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中国国内政治(その6)(中国で大規模な退役軍人デモ 膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援 武力鎮圧事件に発展、習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている、習近平思想」で統制強まる中国 現場で見た3つの深刻実例) [世界情勢]

中国国内政治については、3月21日に取上げた。今日は、(その6)(中国で大規模な退役軍人デモ 膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援 武力鎮圧事件に発展、習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている、習近平思想」で統制強まる中国 現場で見た3つの深刻実例)である。

先ずは、元産経新聞北京支局員でジャーナリストの福島 香織氏が6月27日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「中国で大規模な退役軍人デモ、膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援、武力鎮圧事件に発展」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/062600162/
・『習近平政権の最大の矛盾は軍部周辺で起きているのかもしれない。習近平政権最初の5年の任期で難しい軍制改革に手を付け、大規模リストラと軍部の利権剥奪、汚職摘発を名目にした粛清を続けている・・・解放軍内外の矛盾と不満はかなり膨らんでいるようである。 そういうものが、目に見える形で表れた一つが、昨今頻発している退役軍人デモである。6月下旬にもかなり大規模な退役軍人デモが起き、しかも解放軍下部組織の武装警察や軍が出動して鎮圧するという、軍内身内同士の流血事件に発展した。習近平政権二期目始まって以来の最大規模の退役軍人デモであり、ひょっとすると最大危機への導火線となるやもしれない』、大規模な退役軍人デモが流血事件に発展したとは初耳だが、驚いた。
・『このデモが起きたのは江蘇省鎮江。6月19日から24日にかけて 、全国22省から微信(中国ネットSNS)で呼び掛けられた退役軍人たちが続々と鎮江市の政府庁舎に集まり続けた。ネットに上げられた映像を見る限り1万人規模にはなっていた。香港紙の中には5~6万人が集結という報道もある。彼らは迷彩服姿で市内を行進するなどした。 当初は抗議活動を容認するかたちで、1万人の武装警察が治安維持のための厳戒警備にあたっていたが、鎮江市政府周辺で、一人の退役軍人と警備の武装警察が衝突、退役軍人側が頭から血を流して倒れ、怒ったデモ隊が非道を訴え、一部で暴徒化したようだ。退役軍人を殴ったのは、武装警察の制服ではなかったという説もれば、私服の武警であったという説もある。 相手は退役しているとはいえ軍人である。農民、市民の抗議活動とは迫力が違う。現地当局は最終的に武装警察および軍の出動を依頼、23日午前3時40分ごろには、2万人の武装警察および解放軍が退役軍人デモ鎮圧のために出動した、という話も出ている』、流血は偶発的なようだが、重大な事件であることは確かだ。
・『この結果、かなり暴力的な鎮圧が行われたようで、ネットには漆黒の闇の中で、「殴られた!」と叫び声をあげながら武装警察と群衆が衝突している様子が動画に挙げられている。ネットで散見する動画や写真をみれば、血まみれの退役軍人たちは一人や二人ではなかった。武装警察側の武器は主に盾やこん棒であったようだ。死者が三人以上出ている、という話もあるが、確認は取れていない。また、この鎮圧騒動で負傷した退役軍人が入院した病院では、大勢の退役軍人が“見舞い”に押し寄せ、病院前で退役軍人と7両の軍警車両が一時対峙する場面もあったとか。 また、当局は市庁舎近くの中学校に退役軍⼈を拘束、収容。その数は2000⼈以上とか。⾷事しに外に出ることも禁じられ、トイレに⾏くのすら⼆⼈が監視につくなどの厳しい監視をうけている、という。 当局は一切の報道禁止をメディアに通達し、ネット上でも動画や写真などの投稿削除が行われているが、なぜか微信だけは、完全に封鎖されていない。25日には「装甲車が投入された」という写真付きSNSの投稿や、鎮江市の外で二個師団が待機している、といった噂もながれた。こうした情報の真偽を確かめるすべは今のところないが、事件に関する情報は今なお断続的に発信され続けている』、微信だけは完全に封鎖されていない、というのも不思議だ。
・『微信では、どこそこから退役軍人グループが応援に向かった、その応援グループが地元警察に連行された、誰それとの連絡がとれない、といった情報が次々と更新されており、今回のデモが、かなり組織的かつ全国的規模で入念に計画されたものではないかという気がしてくる。しかも中央ハイレベルから、このデモを事前に防ごうという動きがない。ご存じのように、中国ではすでに顔認識機能のついたAI監視カメラが駅や高速道路など要所要所に設置されており、大量の退役軍人が一斉に鎮江に向かおうとすれば、事前に察知されて当然なのだ。 微信が遮断されていないこととも考え併せると、党内部や軍内部のハイレベルが一枚かんでいる可能性は否定できない。あるいは治安維持部門があえて上層部に報告しない、といった現場のサボタージュがあったのかもしれない。江蘇省上層部すら、誰も現場に出てきていないので、これが退役軍人有志らの自発的アクションなのか、軍部が関与しているのか、背後に糸を引く大物がいるのかどうかも、目下は判断に悩むのだ。 だが、武器を携帯した武装警官・兵士が武力鎮圧を行ったことは事実らしく、ネット上では「軍人版天安門事件」などという声もある・・・一般市民は退役軍人側の味方が多く、退役軍人に対してはタクシー運転手がただで現場に運ぶなどの応援も行われたようだ。微信上では、一般庶民からの退役軍人の身の安全を心配したり、がんばれと応援したりする声も多く上がっている。 私は26日に鎮江を訪れた。すでに退役軍人も武装警察の姿はなく、市庁舎も病院も中学校も平穏な様子であったが、複数のタクシー運転手によれば、23日に武装警察、特別警察、軍が出動してデモの鎮圧にあたったことは事実のようだ。あるタクシー運転手によれば「23日の夜は、街頭が消されて真っ暗の中、退役軍人たちが次々と拘束されていた。多くが中越戦争で戦った英雄なのに、ひどい仕打ちだ」と退役軍人側に強い同情を寄せていた』、確かに「党内部や軍内部のハイレベルが一枚かんでいる可能性は否定できない」、というのはあり得る話だ。
・『ところで退役軍人の境遇とは、そんなにひどいのだろうか。ちょうど、この事件を報じた香港蘋果日報が退役軍人の現状についてまとめていたので、引用する。 2011年に施行された退役兵士安置条例によれば、12年以上の兵役者には軍が就職口を手配してくれるが、12年未満の兵役者及び義務兵は自力で就職先を探さねばならず、自主就業手当と呼ばれる一時退役年金が支払われるのみだ。しかし、これは1年の兵役につきわずか4500元が基準で、10年服役してやっと4万5000元が得られるということになる。 兵役経験者はよい就職口が用意される、というのはほんの一部の話であり、ほとんどの兵士は青春期の10年を軍に捧げてのち、退役後に一般社会に適応するのは現代中国ではなかなか簡単ではない。しかも習近平による軍制改革で、この数年は一気に30万人以上の退役兵士が新たに社会にあふれるわけだ』、急増する退役軍人の多くの処遇が恵まれてないのであれば、デモもいたしかたないのであろう。
・『中国には現在5700万人の退役軍人がいる。今年3月の全人代後に習近平主導で行われた国務院機構改革の一環として退役軍人事務部が新設されたのは、こうした退役軍人の社会復帰を援助し、その人権を守り、その不満を解消するのが目的だった。だが退役軍人の登録を開始しただけで、なんら具体的な対策は打ち出されず、今回のデモについても、公式コメントすら出していない。 退役軍人事務部の設置は習近平の肝入りであり、一般の傾向としては、こうした退役軍人問題の責任は習近平の手中にある、という形で、今回の事件の矛先は習近平政権批判に向かいつつある。趙紫陽の元秘書、鮑彤は「警察力によって、(退役軍人の)正当な権利を粉砕すれば、(習近平)新時代の社会矛盾が消滅したり緩和したりするとでもいうのか? これが(習近平のスローガンである)治国理政の新理念新方向なのか?」と習近平政権批判につなげている』、反習近平派にとっては、格好の攻撃材料だろう。
・『この事件の背景はまだ謎である。だが、香港の民主化雑誌「北京の春」の編集長・陳維健がやはりツイッターで興味深いコメントをしていた。 「今回のデモの現場の鎮江は江沢民の故郷の揚州のすぐ隣の地方都市だ。デモと江沢民が関係あるかはわからないが、鎮江政府は(軍による鎮圧という)軽率な対応をしてはならなかった。…退役軍人問題は習近平自身の手中にあり、官僚たちは自分に責任の火の粉がかかるのを恐れて、行動したがらない。この問題を解決するには必要予算があまりにも大きく、鎮圧するにはリスクが高すぎる」 習近平の宿敵ともいえる江沢民が何らかの形でかかわっているのか? また、一部SNS上では、国家安全部二局(国際情報局)がこの事件の背景を調査するために現地入りしたというまことしやかな噂も流れている。中国当局は海外の情報機関の工作を疑っているのか? すべてがネット上のSNS発情報というもので、何が事実で、何がデマなのかはまだわからない。だが、退役軍人デモが頻発していることは事実である。日本では2016年10月に北京で行われた数千人規模の退役軍人デモが大きく報道されたが、それ以前もあったし、それ以降も増え続けている。2017年も相当規模のものが少なくとも4件はあった』、相当規模の退役軍人デモはこれまでからあったというのであれば、今回のを殊更、重大視する必要はない可能性もある。
・『習近平政権としては退役軍人デモには、他のデモとは違う「話し合い姿勢」を見せており、今回のような武力鎮圧事件に発展したことは意外感がある。習近平の判断というよりは、偶発的な事件をきっかけにした鎮江市の対応の誤りが引き起こした騒動と言えるが、今後の中央の対応次第では、本当に1989年の再来の可能性だって否定できまい。 習近平政権は今世紀半ばまでに、戦争に勝利でき党に従う一流の近代軍隊を作るという強軍化の夢を掲げて軍制改革に踏み出した。だが、退役軍人への権利や尊厳が守れない状況で、誰が命をかけて党に忠誠を尽くそうというのか。このままでは、強軍化の夢どころか、体制の根底を揺るがしかねないのである』、軍隊の近代化には軍人のリストラは避けられないとはいえ、習近平政権にとっては大きな爆弾のようだ。

次に、国際コラムニストの加藤嘉一氏が7月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/174805
・『「解放軍内の粛清は史上最大級だろう。軍位の売買、それに伴う金銭のやり取りはもちろんのこと、これまでは許されていた軍としての営利活動や企業運営、そして灰色収入の獲得も固く禁じられている。正常な接待ができないから軍内でまともなコミュニケーションが取れない。茅台酒すら安心して飲めない」 最近、定年を前にして自ら解放軍少将の地位を捨てた元空軍幹部が筆者にこう言った。「私はようやく自由になった」と笑顔を見せるこの人物、辞職後は約30年間の“軍内生活”で積み上げてきた人脈や経験を生かしながら「一人の中国人民として」(同元幹部)コンサルティング業務に従事している。 2012年秋、共産党の第18回大会を通じて習近平が総書記に就任して以来、党指導部の解放軍への“対策”には2つの特徴と傾向が明確に、かつ日を追うごとに見受けられるようになってきた。 一つは“反腐敗闘争”である。共産党の指導部・最高指導者にとって、軍部をいかにして掌握し、支配下に入れるかという問題は最重要課題であり、共産党一党支配体制が続く限り永遠の課題だと言えるが、習近平は“反腐敗闘争”を通じて軍内を粛清しつつ、軍部に対する掌握力と支配力を徹底的に強化しようとしてきた。 18回大会以来“落馬”した少将・上級大佐(中国語で“大校”)以上の解放軍幹部は90名以上に及んでいる。そこには徐才厚、郭伯雄両中央軍事委員会副主席・上将も含まれる。また、18回大会から昨年10 月に行われた19回大会直前までの約5年間で、腐敗が原因で処分を受けた軍人は1万3000人以上に上るとされる・・・習近平が総書記就任後指導思想として掲げた『中国夢』の作者、劉明福中国人民解放軍上級大佐・国防大学教授は、筆者との共著『日本夢 ジャパンドリーム:アメリカと中国の狭間でとるべき日本の戦略』(晶文社)のなかで、軍隊の腐敗とそれに対する習近平の対策について次のように述べている。「改革開放から30年以上の月日が経ちましたが、軍事エリートの危機は驚くほどに深刻であると私は断言します。病状は主に三つあります。一つは“平和病”、彼らは闘うための思想に欠けています。二つに“腐敗病”、二人の中央軍事委員会副主席が腐敗を誘発・リードし、カネの力で将軍を生ませてきました。軍隊における“人身売買”という現象は極めて深刻です。三つに“凡庸病”、部下を引き連れ闘う能力に欠けているにもかかわらず、コネを作り、賄賂や腐敗で自らを昇進させる能力だけには長けている。一連の腐敗分子・投機分子らが軍隊のなかで好き勝手やっている。こんな状況が許されるわけがないでしょう。このような危機的状況を前に、習近平主席は全党・全軍反腐敗を徹底し、戦い方を知っていて、戦う意志のある優秀な軍事人材を重用するシステムを構築しようとしています。軍隊は人民に信頼される組織でなければならない。我が人民解放軍は“構造病”をガバナンスし始め、軍事大革命を推進しようとしているのが現状です」』、人民解放軍の腐敗がこれほどまでに酷いとは、驚きだが、習近平としてはリスクを承知でメスを入れたのだろう。
・『中国にとって、共産党が解放軍を相当程度に掌握していること、若干センセーショナルに換言すれば、軍部が“暴走”しないという状況は中国の政治・経済社会の基本的安定に資すると言える(もちろん、そのためには軍部を支配する立場にある政党が暴走しないことが前提条件となる)・・・ここから本稿で筆者が検証したい本題へと入っていくが、最近、筆者から見て“軍部の暴走”を招きかねないリスクを内包する事態が発生している。それは冒頭に出てきた元空軍幹部の感想や動向を裏付けるものであるとも言える。 6月11日、党中央弁公庁、国務院弁公庁、中央軍事委員会弁公庁の連名で『軍隊が全面的に有償サービス業務を停止することを深く推進するための指導意見』を発表した。これは習近平政権成立以来もくろまれ、取り組まれてきた軍隊・軍事改革の一環であり、『意見』の発行をもって、解放軍は今年度末までにすべての営利を目的とした企業運営やサービス提供を停止することが正式に義務付けられることになった。 これは“反腐敗闘争”と同様、軍隊に対する“粛清”プロセスだと解釈できる・・・『意見』発行の背後には共産党の解放軍への掌握と支配をめぐる意図や動機が如実に反映されるわけであるが、そこには軍隊の腐敗を防止すること、軍隊への社会的信用を回復させること、国有資産の流出を防止すること、そして習近平が主張するように軍隊が本来の任務である「戦争に勝つこと」を確固たるものにするための業務に集中することなどが含まれる。 筆者自身、今回の措置には社会の安定や合理的分業という意味で、ポジティブなインパクトが見いだせると考えている・・・軍隊が社会的特権を乱用して、不当なビジネスを行ったり、莫大な利潤を獲得するといった状況は早くから中国社会における“公然の秘密”となっており、民の軍に対する不満や抵抗感は長い間蔓延してきたと言える』、悪名高い軍のビジネスにまで手を入れたのは、確かに画期的だ。
・『軍が“暴走”するシナリオは大いに想定できる ビジネスでなくとも、有料施設の利用時に「軍人無料」だったり、公共施設の利用時に「軍人優先」という場面や状況は中国社会に普遍的に存在しており、そもそも中国の一般大衆の間には「軍人は特権的地位を利用して好き勝手、やりたい放題に振る舞う悪者」という類の認識が広まっていた事実は否めない。 習近平政権が“群衆路線”を随所で強調し、農民や労働者を中心に“社会の弱者”に寄り添う政策を大々的に打ち出すことで共産党の正統性を強固なものにしようとしてきた経緯を顧みれば、今回の『意見』は想定内であるし、当然の帰結とも言えるだろう。 一方で、潜在的な不安要素も見いだせる。 それは、端的に言えば、解放軍の共産党に対する不満や抵抗が爆発し、その過程であるいは結果的に軍隊が何らかの形で“暴走”するという事態であり、リスクである。 上記のように、習近平政権成立以来、共産党による絶対的領導下にある解放軍は、過去のどの時代よりも国ではなく党の軍という地位に甘んじている。そのような現状に対して、解放軍の関係者は政策、地位、待遇といったあらゆる角度から不満を蓄積させてきている。“反腐敗闘争”によって一切の賄賂や腐敗、そして贅沢が禁止されてきた。今回の『意見』を通じて、軍隊内部で生き延びるため、私益・私欲を肥やすためのビジネスも禁止された。一切のグレーゾーンを排した、党(の方針)への絶対服従を命じられているのである。行動として服従したとしても、内心穏やかでないどころか、不満を募らせている軍人はゴマンといるであろう。 実際に、冒頭の元空軍幹部を含め、気心の知れた軍人は酒の席で、筆者に対し習近平への不満や不服を爆発させている。 そういう感情が“臨界点”に達した時、若干極端な表現になるかもしれないが、軍人が党・政府・国に対してクーデターを彷彿とさせるような行動を起こす、何らかの引き金が原因で公共の場で、一般民衆に対して発砲する、台湾や他国に対して軍事的行動を起こすといった形で“暴走”するシナリオは大いに想定できる。今回の『意見』はそういうシナリオに現実味を持たせ、リスクを増長させる動きであると筆者は認識・解釈している』、軍の暴走が少なくとも「他国に対して軍事的行動」には、つながらないよう願うばかりだ。

第三に、同じ加藤嘉一氏が8月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「習近平思想」で統制強まる中国、現場で見た3つの深刻実例」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/178351
・『宣伝工作の重視と徹底は、2012年秋から2013年春にかけての発足以来、習近平政権・体制を象徴する要素であり続けてきた。共産党一党支配、マルクス主義、中国の特色ある社会主義といったイデオロギーの正統性が徹底的にプロパガンダされ、一方で世論や言論への統制は日増しに強化され、それに伴い言論・報道・出版・研究・教育・結社・集会といった分野における自由は侵蝕されてきた。「党政軍民学、東南西北中、党が一切を領導するのだ」昨秋の第19回党大会にて党規約に盛り込まれた一文である。“文化大革命”時代を彷彿とさせるこの掛け声の下、習近平率いる共産党指導部は全国各地、全民族、官民を問わず、すべての中国人が、共産党が宣伝する思想やイデオロギーに従い、それに沿って行動することを呼びかけ、それに従わない人間・組織には容赦ない処罰を与える方針をあらわにしている・・・上からの統制や抑圧に晒されている“現場”は枚挙に暇がない。筆者の周りで起こっている3つの実例を挙げることで、現状の深刻さを具体的に掘り起こしていきたい』、なるほど。
・『現在、中国共産党指導部を最も困惑させている案件のひとつが米中貿易戦争であり、習近平陣営は対米関係の現状や行方を、共産党の安定や権威をも脅かす可能性のあるリスクだと見ているというのが筆者の見立てである。「“特朗普”(筆者:中国語で“トランプ”を指す)の三文字を使ってはいけないという指令を中央宣伝部から受けた。中米貿易戦争が悪化しているなかで、それでもトランプ大統領本人を刺激するべきではないとのことであるが、この三文字に触れずにどうやって報道しろというのか。全く理解できない」 8月下旬、中国中央電視台(CCTV)で米中貿易戦争の取材や報道に直接関わる外報記者が筆者にこう漏らした。この記者によれば、7月末、米国と欧州が貿易協議で合意に至った際にも、宣伝部から報道規制を命じる指示が来たとのこと。同記者はため息をつきながら次のように続けた。「中国が米国との貿易協議で決裂してしまった状況下で、米欧協議がまとまったことを正面から報じるのは具合が悪いと言われた。ニュースそのものは報じたが、上からは“米欧間にもさまざまな問題があり、前途多難”という論調で報じるように指示された。現場で取材する身としては全く不自由・不愉快であるし、正直何もできないという絶望感に苛まれる日々である」 この記者の上司は同局の報道方針の策定などにも関わる幹部候補であるが、もうすぐワンランク上のポジションへの昇格が見込まれる状況であるにもかかわらず、「上に行けば毎日無味乾燥な会議や報告書の作成、そして“習近平思想”の学習にほぼ全ての時間や労力を取られてしまう。前向きな企画や取材など、できる状況ではない」ようで、「昇格を放棄、退社することも考えている」という。 筆者は日頃から中国のメディア関係者とやり取りをする機会があるが、官製メディアだけでなく、例えばテンセントが運営する「騰迅網」や香港フェニックスグループが運営する「鳳凰網」といった“市場化メディア”ですら、中央宣伝部や中央インターネット安全・情報化委員会弁公室といった“お上”からの厳格な指令と監視の下で運営されており、「特にヘッドラインに関しては、もはやお上が直接決定して、私たちがそれを垂れ流すだけという状況に陥っている。そのほとんどは習近平本人の動向に関するニュースである」(鳳凰網デスク)とのことである』、「昇格を放棄、退社することも考えている」幹部候補がいるというのには、中国にも骨のあるジャーナリストがいるものだ驚いた。
・『外国人にまで「習思想」を宣伝 積極的に参加しなければ罰金も 今年6月末のある日の夕方、筆者は北京首都国際空港ターミナル3にいた・・・受付の位置に習近平のガバナンスに関する談話をまとめた著書の英語版を宣伝する英文ポスターが掲げられ、大量のチラシが積まれていた。国際便のほとんどはターミナル3発着であり、多くの外国人客が利用することからこのような措置が取られていたものと察したが、なんとも言えない違和感を覚えた・・・筆者が観察する限り、実際に北京や上海といった大都市だけでなく、内陸部の都市や地方の農村などを含め、街のいたるところに習近平の写真や言葉(筆者は習近平の銅像は目にしたことがない)、“習近平思想”を宣伝する紅断幕などが掲げられている・・・一種の“恐怖政治”を感じながら、なりふり構わず習近平を宣伝しなければ自らの“政治生命”にヒビが入ってしまうと怯えている、あるいはそんな現状を前に“習近平”を利用して上に媚を売り、体制内における昇格を目論んでいる関係者がゴマンといるのであろう』、外国人にまで「習思想」を宣伝するとは、ゴマスリもいいところだ。
・『そんな現状を象徴するのが3つ目のエピソードである。 私の手元に【2018年度北京市社会科学基金項目課題指南】という一部の資料がある。北京を拠点とする大学やシンクタンク研究者への助成金申請を促すプロジェクトである。習近平思想、改革開放40周年、冬季五輪、首都都市ガバナンス、北京市全体的都市計画など計7つのパート、226の研究課題が示されているが、うち33に「習近平」の3文字が含まれている。「習近平総書記新時代観研究」、「習近平総書記国家安全観研究」、「習近平総書記体育思想研究」といったものである。本プロジェクトの運営に関わるスタッフによれば、「“習近平”の三文字が入っている研究課題は人気がある」とのこと。同資料によれば、申請者に課された条件として、「社会主義制度と中国共産党領導を擁護する」ことが義務付けられている。 “習近平研究”をめぐるインフラ建設も整ってきている。2017年12月、党中央は「習近平新時代中国特色社会主義思想研究中心(院)」の設立を10の機関に批准した。中央党校、教育部、国防大学、中国社会科学院、北京市、上海市、広東省、北京大学、清華大学、中国人民大学である。その後、全国各地の政府機関、大学、シンクタンク、メディアなどから“習近平思想”研究の拠点となる研究中心・研究院の設立を渇望し、申請するブームが起こっている。 筆者が想像するに、これらの研究機関によって研究・発表される“習近平思想”に大した差は見いだせないだろう。すべての研究や論文はそれを肯定するものであろうし、結論ありきになることは疑いない。結局は、本稿が論じてきたように、習近平への権力集中、そして個人崇拝が蔓延る現状に着目し、それを利用することで富や名声を得ようという御用学者が量産される局面は目に見えている。 そのような状況に嫌気が差し、最近になって中国社会科学院を退職した若手研究者(政治学専攻)はその理由を次のように語った。「学者として胸を張れる仕事など何一つしていないし、できない状況だった。自分の頭で考えることも自分の考えを述べることもはばかられた。まともな国際交流や学術研究も許されなかった。“習近平思想”、“一帯一路”、すべての研究は上が決めた枠組みや方針を裏付け、正当化するための作業に過ぎない。あそこでは学者としてのアイデンティティを保てない。だから辞めたのだ」』、社会科学では「御用学者が量産」とは笑ってしまうが、もっと社会に役立つ研究に努力を振り向ければいいのに。ゴマすりだけのために、何たる壮大な無駄をしているのだろう。
タグ:習近平への権力集中、そして個人崇拝が蔓延る現状に着目し、それを利用することで富や名声を得ようという御用学者が量産される局面は目に見えている “習近平研究”をめぐるインフラ建設も整ってきている 、「“習近平”の三文字が入っている研究課題は人気がある」 習近平思想、改革開放40周年、冬季五輪、首都都市ガバナンス、北京市全体的都市計画など計7つのパート、226の研究課題が示されているが、うち33に「習近平」の3文字が含まれている 2018年度北京市社会科学基金項目課題指南 外国人にまで「習思想」を宣伝 トランプ”を指す)の三文字を使ってはいけないという指令 3つの実例 宣伝工作の重視と徹底 「「習近平思想」で統制強まる中国、現場で見た3つの深刻実例」 軍人が党・政府・国に対してクーデターを彷彿とさせるような行動を起こす、何らかの引き金が原因で公共の場で、一般民衆に対して発砲する、台湾や他国に対して軍事的行動を起こすといった形で“暴走”するシナリオは大いに想定できる 軍が“暴走”するシナリオは大いに想定できる 解放軍は今年度末までにすべての営利を目的とした企業運営やサービス提供を停止することが正式に義務付けられることになった 三つに“凡庸病”、 二つに“腐敗病”、 一つは“平和病 軍事エリートの危機は驚くほどに深刻 習近平は“反腐敗闘争”を通じて軍内を粛清しつつ、軍部に対する掌握力と支配力を徹底的に強化しようとしてきた 軍位の売買、それに伴う金銭のやり取りはもちろんのこと、これまでは許されていた軍としての営利活動や企業運営、そして灰色収入の獲得も固く禁じられている 解放軍内の粛清は史上最大級 「習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている」 ダイヤモンド・オンライン 加藤嘉一 江沢民が何らかの形でかかわっているのか 退役軍人の登録を開始しただけで、なんら具体的な対策は打ち出されず 不満を解消するのが目的だった 退役軍人事務部が新設 中国には現在5700万人の退役軍人 自主就業手当と呼ばれる一時退役年金が支払われるのみだ。しかし、これは1年の兵役につきわずか4500元が基準で、10年服役してやっと4万5000元が得られるということになる 軍人版天安門事件 党内部や軍内部のハイレベルが一枚かんでいる可能性は否定できない なぜか微信だけは、完全に封鎖されていない 血まみれの退役軍人たちは一人や二人ではなかった。武装警察側の武器は主に盾やこん棒であったようだ。死者が三人以上出ている、という話もあるが、確認は取れていない 一人の退役軍人と警備の武装警察が衝突、退役軍人側が頭から血を流して倒れ、怒ったデモ隊が非道を訴え、一部で暴徒化したようだ 全国22省から微信(中国ネットSNS)で呼び掛けられた退役軍人たちが続々と鎮江市の政府庁舎に集まり続けた 映像を見る限り1万人規模にはなっていた 江蘇省鎮江 昨今頻発している退役軍人デモである。6月下旬にもかなり大規模な退役軍人デモが起き、しかも解放軍下部組織の武装警察や軍が出動して鎮圧するという、軍内身内同士の流血事件に発展した。習近平政権二期目始まって以来の最大規模の退役軍人デモであり、ひょっとすると最大危機への導火線となるやもしれない 「中国で大規模な退役軍人デモ、膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援、武力鎮圧事件に発展」 日経ビジネスオンライン 福島 香織 (その6)(中国で大規模な退役軍人デモ 膨らむ矛盾と不満 進まない社会復帰支援 武力鎮圧事件に発展、習近平に抑圧される人民解放軍に「暴走」リスクが高まっている、習近平思想」で統制強まる中国 現場で見た3つの深刻実例) 中国国内政治
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