的は、企業や組織の犯罪捜査で、社員などを免責する代わりに「巨悪」をあぶり出すことにあった。社員などに責任を押し付けて、会社や幹部が逃げ切ることを避けるのが狙いだ。ところが、この第1号案件では、会社という法人組織を守るために、役員個人が処罰されるという想定とは逆の「取引」になった。会社を守るために個人を犠牲にする形になったのである』、いくらMHPS側からの申し出があったとはいえ、こんなのを認めた特捜部の良識を疑わざるを得ない。
・『かつて、総会屋と呼ばれた特殊株主に、株主総会を平穏に終わらせるために金品を渡す企業が少なからずあった。バレて逮捕・起訴された総務担当役員が、ほとぼりがさめると、関係会社の顧問などとして面倒をみてもらうケースがあった。「会社のため」に働いた犯罪だから、個人を裁くのは気の毒だというムードがあった。逆に言えば、会社が最後まで面倒をみてくれる、という確信があるからこそ、「会社のため」に罪を犯すことも辞さない社員が存在してきたと言える。 それだけに、今回の司法取引は、衝撃的だったと言えるだろう。 MHPSが役員らを「売って」まで、贈賄の罪を自白した背景には、贈収賄を巡る国際的な罰則強化の流れがある。会社ぐるみで贈賄を行ったとなると、国際的に痛烈なバッシングを受ける可能性があるのだ』、なるほど。
・『日本企業が海外での贈収賄に神経を尖らせ始めたのは、2011年に英国で贈収賄防止法が施行されたのが一つのきっかけだった。もともとは米国で1972年に起きたウォーターゲート事件の調査をきっかけに、多数の米国企業が外国公務員に贈賄をしていたことが判明。1977年に、海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act、FCPA)が制定された。 1997年には国際商取引での外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約が発効し、日本を含む41カ国が批准。日本は、1998年に不正競争防止法に、外国公務員等に対する不正の利益の供与等の罪(18条)を新設した。 日本も国際的な腐敗防止の流れに沿った対応を進めてきたわけだが、日本企業が本気で危機感を持ったのは、米国や英国が法律の「域外適用」に乗り出してきたためだ。米国内に支店や事業拠点があれば、その企業がアフリカなどの第三国で贈賄を働いても、米国法で摘発することができる。もちろん、日本企業が賄賂で仕事を取っていけば米国企業が損害を被るという理屈がある。 アングロサクソンはそうした「アンフェア」な行為に対して強く反発する国民性をもっている。摘発されると懲罰的な罰金として巨額の制裁金が科される、そんな例が相次いだのだ』、米英の「域外適用」を重要な背景としたのは、大いにありそうな話で、さすがだ。
・『贈収賄と同じく「アンフェア」な犯罪行為として英米が激しく批判するのが、カルテルや談合といった独占禁止法違反だ。国際的なカルテル行為があったとして日本企業が摘発され、千億円規模の制裁金が科されるケースも頻発している。 企業が罰金を支払うだけでは済まず、実際にカルテルを働いた社員なども摘発されている・・・米国の刑務所には有罪になった日本人ビジネスマンが数十人収監されているとされる』、企業戦士が数十人も収監されているとは驚かされた。
・『今回の司法取引は、日本の会社と社員の関係を劇的に変える分岐点になるかもしれない。「会社のため」に行った贈賄を、会社に告発されるとなれば、もはや誰も「会社のため」に罪を犯さなくなる。 日本で「会社のため」が通ってきたのは、終身雇用が前提の雇用制度だったからだとも言える。いったん採用されれば、定年まで面倒をみてもらえるという「信頼感」が、会社に滅私奉公するムードを生み、「会社のため」というカルチャーを成り立たせてきた。 安倍晋三内閣が進める「働き方改革」は、多様な働き方を認めることを一つの柱とし、副業や複業を後押ししている。人口減少による人手不足が今後ますます深刻化する中で、人材の流動化が進むことになる。そうなれば、終身雇用制度や年功序列賃金、新卒一括採用といった日本型の雇用制度は大きく崩れていくことになる。 働き手が多様な働き方を求めるだけでなく、企業も新卒者を雇って生涯雇用し続けることに限界を感じ始めている。もはや会社は無条件で社員を守らないということが鮮明になった今回の「司法取引」は、日本の雇用慣行の崩壊を如実に物語っているのかもしれない』、というのはその通りなのだろう。
タグ:裁判員制度 東京地検特捜部 福知山線脱線事故 日経ビジネスオンライン 郷原信郎 笹子トンネル事故 日本版司法取引 同氏のブログ NHK時論公論 司法の歪み 磯山 友幸 (その9)(裁判員10年目へ 『見えなくなる』刑事裁判」、「日本版司法取引初適用事例」への”2つの違和感”~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性、司法取引で会社が社員を「売る」時代に 誰も「会社のため」に罪を犯さなくなる) 清永 聡 「裁判員10年目へ 『見えなくなる』刑事裁判」」 10年目に入りました。 裁判は公開が原則です。しかし今、非公開の手続きが長期化しているほか、市民に開かれた司法という理念から、逆行するような課題もあります 長引く公判前整理手続き 終わった後も見えない 遮蔽と秘匿は慎重に検討されているか 公開の原則を大切に 「日本版司法取引初適用事例」への”2つの違和感”~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性」 タイの発電所建設事業をめぐる不正競争防止法違反 三菱日立パワーシステムズ」(MHPS) 。「想定とは逆」であることに、違和感が生じるのも当然と言えよう 第一の「違和感」は、MHPSと検察官との間で、「法人」の刑事責任を免れることと引き換えに、贈賄行為に関わった「社員」が刑事処罰されることに協力するという「合意」が行われたことだ 日本での法人処罰 「両罰規定」 自然人個人に対する「道義的非難」が中心の日本の刑事司法では、「意思も肉体も持たない抽象的存在」の「法人」に対する処罰は、重要視されてはこなかった。日本法での法人処罰は、法人の役職員個人について犯罪が成立することを前提に、副次的に行われるものに過ぎず、法人に対する罰金の上限も、3億円から5億円程度にとどまっている MHPS側が、法人に対する処罰を免れることを優先したのは、僅か上限3億円に過ぎない法人処罰自体より、法人が処罰されることに伴って国際協力銀行(JBIC)等の融資が停止されるなど、他の制裁的措置がとられることを恐れたからだと考えられる 企業そのものが被る事業上の不利益」を免れるために、行為者の役職員「個人」が刑事処罰を受けることに積極的に協力する「取引合意」を行うことが、果たして、企業として適切な対応と言えるのだろうか もう一つの「違和感」は、法人に対する処罰を免れさせる見返りに、行為者たる社員の側の刑事責任を追及することに協力する「取引合意」が、「東南アジアの国での外国公務員贈賄」という「特殊な事情から発生することが多い犯罪」について行われたことだ 海外での事業では、契約時に「履行遅延の場合の損害賠償の予定」(リキダメ)が合意されていることが多く、事業が遅延すると、そのリキダメの発生が予想されることで、その会計年度末に多額の損失引当金を計上せざるを得ないことになる そのような東南アジアの国で事業を行う場合には、公務員側から賄賂を要求されるリスクが相当程度あることを前提に事業を行うか否かの意思決定を行わざるを得ないのである タイという東南アジアの国で、そのような事業を行うのであれば、意思決定を行う際に、当然、現地公務員による賄賂要求のリスクを認識した上で決定する必要があったのであり、事件は、そのような当然のリスクが顕在化したものに過ぎない 発生することが分かっていたリスクにさらされ、ジレンマに悩んだ末に、賄賂を贈った社員を処罰することと引き換えに、会社に対する制裁を免れさせるというのは、納得できることではない 今回の事件が、法人に対する制裁の在り方についての議論の契機になるとすると、そこで避けては通れないのが、従来、特別法犯に限定されてきた「両罰規定」を、刑法犯にも導入することの是非の検討である 例えば、「談合罪」など、刑法犯の中にも「法人の利益」のために行われることが多い犯罪があるが、それらについても法人を処罰する規定がないことが、かねてから問題とされてきた。 それに関して、既に、具体的な動きとなっているのが、重大事故の遺族の方々が中心となって行っている、「業務上過失致死傷罪」に対する「組織罰」実現をめざす活動である 組織罰を実現する会 当該法人における安全確保のためのコンプライアンス対応が事故防止のために十分なものであったにもかかわらず、予測困難な逸脱行為によって事故が発生した場合には、法人を免責する 「司法取引で会社が社員を「売る」時代に 誰も「会社のため」に罪を犯さなくなる」 内部告発をきっかけに社内調査を進めたMHPSが不正を把握。会社自らが東京地検特捜部に申し出て、捜査に協力した見返りとして、不正競争防止法による会社への刑事訴追を免除された 第1号案件では、会社という法人組織を守るために、役員個人が処罰されるという想定とは逆の「取引」になった。会社を守るために個人を犠牲にする形になったのである 「会社のため」に働いた犯罪だから、個人を裁くのは気の毒だというムードがあった。逆に言えば、会社が最後まで面倒をみてくれる、という確信があるからこそ、「会社のため」に罪を犯すことも辞さない社員が存在してきたと言える 贈収賄を巡る国際的な罰則強化の流れ 2011年に英国で贈収賄防止法が施行 1977年に、海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act、FCPA)が制定 1997年には国際商取引での外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約が発効 米国や英国が法律の「域外適用」に乗り出してきたためだ 贈収賄と同じく「アンフェア」な犯罪行為として英米が激しく批判するのが、カルテルや談合といった独占禁止法違反だ。国際的なカルテル行為があったとして日本企業が摘発され、千億円規模の制裁金が科されるケースも頻発している 米国の刑務所には有罪になった日本人ビジネスマンが数十人収監されているとされる 今回の司法取引は、日本の会社と社員の関係を劇的に変える分岐点になるかもしれない 。「会社のため」に行った贈賄を、会社に告発されるとなれば、もはや誰も「会社のため」に罪を犯さなくなる。 「働き方改革」は、多様な働き方を認めることを一つの柱とし、副業や複業を後押ししている。人口減少による人手不足が今後ますます深刻化する中で、人材の流動化が進むことになる。そうなれば、終身雇用制度や年功序列賃金、新卒一括採用といった日本型の雇用制度は大きく崩れていくことになる。 働き手が多様な働き方を求めるだけでなく、企業も新卒者を雇って生涯雇用し続けることに限界を感じ始めている。もはや会社は無条件で社員を守らないということが鮮明になった今回の「司法取引」は、日本の雇用慣行の崩壊を如実に物語っているのかもしれない
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