SSブログ

金融危機(その1)(リーマン・ショック10年(上)イラク戦争が遠因 金融危機の国際政治学、同(下)資本主義が危うい 強権と独占で複合危機に、リーマン後10年 「労働節約的イノベーション」が新たな危機の火種になる) [金融]

明後日に、リーマン後10年を迎える今日は、金融危機(その1)(リーマン・ショック10年(上)イラク戦争が遠因 金融危機の国際政治学、同(下)資本主義が危うい 強権と独占で複合危機に、リーマン後10年 「労働節約的イノベーション」が新たな危機の火種になる)を取上げよう。

先ずは、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が9月11日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「リーマン・ショック10年(上)イラク戦争が遠因 金融危機の国際政治学」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/091000077/?P=1
・『世界経済危機に波及した米大手金融機関の破綻は、2003年のイラク戦争に遠因があった。ブッシュ米大統領によるイラク戦争の「後方支援」のため米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン議長は、金融緩和を長引かせた。それが住宅バブルの発生と崩壊をもたらし、金融危機につながった。 米金融当局が公的資金投入をためらったことで危機を未然に防げなかった。この「米国の失敗」を救ったのは、中国による大規模な経済対策だった。金融危機は超大国・米国の後退と新興国・中国の台頭という国際政治力学の変化を浮き彫りにした』、面白そうだ。
・『雨のウォール街で(それはリーマン・ブラザーズ破綻(2008年9月15日)の3日前、雨のウォール街で始まった。金曜日の夕方にもかかわらず、ウォール街は華やいだ雰囲気はなく、ハリケーンの影響で降りしきる雨にかすんでいた・・・筆者は、あわてて傘を買い求め、やっとタクシーを拾ったが、渋滞がひどかった。 この渋滞に巻き込まれたひとりに、ポールソン米財務長官がいた。ウォール街のニューヨーク連銀に向かう車中から、財務長官はガイトナー・ニューヨーク連銀総裁に電話を入れる。リーマン危機にどう対応するか、その進捗状況を聞くためだ。 リーマン危機のための緊急会議に招集されたのは、2人のほか、コックス米証券取引委員会(SEC)委員長やJPモルガン・チェースのダイモン会長、メリルリンチのセイン会長ら金融界首脳である。渋滞で財務長官の到着が遅れたため、緊急会議は1時間遅れの9月12日午後7時に始まった。 リーマン危機への対応をめぐっては、ウォール街では様々な観測が飛び交っていた。リーマンで長くチーフ・エコノミストだったアレン・サイナイ氏は筆者に「リーマンは資産を売って、スモーラー・リーマンとして生き延びる」と語っていた。そんななかでウォール街で「リーマン清算」という衝撃的な見方を聞いた。「すでにリーマンの株価は下がっており、取引先もほとんど手を引いているから清算しても影響はないと米金融当局はみている」というのである』、なるほど。
・『米金融当局の大誤算 ニューヨーク連銀での緊急協議は12日だけでは終わらず週末を含め3日間に及んだ。最大の焦点は身売りだった。身売り先として最後に残ったのは英バークレイズ銀行だった。しかし、英金融当局の反対で、最後の希望も絶たれる。こうしてリーマンは破綻に追い込まれる。 米金融当局にとって大きな誤算は、リーマンが破綻しても、その影響は小さくて済むと読んでいたところにある。金融危機どころか世界経済危機に点火するとは予想もしていなかっただろう。とくにポールソン財務長官は米投資銀行のゴールドマン・サックスの会長を長く務めてきただけに、経営が失敗した投資銀行が退場するのは当然だという思いがあったはずだ。 しかし、リーマン破綻はウォール街の1投資銀行の破綻ではすまなかった。まず、米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の危機に連鎖し、シティ・グループの危機にまで波及した。金融と自動車の連鎖からゼネラル・モーターズ(GM)まで巻き込んだ。世界同時株安が進行し、日欧、新興国を含む大恐慌以来の世界経済危機に陥ることになる。そこには、明らかに超大国・米国のおごりがあった』、ポールソン財務長官の判断ミスは致命的だ。
・『「ブッシュの戦争」で始まった リーマン・ショックの遠因にあるのは、リーマン破綻の5年半前に始まったブッシュ大統領によるイラク戦争である。開戦理由は大量破壊兵器の存在だったが、ついに発見されず、大義なき「米国の戦争」に終わった。その後の中東混迷を深める結果になった。この「ブッシュの戦争」は「第2のベトナム戦争」とも呼ばれる・・・ベトナム戦争がニクソン・ショックによるブレトンウッズ体制の崩壊につながったように、イラク戦争は世界経済危機を誘発させて基軸通貨・ドルの信認を失墜させた。 グリーンスパン議長はこのイラク戦争を金融政策を通じて「後方支援」しようとした。イラク戦争は原油高を通じて世界経済に不透明感をもたらした。それを払しょくするために、フェデラルファンド(FF)レート1%という超低金利を長く据え置いたのである。 長引く金融緩和は、住宅バブルを招く。低所得層の持ち家化を進めていたブッシュ政権の政策と相まって、サブプライム・ローンを膨らませる。しかし住宅バブルの崩壊でサブプライム危機が広がる。複雑化した証券化商品に累積したリスクが顕在化する。それがリーマン・ショックにつながったのである』、FFレートの低位据え置きが、イラク戦争支援の狙いもあったとは初耳だ。
・『巨匠・グリーンスパンの最後の失敗 1987年から2006年まで長きに渡ってFRB議長として世界の金融市場に君臨してきたグリーンスパン氏はなぜ対応を誤ったのか。就任早々、ブラックマンデー(ニューヨークの株価暴落)を乗り切って以来、市場重視の金融政策を展開してきた。市場との対話によって、市場に政策を織り込ませて波乱を防ぐファイン・チューニング(微調整)の政策手法は絶妙だった。巨匠(マエストロ)の名をほしいままにしていた。 ウォール街出身らしく「市場の人」とみられていたが、グリーンスパン氏のもうひとつの顔は「政治人間」だった。フォード政権下で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長をつとめて以来、歴代大統領の経済の指南役を任じてきた・・・そんな「政治人間」の本領が、ブッシュの戦争で発揮されたのは歴史の皮肉である。グリーンスパン氏自身が「100年に1度の危機」と呼んだリーマンショックによる世界経済危機は、自らの「最後の失敗」が導火線になったのである』、「100年に1度の危機」とはグリーンスパンの言い訳だろう。晩節を汚した典型だ。
・『日本の危機に学べず公的資金ためらう リーマン・ショックを引き起こしたのは、もうひとつの要因は米国の「公的資金アレルギー」だった。日本が1997年、金融危機に陥ったのは、「トゥービッグ・トゥーフェイル」(大きすぎてつぶせない)という金融の大原則を守れなかったからだ。危機に際して公的資金投入をためらい、山一証券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行など大手金融機関を相次いで破たんさせてしまった。それは日本の長い「失われた時代」につながる。米国はこの日本の失敗を熟知しながら、その苦い教訓に学べなかった。 リーマン破綻についてブッシュ大統領自身が「ウォール街救済はまっぴらだ」と言い、ワシントンの政治家たちも政府の不介入を称賛した。ポールソン財務長官も、もともと金融機関の資本増強を推奨しながらも、公的資金投入までは念頭になかった。 バーナンキ元FRB議長は公的資金をめぐる米国の状況をこう分析してみせた。「米国の有権者は公的資金投入について5分5分だ。反対か絶対反対かだ」というのである』、政治の流れを、金融実務に精通しているFRBが軌道修正できなかったのは、やむを得ない面もある。
・『地味なブラウン英首相が救世主 日本の失敗に学んでいた首脳が欧州にはいた。地味なブラウン英首相である。スコットランド出身だが、同じブレア前首相に比べて影が薄く、労働党内で首相退陣の圧力が高まっていたほどだ。 しかし、リーマン・ショック直後に、大手金融機関への公的資金投入、銀行間市場の保証、預金保護という金融危機管理の枠組みを打ち出し、それを欧州連合(EU)や先進7カ国(G7)に浸透させた手腕は鮮やかだった。危機の連鎖を防ぐために英大手銀行に公的資金注入を先行実施してみせた。 リーマン・ショック当時、先進国首脳のなかに唯一財務相を経験した経済通がいたのは幸いだった。危機打開でブラウン人気は回復したが、いまだにその評価は低い。いま英国の政治家たちがEU離脱をめぐって混乱を引き起こしているさなかだけに、リーマン・ショック10年を機に「ブラウン再評価」があってもいいだろう』、確かにブラウン英首相がいなければ、事態はもっと悪化していた可能性があったろう。
・『米中覇権争いの導火線 世界経済危機の打開にはブラウン英首相の手腕だけでなく、G7先進国の政策協調、そして先進国に新興国を加えたG20の創設も一定の役割を果たした。しかし、世界経済を実需面から下支えしたのは、新興の経済大国である中国の4兆元にのぼる積極的経済対策だったといえる。 危機が深刻化していた2009年1月の世界経済フォーラム・ダボス会議では、スーパースターは中国の温家宝首相だった。そこにはダボスの常連だったウォール街首脳の姿はなかった。温家宝首相は危機の中国への波及に言及しながらも、「中国経済の安定した高成長が世界経済の安定に貢献する」と述べた。自信に満ちた表情が印象的だった。会議参加者に安堵が広がった。 リーマン・ショックは、イラク戦争を遠因として世界経済危機に招いた超大国・米国の後退ぶりを示すものだった。その一方で、第2の経済大国として成長を続ける中国の存在感を高めるものになった。それは中国の習近平政権の誕生と米国のトランプ大統領の登場による米中間の熾烈な覇権争いへの導火線にもなっている』、その通りだ。

次に、上記の続きとして9月12日付け「リーマン・ショック10年(下)資本主義が危うい 強権と独占で複合危機に」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/091100078/?P=1
・『リーマン・ショック10年後の世界は、強権政治と独占経営によって、資本主義が揺らいでいる。トランプ米大統領による保護主義・排外主義と習近平中国国家主席による国家資本主義の「強権対立」は、米中間の覇権争いに発展した。 デジタル革命を先導するアマゾンなど米国のIT(情報技術)5強は独占の弊害が目立ってきた。問題はそれが格差拡大とポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭によって、民主主義の危機に連鎖しているところにある。金融危機はいつ再燃してもおかしくないが、この複合危機の根はもっと深い。自由な市場と民主的な政治を前提にしてきた戦後の世界システムの危機である』、筆者の強い危機感が伝わってくる。
・『次はトランプショックか リーマン・ショックの後遺症がまず表れたのは2010年からのユーロ危機だった。PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)というありがたくない呼び名の国々が、危機に見舞われた。 とりわけギリシャ危機は深刻だった。欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)のトロイカ支援体制のもとで苦しい改革を進め、ようやく最近、危機から脱したが、成長力は乏しくまだ難題が残る。ポピュリスト政権下のイタリアには銀行不安がなおくすぶる。 リーマン・ショックに対応した金融緩和から各国が出口に向かうのは当然だが、その余波も見逃がせない。先頭を行く米連邦準備理事会(FRB)の利上げで、対外債務を抱えた新興国からの資本流出が相次いでいる。とりわけアルゼンチンやトルコは大幅な通貨安に直面している。新興国危機が危機の火種になっている。 しかし、次の金融危機が起きるとすれば、ユーロ圏や新興国発ではないだろう。やはり震源地は米国になるはずだ。それも今度はトランプショックの恐れがある』、日本では異次元緩和の出口に至る前に、そんなショックに見舞われたら、悲惨な結果を招くのは必至だ。
・『貿易戦争に金融政策・為替介入 リーマンショックの反省から、ボルカー元FRB議長を中心に金融規制「ボルカー・ルール」がまとめられた。しかし、トランプ大統領はこの金融規制の緩和を打ち出した。反ウォール街を売りにしていたはずなのに、ウォール街寄りを鮮明にしている。出口戦略に実績があった当時のイエレンFRB議長をあえて交代させたのは、大統領の金融規制緩和に抵抗したせいかもしれない。トランプ流の金融規制緩和は、金融資本主義の肥大化を加速する可能性がある。それは潜在的危機の温床になりかねない。 もうひとつの危険は、パウエルFRB議長が進めている利上げ路線に、「低金利好き」のトランプ大統領が介入して、本来あるべき利上げが見送られてしまうことだ。パウエル議長が政治圧力に抵抗しきれないと、再びバブルの発生と崩壊につながりかねない。 そうでなくてもトランプ発の貿易戦争は米国自身を含めて世界経済を混乱させている。貿易戦争にからんだ為替介入も市場の波乱要因になる。トランプショックの要因はすでにそろっている』、なんと恐ろしいことだろう。 
・『はびこる強権政治 世界はいま強権政治に席巻されているようにみえる。強権政治は、批判勢力の存在を許さず、言論の自由を認めない。司法に介入し、中央銀行の独立性も無視する。 その強権政治が最先進国であるはずの米国のトランプ大統領によって実行されるのだから、世界は混迷する。多国間の自由貿易を否定し、2国間の保護主義に傾斜する。自由な資本主義をゆがめているのは、なんと超大国の大統領である。 習近平中国国家主席の「反保護主義」の主張がまだまともに聞こえるほどだ。その習近平主席は自らの任期を延長して国家資本主義の体制を強化しようとしている。一帯一路構想には米国顔負けの「中国第一主義」が潜んでいる。 この米中の強権対立は、貿易戦争を超えて覇権争いに発展している。米中経済冷戦に打開の道はみえていない。 もともと強権的だったプーチン・ロシア大統領はさらに強権政治に傾斜する恐れがある。ウクライナだけでなく、中東に広がる介入主義は、冷戦期に米国に対抗した旧ソ連がモデルだろう。しかし韓国以下の経済規模しかないロシアが超大国のように振る舞うのは無理がある。資源依存から脱せない経済構造にも問題が多い。プーチン政権がやむを得ず採用する年金の受給開始年齢引き上げには、プーチン支持派まで反旗を翻した。国民生活を犠牲にする拡張主義には限界がある。プーチン人気にもかげりが生じるだろう。 トルコのエルドアン大統領もクーデター未遂事件が背景にあるだけに、さらに強権政治化に動く可能性がある。しかし「金利を搾取の道具」とみて、中央銀行に利上げを認めない頑迷さには驚く。これでは資本流出は止まらず、通貨危機から抜け出せないだろう。 問題は、こうして危機が深まれば深まるほど、強権政治家たちは、権力保持のため一層の強権化を目指しかねないところにある』、「一層の強権化を目指しかねない」とは実に恐ろしいご宣託だ。
・『貿易戦争に金融政策・為替介入 リーマンショックの反省から、ボルカー元FRB議長を中心に金融規制「ボルカー・ルール」がまとめられた。しかし、トランプ大統領はこの金融規制の緩和を打ち出した。反ウォール街を売りにしていたはずなのに、ウォール街寄りを鮮明にしている。出口戦略に実績があった当時のイエレンFRB議長をあえて交代させたのは、大統領の金融規制緩和に抵抗したせいかもしれない。トランプ流の金融規制緩和は、金融資本主義の肥大化を加速する可能性がある。それは潜在的危機の温床になりかねない。 もうひとつの危険は、パウエルFRB議長が進めている利上げ路線に、「低金利好き」のトランプ大統領が介入して、本来あるべき利上げが見送られてしまうことだ。パウエル議長が政治圧力に抵抗しきれないと、再びバブルの発生と崩壊につながりかねない。 そうでなくてもトランプ発の貿易戦争は米国自身を含めて世界経済を混乱させている。貿易戦争にからんだ為替介入も市場の波乱要因になる。トランプショックの要因はすでにそろっている』、トランプは何と罪つくりな大統領なのだろう。
・『デジタル革命に「勝者総取り」の危険 デジタル革命は資本主義の未来を切り開く可能性を秘める。その一方で、「勝者総取り」(ウイナー・テイク・オール)といわれる独占の弊害で資本主義をゆがめる危険をはらんでいる。 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の4社にマイクロソフトを加えた「ITビッグ5」は株式の時価総額でも人口知能(AI)、再生可能エネルギーなどへの投資でも他を圧する巨人になった。GAFAの時価総額は英国の国内総生産(GDP)を上回り、研究開発費はフランスの軍事費に匹敵するほどだ。 こうしたIT独占はデジタル革命そのものの阻害要因になりかねない。新興勢力の頭を抑える存在になることで革新意欲がそがれる。独占企業より新規参入の新興企業の方が収益力や革新力が高いのは経済の常識だ。何より顧客やデータを総取りすることによって世界中で個人の生活にまで踏み込んでくる問題が指摘される。 さらに、アマゾンなどによるデジタル・流通革命が既存の流通業の存続さえ危うくしている。もちろん、既存の流通業自身の改革が生き残りのカギを握るが、IT巨人が優越的地位を乱用すれば、対応は困難になる。 これまでの産業革命で起きたイノベーションは財やサービスの創造だったが、いま起きているのは1市場を超えた流通業という大産業分類の「総取り」である。 こうしたIT巨人の行動に世界中で警戒感が強まっている。米議会にもEU委員会にも規制や監視強化の動きがある。とりわけ個人情報の流出でフェイスブックは批判を浴びた。しかし、規制や監視の先を行くIT巨人の独走をとめるのは簡単ではないだろう』、簡単ではないにしても、しっかり規制や監視強化をして欲しいものだ。
・『格差が生むポピュリズム 最大の問題は強権政治と独占経営による資本主義のゆがみが民主主義の後退と相まって複合危機を起こしているところにある。金融資本主義の肥大化とデジタル資本主義の独占化が世界中で格差を拡大させた。人々は「昔は良かった」症候群に陥り、ポピュリズムを台頭させてしまった。 それはEU全域を覆う。仏独という主要国まで極右ポピュリズムの進出を許している。イタリアには、左右のポピュリズム政権が誕生した。自由な社会だったはずのスウェーデンでも極右が勢力を伸ばした。 EUには難民問題を抱えるという事情はあるが、ポピュリズムの台頭は世界的な傾向である。中間選挙さなかの米国では、共和党はトランプ大統領という典型的なポピュリストに乗っ取られ、民主党では左派ポピュリストのサンダース氏の影響力が高まっている。 強権と独占による資本主義と民主主義の複合危機はこれからも続くと考えておかなければならないだろう』、安倍政権もポピュリズムに走っている。「強権と独占による資本主義と民主主義の複合危機」は、日本も例外ではない。
・『複合危機をどう防ぐか 金融危機を防ぐのに、それなりの処方箋はある。しかし、資本主義と民主主義の複合危機を防ぐのはたやすくはない。それでも、危機打開に地道に取り組むしかない。 まず、「言論の自由」にこだわることである。強権政治によるメディアへの介入には徹底して立ち向かうことだ。ヘイトスピーチには法的規制が求められる。偽情報にも規制が必要だ。 次に、独占禁止法の強化である。とくにデジタル革命に伴う独占化の監視を強化することだ。グローバル経済時代に対応して、独禁当局の国際連携も欠かせない。「グローバル独禁法」の制定を経済協力開発機構(OECD)や世界貿易機関(WTO)などで検討する必要がある。 個人情報の保護も重要である。ビッグデータ時代だからといって、個人情報がおろそかにされるようでは民主主義の土台が崩れる。EUが打ち出した厳格な基準を国際ルールにすることだ。 そして、中央銀行の独立性を確保することだ。それは民主主義と資本主義のための基本的なインフラである。政治の介入は防がなければならない。 格差是正のためには、課税の公平性を維持し所得再配分機能を生かすことが肝心である。グローバル企業の課税逃れを放置してはならない。格差是正には資産課税の強化が必要だ。金融取引税やデジタル課税の導入も真剣に検討するときである。 リーマンショックからの10年で世界は大きく変わった。それを時代の潮流変化だと、したり顔で受け流すことほど危険なことはない。いま起きているのは、資本主義と民主主義の複合危機なのである。この危機を座視することは許されない』、説得力のある処方箋だ。日本のマスコミにも奮起してもらいたい。

第三に、BNPパリバ証券経済調査本部長の河野龍太郎氏が9月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「リーマン後10年、「労働節約的イノベーション」が新たな危機の火種になる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/179548
・『サブプライム危機の「真実」 金融当局に強い反省  まず、金融規制の問題だが、規制当局は、危機は繰り返さないと口をそろえる。そうした主張を、単に「希望的観測」とか「行政の無謬性の罠」と片付けることはできないだろう。 サブプライム危機の原因の1つは、当時の誤った金融規制の導入で、大手米銀が過大なリスクテークに走ったことであり、このことについては、監督当局には強い反省がある。 一般に、サブプライム危機が起きたのは、低金利を背景に米国で住宅ブームが生じ、資金調達のためにサブプライム・ローンなどが膨張、それを元に証券化商品が乱造され、ブームが崩壊したからだと解説される。 しかし、因果関係はむしろ逆だった。 証券化商品へのニーズが強まり、それを組成するためにサブプライムローンなどが粗製乱造され、住宅バブルが醸成されたのが実態だ。 それではなぜ証券化商品へのニーズが高まったのか。 証券化商品の中でもニーズがあったのは、トリプルA資産とされていたスーパー・シニアと呼ばれる部分を集めた高利回りの債券だ。 だが2004年の銀行規制では、リスクが低く、銀行が保有する際には規制上の資本を割り当てる必要がないとされた。本当はリスクがあるから利回りが高いのだが、それを考慮する必要がないと監督官庁がお墨付きを与えてしまった。 利にさとい大手米銀は一斉にその商品に飛びつき、その組成のため劣悪なサブプライムローンが粗製乱造され、それに伴って住宅バブルが起きたのである。 銀行は、規制上リスクが小さいはずのスーパー・シニア債を大量に保有していたため、バブル崩壊で大損失が発生、それが破綻の原因の1つとなった。 大手米銀は、いわば、規制の隙間をついて儲けていた。リターンが高くとも規制上リスクがないと認定されていたから、十分な資本も準備されていなかった。 さらにどの銀行も一斉に同じところに資金を投入するから、バブルも生じた。銀行業の行動原理を考慮しない規制が、危機の種をまいたという構図だ。 それ故、サブプライム危機後、銀行規制は世界的に強化されている。今のところ大銀行を巻き込む危機が訪れる可能性は(多分)小さい』、「因果関係はむしろ逆だった」というのは実務的にはその通りだろう。こうした鋭い指摘はさすがである。
・『是正されたグローバル・インバランス 中国の経常収支は大幅減  危機を生んだ背景にあったグローバル・インバランス問題も、今は状況が大きく変わった。 当時、大手米銀がスーパー・シニア債を欲したのは、正真正銘のトリプルA資産である米国債の金利が大幅に低下したことが、そもそもの原因だった。 中国や日本など経常黒字国の過剰貯蓄が向かった先が米国債であり、その結果、米国準備制度理事会(FRB)が利上げを続けたにもかかわらず、中国などの旺盛な米国債購入で米国の長期金利はほとんど上昇しなかった。 それ故、長短スプレッドを確保できなくなった大手米銀がスーパー・シニア債に向かったわけだ。 当時に比べると、米国の資本輸入は大きく減少し、経常黒字国の資本輸出も、日独を除くと、かなり抑制されている。過剰貯蓄国の代表の1つだった中国の経常黒字は、今やゼロ近傍まで縮小している。 今は、サブプライムバブル時のように、経常黒字国の過剰な資本輸出によって、米国の長期金利が低く抑えられ、不均衡が生じているとは必ずしもいえなくなっている』、なるほど。
・『新たな危機の断層線 「労働節約的なイノベーション」の光と影  それでは、金融的不均衡をもたらす断層線は今や存在しないのか。近年、筆者が強く懸念しているのは、先進国における所得分配がもたらす問題だ。 日米独を中心に先進各国は完全雇用の状態にあるが、賃金上昇はなお緩慢で、その結果、物価上昇の動きは鈍い。景気拡大が長期化しているにもかかわらず、FRBの利上げペースが遅いのもこのためだ。日本に至っては、政策金利の引き上げのめどすら立っていない。 この底流には、労働分配率の趨勢的な低下傾向がある。生み出された付加価値における労働の取り分が低下し、資本の取り分が上昇しているのだ。 労働分配率が趨勢的に低下しているのは、90年代末から加速したイノベーションやグローバリゼーションが大きく影響している。 先進国で観察されるのは、製造業の生産工程の新興国へのオフショアリングであり、「労働節約的なイノベーション」である。この結果、生産性上昇率が高まっても、その果実は、資本やアイデアの出し手に向かい、平均的な労働者の所得増加にはつながっていない。 これまで、実質賃金の引き上げには、生産性の上昇が不可欠であり、そのためにはイノベーションやグローバリゼーションを推進すべきだと長い間、論じられてきた。 確かにオフショアリングなどで生産効率は大きく改善したが、それは労働分配率の低下をもたらし、必ずしも実質賃金の上昇にはつながっていない。 オフショアリングで中間的な賃金の仕事が先進国で減少し、比較的高い賃金の仕事と比較的低い賃金の仕事が増え二極化が進んだことが、トランプ政権が貿易戦争を開始した背景の1つだが、問題はそれだけではなかった。 所得増加が資本やアイデアの出し手に集中することは、次のようなマクロ経済上の大きな問題を引き起こす。 所得が増えても、それが、いわゆる「富裕層」のような消費性向の低い経済主体に集中することは、経済全体では、消費が大きく増えず、貯蓄が積み上がって、投資でスムーズに吸収できないことを意味する。 経済を均衡させる自然利子率がマイナスの領域まで下がっても、実際の名目金利はゼロ以下に下がらないため、総需要を刺激できず、 経済は長期停滞に陥る。 先進国経済は、資産バブルによる総需要のかさ上げなしには、完全雇用に達することが難しくなる』、素晴らしく鋭い分析で、言われてみれば全くその通りだ。
・『バブルを作ることでしか完全雇用に到達できない  新興国へのオフショアリングが始まったのは1990年代の終盤からだが、過去20年間で、米国が完全雇用に達したのは、2000年のドットコムバブルと2005~2007年のサブプラムバブルの時だけだ。 つまり、もはやバブルを作ることでしか、米国は完全雇用に到達できないのではないか。そして現在、米国が完全雇用にあるのは、バブルで総需要をかさ上げしているから、というのが筆者の仮説である。 バブルは弾けるまで、それがバブルであることは認識できない。今回はクレジットスプレッド(債務不履行のリスクに応じて上乗せさせる金利)が縮小していることを背景に、社債の大量発行が続いている。また、社債発行で調達された資金が、自社株買いに回っていることも気になる。 自然利子率がマイナスの領域まで低下しているため、バブルを醸成して総需要をかさ上げすることでしか、完全雇用に到達できないというのは、ローレンス・サマーズ教授の「長期停滞論」で指摘されたことだ。 だが教授らの主張と筆者の考えでは、一点、大きな違いがある。 サマーズ教授らが主張していたのは、イノベーションの枯渇で設備投資が不活発になり、貯蓄を吸収できず、自然利子率がマイナスの領域まで低下したということだった。 しかし、今やあらゆるところでデジタル革命の進行が観測される。 筆者が考えるのは、イノベーション不足ではなく、労働節約的なイノベーションが進んだ結果、消費性向の低い一部の経済主体に所得増が集中し、自然利子率が大きく低下したのではないか、ということだ』、実に興味深い仮説だ。
・『一方でこうした問題は、本来なら、所得再分配政策で対応すべきだが、政治的には簡単ではない。 イノベーションやグローバリゼーションの恩恵を受けるエスタブリッシュメントへの反発として始まったのが、トランプ大統領の「ポピュリズム政治」だが、それでもトランプ氏はあくまで元凶を国外に求めている。 国内の所得分配構造そのものに手を付けようという動きは、今のところ起きていない。 結局、金融緩和で無理に対応しようとするから、資産価格ばかりが上昇して、バブルが生じる。これが、米国経済に次なる危機をもたらす「断層線」である。 これまでは主に製造業の生産工程のオフショアリングだったが、2010年代後半に入り、非製造業にもオフショアリングが広がろうとしている。 自然利子率がマイナスの領域に入った場合、バブルを醸成する以外、総需要をかさ上げして完全雇用に達することは不可能なのか。 実は方法は2つある。1つは、通貨安に誘導することで大幅な経常黒字を作ること。もう1つは、大幅なPB(注)赤字を作ることである。国外の需要や将来の需要を先食いすることで過剰な貯蓄を吸収できる。(注:プライマリー・バランス) 実際、ドイツが完全雇用にあるのは、GDP比で8%前後の経常黒字を醸成しているからであり、日本は、4%前後の経常黒字と、3%前後のPB赤字を醸成している。 しかし、いずれも持続可能とは言えない。米国のバブルが崩壊すれば、FRBが金融緩和に転じ、ユーロや円は対ドルで大幅な増価を余儀なくされるため、両国とも完全雇用を維持できなくなる』、冷静で説得力のある分析だ。
・『いつまでバブルは続くか 実体経済の表裏の関係  それでは、どこまで米国のバブルの膨張が可能なのか。 筆者の念頭にある経済モデルでは、資産価格の上昇が続くのは、実体経済が好調だからではなく、さえないからである。 中央銀行が資産価格に強く働きかける政策を繰り返してきた結果、資産市場は既に実体経済を正しく映す鏡ではなくなっている。実物投資の機会が限られ、貯蓄の行き場がないから、資産市場に流れ込み、資産価格が上昇する。 ただ、それはいつまでも続かない。資産価格が上昇を続ければ、資産効果によって総需要がさらにかさ上げされ、実体経済が過熱し金利が上がるためである。 金利が低いからこそ、資産価格の上昇が続いていたのだが、金利上昇が始まれば資金が金融市場から逃げ出し、資産価格は上昇しなくなる。そして、上昇が止まれば、逆回転が始まり、バブルは崩壊する。 こう考えると、新興国からの資金流出が始まり、貿易戦争が火ぶたを切った3月以降も米国株が大きく崩れず、高値圏で推移しているのが説明可能かもしれない。 本来、新興国からの資金流出は不確実性をもたらし株価の下落要因になるはずだが、資金が米国に還流すると、長期金利が抑えられ、逆に株価が上昇する。 同じように、貿易戦争も本来は株価の下落要因になるはずだが、新興国への懸念から、米国に資金が還流し、長期金利が抑えられ、株価は上昇する。 一般に株価が下がると思われている要因も、閾値を超えるまでは、長期金利の抑制を通じ、株価を押し上げる。 一方で、反対に長期金利の押し上げ要因になるものは、本来は実体経済の押し上げ要因であっても、株安をもたらす。 2月に株価が調整したのは、財源が十分でないまま、トランプ大統領が社会インフラの増強に言及したためだった。 財政膨張懸念から長期金利が上昇すれば、前述した通り、資産価格の上昇が続かなくなる。今後、貿易戦争の悪影響が米経済にも現れ、仮にその悪影響を吸収すべくインフラ投資や追加減税にトランプ大統領が言及するようなことがあれば、株高要因になると思いきや、金利上昇を通じ、株式市場は動揺するのかもしれない』、最近の米国の株価や長期金利の動きを見事に解き明かしており、さすがだ。
・『カギを握るFRBの利上げ 資産市場の過熱を警戒する議長  さて、こうした資産市場の動きに、大きく影響を与えるのがFRBの金融政策だ。 近年、歴代FRB議長は、インフレが過熱しなければ、極力、景気拡大を短縮化させるリスクを回避すべく、利上げペースを抑えてきた。だがその結果、2度のバブル醸成をもたらした。 しかし、パウエル議長は、8月のジャクソンホールの講演で、景気拡大を短縮化させるリスクだけでなく、利上げが遅れることで、景気が過熱するリスクにも配慮するとしている。さらに、過去2度の景気過熱はインフレ上昇ではなく、資産市場における過熱であったとも明言している。 マーケットは経済の大きな落ち込みに対して「何でもやる」というパウエル議長の発言に、パウエル・プット(株価サポート政策)を読み取り、さらなる株高で反応した。ただパウエル議長の講演の真意は、インフレが落ち着いていても、資産市場が堅調なら、利上げを続けるというものだったようにも思われる。 もし、そうした政策にFRBが舵を切るのなら、実体経済から大きく乖離した株価が大きな修正局面を迎える可能性がある。 あるいは、現代の民主主義のもとでは、政治的に独立した中央銀行といえども、株式市場から独立した政策は取れないと考えたほうがいいのだろうか』、私には後者の方がありそうな気がする。いずれにしろ、岡部氏とは大掛かりな政治経済分析も面白かったが、河野氏のマーケット分析もなかなか読み応えのある記事だった。 
タグ:金融危機 (その1)(リーマン・ショック10年(上)イラク戦争が遠因 金融危機の国際政治学、同(下)資本主義が危うい 強権と独占で複合危機に、リーマン後10年 「労働節約的イノベーション」が新たな危機の火種になる) 岡部 直明 日経ビジネスオンライン 「リーマン・ショック10年(上)イラク戦争が遠因 金融危機の国際政治学」 米大手金融機関の破綻は、2003年のイラク戦争に遠因があった 金融危機は超大国・米国の後退と新興国・中国の台頭という国際政治力学の変化を浮き彫りにした リーマン危機のための緊急会議 週末を含め3日間に及んだ 米金融当局にとって大きな誤算は、リーマンが破綻しても、その影響は小さくて済むと読んでいた 金融危機どころか世界経済危機に点火するとは予想もしていなかっただろう とくにポールソン財務長官は米投資銀行のゴールドマン・サックスの会長を長く務めてきただけに、経営が失敗した投資銀行が退場するのは当然だという思いがあったはずだ AIG)の危機に連鎖し、シティ・グループの危機にまで波及 ゼネラル・モーターズ(GM)まで巻き込んだ 明らかに超大国・米国のおごりがあった ブッシュ大統領によるイラク戦争 グリーンスパン議長はこのイラク戦争を金融政策を通じて「後方支援」しようとした フェデラルファンド(FF)レート1%という超低金利を長く据え置いた 長引く金融緩和は、住宅バブルを招く。低所得層の持ち家化を進めていたブッシュ政権の政策と相まって、サブプライム・ローンを膨らませる。しかし住宅バブルの崩壊でサブプライム危機が広がる。複雑化した証券化商品に累積したリスクが顕在化する。それがリーマン・ショックにつながった グリーンスパンの最後の失敗 「政治人間」の本領が、ブッシュの戦争で発揮されたのは歴史の皮肉 「100年に1度の危機」 自らの「最後の失敗」が導火線になった 日本の危機に学べず公的資金ためらう 米国の「公的資金アレルギー」 日本の失敗を熟知しながら、その苦い教訓に学べなかった ブッシュ大統領自身が「ウォール街救済はまっぴらだ」と言い、ワシントンの政治家たちも政府の不介入を称賛した 地味なブラウン英首相が救世主 大手金融機関への公的資金投入、銀行間市場の保証、預金保護という金融危機管理の枠組みを打ち出し、それを欧州連合(EU)や先進7カ国(G7)に浸透させた手腕は鮮やか リーマン・ショック当時、先進国首脳のなかに唯一財務相を経験した経済通がいたのは幸いだった 米中覇権争いの導火線 中国の4兆元にのぼる積極的経済対策 ダボス会議 る中国の存在感を高めるものになった 「リーマン・ショック10年(下)資本主義が危うい 強権と独占で複合危機に」 10年後の世界は、強権政治と独占経営によって、資本主義が揺らいでいる 自由な市場と民主的な政治を前提にしてきた戦後の世界システムの危機 次はトランプショックか ユーロ危機 FRB)の利上げで、対外債務を抱えた新興国からの資本流出が相次いでいる アルゼンチンやトルコは大幅な通貨安に直面している。新興国危機が危機の火種になっている 次の金融危機 震源地は米国になるはずだ。それも今度はトランプショックの恐れがある 貿易戦争に金融政策・為替介入 「ボルカー・ルール」 トランプ大統領はこの金融規制の緩和を打ち出した。 もうひとつの危険は、パウエルFRB議長が進めている利上げ路線に、「低金利好き」のトランプ大統領が介入して、本来あるべき利上げが見送られてしまうこと 貿易戦争にからんだ為替介入も市場の波乱要因になる。トランプショックの要因はすでにそろっている 世界はいま強権政治に席巻 自由な資本主義をゆがめているのは、なんと超大国の大統領 米中の強権対立は、貿易戦争を超えて覇権争いに発展 問題は、こうして危機が深まれば深まるほど、強権政治家たちは、権力保持のため一層の強権化を目指しかねないところにある トランプ流の金融規制緩和は、金融資本主義の肥大化を加速する可能性 潜在的危機の温床に デジタル革命に「勝者総取り」の危険 GAFA いま起きているのは1市場を超えた流通業という大産業分類の「総取り」である IT巨人の行動に世界中で警戒感が強まっている 規制や監視の先を行くIT巨人の独走をとめるのは簡単ではないだろう 格差が生むポピュリズム 強権政治と独占経営による資本主義のゆがみが民主主義の後退と相まって複合危機を起こしている 「昔は良かった」症候群に陥り、ポピュリズムを台頭 ポピュリズムの台頭は世界的な傾向 強権と独占による資本主義と民主主義の複合危機 処方箋 「言論の自由」にこだわること 独占禁止法の強化 個人情報の保護も重要 中央銀行の独立性を確保すること 格差是正のためには、課税の公平性を維持し所得再配分機能を生かすことが肝心 資産課税の強化が必要 河野龍太郎 ダイヤモンド・オンライン 「リーマン後10年、「労働節約的イノベーション」が新たな危機の火種になる」 サブプライム危機の「真実」 証券化商品へのニーズが強まり、それを組成するためにサブプライムローンなどが粗製乱造され、住宅バブルが醸成されたのが実態 スーパー・シニア 2004年の銀行規制では、リスクが低く、銀行が保有する際には規制上の資本を割り当てる必要がないとされた 銀行は、規制上リスクが小さいはずのスーパー・シニア債を大量に保有していたため、バブル崩壊で大損失が発生、それが破綻の原因の1つとなった 是正されたグローバル・インバランス 経常黒字国の資本輸出も、日独を除くと、かなり抑制 新たな危機の断層線 「労働節約的なイノベーション」の光と影 労働分配率が趨勢的に低下しているのは、90年代末から加速したイノベーションやグローバリゼーションが大きく影響 「労働節約的なイノベーション」 生産性上昇率が高まっても、その果実は、資本やアイデアの出し手に向かい、平均的な労働者の所得増加にはつながっていない オフショアリングで中間的な賃金の仕事が先進国で減少し、比較的高い賃金の仕事と比較的低い賃金の仕事が増え二極化が進んだ 所得が増えても、それが、いわゆる「富裕層」のような消費性向の低い経済主体に集中することは、経済全体では、消費が大きく増えず、貯蓄が積み上がって、投資でスムーズに吸収できないことを意味 バブルを作ることでしか完全雇用に到達できない 自然利子率がマイナスの領域まで低下しているため、バブルを醸成して総需要をかさ上げすることでしか、完全雇用に到達できない ローレンス・サマーズ教授の「長期停滞論」 所得再分配政策で対応すべきだが、政治的には簡単ではない いつまでバブルは続くか 実体経済の表裏の関係 カギを握るFRBの利上げ 資産市場の過熱を警戒する議長
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。