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災害(その5)(台風21号で関空vsタンカー 損害賠償めぐる第2の衝突、関空孤立も北海道停電も 前から「指摘されていた弱点」だった ではなぜ改善できなかったのか、関空 露見した「国際空港」としての巨大欠点 今でも情報発信は最悪の状態のまま) [社会]

災害については、8月30日に取上げた。今日は、(その5)(台風21号で関空vsタンカー 損害賠償めぐる第2の衝突、関空孤立も北海道停電も 前から「指摘されていた弱点」だった ではなぜ改善できなかったのか、関空 露見した「国際空港」としての巨大欠点 今でも情報発信は最悪の状態のまま)である。

先ずは、9月9日付けNEWSポストセブン「台風21号で関空vsタンカー、損害賠償めぐる第2の衝突」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20180909_757702.html?PAGE=1
・『近畿地方を通過した台風21号は、その爪痕を大きく残した。9月4日、高潮で滑走路が冠水した関西国際空港と対岸を結ぶ唯一の連絡橋にタンカーの宝運丸(長さ89メートル、2591トン)が衝突し、関空の利用客ら約8000人を孤立させた。 関空は7日から国内線の一部の運用を再開したが、全面的な再開のメドは立っていない。観光や物流など関西経済の打撃は必至で、アジア太平洋研究所によると関西のインバウンド消費だけをみても、経済損失は500億~600億円にのぼるという。「アジア防災センター」センター長の濱田政則・早稲田大学名誉教授はこう話す。 「問題はタンカーが衝突した連絡橋。報道映像を見た範囲ですが、橋桁は造り直す必要があるはずで、そうなると完全復旧までに1~2か月は必要です。基礎の部分まで損傷している場合にはもっと時間がかかりますし、概算ですが費用も100億円を超えると思います」』、衝突したタンカーは、関空にジェット燃料を運んでいたらしいので、潮の流れなどは知り尽していた筈だ。原因解明はこれからだが、現在のところでは、大きな謎だ。
・『そうなると、気になるのが連絡橋を壊してしまった責任の“賠償額”だ。いったいどこが負担することになるのか。海難事故を専門とする田川総合法律事務所の田川俊一弁護士は言う。「船舶一般において、船長にはアンカー(錨)をおろして船が流されないように守錨をする義務があります。その義務を怠った場合の事故などは船長の過失であり、その賠償は船主(海運会社)が支払うことが民法の特別規定によって定められています。船舶はPI保険(船主責任保険)に入っているのでそこから補償に充てられますが、上限は通常、数十億円に設定されています」 宝運丸は、3日に航空機用の燃料を運んだ後、錨をおろして停泊中に風に流されて橋に衝突したと報じられている。田川弁護士はこの措置をめぐって情勢が変わる可能性を指摘する』、保険に上限があるのは保険会社としては、当然だろう。
・『「関空からタンカーに停泊位置など細かく指示が出ていたはずですが、仮にその指示などで関空側にも過失があった場合、過失相殺が認められ、タンカー会社の賠償負担が減る可能性もあります。もっとも、自然災害という不可抗力によるものと認められれば、賠償責任そのものが免除されます」 過失があるのはタンカーか関空か、それとも自然災害か──。在阪の社会部記者はこう話す。 「責任問題についての議論はまだ先のようですが、関空側はもし損害賠償を請求されたらタンカー会社の過失を主張するとみられています。自然災害と認められればいいが、今のところは互いに牽制している状況のようです」  第2の“衝突”は、これからのようだ』、なるほど「関空からタンカーに停泊位置など細かく指示が出ていたはず」、という可能性は確かにあり得ることだ。今後の真相解明が待たれる。

次に、経済ジャーナリストの町田 徹氏が9月11日付け現代ビジネスに寄稿した「関空孤立も北海道停電も、前から「指摘されていた弱点」だった では、なぜ改善できなかったのか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57462
・『近畿地方を直撃した台風21号と、北海道で観測史上最大の震度を記録した北海道胆振東部地震――。 先週、日本列島を相次いで襲った大型の自然災害は、多くの死傷者を出す一方で、西の空の玄関・関西国際空港と北のライフラインである北海道の電力ネットワークの脆弱性を浮き彫りにした。いずれも、平時の備えを怠っていた感は否めず、十分な安全マージンの確保が急務となっている』、なるほど。
・『本当の原因は…? まず、関空の最新状況と被害が深刻になった原因を見てみよう。 台風21号の影響で、関空では先週火曜日(9月4日)午後、強風で流されたタンカーが激突して連絡橋が破損したのに続き、その1時間後には滑走路に茶色い濁流が流れ込んだ。すっかり冠水したA滑走路の水深は、40~50センチ・メートルに達したという。そして、関空は午後3時に閉鎖され、約3000人の利用客が取り残される事態に陥った。 深刻な被災状況を受けて、安倍晋三首相は翌6日午前の「豪雨非常災害対策本部会議」で、「(関空の)国内線(の運航)を明日中に再開し、国際線も準備が整い次第再開する」と復旧を急ぐ考えを表明。7日には、被害の少なかったB滑走路を使い、日本航空と関空を拠点とするLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションの2社が、なんとか19便の運航に漕ぎ着けた。さらに8日になると、全日本空輸も加わって国際線を含む合計47便を運航したという。 しかし、復旧はまだ緒に就いたばかりだ。平時には、貨物を含む1日の発着数が500回を超える関空の実情を考えると、再開分はいまだに1割に満たず、本格復旧には程遠い』、安倍首相の復旧に向けた考えは、被害状況を把握した上でのものである筈だが、楽観的過ぎたきらいがある。 
・『石井啓一国土交通大臣は7日の記者会見で、被害が大きかったA滑走路の暫定運用開始は9月中旬にずれ込むとの見通しを語り、近隣空港の代替利用も模索せざるを得ないと説明している。 これまでのところタンカーが連絡橋に激突した原因は不明だが、滑走路が冠水した原因は明らかだ。高潮・高波に伴う海水の侵入を阻む護岸対策が不足していたのだ。 住宅街に建設したことで発着時間を制限せざるを得なかった大阪国際空港(伊丹空港)の轍を踏むまいと、関空は計画段階から1日24時間いつでも離着陸ができる空港を目指し、騒音を理由に住民から訴訟を起こされないよう、陸地から5キロ近く離れた泉南沖の海上を建設候補地とした。 しかし、この場所は平均20メートルと海上島建設地としては水深が深いばかりか、海底の土壌も約18 メートルの粘土層など軟弱な土壌が堆積する場所だった。つまり、当初から空港の建設に不向きな立地とされていたのだ。 実際、今回冠水がひどかったA滑走路がある1期島は、今なお1年におよそ6センチ・メートルのペースで地盤の沈下が続いており、通算の沈下はおよそ3.4メートルに達したという。 もちろん、まったく護岸工事をやっていなかったわけではない。関空では、「50年に1度の高波にも耐えられる対策を打つ」ことを目指して、2004年から護岸を海面から約5メートルの高さまでかさ上げした。1961年の第2室戸台風の記録(最高潮位293センチ・メートル)を考慮した対策だったという。 しかし、今回はそれを上回る329センチ・メートルの潮位に見舞われて、滑走路や駐機場が冠水する事態に見舞われてしまったのである。 今後も地盤沈下は続くとみられるうえ、南海トラフ地震が起きれば大津波の襲来もあり得るのが関空だ。十分な安全マージンを確保する対策を講じるか、さもなければいっそ近隣空港に機能をシフトすることも視野に入れざるを得ない状況だ』、「当初から空港の建設に不向きな立地」だった割には、護岸のかさ上げは中途半端だった。
・『停電はまだまだ長引く可能性 もう一つ浮き彫りになったのは、北海道全域で停電が起き、その影響が長引きそうだという電力インフラの脆弱性だ。 北海道を先週木曜日(9月6日)午前3時過ぎに襲った北海道胆振東部地震は、南部の厚真町(あつまちょう)で観測史上最大の震度7を記録。震源近くにあった北海道電力最大の火力発電所「苫東厚真火力発電所」を運転停止に追い込んだ。被災時点で全供給力の4割前後を賄っていたとみられる大型火力発電所がダウンした結果、道内全域の電力の需給バランスが崩れた。 このため、道内の全発電所が運転を次々と停止し、北海道電力の管内全域が停電するブラックアウトが発生。一時、全道の295万戸すべてが停電する事態に陥った。 その後、北海道電力は復旧を急いだ。同社の発表によると、先週金曜日(9月7日)15時現在、自社の8ヵ所の火力発電所と47ヵ所の水力発電所などを稼働して合計で314万キロ・ワットを確保、155万6000戸の停電を解消したという。 同じく7日の夕刻に記者会見した世耕弘成経済産業大臣は、「あらゆる努力を積み重ねて、明日(8日)中には最大360万キロワット程度の供給力を確保して、これによって北海道全域のほぼ295万戸へ電力供給が再開できる見通しが立った」と力説した。被災前日のピーク時の380万kWに迫る供給力を回復できると言うのである。 しかし、これで万全とは決して言えない。 実際、世耕大臣自身も同じ記者会見の場で、週明けの需要の上振れや老朽化した火力発電所の脱落の可能性を示唆したうえで、「再度、大規模な停電が起こるリスクもある」ため、「1割程度の節電が必須」なほか、「計画停電など、あらゆる手段の準備を進めたい」と明かした。節電目標はその後20%に引き上げられた。 結局のところ、全道停電という異常事態から迅速に復旧したかに見えても、まだ安心できず、影響が長引く可能性があるのだ』、いくら苫東厚真火力への依存が大きかったとはいえ、ブラックアウトとはお粗末だ。そうしたリスクも織り込んで、備えているのが供給責任の筈だ。
・『では、なぜ、これほど影響が長引くのだろうか。これまでに明らかになっているだけでも、大別して2つの問題がありそうだ。 第一は、1、2号機のボイラー損傷、4号機のタービン付近の火災と、続々と主力の苫東厚真火力が大きな被害を受けたことが明らかになる一方で、苫東厚真火力のバックアップ役を果たせる発電設備を北海道電力が保持していないことである。 仮に、そうした設備を保持していれば、これほど影響が長引くことを懸念する必要はなかっただろうし、そもそも苫東厚真火力がダウンした際にそうした設備を速やかに運転できていれば、あのブラックアウトも避けられた可能性がある。 第二は、本州と北海道を結ぶ送電網が「北海道・本州間連系設備」の1系統しかなく、その容量が60万kwと小さい問題だ。本州と四国を結ぶ送電網が3系統、容量にして430万kwあることと比べても、あまりにも不十分と言わざるを得ない。来年3月には、北海道と本州を結ぶ送電網が青函トンネルの空きスペースを利用する形でもう1系統新設されることになっているが、その容量も30万kwと小さく抜本的な改善策とは言い難い。 実は、東日本と西日本では電力の周波数が異なっており、2011年の東日本大震災で関東や東北が電力不足に陥った際に、西日本から十分な電力の融通を受けられなかった反省から、本州と北海道を結ぶ送電網の整備も含めて、電力の広域融通体制の整備の必要性が幅広く指摘されてきた。 それにもかかわらず、この程度の対策しか講じていないのはあまりにも不十分。あの震災の教訓を生かしていないと批判されても仕方がないだろう。 関係者の中には、北海道電力が保持する泊原発が稼働していれば、こうした問題を避けられたという主張もあるかもしれない。が、泊原発は何年も運転を停止したままで、運転再開のめどはたっていないのだから、バックアップの発電設備や電力融通のパイプの強化は不可欠だったはずである。 電力融通のための送電網拡充については、かつては地域独占体制が否定されかねないとの懸念から、現在は下手に容量を拡大すると電力自由化が加速しかねないとの懸念から、関係電力会社の間には陰に日向に反対を続けるムードが強いと聞く。 経済産業省・資源エネルギー庁がそうした業界のエゴを黙認してきた問題も含めて、平時の備えを怠ってきたことが北海道の電力供給の危機対応力不足の根底にある。 不十分な安全マージンしか確保していなかった関空の護岸対策も含めて、平時の対応が問われている』、北海道電力のみならず、「業界のエゴを黙認してきた」行政の責任も重大だ。「関空の護岸対策も含めて、平時の対応が問われている」というのは、まさにその通りだ。

第三に、在英ジャーナリストのさかい もとみ氏が9月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「関空、露見した「国際空港」としての巨大欠点 今でも情報発信は最悪の状態のまま」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/237304
・『想定外の高潮で大きな被害を受けた関西国際空港。すでに一部の便の運航が再開しているが、完全復旧にはまだまだ時間がかかりそうだ。目下、空港の運営会社は、9月14日頃とされる第1ターミナルの暫定運用開始に向け、「着実に前進中」と説明している。 今回の被害により、順調に増加してきた、いわゆるインバウンド需要にブレーキがかかることも危惧されている。地域経済へのダメージを最小限に抑えるためには一刻も早い復旧が求められるが、なお連絡橋の改修など多くの課題が残っている。ハードだけではなく、ソフト面でも課題が山積している。情報発信の面で、「国際空港としてやるべきこと」ができていないのだ』、ソフト面でも課題山積とは初耳だ。
・『初動の情報発信に難点 台風21号は9月4日の日中、関西圏を襲った。それ以後、関空を取り巻くさまざまな被害が明るみに出る中、世界各地の空港では「KIX(航空業界で使う、関空を示す3レターコード)へどうやって乗客を飛ばすか?」で頭を悩ます事態が続発した。「『とりあえず明日の再開はない』ってどういうことなの? 滑走路や駐機場は水浸し、空港への橋も破損しているのに、明後日になってどうやって使えるようになるわけ?」 9月5日、筆者はロンドン・ヒースロー空港にある欧州系航空会社のカウンターに行って、旧知の職員に関空行き旅客の取り扱いについて尋ねてみたところ、こんな言葉が返ってきた。 関空は5日の時点で、「6日中の再開はなし」とだけ発表。「閉鎖となる期間」について、タイムラインをしっかり示していなかった。「明日はダメだけど、明後日どうなるか説明してくれないから、一応飛ばす準備はしなきゃいけない。しかも状況がわかってない日本人顧客が次から次へとやって来るし……」(ヒースロー空港のカウンター職員)』、いくら関空は大混乱のさ中とはいえ、海外の出発便関係者に分かるような情報発信がないとは、国際空港として失格だ。
・『その後、航空各社は9月11日ごろまでの関空便をとりあえず欠航とする方向で態度を固め、行き先を振り替えた上で「とにかく日本のどこかへ顧客を送る」という現実的な対応を開始した。 航空会社によって代替便提示へのケアがおざなりだったり、振替便の席が取れずやむなく現地滞在を延ばしたり、日本国内の全く違う空港へ飛ぶことになった旅客もいたようだが、何らかの形で日本にたどり着けたようだ。各航空会社は、手数料無料での払い戻しやルート変更などに応じており、顧客の便宜を図っている』、やむを得ない現実的な対応だ。
・『関空滞留の中国人、領事館のサポートで脱出 高潮による浸水に加え、タンカーの衝突で橋が破損したことで、空港施設内には一時8000人もの人々が滞留していた。 シャトルバスや神戸空港への高速船を使った懸命の救助活動で、ほぼ全員が5日夜遅くには空港島から脱出できた(ちなみに25人ほどの訪日客が「行くところがない」という事情でターミナル内に残ったという)。 果たして、関空の職員らは言葉が通じない訪日客にどのようなケアを行ったのかを調べるため、筆者はアジア各国の人々によるSNS上の書き込みをあちこちチェックしたが、その中から意外な事実を見つけた。 駐大阪中国領事館が空港に残る自国民のために「救出作戦を行った」という報告が書かれていたのだ。あれこれ調べたところ、同領事館は関空サイドと水面下で交渉を進める一方、大型バスをかき集め、4日の夜から未明にかけて対岸でスタンバイ、翌朝(5日)の救出開始を目指した、という。 遅れがあったものの、11時半ごろには最初の一団を乗せることができ、同日深夜までに計1044人の「同胞」を救うことができた、としている。なお、このバスの利用者の大多数は中華人民共和国籍だったが、中には香港、マカオ、そして「台湾パスポート」の人々が若干ながら混ざっていたという。 関空に滞留していた中国人男性は「空港の放送機器やWi-Fiが壊れて情報が取れない中、どこからともなく『大使館の人々が我々を助けに来る』と口コミで伝わってきた」と語っている。 なお、他の国の在阪公館による目立った動きは見当たらない。中国人団体といえば、これまでも日本国内のあちこちの空港でいろいろな問題を起こして来たが、今回は領事館が事態を重く見て、いち早く手を打った格好となったようだ』、中国領事館のサポートで、「1044人の「同胞」を救うことができた」とはなかなかやるものだ。
・『第1ターミナルの基礎インフラはほぼ確保 関空は9月10日現在、2007年に完成した「2期島」の施設を使って部分的な運用が進められている。各種報道でも伝えられているように、第1ターミナル(以下、T1)とA滑走路がある「空港島」はかねて地盤沈下が著しく海面からの高さが1〜2メートルしかないため、それが原因で今回のような大規模な浸水が起きた。 一方、第2ターミナル(T2)がある2期島は海面からの高さが最も低いところでも4.6メートルあったことから高潮被害がほとんど起こらなかった。 その結果、格安航空会社・ピーチの離発着はT2を使い、既にフル稼働に近い形で行われている。隣接する貨物航空会社Fedexの運航も行われており、そこだけを見たら「関空の完全復活は間近か」とさえ思えるほどだ。 しかしT1は「まるで別の空港」と思うほどの惨状を呈している。今回の高潮被害で、建物の地下にあった防災センターや通信設備が浸水してしまい使用不可能になった。変電設備も故障したため、館内放送が流せなくなり、閉鎖当時にターミナル内に滞留した人々への案内が非常に困難になった』、もともと高潮リスクの高いT1で「建物の地下にあった防災センターや通信設備が浸水してしまい使用不可能になった」というのは、福島原発事故で地下の電源装置が使いものにならなくなったのを思い出した。危機管理の発想がいずれも欠如していた典型例だろう。
・『ところで、関空は日本初となるコンセッション方式で運営権の売却が行われた結果、2015年秋からオリックスとヴァンシ・エアポートのコンソーシアムである関西エアポート株式会社(KAP)が44年間の運営権を獲得、現在同社によって運営が行われている。KAPの会見で何度となくフランス人で共同CEOのエマヌエル・ムノント氏が顔を見せるのは、ヴァンシ・エアポートの親会社である建設大手ヴァンシ(Vinci)がフランスを本社拠点としているからに他ならない。 KAPは9月8日、T1の施設の回復状況についての説明を行った。それによると、7日までは、エスカレーターとエレベーターの監視設備が水に浸かり、正常に動かせない状況にあったほか、照明はターミナルの中央部などで停電。防災や空調設備も浸水による被害を受けていたが、11日には照明と防災設備が回復、空調とエレベーターが一部改修中だが、エスカレーターが動くようになったという。 また、肝心の電力供給についてはターミナル地下にあった送電用変電設備6基のうち、3基が浸水で故障したが、山谷佳之CEOは8日の会見で「いずれも部品の交換で対応できる状態」としているほか、連絡橋を通じて流れてくるガスや上水道の供給に無事を確認。さらに空港島内のゴミ焼却場や下水処理施設の再開にも目処がついていることから、とりあえずターミナル本体のライフラインの整備には光が見えていると言えそうだ。 気になるA滑走路の排水状況だが、8日の時点ですでに非常用電源が確保できたことから、それまでのポンプ車使用からモーターを使った排水を実施。KAPは「10日までに滑走路、誘導路、エプロン部分の排水と清掃は終わった」と明らかにしている。 しかし、9月14日がメドとされるT1の暫定運用開始時の規模については依然として誰にもわからない状況だ。9月8日の会見で山谷CEOは、「被害が少ないT1南部分(国際線)を先行で開けたい」という意向を示しているが、「空港内にあるさまざまな機器や設備のテストを同時に行なっている状況で、1時間ごとにいろいろな結果が上がってくる」のが現状とも説明している。 11日の時点で、駐機場(スポット)の復旧作業が着々と進んでおり、先行的に使用する予定のT1南部分とターミナル中央部にある国内線用のスポットはほぼすべて使える状況にあるというが、それ以外の施設や機器類の復旧の進展にも左右されるため、実際のところは「フタを開けてみないとわからない」というのが本音とみるべきだろう。 また、A滑走路の両端にあるILS(計器着陸装置)が故障しており、仮に14日ごろにT1の暫定運用にこぎ着けたとしても「当面はカテゴリー1での使用となる(ムノント共同CEO)」と説明している。 ちなみに「カテゴリー」とはILSの精度のことで、数字が大きいほど性能が上がり、天候が悪くても着陸ができる。関空のA滑走路は本来「カテゴリー2」で運用されて来たが、仮にカテゴリー1での着陸となると視界不良時には降りられないという問題も生じるわけだ』、関空の運営権は民間に売却されていたとは、初めて知ったが、復旧は官営でも民営でも変わらないのだろう。
・『鉄道は4週間で直るのか? しかし関空の施設全体をフル稼働させるのに必要不可欠なのは本土側との交通アクセスの確保だ。 せっかく空港ターミナルがフル稼働のレベルに戻せたとしても、道路や鉄道の補修が進まなければ空港に行きたくても行けない、何かの都合で渋滞にはまって飛行機に乗れない、といった事態も想定される。T1の暫定運用を始めるにしても、一定の交通インフラの確保は不可欠だ。現在、りんくうタウン駅まではJRも南海も乗り入れており、そこからシャトルバスで空港島へ向かうようになっているが所要時間にはかなりの余裕をみる必要があるという。 石井啓一国土交通相は9月7日、関空の復旧計画を発表した中で「空港アクセス鉄道は4週間以内に復旧」と目標を述べたが、現状としてタンカーがぶつかった道路部分の橋桁は線路側へと張り出しており、一見して大きなダメージを受けたことは明らかだ。 さらにややこしい問題が一つ残されている。連絡橋はKAPでなく、国の資産となっており、改装作業の進捗についても「国にお任せ」というのが現状だ。関西経済をけん引する大きなムーブメントと言えるインバウンド客の維持に加え、大阪万博の誘致成功も目指すさなかにあって、関空の復活成功のカギを握る連絡橋の再開に向けての工事は「国としての最優先事項」として進められることになるのだろうか。 ムノント共同CEOは当面の交通アクセスについて、T1の暫定運用開始時に空港まで鉄道が使えないことを念頭に「シャトルバスとリムジンバスなど道路を使った輸送の最適化について検討したい」との考えを述べている』、連絡橋は国の資産とは初耳だが、国のメンツにかけて突貫で工事するのだろう。
・『伊丹と神戸への便数振り分けはあるのか? 関西圏には関空のほか、国内線専用の伊丹空港と神戸空港の計3空港が運用されている。現在、3空港が民営化されておりいずれもKAPの傘下となっている。「同じ会社が運営しているのなら、関空で飛べない分を他に振り分ければいいじゃないか?」という論議が盛んに行われており、これを受け、KAP側も関空の全面再開までの暫定措置という見地で「運航可能便数」について具体的な試算を行った。 その便数は、すでに各種メディアで報じられているように、「2空港で1日当たり70便(離発着それぞれを1便と数える)が可能」というもので、内訳は伊丹に40便、神戸に30便だとしている。KAPはこの試算について「国内・国際線や機体の大小(席数)を問わず、ざっくりとした目安」と説明。しかし、いずれの空港がある自治体も運用時間の延長に難色を示していること、さらに国際線の運航には税関、出入国管理、検疫(CIQ)といった空港内設備の改装も必要となり、「2空港への振り分け」を実行に移すまでのハードルは依然として高い。 これについてKAPのムノント共同CEOは「T1の再開状況のスピードを見極めながら進めたい」とした上で「就航地などの最適化に努める」と述べており、2空港への振り分けの是非については依然として慎重であることを伺わせる。ただ一方で、神戸空港を運航拠点(ハブ)とするスカイマークの佐山展生会長はかねて神戸の国際化に意欲を見せており、今回の関空便の振り分けを機に、一気に国際空港としての整備を行う可能性もあろう。 とりあえず9月14日ごろには、T1のいずれかの部分を使って部分的な再開にこぎ着けることを目下の目標としている。関空は近隣諸国のインバウンド需要が大きいとはいえ、国際空港である以上、やはり花形である欧米との長距離便が一日も早く飛んでほしい、というのが関係者の願いでもある。 しかし長距離便は、乗組員のやりくりや機内食の準備、貨物の装填など運用面において短距離便とは比べ物にならないほど広範な準備が必要となる。そんな事情から、ムノント共同CEOは「欧米便を関空へ再乗り入れさせるのは、やはり後回しになると考えざるを得ない」との現実的な見方を述べている。 ちなみに中長距離便の多くは現在、中部国際空港(セントレア)を代替発着地として飛んでいる。例えば、デルタ航空のホノルル便は、もともと関空発着だった旅客の予約をそっくりそのまま中部便に振り替えたし、関空とフランクフルトを結ぶルフトハンザは中部便の増便および機材の大型化を図って輸送力の確保に努めている。 ユニークなところでは、本来関空に発着するLCC・エアアジアXのホノルル便が現在、中部を拠点に飛んでおり、ややもすると「東海圏からのハワイ行きがふだんより安く行けるチャンス」という状況が生まれている』、伊丹や神戸も同じ会社が運営しているとはいっても、「2空港で1日当たり70便」とは焼石に水だ。そうはいっても、今日付け日経新聞夕刊によれば、両市は受け入れに同意したらしい。「中長距離便の多くは現在、中部国際空港を代替発着地として飛んでいる」というのは当然だろう。
・『外国語による情報発信に依然問題も 関空の発着便は以下のような流れで徐々に増えている。以下はKAPが発表した旅客便のリストを元にまとめたものだ。 ・9月7日(再開初日)…全て国内線で出発7便、到着12便・・・9月11−13日……国際線出発・到着各9便。国内線出発・到着各22便 このように、台風被害後3日間で最初のフライトを飛ばしたことは評価できるが、KAPは各種の情報発信は依然として不得手なようだ。 例えば、その日の就航予定が空港の案内ウェブサイトで告知されているが、トップバナーの表示からpdfフォーマットのお知らせをダウンロードするだけ、という仕組みだ。非常時なのでサイト運営者の手が普段のようにかけられないという事情があるにせよ、仮にも国際空港の顔となるサイトなのだから「もう少しなんとかならないのか」という気がしてならない。 さらに困ったことに、外国語による案内の中身は日本語ページの情報量と比べて著しく薄い。日本語版には関空をその日に出入りする予定の便とその時刻がエクセルのフォーマットですべて記載されている一方、外国語版はT2への乗り入れが想定される各社サイトへのURLが表記されているに過ぎない。 しかも韓国語版については、英語のものがそのまま貼り付けられている。「情報が欲しくて困っている旅客」が多いいまの状況でこそ、より具体的で細やかな情報発信が求められると考えるが、逆にスカスカな情報を公表するにとどまる現状を見ると、果たして「再開後にインバウンド客を盛り返す気が本当にあるのかな?」と疑いの目を向けずにはいられない。 想定外の大きな被害を受けた関空だが、関係者の努力で再開に向け着実に前へと進んでいることは間違いない。しばらくはインバウンド需要の収縮や関空行き旅客の他空港への振替による混乱は続くことはやむを得ないだろうが、改装や修理が手抜きや無理な突貫工事がないよう確実な形で進められることを望みたい。 筆者も、ヒースロー空港の空港職員らと「KIX行きの荷物をようやく流せるようになったね」とおしゃべりできる日が一日も早くやって来ることを期待している』、離発着便の案内など、日本語版だろうと、外国語版だろうと、サイト運営者の手を殆ど煩わさずに表示できるような作りになっていると思っていたが、どうもそうなってないらしいのに驚かされた。これでは、国際空港とはお世辞にも言えないだろう。インバウンドブームの底の浅さを見せつけられた感がある。やれやれ・・・。
タグ:災害 (その5)(台風21号で関空vsタンカー 損害賠償めぐる第2の衝突、関空孤立も北海道停電も 前から「指摘されていた弱点」だった ではなぜ改善できなかったのか、関空 露見した「国際空港」としての巨大欠点 今でも情報発信は最悪の状態のまま) Newsポストセブン 「台風21号で関空vsタンカー、損害賠償めぐる第2の衝突」 タンカーの宝運丸 連絡橋 衝突 アジア太平洋研究所によると関西のインバウンド消費だけをみても、経済損失は500億~600億円にのぼるという 橋桁は造り直す必要があるはずで、そうなると完全復旧までに1~2か月は必要 概算ですが費用も100億円を超える 連絡橋を壊してしまった責任の“賠償額” アンカー(錨)をおろして船が流されないように守錨をする義務 その義務を怠った場合の事故などは船長の過失であり、その賠償は船主(海運会社)が支払う 船舶はPI保険(船主責任保険)に入っているのでそこから補償 上限は通常、数十億円に設定 関空からタンカーに停泊位置など細かく指示が出ていたはずですが、仮にその指示などで関空側にも過失があった場合、過失相殺が認められ、タンカー会社の賠償負担が減る可能性も 自然災害という不可抗力によるものと認められれば、賠償責任そのものが免除 町田 徹 現代ビジネス 「関空孤立も北海道停電も、前から「指摘されていた弱点」だった では、なぜ改善できなかったのか」 関西国際空港と北のライフラインである北海道の電力ネットワークの脆弱性を浮き彫りに 再開分はいまだに1割に満たず、本格復旧には程遠い 近隣空港の代替利用も模索 滑走路が冠水した原因は明らかだ。高潮・高波に伴う海水の侵入を阻む護岸対策が不足 関空 1日24時間いつでも離着陸ができる空港を目指し、騒音を理由に住民から訴訟を起こされないよう、陸地から5キロ近く離れた泉南沖の海上を建設候補地 平均20メートルと海上島建設地としては水深が深いばかりか、海底の土壌も約18 メートルの粘土層など軟弱な土壌が堆積する場所 当初から空港の建設に不向きな立地 1期島は、今なお1年におよそ6センチ・メートルのペースで地盤の沈下が続いており 2004年から護岸を海面から約5メートルの高さまでかさ上げした 北海道全域で停電が起き、その影響が長引きそうだという電力インフラの脆弱性 北海道電力最大の火力発電所「苫東厚真火力発電所」を運転停止 全供給力の4割前後を賄っていた 道内の全発電所が運転を次々と停止し、北海道電力の管内全域が停電するブラックアウトが発生 全道停電という異常事態から迅速に復旧したかに見えても、まだ安心できず、影響が長引く可能性があるのだ 第一は、1、2号機のボイラー損傷、4号機のタービン付近の火災と、続々と主力の苫東厚真火力が大きな被害を受けた 苫東厚真火力のバックアップ役を果たせる発電設備を北海道電力が保持していないこと 本州と北海道を結ぶ送電網が「北海道・本州間連系設備」の1系統しかなく、その容量が60万kwと小さい問題だ 東日本大震災で関東や東北が電力不足に陥った際に 電力の広域融通体制の整備の必要性が幅広く指摘 下手に容量を拡大すると電力自由化が加速しかねないとの懸念から、関係電力会社の間には陰に日向に反対を続けるムードが強い 経済産業省・資源エネルギー庁がそうした業界のエゴを黙認してきた問題も含めて、平時の備えを怠ってきたことが北海道の電力供給の危機対応力不足の根底にある 不十分な安全マージンしか確保していなかった関空の護岸対策も含めて、平時の対応が問われている さかい もとみ 東洋経済オンライン 「関空、露見した「国際空港」としての巨大欠点 今でも情報発信は最悪の状態のまま」 ハードだけではなく、ソフト面でも課題が山積している。情報発信の面で、「国際空港としてやるべきこと」ができていないのだ 初動の情報発信に難点 『とりあえず明日の再開はない』ってどういうことなの? 滑走路や駐機場は水浸し、空港への橋も破損しているのに、明後日になってどうやって使えるようになるわけ? ヒースロー空港にある欧州系航空会社のカウンター 関空は5日の時点で、「6日中の再開はなし」とだけ発表。「閉鎖となる期間」について、タイムラインをしっかり示していなかった その後、航空各社は9月11日ごろまでの関空便をとりあえず欠航とする方向で態度を固め、行き先を振り替えた上で「とにかく日本のどこかへ顧客を送る」という現実的な対応を開始 関空滞留の中国人、領事館のサポートで脱出 計1044人の「同胞」を救うことができた 第1ターミナル(以下、T1)とA滑走路がある「空港島」はかねて地盤沈下が著しく海面からの高さが1〜2メートルしかないため、それが原因で今回のような大規模な浸水が起きた 高潮被害で、建物の地下にあった防災センターや通信設備が浸水してしまい使用不可能になった 運営権の売却 関空の施設全体をフル稼働させるのに必要不可欠なのは本土側との交通アクセスの確保 連絡橋はKAPでなく、国の資産となっており 伊丹と神戸への便数振り分けはあるのか? 2空港で1日当たり70便 いずれの空港がある自治体も運用時間の延長に難色を示していること、さらに国際線の運航には税関、出入国管理、検疫(CIQ)といった空港内設備の改装も必要となり、「2空港への振り分け」を実行に移すまでのハードルは依然として高い 長距離便は、乗組員のやりくりや機内食の準備、貨物の装填など運用面において短距離便とは比べ物にならないほど広範な準備が必要 中長距離便の多くは現在、中部国際空港(セントレア)を代替発着地として飛んでいる 外国語による情報発信に依然問題も
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