SSブログ

英国EU離脱問題(その13)(英国のEU離脱を歓迎し 待ち構える中国、W杯で団結 EU離脱で分裂する英国の未来、BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も) [世界情勢]

英国EU離脱問題については、昨年6月13日に取上げたままだった。今日は、(その13)(英国のEU離脱を歓迎し 待ち構える中国、W杯で団結 EU離脱で分裂する英国の未来、BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も)である。

先ずは、フリージャーナリストの姫田 小夏氏が1月10日付けJBPressに寄稿した「英国のEU離脱を歓迎し、待ち構える中国 ブレグジットでますます深まる英中経済関係」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52033
・『1月2日、米調査会社のユーラシア・グループが「2018年の10大リスク」を公表した。その筆頭は「中国の影響力」だが、8位に「英国」がランキングしている点にも注目したい。なぜ英国がリスクかというと、ブレグジット(Brexit、英国のEU離脱)の期限が2019年3月末に迫るなか、英国が首尾よくこの離脱手続きを進められるかが問われているためだ・・・EU離脱は英国経済や社会に短期的な弊害をもたらす。一方、EU残留は長期的な苦痛をもたらす――そんな判断のもとブレグジットを選択した英国に対し、国際社会は「2018年のリスクは英国そのものだ」と悲観的な視線を向けている』、ユーラシア・グループが10大リスクの8位にランキングしたのも頷ける。
・『しかし、“ブレグジットは好機だ”とばかりに英国に急接近を図っている国もある。中国だ。  2016年6月、離脱をめぐる英国の国民投票が僅差で「離脱」という結果になったとき、中国は歓迎しなかった。中国による英国企業の買収が進む中、「中国が投資した資産価値はどうなるか」が懸念されたのだ。 だが時間の経過とともに、「英国のEU離脱は、中国にとってリスクよりチャンスが大きい」と楽観視する空気が形成されていき、英国に同調する記事も徐々に増えてきた。 例えば、中国商務部のシンクタンクに所属する研究員は、中国紙への寄稿で次のように指摘している。「EUの管理システムは官僚主義だ。そのルールは世界で最も細かくて煩わしく、事務効率は主要先進国に比べて低い。これらは英国の経済的活力をそいできた」 EUとの交渉を担当した日本の通産省OBも、「EUは各国の寄り合いなので意思決定に時間がかかるのは事実。そもそも『欧州の統合』という高邁な理念のもとに結成された組織なので、理念先行のきらいがある」と明かす。 英国はこうした大陸諸国とは異なり、よりプラグマチックに思考する。「経済的実利」を追求するという点では、むしろ中国とそりが合うといえるだろう。両国がブレグジットをきっかけに接近を図ってもおかしくはない』、なるほど。
・『英国市場へのアクセスが容易に?  話は10年以上前にさかのぼるが、2005年に繊維製品の輸入数量規制が撤廃されると、EU市場にどっと中国製品がなだれ込んだ。このとき、EUは緊急輸入制限(セーフガード)の発動を発表するが、英国は自由貿易を主張して輸入制限に反対した。中国は今なお、このときの英国の対応を評価している。 そして、英国のEU離脱に対しても、英国との貿易の障壁を低くし、英国市場にアクセスしやすくするものであると確信しているのだ。  2017年1月、浙江省義烏と英国ロンドンを結ぶ国際貨物列車が運行を開始した。鉄道によって中国と英国の市場はますます接近している。義烏から運ばれる貨物は大半が日用雑貨だと言われるが、ロンドン発の復路にはウイスキーが積まれている。 ウイスキーは英国にとって、国内産業をけん引する重要な商品である。しかし人口6500万人(2015年)の島国である英国にとって国内市場は今後の成長が見込めない。そのため輸出拡大への取り組みを避けることはできない。そこにタイミング良く打ち出されたのが中国の「一帯一路」構想だった。英国のウイスキーは今後「一帯一路」に乗って中国へ大量に運ばれるだろう。 中国メディアは「『一帯一路』はブレグジット後の英国に、市場のみならず自信も与えることになるだろう」と論じている。 中国は、英国が債務問題を抱え、生産現場が資金不足に陥っていること、大量のインフラが老朽化していることを知っている。「英国にはパートナーが必要だ。中国の投資で製造業を復活させてやろう」――中国がそう目論んでいることは想像に難くない』、中国は英国のヒンクリー・ポイントC原子力発電所を受注して、工事中である。
・『両国は「英中黄金時代」を宣言  中国の掲げる「一帯一路」と英国の「ノーザンパワーハウス(Northern Powerhouse)」(イングランド北部の経済振興策)、中国の「メイド・イン・チャイナ2025」(製造業の強化を図る政策)と英国の工業政策「The future of manufacturing」など、両国の経済政策には類似性があり、さまざまなプロジェクトの相互乗り入れが検討されている。 また、中国は「ロンドンが、中国の人民元の国際化を推進する橋頭保になる」と期待している。ブレグジットが決まった際、「ロンドンは国際金融センターとしての地位が低下し、パリやフランクフルトに取って代わられるだろう」との見方があった。しかし今では、「結局、ロンドンの地位が他所に取って代わられることはなく、影響は限定的だった」(中国の電子メディア)と捉えられている。 「一帯一路」構想で世界への影響力を強めようとしている中国にとって、ブレグジットは渡りに船だ。すでに両国は「英中黄金時代」を宣言しており、ブレグジット後の英国の運命は“中国とのタッグ”に強く支配される気配さえする。 果たして数年後、世界の10大リスクから英国の名前は消えているだろうか』、ロンドンの国際金融センターとしての地位については、中国の電子メディアの「手前みそ」に過ぎず、現実には脱出が相次いでいる。しかし、「英中黄金時代」が上手くいくかどうかは、ヒンクリー・ポイントC原発プロジェクトが順調にいくかが、当面の鍵を握っているのかも知れない。

次に、7月13日付け日経ビジネスオンライン「W杯で団結、EU離脱で分裂する英国の未来 大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストに聞く」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/071200839/
・『英国で対照的な2つの事象が同時進行した。1つはロシア・ワールドカップ(W杯)。イングランドは28年ぶりのベスト4に進出。準決勝で敗れたものの、若い選手たちが躍動し、英国は興奮の渦に包まれた。「これほど見知らぬ人と喜びを分かち合い、抱き合ったことはなかった」と話す英国人もいる。 もう1つはEU離脱(ブレグジット)の行方だ。道筋が全く見えなくなっている。7月6日、メイ英首相はブレグジットの交渉方針をまとめた。EU離脱の国民投票から2年が経ち、メイ政権にとってようやく取りまとめた離脱の方針だった。 ここからの展開が急だった。8日夜にデービスEU離脱担当相が辞任。続く9日には、強硬離脱派の顔であるジョンソン外相が辞任した。ジョンソン氏は「ブレグジットの夢は死につつある」と強烈にメイ首相を批判。政権の中枢を担う2大臣が辞任し、メイ首相の退陣を迫るとの見方も出ている。ワールドカップでイングランドの快進撃が続き、国民の団結は強まっているように見えるが、ブレグジットという「国難」に対して国の分断が深まるばかりだ』、よりにもよって、政権の中枢を担う2大臣が辞任するとは、メイ首相も気の毒だ。
・『大別すると、議論はEUとの経済関係を重視し、ソフトランディングを求める「穏健離脱派」と、EUの法律や規制と決別する「強硬離脱派」に分けられる。しかし、いずれも英国のいいとこ取りとの批判がつきまとい、正式にEUとは交渉していないため、実現性が全く見えていない。 日本企業の関係者は不安を募らせている。7月9日に開催した在英国日本国大使館の「英国のEU離脱に関する日系企業向け説明会」では、開会前に大使館前に行列ができ、ほぼ会場は満席だった。大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストにブレグジットの現状や今後の展開を聞いた・・・菅野:英国政府は、イングランド南部ソールズベリーで起きたロシアの元情報機関員への襲撃事件を契機に、ロシア政府との対決姿勢を鮮明にし、今回のW杯では、代表チームの応援に伴うロシア訪問をボイコットしているからです。当初は、英国民にも現地での応援自粛を呼びかけており、その世論に英王室も歩調を合わせ、イングランド・サッカー協会名誉会長のウィリアム王子ですら現地に赴きませんでした。 しかし、予想以上のチームの躍進により、メイ首相は自ら墓穴を掘ってしまい、イングランド代表が勝ち抜くほど、支持率が低下する状態に陥っていました。 一方、決勝戦に進んだフランスのマクロン大統領は準決勝で、スタンドでの応援に駆け付けました。フランス代表の躍進で、低迷気味の支持率も持ち直したといわれており、満面の笑みを浮かべていたのが対照的でした』、ついてない時は、悪いことが重なるものだ。
・『実は、W杯の現地応援自粛を言い出したのは、ジョンソン氏でした。そもそもジョンソン氏が英国でどのような存在なのかという点からお話しします。ジョンソン氏は英国のEU離脱(ブレグジット)の象徴的な存在です。 前ロンドン市長として人気があり、国民投票の前の演説は聴衆からスタンディングオベーションで称えられ、EU離脱の流れを作りました。外相はEUとの直接交渉を行う立場ではありませんが、ブレグジット協議への影響力は強いとみられています。 辞任の引き金になったのは、7月6日の英首相の公式別邸(チェッカーズ)での閣議です。英国とEUとの将来的な関係性についての青写真をメイ首相が明らかにし、10時間以上の閣議で強硬離脱派を抑え込みました。 閣議で決まった方針では、物の移動の自由と引換えに、離脱後も食品や製品に関してEU規制に準拠する方針が明らかにされました。ジョンソン氏は、「メイ首相の考えは英国の利益を損ない、英国が永久にEUの属国になる最悪の案だ」と批判していました。 確かにEUは食品や製品に厳しい規制があり、それに英国も合わせるとなると、離脱の意味がなくなってしまうでしょう。しかし、ジョンソン氏にも緻密なプランがあるようには見えません』、離脱方針を決めた閣議が10時間以上とはさぞかし激論が交わされたのだろう。緻密なプランなしに反対したジョンソン氏は実に無責任だ。
・『EU委員会にはブレグジットへの興味がさほどないように映ります。何人かのEU関係者と話しましたが、自分たちの共同体を出ていく人間に対して、それほど労力を割きたくないと思っているようです。ブレグジットはいわば敗戦処理です。担当者にとってもキャリアの上で減点はあっても加点はないので、モチベーションが高まらないでしょう。英国に甘い顔をするとEUの結束が緩むので、英国に厳しくすることはあっても甘くなることは考えにくい状況です・・・(ブレグジットの混迷が深まったことで、今後はどのような展開が考えられますか) いくつかのシナリオが考えられます。1つ目は、メイ首相が穏健路線を貫き、逃げ切るシナリオ。2つ目は、離脱戦略の大きな転換。3つ目は、保守党の内部分裂で、メイ首相に不信任案が提出され、党首選になるシナリオです。 このうち、3つ目のシナリオを最も警戒すべきです。詳細は以下のような展開が考えられます。 ジョンソン氏の辞任により、保守党内からメイ首相降ろしの風が強まり、不信任投票の可能性が高まります。保守党の党首選になればデービス前EU離脱担当相も立候補する可能性が高いとされています。48人の保守党議員が不信任の書簡を1922年委員会に提出すれば、党首への不信任投票が行われることとなります。 現時点で強硬離脱派議員は、メイ首相に退陣を迫らないようです。不信任案を提出するだけの人数も集まっていないことから、直ぐに党首選や総選挙になるかは分かりません。 また現時点での党首交代は、2019年3月末のブレグジットまでに意見収束は絶望的となり、無秩序な離脱にも大きく近づきます。 保守党内強硬派トップのリース・モグ議員は、チェッカーズで閣議決定したメイ首相の案が議会に掛けられたとき、支持しないとすでに造反を表明しています。EUとの合意に達せず時間切れになるか、合意に達したとしても合意内容が議会で否決されたら無秩序な離脱にも大きく近づくこととなります』、EU側がブレグジットに関心が薄いのというのは、分かるような気がする。それにしても、タイムリミットが近づいた段階での英政界の混迷は、本当に危険だ。
・『製品の値上げは避けられない  離脱の後は、金融機関がEU全域で単一免許で営業できるパスポート制を失うことになります。これに対して、金融機関はEU域内に現地法人を設立し、営業体制を整えるなど対応を進めています。 一方、製造業のサプライチェーンへの影響は大きいと言わざるを得ません。関税がかかることで、製品価格の値上げは避けられないでしょう。 チェッカーズ案では、第三国で製造され英国経由でEUに輸出される物品は、まずは英国に輸出された時点でEUの代わりに関税を徴収します。その関税をプールしておき、最終的にEUへ向かう物品にはその関税をそのままEUに渡し、英国にとどまる物品の場合は差分を企業に返金することで製造業の負担を減らす案が検討されています。ただ、煩雑な事務手続きが必要になるうえに、最終的にどこに物品がとどまるかを追跡することは難しく、抜け道がいくらでもありそうなので現実的ではありません。(次に、英国で注目される法案は何か)貿易法案と関税法案です。貿易法案は、EUの自由貿易協定を英国の協定に置き換える条項などを含む法案です。関税法案はブレグジット後の関税措置を定める法案です。 いずれも2月以降、下院での審議が中断されています。レッドサム下院院内総務は、遅くとも7月半ばには審議を再開する意向を示しています。関税同盟にとどまることを希望する穏健離脱派から多くの修正案が起案される可能性があり、法制化には難航が予想されます』、ご苦労なことだ。
・(北アイルランド問題)アイルランドは1922年まで長らく英国の植民地でした。独立戦争を経て、北アイルランドを残して、アイルランドは独立しました。 ただ、1960年~90年代には英国の統治を望むプロテスタント系と、アイルランド併合を望むカトリック系が激しく交戦する北アイルランド紛争が起こりました。1998年の停戦協定で、ようやく武装解除がなされた歴史があります。 英国がEUから抜けると通関が必要になり、アイルランドが分断されてしまいます。北アイルランドに国境を引くと停戦協定に違反し、交戦が始まってしまいますので、これは難しいということは、英国やEUが合意しています。 ではどうやって通関手続きをするのか。まずEUは北アイルランドだけをEUの単一市場や関税同盟に残すというガイドラインを示しました。これは、英国にとってはEUの北アイルランドの占領に当たるとして猛反発しました・・・国境にカメラを設置して、事前に関税を支払っていない物品に関しては後で罰金を科すという案ですが、国境すべてにカメラを設置するのは難しいでしょう。 解決策としては、フェンスを作って通関を設けるのか、英国全体が関税同盟にとどまるしかないでしょう。 移民を制限する一方で、モノは無関税で自由に移動するというのは、EUからは「いいとこ取り」と批判されており、これも難航が予想されます。 これまでも何度か触れているチェッカーズ案というのは、要するにこういうことです。EUとの間での煩わしい通関手続きを極力簡素化し、デジタル規制などでの大幅な譲歩を引き出す代わりに、厳しいEUの食品や製品の規制には従うということです。これに対して「EUの属国になる」とジョンソン氏ら強硬離脱派が反発したのです』、離脱というのは本当に難しいものだと改めて再認識した。
・『メイ首相はもともと強硬な離脱を掲げていました。しかし交渉の進展がなく、強硬路線はEU各国にまたがりサプライチェーンを構成する製造業などへの影響が大きいことから軌道修正しています。それがチェッカーズ方針であり、政権内の分断を招いたと言えます。 EUはメイ政権の迷走を静観しています。保守党が分裂し、総選挙で労働党政権になれば、英国がEUに戻ることがあるので、そうした展開を望んでいるようにみえます・・・イングランドがW杯で初優勝したのは1966年ですが、次の1970年のW杯メキシコ大会で、優勝候補のイングランドは(当時の)西ドイツに準々決勝で敗れています。しかも1970年の総選挙は、準々決勝直後に行われ、敗戦のショックが政権批判に向けられたことにより、各種世論調査で勝利確実といわれていた労働党ウィルソン政権がまさかの敗北を喫し、政権交代が実現したのです。 この話は多くの英国政治家が教訓としているため、イングランドが準決勝で敗退した今となっては、保守党も総選挙には慎重になるでしょう』、総選挙は回避したとしても、死に体になった政権で、離脱に向けての対応が時間切れになって、悲惨な結果をもたらすよりは、総選挙で民意を問う方がいいと思えるのだが・・・。

第三に、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が7月13日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も 」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/071200071/
・『英国は欧州連合(EU)離脱・・・をめぐって、3度目のオウンゴールを演じてしまった。1度目の誤りは、BREXITの国民投票の実施であり、2度目の誤りはメイ首相が総選挙前倒しを強行して少数与党に転落したことだ。そして、3度目の誤りはソフト離脱を選択したメイ首相にデービスEU離脱担当相、ジョンソン外相という強硬離脱派が反旗を翻し、退陣したことだ。 これでメイ政権の危機はさらに深まり、BREXITは一層、混迷する事態になった。このままでは、2019年3月の離脱期限までに何も決まらない「無秩序離脱」の恐れも出てきた。そうなれば、外資流出によるポンド危機など英経済は致命的な打撃を受ける。BREXITとは一体何だったのか、英国民に後悔(BREGRET)が広がるだろう』、3度目のオウンゴールとは、確かにピッタリの表現だ。
・『ソフト離脱路線に強硬派が反旗  BREXITをEUとの前線で仕切ってきたデービス担当相とジョンソン外相の退陣は、英国内にある強硬離脱かソフト離脱かの基本的対立をいまさらながら浮き彫りにした。 メイ首相が選択したのは、EUとの間で「自由貿易圏」を創設するというものだ。その代わりに、農産品や工業製品の規格や基準でEUと共通ルールを採用する。離脱に伴い関税同盟から脱退するが、北アイルランドとアイルランドの国境で煩雑な税関手続きが発生しないよう、EUと連携するとしている。 英国とEUとのサプライチェーンが分断されることを警戒してきた英経済界は、自由貿易圏の創設を中心とするソフト離脱路線の選択に胸をなでおろした。 ところが、英国(EUの間違い?)からの独立を掲げてきたデービスEU離脱担当相は、これに反発、退陣した。続いて、ジョンソン外相もソフト離脱を「英国をEUの植民地化する」とこきおろし、「EU離脱の夢はついえつつある」と批判して退陣した。 メイ首相にすれば、デービス、ジョンソンという強硬派を最前線に配して、手ごわいEUとの交渉を有利に導きたいという思いがあった。英国との経済関係が深く、英国に理解を示してきたドイツのメルケル首相でさえ「良いとこ取りは許さない」という強い態度を示していただけに、EUとの離脱交渉は一筋縄ではいかなかった。 EUのバルニエ首席交渉官との交渉で強硬姿勢を貫いてきたデービス担当相やジョンソン外相にすれば、はしごをはずされたという思いもあるかもしれない』、交渉に当たってきた両氏が「はしごをはずされた」というのは、その通りなのかも知れない。
・『EU懐疑派の系譜  もっとも、強硬離脱派の急先鋒で国民投票の勝利を導いたジョンソン外相は、もともとEU残留を主張していた。保守党内のライバル、キャメロン首相と対抗するために信念をまげてまで野に下った野心家だ。国民投票でEU離脱が決まっても、ポスト・キャメロンの首相の座争いには加わらず、今回の辞任劇もデービス辞任の後に続くなど「日和見主義者」といえる。 もともとEU離脱という英国の将来を揺るがす大きな選択をリスクの大きな国民投票に委ねたキャメロン首相に政治家としての大きな問題があった。ブリュッセルのEU官僚嫌いで有名なサッチャー首相でさえ、こんな安易な選択はしなかったはずだ。 英国にはもともと主要メディアを含めてEU懐疑論が根強かった。キャメロン首相自身も実はEU懐疑派だったといえる。国民投票で英国がEU離脱を選択するなら、それはそれでいいと考えていたふしがある。2016年6月の国民投票は実はEU懐疑派とEU離脱派の戦いでもあった。そんな危険な国民投票を実施したこと自体が1番目のオウンゴールである。 キャメロン氏のEU観は1992年の欧州通貨危機のなかで形成されたといえる。英ポンドはジョージ・ソロス氏の投機を浴びて欧州通貨制度(EMS)の為替相場メカニズム(ERM)からの離脱をよぎなくされる。キャメロン氏は担当官としてこの通貨危機に立ち会っている。ユーロ危機のさなか、ユーロ圏が危機打開に苦闘しているときにキャメロン首相は「英国はユーロに加盟していなくてよかった」と述べて、ひんしゅくを買ったこともある。独仏主導のEU運営に疎外感を味わわされていたのは事実である。 キャメロン首相の後を継いだメイ首相はもともと、消極的なEU残留派だった。内相経験から移民問題には頭を悩ませていたが、何がなんでもEU離脱をめざすという政治的立場からは程遠かった。しかし、英国首相としてBREXITをめぐる議論がソフトとハードの間で揺らぐなかで、国内の政治的立場を固めたいという思いは強かった。「BREXITはBREXITだ」と言い切っていた。 しかし、政権の足場固めのために、2017年6月にあえて総選挙を前倒しし、敗北したのは政治的センスの無さを示している。2番目のオウンゴールが、メイ政権を弱体化させたが、3番目のオウンゴールがメイ政権の危機を決定づけたといえる』、「キャメロン首相自身も実はEU懐疑派だった」というのは初耳だが、1番目のオウンゴールを説明できる。
・『「大国意識」がもたらしたもの  民主主義の先進国である英国でなぜこうも政治的失態が続くのか。指導者の政治的資質に問題があるのは事実だが、そこには抜きがたい「大国意識」が潜んでいる。 その源流をさかのぼれば、ウィンストン・チャーチル首相に突き当たる。第2次大戦後の混乱のなかで、最も早く「欧州合衆国」構想を打ち出したのはチャーチルだった。チャーチルに刺激されて欧州統合に動き出したのが「欧州統合の父」とされるフランスの実業家、ジャン・モネである。 ただし、チャーチルの「欧州合衆国」構想は英国抜きの構想だった。「欧州合衆国」との関係についてチャーチルは「“with”not“in”」と述べている。英国は「欧州合衆国」のなかには入らず共生するという姿勢である。そこにあるのは、「大英帝国」の流れを汲む「大国意識」である。チャーチルは戦後の世界を支配するのは米国・英国・旧ソ連の3大国だと考えていた。 この英国の「大国意識」は、結局「英国病」をもたらすことになる。仏独和解を軸に、欧州統合が急進展するなかで、英国は出遅れる。欧州共同体(EC)に加盟できたのは、申請から12年後である。欧州統合の列に加われず、かつての英連邦の結びつきを薄れるなかで、英国はポンド危機と経済停滞に直面する。 英国経済はサッチャー改革だけでなく、EU市場と外資に依存する経済構造が出来上がったことでようやく再生された』、いまや「大国意識」は薄らいだとはいえ、やはり残っていたのだろう。ただ、現在ではノスタルジーでしかないく、何ら前向きの政策につながるようなもの、ではなさそうだ。
・『BREXITが招く英国病  EU離脱は、それがソフト離脱であれ強硬離脱であれ、英国経済に影響を及ぼさずにはおかない。英国経済は「大欧州」として拡大するEU市場に大きく依存している。英国経済はそのEU市場に照準を合わせた外資にも大きく依存している。この徹底した外資依存は「ウィンブルドン現象」と呼ばれるほどだ。BREXITは、停滞し続けた英経済を再生させたこの経済構造を自らの手で崩壊させるようなものである。英国の歴史のなかでも特筆すべき愚策といえるだろう。 メイ政権のソフト離脱には経済への影響を最小限に食い止めたいという思いがにじんでいるが、外資はオウンゴールを繰り返す不透明な英国に投資を見合わせるだろう。それどころか英国から欧州大陸などEUへの移転を検討せざるをえなくなる。エアバスといったEUの共同事業からも英国は外される。 世界の金融センターとしてのロンドン・シティーの座も盤石ではなくなる。シティーが担ってきたユーロ・ビジネスは欧州大陸に移される。米国の金融機関はシティーからフランクフルト、パリなど欧州大陸への機能分散を急いでいる。こうした機能分散は日本の金融機関どころか英国の金融機関にも波及している。外資流出が収まらなければ、戦後の英国経済を襲ったポンド危機が再現しかねない。緩やかなポンド安なら輸出や観光には好都合だが、ポンド危機になれば話は別である。スタグフレーション(物価高と景気停滞の同時進行)に陥り、再び英国病に悩まされることになる』、「再び英国病」とは穏やかではないが、確かにあり得るシナリオだ。
・『BRETURNの動き再燃も  英国のEU離脱期限は、2019年3月29日である。英国とEU各国の議会承認手続きを考えれば、離脱のためEUとの最終合意は10月のEU首脳会議までに成立しなればならない。日程が切迫するなかでの英国政治の混迷は、BREXITをめぐる混迷を象徴している。 弱体化したメイ政権は「ゾンビ内閣」とやゆされるほど機能不全に陥っている。保守党内に倒閣の動きもあるが、代わりがいないという弱みもある。このまま弱体政権がEUとの詰めの交渉に当たれば、相当の譲歩を迫られるだろう。英国内の反発を恐れて譲歩を拒めば、時間切れで何も決まらないまま「無秩序離脱」という最悪の事態になりかねない。2020年末まではEUの単一市場や関税同盟に残すという暫定合意も宙に浮く恐れがある。離脱期限そのものを先送りする手もないわけではないが、議会手続など条件が多く、不透明感から急激な外資流出を招くだけだろう。 こうしたなかでは、英国内ではBRETURN(EUへの回帰)を求める議論が若者を中心にロンドンやスコットランドで巻き起こる可能性もある。再度の国民投票や再選挙が選択肢になる。英国は歴史的大失敗にこのまま身を任せるか、深い崖の淵で思いとどまるかの選択を迫られようとしている』、「再び英国病」との悲惨なシナリオを回避するため、「再度の国民投票や再選挙」でBRETURNしてもらいたいものだ。 
タグ:シナリオ スタグフレーション 日経ビジネスオンライン JBPRESS 英国EU離脱問題 岡部 直明 ロシア・ワールドカップ 「一帯一路」 (その13)(英国のEU離脱を歓迎し 待ち構える中国、W杯で団結 EU離脱で分裂する英国の未来、BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も) 姫田 小夏 「英国のEU離脱を歓迎し、待ち構える中国 ブレグジットでますます深まる英中経済関係」 ユーラシア・グループが「2018年の10大リスク」 8位に「英国」がランキング “ブレグジットは好機だ”とばかりに英国に急接近を図っている国もある。中国だ 「経済的実利」を追求するという点では、むしろ中国とそりが合うといえるだろう。両国がブレグジットをきっかけに接近を図ってもおかしくはない ヒンクリー・ポイントC原子力発電所を受注 両国は「英中黄金時代」を宣言 「W杯で団結、EU離脱で分裂する英国の未来 大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストに聞く」 準決勝で敗れたものの、若い選手たちが躍動し、英国は興奮の渦に包まれた もう1つはEU離脱(ブレグジット)の行方だ。道筋が全く見えなくなっている ブレグジットの交渉方針 政権の中枢を担う2大臣が辞任し、メイ首相の退陣を迫るとの見方も出ている EUとの経済関係を重視し、ソフトランディングを求める「穏健離脱派」 EUの法律や規制と決別する「強硬離脱派」 いずれも英国のいいとこ取りとの批判 正式にEUとは交渉していないため、実現性が全く見えていない ロシアの元情報機関員への襲撃事件 今回のW杯では、代表チームの応援に伴うロシア訪問をボイコット 予想以上のチームの躍進により、メイ首相は自ら墓穴を掘ってしまい、イングランド代表が勝ち抜くほど、支持率が低下する状態に ジョンソン氏は英国のEU離脱(ブレグジット)の象徴的な存在 10時間以上の閣議で強硬離脱派を抑え込みました 物の移動の自由と引換えに、離脱後も食品や製品に関してEU規制に準拠する方針 EU委員会にはブレグジットへの興味がさほどないように映ります 1つ目は、メイ首相が穏健路線を貫き、逃げ切るシナリオ 2つ目は、離脱戦略の大きな転換 3つ目は、保守党の内部分裂で、メイ首相に不信任案が提出され、党首選になるシナリオ 現時点での党首交代は、2019年3月末のブレグジットまでに意見収束は絶望的となり、無秩序な離脱にも大きく近づきます 製品の値上げは避けられない 北アイルランド問題 英国がEUから抜けると通関が必要になり、アイルランドが分断されてしまいます。北アイルランドに国境を引くと停戦協定に違反し、交戦が始まってしまいますので、これは難しいということは、英国やEUが合意しています EUは北アイルランドだけをEUの単一市場や関税同盟に残すというガイドラインを示しました。これは、英国にとってはEUの北アイルランドの占領に当たるとして猛反発 国境にカメラを設置して、事前に関税を支払っていない物品に関しては後で罰金を科すという案 移民を制限する一方で、モノは無関税で自由に移動するというのは、EUからは「いいとこ取り」と批判されており、これも難航が予想 EUはメイ政権の迷走を静観しています。保守党が分裂し、総選挙で労働党政権になれば、英国がEUに戻ることがあるので、そうした展開を望んでいるようにみえます 「BREXITで英国は3度目のオウンゴール メイ政権の危機で無秩序離脱も 」 3度目のオウンゴール 1度目の誤りは、BREXITの国民投票の実施 2度目の誤りはメイ首相が総選挙前倒しを強行して少数与党に転落 3度目の誤りはソフト離脱を選択したメイ首相にデービスEU離脱担当相、ジョンソン外相という強硬離脱派が反旗を翻し、退陣したことだ 「無秩序離脱」 外資流出によるポンド危機など英経済は致命的な打撃 英国民に後悔(BREGRET)が広がるだろう ソフト離脱路線に強硬派が反旗 デービスEU離脱担当相 ジョンソン外相 EUのバルニエ首席交渉官との交渉で強硬姿勢を貫いてきたデービス担当相やジョンソン外相にすれば、はしごをはずされたという思いもあるかもしれない EU懐疑派の系譜 キャメロン首相自身も実はEU懐疑派だった 「大国意識」がもたらしたもの 第2次大戦後の混乱のなかで、最も早く「欧州合衆国」構想を打ち出したのはチャーチルだった チャーチルの「欧州合衆国」構想は英国抜きの構想だった 「大英帝国」の流れを汲む「大国意識」である。チャーチルは戦後の世界を支配するのは米国・英国・旧ソ連の3大国だと考えていた 英国経済はサッチャー改革だけでなく、EU市場と外資に依存する経済構造が出来上がったことでようやく再生された BREXITが招く英国病 英国経済は「大欧州」として拡大するEU市場に大きく依存している。英国経済はそのEU市場に照準を合わせた外資にも大きく依存 「ウィンブルドン現象」 BREXITは、停滞し続けた英経済を再生させたこの経済構造を自らの手で崩壊させるようなものである。英国の歴史のなかでも特筆すべき愚策 ポンド危機 BRETURNの動き再燃も 若者を中心にロンドンやスコットランドで巻き起こる可能性も
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。